(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、ドットマトリクス型の有機EL素子100に本発明を適用した実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0014】
図1において、有機EL素子100は、支持基板1と、第一電極(陽極)2と、絶縁層3と、隔壁部4と、有機層5と、第二電極(陰極)6と、封止部材7とから主に構成されている。
【0015】
支持基板1は、長方形形状からなる透光性のガラス基板である。
【0016】
第一電極2は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透光性の導電材料をスパッタリングあるいは蒸着法等の方法で支持基板1上に層状に形成され、例えばフォトリソグラフィー法にてストライプ状にパターニングしてなるものであり、表面がUV/O
3処理やプラズマ処理等の表面処理を施されている。
【0017】
絶縁層3は、ポリイミド系やフェノール系等の絶縁材料からなるものでフォトリソグラフィー法等の手段によって支持基板1上の非発光個所に所定の形状にて形成される。絶縁層3は、第一電極2の間に形成されるとともに第一電極2と若干重なるように形成され、第一電極2と第二電極6との間を絶縁するものである。
【0018】
隔壁部4は、例えばフェノール系等の絶縁材料からなるものであり、フォトリソグラフィー法等の手段によって断面が例えば逆テーパー状に形成される。隔壁部4は第一電極2及び絶縁層3上においては第一電極2と略直角に交わるように形成され、また、支持基板1上の後述する第二電極(陰極)6に対応する個所においては
図1(a)に示すように支持基板1の積層体形成面側から見て円弧状となるように形成される。
【0019】
有機層5は、第一電極2及び絶縁層3上に形成されるものであり、
図2に示すように、正孔注入輸送層51,第一の発光層52,第二の発光層53,電子輸送層54及び電子注入層55を蒸着法等の手段によって順次積層形成してなり、膜厚60〜150nm程度の層状となるものである。
【0020】
正孔注入輸送層51は、第一電極2から正孔を取り込み第一,第二の発光層52,53へ伝達する機能を有し、例えばアミン系化合物等の正孔移動度が高い正孔輸送性材料を蒸着法等の手段によって膜厚15〜40nm程度の層状に形成してなる。前記正孔輸送性材料は、ガラス転移温度が85℃以上(さらに好ましくは130℃以上)であり、正孔移動度μ
hは4×10
−4cm
2/V・s程度であり、エネルギーギャップは3.1eV程度である。
【0021】
第一の発光層52は、
図2に示すように、第一のホスト材料52cに、発光性材料として第一のドーパント52a及び正孔輸送材料として第二のドーパント52bを共蒸着法等の手段によってドープし、膜厚20〜60nmの層状に形成してなる。
第一のホスト材料52cは、正孔及び電子の輸送が可能であり、正孔及び電子が輸送されて再結合することで発光を示す機能を有し、例えばジスチリルアリーレン誘導体やアントラセン誘導体等からなる。
第一のドーパント52aは、電子と正孔との再結合に反応してアンバー色(橙色)発光する機能を有し、第一のドーパント52aのドーピング量は濃度消光を起こさない程度となるように構成することが望ましく、例えば、第一の発光層52における濃度が2〜8%となるように第一のドーパント52aが添加されている。また、第一のドーパント52aのイオン化ポテンシャルI
pは、第一のホスト材料52cのイオン化ポテンシャルI
pよりも0.1eV以上低い値となっている。
第二のドーパント52bは、正孔移動度が高く電子移動度が低い正孔輸送性の特性を有し、正孔移動度μ
hが10
−4cm
2/V・s以上となっている。また、第二のドーパント52bは、第一の発光層52における濃度が5〜50%となるように添加されている。
【0022】
第二の発光層53は、
図2に示すように、第二のホスト材料53cに、発光性材料として第三のドーパント53a及び正孔輸送材料として第四のドーパント53bを共蒸着法等の手段によってドープし、膜厚20〜60nmの層状に形成してなる。
第二のホスト材料53cは、正孔及び電子の輸送が可能であり、正孔及び電子が輸送されて再結合することで発光を示す機能を有し、例えばジスチリルアリーレン誘導体やアントラセン誘導体等からなる。
第三のドーパント53aは、電子と正孔との再結合に反応して青色発光する機能を有し、第三のドーパント53aのドーピング量は濃度消光を起こさない程度となるように構成することが望ましく、例えば、第二の発光層53における濃度が2〜8%となるように第三のドーパント53aが添加されている。また、第三のドーパント53aのイオン化ポテンシャルI
pは、第二のホスト材料53cのイオン化ポテンシャルI
pよりも0.1eV以上低い値となっている。
第四のドーパント53bは、正孔移動度が高く電子移動度が低い正孔輸送性の特性を有し、正孔移動度が10
−4cm
2/V・s以上となっている。また、第四のドーパント53bは、第二の発光層53における濃度が5〜50%となるように添加されている。
【0023】
電子輸送層54は、電子を第一,第二の発光層52,53へ伝達する機能を有し、例えばキレート系化合物であるアルミキノリノール(Alq
3)等の電子輸送性材料を蒸着法等の手段によって膜厚8〜30nm程度の層状に形成してなる。あるいは、1×10
−6cm
2/V・s以下の電子移動度を持つ有機材料を用いる。
【0024】
電子注入層55は、第二電極6から電子を注入する機能を有し、例えばフッ化リチウム(LiF)を蒸着法等の手段によって膜厚0.5nm程度の層状に形成してなる。また、電子注入層55は、リチウムキノリン(Liq)でもよい。
【0025】
第二電極6は、アルミニウム(Al)やマグネシウム銀(Mg:Ag)等の導電性材料を蒸着法等の手段によって膜厚50〜200nm程度の層状に形成してなるものであり、隔壁部4によってストライプ状に切断される。
【0026】
以上のように、支持基板1上に第一電極2と有機層5と第二電極6とを順次積層して有機EL素子を得る。前記各有機EL素子はマトリクス状に配置され、発光表示部を構成する各発光画素となる。
【0027】
封止部材7は、例えばガラス材料からなる成型ガラス或いは平板部材をサンドブラスト、切削及びエッチング等の適宜方法で凹形状に形成してなるものである。封止部材7は、例えば紫外線硬化性エポキシ樹脂からなる接着剤71を介して支持基板1上に気密的に配設することで、封止部材7と支持基板1とで前記発光表示部を封止する。封止部材7は、第一電極2の端部および第二電極6の端部が外部に露出するように支持基板1よりも若干小さめに構成されている。なお、封止部材7は平板状であってもよく、その場合封止部材7はスペーサーを介して支持基板1上に配設される。
【0028】
以上のように、発光表示部を有するドットマトリクス型の有機EL素子100が得られる。この有機EL素子100は、第一電極2からの正孔と第二電極6からの電子とが第一,第二の発光層52,53にて再結合することによって橙色系発光と青色系発光を得て、これらの混色によって白色光を第一電極2側から出射するものである。また、有機EL素子100はストライプ状に形成された複数の第一電極2と複数の第二電極6のそれぞれ何れかを選択して定電流を印加し、選択された第一電極2と第二電極6の対向箇所に該当する発光画素を発光させる、いわゆるパッシブ駆動で発光駆動するものである。
【0029】
また、本実施形態の有機EL素子100は、第一電極2と、有機層5との間に正孔注入輸送層51を積層形成する構成であったが、第一電極2と有機層5との間に正孔注入層及び正孔輸送層が順次積層形成されるものであってもよい。
【0030】
また、本実施形態は、第一の発光層52と第二の発光層53のホスト材は単一材料としたが、複数の材料より構成するものであってもよい。
【0031】
また、本実施形態は、電子輸送層54が単一層にて構成されるものであったが、複数の層で構成されるものであってもよい。
【0032】
また、本実施形態は、有機層5が第一の発光層52、第二の発光層53の2層で構成されているが、1層で単色発光する素子構成であってもよい。
【0033】
これより、本発明の有機EL素子100の製造方法における第一工程と第二工程の説明と、本発明の第二工程を実施したあとの相対輝度,電圧変化を測定した実施例1乃至13および比較例1について詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
(第一工程)
透明電極1は、ITOを80nmを形成した後、正孔注入輸送層51として、HT1を30nm形成する。
第一の発光層52は、ホスト材52cとして、EM1(I
p=5.9eV、Ea=2.9eV、μ
e=3×10
−3cm
2/V・s、μ
h=2×10
−3cm
2/V・s、T
g=130℃)を使用し、第一のドーパント52aとして橙色のドーパントAD1(Eg=2.0eV、Ip=5.2eV)、正孔輸送材52bとして、HT1(T
g=132℃、I
p=5.4eV、μ
h=4×10
−4cm
2/V・s)を使用し、EM1:AD1:HT1を6:1.2:6の比率で第一の発光層52を形成する。
【0035】
第二の発光層53は、ホスト材53cとして、EM1を使用し、第二のドーパント53aとして、ブルーグリーンドーパントBD1(E
g=2.7eV、I
p=5.6eV、T
g=200℃)、正孔輸送材53bとして、HT1を使用し、EM1:BG1:HT1を20:1.2:10で第二の発光層53を形成する。
電子輸送層54として、ET1(I
p=5.8eV、E
a=3.0eV、μ
e=5×10
−6cm
2/V・s、T
g=176℃)を10nm、電子注入層55として、LiFを1nm形成し、陰極6としてAlを100nm形成する。
【0036】
得られる有機EL素子の特性は、ピーク輝度L
p=3000cd/m
2で、駆動電圧V
0=5.13V、電流効率L/J
0=10.32cd/Aで、素子容量C
0=1.306nF(面積;2×2mm)であった。
【0037】
(第二工程)
第一工程により形成された有機EL素子を30℃の環境下で逆バイアス電界2.14×10
6V/cmを1時間かけると、素子容量C
1=1.307nF(容量比C
1/C
0=1.001(0.1%素子容量増加))となり、駆動電圧V
1=5.1V(駆動電圧比V1/V
0=0.98)、L/J
1=13.03cd/A(L1J
0/L
0J
1=1.02)となる。
【0038】
以下、同様に第二工程を実施した有機EL素子(実施例1乃至13および比較例1)の電圧変化、電流効率変化の測定結果を表1に整理した。
【表1】
【0039】
図3、4は上記表1の結果をグラフに表したものであり、
図3は、実施例1乃至13及び比較例1の有機EL素子を輝度3000cd/m
2で発光させ、電圧変化V/V
0と電流効率変化L/L
0を測定したグラフである。素子容量の増加(相対容量C/C
0が1以上)に基づき、電圧変化V/V
0は減少し、電流効率変化L/L
0は増加した。
図4は、実施例1乃至13および比較例1の有機EL素子を高輝度(32000cd/m
2)で駆動させた際の電圧変化V/V
0と電流効率変化L/L
0を測定したグラフであり、通常駆動(輝度3000cd/m
2)の時と同様の結果が得られた。
よって、第一工程で形成された有機EL素子100を、材料や構造を変更することなく、本発明のように第二工程の実施により素子容量を増加させることで、有機EL素子の駆動電圧を低く抑え、電流効率を容易に向上させることができる。
【0040】
低電圧駆動においては電圧変化が5%以上減少し、電流効率向上においては電流効率変化が10%以上増加することが望まれるので、実施例の有機EL素子の構成においては、素子容量が1.4%以上増加させることが好ましい。また、比較例1のように素子容量を3.4%まで増加させると、電圧変化V/V
0は1.3、電流効率変化L/L
0は0.53のように駆動電圧が上昇し、電流効率が低下する。これら素子容量の調整は、有機EL素子の材料や構成などにより最適化を図る必要がある。
【0041】
つづいて、同様に第二工程を実施した有機EL素子の高寿命について、実施例14乃至17及び比較例2、3を用いて説明する。
【0042】
実施例14は、実施例1の第一工程により形成された有機EL素子を110℃の環境下で逆バイアス電界2.14×106V/cmを1時間かけると、容量比C
1/C
0=1.025(2.5%素子容量増加))となり、この処理を施した素子を初期輝度3000cd/m
2で直流電流駆動したときのLT95(初期輝度より5%輝度低下するまでの時間)は、170時間であり、150時間駆動後の有機EL素子の相対輝度L/L0は0.95であり、駆動電圧の上昇値ΔVは0.12Vであった。
【0043】
以下、同様に第二工程を実施した有機EL素子(実施例14乃至17及び比較例2、3)の輝度寿命,150時間駆動後の相対輝度,電圧変化の測定結果を表2に整理した。
【表2】
【0044】
図5乃至7は上記表2の結果をグラフに表したものであり、
図5は、実施例14乃至17及び比較例2,3の有機EL素子の輝度寿命を測定したグラフである。実施例14乃至17は、比較例2,3と比べ、輝度寿命(LT95)が長くなっていることがわかる。
図6は、実施例14乃至17及び比較例2,3の有機EL素子の150時間駆動後の相対輝度を測定したグラフである。実施例14乃至17は、比較例2,3と比べ、150時間駆動後の相対輝度は大きくなっている。
図7は、実施例14乃至17及び比較例2,3の有機EL素子の150時間駆動後の電圧変化を測定したグラフである。実施例14乃至17は、比較例2,3と比べ、150時間駆動後の電圧変化が小さくなっている。
よって、第一工程で形成された有機EL素子を、材料や構造を変更することなく、本発明のように第二工程の実施により素子容量を増加させることで、有機EL素子100の寿命を容易に向上させることができる。
【0045】
150時間経過後の電圧変化を少なくするため、実施例の有機EL素子の構成においては、素子相対容量1.5%以上増加させることが好ましいが、これら素子容量の調整は、有機EL素子の材料や構成などにより最適化を図る必要がある。