【実施例】
【0038】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0039】
参考例1(アクリル基を有するポリ乳酸の製造)
2-ヒドロキシエチルアクリレート CH
2=CHCOOCH
2CH
2OH 16.2g(140ミリモル)とラクチド(武蔵野化学研究所製)60.3g(418ミリモル)との混合物にジオクチル錫 0.810g(2.0ミリモル)を加え、100℃で3時間攪拌した後、冷却した。反応混合物をアセトン30mlに溶解し、その溶液を500mlのヘキサン中に滴下し、ヘキサン不溶部とヘキサン可溶部とに分離した。ヘキサン不溶部を再度アセトンに溶解し、ヘキサンを用いた再沈殿法により精製して、褐色の粘性液体72.8g(収率95%)を得た。
【0040】
反応生成物は、NMR分析により、アクリル基を有するポリ乳酸(n=6)であることが確認された。
1HNMR(CDCl
3、20℃) δ:6.4 (d)
6.1 (m)
5.9 (d)
5.3〜5.1 (m)
4.5〜4.2 (m)
2.8〜2.3 (br)
1.7〜1.4 (m)
【0041】
参考例2(メルカプト基を有するポリ乳酸の製造)
(1) 2,2′-ジヒドロキシエチルジスルフィド HOCH
2CH
2SSCH
2CH
2OH 7.17g(46.5ミリモル)とラクチド40.2g(279ミリモル)との混合物にジオクチル錫 0.880g(2.2ミリモル)を加え、100℃で3時間攪拌した後、冷却した。反応混合物をアセトン30mlに溶解し、その溶液を500mlのヘキサン中に滴下し、ヘキサン不溶部とヘキサン可溶部とに分離した。ヘキサン不溶部を再度アセトンに溶解し、ヘキサンを用いた再沈殿法により精製して、褐色の粘性液体42.8g(収率90%)を得た。
【0042】
反応生成物は、NMR分析により、ジスルフィド基を有するポリ乳酸(n=6)であることが確認された。
1HNMR(CDCl
3、20℃) δ:5.3〜5.1 (m)
4.5〜4.3 (m)
2.9 (m)
2.2〜1.7 (br)
1.6〜1.4 (m)
【0043】
(2) 上記(1)で得られたジスルフィド基を有するポリ乳酸31.9g(31.3ミリモル)を酢酸エチル 50mlに溶解させ、この酢酸エチル溶液にトリオクチルホスフィン P(C
8H
17)
3 11.6g(31.3ミリモル)を加え、室温条件下で1日攪拌した。その反応溶液を500mlのヘキサン中に滴下し、ヘキサン不溶部とヘキサン可溶部とに分離した。ヘキサン不溶部を再度アセトンに溶解し、ヘキサンを用いた再沈殿法により精製して、褐色の粘性液体28.7g(収率91%)を得た。
【0044】
反応生成物は、NMR分析により、メルカプト基を有するポリ乳酸(n=6)であることが確認された。
1HNMR(CDCl
3、20℃) δ:5.3〜5.1 (m)
4.3 (m)
4.2 (m)
2.8 (m)
2.2〜1.7 (br)
1.6〜1.4 (m)
【0045】
参考例3(アクリル基を有するポリ乳酸を用いたSBRの変性)
SBR(日本ゼオン製品A1326)2.35gをトルエン40mlに溶解させた溶液に、実施例1で得られたアクリル基含有ポリ乳酸2.74gを加え、還流条件下で1日攪拌した後、冷却した。反応混合物溶液を300mlのメタノール中に滴下し、メタノール不溶部とメタノール可溶部とに分離した。メタノール不溶部を再度トルエンに溶解し、アセトンを用いた再沈殿法により精製し、白色固体状の反応生成物2.27gを得た。
【0046】
反応生成物は、NMR分析により、SBRの二重結合にアクリル基含有ポリ乳酸の末端ビニル基が付加したSBR変性物であることが確認された。
1HNMR(CDCl
3、20℃) δ:7.3〜7.2 (br)
7.2〜6.9 (br)
5.7〜5.1 (br)
5.0〜4.9 (br)
4.4〜4.2 (br)
2.7〜2.4 (br)
2.4〜0.8 (br)
【0047】
参考例4(メルカプト基を有するポリ乳酸を用いたSBRの変性)
SBR(日本ゼオン製品A1326)2.70gをトルエン40mlに溶解させた溶液に、実施例2で得られたメルカプト基含有ポリ乳酸3.26gを加え、80℃で1日攪拌した後、冷却した。反応混合物溶液を300mlのメタノール中に滴下し、メタノール不溶部とメタノール可溶部とに分離した。メタノール不溶部を再度トルエンに溶解し、メタノールを用いた再沈殿法により精製し、白色固体状の反応生成物4.42gを得た。
【0048】
反応生成物は、NMR分析により、SBRの二重結合にメルカプト基含有ポリ乳酸の末端メルカプト基が付加したSBR変性物であることが確認された。
1HNMR(CDCl
3、20℃) δ:7.3〜7.2 (br)
7.2〜6.9 (br)
5.7〜5.1 (br)
5.0〜4.0 (br)
4.5〜4.1 (br)
2.8〜2.4 (br)
2.3〜0.6 (br)
【0049】
実施例1
SBR(日本ゼオン製品Nipol NS460;37.5重量部油展) 96.3重量部
ブタジエンゴム(日本ゼオン製品BR1220) 30.0 〃
シリカ(エボニックデグッサ社製品Ultrasil 7000GR) (所定量)
カーボンブラック(東海カーボン製品シースト6;N
2SA 119m
2/g) (所定量)
シランカップリング剤(エボニックデグッサ社製品Si69) (所定量)
参考例1で得られたアクリル基を有するポリ乳酸 (所定量)
酸化亜鉛(正同化学工業製品酸化亜鉛3種) 3 〃
ステアリン酸(日本油脂製品ビーズステアリン酸) 2 〃
老化防止剤(フレキシス社製品6PPD) 3 〃
アロマオイル(昭和シェル製品エキストラクト4号S) 10 〃
硫黄(鶴見化学工業製品金華印油入微粉硫黄) 2 〃
加硫促進剤(大内新興化学工業製品ノクセラーCZ-G) 2 〃
加硫促進剤(住友化学工業製品ソクシノールD-G) 1 〃
【0050】
以上の各成分の内、硫黄および加硫促進剤を除く各成分を7L密閉式バンバリーミキサを用いて5分間混合し、ゴム混合物を混合機外に放出させて室温迄冷却させた後、同じバンバリーミキサを用いて硫黄および加硫促進剤を配合し、混合した。得られたゴム組成物を、150℃で30分間プレス加硫して目的とする試験片を得た。
【0051】
このゴム組成物および試験片について、次の各項目の測定を行い、変性ポリ乳酸を配合しないNo.1を100とする指数で示した。
粘度:JIS K6300に準拠し、100℃で測定
指数が小さい程、低粘度であることを示している
ペイン効果:未加硫ゴム組成物を用いて160℃で20分間の加硫を行い、歪0.28〜
30.0%迄の歪せん断応力G′を測定し、その差を指数表示した
指数が大きい程、シリカ分散性が良好であることを示している
20℃硬度:JIS K6253に準拠し、20℃で測定
指数が大きい程、硬度が高いことを示している
tanδ:岩本製作所製粘弾性スペクトロメーターを用い、伸長変形歪率10±2%
、振動数20Hz、温度0℃および60℃の条件下で測定
指数が高い程、発熱性の指数となるtanδが高いことを示している
【0052】
以上の測定結果は、所定量用いられた各成分量(単位:重量部)と共に、次の表1に示される。
表1
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6
〔ゴム組成物成分〕
シリカ 70 70 70 70 64 62
カーボンブラック 5 5 5 5 5 5
シランカップリング剤 7.0 7.0 7.0 7.0 6.4 6.2
アクリル基含有ポリ乳酸 − 2.0 5.0 15.0 2.0 5.0
〔測定結果〕
粘度 100 95 90 86 90 83
ペイン効果 100 93 88 84 91 84
20℃硬度 100 104 108 110 101 105
tanδ
0℃ 100 101 102 104 105 105
60℃ 100 99 98 103 94 92
【0053】
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1) 実施例であるNo.2〜3の結果から、アクリル基を有するポリ乳酸を配合することにより、粘度、ペイン効果の低減、硬度アップが図られ、tanδは同等維持かやや良化傾向がみられ、すなわち加工性の改善が可能となることが分かる。
(2) 共に実施例であるNo.5〜6とNo.2〜3の結果を対比することにより、シリカ配合量を減らすことで高硬度化、tanδ(60℃)の低下が可能となり、すなわち加工性の改善、高硬度化、低発熱化が可能となることが分かる。
【0054】
実施例
2
SBR(Nipol NS460) 96.3重量部
ブタジエンゴム(BR1220) 30.0 〃
シリカ(Ultrasil 7000GR) (所定量)
カーボンブラック(シースト6) (所定量)
シランカップリング剤(Si69) (所定量)
参考例2で得られたメルカプト基を有するポリ乳酸 (所定量)
酸化亜鉛(酸化亜鉛3種) 3 〃
ステアリン酸(ビーズステアリン酸) 2 〃
老化防止剤(6PPD) 3 〃
アロマオイル(エキストラクト4号S) 10 〃
硫黄(金華印油入微粉硫黄) 2 〃
加硫促進剤(ノクセラーCZ-G) 2 〃
加硫促進剤(ソクシノールD-G) 1 〃
【0055】
以上の各成分を用い、実施例
1と同様にして、加硫および測定が行われた。得られた測定結果は、所定量用いられた各成分量(単位:重量部)と共に、次の表2に示される。なお、測定項目として、次の測定項目が追加された。
ムーニースコーチ:JIS K6300に準拠し、120℃で測定
指数が大きい程、スコーチが遅いことを示している
ランボーン摩耗:岩本製作所製ランボーン摩耗試験機を用い、荷重5kg(49N)、
スリップ率25%、時間4分間、室温という条件下で測定し、摩
耗減量を指数として示した
指数が大きい程、耐摩耗性が良好であることを示している
表2
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5
〔ゴム組成物成分〕
シリカ 80 80 80 80 75
カーボンブラック 5 5 5 5 5
シランカップリング剤 8.0 8.0 8.0 8.0 7.5
メルカプト基含有ポリ乳酸 − 2.0 5.0 15.0 5.0
〔測定結果〕
粘度 100 89 84 80 82
ムーニースコーチ 100 130 140 155 140
ペイン効果 100 73 70 68 68
20℃硬度 100 100 101 102 100
tanδ(0℃) 100 106 108 110 110
ランボーン摩耗 100 127 130 129 128
【0056】
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1) 実施例であるNo.2〜3の結果から、メルカプト基を有するポリ乳酸を配合することにより、粘度、ペイン効果の低減、スコーチ性の改善、低温tanδの値のアップが図られ、ランボーン摩耗も良好となることが分かる。
(2) 共に実施例であるNo.5とNo.3の結果を対比することにより、シリカ配合量を減らすことで、硬度が同等でさらに加工性を良化できることが分かる。
【0057】
実施例
3
SBR(Nipol NS460) (所定量)
SBR(日本ゼオン製品Nipol NS616) (所定量)
シリカ(Ultrasil 7000GR) (所定量)
カーボンブラック(シースト6) 5重量部
シランカップリング剤(Si69) (所定量)
参考例4で得られたメルカプト基を有するポリ乳酸で (所定量)
変性されたSBR
酸化亜鉛(酸化亜鉛3種) 3 〃
ステアリン酸(ビーズステアリン酸) 2 〃
老化防止剤(6PPD) 3 〃
アロマオイル(エキストラクト4号S) (所定量)
硫黄(金華印油入微粉硫黄) 2 〃
加硫促進剤(ノクセラーCZ-G) 2 〃
加硫促進剤(ソクシノールD-G) 1 〃
【0058】
以上の各成分を用い、実施例
1と同様にして、加硫および測定が行われた。得られた測定結果は、所定量用いられた各成分量(単位:重量部)と共に、次の表3に示される。なお、測定項目として、次の測定項目が追加された。
破断時伸び:JIS K6251に準拠し、室温条件下で引張試験を行い、破断時の伸び
を求めた
指数が大きい程、破断時の伸びが高いことを示している
表3
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6
〔ゴム組成物成分〕
SBR(Nipol NS460) 110.0 96.3 110.0 96.3 96.3 110.0
SBR(Nipol NS616) 20.0 30.0 − − − 20.0
ポリ乳酸変性SBR − − 20.0 30.0 30.0 −
シリカ 65 65 65 65 60 60
シランカップリング剤 6.5 6.5 6.5 6.5 6.0 6.0
アロマオイル 18 8 18 8 8 18
〔測定結果〕
20℃硬度 100 100 102 102 100 95
破断時伸び 100 85 106 105 103 96
tanδ
0℃ 100 104 100 105 106 102
60℃ 100 105 98 99 94 98
【0059】
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1) 実施例であるNo.3〜4の結果から、メルカプト基を有するポリ乳酸で変性されたSBRを配合することで、硬度アップ、破断時伸びの向上、tanδ(60℃)の低下が図られ、変性SBRを増量しても破断時伸びが確保されることが分かる。
(2) 共に実施例であるNo.5とNo.4の結果を対比することにより、シリカ配合量を減らすことでさらにtanδ(60℃)の低下が可能となることが分かる。
(3) 比較例であるNo.2の結果から、未変性SBRを増量すると破断時伸びが低下することが分かる。