(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行車体(9)に設けられ、圃場に苗を植え付ける植付装置(14)と、苗の植え付け位置へ肥料を供給する施肥装置(16)と、走行操作レバー(38)の操作に応じて前記走行車体(9)の前進と後進との切換および速度を変更する無段式変速装置(33)と、前記無段式変速装置(33)を制御するサーボアクチュエーターと、前記走行操作レバー(38)の操作に応じて前記施肥装置(16)および前記サーボアクチュエーターを制御する制御部(50)とを備え、前記制御部(50)は、前記走行操作レバー(38)が前進に操作されると、前記施肥装置(16)を駆動し、所定時間経過後に、前記サーボアクチュエーターを駆動して車輪(10、11)および前記植付装置(14)を駆動させ、
前記植付装置(14)が植え付ける苗を供給する苗載せ台(1)への苗の補充作業を検知する苗補充検知部材(46)を備え、前記制御部(70)は、前記苗補充検知部材(46)がオンになったときには、前記苗補充検知部材(46)がオフになるまでの間は、前記走行操作レバー(38)の操作状態に関係なく前記サーボアクチュエーターによって前記無段式変速装置(33)を中立に制御させ、前記苗補充検知部材(46)がオフになる際に、前記走行操作レバー(38)が中立の状態でなければ、サーボアクチュエーターによって無段式変速装置(33)を中立状態に保つ制御をすることを特徴とする苗移植機。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0044】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の、走行車両を備える乗用型の8条植田植機8の側面図を示し、
図2は平面図を示している。
【0045】
なお、本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
【0046】
車体9の前後には走行車輪として左右一対の前輪10および後輪11が架設されている。車体9の前寄りの上部には操作ボックス12および操縦ハンドル13等を有する操縦装置が設置され、また、車体9の後方には昇降可能な苗植付部15が装備されている。
【0047】
また、車体9の後部には施肥装置16が設けられ、肥料タンク17に貯留する肥料を各条の繰出部18で所定量ずつ繰り出し、その繰出した肥料をブロワー19からの圧力風により各条の移送ホース20で苗植付部15に設けた吐出口21から圃場に吐出して施肥する構成となっている。
【0048】
操縦装置の後ろ側には、運転席22が設置され、運転席22の下側に田植機8の各部に回転動力を伝達するエンジン23が搭載されている。
【0049】
操縦ハンドル13は、操舵操作によりステアリングポスト内のステアリング軸からステアリングケース内を経て減速回転される出力軸、ピットマンアーム、および操舵ロット等を介して左右の前輪10を操向させ操舵する構成になっている。
【0050】
苗植付部15は、
図1に示すように、車体9の後部に昇降リンク機構25を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダー26の伸縮作動により昇降する構成であり、
図1に示す田植機8では、昇降用油圧シリンダー26の引き側で苗植付部15を上昇させる構成としている。操縦装置の左側に、苗植付部15を上昇および下降させるための植付昇降レバー27が設けられている。
【0051】
そして、苗植付部15には、左右に往復する苗載せ台1と、2条ごとで1組の苗植付装置14と、苗植付面を滑走しながら整地する左右のサイドフロート29と、中央位置のセンターフロート30を備えている。
【0052】
苗植付装置14の両側には、一株分の苗床を掻き取って圃場面に植え込む植込杆28を有する苗植付具4が2つずつ軸支された回転ケース44が回転可能に支持されている。
【0053】
また、苗載せ台1には、各条ごとに苗補充センサー46が設けられている。苗補充センサー46が、苗載せ台1上の苗によって押さえられなくなったことを検知すると、苗が無くなるまたは苗の補充がもうすぐ必要となることをブザーやランプによって報知する。
【0054】
エンジン23の回転動力は、エンジン出力プーリ31からベルト32を経由して油圧サーボ付き油圧式無段変速装置(HST)33の入力プーリ34に伝えられ、油圧ポンプが駆動され、循環する作動油によって駆動される油圧モーターの出力軸から変速動力がミッションケース36の入力軸に伝動される構成となっている。
【0055】
操作ボックス12には、HST33を変速操作する走行操作レバー38が配置され、この走行操作レバー38の前後方向の切換操作で前進と後進との切換が可能であって、走行速度も傾き度合の操作に応じて選択できる構成となっている。また、操作ボックス12には、作業者が各種の操作をするための作業者操作用スイッチ47も配置されている。
【0056】
ミッションケース36は、前輪10と後輪11とに分配して伝動する四輪駆動に構成すると共に、苗植付部15側に分配して伝動する構成を採っている。ミッションケース36から分配された動力は、作業伝動軸を介して車体9の後方に設けた植付クラッチ35に伝達され、それから植付伝動軸39によって苗植付装置14へ伝達される。
【0057】
なお、施肥装置16は、ミッションケース36から分配される動力ではなく、HST33とは別にエンジン23からの回転動力によって施肥駆動回転軸が駆動され、その施肥駆動回転軸の駆動によって繰出部18を作動させる。
【0058】
そして、本実施の形態1の田植機8は、
図1および
図2に示すように、各サイドフロート29、センターフロート30の前側に整地ローター40を軸架して整地する構成としているが、この場合の伝動機構は、後輪11の伝動ケース41から動力取出軸42を介して伝動する構成としている。
【0059】
そして、苗載せ台1は、
図1および
図2に示すように、各植付条の台の下面に1条分の左右の苗送りベルト43、43を並列状に配置して苗送り装置3を構成し、その上に載置されたマット苗を、前側の苗取出し口2の方向に送り出す構成となっている。そして、回転ケース44の回転に伴って苗植付具4が植付軌跡を描きながら回動し苗取出し口2に突入して通過するときに、マット苗を掻き取って係止し、そのまま圃場面まで回動して植え付ける構成となっている。
【0060】
また、運転席22の横には、走行速度に対して、苗植付具4を駆動する回転ケース44の回転速度を変更するための植付株間レバー24を設けている。
【0061】
また、車体9の前方の両側には、車体9に固定された支持フレームに支持される予備苗載台45を備えている。
【0062】
図3(a)に、走行操作レバー38の操作位置を説明するための側面図を示し、
図3(b)に走行操作レバー38を上から見た図を示す。
【0063】
図4に、植付昇降レバー27の操作位置を説明するための側面図を示す。
【0064】
図5に、本実施の形態1の田植機8の駆動系統を示す機能ブロック図を示す。
図5では、動力の伝達経路を実線で示し、制御系統の伝達経路を破線で示している。
【0065】
図3(a)および
図3(b)の示すように、走行操作レバー38は、変速中立位置Nにおいて、前進域Fと後進域Rとで行き来自在になっている。
【0066】
HST33の斜板の傾斜角度を変更するトラニオン軸は、サーボモーターによって回動される。コントローラー50は、走行操作レバー38の操作位置に応じて、そのサーボモーターを制御することにより、トラニオン軸の回動角度(トラニオン開度と呼ぶ)を変更する。
【0067】
なお、田植機8が、本発明の苗移植機の一例にあたる。また、トラニオン軸を回動させるサーボモーターが、本発明のサーボアクチュエーターの一例にあたる。また、コントローラー50が、本発明の制御部の一例にあたる。
【0068】
コントローラー50は、走行操作レバー38が中立位置Nのときには、HST33の斜板が中立の位置となるトラニオン開度となるようにサーボモーターを制御し、走行操作レバー38が前進域Fのときには、機体が前進する方向に前輪10および後輪11が回転する向きとなるトラニオン開度となるようにサーボモーターを制御し、走行操作レバー38が後進域Rのときには、機体が後退する方向に前輪10および後輪11が回転する向きとなるトラニオン開度となるようにサーボモーターを制御する。
【0069】
また、コントローラー50は、前進域Fのときに、走行操作レバー38が中立位置Nからより離れた位置に操作されるほど、より増速側のトラニオン開度となるようにサーボモーターを制御する。同様に、後進域Rのときにも、走行操作レバー38が中立位置Nからより離れた位置に操作されるほど、より増速側のトラニオン開度となるようにサーボモーターを制御する。
【0070】
走行操作レバー38は、例えば、前進域Fでは8段階の位置で、後進域Rでは3段階の位置で駐止できるようになっている。なお、走行操作レバー38は、所定の段階的な位置で駐止されるのではなく、前進域Fおよび後進域Rの範囲内の任意の位置で駐止できるような構成としてもよい。
【0071】
図5に示すように、施肥装置16の繰出部18およびブロワー19は、エンジン23からの回転動力が施肥クラッチ51を介して施肥駆動回転軸に伝達され、施肥駆動回転軸によって駆動される。施肥クラッチ51は、電子制御されるクラッチであり、コントローラー50によって制御される。
【0072】
図4に示すように、植付昇降レバー27を、昇降停止の中立状態である「停止」位置から、前方の「上昇」位置へ操作すると、車体9後部に備えた苗植付部15が上昇し、「停止」位置から後方の「下降」位置へ操作すると、苗植付部15が圃場に苗を植え付ける位置まで下降する。苗植付部15を、「下降」位置からさらに「植付」位置まで操作すると、植付クラッチ35が入り、HST33から出力される動力が苗植付装置14に伝達される状態となる。植付昇降レバー27を、「植付」位置から「下降」位置へ戻すと、植付クラッチ35が切れ、HST33から出力される動力が苗植付装置14へ伝達されない状態となる。
【0073】
次に、本実施の形態1の田植機8の、苗植え付け開始時の動作について説明する。
【0074】
図6に、本実施の形態1の田植機8における、苗植え付け開始時の動作フローを示す。
【0075】
まず、苗植え付けを開始する前に、施肥するための肥料を肥料タンク17内に入れておく。そして、運転席22に座っている運転者は、植付昇降レバー27を「停止」位置から、「下降」、「植付」位置へと操作する。
【0076】
植付昇降レバー27が「植付」位置へ操作されると、植付クラッチ35が入る。植付クラッチ35が入ったことが検出される(ステップS10)と、植付クラッチ35が入ったことが操作ボックス12に表示される。
【0077】
運転者は、植付クラッチ35が入ったことを確認すると、走行操作レバー38を、中立位置Nから前進域Fへと操作する(ステップS11)。
【0078】
コントローラー50は、植付クラッチ35が入り、かつ走行操作レバー38が前進域Fへ操作されると、施肥クラッチ51を入れ、エンジン23の回転動力によって駆動される施肥駆動回転軸の回転動力を伝達させて施肥装置16の動作を開始させる(ステップS12)。施肥クラッチ51が入ると、施肥駆動回転軸に駆動されて繰出部18およびブロワー19が動作を開始し、肥料タンク17内に蓄えられている肥料が移送ホース20を通じて吐出口21へと移送されていく。
【0079】
コントローラー50は、施肥クラッチ51を入れたときからの時間を計測し(ステップS13)、所定時間経過するまでは、HST33のトリニオン軸を回動させるサーボモーターを停止させておく(ステップS17)。ここで所定時間とは、繰出部18が回転開始してから肥料タンク17内の肥料が移送ホース20を通じて吐出口21に至るまでに要する推定時間であり、予め設定されている時間である。
【0080】
コントローラー50は、施肥クラッチ51を入れたときから所定時間経過すると、走行操作レバー38の操作位置に応じて、サーボモーターを作動させる(ステップS14)。サーボモーターが作動することにより、機体が前進する向きにトラニオン開度が増大する(ステップS15)。
【0081】
トラニオン開度が増大すると、HST33からの動力によって前輪10および後輪11が回転し機体が前進する(ステップS16)と同時に、HST33からの動力によって苗植付装置14も作動開始し、苗植付動作が開始する。
【0082】
本実施の形態1の田植機8では、コントローラー50がこのように制御することにより、苗植え付け開始時において、肥料タンク17内に蓄えられていた肥料が吐出口21に到達したときに、機体が前進し始めるとともに、苗植付装置14による苗の植え付け動作が開始される。
【0083】
したがって、苗の植え付け開始とともに吐出口21から肥料も圃場へ吐出され始めるので、無施肥区間を生じさせることなく、苗の植え付けを開始することができる。施肥ムラなく苗の植え付けができるので、生育不良を防止できる。
【0084】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の、走行車両を備える乗用型の8条植田植機の側面図および平面図は、実施の形態1の田植機8と同様であり、
図1および
図2に示す通りである。
【0085】
本実施の形態2の田植機は、施肥装置16へ駆動力を伝達する構成が、実施の形態1の田植機8と異なる。
【0086】
図7に、本実施の形態2の田植機の駆動系統を示す機能ブロック図を示す。
図7では、動力の伝達経路を実線で示し、制御系統の伝達経路を破線で示している。
【0087】
実施の形態1では、HST33とは別にエンジン23からの回転動力によって施肥駆動回転軸を回転させて施肥装置16を駆動する構成としたのに対し、本実施の形態2の田植機では、施肥装置16の駆動力を、苗植付装置14の駆動力と同様に、HST33から出力されミッションケース36で分配された動力を利用する構成としている。
【0088】
したがって、本実施の形態2の植付昇降レバー27も、
図4のように操作されるが、「下降」位置からさらに「植付」位置まで操作した際に、植付クラッチ35が入るとともに施肥クラッチ61も入り、HST33から出力される動力が苗植付装置14と施肥装置16へ伝達される状態となる。そして、植付昇降レバー27を、「植付」位置から「下降」位置へ戻すと、植付クラッチ35および施肥クラッチ61が切れ、HST33から出力される動力が苗植付装置14へも施肥装置16へも伝達されない状態となる。
【0089】
本実施の形態2では、施肥駆動回転軸の回転数を検知する回転センサー62と、肥料タンク17内に蓄えられている肥料の量が減少したことを検知する肥料切れセンサー63を備えている。
【0090】
そして、本実施の形態2のコントローラー60は、走行操作レバー38の操作位置、回転センサー62の検知結果および肥料切れセンサー63の検知結果に応じて、HST33のサーボモーターを制御することにより、トラニオン軸の回動角度を変更する。
【0091】
なお、コントローラー60が、本発明の制御部の一例にあたる。また、肥料タンク17が、本発明の肥料ホッパーの一例にあたり、施肥駆動回転軸が、本発明の駆動回転軸の一例にあたる。また、回転センサー62が、本発明の回転検知部の一例にあたり、肥料切れセンサー63が、本発明の残肥料検知部の一例にあたる。
【0092】
本実施の形態2の田植機は、施肥装置16の異常振動による植え付け不良を防止できる構成としたものであり、その動作について説明する。
【0093】
図8に、本実施の形態2の田植機における、施肥装置16の異常振動による植え付け不良を防止するための動作フローを示す。
【0094】
植付昇降レバー27が「植付」位置へ操作され、走行操作レバー38が中立位置Nから前進域Fへと操作されると、コントローラー60は、走行操作レバー38の操作位置に応じて、サーボモーターを作動させる。サーボモーターが作動することにより、機体が前進するとともに、苗植付装置14および施肥装置16が作動する(ステップS20)。
【0095】
回転センサー62は、施肥装置16を駆動している施肥駆動回転軸の回転数を検知し(ステップS21)、その検知結果をコントローラー60へ送信する。
【0096】
コントローラー60は、回転センサー62から受信した検知結果により、施肥駆動回転軸の回転数を判定する(ステップS22)。コントローラー60は、施肥駆動回転軸の回転数が所定の回転数以内であれば、施肥装置16をそのまま継続して動作させる(ステップS26)。
【0097】
一方、施肥駆動回転軸の回転数が所定の回転数を超える場合には、サーボモーターを作動させる(ステップS23)。このとき、コントローラー60は、機体が減速する向きにトラニオン開度が減少するようにサーボモーターを制御する(ステップS24)。
【0098】
そして、前輪10および後輪11の回転速度が減速し、機体の走行速度が遅くなる(ステップS25)。そして、機体の走行速度が遅くなるとともに、施肥装置16を駆動する施肥駆動回転軸の回転数も下がる。
【0099】
なお、ここでは、コントローラー60が、施肥駆動回転軸の回転数に応じて、トラニオン開度が減少するようにサーボモーターを制御する例について説明したが、条件により、施肥駆動回転軸の回転数に応じて、機体の速度が速くなる向きにトラニオン開度が増大するようにサーボモーターを制御してもよい。
【0100】
本実施の形態2の田植機は、HSTから出力される動力を分配して苗植付装置14および施肥装置16の駆動に利用しているので、苗植付装置14を駆動する植付伝動軸39の回転数と、施肥装置16を駆動する施肥駆動回転軸の回転数は、いずれも機体の走行速度に比例することになる。
【0101】
したがって、エンジン23の回転数が上がると施肥駆動回転軸の回転数も上がる。施肥駆動回転軸の回転数が一定の回転数を超えると振動が大きくなり、その異常振動によって植え付け不良が生じてしまう。
【0102】
本実施の形態2のコントローラー60は、上記のように制御することにより、施肥駆動回転軸の回転数を異常振動を発生する回転数まで上がらないように抑制することができ、異常振動による植え付け不良を防止することができる。したがって、上記における所定の回転数として、異常振動が生じる回転数よりも小さい値を設定しておけばよい。
【0103】
本実施の形態2の田植機は、肥料タンク17内の肥料切れを防止できる構成としたものであり、その動作について説明する。
【0104】
図9に、本実施の形態2の田植機における、肥料タンク17内の肥料切れを防止するための動作フローを示す。
【0105】
植付昇降レバー27が「植付」位置へ操作され、走行操作レバー38が中立位置Nから前進域Fへと操作されると、コントローラー60は、走行操作レバー38の操作位置に応じて、サーボモーターを作動させる。サーボモーターが作動することにより、機体が前進するとともに、苗植付装置14および施肥装置16が作動する(ステップS30)。
【0106】
肥料切れセンサー63は、肥料タンク17内の肥料が無くなったまたは所定量以下に減少したことを検知すると、その検知結果をコントローラー60へ送信する(ステップS31)。
【0107】
コントローラー60は、肥料切れセンサー63から肥料切れの検知結果を受信したか判定する(ステップS32)。コントローラー60は、肥料切れセンサー63から肥料切れの検知結果を受信していない場合には、施肥装置16をそのまま継続して動作させる(ステップS36)。
【0108】
一方、肥料切れセンサー63から肥料切れの検知結果を受信した場合には、サーボモーターを作動させる(ステップS33)。このとき、コントローラー60は、機体が減速する向きに、または機体を停止させる向きにトラニオン開度が減少するようにサーボモーターを制御する(ステップS34)。
【0109】
そして、前輪10および後輪11の回転速度が減速または停止し、機体の走行速度が遅くなる、または機体が停止する(ステップS35)。
【0110】
肥料タンク17内の肥料が無くなったまま植え付け作業を継続していると、施肥されずに苗が植え付けられる無施肥区間が生じてしまう。
【0111】
本実施の形態2のコントローラー60は、上記のように制御することにより、肥料の補給忘れを防止でき、無施肥区間の発生を防止することができる。
【0112】
また、植付株間レバー24の位置を検出できるようにし、その検出結果に応じて、コントローラー60がサーボモーターを制御するようにしてもよい。
【0113】
例えば、植付株間レバー24の近傍にリミットスイッチを設け、植付株間レバー24が「疎植」に操作されたことを検出できるようにする。
【0114】
そして、植付株間レバー24が「疎植」に操作されたことを検出した場合、コントローラー60が、走行操作レバー38の操作位置に対するトラニオン開度を減少させるようにサーボモーターを制御してもよい。
【0115】
なお、植付株間レバー24が、本発明の株間切替部材の一例にあたり、リミットスイッチが、本発明の植付間隔検知部の一例にあたる。また、植付株間レバー24を「疎植」に操作することが、本発明の、苗の植え付け間隔が広くなるように調節することの一例にあたる。
【0116】
図10は、疎植時にトラニオン開度を減少させる制御例の、走行操作レバー38の位置と車速の関係を示す図である。
【0117】
図10では、通常時における走行操作レバー38の位置と車速の関係を実線で示し、植付株間レバー24が「疎植」に操作されたときのこれらの関係を破線で示している。
【0118】
図10中の「走行操作レバー角度」とは、走行操作レバー38の中立位置Nからの角度を示しており、「MAX」とは、中立位置Nから最も離れた位置にあるとき、つまり
図3(b)において走行操作レバー38が前進域Fの最上位置にある場合を示している。
【0119】
図10に示す例では、通常時は、走行操作レバー38を最速の位置にしたときの車速が最大1.8[m/s]であるのに対し、植付株間レバー24が「疎植」に操作されているときには、走行操作レバー38を最速の位置にしたときの車速を最大1.2[m/s]となるようにし、走行操作レバー38のその他の位置でも同様に、通常時よりも疎植時の速度が遅くなるようにトラニオン開度を変更している。
【0120】
一般的に苗移植機は、高速の苗植え付けが適切にできるように機体の走行速度およびその他の動作速度が調整されているため、他の部分の動作速度を変更せずに苗植付装置14の動作速度のみを低下させて疎植を行なうと、植え付け精度が低下してしまう。
【0121】
そこで、上記のように、コントローラー60によって、疎植時にトラニオン開度を減少させるように制御することにより、植え付け精度よく疎植を行なうことができる。
【0122】
図10に示すように、走行操作レバー38の各操作位置において、通常時よりも比例的に車速が低下するように制御することにより、運転者が、通常時と違和感なく疎植時にも運転することができる。
【0123】
さらに、植付クラッチ35の入力軸の回転数を検知できるようにし、その検知結果に応じて、コントローラー60がサーボモーターを制御するようにしてもよい。
【0124】
図11に、植付クラッチ35の入力軸の回転数を検知する回転センサーを設けた場合の要部を示す。
【0125】
回転センサー64は、植付クラッチ35の入力軸の回転数を検知し、その検知結果をコントローラー60へ送信する。
【0126】
コントローラー60は、植付株間レバー24が「疎植」に操作されている場合に、植付クラッチ35の入力軸の回転数が所定の回転数を超えている場合には、植付クラッチ35の入力軸の回転数がその所定の回転数を超えないように、サーボモーターを制御してトラニオン開度を減少させる。
【0127】
苗移植機は、疎植を行なう場合、苗植付装置14の動作が速すぎると、シャクリ現象が発生し、苗の植え付け精度が低下してしまう。
【0128】
そこで、シャクリ現象が発生しない回転数を上記の所定の回転数に設定しておけば、コントローラー60が上記のようにサーボモーターを制御することにより、シャクリ現象が発生しない範囲での最高速度で植え付けを行なうことができる。
【0129】
上記のシャクリ現象とは、高速で植付作業を行う際に、苗植付装置14の伝動ギア機構(図示省略)の回転が走行速度に連動しなくなり、苗植付装置14の回転が停止したり、その場で振動することをいい、この現象が発生すると、苗を適切なタイミングで植え付けられなくなることがある。
【0130】
なお、ここでは、回転センサー64によって植付クラッチ35の入力軸の回転数を検知することとしたが、植付クラッチ35の出力軸の回転数を検知するようにして、その検知結果に応じてサーボモーターを制御させるようにしても同様の効果が得られる。
【0131】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の、走行車両を備える乗用型の8条植田植機の側面図および平面図は、実施の形態1の田植機8と同様であり、
図1および
図2に示す通りである。
【0132】
図12に、本実施の形態3の田植機の駆動系統を示す機能ブロック図を示す。
図12では、動力の伝達経路を実線で示し、制御系統の伝達経路を破線で示している。
【0133】
図7に示した実施の形態2の構成と比較して、水平センサー71および回転センサー72を備えた点と、コントローラー70が、エンジン23の回転数も制御できる点が異なる。
【0134】
なお、コントローラー70が、本発明の制御部の一例にあたる。また、水平センサー71が、本発明の傾斜検知部の一例にあたり、回転センサー72が、本発明の車輪回転検知部の一例にあたる。
【0135】
水平センサー71は、車体9の前後方向の傾斜を検知するセンサーであり、検知結果をコントローラー70へ送信する。
【0136】
本実施の形態3のコントローラー70は、走行操作レバー38の操作位置および水平センサー71の検知結果に応じて、HST33のサーボモーターを制御することにより、トラニオン軸の回動角度を変更するとともに、エンジン23の回転数を制御するモーターの回転を制御する。
【0137】
コントローラー70は、水平センサー71の検知結果により、車体9が前後方向に所定値以上に傾斜したことを検知すると、トラニオン開度が減少するようにサーボモーターを制御して車速を遅くするとともに、エンジン23の回転数を上げるように制御してトルクを増加させる。なお、所定値未満の傾斜の場合には、コントローラー70は、サーボモーターを作動させない。
【0138】
例えば、田植機が畦を越えるときや田植機をトラックに積み降ろしするときなどに、水平センサー71によって前後方向の傾斜が検知され、そのときに速度が遅くなりトルクが増加するように制御される。
【0139】
コントローラー70がこのように、車速を遅くすると同時にエンジン回転数が増加する制御を行うことにより、走行トルクが上昇するため、傾斜角度が大きくても前進しやすく、作業能率が向上する。例えば、畦越えやトラックへの積み降ろしの際の走行性が安定する。
【0140】
また、回転センサー72は、後輪11の回転を検知するセンサーである。
【0141】
コントローラー70は、回転センサー72の検知結果に基づいて、傾斜した地面に田植機があるときに、傾斜によって田植機が移動してしまうのを防止するように制御する。
【0142】
図13に、本実施の形態3の田植機における、傾斜地での移動を防止するための動作フローを示す。
【0143】
コントローラー70は、走行操作レバー38の操作位置を確認し(ステップS40)、中立位置Nにある場合には、回転センサー72からの検知結果を受信して判定する(ステップS41、S42)。走行操作レバー38が中立位置N以外にある場合には、回転センサー72からの検知結果について判定しない。
【0144】
後輪11が停止していると判定した場合には、ステップS40に戻り、走行操作レバー38が中立位置Nにある間、回転センサー72からの検知結果を判定し続ける。
【0145】
ステップS42において、後輪11が後退方向へ回転していると判定した場合、コントローラー70は、サーボモーターを作動させ(ステップS43)、機体が前進する向きにトラニオン開度を変更する(ステップS44)。
【0146】
逆に、ステップS42において、後輪11が前進方向へ回転していると判定した場合、コントローラー70は、サーボモーターを作動させ(ステップS45)、機体が後退する向きにトラニオン開度を変更する(ステップS46)。
【0147】
後輪11が後退方向へ回転するのは、例えば傾斜地において、田植機の後部が傾斜の下方を向くように位置している場合であり、コントローラー70がステップS43およびステップS44のように制御することにより、田植機が前進するように制御して、田植機が傾斜の下方に向かって後退するように移動していくのを防止する。
【0148】
後輪11が前進方向へ回転するのは、例えば傾斜地において、田植機の前部が傾斜の下方を向くように位置している場合であり、コントローラー70がステップS45およびステップS46のように制御することにより、田植機が後退するように制御して、田植機が傾斜の下方に向かって前進するように移動していくのを防止する。
【0149】
なお、ここでは、回転センサー72が後輪11の回転を検知することとしたが、本実施の形態の田植機のように前輪10も駆動輪である場合には、前輪10の回転を回転センサー72が検知するようにし、その検知結果にしたがって制御するようにしても同様の効果が得られる。
【0150】
また、上記では、水平センサー71を機体の前後方向の傾きを検知するセンサーとしたが、機体の左右方向の傾きを検知するセンサーとし、その水平センサー71の検知結果に応じて、コントローラー70が制御するようにしてもよい。
【0151】
例えば、左右方向の傾きを検知する水平センサー71が、所定の傾き以上の傾きを検知した場合に、走行操作レバー38の角度と車速の関係が例えば
図10の疎植時の関係となるように、コントローラー70が、サーボモーターを制御してトラニオン開度を変更させる。
【0152】
水平センサー71が、所定の傾き以上の傾きを検知した場合とは、例えば田植機が側方に転倒し易いような危険な場所を走行するときであり、そのときにコントローラー70がこのように制御することにより、走行操作レバー38による車速変化が小さい低速モードとなり、運転者はその場所を安心して走行できるようになる。
【0153】
また、苗載せ台1の苗および予備苗載台45の苗が不足したときには、機体を停止させて苗継ぎ作業を行なうが、苗継スイッチを設けて、苗継スイッチの状態を検知してコントローラー70が、次のように制御してもよい。苗継スイッチは、作業者が操作するスイッチであり、苗継ぎ作業を開始するときにオンにし、苗継ぎ作業が終わって植え付け作業を再開する際にオフにするスイッチである。
【0154】
なお、苗継スイッチが、本発明の苗補充検知部材の一例にあたる。
【0155】
図14に、本実施の形態3の田植機における、苗継ぎ作業を行なう際の動作フローを示す。
【0156】
図14に示すステップS50〜ステップS54は、苗継ぎ作業開始前の動作を示しておおり、ステップS55〜ステップS57は、苗継ぎ作業終了後の動作を示している。
【0157】
苗継ぎ作業を開始する際、運転者は機体を停止させて、苗継スイッチをオンに操作する(ステップS50)。
【0158】
コントローラー70は、苗継スイッチがオンになったのを検知すると、このときの走行操作レバー38の位置を確認する(ステップS51)。
【0159】
走行操作レバー38が、中立位置N以外の位置にあった場合、コントローラー70は、サーボモーターを作動させ(ステップS52)、機体が停止するようにトラニオン開度を変更する(ステップS53)。すなわち、コントローラー70は、HST33が中立の状態となるように制御する。
【0160】
そして、苗継スイッチがオンになっている間は、コントローラー70は、走行操作レバー38が中立位置N以外の位置へ操作されても、走行操作レバー38の位置に関わらず、HST33が中立の状態を維持するように制御する(ステップS54)。
【0161】
そして、苗継ぎ作業終了後、作業者は、苗継スイッチをオンからオフの状態へ切り換えるように操作しようとする。
【0162】
このとき、コントローラー70は、走行操作レバー38の位置を確認し(ステップS55)、走行操作レバー38が中立位置Nにある場合には、苗継スイッチのオフ状態への切り換えを可能とする(ステップS56)。すなわち、この場合には、作業者は苗継スイッチをオフに切り換えることができる。
【0163】
一方、苗継スイッチをオフに切り換えようとしたときに、走行操作レバー38が中立位置N以外の位置にあった場合には、コントローラー70は、苗継スイッチのオフ状態への切り換えができないように制御する(ステップS57)。すなわち、この場合には、作業者は苗継スイッチをオフに切り換えることができず、走行操作レバー38を中立位置Nへ操作することにより、苗継スイッチをオフに切り換えることができるようになる。
【0164】
従来の田植機では、苗継ぎ作業時に、走行操作レバー38を誤って中立位置Nから前進域Fや後進域Rへ移動した場合には、機体が突然動き出し、苗継ぎ作業をしている者が危険であった。
【0165】
本実施の形態3の田植機では、コントローラー70がステップS54のように制御することにより、苗継ぎ作業時に、誤って走行操作レバー38を操作しても機体が動き出すことがなく安全である。
【0166】
また、コントローラー70がステップS55〜ステップS57のように制御することにより、苗継スイッチをオフに切り換える際に、走行操作レバー38が中立位置N以外の位置に操作されていても突然機体が動き出すことがなく安全である。
【0167】
なお、本実施の形態3の構成は、
図7に示した実施の形態2の田植機の構成に追加する例で説明したが、
図5に示した実施の形態1の田植機の構成に対しても適用できる。
【0168】
また、上記の苗継スイッチ、すなわち本発明の苗補充検知部材として、従来の苗補充センサー46を利用することもできる。
【0169】
図15に、苗継スイッチとして従来の苗補充センサー46を利用した場合の、苗継ぎ作業を行なう際の動作フローを示す。
【0170】
苗補充センサー46は、前記複数条の苗載せ台1に、積載した苗が無くなった、あるいは所定量未満になったことを検知すると、ブザー等の報知装置を作動させる。
【0171】
苗補充センサー46を苗継スイッチとして用いる構成とした場合、苗載せ台1に載置した苗は、苗植付装置14によって圃場に植えつけられて消費されていき、苗の量が所定量未満になると、苗継ぎスイッチ(苗補充センサー46)が、苗に押さえられなくなり、OFFになり、報知装置を作動させる(ステップS70)。
【0172】
このとき、走行操作レバー38が中立であるかどうかを判定し(ステップS71)、該走行操作レバー38が中立位置になければ、コントローラー70は、サーボモーターを作動させて(ステップS72)、HST33のトラニオン軸を停止側に移動させる(ステップS73)。前記走行操作レバー38が中立であるときは、そのままHST33を中立に維持する(ステップS74)。
【0173】
これにより走行が停止した状態となるので、作業者は予備苗載台45に載置している苗を、苗補充が必要な苗載せ台1に積み込む作業を、機体の振動や圃場の凹凸による激しい揺れに邪魔されること無く行えるため、作業能率が向上するとともに、作業の安全性が向上する。そして、苗植付装置14が苗を取り逃さない、あるいは植付姿勢が乱れない姿勢で苗を苗載せ台1に載置することができるので、植付精度が向上する。
【0174】
苗の補充作業が終わると、苗継ぎスイッチ(苗補充センサー46)は苗に押さえられてONとなる(ステップS75)。全ての苗継ぎスイッチがONになるまでは、走行操作レバー38を前進または後進方向に何段階操作しても、サーボモーターは作動せず、HST33を中立状態に保つ制御を行う(ステップS79)。全ての苗継ぎスイッチがONになると、走行操作レバー38が中立状態にあるか否かを判断し(ステップS76)、中立でなければ、走行操作レバー38が中立状態にされるまで、サーボモーターを作動させず、HST33を中立状態に保つ制御を行う。
【0175】
走行操作レバー38が中立位置に移動していると、サーボモーターが作動して(ステップS77)、走行操作レバー38の操作方向に合わせてトラニオン軸の開度を大きくする制御を行う(ステップS78)。
【0176】
なお、走行操作レバー38が中立位置に所定時間(約2〜3秒以上)連続して位置しないと、前進または後進位置に走行操作レバー38を動かしてもサーボモーターを作動させない構成とすると、前進から後進、あるいは後進から前進に走行操作レバー38を移動させた際に、中立になったと判断されてサーボモーターが作動することを防止できるので、苗の補充作業中に機体が走行し、補充作業を行う作業者が転倒することや、苗の補充姿勢がおかしくなることが防止される。
【0177】
また、苗継ぎスイッチがOFFになったときのトラニオン軸の開度をコントローラー70に記憶させ、苗継ぎスイッチがONで且つ走行操作レバー38が中立位置に位置すると、コントローラー70が記憶したトラニオン軸の開度に自動復帰させる構成とすると、苗補充の前後の走行速度が変わらず、苗の植付位置や深さを安定させることができる。
【0178】
また、操作ボックス12に作業者操作用スイッチ47を設けて、苗補充センサー46が苗の減少(苗切れ)を検知したときに、作業者が作業者操作用スイッチ47を押してHSTサーボモーターの回転数を下げて停止させ、苗補充が終わるとHST操作レバーを中立に操作した後に、作業者操作用スイッチ47を切るとHSTサーボモーターが動く構成としてもよい。
【0179】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4の、走行車両を備える乗用型の8条植田植機の側面図および平面図は、実施の形態1の田植機8と同様であり、
図1および
図2に示す通りである。
【0180】
図16に、本実施の形態4の田植機の駆動系統を示す機能ブロック図を示す。
図16では、動力の伝達経路を実線で示し、制御系統の伝達経路を破線で示している。
【0181】
本実施の形態4のコントローラー75は、実施の形態3のコントローラー70と同様に、エンジン23の回転数を制御する機能を備えている。本実施の形態4の田植機は、エンジン23の回転数を検知する回転センサー76と、HST33の作動油の温度を測定する油温センサー77を備えている。
【0182】
なお、コントローラー75が、本発明の制御部の一例にあたる。また、回転センサー76が、本発明のエンジン回転数検知部の一例にあたり、油温センサー77が、本発明の油温測定部の一例にあたる。
【0183】
回転センサー76で検知されたエンジン23の回転数および油温センサー77で測定された作動油の温度は、コントローラー75へ送信される。
【0184】
図17に、本実施の形態4の田植機における、温度による駆動系制御の動作フローを示す。
【0185】
エンジン23およびHST33が作動すると、回転センサー76がエンジン23の回転数を検知し、その回転数をコントローラー75へ送信し(ステップS60)、また、油温センサー77がHST33の作動油の温度を測定してその測定した温度をコントローラー75へ送信する(ステップS61)。
【0186】
コントローラー75は、HST33の作動油の温度が所定温度以上か否かを判定する(ステップS62)。HST33の作動油の温度が所定温度以上であった場合には、コントローラー75は、駆動系について特に補正制御は行わない。
【0187】
一方、HST33の作動油の温度が所定温度未満であった場合には、コントローラー75は、エンジンサーボアクチュエーターを駆動して、エンジン23の回転数が上がるように制御する(ステップS63)。このとき、HST開度および比例バルブ開度はいずれも変化させずに、エンジン23の回転数だけを上げるように制御する。
【0188】
HST33の作動油の温度が低いと、作動油の粘性が大きいために、HST33からはエンジン23の回転数に対して十分な出力が得られず、所望のトルクが得られない。
【0189】
本実施の形態4では、作動油の温度が所定温度未満の場合に、エンジン23の回転数を上げるように制御することにより、送油量を増加させてHST33の出力を増加させる。このとき、HST開度および比例バルブ開度を変化させずに、エンジン23の回転数だけを上げるので、前輪10および後輪11を駆動するトルクを増加させることができる。
【0190】
したがって、コントローラー75がステップS62において判定する所定温度として、エンジン23の回転数に対して十分なHST33の駆動力が得られる場合の作動油の最低温度に設定しておくのが望ましい。
【0191】
なお、エンジン23の回転数を上げる制御(ステップS63)をした後、エンジン23の回転数に対して十分な駆動力がHST33から出力されるようになったときに、コントローラー75は、エンジン23の回転数が指定された通りの回転数となるように通常の制御に戻す。