特許第5741253号(P5741253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5741253ラックアンドピニオン式ステアリング装置
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  • 特許5741253-ラックアンドピニオン式ステアリング装置 図000002
  • 特許5741253-ラックアンドピニオン式ステアリング装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5741253
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】ラックアンドピニオン式ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20150611BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   B62D3/12 501B
   F16H19/04 G
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-145060(P2011-145060)
(22)【出願日】2011年6月30日
(65)【公開番号】特開2013-10457(P2013-10457A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2014年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】武井 清登
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−208687(JP,A)
【文献】 実開平01−099776(JP,U)
【文献】 実開平01−173075(JP,U)
【文献】 実開昭60−124377(JP,U)
【文献】 米国特許第05802919(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/12
F16H 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに回転可能に支持されたピニオンと、該ピニオンに噛合うラックを有しかつ前記ハウジングを貫通するラック軸と、前記ラック軸の前記ラックとは反対側の円弧状のラック軸支持面を摺動可能に支持するラックガイドとからなるラックアンドピニオン式ステアリング装置において、前記ラックガイドを弾性材料で構成するとともに、前記ラックガイドの前記円弧状凹面の半径を前記ラック軸支持面の曲率半径より、小さい曲率半径で形成され、前記ラックガイドの中央部の弾性係数よりその中央部の周辺である側面部の弾性係数を小さくしたことを特徴とするラックアンドピニオン式ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックアンドピニオン式ステリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の舵取りを行うステアリング装置として、操舵部材の回転操作に応じたピニオンの回転を、該ピニオンに噛合するラックを有するラック軸の軸長方向の移動に変換し、ラック軸の両端に連結された左右の前輪を押し引きして舵取りをおこなうように構成されたラックアンドピニオン式のステアリング装置が広く採用されている。このラックアンドピニオン式のステアリング装置は、一般的に、ラック軸に弾性接触し、前記噛合い部に与圧を加えるラックガイドを備えている。また、前記ラック及びピニオンは、大容量の負荷伝達とすべく、噛合い率が大きいはす歯に夫々形成してある。
【0003】
このようなラックピニオン式のステアリング装置においては、操舵時にラック及びピニオンの噛合いに伴って噛合い歯面に直行する方向の力が作用し、しかもラック及びピニオンがはす歯に形成されているため、ラック軸の軸長方向に直行する方向の分力が発生し、この分力の作用により、ラック軸が軸回りに揺動する。
このようにラック軸が軸回りに揺動するとラックガイドとラック軸の接触面が変化し、さらに使用条件が過酷な場合、ラックガイドとラック軸の接触面に、片当たりが発生して摩耗が発生し、異音の発生が起こる場合がある。特許文献1にはラックガイドとラック軸の間にラックガイドシートを設け、このラックガイドシートの接触箇所を限定する摺接凸面を設けたものが提案されている。
また、特許文献2に開示の装置では、前記筒部にねじ込まれたねじ部材とラック軸との間に設けられたラックガイドがねじ部材に対して揺動可能に構成されている。この揺動可能な構成により、ラック軸が傾いてもラックガイドがラック軸の傾動に追随するため、ラックガイドがラック軸に片当たりすることが少なくなるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−312502号公報
【特許文献2】特開2010−18166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、摺接凸面を積極的に摩耗させるものであって、摺接凸面の摩耗を抑えるものではない。特許文献2は、ラック軸がラック軸方向に対してピニオン軸方向に所定量傾斜するようにラック軸が傾動する場合の対応であって、ラック軸が軸線回りに揺動した場合の対応ではない。
本発明の目的は、ラック軸が軸線回りに揺動した場合、ラックガイドの摩耗を低減し、異音を抑制するラックアンドピニオン式のステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ハウジングに回転可能に支持されたピニオンと、該ピニオンに噛合うラックを有しかつ前記ハウジングを貫通するラック軸と、前記ラック軸の前記ラックとは反対側の円弧状のラック軸支持面を摺動可能に支持するラックガイドとからなるラックアンドピニオン式ステアリング装置において、前記ラックガイドを弾性材料で構成するとともに、前記ラックガイドの前記円弧状凹面の半径を前記ラック軸支持面の曲率半径より、小さい曲率半径で形成され、前記ラックガイドの中央部の弾性係数よりその中央部の周辺である側面部の弾性係数を小さくしたことを要旨としている。
【0008】
本発明の構造によると、前記ラックガイドは、ラックガイドの中央部の弾性係数よりその中央部の周辺である側面部の弾性係数を小さくして、ラックガイドの側面部において中央部より大きなしめしろを与えているため、ラック軸の軸回りに揺動に追随して、接触面積の変化が小さく、接触荷重が均等となり、摩耗が平滑に進む為、総摩耗量は少なくなり、異音を抑制するラックアンドピニオン式ステアリング装置を提供できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構造によれば、ラック軸が揺動して傾動しても、ラックガイドの摩耗を低減し、異音を抑制するラックアンドピニオン式ステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るラックアンドピニオン式ステアリング装置に用いられるラック軸支持装置の構成を示す部分断面図である。
図2】ラックガイドの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るラックアンドピニオン式ステアリング装置に用いられるラック軸支持装置の構成を示す部分断面図である。
図1中、ラックアンドピニオン式ステアリング装置1は、操舵ハンドル(図示せず)からの操舵力により回転するピニオン軸2と、ピニオン軸2に形成されたピニオン歯2aに噛合しているラック歯3aが形成されたラック軸3と、ラック軸3を支持しているラック軸支持装置10とを備えている。ラック軸3は、タイロッド(図示せず)を介して両端が操舵輪(図示せず)に接続されており、ピニオン軸2から伝達される回転力によって軸方向に沿って往復動を行い、前記操舵輪を操舵する。
【0012】
ラック軸支持装置10は、ラック軸3を往復動可能に収容しているハウジング4と、ハウジング4に設けられた案内部12と、案内部12にラック軸3方向に進退可能に収容されたラックガイド11と、ラックガイド11のプラグ側に案内孔13の外部側開口を塞ぐプラグ30とを備えている。
【0013】
プラグ30は、ラックガイド11のラック軸3のラック歯3aと反対側に配置され、外周面に雄ねじ部30bが設けられており、案内孔13の外部側開口に設けられた雌ねじ部13bに螺合し固定されている。プラグ30によりラックガイド軸方向の位置を規定することでラックガイド11とラック軸3との接触状態を調整可能になっている。
【0014】
ラックガイド11は、ほぼ円柱状に形成された部材であり、案内部12に進退可能に収容されラック軸3をピニオン軸2に対して押圧支持している。ラック軸3のラック軸支持面11aは、ラック軸3の断面形状に応じてその断面が円弧状凹面に形成されている。ラックガイド11は、ラック軸3に当接しており、軸方向に沿って往復動を行うラック軸3を背面から支持している。
【0015】
ラックガイド11は、ハウジング内に組付けられてラック軸3をラック軸方向に移動可能に支持するためのものであり、ラック軸3のラック軸支持面の曲率半径Rより、小さい曲率半径の円弧状凹面で形成されており、ラック軸3の半径Rに対し弾性変形(変形による変位:しめしろS)する弾性部分を有する曲率半径r(=R−S)で形成されている。ラックガイド11は、それぞれ外周が円形であって、ハウジング案内孔13に収容されている。
【0016】
図2に本発明のラックガイド構造をしめしており、ラックガイド11の中央部11cの弾性係数が大きく側面部11b、11dの弾性係数が小さく、ラックガイド11の側面部11b、11dのしめしろが中央部11cのしめしろより大きく、ラック軸3とラックガイド11の面圧分布が均等になるような構成になっている。そのためラック軸3が軸線回りに揺動したとき、ラック軸3とラックガイド11の面圧分布が均等になるように、弾性係数が小さくかつしめしろが大きい側面部11b、11dがラック軸に追従するようになっている。






【0017】
上記のように構成したラック支持装置10においては、運転者による操舵ハンドルの操舵入力に伴って操舵軸およびピニオン2が回転し、このピニオン2の回転に伴って、ラック3がラック軸方向に移動して、左右前輪が転舵する。
【0018】
ところで、ピニオン2の回転時に、ハウジング4、ピニオン2、ラック軸3、ラックガイド11等の各部品の精度に伴って、例えラック軸3が軸回りに揺動することがあっても、ラックガイド11ラック軸3の動きに十分追従することが可能である。
【0019】
このため、ピニオン2の回転時に、ラック軸3がラック軸方向以外の方向に不必要に移動(上記した各傾動および上記した各移動を伴ってラック軸方向に移動することがあっても、ラックガイド11のラック軸3に対する十分な追従によって、ラック3の背面3bとラックガイド11のラック軸支持面11aの接触面の変化を小さくすることが可能である。したがって、上記した接触面の変化に伴う摩擦変動を抑制することができ、この摩擦変動に起因して生じるピニオン2のトルク変動(操舵トルクの変動)を抑制することが可能である。
【0020】
ラックガイド11は、しめしろS分だけハウジング内周面13aで接触して、内周軸方向に接触圧力が均等になるようになり、側面部11bに近いほうで圧力が高くなっている。そのため、ピニオン軸2側からの力に対して抵抗が大きくなり、ラックガイド11の挙動の抵抗となっている。逆向きの力に対しては比較的動きやすいため、ラック軸3の振動に対して、減衰させる効果があり、異音に対して抑制効果がある。
【符号の説明】
【0023】
1 ラックアンドピニオン式ステアリング装置
2 ピニオン軸
3 ラック軸
4 ハウジング
10 ラック軸支持装置
11 ラックガイド
11a ラック軸支持面
11b ラックガイド中央部
11c ラックガイド側面部
11d ラックガイド:ラック軸支持部
11e 、f ラックガイド溝部
11g ラックガイド凹部
12 案内部
13 案内孔
13a 内周面
16 弾性体
30 プラグ(規制部材)
図1
図2