(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モード切換手段は、前記動力源の状態がアイドルの状態であるか否かを検出し、前記動力源の状態がアイドルの状態でないときには、前記スイッチユニットのモードの前記第1のモードから前記第2のモードへの切換を禁止することを特徴とする請求項1に記載の船外機。
前記モード切換手段は、前記回転出力伝達機構におけるシフトギアの状態がニュートラルの状態であるか否かを検出し、前記回転出力伝達機構におけるシフトギアの状態がニュートラルの状態であるときには、前記スイッチユニットのモードの前記第1のモードから前記第2のモードへの切換を禁止することを特徴とする請求項1に記載の船外機。
前記モード切換手段は、前記動力源に異常があるか否かを検出し、前記動力源に異常があるときには、前記スイッチユニットのモードの前記第1のモードから前記第2のモードへの切換を禁止することを特徴とする請求項1に記載の船外機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、船外機に、PTT装置により船外機本体を傾斜させる機能に加えてトローリング運転機能を設ける場合には、ティラーハンドル、リモートコントローラ、または操作パネル等に、PTTスイッチユニットに加えてトローリング運転速度調節用のスイッチユニットを設ける必要がある。このため、船外機または船舶に設けるスイッチユニットの個数が増加し、船外機または船舶の製造コストが上昇するという問題がある。
【0006】
また、ティラーハンドルは、船外機本体から伸長した棒状の部材であり、広い平面を有していない。このため、PTTスイッチユニットに加えてトローリング運転速度調節用のスイッチユニットを、これらのスイッチユニットの操作性を確保しつつ、ティラーハンドルに配置することは容易ではないという問題がある。
【0007】
また、PTTスイッチユニットは、船外機本体の傾斜角を増加させるアップスイッチと、船外機本体の傾斜角を減少させるダウンスイッチとを備えている。また、トローリング運転速度調節用のスイッチユニットは、船舶の速度が上記制限速度範囲内に留まる限りにおいてエンジンの回転数を増加させるアップスイッチと、船舶の速度が上記制限速度範囲内に留まる限りにおいてエンジンの回転数を減少させるダウンスイッチとを備えている。このように、PTTスイッチユニットもトローリング運転速度調節用のスイッチユニットもいずれもアップスイッチとダウンスイッチとを備えている点で共通している。この結果、利用者が、PTTスイッチユニットを操作するつもりでトローリング運転速度調節用のスイッチユニットを操作してしまい、あるいはトローリング運転速度調節用のスイッチユニットを操作するつもりでPTTスイッチユニットを操作してしまうといったように、2つのスイッチユニットの操作を誤ってしまうおそれがあるという問題がある。
【0008】
また、トローリング運転速度調節用のスイッチユニットは、ティラーハンドルのスロットルグリップの近傍や、リモートコントローラのシフトレバーの近傍に設けることが望ましい。すなわち、トローリング運転速度調節用のスイッチユニットを、ティラーハンドルのスロットルグリップの近傍や、リモートコントローラのシフトレバーの近傍に設けることができれば、利用者は、ティラーハンドルのスロットルグリップ、あるいはリモートコントローラのシフトレバーを握ったまま、トローリング運転速度調節用のスイッチユニットの各スイッチを押下することができるようになる。これにより、利用者は、船舶の運転中に、トローリング運転速度調節用のスイッチユニットの各スイッチを押下するためにスロットルグリップやハンドル、リモートコントローラのシフトレバーから手を離す必要がなくなり、あるいは、当該スイッチユニットの各スイッチを押下するために視線を大きく移動させる必要がなくなるので、船舶の運転をし易くすることができ、また、運転の安全性を高めることができる。
【0009】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、船体に対する船外機本体の傾斜角を増減させるための操作とトローリング運転時における船外機の動力源(エンジン)の回転数調節を行うための操作との双方の操作性を容易に向上させることができ、かつこれら双方の操作を実現する手段を安価に実現することができる船外機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の船外機は、動力源、前記動力源の回転出力により回転するプロペラ、および前記動力源の回転出力を前記プロペラに伝達する回転出力伝達機構を有する船外機本体と、前記船外機本体を船舶の船体に固定する固定部材と、アクチュエータを有し、前記アクチュエータを駆動することにより、前記船体に対する前記船外機本体の上下方向における傾斜角を増減させる傾斜角制御手段と、前記動力源の回転数の増減を制御する回転数制御手段と、トローリング運転を行うために前記船舶の速度が所定のトローリング運転速度範囲内に留まるように前記回転数制御手段による前記動力源の回転数の増減を制限する回転数制限手段と、利用者の操作入力に従って前記傾斜角制御手段、前記回転数制御手段および前記回転数制限手段をそれぞれ動作させる操作手段とを備え、前記操作手段は、
通常運転を行うために前記回転数制御手段を動作させて前記動力源の回転数を増減させることにより前記船舶の速度を前記トローリング運転速度範囲を超えて増減させる操作グリップまたは操作レバーと、一対のスイッチを有するスイッチユニットと、前記スイッチユニットのモードを第1のモードと第2のモードとの間で切り換えるモード切換手段とを有し、前記モード切換手段は、前記スイッチユニットのモードを
前記第1のモードに切り換えたときには、前記一対のスイッチのうちの一方のスイッチを、前記傾斜角制御手段を動作させて前記船外機本体の前記傾斜角を増加させるスイッチとして機能させ、他方のスイッチを、前記傾斜角制御手段を動作させて前記船外機本体の前記傾斜角を減少させるスイッチとして機能させ、一方、前記スイッチユニットのモードを
前記第2のモードに切り換えたときには、前記一対のスイッチのうちの一方のスイッチを、前記トローリング運転を行うために前記回転数制御手段および前記回転数制限手段を動作させて前記船舶の速度が前記トローリング運転速度範囲内に留まる限りにおいて前記動力源の回転数を増加させるスイッチとして機能させ、他方のスイッチを、前記トローリング運転を行うために前記回転数制御手段および前記回転数制限手段を動作させて前記船舶の速度が前記トローリング運転速度範囲内に留まる限りにおいて前記動力源の回転数を減少させるスイッチとして機能させることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の船外機によれば、一対のスイッチを有する単一のスイッチユニットにより、傾斜角制御手段を動作させて船外機本体の傾斜角を増減させることができると共に、回転数制御手段および回転数制限手段を動作させ、船舶の速度がトローリング運転速度範囲内に留まる限りにおいて動力源の回転数を増減させることができる。このように、一対のスイッチを有する単一のスイッチユニットに2つの機能を持たせることにより、船外機または船舶に設けるスイッチユニットの個数を減らすことができ、これにより船外機または船舶の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0012】
また、ティラーハンドルの2箇所に2つのスイッチユニットをこれら双方のスイッチユニットの操作性を確保しつつそれぞれ配置する場合と比較して、ティラーハンドルの1箇所に単一のスイッチユニットを当該スイッチユニットの操作を確保しつつ配置することは容易である。したがって、船外機本体の傾斜角の増減操作およびトローリング運転時における船外機の動力源の回転数調節操作の双方について操作性を容易に向上させることができる。
【0013】
また、本発明の第1の船外機において、前記モード切換手段は、前記一対のスイッチが同時に押されたことを検出し、前記一対のスイッチが同時に押されたときには、前記スイッチユニットのモードを前記第1のモードと前記第2のモードとの間で切り換える。これにより、利用者はスイッチユニットのモード切換を簡単にかつ確実に行うことができる。
【0014】
また、本発明の第1の船外機において、前記モード切換手段は、前記第2のモードである間、前記操作グリップまたは前記操作レバーが操作されたことにより、前記動力源の回転数が前記トローリング運転速度範囲の上限に対応する回転数以上になったことを検出し、前記動力源の回転数が前記トローリング運転速度範囲の上限に対応する回転数以上になったときには、前記スイッチユニットのモードを前記第2のモードから前記第1のモードへ切り換える。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第2の船外機は、上述した本発明の第1の船外機において、前記操作手段には、基端側が前記船外機本体に取り付けられ、前記船舶の舵取りを行うティラーハンドルが含まれ、前記操作グリップは前記ティラーハンドルの先端側に設けられ、前記スイッチユニットは前記ティラーハンドルにおいて前記操作グリップの近傍の部位に設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の船外機によれば、船外機本体の傾斜角の増減操作およびトローリング運転時における船外機の動力源の回転数調節操作の双方を行う単一のスイッチユニットがティラーハンドルのグリップの近傍に設けられているので、ティラーハンドルを用いて船舶の運転をしている利用者は、ティラーハンドルのグリップを握ったまま当該スイッチユニットを操作し、船外機本体の傾斜角の増減操作だけでなく、トローリング運転時における動力源の回転数調節操作をも行うことができる。これにより、利用者は、船外機本体の傾斜角の増減操作およびトローリング運転時における動力源の回転数調節操作を行う際に、視線を大きく移動させたり、グリップやハンドルから手を離したりする必要がないので、これらの操作を容易に行うことができ、また運転の安全性を高めることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第3の船外機は、上述した本発明の第1の船外機において、前記操作手段には、前記船舶において前記船外機本体と離れた位置に配置されたリモートコントローラが含まれ、前記操作レバーは、前記回転数制御手段を遠隔操作するレバーとして前記リモートコントローラに設けられ、前記スイッチユニットは前記操作レバーに設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の船外機によれば、船外機本体の傾斜角の増減操作およびトローリング運転時における船外機の動力源の回転数調節操作の双方を行う単一のスイッチユニットがリモートコントローラのレバーに設けられているので、リモートコントローラを用いて船舶の運転をしている利用者は、リモートコントローラのレバーを握ったまま当該スイッチユニットを操作し、船外機本体の傾斜角の増減操作だけでなく、トローリング運転時における動力源の回転数調節操作をも行うことができる。これにより、利用者は、船外機本体の傾斜角の増減操作およびトローリング運転時における動力源の回転数調節操作を行う際に、視線を大きく移動させたり、ハンドルやリモートコントローラのレバーから手を離したりする必要がないので、これらの操作を容易に行うことができ、また運転の安全性を高めることができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第
4の船外機は、上述した本発明の第1の船外機において、前記モード切換手段は、前記動力源の状態がアイドルの状態であるか否かを検出し、前記動力源の状態がアイドルの状態でないときには、前記スイッチユニットのモードの前記第1のモードから前記第2のモードへの切換を禁止することを特徴とする。
【0020】
本発明の第
4の船外機によれば、トローリング運転を行う状態でないときに、スイッチユニットのモードが第2のモード、すなわちトローリング運転時における船外機の動力源の回転数調節を行うモードに切り換えられてしまうことを防止することができ、船外機の誤操作または誤動作を防ぐことができる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の第
5の船外機は、上述した本発明の第1の船外機において、前記モード切換手段は、前記回転出力伝達機構におけるシフトギアの状態がニュートラルの状態であるか否かを検出し、前記回転出力伝達機構におけるシフトギアの状態がニュートラルの状態であるときには、前記スイッチユニットのモードの前記第1のモードから前記第2のモードへの切換を禁止することを特徴とする。
【0022】
本発明の第
5の船外機によれば、トローリング運転を行う状態でないときに、スイッチユニットのモードが第2のモード、すなわちトローリング運転時における船外機の動力源の回転数調節を行うモードに切り換えられてしまうことを防止することができ、船外機の誤操作または誤動作を防ぐことができる。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第
6の船外機は、上述した本発明の第1の船外機において、前記モード切換手段は、前記動力源に異常があるか否かを検出し、前記動力源に異常があるときには、前記スイッチユニットのモードの前記第1のモードから前記第2のモードへの切換を禁止することを特徴とする。
【0024】
本発明の第
6の船外機によれば、動力源に異常があるときに、スイッチユニットのモードが第2のモード、すなわちトローリング運転時における船外機の動力源の回転数調節を行うモードに切り換えられてしまうことを防止することができ、船外機の誤動作を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、船体に対する船外機本体の傾斜角を増減させるための操作手段とトローリング運転時における船外機の動力源の回転数調節を行うための操作手段との双方の操作性を容易に向上させることができ、かつこれら双方の操作手段を安価に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態による船外機が搭載された船舶を示している。
図1中の船舶1において、船体2の船尾板3には、本発明の第1の実施形態による船外機4が取り付けられている。
【0028】
図2および
図3は船外機4を示している。
図2および
図3に示すように、船外機4の船外機本体11は、当該船外機本体11の外殻を構成するケース12、およびケース12の上部に設けられたカウリング13を備えている。また、ケース12には固定部材としてのクランプブラケット14が設けられ、船外機本体11はクランプブラケット14を介して船体2に取り付けられ、固定される。また、クランプブラケット14と船外機本体11との間にはPTTアクチュエータ15が設けられている。後述するように、利用者の操作入力に従ってPTTアクチュエータ15を駆動することにより、船体2に対する船外機本体11の上下方向における傾斜角(チルト角またはトリム角)を増減させることができる。また、船外機本体11には、ステアリングブラケット16を介して操作手段の一の具体例であるティラーハンドル17が取り付けられている。さらに、船外機本体11の下部にはプロペラ18が設けられている。
【0029】
また、船外機本体11のケース12内には、動力源としてのエンジン19、エンジン19の回転数を増減させるISC(アイドルスピードコントロール)バルブ20、エンジン19の回転出力をプロペラ18に伝達するドライブシャフト21、プロペラ18の回転方向を可変に設定するシフト軸22、プロペラ18に接続されたプロペラシャフト23、およびシフト軸22により設定された回転方向に従ってドライブシャフト21の回転をプロペラシャフト23の回転に変換するシフトギア機構24が設けられている。なお、ドライブシャフト21、シフト軸22、プロペラシャフト23およびシフトギア機構24が回転出力伝達機構の具体例である。
【0030】
図4はティラーハンドル17を示し、
図5はティラーハンドル17に設けられたスイッチユニットを示している。ティラーハンドル17は船舶1の舵取りを行うハンドルである。ティラーハンドル17は棒状のティラーハンドル本体31を備え、ティラーハンドル本体31の基端側はステアリングブラケット16(
図2参照)を介して船外機本体11に取り付けられている。また、ティラーハンドル本体31の先端側にはスロットルグリップ32が設けられている。利用者は、ティラーハンドル17のスロットルグリップ32を握り、ティラーハンドル17を左右に動かすことにより、船舶1の舵取りを行うことができ、また、スロットルグリップ32を回動させることにより、エンジン19の回転数を増減させ、船舶1の速度を増減させることができる。また、ティラーハンドル本体31には、プロペラ18の回転方向を切り換えて、船舶の移動方向を切り換えるためのシフトレバー33が設けられている。
【0031】
また、ティラーハンドル本体31においてスロットルグリップ32の近傍には、スイッチユニット34が設けられている。スイッチユニット34は、後述するように、船体2に対する船外機本体11の傾斜角の増減操作を行う機能と、トローリング運転時における船外機4のエンジン19の回転数調節操作を行う機能との2つの機能を有する。すなわち、スイッチユニット34は、単一のスイッチユニットであるものの、PTTスイッチユニットおよびトローリング運転時のエンジン回転数調節用のスイッチユニットとして機能する。スイッチユニット34は、
図5に示すように、アップスイッチ34Aおよびダウンスイッチ34Bを有している。アップスイッチ34Aおよびダウンスイッチ34Bは、例えば左右方向において互いに接近した位置に並べられている。なお、アップスイッチ34Aおよびダウンスイッチ34Bを、例えば上下方向において互いに接近した位置に並べてもよい。スイッチユニット34が有するスイッチは一対のスイッチ34A、34Bのみである。
【0032】
図6は船外機4の制御装置を示している。船外機4の制御装置40は、船外機4の動作を制御する装置であり、例えば船外機4のケース12内に設けられている。制御装置40は、ECU(エンジンコントロールユニット)41およびリレー42等を備えている。
【0033】
ECU41は、例えばマイクロコンピュータを含むユニットであり、後述のトロールモード時に、例えばISCバルブ20のバルブ開度を変えてエンジン19の回転数を増減させる制御を行い、また、船舶1の速度をトローリング運転速度範囲内に留めるようにエンジン19の回転数の増減を制限する制御を行う。さらに、ECU41は、通常モードとトロールモードとの間の切換(スイッチユニット34に割り当てる機能の変更)、PTTアクチュエータ15の駆動制御等、船外機4の種々の動作を制御する。なお、ECU41が回転数制御手段、回転数制限手段および傾斜角制御手段の具体例である。
【0034】
ECU41には、スイッチユニット34のアップスイッチ34Aおよびダウンスイッチ34Bが接続され、アップスイッチ34Aが押されたときにはその旨を示す入力信号がECU41に入力され、ダウンスイッチ34Bが押されたときにはその旨を示す入力信号がECU41に入力される。また、ECU41にはリレー42を介してPTTアクチュエータ15が接続されており、後述するように、ECU41は、通常モード時において、アップスイッチ34Aおよびダウンスイッチ34Bの押下に応じ、PTTアクチュエータ15を駆動し、船体2に対する船外機本体11の傾斜角を増減させる。また、ECU41にはISCバルブ20が接続されており、ECU41は、トロールモード時において、アップスイッチ34Aおよびダウンスイッチ34Bの押下に応じ、ISCバルブ20を制御し、エンジン19の回転数を一定の範囲内で増減させ、これにより、トローリング運転時における船舶1の速度をトローリング速度範囲内において増減させる。
【0035】
ここで、船外機4には、通常モードおよびトロールモードがあり、これらのモードごとに動作が異なる。トロールモードは、船舶1のトローリング運転(低速運転)を行うためのモードであり、通常モードは船舶1のトローリング運転以外の運転(通常運転)を行うためのモードである。
【0036】
通常モード時において、利用者は、スイッチユニット34のアップスイッチ34Aを押下することにより、PTTアクチュエータ15を駆動して、プロペラ18が上側に移動するように船外機本体11を回動させ、船体2に対する船外機本体11の傾斜角を増加させることができる。また、通常モード時において、利用者は、スイッチユニット34のダウンスイッチ34Bを押下することにより、PTTアクチュエータ15を駆動して、プロペラ18が下側に移動するように船外機本体11を回動させ、船体2に対する船外機本体11の傾斜角を減少させることができる。
【0037】
一方、トロールモード時おいては、利用者は、スイッチユニット34のアップスイッチ34Aを押下することにより、ISCバルブ20を制御してエンジン19の回転数を増加させ、船舶1の速度を増加させることができる。また、トロールモード時おいては、利用者は、スイッチユニット34のダウンスイッチ34Bを押下することにより、ISCバルブ20を制御してエンジン19の回転数を減少させ、船舶1の速度を減少させることができる。
【0038】
もっとも、トロールモード時において、アップスイッチ34Aおよびダウンスイッチ34Bを押下してエンジン19の回転数を増減させる場合、エンジン19の回転数は、ECU41の制御により、所定のトローリング運転速度範囲(例えば、2ノット〜10ノット)に対応した回転数の範囲内に制限される。すなわち、エンジン19の回転数が、トローリング運転速度範囲の上限速度に対応する回転数を下回っているときには、利用者がアップスイッチ34Aを押下すると、エンジン19の回転数が増加する。しかしながら、エンジン19の回転数が、トローリング運転速度範囲の上限速度に対応する回転数であるときには、利用者がアップスイッチ34Aを押下しても、エンジン19の回転数は増加しない。また、エンジン19の回転数が、トローリング運転速度範囲の下限速度に対応する回転数を上回っているときには、利用者がダウンスイッチ34Bを押下すると、エンジン19の回転数が減少する。しかしながら、エンジン19の回転数が、トローリング運転速度範囲の下限速度に対応する回転数であるときには、利用者がアップスイッチ34Bを押下しても、エンジン19の回転数は減少しない。なお、通常モード時においてエンジン19の回転数を増減させて船舶1の速度を変えるときには、スロットルグリップ32を回動させる。
【0039】
通常モードとトロールモードとの間の切換は、スイッチユニット34のアップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとを同時に押下することによって行うことができる。すなわち、通常モード時において、利用者がアップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとを同時に押下すると、モードが通常モードからトロールモードに切り換えられ、これにより、アップスイッチ34Aがエンジン19の回転数をトローリング運転速度範囲に対応する回転数の範囲内において増加させるスイッチとして機能し、ダウンスイッチ34Bがエンジン19の回転数をトローリング運転速度範囲に対応する回転数の範囲内において減少させるスイッチとして機能するようになる。一方、トロールモード時において、利用者がアップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとを同時に押下すると、モードがトロールモードから通常モードに切り換えられ、これにより、アップスイッチ34Aが船外機本体11の傾斜角を増加させるスイッチとして機能し、ダウンスイッチ34Bが船外機本体11の傾斜角を減少させるスイッチとして機能するようになる。
【0040】
もっとも、通常モードからトロールモードへの切換は、アップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとの同時押下に応じて常に行われるのではなく、アップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとが同時に押下された時点で、次の条件をすべて充たした場合に限り行われる。
(a)シフトギア機構24の状態がニュートラル状態でない。
(b)エンジン19の状態がアイドル状態である。
(c)エンジン19に異常がない。
なお、トロールモード時においてスロットルグリップ32を回動させ、エンジン19の回転数を所定の回転数以上に増加させると、モードがトロールモードから通常モードに切り換えられる。
【0041】
図7は、通常モード、トロールモード間の切換およびトロールモード時におけるエンジン19の回転数制御を行う際のECU41の動作を示している。
図7に示すように、通常モードである間(ステップS1)、ECU41は、スイッチユニット34のアップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとが同時に押下されたか否かを監視している(ステップS2)。通常モードである間、アップスイッチ34Aは船外機本体11の傾斜角を増加させるスイッチとして機能し、ダウンスイッチ34Bは船外機本体11の傾斜角を減少させるスイッチとして機能する。
【0042】
利用者がアップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとを同時に押下したとき、ECU41はその旨を検出する(ステップS2:YES)。具体的には、ECU41は、アップスイッチ34Aおよびダウンスイッチ34Bのうちの一方のスイッチの押下が検出されてから他方のスイッチの押下が検出されるまでの時間が所定時間T1(例えば0.5秒)以下であり、かつ、双方のスイッチの押下が検出されてから双方のスイッチが押下された状態が所定時間T2(例えば1秒)経過した場合に、アップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとが同時に押下されたと判断する。
【0043】
アップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとが同時に押下されたことが検出された後、ECU41は、上述した(a)、(b)、(c)の条件をすべて充足するか否かを判断する(ステップS3)。具体的には、ECU41は、シフトギア機構24の状態がニュートラルの状態であるか否かを検出し、シフトギア機構24の状態がニュートラルの状態であるときには、アップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとの同時押下を検出しても、通常モードからトロールモードへの切換を禁止する。また、ECU41は、エンジン19の状態がアイドルの状態であるか否かを検出し、エンジン19の状態がアイドル状態でないときには、アップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとの同時押下を検出しても、通常モードからトロールモードへの切換を禁止する。また、ECU41は、エンジン19に異常があるか否かを検出し、エンジン19に異常があるときには、アップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとの同時押下を検出しても、通常モードからトロールモードへの切換を禁止する。
【0044】
一方、上記(a)、(b)、(c)の条件をすべて充足したとき(ステップS3:YES)、すなわち、シフトギア機構24の状態がニュートラル状態でなく、エンジン19の状態がアイドル状態であり、かつエンジン19に異常がないときには、ECU41は、モードを通常モードからトロールモードへ切り換える(ステップS4)。これにより、アップスイッチ34Aはエンジン19の回転数をトローリング運転速度範囲に対応する回転数の範囲内において増加させるスイッチとして機能し、ダウンスイッチ34Bはエンジン19の回転数をトローリング運転速度範囲に対応する回転数の範囲内において減少させるスイッチとして機能するようになる。また、モードが通常モードからトロールモードに切り換えられたとき、モードが切り換えられたことを示す情報を操作パネル5に設けられたディスプレイ(図示せず)等に表示してもよいし、ブザー音を鳴らしてもよい。
【0045】
トロールモードである間、利用者がアップスイッチ34Aを押下すると(ステップS5:UP)、ECU41はその旨を検出し、その時点のエンジン19の回転数がAを下回っている場合に限り、ISCバルブ20を制御し、エンジン19の回転数をC増加させる(ステップS6、S7)。ここで、Aはトローリング運転速度範囲の上限速度に対応するエンジン19の回転数(例えば1500rpm)であり、Cはエンジン19の回転数の所定の単位増加回転数(例えば50rpm)である。アップスイッチ34Aの押下が検出された時点でエンジン19の回転数がAである場合、ECU41はエンジン19の回転数をそのまま保つように制御を行う。
【0046】
一方、トロールモードである間、利用者がダウンスイッチ34Bを押下すると(ステップS5:DOWN)、ECU41はその旨を検出し、その時点のエンジン19の回転数がBを上回っている場合に限り、ISCバルブ20を制御し、エンジン19の回転数をD減少させる(ステップS8、S9)。ここで、Bはトローリング運転速度範囲の下限速度に対応するエンジン19の回転数(例えば500rpm)であり、Dはエンジン19の回転数の所定の単位減少回転数(例えば50rpm)である。ダウンスイッチ34Bの押下が検出された時点でエンジン19の回転数がBである場合、ECU41はエンジン19の回転数をそのまま保つように制御を行う。
【0047】
他方、トロールモードである間、利用者がスロットルグリップ32を回動させ、エンジン19の回転数を、Eを上回る回転数に増加させたときには、ECU41はその旨を検出し(ステップS10:YES)、モードをトロールモードから通常モードへ切り換える(ステップS12)。ここで、Eは、例えば、トローリング運転速度範囲の上限速度に対応するエンジン19の回転数(例えば1500rpm)、あるいはトローリング運転速度範囲の上限速度をわずかに超えた速度に対応するエンジン19の回転数である。
【0048】
また、トロールモードである間、利用者がアップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとを同時に押下したとき、ECU41はその旨を検出する(ステップS11:YES)。そして、ECU41は、モードをトロールモードから通常モードに切り換える(ステップS12)。これにより、アップスイッチ34Aは船外機本体11の傾斜角を増加させるスイッチとして機能し、ダウンスイッチ34Bは船外機本体11の傾斜角を減少させるスイッチとして機能するようになる。また、モードがトロールモードから通常モードに切り換えられたとき、モードが切り換えられたことを示す情報を操作パネル5に設けられたディスプレイ等に表示してもよいし、ブザー音を鳴らしてもよい。
【0049】
以上説明したとおり、本発明の実施形態による船外機4によれば、一対のスイッチ34A、34Bを有する単一のスイッチユニット34により、船外機本体11の傾斜角を増減させることができると共に、エンジン19の回転数を増減させて船舶の速度をトローリング運転速度範囲内において増減させることができる。このように、一対のスイッチ34A、34Bを有する単一のスイッチユニット34に2つの機能を持たせることにより、船外機4のティラーハンドル17に設けるスイッチユニットの個数を減らすことができ、これにより船外機4の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0050】
また、ティラーハンドル17の1箇所に単一のスイッチユニット34を設けることにより、スイッチユニット34の良好な操作性を容易に確保することができ、船外機本体11の傾斜角の増減操作およびトローリング運転時におけるエンジン19の回転数調節操作の双方について操作性を容易に向上させることができる。
【0051】
また、船外機4によれば、スイッチユニット34がティラーハンドル17のスロットルグリップ32の近傍に設けられているので、ティラーハンドル17を用いて船舶1の運転をしている利用者は、ティラーハンドル17のスロットルグリップ32を握ったままスイッチユニット34を操作し、船外機本体11の傾斜角の増減操作、またはトローリング運転時におけるエンジン19の回転数調節操作を行うことができる。これにより、利用者は、船外機本体11の傾斜角の増減操作およびトローリング運転時におけるエンジン19の回転数調節操作を行う際に、視線を大きく移動させたり、スロットルグリップ32やハンドル4から手を離したりする必要がないので、これらの操作を容易に行うことができ、また運転の安全性を高めることができる。
【0052】
また、船外機4によれば、利用者はアップスイッチ34Aとダウンスイッチ34Bとを同時に押下することによりモードの切換を行うことができる。これにより、利用者は、スイッチユニット34のモード切換を簡単にかつ確実に行うことができる。
【0053】
また、船外機4によれば、上述したとおり、(a)シフトギア機構24の状態がニュートラル状態でない、(b)エンジン19の状態がアイドル状態である、(c)エンジン19に異常がない、の3つの条件のうち1つでも充足しない場合には、モードをトロールモードに切り換えない。これにより、船外機4の誤操作または誤動作を防ぐことができる。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は本発明の第2の実施形態による船外機が搭載された船舶を示し、
図9および
図10は第2の実施形態による船外機におけるリモートコントローラを示している。なお、第2の実施形態についての説明において、上述した第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
第2の実施形態の特徴は、船外機本体11の傾斜角の増減操作およびトローリング運転時におけるエンジン19の回転数調節操作の双方を行う単一のスイッチユニット63をリモートコントローラ58のリモコンレバー62に設けた点にある。
【0056】
すなわち、
図8中の船舶51において、船体52には運転席55が設けられ、運転席55の前方にはハンドル56および操作パネル57が設けられている。また、船体52の船尾板53には、本発明の第2の実施形態による船外機54が取り付けられている。さらに、船体52には、船外機54を遠隔操作するためのリモートコントローラ58が設けられている。
【0057】
リモートコントローラ58は、
図9に示すように、コントローラ本体61と、コントローラ本体61に設けられたリモコンレバー62とを備え、利用者は、運転席55に座した状態で、
図10に示すように右手でリモコンレバー62を握り、リモコンレバー62を
図10中の矢示Dに示すように傾けることにより、エンジン19の回転数およびプロペラ18の回転方向を制御することができる。
【0058】
リモコンレバー62の先端部には、アップスイッチ63Aおよびダウンスイッチ63Bを有する単一のスイッチユニット63を設けられている。スイッチユニット63は、スイッチユニット34と同様に、通常モード時には、船外機本体11の傾斜角を増減させるスイッチユニットとして機能し、トロールモード時には、エンジン19の回転数をトローリング運転速度範囲に対応する回転数の範囲内において増減させるスイッチユニットとして機能する。利用者は、
図10に示すように右手でリモコンレバー62を握ったままの状態で、右手の親指でアップスイッチ63Aおよびダウンスイッチ63Bのそれぞれを容易に押下することができる。
【0059】
このような構成を有する本発明の第2の実施形態による船外機54によっても、上述した本発明の第1の実施形態による船外機4と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
なお、船外機本体11の傾斜角を増減させる機能と、エンジン19の回転数をトローリング運転速度範囲に対応する回転数の範囲内において増減させる機能とを有する単一のスイッチユニット34(63)を船舶1の操作パネル57に設けてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、アップスイッチ34A(63A)とダウンスイッチ34B(63B)とが同時に押下されても、(a)シフトギア機構24の状態がニュートラル状態でない、(b)エンジン19の状態がアイドル状態である、(c)エンジン19に異常がない、といった3つの条件を1つでも充足しない場合には、モードを通常モードからトロールモードに切り換えない構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば、アップスイッチ34A(63A)とダウンスイッチ34B(63B)とが同時に押下されたとき、上記(a)および(b)の条件を充足した場合には、通常モードからトロールモードへの切換を許可する構成としてもよい。また、トロールモードへの切換を許可する条件として、上記(a)、(b)、(c)の条件に他の条件を追加してもよい。
【0062】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う船外機もまた本発明の技術思想に含まれる。