【文献】
岡重嘉泰、他,家庭用デジタルビデオカメラを用いた変位計測による橋梁の応答振動数特性,土木学会第65回年次学術講演会講演概要集,2010年 9月,NO.I−456,P.911−912
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造物上における複数の観測点それぞれに、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるようデジタルビデオカメラを設置する第1の工程と、
前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラを、前方の不動点に所在する撮影目標物が撮影範囲に収まるよう配置するか、または、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方に位置するデジタルビデオカメラを不動点に設置する第2の工程と、
各デジタルビデオカメラによる前記連なりにおける前方の撮影目標物の撮影を行う第3の工程と、
前記撮影で得た撮影目標物に関する映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関し、前記不動点を起点として各静止画像間での変位方向を特定する第4の工程と、
前記特定した各観測点での変位方向に基づき、前記構造物の各観測点を連ねた領域に関する変形モードを特定する第5の工程と、
を含むことを特徴とするモード解析方法。
前記第4の工程において、前記撮影で得た撮影目標物に関する映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定し、
前記第5の工程において、前記算定した各観測点での所定時間毎の変位量に基づき、前記構造物の各観測点を連ねた領域に関する変形モードを特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のモード解析方法。
構造物上における複数の観測点それぞれに、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるようデジタルビデオカメラを設置する第1の工程と、
前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラを、前方の不動点に所在する撮影目標物が撮影範囲に収まるよう配置し、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方に位置するデジタルビデオカメラを不動点に設置する第2の工程と、
各デジタルビデオカメラによる前記連なりにおける前方の撮影目標物の撮影を行う第3の工程と、
前記撮影で得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記いずれかの不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する第4の工程と、
一方の不動点を起点として他方の不動点に向けて、前記算定した各観測点の変位量を合算し、該合算値を前記各測定点の変位量に振り分ける第5の工程と、
前記各観測点での所定時間毎の変位量に基づき、前記構造物の各観測点を連ねた領域に関する変形モードを特定する第6の工程と、
を含むことを特徴とするモード解析方法。
構造物上における複数の観測点それぞれに、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるようデジタルビデオカメラを設置する第1の工程と、
前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラを、前方の不動点に所在する撮影目標物が撮影範囲に収まるよう配置するか、または、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方に位置するデジタルビデオカメラを不動点に設置する第2の工程と、
各デジタルビデオカメラによる前記連なりにおける前方の撮影目標物の撮影を行う第3の工程と、
前記撮影で得た撮影目標物に関する映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する第4の工程と、
を含むことを特徴とする変位計測方法。
構造物上における複数の観測点それぞれに、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるようデジタルビデオカメラを設置する第1の工程と、
前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラを、前方の不動点に所在する撮影目標物が撮影範囲に収まるよう配置し、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方に位置するデジタルビデオカメラを不動点に設置する第2の工程と、
各デジタルビデオカメラによる前記連なりにおける前方の撮影目標物の撮影を行う第3の工程と、
前記撮影で得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記いずれかの不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する第4の工程と、
一方の不動点を起点として他方の不動点に向けて、前記算定した各観測点の変位量を合算し、該合算値を前記各測定点の変位量に振り分ける第5の工程と、
を含むことを特徴とする変位計測方法。
構造物上における複数の観測点それぞれに設置され、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めたデジタルビデオカメラと、情報処理装置とを含み、
前記情報処理装置は、
前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラによる前方の不動点に所在する撮影目標物の撮影、または、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方のものであって、不動点に設置されたデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、および前記最前方と最後方の各デジタルビデオカメラ以外のデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、によって得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関し、前記不動点を起点として各静止画像間での変位方向を特定する処理と、
前記特定した各観測点での変位方向に基づき、前記構造物の各観測点を連ねた領域に関する変形モードを特定する処理を実行するものである、
ことを特徴とするモード解析システム。
構造物上における複数の観測点それぞれに設置され、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるデジタルビデオカメラと、情報処理装置とを含み、
前記情報処理装置は、
前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラによる前方の不動点に所在する撮影目標物の撮影、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方のものであって、不動点に設置されたデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、および、前記最前方と前記最後方の各デジタルビデオカメラ以外のデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、によって得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記いずれかの不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する処理と、
一方の不動点を起点として他方の不動点に向けて、前記算定した各観測点の変位量を合算し、該合算値を前記各測定点の変位量に振り分ける処理と、
前記各観測点での所定時間毎の変位量に基づき、前記構造物の各観測点を連ねた領域に関する変形モードを特定する処理とを実行するものである、
ことを特徴とするモード解析システム。
構造物上における複数の観測点それぞれに設置され、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるデジタルビデオカメラと、情報処理装置とを含み、
前記情報処理装置は、
前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラによる前方の不動点に所在する撮影目標物の撮影、または、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方のものであって、不動点に設置されたデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、および前記最前方と最後方の各デジタルビデオカメラ以外のデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、によって得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する処理を実行するものである、
ことを特徴とする変位計測システム。
構造物上における複数の観測点それぞれに設置され、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるデジタルビデオカメラと、情報処理装置とを含み、
前記情報処理装置は、
前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラによる前方の不動点に所在する撮影目標物の撮影、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方のものであって、不動点に設置されたデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、および、前記最前方と前記最後方の各デジタルビデオカメラ以外のデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、によって得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記いずれかの不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する処理と、
一方の不動点を起点として他方の不動点に向けて、前記算定した各観測点の変位量を合算し、該合算値を前記各測定点の変位量に振り分ける処理とを実行するものである、
ことを特徴とする変位計測システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ある方向に対して長さのある構造物の場合、外力に対するその構造物の挙動を解析して、構造物の状態を把握しようとすると、各点における変位量や振動数だけでなく、構造物全体の変形モードや振動モードを確認することも重要となる。想定される外力と構造物の強度特性等に基づくコンピュータシミュレーションを行って振動モードを推定する方法も存在するが、これはあくまでシミュレーションであり、実体の確認とはならない。
従来、こうした振動モード等の特定にあたり、上述した、加速度センサにて測定される加速度値を積分し変位を求める手法等を用いていたが、その場合、センサなど測定装置を構造物に設置して計測を行う必要がある。しかしながら、そもそも測定装置の十分な設置場所を構造物にて確保できない場合や、機材、人員の配置用として構造物周囲に大がかりな仮設の足場を組む必要がある場合などもあり、計測自体が困難となったり、計測のための手間やコストが増大するといった問題があった。
【0005】
そこで本発明では、精度良好なモード解析や変位計測を簡便かつ低コストで行う技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明のモード解析方法は、構造物上における複数の観測点それぞれに、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるようデジタルビデオカメラを設置する第1の工程と、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラを、前方の不動点に所在する撮影目標物が撮影範囲に収まるよう配置するか、または、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方に位置するデジタルビデオカメラを不動点に設置する第2の工程と、各デジタルビデオカメラによる前記連なりにおける前方の撮影目標物の撮影を行う第3の工程と、前記撮影で得た撮影目標物に関する映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関し、前記不動点を起点として各静止画像間での変位方向を特定する第4の工程と、前記特定した各観測点での変位方向に基づき、前記構造物の各観測点を連ねた領域に関する変形モードを特定する第5の工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明では、従来のように、センサなど測定装置を構造物の複数点に設置して計測を行う必要も無く、構造物周囲に足場等の仮設構造物を組む為の手間やコストなども抑制されることとなる。また、観測点での変位量の絶対値が測定しにくく変位方向のみ特定できるような状況であっても、不動点を起点として構造物の変形モードを効率的かつ確実に特定することできる。よって本発明によれば、精度良好なモード解析を簡便かつ低コストで行うことが可能となる。
【0008】
なお、前記モード解析方法の前記第4の工程において、前記撮影で得た撮影目標物に関する映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定し、前記第5の工程において、前記算定した各観測点での所定時間毎の変位量に基づき、前記構造物の各観測点を連ねた領域に関する変形モードを特定する、としてもよい。なお、前記静止画像中における所定画素に関して各静止画像間で特定する変位は、そのベクトルも概念に含むものとする。従って、前記不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算する際には、方向成分を考慮して変位の合算が行われる(以下同様)。この発明によれば、前記変形モードを変位量の絶対値に基づいて精度良く特定することが可能となる。
【0009】
また、本発明の他のモード解析方法は、構造物上における複数の観測点それぞれに、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるようデジタルビデオカメラを設置する第1の工程と、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラを、前方の不動点に所在する撮影目標物が撮影範囲に収まるよう配置し、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方に位置するデジタルビデオカメラを不動点に設置する第2の工程と、各デジタルビデオカメラによる前記連なりにおける前方の撮影目標物の撮影を行う第3の工程と、前記撮影で得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記いずれかの不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する第4の工程と、一方の不動点を起点として他方の不動点に向けて、前記算定した各観測点の変位量を合算し、該合算値を前記各測定点の変位量に振り分ける第5の工程と、前記各観測点での所定時間毎の変位量に基づき、前記構造物の各観測点を連ねた領域に関する変形モードを特定する第6の工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、不動点に設置された撮影目標物(デジタルビデオカメラを含む概念)に関する映像中の所定画素を起点にし、各測定点での変位方向を特定することが可能であり、更には、不動点を起点に各測定点での変位量を合算して任意の測定点での変位量を算定できる。なお、ある不動点から他の不動点に至る間の測定点について変位量を順次合算していけば、本来その合算値はゼロとなるはずである。実際の合算値がゼロでない場合、それは測定誤差であると考えられるため、この誤差分の測定値を各測定点での計測値に振り分けることで変位観測の精度を向上させ、ひいては変形モードの解析精度を向上させることができる。
【0011】
なお、前記複数の観測点が構造物上において環状に連なっている場合、前記第2の工程において、前記不動点上の撮影目標物と前記最後方のデジタルビデオカメラを兼ねる起点デジタルビデオカメラを不動点に設置し、前記第3の工程において、各デジタルビデオカメラおよび起点デジタルビデオカメラにより、前記環状の連なりにおいて隣接する他のデジタルビデオカメラなどの撮影目標物の撮影を行う、としてもよい。こうした発明によれば、測定点間に存在する不動点に設置された起点デジタルビデオカメラの映像中の所定画素を起点にし、各測定点での変位方向を特定することが可能であり、更には、不動点から各測定点での変位量を合算して任意の測定点での変位量を算定できる。また、環状に存在する各測定点の変位量を、例えば不動点前方の測定点から不動点後方の測定点まで順次合算し、その合算値すなわち誤差分の測定値を各測定点での計測値に振り分けることで変位観測の精度を向上させ、ひいては変形モードの解析精度を向上させることができる。
【0012】
なお、前記モード解析方法において、前記特定した変形モードを時系列順に連続させて振動モードを特定する第7の工程を含むとしてもよい。これによれば、振動の振幅方向と直交する方向に長さのある構造物において、振動モードを特定することが可能となり、構造物の状態や外力に対する挙動をより詳細に確認する情報を取得することができる。また、変位量を利用することとすれば、前記振動モードをより精度良く特定することが可能となる。
【0013】
また、前記モード解析方法の前記第3の工程において、前記各デジタルビデオカメラの撮影範囲に向け、発光装置による発光を行い、前記第4の工程において、前記映像を構成するフレームのうち前記発光が写り込んでいるフレームを、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点と特定し、このフレームを起点に一定時間毎の静止画像を抽出することを特徴とするとしてもよい。
【0014】
従来では、測定装置間の同期をとるために、例えば電気信号を測定装置に一斉通知するなどの手法がとられていたが、マイクロ秒単位での同期が必要なことから、各測定装置に固有の動作時間の差異、ネットワーク遅延等の問題があって、精度良く同期を図ることはかなり困難であった。しかしながら、上記のような本発明によれば、各デジタルビデオカメラに固有の差異等に関係なく、デジタルビデオカメラ間で同時刻に撮影されたフレームを起点として特定することができる。なお、各デジタルビデオカメラのうち、発光装置からの発光を直接撮影できない位置にあるものについては、発光装置と該デジタルビデオカメラとの間に、前記発光を導く鏡等の反射材を適宜設置し、反射光をデジタルビデオカメラの撮影領域に導くとしてもよい。
【0015】
また、前記モード解析方法の前記第3の工程において、前記各デジタルビデオカメラの撮影範囲に向けた、前記発光装置による発光を、所定時間のみの短時間発光とし、前記第4の工程において、前記映像を構成するフレームのうち前記発光装置による短時間発光が写り込んでいるフレームを、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点と特定し、このフレームを起点に一定時間毎の静止画像を抽出するとしてもよい。このように、発光装置による発光を短時間の発光、例えばフラッシュの発光のごときものとすれば、発光が写り込むフレーム数が限定的となって、その他のフレームとの区別が明確になり、ひいては各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を確実に特定することが可能になる。
【0016】
また、本発明の変位計測方法は、構造物上における複数の観測点それぞれに、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるようデジタルビデオカメラを設置する第1の工程と、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラを、前方の不動点に所在する撮影目標物が撮影範囲に収まるよう配置するか、または、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方に位置するデジタルビデオカメラを不動点に設置する第2の工程と、各デジタルビデオカメラによる前記連なりにおける前方の撮影目標物の撮影を行う第3の工程と、前記撮影で得た撮影目標物に関する映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する第4の工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明では、従来のように、センサなど測定装置を構造物の複数点に設置して計測を行う必要も無く、構造物周囲に足場等の仮設構造物を組む為の手間やコストなども抑制されることとなる。また、不動点を起点として構造物の変位量を効率的かつ確実に特定することできる。よって本発明によれば、精度良好な変位計測を簡便かつ低コストで行うことが可能となる。
【0018】
また、本発明の他の変位計測方法は、構造物上における複数の観測点それぞれに、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるようデジタルビデオカメラを設置する第1の工程と、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラを、前方の不動点に所在する撮影目標物が撮影範囲に収まるよう配置し、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方に位置するデジタルビデオカメラを不動点に設置する第2の工程と、各デジタルビデオカメラによる前記連なりにおける前方の撮影目標物の撮影を行う第3の工程と、前記撮影で得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記いずれかの不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する第4の工程と、一方の不動点を起点として他方の不動点に向けて、前記算定した各観測点の変位量を合算し、該合算値を前記各測定点の変位量に振り分ける第5の工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、不動点を起点に各測定点での変位量を合算して任意の測定点での変位量を算定できる。なお、ある不動点から他の不動点に至る間の測定点について変位量を順次合算していけば、本来その合算値はゼロとなるはずである。実際の合算値がゼロでない場合、それは測定誤差であると考えられるため、この誤差分の測定値を各測定点での計測値に振り分けることで変位観測の精度を向上させることができる。
【0020】
また、本発明のモード解析システムは、構造物上における複数の観測点それぞれに設置され、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めたデジタルビデオカメラと、情報処理装置とを含み、前記情報処理装置は、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラによる前方の不動点に所在する撮影目標物の撮影、または、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方のものであって、不動点に設置されたデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、および前記最前方と最後方の各デジタルビデオカメラ以外のデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、によって得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関し、前記不動点を起点として各静止画像間での変位方向を特定する処理と、前記特定した各観測点での変位方向に基づき、前記構造物の各観測点を連ねた領域に関する変形モードを特定する処理を実行するものである、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明のモード解析システムは、構造物上における複数の観測点それぞれに設置され、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるデジタルビデオカメラと、情報処理装置とを含み、前記情報処理装置は、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラによる前方の不動点に所在する撮影目標物の撮影、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方のものであって、不動点に設置されたデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、および、前記最前方と前記最後方の各デジタルビデオカメラ以外のデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、によって得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記いずれかの不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する処理と、一方の不動点を起点として他方の不動点に向けて、前記算定した各観測点の変位量を合算し、該合算値を前記各測定点の変位量に振り分ける処理と、前記各観測点での所定時間毎の変位量に基づき、前記構造物の各観測点を連ねた領域に関する変形モードを特定する処理とを実行するものである、ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の変位計測システムは、構造物上における複数の観測点それぞれに設置され、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるデジタルビデオカメラと、情報処理装置とを含み、前記情報処理装置は、各デジタルビデオカメラによる前記連なりにおける前方の撮影目標物の撮影で得た撮影目標物に関する映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する処理を実行するものである、ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の変位計測システムは、構造物上における複数の観測点それぞれに設置され、前方にある他デジタルビデオカメラの設置位置における撮影目標物を撮影範囲に収めるデジタルビデオカメラと、情報処理装置とを含み、前記情報処理装置は、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラによる前方の不動点に所在する撮影目標物の撮影、前記複数の観測点におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最後方のものであって、不動点に設置されたデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、および、前記最前方と前記最後方の各デジタルビデオカメラ以外のデジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物の撮影、によって得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記いずれかの不動点より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する処理と、一方の不動点を起点として他方の不動点に向けて、前記算定した各観測点の変位量を合算し、該合算値を前記各測定点の変位量に振り分ける処理とを実行するものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、精度良好なモード解析や変位計測を簡便かつ低コストで行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
−−−システム等の構成例−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態におけるモード解析システム10の説明図である。このモード解析システム10は、精度良好なモード解析を簡便かつ低コストで行うものであり、
図1に示すように、情報処理装置100、複数のデジタルビデオカメラ200で構成されており、デジタルビデオカメラ200の中には、最前方のデジタルビデオカメラ230および最後方のデジタルビデオカメラ240が含まれている。
【0027】
ここでは、解析対象の構造物として橋梁1の橋桁2を例示する。橋梁1を車両や鉄道など所定の重量を持った移動体が通行すれば、移動体の自重や移動速度の大きさ等に応じて橋桁2が鉛直方向に振動したり沈み込んだりすることとなる。橋梁1の健全性を診断したり、振動モードを把握する場合、こうした橋桁2の変位を観測し変位量を得ておくことは重要である。なお、モード解析の適用対象としては、前記橋梁1の他に、例えば、管路、架線などの各種構造物、或いは変形観測がなされる地盤も想定できる。
【0028】
第1の実施形態では、橋梁1において適宜な橋脚の間に渡された橋桁2の上に複数の観測点6を設定している。勿論、橋桁2以外の箇所を観測点としてもよい。
図1において、橋桁上の測定点6xには撮影目標物20の1つとしてターゲット21が配置されている。このターゲット21は最前方のデジタルビデオカメラ230の撮影目標物20となる。また、前記最前方のデジタルビデオカメラ230より後方の橋桁延長方向において、一定距離毎に離間した各観測点6b〜6eのそれぞれに、前方にある撮影目標物20である他観測点のデジタルビデオカメラを撮影範囲に収めるようデジタルビデオカメラ200が連ねて設置されている。
【0029】
また、橋梁1を架橋する地盤3を、橋梁上での車両通行等にかかわらず変位が生じない不動点8と捉えて、この不動点8に前記最後方のデジタルビデオカメラ240を設置している。最後方のデジタルビデオカメラ240は、前記複数の観測点6におけるデジタルビデオカメラ200の連なりのうち最後方に位置している。したがって、第1の実施形態においては、最前方のデジタルビデオカメラ230、不動点8である地盤3に設置された最後方のデジタルビデオカメラ240、これらデジタルビデオカメラ230、240以外のデジタルビデオカメラであって橋桁上の他の観測点6のデジタルビデオカメラ200、の少なくとも3台のデジタルビデオカメラが、撮影範囲を介して直列的に連なっている。
【0030】
ただし、
図1に例示するように、最前方のデジタルビデオカメラ230、最後方のデジタルビデオカメラ240、前記他の観測点6のデジタルビデオカメラ200、らが直列に連なる配置形態のみならず、各デジタルビデオカメラが前方の観測点6における前記ターゲット21や他のデジタルビデオカメラなどの撮影目標物を撮影範囲に捉える配置であればよい。従って、前記最前方のデジタルビデオカメラ230ないし前記最後方のデジタルビデオカメラ240を一端としたデジタルビデオカメラ200の連なり形状が、橋梁上空から見て蛇行していたり、鈎型に屈曲を繰り返していたり、といった具合に様々であってもよい。
【0031】
なお、撮影目標物20としては、上述したターゲット21の他に解析対象の構造物(この例では橋梁1)が具備する部材等の一部や、前記ターゲット21の三脚や支柱などの設置用部材なども想定でき、また、前記デジタルビデオカメラ200の他にデジタルビデオカメラ付帯のアクセサリ類、三脚や支柱などの設置用部材、なども想定できる。
【0032】
また、前記モード解析システム10において、前記最前方のデジタルビデオカメラ230、最後方のデジタルビデオカメラ240、前記他の観測点6のデジタルビデオカメラ200、らの撮影範囲に向け発光を行う発光装置300が含まれるとすれば好適である。この発光装置300としては、カメラ撮影時に使用されるフラッシュを採用できる。発光装置300による発光は、前記最前方のデジタルビデオカメラ230、最後方のデジタルビデオカメラ240、前記他の観測点6のデジタルビデオカメラ200らが撮影した映像中に写り込むことになる。映像中に写り込んだ発光は、後述する情報処理装置100での処理に際し、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点の目印となるものである。すなわち、情報処理装置100は、映像を構成するフレームのうち前記発光が写り込んでいるフレームを、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点と特定するのである。従って、複数フレームを跨って発光が撮影されないよう、フレームレートが示す1フレームの撮影時間以下で前記発光がなされるよう、発光装置300での発光時間は調整してある。
【0033】
前記最前方のデジタルビデオカメラ230から前記最後方のデジタルビデオカメラ240に至る各デジタルビデオカメラ同士は、前方の撮影目標物20である前記ターゲット21および他のデジタルビデオカメラを撮影範囲に収めるよう連なって設置されるから、橋桁2の延長方向など視準方向が或る程度揃っている。従って、揃った視準方向に合わせて前記発光装置300での発光を行えば、いずれのデジタルビデオカメラでも発光を捉えることが可能となり、同期を図るための作業や手間が簡略化される。
【0034】
なお、前記発光装置300の発光がデジタルビデオカメラ(前記最前方のデジタルビデオカメラ230、最後方のデジタルビデオカメラ240、前記他の観測点6のデジタルビデオカメラ200)の撮影範囲に入らないおそれがある場合、発光装置300で発光された光が障害物等を回避して該当デジタルビデオカメラに到達できるよう、適宜な位置に反射材として鏡400を配置するとしてもよい。このような形態を採用すれば、交通量や障害物が多かったりといった困難な状況であっても、これに柔軟に対応して発光装置300からの発光をデジタルビデオカメラに導くことができる。ひいては、より確実に上述の所定時点の特定が可能になる。
【0035】
従来では、撮影装置間の同期をとるために、電気信号を撮影装置に一斉通知するなどの手法がとられていたが、各撮影装置に固有の動作時間の差異、ネットワーク遅延等の問題があって、精度良く同期を図ることはかなり困難であった。しかしながら、上記のように発光装置300の発光を利用することで、各デジタルビデオカメラに固有の差異等に関係なく、デジタルビデオカメラ間で同時刻に撮影されたフレームを起点として特定することができる。
【0036】
続いて、第1の実施形態のモード解析システム10を構成する各装置について、そのハードウェア構成を詳述する。
図2は、第1の実施形態におけるモード解析システム10を構成する各装置らのハードウェア構成例を示す図である。第1の実施形態のモード解析システム10を構成する情報処理装置100は、コンピュータとして備えるべき、ハードディスクドライブなど不揮発性記憶装置たる記憶部101、RAMなど揮発性記憶装置たるメモリ103、記憶部101のプログラム102をメモリ103に読み出して実行するCPUたる演算部104、ユーザからの指示を受け付けるキーボードやマウス等の入力部105、処理結果を出力するディスプレイ装置やスピーカーといった出力部106、他装置とデータ授受を行うためのインターフェイス部107を備えている。
【0037】
また、モード解析システム10を前記情報処理装置100と共に構成するデジタルビデオカメラ200(最前方のデジタルビデオカメラ230、最後方のデジタルビデオカメラ240を含む)は、所定レベルのフレームレートで動画撮影が可能なビデオカメラであり、ビデオカメラとして備えるべき一般的構成は勿論具備している。このデジタルビデオカメラ200は、撮影用の光学系装置209や映像データの格納用媒体210(各種記録媒体とそのリーダライタ、ハードディスクドライブ等)の他に、映像データのデジタル処理など各種情報処理を実行するためのコンピュータチップが備わっている。このコンピュータチップは、不揮発性記憶装置たる記憶部201、揮発性記憶装置たるメモリ203、記憶部201からプログラム202をメモリ203に読み出して実行するCPUたる演算部204、および他装置とデータ授受を行うためのインターフェイス部207を含んでいる。
【0038】
続いて、モード解析システム10を構成する情報処理装置100の演算部104が、プログラム102の実行により実現する処理について説明する。情報処理装置100は、前記複数の観測点6におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラ230による前記ターゲット21の撮影、および、前記最前方のデジタルビデオカメラ230以外の各デジタルビデオカメラ(最後方のデジタルビデオカメラ240含む)による前記連なりにおける前方の他デジタルビデオカメラの撮影、で得た撮影目標物20たる、前記観測点6xのターゲット21および前記観測点6a〜6eの各デジタルビデオカメラに関する映像を、各デジタルビデオカメラのインターフェイス部207から取得し、該映像データから、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出する。
【0039】
なお、デジタルビデオカメラ200(最前方のデジタルビデオカメラ230、最後方のデジタルビデオカメラ240含む)らは、情報処理装置100からの映像データの取得要求をインターフェイス部207にて受け付け、この要求に応じて格納用媒体210から映像データを読み出し、これをインターフェイス部207を介して情報処理装置100に送信する。或いは、情報処理装置100のインターフェイス部107に接続された所定の読み取り装置に対し、ユーザが各デジタルビデオカメラらの格納用媒体210をセットし、前記読み取り装置が格納用媒体210から読み取った映像データを情報処理装置100に送るとしてもよい。
【0040】
また前記情報処理装置100は、前記抽出した静止画像中における所定画素に関し、前記最後方のデジタルビデオカメラ240が所在する不動点8を起点として各静止画像間での変位方向を特定し、前記特定した各観測点での変位方向に基づき、前記構造物たる橋梁1の各観測点6を連ねた領域に関する変形モードを特定する。なお、前記情報処理装置100は、前記撮影で得た各観測点6に関する映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記最後方のデジタルビデオカメラ240が設置された不動点8より該当観測点に至る観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定するとすれば好適である。
【0041】
なお、前記情報処理装置100は、前記抽出した各静止画像において撮影目標物20たるデジタルビデオカメラ200やターゲット21の所定箇所(例:特定の部品等)を含む所定範囲の画像について二値化処理を行う処理を実行することとなる。画像の二値化処理は、画素の濃淡情報が一定閾値より小さければ白色、一定閾値より大きければ黒色といった具合に、各画素を黒白二色に振り分ける処理となる。こうした二値化処理の手法自体は従来手法を採用すればよい。また、こうした二値化処理を実行するためのプログラムが前記プログラム102には含まれている。また、前記情報処理装置100は、二値化処理された前記所定範囲の画像においてデジタルビデオカメラ200やターゲット21の所定箇所(予め定めたもので寸法は判明している)を特定し、該特定した所定箇所の各静止画像間での画素数単位の変位を特定することとなる。デジタルビデオカメラ200やターゲット21は橋梁1の観測点6に固定されているから、前記デジタルビデオカメラ200やターゲット21など撮影目標物20の所定箇所は観測点6と同意とみなせる。
【0042】
二値化処理された前記所定範囲の画像において前記所定箇所を特定する処理は、情報処理装置100が、入力部105にてユーザから該当画像の指定を受けて特定する場合があげられる。或いは、情報処理装置100が、前記所定箇所の形状パターンのデータ(例:所定箇所を描画する際の各線分の長さと描画角度等のデータ)を記憶部101に保持していて、その形状パターンに合致する黒色画素の集合体を前記所定箇所と認識するといった画像認識処理を行う場合もあげられる。
【0043】
また、特定した前記所定箇所つまり所定画素に関して各静止画像間での変位を特定するにあたっては、前記所定画素に関する画素数単位の変位と前記所定箇所に関して予め判明している寸法とに基づいて処理を行う。例えば、各静止画像の座標平面上における、前記所定箇所に対応した画素の座標値を、所定時間間隔の静止画像間で比較し、各静止画像の前記座標値の間の距離を算定することで画素数単位の変位が得られる。当然、画素数単位の変位がそのまま実際の所定箇所の変位量とならないから、その場合、既知の寸法値に対する画素数から単位画素あたりの変位量を示す係数値を情報処理装置100が記憶部101等に予め保持しておき、各静止画像の前記座標値の間の距離すなわち画素の変位量に前記係数値を乗算し、所定箇所の変位量を算定するとすればよい。
【0044】
情報処理装置100は、前記最後方のデジタルビデオカメラ240が設置された不動点8より、例えば、該当観測点6cに至るまでの各観測点6e、6d、6cについて得た各変位を、“0.1+0.2+0=0.3”mmなどと合算することで、観測点6cでの所定時間毎の変位量を“0.3mm”と算定できる。
【0045】
また、前記情報処理装置100は、前記算定した各観測点での所定時間毎の変位量に基づき、前記構造物たる橋梁1の各観測点6を連ねた領域において、該当観測点での前記変位量に応じた変位の発生が所定時間毎に生じる変形モードを特定する。この処理の詳細については後述する。
【0046】
ここで、CPU等の演算部によりプログラムを実行することで、必要な機能を実装する例をあげたが、必要な機能を実現する電子回路等を前記情報処理装置100やデジタルビデオカメラ200らが備えていて、同様の処理を実行するとしても勿論問題ない。
【0047】
−−−モード解析方法の手順例−−−
次に、第1の実施形態におけるモード解析方法の処理手順について説明する。
図3は、第1の実施形態におけるモード解析方法の処理手順例を示す説明図である。まず、解析対象となる橋桁2に複数設定された観測点6のそれぞれに、橋桁2の延長方向のうち一方にレンズを向けてデジタルビデオカメラ200を設置する(s100)。この時、各デジタルビデオカメラ200は、その前方にある他観測点のデジタルビデオカメラを撮影範囲に収めるよう視準方向等を調整している。また、デジタルビデオカメラ200のうち最前方のデジタルビデオカメラ230は、その前方にあるターゲット21を撮影範囲に収めるよう視準方向等を調整している。また、デジタルビデオカメラ200のうち最後方のデジタルビデオカメラ240は、橋梁上での変位発生に無関係であって変位を生じない不動点8たる前記地盤3に設置する(s101)。この最後方のデジタルビデオカメラ240は、橋桁上に設置された前記デジタルビデオカメラ200の連なりのうち最後方に位置する。
【0048】
各デジタルビデオカメラ200(最前方のデジタルビデオカメラ230および最後方のデジタルビデオカメラ240含む。以下同様)の間、および最前方のデジタルビデオカメラ230とターゲット21との間の各距離は、デジタルビデオカメラの望遠撮影機能において所定解像度でターゲット21ないしデジタルビデオカメラの所定箇所を撮影できる距離となる。なお、前記所定箇所は予め寸法が判明しているターゲット21ないしデジタルビデオカメラに本来備わる部品、部材等である場合の他、ターゲット21ないしデジタルビデオカメラに付帯させるアクセサリ類、ターゲット21ないしデジタルビデオカメラの表面にペイントしたり所定部材を取り付けて実現する目印、などであっても勿論問題ない。
【0049】
上述のように設置がなされたデジタルビデオカメラ200らのインターフェイス部207と、情報処理装置100のインターフェイス部107とは所定の通信ケーブル、ないし無線通信手段でデータ授受可能に接続しておくと好適である。
【0050】
各デジタルビデオカメラ200らは、観測担当者からの指示をリモコンからの赤外線通信等を介して受信し、自身が撮影を担当する観測点6のターゲット21ないしデジタルビデオカメラ200に対する撮影を開始する(s102)。或いは、デジタルビデオカメラ200らが、自身で備えるタイマー機能206等で予めセットされた一定時刻の到来を検知して、自律的に撮影を開始するとしてもよい。また、前記発光装置300が、上記観測担当者からの指示を前記デジタルビデオカメラ200らと同様に受けて、指示受信から一定時間後に所定時間だけ発光動作を行う(s103)。一定時間後に発光動作を行うのは、各デジタルビデオカメラ200らが確実に該発光を撮影できるよう、全てのデジタルビデオカメラ200において撮影が開始済みとなったタイミングを見計らう意図がある。
【0051】
各デジタルビデオカメラ200は、撮影の進行と共に、得られた映像データを格納用媒体210に格納している。当然、この映像データを構成するいずれかのフレームには、前記発光装置300による発光が写り込んでいる。各デジタルビデオカメラ200は、インターフェイス部207を介して接続された情報処理装置100に対し、映像データを一定時間毎またはリアルタイムにアップロードするとしてもよい。
【0052】
一方、情報処理装置100は、映像データ取得要求を各デジタルビデオカメラ200に通知する(s104)。他方、各デジタルビデオカメラ200は、情報処理装置100からの映像データ取得要求をインターフェイス部207にて受け付け、この要求に応じて格納用媒体210から映像データを読み出し、これをインターフェイス部207を介して情報処理装置100に送信する(s105)。或いは、情報処理装置100のインターフェイス部107に接続された所定の読み取り装置に対し、ユーザが各デジタルビデオカメラ200の格納用媒体210をセットし、前記読み取り装置が格納用媒体210から読み取った映像データを情報処理装置100に送るとしてもよい。
【0053】
こうして情報処理装置100は、撮影目標物20であるターゲット21ないしデジタルビデオカメラ200における所定箇所を含む所定領域に関する映像データを、前記デジタルビデオカメラ200らから取得し(s106)、記憶部101に格納する。また情報処理装置100は、前記ステップで取得した映像データを即座に或いは一定期間毎に記憶部101から読み出し、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点、すなわち前記発光が写り込んだフレームを起点に、1/30秒といった所定時間毎すなわち各フレームの静止画像を抽出する(s107)。動画からの静止画像の抽出処理については既存の技術を適用すればよい。
【0054】
なお、各観測点6のデジタルビデオカメラ200や不動点8の最後方のデジタルビデオカメラ240らは、姿勢を水平に保つことでより正確な測定が可能となり好適である。
【0055】
次に情報処理装置100は、前記ステップで抽出した各静止画像において、前記ターゲット21ないしデジタルビデオカメラ200の所定箇所を含む所定範囲の画像について二値化処理を行う(s108)。画像の二値化処理は、画素の濃淡情報(コントラスト情報)が示す値と一定閾値とを比較し、濃淡値が閾値より小さければ白色、逆に濃淡値が閾値より大きければ黒色といった具合に、各画素を黒白二色に振り分ける処理となる。こうした二値化処理の手法自体は従来手法を採用すればよい。また、こうした二値化処理を実行するためのプログラムが前記プログラム102には含まれている。
【0056】
続いて情報処理装置100は、前記ステップで二値化処理された前記所定範囲の画像において、前記所定箇所を特定する(s109)。二値化処理された前記所定範囲の画像(
図4参照)において所定箇所を特定する処理は、情報処理装置100が、入力部105にてユーザから該当画像の指定(範囲指定や要素指定など)を受けて特定する場合があげられる。或いは、情報処理装置100が、前記所定箇所の形状パターンのデータ(例:所定箇所を描画する際の各線分の長さ、線分間の距離、描画角度等のデータ)を記憶部101に保持していて、その形状パターンに合致する黒色画素の集合体を前記所定箇所と認識するといった画像認識処理を行う場合もあげられる。
【0057】
情報処理装置100は、前記ステップで特定した前記所定箇所の、各静止画像間での画素数単位の変位を特定する(s110)。所定箇所の各静止画像間での画素数単位の変位は、各静止画像の座標平面上における、前記所定箇所に対応した画素の座標値を、一定時間間隔の静止画像間で比較し、各静止画像の前記座標値の間の距離を算定することで得られる。
【0058】
当然、画素数単位の変位の量がそのまま実際の所定箇所の変位量とならないから、その場合、既知の寸法値に対する画素数から単位画素あたりの変位量を示す係数値を情報処理装置100が記憶部101等に予め保持しておき、各静止画像の前記座標値の間の距離すなわち画素の変位量に前記係数値を乗算し、所定箇所の変位量を算定するとすればよい。
【0059】
図5の例で示すように、時刻Aの静止画像における観測点6a設置のデジタルビデオカメラ200に関する所定画素xの座標値(10,10)、時刻Aから1/30秒後の時刻Bの静止画像における前記所定画素xの座標値(10,12)、とする。この場合、画素xは1/30秒の間に、“12−10”=2ピクセルだけ鉛直方向に移動したことがわかる。前記所定箇所の鉛直方向の寸法(例:カメラ部品の実際の厚み等)が20mmであり、静止画像中での該当箇所を示す画素の数が100ピクセルであった場合、画素1ピクセルあたりの前記所定箇所の実際の寸法値は0.2(mm)となる。これは鉛直方向における単位画素変位あたりの実際の変位量に相当する値であり、情報処理装置100はこの値を係数値として記憶部101に予め保持している。この場合、情報処理装置100は、前記画素xの変位量たる2ピクセルに対し、前記係数値である0.2を乗算し、前記時刻A−B間での所定箇所の変位量を“2×0.2”=0.4(mm)と算定する。また、寸法根拠として、正確に目盛を付与したターゲット等をカメラ後面等に設置して使用すれば、より精度良く計測を行うことが出来る。
【0060】
勿論、上述のように各フレーム毎に所定箇所の変位量を算定するのではなく、沈み込みなど比較的長いタイムスパンでの変位に着目して、例えば0.5秒間隔での変位量算定を行うといった処理形態を採用してもよい。
【0061】
上述のように各観測点6について変位量を算定することが出来るが、算定できた値は、橋梁全体の変位を考慮に入れていない不完全な値である。よって、不動点8から見た橋梁1の変位を考慮に入れる必要がある。そこで情報処理装置100は、例えば、所定時刻における観測点6cについてその変位量を算定する場合、前記最後方のデジタルビデオカメラ240が設置された不動点8より、該当観測点6cに至るまでの各観測点6e、6d、6cについて上記ステップs110で得た各変位を、“0.1+0.2+0=0.3”mmなどと合算して、所定時刻の変位量“0.3mm”と算定する(s111)。
【0062】
情報処理装置100は、上述したステップs110、s111の処理を、各観測点6に関する前記映像データから得ている全ての静止画像について実行する(s112)。ここでの処理結果は、
図6に示すグラフのように、経過時間毎の各観測点6の変位量を示す折れ線グラフといったものがあげられる。
【0063】
情報処理装置100は、こうして求めた、各時間帯での各観測点6における変位量に基づいて、各時間帯での各観測点6の位置を認識し、これら観測点6を結んで構成される線形の時間帯毎の形状、すなわち変形モードを特定する(s113:
図7参照)。また、情報処理装置100は、前記変形モードを時系列順に連続させて、橋桁2の振動モードを特定する(s115)としてもよい。
図7の例では、車両等が通過していない負荷無しの状態から、条件に応じて変形モードが推移していく振動モードを例示している。橋桁2において、通行車両の重量や通過間隔、重量やサイズが異なる複数車両の連続通行事象など、様々な条件によって振動モードは変化する。また、橋桁2の延長形状は、直線またはカーブ、上り坂または下り坂、それらの組み合わせ、といった具合に場所により種々変化するが、こうした条件によっても振動モードは変化する。第1の実施形態のモード解析システム10であれば、デジタルビデオカメラ200らによる撮影と情報処理装置100による情報処理でモード解析を簡便かつ確実に行えるから、上述したように条件が複雑に変化する構造物であっても問題なく適用し高精度のモード解析を実現できる。
【0064】
情報処理装置100は、前記ステップで特定した変形モードや振動モードの情報を出力部106に表示処理し(s114)、フローを終了することになる。
【0065】
−−−第2の実施形態−−−
本発明においては、上述の第1の実施形態の他に
図8に示すように、各観測点6に設置したデジタルビデオカメラ200の連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラ230が撮影範囲に収めるターゲット21を不動点8に設置する形態もある。
【0066】
こうした形態において、モード解析システム10を構成する情報処理装置100の演算部104が、プログラム102の実行により実現する処理について説明する。ただし、上記第1の実施形態と重複する処理についての説明は省略する。第2の実施形態における情報処理装置100は、前記複数の観測点6におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラ230による前記ターゲット21の撮影、および、前記最前方のデジタルビデオカメラ230以外の各デジタルビデオカメラ(最後方のデジタルビデオカメラ240含む)による前記連なりにおける前方の他デジタルビデオカメラの撮影、で得た撮影目標物20たる、前記不動点8のターゲット21および前記観測点6a〜6dの各デジタルビデオカメラに関する映像を、各デジタルビデオカメラのインターフェイス部207から取得し、該映像データから、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出する。
【0067】
また前記情報処理装置100は、前記抽出した静止画像中における所定画素に関し、前記ターゲット21が所在する不動点8を起点として各静止画像間での変位方向を特定し、前記特定した各観測点での変位方向に基づき、前記構造物たる橋梁1の各観測点6を連ねた領域に関する変形モードを特定する。なお、前記情報処理装置100は、前記撮影で得た各観測点6に関する映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記ターゲット21が設置された不動点8より該当観測点に至る観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定するとすれば好適である。また、情報処理装置100は、前記ターゲット21が設置された不動点8より、例えば、該当観測点6cに至るまでの各観測点6a、6b、6cについて得た各変位を、“0.1+0.2+0=0.3”mmなどと合算することで、観測点6cでの所定時間毎の変位量を“0.3mm”と算定できる。
【0068】
続いて、第2の実施形態におけるモード解析方法の処理手順について
図9のフローに基づき説明する。
【0069】
ここで、解析対象となる橋桁2に複数設定された観測点6のそれぞれに、橋桁2の延長方向のうち前記ターゲット21の設置予定箇所である不動点8にレンズを向けてデジタルビデオカメラ200を設置する(s200)。この時、各デジタルビデオカメラ200は、その前方にある前記ターゲット21や他観測点のデジタルビデオカメラ200を撮影範囲に収めるよう視準方向等を調整している。また、ターゲット21を、橋梁上での変位発生に無関係であって変位を生じない不動点8たる地盤3に設置する(s201)。このターゲット21は、橋桁上に設置された前記デジタルビデオカメラ200の連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラ230の撮影範囲に収まるよう配置されている。但し、前記ターゲット21は、元来橋梁1に備わっている構造物を撮影目標物としてもよいから、その場合、当該ステップs201は実行不要としてよい。
【0070】
各デジタルビデオカメラ200の間、および最前方のデジタルビデオカメラ230とターゲット21との間の各距離は、デジタルビデオカメラの望遠撮影機能において所定解像度でデジタルビデオカメラ200やターゲット21の所定箇所を撮影できる距離となる。なお、前記所定箇所は予め寸法が判明しているデジタルビデオカメラ200やターゲット21に本来備わる部品、部材等である場合の他、デジタルビデオカメラやターゲット21に付帯させるアクセサリ類、三脚や支柱などの設置用部材、デジタルビデオカメラやターゲット21の表面にペイントしたり所定部材を取り付けて実現する目印、などであっても勿論問題ない。また、前記ターゲット21は、予め線幅や間隔の寸法が判明している目盛り線等がペイントされた板材などとなる。
【0071】
上述のように設置がなされたデジタルビデオカメラ200(最前方のデジタルビデオカメラ230、最後方のデジタルビデオカメラ240含む)らのインターフェイス部207と、情報処理装置100のインターフェイス部107とは所定の通信ケーブル、ないし無線通信手段でデータ授受可能に接続しておくと好適である。
【0072】
各デジタルビデオカメラ200、最前方のデジタルビデオカメラ230、最後方のデジタルビデオカメラ240らは、観測担当者からの指示をリモコンからの赤外線通信等を介して受信し、自身が撮影を担当する観測点6のデジタルビデオカメラ200ないしターゲット21に対する撮影を開始する(s202)。以降、ステップs203〜s210の各処理は、上記実施形態におけるステップs103〜s110と同様の処理となるから説明は省略する。
【0073】
こうして情報処理装置100は、前記ステップらの実行により、デジタルビデオカメラ200(最前方のデジタルビデオカメラ230、最後方のデジタルビデオカメラ240含む)らから得た各静止画像間において、デジタルビデオカメラ200およびターゲット21における各所定箇所に関し画素数単位の変位を特定することとなる。このように各観測点6について変位量を算定することが出来るが、算定できた値は、橋梁全体の変位を考慮に入れていない不完全な値である。よって、不動点8から見た橋梁1の変位を考慮に入れる必要がある。そこで情報処理装置100は、前記ターゲット21に関し特定している、例えば、所定目盛り線(所定箇所)の各静止画像間での画素数単位の変位を算定ベースとして、最前方のデジタルビデオカメラ230の観測点6aから変位量を特定したい所定観測点までの間に存在する各観測点6の変位量を合算する。所定時刻における、例えば観測点6cについてその変位量を算定する場合、不動点8から該当観測点6cに至る各観測点6a、6b、6cについて上記ステップs210で得た各変位を、“0.1+0.2+0=0.3”mmなどと合算して、所定時刻の変位量“0.3mm”と算定する(s211)。
【0074】
情報処理装置100は、上述したステップs210、s211の処理を、各観測点6に関する前記映像データから得ている全ての静止画像について実行する(s212)。情報処理装置100は、こうして求めた、各時間帯での各観測点6における変位量に基づいて、各時間帯での各観測点6の位置を認識し、これら観測点6を結んで構成される線形の時間帯毎の形状、すなわち変形モードを特定する(s213)。また、情報処理装置100は、前記変形モードを時系列順に連続させて、橋桁2の振動モードを特定する(s215)としてもよい。情報処理装置100は、前記ステップで特定した変形モードや振動モードの情報を出力部106に表示処理し(s214)、フローを終了することになる。
【0075】
−−−第3の実施形態−−−
続いて、
図10に示すように、各観測点6に設置したデジタルビデオカメラ200の連なりの途中に位置するデジタルビデオカメラ260を、橋梁1における不動点8bたる橋脚7上の橋桁2に設置する第3の実施形態もある。勿論、不動点8は橋脚7上の橋桁2以外のものであってもよい。この実施形態は、いわば上記第1の実施形態(ターゲット21が設置された測定点6x〜最後方のデジタルビデオカメラ240に代えて途中観測点のデジタルビデオカメラ260が設置された不動点8bまでの区間)と、上記第2の実施形態(ターゲット21に代えて途中観測点のデジタルビデオカメラが設置された不動点8b〜測定点6eまでの区間)とが複合した形態と言える。
【0076】
こうした形態において、モード解析システム10を構成する情報処理装置100の演算部104が、プログラム102の実行により実現する処理について説明する。ただし、上記第1および第2の実施形態と重複する処理についての説明は省略する。第3の実施形態における情報処理装置100は、前記複数の観測点6におけるデジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラ230による前記ターゲット21の撮影、および、前記最前方のデジタルビデオカメラ230以外の各デジタルビデオカメラ(途中観測点のデジタルビデオカメラ260、最後方のデジタルビデオカメラ240含む)による前記連なりにおける前方の他デジタルビデオカメラの撮影、で得た撮影目標物20たる、前記ターゲット21、前記観測点6a、6b、不動点8b、観測点6d、6eの各デジタルビデオカメラに関する映像を、各デジタルビデオカメラのインターフェイス部207から取得し、該映像データから、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出する。
【0077】
また前記情報処理装置100は、前記抽出した静止画像中における所定画素に関し、前記途中観測点のデジタルビデオカメラ260が所在する不動点8bを起点として各静止画像間での変位方向を特定し、前記特定した各観測点での変位方向に基づき、前記構造物たる橋梁1の各観測点6を連ねた領域に関する変形モードを特定する。なお、前記情報処理装置100は、前記撮影で得た各観測点6に関する映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記途中観測点のデジタルビデオカメラ260が設置された不動点8bより該当観測点に至る間に所在する観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定するとすれば好適である。また、情報処理装置100は、前記不動点8bより、例えば、該当観測点6aに至るまでの各観測点6b、6aについて得た各変位を、“0.1+0.2+0=0.3”mmなどと合算することで、観測点6aでの所定時間毎の変位量を“0.3mm”と算定できる。また、情報処理装置100は、前記不動点8bより、例えば、該当観測点6eに至るまでの各観測点6d、6eについて得た各変位を、“0.2+0.2+0=0.4”mmなどと合算することで、観測点6eでの所定時間毎の変位量を“0.4mm”と算定できる。
【0078】
こうした構成において本発明のモード解析方法を実行すれば、前記ステップs102と同様に、最前方のデジタルビデオカメラ230以外の各デジタルビデオカメラ200(最後方のデジタルビデオカメラ240、および途中観測点のデジタルビデオカメラ260含む)により、前記連なりにおいて隣接する前方の他のデジタルビデオカメラの撮影を行うこととなる。また、前記最前方のデジタルビデオカメラ230により、前記ターゲット21の撮影を行うことになる。当該撮影により得られる映像データに基づく各処理について、ターゲット21が設置された測定点6x〜途中観測点のデジタルビデオカメラ260が設置された不動点8bまでの区間については上記第1の実施形態と同様であり、途中観測点のデジタルビデオカメラが設置された不動点8b〜測定点6eまでの区間については上記第2の実施形態と同様である。
【0079】
−−−第4の実施形態−−−
また第4の実施形態として、
図11に示すように、前記デジタルビデオカメラ200の連なりのうち最後方のデジタルビデオカメラ240を、橋梁1における不動点8bたる橋脚7b上の橋桁2に設置すると共に、前記連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラ230が撮影範囲に収めるターゲット21を、不動点8aたる他の橋脚7a上の橋桁2に設置する形態もある。勿論、不動点8は、前記橋脚7上の橋桁2以外のものであってもよい。
【0080】
こうした形態において、モード解析システム10を構成する情報処理装置100の演算部104が、プログラム102の実行により実現する処理について説明する。ただし、上記第1〜第3の各実施形態と重複する処理についての説明は省略する。情報処理装置100は、デジタルビデオカメラの連なりのうち最前方に位置するデジタルビデオカメラ230による前方の不動点8aに所在するターゲット21の撮影、不動点8bに設置された最後方のデジタルビデオカメラ240による前方の撮影目標物20たる他のデジタルビデオカメラ200の撮影、および、前記最前方と前記最後方の各デジタルビデオカメラ230、240以外の各デジタルビデオカメラによる前方の撮影目標物20たる他デジタルビデオカメラ200の撮影、によって得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出する。
【0081】
また、前記情報処理装置100は、前記抽出した静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記いずれかの不動点8aまたは8bより該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する。
【0082】
また、前記情報処理装置100は、例えば一方の不動点8aを起点として他方の不動点8bに向けて、前記算定した各観測点6a〜6dの変位量を合算し、該合算値を前記各測定点の変位量に振り分ける。また、前記情報処理装置100は、前記各観測点6a〜6dでの所定時間毎の変位量に基づき、前記構造物たる橋梁1の各観測点6a〜6dを連ねた領域に関する変形モードを特定する。
【0083】
こうした構成において本発明のモード解析方法を実行すれば、前記ステップs102と同様に、各デジタルビデオカメラ200(最後方のデジタルビデオカメラ240を含む)により、前記連なりにおいて隣接する前方の他のデジタルビデオカメラの撮影を行うこととなる。また、前記最前方のデジタルビデオカメラ230により、前記ターゲット21の撮影を行うことになる。
【0084】
上記撮影により得られる映像データに基づく各処理については上記各実施形態と同様であるが、前記不動点8aから前記不動点8bに至る間の測定点6a〜6dについて変位量を順次合算していけば、本来その合算値はゼロとなるはずである。実際の合算値がゼロでない場合、それは測定誤差であると考えられるため、この誤差分の測定値を各測定点での計測値に振り分けることで、変位観測の精度を向上させ、ひいては変形モードの解析精度を向上させることができる。
【0085】
なお、前記測定誤差である合算値を各測定点に振り分けるに際しては、前記合算値を測定点の数で除算した値を各測定点に振り分ける場合や、隣接する測定点との間の距離に応じた比例配分で前記合算値を振り分ける場合などが想定できる。
【0086】
前記合算値を測定点の数で除算した値を各測定点に振り分ける例であれば、前記合算値が、例えば「+8mm」で、測定点の数が「4」であった場合、「+8mm」を「4」で除算した「+2mm」が、各測定点について算定した変位量に含まれる誤差と推定する。従って、誤差である「+2mm」を排除すべく、各測定点での変位量に「−2mm」の値を加算、すなわち振り分ける。他方、前記合算値が「−8mm」であれば、これを「4」で除算した「−2mm」が、各測定点について算定した変位量に含まれる誤差と推定し、誤差である「−2mm」を排除すべく、各測定点での変位量に「+2mm」の値を加算、すなわち振り分ける。
【0087】
また隣接する測定点との間の距離に応じた比例配分で前記合算値を振り分ける場合において、測定点が、例えばA、Bの2点存在し、ある不動点Xとこれに隣接する測定点Aとの間の距離が3m、測定点Aとこれに隣接する測定点Bとの間の距離が2m、測定点Bとこれに隣接する不動点Yとの間の距離が1mであったとする。また、前記合算値が「+12mm」であったとする。この場合、「+12mm」を前記各距離の合算値“3+2+1=6”で除算した「+2mm」が単位距離あたりの誤差となる。従って、単位距離あたりの誤差である「+2mm」を排除すべく、隣接不動点Xとの距離が3(m)である前記測定点Aについては“−2mm×3=−6mm”を、測定点Aに関する変位量に加算、すなわち振り分ける。その他の測定点についても同様の振り分け処理となる。また、前記合算値がマイナスの値であれば、測定点の変位量にはプラスの値を振り分けることになる。
【0088】
−−−第5の実施形態−−−
なお、
図12における第5の実施形態にて示すように前記複数の観測点6が構造物上において環状に連なっている状況に対応したモード解析技術も提供可能である。この場合、上記第4の実施形態の変形例として、不動点8に設置すべきターゲット21と最後方のデジタルビデオカメラ240を兼ねて、1台の起点デジタルビデオカメラ250を不動点8に設置する形態となる。
図12の例では、地盤3の周囲に設置した仮設構台4(構造物)における変位観測を行うべく、仮設構台4を構成する複数のパネル9を観測点6とし、各パネル9にデジタルビデオカメラ200が設置されている。前記デジタルビデオカメラ200らは、前方にある他のデジタルビデオカメラ200を撮影目標物20として撮影範囲に捉えており、観測点6と同様、直列的に連なった配置をなしている。
【0089】
また、前記地盤3すなわち不動点8には、前記デジタルビデオカメラ200らに連なるべく、起点デジタルビデオカメラ250が設置されている。起点デジタルビデオカメラ250はその撮影範囲に前方のデジタルビデオカメラ200(図中では、観測点6aのデジタルビデオカメラ200)を捉えている。また、この起点デジタルビデオカメラ250は、その後方のデジタルビデオカメラ200(図中では、観測点6iのデジタルビデオカメラ200)によって撮影範囲に捉えられている。
【0090】
こうした形態において、モード解析システム10を構成する情報処理装置100の演算部104が、プログラム102の実行により実現する処理について説明する。ただし、上記第1〜第4の各実施形態と重複する処理についての説明は省略する。情報処理装置100は、デジタルビデオカメラ200による前方の他デジタルビデオカメラ200(起点デジタルビデオカメラ250含む)の撮影、不動点8に設置された前記起点デジタルビデオカメラ250による前方の撮影目標物20たる他デジタルビデオカメラ200(測定点6aに設置されたもの)の撮影、によって得た映像から、各デジタルビデオカメラ間での同期がとられた所定時点を起点に所定時間毎の静止画像を抽出する。
【0091】
また、前記情報処理装置100は、前記抽出した静止画像中における所定画素に関して各静止画像間での変位を特定し、前記いずれかの不動点8より該当観測点に至るまでの間に存在する各観測点について得た前記変位を合算することで、各観測点での所定時間毎の変位量を算定する。
【0092】
また、前記情報処理装置100は、前記不動点8を起点として前記環状の連なる方向に向けて、前記算定した各観測点6a〜6iの変位量を合算し、該合算値を前記各測定点の変位量に振り分ける。また、前記情報処理装置100は、前記各観測点6a〜6iでの所定時間毎の変位量に基づき、前記構造物たる橋梁1の各観測点6a〜6iを連ねた領域に関する変形モードを特定する。
【0093】
こうした構成において本発明のモード解析方法を実行すれば、前記ステップs102と同様に、各デジタルビデオカメラ200および起点デジタルビデオカメラ250により、前記環状の連なりにおいて隣接する他のデジタルビデオカメラの撮影を行うこととなる。撮影により得られる映像データに基づく各処理については上記各実施形態と同様であるが、環状に存在する各測定点6の変位量を、不動点前方の測定点(図中における観測点6a)から不動点後方の測定点(図中における観測点6i)まで順次合算し、その合算値がゼロでない場合に、計測誤差を振り分けることで変位観測の精度を向上させ、ひいては変形モードの解析精度を向上させることができる。
【0094】
例示した仮設構台4は、前記地盤3への工事用車両の出入りに伴う走行や、或いは駐車の動作に伴って、変位がパネル9を跨って連続的に生じやすいと想定できるが、こうしたチェックが可能となることで、複雑な形状をなす環状に観測点6が配置されている場合であっても、観測点間の変位について整合性をチェックし、観測精度を良好に維持できることになる。
【0095】
なお、モード解析方法およびモード解析システムの実施形態について説明したが、変形モードや振動モードの特定処理を行うことなく、変位量の算定までの処理を行う場合も、本発明の範囲に含まれる。
【0096】
以上のような本実施形態によれば、精度良好なモード解析や変位計測を簡便かつ低コストで行うことが可能となる。
【0097】
本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。