(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
耐候性層、封止層、一対の電極に挟まれた発電層を有する発電素子、発電素子基材、フッ素系炭化水素樹脂層、及び、金属層が、この順に積層された太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記金属層の厚さが、0.08mm以上、10mm以下であり、
前記太陽電池モジュールの各構成要素を、熱ラミネートによって一体化する
ことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
一方の面上に前記フッ素系炭化水素樹脂層を形成した前記金属層と、一方の面上に前記発電素子を形成した前記発電素子基材と、前記太陽電池モジュールの他の各構成要素とを、熱ラミネートによって一体化する
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
熱ラミネート時に、前記耐候性層表面を、JIS B0610におけるろ波最大うねりWCMが18μm以上となり、平均山間隔WC−Smが2.5mm以下となるように加工する
ことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
《第1実施形態》
図1に、本発明の第1実施形態に係る太陽電池モジュール10の要部断面図を示す。
【0019】
図示してあるように、本発明の第1実施形態に係る太陽電池モジュール10は、耐候性層11、封止層12、発電素子13、発電素子基材14、フッ素系炭化水素樹脂層16及び金属層17が、この順に積層された構成(構造)を有している。
【0020】
〔金属層17〕
金属層17は、太陽電池モジュール10の他の各構成要素の支持部材である。この金属層17としては、アルミニウム、ステンレス、銅、チタン、ニッケル、鉄、それらの合金等からなる板状部材(いわゆる金属板/箔)を使用できる。なお、金属層17は、防食性の観点から、ガルバニウム鋼板のようにめっき処理が施されているものであってもよい。
【0021】
金属層17の厚さを過度に薄くしておくと、機械的強度が弱い太陽電池モジュール10が得られてしまうことになる。また、金属層17の厚さを過度に厚くしておくと、重い太陽電池モジュール10が得られてしまうことになる。そのため、金属層17の構成材料(の強度)にもよるが、金属層17の厚さは、10mm以下としておくことが好ましく、5mmとしておくことがより好ましく、3mmとしておくことが特に好ましい。また、金属層17の厚さは、0.1μm以上としておくことが好ましく、0.08mm以上としておくことがより好ましく、0.1mm以上としておくことが特に好ましい。
【0022】
〔発電素子13〕
発電素子13は、耐候性層11側から入射される太陽光に基づき発電を行う素子である。この発電素子13は、光エネルギーを電気エネルギーに変換でき、変換によって得られた電気エネルギーを外部に取り出せるものでありさえすれば良い。
【0023】
従って、太陽電池モジュール10の発電素子13としては、一対の電極で、発電層(光電変換層、光吸収層)を挟んだもの、一対の電極で、発電層と他層(バッファ層等)との積層体を挟んだもの、そのようなものを、複数個、直列接続したものを用いることが出来る。また、発電層としても様々なものを採用することが出来る。ただし、発電層は、薄膜単結晶シリコン、薄膜多結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、球状シリコン、無機半導体材料、有機色素材料、有機半導体材料等からなる層としておくことが好ましい。何故ならば、これらの材料を用いておけば、発電効率が比較的高く、薄い(軽量な)発電素子13を実現できるからである。さらに、発電効率を上げるために、発電素子13を、これらを積層したHIT型、タンデム型の素子としておくことも出来る。
【0024】
なお、発電層を薄膜多結晶シリコン層とした場合、発電素子13は、間接光学遷移を利用するタイプの素子となる。そのため、発電層を薄膜多結晶シリコン層とする場合には、光吸収を増加させるために、発電素子基材14又はその表面に凸凹構造を形成するなど十分な光閉じ込め構造を設けておくことが好ましい。
【0025】
また、発電層をアモルファスシリコン層としておけば、可視域での光学吸収係数が大きく、厚さ1μm程度の薄膜でも太陽光を十分に吸収できる太陽電池素子13を実現できる。しかも、アモルファスシリコンは、非結晶質の材料であるが故に、変形に対して耐性を有している。従って、発電素子13を、発電層としてアモルファスシリコン層を備えたものとしておけば、特に軽量な、変形に対しても或る程度の耐性を有する太陽電池モジュール10を実現できることになる。
【0026】
発電層を無機半導体材料(化合物半導体)層としておけば、発電効率が高い発電素子13を実現することが出来る。なお、発電効率(光電変換効率)の観点からは、発電層を、S、Se、Teなどカルコゲン元素を含むカルコゲナイド系発電層としておくことが好ましく、I−III−VI2族半導体系(カルコパイライト系)発電層としておくことがより好ましく、I族元素としてCuを用いたCu−III−VI2族半導体系発電層、特に、CIS系半導体〔CuIn(Se
1-yS
y)
2;0≦y≦1〕層やCIGS系半導体〔Cu(In
1-xGa
x)(Se
1-yS
y)
2;0<x<1、0≦y≦1〕〕層としておくことが、望ましい。
【0027】
発電層として、酸化チタン層及び電解質層などからなる色素増感型発電層を採用しても、発電効率が高い発電素子13を実現することが出来る。
【0028】
発電層として、有機半導体層(p型の半導体とn型の半導体を含む層)を採用することも出来る。なお、有機半導体層を構成し得るp型の半導体としては、テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポリフィリン等のプルフィリン化合物;フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;テトラセンやペンタセンのポリアセン;セキシチオフェン等のオリゴチオフェン及びこれら化合物を骨格として含む誘導体を例示できる。さらに、有機半導体層を構成し得るp型の半導体として、ポリ(3−アルキルチオフェン)などを含むポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリトリアリルアミン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール等の高分子等も例示できる。
【0029】
また、有機半導体層を構成し得るn型の半導体としては、フラーレン(C60、C70、C76);オクタアポフィリン;上記p型半導体のパーフルオロ体;ナフラレンテトラカルボン酸無水物、ナフラレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化合物;及び、これら化合物を骨格として含む誘導体などを例示できる。
【0030】
また、有機半導体層の具体的な構成例としては、p型半導体とn型半導体が層内で相分離した層(i層)を有するバルクヘテロ接合型、それぞれp型半導体を含む層(p層)とn型半導体を含む層(n層)を積層した積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型およびそれらの組み合わせを、挙げることが出来る。
【0031】
発電素子13の各電極は、導電性を有する任意の材料を1種又は2種以上用いて形成することが出来る。電極材料(電極の構成材料)としては、例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属、あるいはそれらの合金;酸化インジウムや酸化錫等の金属酸化物、あるいはその合金(ITO(酸化スズインジウム)等);ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;そのような導電性高分子に、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、FeCl
3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などのドーパントを含有させたもの;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性粒子をポリマーバインダー等のマトリクスに分散した導電性の複合材料などが挙げられる。
【0032】
電極材料は、正孔又は電子を捕集するのに適した材料としておくことが好ましい。なお、正孔の捕集に適した電極材料(つまり、高い仕事関数を有する材料)としては、金、ITO等を例示できる。また、電子の捕集に適した電極材料(つまり、低い仕事関数を有する材料)としては、銀、アルミニウムを例示できる。
【0033】
発電素子13の各電極は、発電層とほぼ同サイズのものであっても、発電層よりも小さなものであっても良い。ただし、発電素子13の,受光面側(耐候性層11側)の電極を、比較的に大きなもの(その面積が、発電層面積に比して十分に小さくないもの)とする場合には、当該電極を、透明な(透光性を有する)電極、特に、発電層が効率良く電気エネルギーに変換できる波長の光の透過率が比較的に高い(例えば、50%以上)電極、としておくべきである。なお、透明な電極材料としては、ITO、IZO(酸化インジウム・酸化亜鉛)等の酸化物;金属薄膜などを、例示できる。
【0034】
また、発電素子13の各電極の厚さ及び発電層の厚さは、必要とされる出力等に基づき、決定することが出来る。
【0035】
さらに電極に接するように補助電極を設置してもよい。補助電極の設置は、特に、ITOなど導電性のやや低い電極を用いる場合に効果的である。補助電極材料としては、導電性が良好ならば上記金属材料と同じ材料を用いることができるが、銀、アルミニウム、銅が例示される。
【0036】
〔発電素子基材14〕
発電素子基材14は、その一方の面上に、発電素子13が形成される部材である。従って、発電素子基材14は、機械的強度が比較的に高く、耐候性、耐熱性、耐薬品性等に優れ、且つ、軽量なものであることが望まれる。また、発電素子基材14は、変形に対して或る程度の耐性を有するものであることも望まれる。一方で、形成される発電素子13と発電素子基材14の材料物性(例えば、線膨張係数、融点等)が著しく異なると、形成後の界面で歪や剥離などが生じる恐れがある。
【0037】
そのため、発電素子基材14としては、金属箔や、融点が85〜350℃の樹脂フィルム、幾つかの金属箔/樹脂フィルムの積層体を採用しておくことが好ましい。
【0038】
発電素子基材14(又は、その構成要素)として使用し得る金属箔としては、アルミニウム、ステンレス、金、銀、銅、チタン、ニッケル、鉄、それらの合金からなる箔を、例示できる。
【0039】
また、融点が85〜350℃の樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、ACS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、これらの共重合体、PVDF、PVFなどのフッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロース、ニトリル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、アイオノマー、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンなどからなるフィルムを、例示できる。なお、発電素子基材14として使用する樹脂フィルムは、上記のような樹脂中に、ガラス繊維、有機繊維、炭素繊維等を分散させたフィルムであってもよい。
【0040】
発電素子基材14(又は、その構成要素)として使用する樹脂フィルムの融点が85℃以上であることが好ましい理由は、融点が過度に低いと、太陽電池モジュール10の通常の使用環境下で発電素子基材14が変形し、発電素子13にダメージを与える恐れがあるためである。また、樹脂フィルムの融点が350℃以下であることが好ましい理由は、融点が過度に高いと、発電素子13との界面に温度変化などによる歪を生ずる結果として、発電素子13が発電素子基材14から剥離する恐れがあるためである。
【0041】
従って、発電素子基材14(又は、その構成要素)として使用する樹脂フィルムの融点は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、180℃以上であることが特に好ましい。また、当該樹脂フィルムの融点は、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが特に好ましい。
【0042】
また、発電素子基材14として、封止層12(詳細は後述)よりも薄いものを採用しておくと、太陽電池モジュール10を曲げた場合に、封止層12に亀裂が生じ易くなることが各種実験結果から分かっている。そのため、発電素子基材14としては、封止層12よりも薄いものを採用しておくべきであり、その厚さが、封止層12の厚さの0.83(=“1/1.2”)倍以下となっているものを採用しておくことが好ましい。また、発電素子基材14としては、その厚さが、封止層12の厚さの0.67(=1/1.5)倍以下となっているものを採用しておくことがより好ましく、その厚さが、封止層12の厚さの0.5倍以下となっているものを採用しておくことが特に好ましい。
【0043】
なお、本実施形態に係る太陽電池モジュール10は、外壁用、外装バックパネル用、屋根用等の建材や、インテリア、自動車、鉄道、船舶、飛行機、宇宙機、家電、携帯電話、玩具の構成要素(例えば外装材)として使用することを想定して開発したものである。そして、そのような用途では、外装材としての美観の観点から金属層17が見えた方が良い。そのため、太陽電池モジュール10は、
図2及び
図3に模式的に示してあるように、発電素子基材14及び発電素子13が、他の各構成要素よりも明らかに小サイズのものとして製造しておくことが好ましい。
【0044】
図2および
図3では耐候性層11、封止層12、フッ素系炭化水素樹脂層16、金属層17がほぼ同じサイズで図示されているが、耐候性層11と封止層12は、発電素子基材14及び発電素子13より大きければ、フッ素系炭化水素樹脂層16と金属層17よりも小さいサイズでもよい。但し、金属層17に高耐候性を付与する観点から、フッ素系炭化樹脂層16は金属層17の少なくとも片面を覆っていることが好ましい。
【0045】
〔フッ素系炭化水素樹脂層16〕
フッ素系炭化水素樹脂層16は、発電素子基材14・金属層17間を接着する(発電素子基材14を金属層17に対して固定する)ための層である。このフッ素系炭化水素樹脂層16は、その名称から明らかなように、“フッ素系炭化水素樹脂”の層であれば良い。従って、フッ素系炭化水素樹脂層16は、以下に例示する樹脂からなる層としておくことが出来る。
PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)
ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)
PVDF(ポリビニリデンフルオライド)
ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体)
FEVE(フルオロエチレン−ビニルエーテル共重合体)
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)
PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)
【0046】
ただし、フッ素系炭化水素樹脂層16を、PTFE層、FEP層、又はPCTFE層とすると、表面処理を行わなくては、十分な接着強さが得られない場合がある。そのため、フッ素系炭化水素樹脂層16の構成樹脂は、PFA、ETFE、PVDF、ECTFE、又はFEVEとしておくことが好ましい。
【0047】
フッ素系炭化水素樹脂層16は、PFA、ETFE、ECTFE、FEVE、FEP等の共重合体であることがより好ましい。また、フッ素系炭化水素樹脂層16は、交互共重合体であることが特に好ましい。なお、フッ素系炭化水素樹脂層16として、上記のような樹脂の共重合体(交互共重合体)を採用する場合、極性モノマーと非極性モノマーのバランスを調整することにより、太陽光暴露時の接着性及び耐候性が良いフッ素系炭化水素樹脂層16を得ることができる。
【0048】
フッ素系炭化水素樹脂層16の厚さは、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。また、フッ素系炭化水素樹脂層16の厚さは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。
【0049】
〔封止層12〕
封止層12は、発電素子13を封止すること等を目的として、太陽電池モジュール10に設けられている層である。
【0050】
この封止層12は、機械的強度、耐侯性、ガスバリア性などの向上にも寄与している。また、封止層12は受光面側に位置するので、可視光を透過させる、耐熱性の高いものであることが好ましい。この封止層12に他の光学的機能、若しくは機械的機能を付加することも可能である。封止層12に付加可能な光学的機能としては光閉じ込め機能や波長変換機能を例示でき、機械的機能としてはクッション機能を例示できる。
【0051】
封止層12の材料は、上記事項を考慮して選ぶべきものである。封止層12の材料の具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリオレフィン系樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、クロロプレン系樹脂、(水添)エポキシ樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などを挙げられる。
【0052】
中でも、好ましいものとしてはエチレン系共重合体樹脂が挙げられ、より好ましいものとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂またはエチレンと他のオレフィンとの共重合体からなるポリオレフィン系樹脂(プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体等)が挙げられる。
【0053】
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物は、通常、耐候性の向上のために架橋剤を配合して架橋構造を構成させ、EVA樹脂とする。架橋剤としては、一般に100℃以上でラジカルを発生する有機過酸化物が用いられる。例えば、2,5−ジメチルヘキサン;2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;3−ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。有機過酸化物の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して通常1〜5重量部である。また、EVA樹脂組成物に架橋助剤を含有させてもよい。
【0054】
EVA樹脂組成物には、接着力向上の目的でシランカップリング剤を含有させたり、安定性を向上させる目的でハイドロキノン等を含有させたりしてもよい。
【0055】
プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体としては、通常、プロピレン系重合体と軟質プロピレン系共重合体を適切な組成で配合した熱可塑性樹脂組成物が用いられる。
【0056】
封止層12には、難燃材を加えた材料を用いる事ができる。封止層12に加える難燃材は、無機系難燃材であっても有機系難燃材であっても良い。無機系難燃材としては、例えば、アンチモン化合物、臭素化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属酸化物が挙げられる。有機系難燃材としては、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモジクロドデカン等の臭素化合物、トリフェニルポスフェート等のリン化合物、赤リン、塩素化パラフィン等の塩化化合物が挙げられる。封止層12の透明性が低いと太陽電池の出力低下の危険性があるため、封止層12に追加する難燃材は、有機系難燃材としておくことが好ましい。また、フィルム型太陽電池素子の場合、有機系難燃材が素子へダメージを及ぼす危険性があるので、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモジクロドデカン等の臭素化合物、トリフェニルポスフェート等のリン化合物などを難燃材として用いることが好ましい。また、燃焼時の安全の観点からは、無機系難燃材を難燃材として用いることが好ましい。
【0057】
封止層12は、上記した材料を2種以上含むものであっても、2種以上の異種材料層の積層体であってもよい。
【0058】
また、太陽電池モジュール10は、耐候性層11(詳細は後述)と線膨張係数が大きく異なる金属層17を構成要素としたもの、つまり、モジュール温度が変化した場合、耐候性層11と金属層17の伸縮量の差に因りその内部に比較的に大きな応力(歪み)が発生し得るもの、となっている。そのため、封止層12の厚さが薄すぎると、当該応力を封止層12に吸収させることが出来ず、発電素子13の電極や発電層が損傷してしまうことが考えられる。また、封止層12の厚さを薄くしておくと、その形状の加工時(太陽電池モジュール10を曲面状に加工する際等)に発電素子13が損傷を受け易く、かつ、耐衝撃性も高くない太陽電池モジュール10が得られてしまうことになる。
【0059】
従って、上記のような観点からは、封止層12は、厚い方が良い。ただし、封止層12の厚さを厚くすると、モジュール重量が増える/製造コストが上昇するといった問題が生じてしまう。そのため、封止層12の厚さは、30μm以上であることが好ましく、120μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましく、300μm以上であることが特に好ましい。また、封止層12の厚さは、800μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることが特に好ましい。
【0060】
さらに、封止層12としては、その厚さが、発電素子基材14の厚さの1倍以上、好ましくは、1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上となっているものが使用される。何故ならば、既に説明したように、封止層12が、発電素子基材14より薄い場合、曲げ加工時に、封止層12に亀裂が生じ易くなる(発電素子基材14の曲げに追随し難くなる)からである。
【0061】
〔耐候性層11〕
耐候性層11は、太陽電池モジュール10に、機械的強度、耐侯性、耐スクラッチ性、耐薬品性、ガスバリア性などを付与するための層である。この耐候性層11は、発電素子13の光吸収を妨げないもの、すなわち、発電層が効率良く電気エネルギーに変換できる波長の光を透過させるものであることが好ましく、例えば、日射透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0062】
また、太陽電池モジュール10は、太陽光により熱せられるものであるため、耐候性層11は、耐熱性を有することが好ましい。従って、耐候性層11の構成材料の融点は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。
【0063】
また、耐候性層11の構成材料の融点は、320℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましい。
【0064】
耐候性層11の構成材料は、各種観点から選ぶことができ、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、(水添)エポキシ樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などを、耐候性層11の構成材料とすることが出来る。なお、耐候性を重視する場合には、ETFEなどのフッ素系樹脂を耐候性層11の構成材料として用いておくことが好ましい。
【0065】
耐候性層11は、2種以上の材料からなるものであっても良い。また、耐候性層11は、単層であっても、2層以上からなる積層体であっても良い。
【0066】
耐候性層11の厚みは特に規定されないが、厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。そのため、耐候性層11の厚みは、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0067】
要するに、耐候性層11としては、耐候性、耐熱性等を有する材料からなる、さまざまな厚みの層を採用することが出来る。
【0068】
ただし、耐候性層11表面のろ波最大うねりWCMが小さくなる(特に、18μm未満になる)と、耐候性層11表面において入射光から正反射する光量が増加するため、見る角度によってはまぶしく感じられる太陽モジュール10が得られてしまうことが、各種実験結果から分かっている。また、製造時の熱収縮等による応力を緩和することができず、シワが表面に多数してしまうことも分かっている。そのため、耐候性層11表面の,JIS B0610におけるろ波最大うねりWCMが18μm以上となるようにしておくことが好ましく、20μm以上となるようにしておくことがより好ましく、25μm以上となるようにしておくことが特に好ましい。
【0069】
また、耐候性層11表面のうねりの平均山間隔WC−Smが過度に大きくなると、金属層17(発電素子13等で覆われていない部分;
図2、3参照。)から反射された光が耐候性層11表面にて拡散される結果として、金属層17の光沢が失われる(金属層17の意匠性が損なわれる)傾向があることも分かっている。さらに、耐候性層11表面の凹凸が過度に大きいと、耐候性層11表面の汚れが付着しやすくなる結果として、発電性能が低下しやすくなることも分かっている。
【0070】
そのため、太陽電池モジュール10の製造時には、耐候性層11表面のうねりの平均山間隔WC−Smが、2.5mm以下、好ましくは、2.3mm以下、より好ましくは2.0mm以下となるようにしておくことが望ましい。
【0071】
上記表面形状の形成方法は特に限定されない。例えば、耐候性層11として、元々凹凸を有するものを採用することも出来るし、耐候性層11表面を機械的に処理する(削る等)ことにより耐候性層11表面に凹凸をつけることも出来る。また、凹凸パターンをもつシートを耐候性層11に押し付けることにより、当該シートの凹凸を耐候性層11の表面に転写することも出来る。他に、凹凸パターンとなるように凹凸形成材料を表面に印刷することもできる。
【0072】
金属層17と発電素子基材14の間隔は、10μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることが特に好ましい。また、金属層17と発電素子基材14の間隔は、800μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましい。金属層17と発電素子基材14の間隔を10μm以上とすることにより、金属層17と発電素子13の絶縁性を保つことができる。特に、太陽電池モジュールが1m
2以上と大型である場合に、金属層17と発電素子基材14の間隔を大きくすることが好ましい。
【0073】
〔太陽電池モジュール10の製造方法〕
太陽電池モジュール10は、基本的には、各構成要素を熱ラミネート(真空ラミネート)によって一体化することにより製造すれば良いものである。但し、各構成要素を一体化することができれば、接着剤により接着する工程を加えて製造してもよい。
【0074】
なお、熱ラミネートの温度は、100℃以上が好ましく、110℃以上であることがさらに好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。また、熱ラミネートの温度は、180℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましい。
【0075】
太陽電池モジュール10を熱ラミネートにより製造する際に、各構成要素を個別に用意しておくことも可能である。ただし、発電素子13と発電素子基材14とを別々に用意するようにしたのでは、太陽電池モジュール10の製造を困難にするだけである。そのため、太陽電池モジュール10の各構成要素を熱ラミネートによって一体化する前に、発電素子基材14上に発電素子13を設けておくことが望ましい。
【0076】
また、金属層17上へのフッ素系炭化水素樹脂層16の形成を先に行うようにしておけば、例えば、フッ素系炭化水素樹脂の金属層17への焼付け塗装等により、『金属層17の面上にフッ素系炭化水素樹脂層16が強固に付着しているもの』を簡単に形成することが出来ることになる。従って、太陽電池モジュール10の各構成要素を熱ラミネートによって一体化する前に、金属層17上へのフッ素系炭化水素樹脂層16の形成を行うようにしておくことが望ましい。
【0077】
さらに、耐候性層11表面に凹凸を形成するための方法として、上記した“凹凸パターンをもつシートを利用して耐候性層11表面に凹凸を付ける方法”を採用しておけば、太陽電池モジュール10の各構成要素の熱ラミネートによる一体化時に同時に耐候性層11表面に凹凸を形成できることになる。そのため、太陽電池モジュール10の製造方法としては、各構成要素の熱ラミネートによる一体化時に、凹凸パターンをもつシートを利用して耐候性層11表面への凹凸を付与する方法を採用しておくことが望ましい。
【0078】
《第2実施形態》
図4に、本発明の第2実施形態に係る太陽電池モジュール20の要部断面図を示す。
【0079】
この
図4と
図1とを比較すれば明らかなように、本発明の第2実施形態に係る太陽電池モジュール20は、太陽電池モジュール10の発電素子基材14とフッ素系炭化水素樹脂層16との間に、第2封止層15を挿入したものに相当する太陽電池モジュールである。
【0080】
第2封止層15は、発電素子13を封止すること等を目的として、太陽電池モジュール20に設けられている層である。この第2封止層15としては、封止層12と同様な材料を用いる事が出来る。ただし、その位置から明らかなように、第2封止層15としては、光を透過しない材料からなるものを使用することも出来る。
【0081】
第2封止層15の厚さは、特に限定されない。ただし、第2封止層15の厚さは、100μm以上であることが好ましく、120μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましく、320以上であることが特に好ましい。また、第2封止層15の厚さは、800μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることが特に好ましい。第2封止層15の厚さがこの範囲であることにより、金属層17と発電素子13の絶縁性を保つことができる。
【0082】
この第2実施形態に係る太陽電池モジュール20の構成を採用しておいても、第2封止層15以外の各構成要素として上記仕様のものを採用しておけば、実用可能で耐久性に優れた太陽電池モジュール20を得ることが出来る。
【0083】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の説明おいて、実施例n/比較例n(n=1、2等)に係る太陽電池モジュールとは、1つの太陽電池モジュールのことではなく、同材料、同手順で製造した太陽電池モジュール群のことである。
【0084】
まず、実施例1〜6、比較例1、2に係る太陽電池モジュールの構成及び製造手順を説明する。
【0085】
《実施例1》
実施例1に係る太陽電池モジュールは、第2実施形態に係る太陽電池モジュール20(
図4)に分類されるものである。そして、実施例1に係る太陽電池モジュールは、以下の手順で製造されたものとなっている。
【0086】
まず、発電素子基材14としての,50μm厚のPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム上に、裏面電極とアモルファスシリコン層(発電層)と透明電極とを形成することにより、その一方の面上に発電素子13が形成されている発電素子基材14を作製した。なお、作製した“発電素子13が形成されている発電素子基材14”は、そのサイズが、およそ95mm×150mmとなっているものである。
【0087】
また、金属層17としての,0.5mm厚のアルミ板上に、FEVE塗料を焼付け塗工することにより、フッ素系炭化水素樹脂層16を積層した金属層17を作製した。なお、焼付け塗工時の乾燥温度は、100℃である。また、作製した“フッ素系炭化水素樹脂層16を積層した金属層17”は、そのサイズが、およそ200mm×200mmとなっているもの、つまり、“発電素子13が形成されている発電素子基材14”(95mm×150mm)よりも大きなものである。
【0088】
次いで、作製した各部材と、耐候性層11としての100μm厚のETFEフィルム(AGC製100HK−DCS)、封止層12としての300μm厚のEVAフィルム(Hangzhou First PV Materials社製F806)、第2封止層15としての300μm厚のEVAフィルム(同上)とを、
図4に示した順(及び向き)に積層した上で、耐候性層11(ETFEフィルム)上に凹凸転写用の第1ガラスクロスを設置した。そして、第1ガラスクロスを設置した積層体に対して、150℃での熱ラミネート(真空5分、加圧5分、保持10分)を行ってから、第1ガラスクロスを取り除くことにより、実施例1に係る太陽電池モジュールを得た。
【0089】
なお、取り出し電極の取り付け位置等についての説明は省略するが、実施例1に係る太陽電池モジュール(及び、以下で説明する各太陽電池モジュール)は、取り出し電極として、三光金属株式会社製のリード線(Cu−O−100−4−R)を用いて製造したものとなっている。
【0090】
《実施例2》
実施例2に係る太陽電池モジュールは、第2封止層15とフッ素系炭化水素樹脂層16との間に接着剤層が設けられている点のみが、実施例1と異なる太陽電池モジュールである。
【0091】
より具体的には、実施例2に係る太陽電池モジュールの各構成要素(耐候性層11、封止層12等)は、上記した実施例1に係る太陽電池モジュールの各構成要素と同じものとなっている。また、実施例2に係る太陽電池モジュールの製造時には、実施例1に係る太陽電池モジュールと同様に、各構成要素の積層体の耐候性層11側に第1ガラスクロスを設置した状態での熱ラミネート(150℃、真空5分、加圧5分、保持10分)が行われている。
【0092】
ただし、実施例2に係る太陽電池モジュールは、“フッ素系炭化水素樹脂層16を積層した金属層17”をそのまま他の各構成要素と積層して熱ラミネートしたものではなく、“フッ素系炭化水素樹脂層16を積層した金属層17”を作製後、作製した部材のフッ素系炭化水素樹脂層16上に接着剤(本実施例では、ポリオレフィン系樹脂を主成分とした接着剤である中央理化工業株式会社製アクアテックスAC−3100)を塗工し、接着剤を塗工した“フッ素系炭化水素樹脂層16を積層した金属層17”と他の各構成要素とを積層して熱ラミネートすることにより製造したものとなっている。
【0093】
《実施例3》
実施例3に係る太陽電池モジュールは、その製造時(熱ラミネート時)に、上記した第1ガラスクロスよりも目が粗い第2ガラスクロスを用いた点のみが、実施例1に係る太陽電池モジュールと異なる太陽電池モジュールである、すなわち、実施例3に係る太陽電池モジュールは、耐候性層11表面の凹凸が、実施例1に係る太陽電池モジュールのそれよりも大きくなるように製造したものとなっている。
【0094】
《実施例4》
実施例4に係る太陽電池モジュールは、その製造時にガラスクロスを用いなかった(ガラスクロスを積層体の耐候性層11上に設置することなく熱ラミネートを行った)ことのみが、実施例1に係る太陽電池モジュールと異なる太陽電池モジュールである。すなわち、実施例4に係る太陽電池モジュールは、耐候性層11表面の凹凸が、実施例1に係る太陽電池モジュールのそれよりも小さくなるように製造したものとなっている。
【0095】
《実施例5》
実施例5に係る太陽電池モジュールは、熱ラミネートの条件のみが、実施例1に係る太陽電池モジュールと異なる太陽電池モジュールである。具体的には、実施例5に係る太陽電池モジュールは、145℃、真空5分、加圧5分、保持25分という条件の熱ラミネートを行うことにより製造したものとなっている。
【0096】
《実施例6》
実施例6に係る太陽電池モジュールは、金属層17として、0.5mm厚のアルミ板ではなく、1mm厚の塗装鋼板が用いられている点のみが、実施例1に係る太陽電池モジュールと異なる太陽電池モジュールである。
【0097】
《比較例1》
比較例1に係る太陽電池モジュールも、実施例1に係る太陽電池モジュールと同様の手順で製造されたものである。ただし、比較例1に係る太陽電池モジュールは、“フッ素系炭化水素樹脂層16を積層した金属層17”の代わりに、0.5mm厚のアルミ板を採用したもの(フッ素系炭化水素樹脂層16を備えず、第2封止層15により金属層17・発電素子基材14間が接着されているもの)となっている。
【0098】
《比較例2》
比較例2に係る太陽電池モジュールも、実施例1に係る太陽電池モジュールと同様の手順で製造されたものである。ただし、比較例2に係る太陽電池モジュールは、“フッ素系炭化水素樹脂層16を積層した金属層17”の代わりに、“0.5mm厚のアルミ板上にポリエステル樹脂層を形成した部材”を採用したもの(フッ素系炭化水素樹脂層16の代わりに、非フッ素系炭化水素樹脂層を設けたもの)となっている。
【0099】
次に、上記した各太陽電池モジュールに対して行った各種評価の内容及び評価結果を説明する。
【0100】
〔発電特性評価〕
各太陽電池モジュールの発電特性評価は、各太陽電池モジュールの最大出力をソーラーシミュレーター(日清紡製)で測定することにより行った。その結果、いずれの太陽電池モジュールも、最大出力がおよそ0.53Wとなっていること、つまり、良好な発電特性を示すものとなっていることが、確認できている。
【0101】
〔接着性評価〕
製造した各太陽電池モジュール(各実施例/比較例の太陽電池モジュール)の金属層17・発電素子基材14間の接着性の評価は、引張試験機(株式会社オリエンテック製STA−1150)を用いたJIS K6854−2に準拠した180度剥離試験により行った。より具体的には、各太陽電池モジュールから、JIS K6854−2に準拠した剥離試験用サンプルを作製し、作製した各剥離試験用サンプルに対して上記180度剥離試験を行うことにより、各太陽電池モジュールの金属層17・発電素子基材14間の接着強度を評価した。
【0102】
その結果、以下の表1に示すように、フッ素系炭化水素樹脂層16を備えた太陽電池モジュール(実施例1〜4)が、金属層17・発電素子基材14間が強固に接着したものとなるのに対し、金属層17上に直接第2封止層15が設けられている太陽電池モジュール(比較例1)は、金属層17・発電素子基材14間の接着強度(剥離強度)が極めて弱いものとなることが確認できている。また、フッ素系炭化水素樹脂層16ではなくポリエステル樹脂層を金属層17上に設けた太陽電池モジュール(比較例2)の接着強度がさほど高くないことも確認できている。さらに、フッ素系炭化水素樹脂層16上に接着剤を塗工しておけば(実施例2)、金属層17・発電素子基材14間ではない部分で破壊が生じる(“材料破壊”)ほど、金属層17・発電素子基材14間を強固に接着できることも確認できている。
【0104】
従って、金属層17、フッ素系炭化水素樹脂層16、第2封止層15、発電素子基材14、発電素子13,封止層12、耐候性層11を、この順に積層した積層構造は、金属層17・発電素子基材14間の接着強度が高い太陽電池モジュールを実現できるものとなっていると言うことが出来る。
【0105】
〔表面形状評価〕
太陽電池モジュールの表面形状と見た目との関係を明らかにするために、実施例1、3、4に係る太陽電池モジュール表面のろ波最大うねりWCM、平均山間隔WC−Sm、中心線表面粗さRa、二乗平均粗さRMS、凹凸の平均間隔Smを、表面粗さ形状測定機(株式会社東京精密社製サーフコム570A)により測定すると共に、各太陽電池モジュールの外観を目視により検査した。
【0106】
その結果、各実施例に係る太陽電池モジュールのろ波最大うねりWCM等が以下の値となっていることが分かった。
【0108】
また、目視による各太陽電池モジュールの外観検査からは、実施例4に係る太陽電池モジュールが、その表面に若干しわが存在するものとなっていること、及び、実施例1、3に係る太陽電池モジュールが、表面にシワもなく、かつ、金属層17(アルミ板)の,発電素子13及び発電素子基材14により覆われていない部分が、意匠上好ましい金属光沢をもち、反射光もまぶしくないものとなっていることが分かっている。
【0109】
そして、各実施例に係る太陽電池モジュールの表面のろ波最大うねりWCM等は、表2に示した値なのであるから、特に良好な外観を有する太陽電池モジュール(表面にシワがなく、かつ、金属層17の,発電素子13及び発電素子基材14により覆われていない部分が、意匠上好ましい金属光沢をもち、反射光もまぶしくない太陽電池モジュール)を得るためには、耐候性層11の表面の,JIS B0610におけるろ波最大うねりWCMが18μm以上となり、平均山間隔WC−Smが2.5mm以下となるようにしておけば良いことになる。
【0110】
〔耐久性評価〕
実施例1に係る太陽電池モジュールに対して、85℃、50%RH、100時間、及び、85℃、85%RH、200時間の恒温恒湿試験を行い、第2封止層15/フッ素系炭化水素樹脂層16界面の、試験前後の接着強度を測定した。また、実施例6に係る太陽電池モジュールに対して、85℃、85%RH、200時間の恒温恒湿試験を行い、第2封止層15/フッ素系炭化水素樹脂層16界面の、試験前後の接着強度を測定した。
【0111】
実施例1に係る太陽電池モジュールについての接着強度の測定結果を表3に示し、実施例6に係る太陽電池モジュールについての接着強度の測定結果を表4に示す。なお、表3に示した接着強度の初期値(“46”)が、実施例1に係る太陽電池モジュールについての表1における接着強度(“50”)と異なっているのは、同一手順で製造された太陽電池モジュールの中にも個体差があることに加え、1つの太陽電池モジュールの接着強度も場所により若干異なっているためである。
【0114】
このように、フッ素系炭化水素樹脂層16を備えた太陽電池モジュールは、恒温恒湿環境下に長時間放置しても、第2封止層15・フッ素系炭化水素樹脂層16間の接着強度が維持される(大きく低下しない)ものとなっている。従って、金属層17、フッ素系炭化水素樹脂層16、…、耐候性層11という積層構造は、優れた耐久性を有する(長期間使用しても、金属層17・発電素子基材14の接着強度が低下しない)太陽電池モジュールを実現できるものとなっていると言うことが出来る。
【0115】
〔耐結露凍結性評価〕
耐結露凍結性を評価するために、実施例5に係る太陽電池モジュールの太陽電池特性を評価した後(実施例5に係る太陽電池モジュールのI−V特性を測定した後)、実施例5に係る太陽電池モジュールに3000R曲げ加工を施し、曲げ加工後の太陽電池モジュールの太陽電池特性を評価した。また、曲げ加工後の太陽電池モジュールに対して、“85℃、85%→−20℃、1サイクル6時間”のサイクルを35回繰り返す結露凍結試験を行い、当該試験後の太陽電池モジュールの太陽電池特性を評価した。
【0116】
その結果、曲げ加工を行っても太陽電池特性が殆ど変化せず、結露凍結試験前後でも、以下の表5に示したように、太陽電池特性が大きく変化しないことが分かった。
【0118】
従って、金属層17、フッ素系炭化水素樹脂層16、…、耐候性層11という積層構造は、曲げ加工に対して強く、さらに結露凍結しにくい太陽電池モジュールを実現できるものとなっていると言うことも出来る。
【0119】
〔電気絶縁性評価〕
各実施例に係る太陽電池モジュールについては、リード線・金属層17(0.5mm厚のアルミ板等)間にDC3000Vを1分間印加した後の漏れ電流を測定することも行っている。
【0120】
その結果、いずれの実施例に係る太陽電池モジュールの漏れ電流も50μA以下となることが確認できている。従って、金属層17、フッ素系炭化水素樹脂層16、…、耐候性層11という積層構造は、発電素子13・金属層17間の絶縁性が良い(発電素子13・金属層17間が短絡しにくい)太陽電池モジュールを実現できるものとなっていると言うことも出来る。