(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動輪を駆動する電動モータと、この電動モータに電力を供給するバッテリと、アクセル装置の操作量に基づいて制御信号を出力するEVコントローラ部及びこのEVコントローラ部の制御信号に基づいて前記電動モータに供給する電力量を増減するインバータ部からなる駆動制御装置とを備えた電動式二輪車であって、
前記駆動制御装置のEVコントローラ部及びインバータ部を分割して形成し、
着座シート下方の車体をボディカバーで覆い、この着座シート下方に該着座シートで開閉自在な上部開口を備えてバッテリを挿脱可能に収納し合成樹脂で一体成形した収納ボックスを配置し、この収納ボックスの側壁外周に前記EVコントローラ部を取付支持し、
前記バッテリはその箱型の一側面に放電端子部が突出形成され、前記収納ボックスは前記バッテリの前記放電端子部を収容するための収容部が設けられ、
前記EVコントローラ部は筐体の壁面に前記バッテリとの接続端子を一体に備えて、該接続端子を前記収納ボックスの収容部に臨ませ、
前記バッテリをその収納部に収納することで、前記放電端子部が位置決めされながら前記収容部に収容され、前記バッテリと前記EVコントローラ部の接続端子同士が接続することで、前記バッテリと前記EVコントローラ部とを直接接続したことを特徴とする電動式二輪車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の制御装置(35)のように中央処理装置(39)をパワー制御部(42)と一体に形成し、更にリヤアーム内に配置した構成では、路面からの振動を直接受けるため耐震性を強化する必要がある。また、パワー制御部(42)は大電力を制御するためにそれ自身が発熱して高温になり、一体に形成された中央処理装置(39)も影響を受けるため耐熱性を強化する必要がある。なお、耐震性の強化方法としては例えば、弾性体で浮動支持する方法や樹脂モールディングする等の方法がある。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑み、電装品の耐久性等の性能や配置性を向上維持し、コストダウンを実現し得る電動式二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動式二輪車は、駆動輪を駆動する電動モータと、この電動モータに電力を供給するバッテリと、アクセル装置の操作量に基づいて制御信号を出力するEVコントローラ部及びこのEVコントローラ部の制御信号に基づいて前記電動モータに供給する電力量を増減するインバータ部からなる駆動制御装置とを備えた電動式二輪車であって、前記駆動制御装置のEVコントローラ部及びインバータ部を分割して形成し、着座シート下方の車体をボディカバーで覆い、この着座シート下方に該着座シートで開閉自在な上部開口を備えてバッテリを挿脱可能に収納し合成樹脂で一体成形した収納ボックスを配置し、この収納ボックスの側壁外周に前記EVコントローラ部を取付支持し
、前記バッテリはその箱型の一側面に放電端子部が突出形成され、前記収納ボックスは前記バッテリの前記放電端子部を収容するための収容部が設けられ、前記EVコントローラ部は筐体の壁面に前記バッテリとの接続端子を一体に備えて、該接続端子を前記収納ボックスの収容部に臨ませ、前記バッテリをその収納部に収納することで、前記放電端子部が位置決めされながら前記収容部に収容され、前記バッテリと前記EVコントローラ部の接続端子同士が接続することで、前記バッテリと前記EVコントローラ部とを直接接続したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電動式二輪車において、前記着座シート前方の車体を下方に湾曲して低床のステップボードを備え、車両平面視で前窄まりに形成された前記着座シート前端部及びその下方の前記ボディカバーで覆われた空間を車両平面視で前窄まりに形成し、この前窄まりの空間で前記収納ボックスの前側に前記EVコントローラ部を配置したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電動式二輪車において、前記インバータ部を前記低床のステップボードの下方に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、合成樹脂製の収納ボックスに取付支持されたEVコントローラに高い防振効果が得られ、適正且つ安全運転が保証される。また、バッテリとEVコントローラとが直接接続されることで、高圧配線等を用いないで済むため、有効にコストダウンを図ることができる。更に、前後方向に長い着座シート下方の空間を有効利用し、スペース効率よく電装品を収納することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明による電動式二輪車における好適な実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るスクータ型の電動式二輪車の側面図である。先ず、
図1を用いて、自動二輪車の全体構成について説明する。なお、
図1を含め、以下の説明で用いる図においては、必要に応じて車両の前方を矢印Frにより、車両の後方を矢印Rrにより示し、また、車両の側方右側を矢印Rにより、車両の側方左側を矢印Lにより示す。
【0014】
図1に示すように、電動式自動二輪車の車体フレームは、不図示のヘッドパイプと、ヘッドパイプから下方に延び、途中から後方に向かって略水平に延設されるダウンチューブ1と、ダウンチューブ1の後端部から後上方に延設される左右のリアフレーム2とを含んで構成される。また、図示されないが、ダウンチューブ1の下部から左右の補助フレームが水平或いはやや後上がりに延設され、それぞれリアフレーム2に連結する。
【0015】
不図示のヘッドパイプによって左右2本のフロントフォーク3が左右に回動可能に支持される。フロントフォーク3の下部には前輪4が回転自在に支持されており、ハンドルバー5により前輪4が左右に操舵される。
【0016】
左右のリアフレーム2の下部のブラケット6にスイングアーム7の前端がピボット軸を介して軸支されて上下に揺動可能に設けられる。スイングアーム7は、車両の左側でのみアーム部7aが後方に延伸する片持ち式のスイングアームであり、アーム部7aの後端部とリアフレーム2との間にリアサスペンション8が装架される。また、アーム部7aの途中にはスタンド9が装着される。
【0017】
スイングアーム7のアーム部7aの後端部には、駆動輪である後輪10と、後輪10を駆動する電動モータを含むパワーユニット11とが支持され、電動モータの出力軸の回転が減速機を介して後輪10に伝えられる。
【0018】
車体フレームは樹脂製の車体カバーにより覆われ、車両の外観を構成する。車体カバーは、レッグシールドとしてのフロントレッグシールド12及びリアレッグシールド13、ロアカバー14並びにリアフレームカバー15等を組み合わせることにより構成される。フロントレッグシールド12は、車体前部を覆うように配置され、フロントフェンダも構成する。リアレッグシールド13は、フロントレッグシールド12の後面を構成するように配置され、収納用のポケット部16が形成される。ロアカバー14は、フロントレッグシールド12及びリアレッグシールド13に連設され、左右の補助フレームから着座シート17の最下方を覆うように配置され、ライダーが足を載せる足載せ部18を構成する。リアフレームカバー15は、着座シート17の下方でリアフレーム2を覆うように配置される。
【0019】
着座シート17の下方で左右一対のリアフレーム2間には、後述するバッテリ等を含む電装品の収納部として収納ボックス100が配設される。着座シート17は前部のヒンジ機構を支点として上下に回動自在に支持されて開閉可能とされ、収納ボックス100の蓋を兼ねる。このように開閉可能とした着座シート17の下方に収納ボックス100が配置されるため、収納された電装品の着脱作業を容易に行うことができる。
【0020】
さて、本実施形態において主要な電装品として、前述したパワーユニット11の電動モータに電力を供給するバッテリ101及びスペアバッテリ101Aと、アクセル装置の操作量に基づいて制御信号を出力するEVコントローラ102及びこのEVコントローラ102の制御信号に基づいて該電動モータに供給する電力量を増減するインバータ103からなる駆動制御装置とを備える。なお、この例では収納ボックス100に収納される電装品として、典型的にはバッテリ101とするが、これは充電等のために着脱頻度が比較的高いこと等がその理由であるが、必要に応じてその他の電装品を収納するものであってもよい。
【0021】
上述のように電装品は着座シート17の下方に収納される。ここで、着座シート17は平面視で概して前後に長い形態を有し、その前端部まわりは前窄まりに形成される。
図2は、着座シート17を車両から取り外した状態を示している。着座シート17下方の空間もしくはスペースは、ロアカバー14及びリアフレームカバー15等の車体カバーによって覆われ、上記のような着座シート17の形態に倣う、あるいは沿うように全体として前後に長く、即ち概して左右方向の幅Wが比較的短いのに対して、前後方向の長さLが比較的長く設定される。この場合、より具体的には当該空間もしくはスペースの前後端部付近のそれぞれ幅W
1,W
3が短く、中央部付近のW
2がそれらよりも広くなっている。収納ボックス100もかかる空間に収容されるように形成される。
【0022】
なお、
図3は着座シート17及び収納ボックス100を外した状態を示しており、収納ボックス100が配置される着座シート17の下方には左右のリアフレーム2が略前後に延設され、収納ボックス100及び後輪10等がそれらの間に位置するように配置される。各リアフレーム2には収納ボックス100を支持するための取付ブラケット2aが付設されており、ボルト等を用いてこれらの取付ブラケット2aに収納ボックス100を締着固定するようになっている。
【0023】
次に
図4及び
図5は、この実施形態における収納ボックス100の具体的な例を示している。収納ボックス100は合成樹脂材料で一体成形され、着座シート17の上下回動動作に対応して開閉される上部開口100aを有している。この上部開口100aは平面視で、着座シート17下方の空間に対応するように概して前後に長く、その前端部が前窄まりに形成される。収納ボックス100の略中央部付近にて、車両取付時に略上下方向となるように上部開口100aから深く凹んだ収納部104及び104Aが前後に隣接配置される。これらの収納部104及び104Aにはそれぞれバッテリ101及びスペアバッテリ101Aが収納される。
【0024】
なお、車両搭載時には
図1に示されるように、収納部104及び104Aに収納されたバッテリ101及びスペアバッテリ101Aが、後方に適度に傾斜するように傾きを持って形成される。つまり、バッテリ101及びスペアバッテリ101Aの挿脱方向が、着座シート17前部のヒンジ機構の回動支点とは反対方向へ逃げるように傾斜し、これにより挿脱の際の取扱いあるいは操作性を向上している。
【0025】
バッテリ101及び104Aの筐体は概略箱状を呈し、例えば
図6に示した例のように厚さが比較的薄い箱型、即ち直方体の形態となっている。そして、その厚さ方向で互いに隣接し合うように収納ボックス100に収納される。また、バッテリ101はその箱型の一側面に放電端子部105が突出形成され、この放電端子部105には後述するEVコントローラ102の接続端子と接続する複数の接続端子が列設されている。
【0026】
EVコントローラ102の筐体もまた、概略箱状を呈し、例えば
図7に示した例のように厚さが比較的薄い箱型の形態となっている。また、EVコントローラ102はその箱型の一端側、車両搭載時には上側にバッテリ101の放電端子部105の接続端子と接続する複数の接続端子106が列設されている。バッテリ101及びEVコントローラ102それぞれ単体では
図6に示されるようにバッテリ101の放電端子部105の接続端子とEVコントローラ102の接続端子106同士が接続される。
【0027】
EVコントローラ102の接続端子106の両側並びに接続端子106とは反対端側には、収納ボックス100に取り付けるための複数の取付ブラケット107が突設されている。そして、ボルト等を用いてこれらの取付ブラケット107を介してEVコントローラ102を収納ボックス100に締着固定するようになっている。なお、収納ボックス102にはそれらのボルト等を螺着させるためのボス108が設けられている(
図5参照)。
【0028】
収納ボックス100の筐体の側壁外周、特に前部側壁は平坦状に形成されており、
図5に示されるようにその前部側壁にEVコントローラ102の筐体の一側面を当てがうようにしてEVコントローラ102が取り付けられる。ここで、
図4を参照して、収納部104に連設するかたちで、バッテリ101の放電端子部105を収容するための収容部109が設けられている。この収容部109の底部には、収納ボックス100に取り付けられた際のEVコントローラ102(
図5)の接続端子106が該収容部109に臨むように列設される。
【0029】
また、EVコントローラ102の筐体の他側面(車両搭載時には前側となる)において左右の両端部には、
図7あるいは
図8に示されるように面取り110が形成されている。この面取り110を設けることで、前述のように前窄まりの着座シート17下方の空間で干渉することなく配置可能になる。
【0030】
電装品のうちインバータ103は、低床のステップボード即ち足載せ部18の下方に配置される。なお、バッテリ101とEVコントローラ102及びインバータ103は、図示されていない電気コードを介して相互接続され、信号や電力等を授受し得るようになっている。
【0031】
上記の場合、バッテリ101及びスペアバッテリ101Aの上端部には
図8等に示されるように取手111が付設されていて、この取手111を把持して収納部104及び104Aからの挿脱操作を行うことができる。なお、
図8等において収納部104の前側に収容部109が、収納部104Aの後側に収容部109が配置され、即ちバッテリ101及びスペアバッテリ101Aは互いに背合せ状態で収納ボックス100に収納される。
【0032】
上記構成において、駆動制御装置を構成するEVコントローラ102とインバータ103が分割して形成され、一方のインバータ103はステップボード下方に配置される。また、EVコントローラ102については
図5等に最もよく示されるように、合成樹脂製の収納ボックス100側壁外周に取付支持される。この場合、収納ボックス100を形成する合成樹脂は、鉄やアルミニウムもしくはアルミニウム合金に比べて柔軟な材質であり、振動吸収性に極めて優れている。このように合成樹脂材で一体成形されて収納ボックス100に取付支持されたEVコントローラ102に高い防振効果が得られる。これによりEVコントローラ102の誤動作等を防止し、適正且つ安全運転が保証される。
【0033】
また、EVコントローラ102の筐体一端にはバッテリ101との接続端子106を一体に備えて、これを収納ボックス100の収容部109に臨ませ、バッテリ101とEVコントローラ102とが直接接続される。これにより両者を接続する高価な高圧配線等を用いないで済むため、有効にコストダウンを図ることができる。この場合、バッテリ101を収納部104に収納する際、その放電端子部105が位置決めされながら収容部109に収容され、バッテリ101とEVコントローラ102の接続端子同士を簡単且つ適正に接続することができる。
【0034】
収納ボックス100において、バッテリ101及びスペアバッテリ101Aが前後に収納され、更に収納ボックス100の前側にEVコントローラ102が取付支持される。このように電装品を配置することで、前後方向に長い着座シート17下方の空間を有効利用し、スペース効率よく電装品を収納することができる。この場合、着座シート17下方の空間において、
図3に示されるように左右幅w
1が広く設定された中央部付近に幅広のバッテリ101及びスペアバッテリ101Aを配置し、これらよりも幅狭の左右幅w
2としたEVコントローラ102を前窄まりとなった部位に配置し、より効率よく電装品を収納することができる。
【0035】
更に、EVコントローラ102には面取り110を設け、前窄まりの着座シート17下方の空間において極めてスペース効率よく収納することができる。
【0036】
着座シート17下方の空間において、バッテリ101及びスペアバッテリ101Aに加えてEVコントローラ102が配置され、かなりの重量部分を占める電装品がこの空間に集中的に配置される。例えばスイングアーム7等の車体中央部から離れた部位に配置する場合に比較して、所謂マス集中化を図り、良好な操縦安定性を確保する等の利点がある。
【0037】
ここで
図9A、
図9Bは本発明の変形例を示している。この例は着座シート17下方の空間においてバッテリ101及びスペアバッテリ101Aを左右に併置したものであり、このような配置でも限定された空間にスペース効率よく集中的に配置することができる。また、この場合、
図9Bのようにバッテリ101及びスペアバッテリ101Aを左右に適度に傾けて「V」字状等に配置してもよく、着座シート17との位置関係で挿脱操作性に優れている。
【0038】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態において電装品としてバッテリ101(スペアバッテリ101A)、EVコントローラ102及びインバータ103の例を説明したが、これらの電装品の配置関係を入れ替えてもよい。例えばEVコントローラ102とインバータ103の配置関係を反対にしてもよい。更に、電装品としてこれらの部品に限らず、その他の電装品を含み、いずれの電装品をどこに配置するかを適宜組み合わせ選択することができる。