(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5741603
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】エキシマランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 65/00 20060101AFI20150611BHJP
H01J 61/26 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
H01J65/00 D
H01J61/26 N
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-14997(P2013-14997)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-146527(P2014-146527A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年2月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】谷野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】朝山 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】田川 幸治
【審査官】
小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−289150(JP,A)
【文献】
特開2005−276640(JP,A)
【文献】
特開平7−142038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/26,65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電容器の内部に配置された内部電極と、前記放電容器の外部に配置された外部電極を一対の電極とし、前記放電容器内にエキシマ発光ガスが封入されたエキシマランプにおいて、
前記放電容器の内面には、前記発光ガスがエキシマ放電によって発生する紫外光を、これよりも長波長の紫外光に変換する蛍光体が設けられており、
前記内部電極はコイル形状であって、その軸心方向の一部にコイルを密巻にした密巻部が形成され、
該密巻部にゲッターが取り付けられていることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記ゲッターは、中空棒状の金属容器内にゲッター材料が保持されて構成され、該ゲッターの長手方向が前記内部電極の長手方向に対して略直交して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記密巻部には、前記内部電極を保持し固定するアンカー部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記放電容器は、その一方の端部側は金属箔によって箔封止され、他方の端部側にはチップ部が設けられており、
前記内部電極は、その一端が前記金属箔と電気的に接続されて前記放電容器に封止され、他端が前記チップ部内に挿入されており、
前記密巻部は、前記内部電極の他端側に偏った位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエキシマランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内外電極型のエキシマランプに関するものであり、特に、冷蔵庫等の食品保管庫の殺菌に用いられるエキシマランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫などに食品を長期間入れておくと、食品が腐食してガスが発生し冷蔵庫内で菌の繁殖、異臭、他の食品への悪影響を及ぼす可能性がある。そのために、冷蔵庫内で繁殖した菌を殺菌する手段が必要であって、紫外線ランプがしばしば用いられている。
その紫外線ランプとしては、従来低圧水銀ランプが多用されているが、これよりも発光効率が良く、光出力強度が強いエキシマランプの採用が近時検討されている。しかしながら、このエキシマランプにおいては、封入する発光ガスによっても異なるが、放射光の波長が200nm以下の真空紫外光であり、例えば、発光ガスとしてキセノンを封入した場合、その放射光は172nmを中心とする真空紫外光であって、これをそのまま冷蔵庫用に用いると、この真空紫外光によって庫内の雰囲気にオゾンが発生してしまい、人体に対して悪影響を及ぼすことから、そのままでは使用することができない。
【0003】
そのために、エキシマランプの放電容器の内面に蛍光体を設けて、放電空間内でエキシマ発光により生成される200nm以下の真空紫外光を、より長波長側の230nm〜250nmの紫外光に変換して外部に放射することが好ましい。こうすることにより、冷蔵庫内の雰囲気中に人体に有害なオゾンが発生することなく、大腸菌や黄色ぶどう球菌等の殺菌に有効なピーク波長が230nm〜250nmの光を発生させることができる。
【0004】
しかしながら、エキシマランプの放電容器の内面に蛍光体を設けた場合、この蛍光体が放電プラズマに曝されることで、該蛍光体から不純ガスや水分が発生し、放電容器内に残留してしまうという問題がある。これらの不純ガスや水分が放電空間内に残留すると放射照度が急激に低下し、そのため殺菌効果が弱くなり、十分な殺菌処理が行われないという不具合がある。更に、十分な殺菌処理をしようとすると、処理時間を長く確保しなければならないという不利点もある。
【0005】
ところで一方、エキシマランプにゲッターを設けてガスや水分を除去する技術がある。例えば、特開2006−228563号公報(特許文献1)には、放電容器の内部に内側管を設けてその内部にゲッターを形成する技術が開示されている。しかしながら、かかる従来技術では、放電容器の内部に内側管を設けるなど放電容器の内部構造が複雑であって、その製造が煩雑であった。
また、放電容器内に発光空間とは別のゲッター室を設けた構造もあるが、この構造でも、放電容器の全長が長くなり、放電容器内の構造も複雑である。
冷蔵庫内の殺菌処理のためには、ランプの小型化・構造簡略化が必須であり、上記した構造はこうした用途には不向きであり、こうした用途での、小型で構造が簡便であり、かつ放射照度の急激な低下を招くことのないエキシマランプの実現が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−228563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、放電容器の内部に配置された内部電極と、前記放電容器の外部に配置された外部電極を一対の電極とし、前記放電容器内にエキシマ発光ガスが封入されたエキシマランプにおいて、周囲の雰囲気中にオゾンを発生させることなく、殺菌処理に有効な波長の紫外光を出射でき、かつ、放電容器内に不純ガスや水分が残留することなく、急速な照度低下を招くことのなく、構造の簡略な小型構造の冷蔵庫用などのエキシマランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明に係るエキシマランプにおいては、放電容器の内面には、封入した発光ガスがエキシマ放電によって発生する紫外光を、これよりも長波長の紫外光に変換する蛍光体が設けられており、内部電極はコイル形状であって、その軸心方向の一部にコイルを密巻にした密巻部が形成され、該密巻部にゲッターが取り付けられていることを特徴とする。
また、前記ゲッターは、中空棒状の金属容器内にゲッター材料が保持されて構成され、該ゲッターの長手方向が前記内部電極の長手方向に対して略直交して配置されていることを特徴とする。
また、前記密巻部には、前記内部電極を保持し固定するアンカー部が設けられていることを特徴とする。
また、前記放電容器は、その一方の端部側は金属箔によって箔封止され、他方の端部側にはチップ部が設けられており、前記内部電極は、その一端が前記金属箔と電気的に接続されて前記放電容器に封止され、他端が前記チップ部内に挿入されており、前記密巻部は、前記内部電極の他端側に偏った位置に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエキシマランプによれば、内部電極を構成するコイル体に直接ゲッターを取り付けるので、内側管とかゲッター室とかを別途備える必要がなく、簡便な構造とすることができる。
また、ゲッターをコイル状内部電極の密巻部に取り付けたので、該密巻部がより高温となって、ゲッターを活性化させやすく、その活性温度を維持できるという効果がある。
こうして、放電容器内に蛍光体を設けることにより、オゾン発生の心配がなく、殺菌処理に有効な波長の紫外光を発生できるとともに、放電容器内に蛍光体からの不純ガスや水分を吸収するゲッターを配置しても、小型で構造が簡便なエキシマランプを提供できるものである。
【0010】
また、ゲッターを中空棒状の金属容器内にゲッター材を保持する構成として、該ゲッターの長手方向が前記内部電極の長手方向に対して直交して配置されていることにより、金属容器の両端部が外部電極に近接する位置になるので、点灯始動時の補助電極として機能し、ランプの始動性を向上することができる。
【0011】
また、前記ゲッターが取り付けられる前記密巻部にはアンカー部が設けられていて、前記コイル状内部電極を保持し固定するもので、ゲッターの荷重で内部電極が変形や変動することがなく、所望の位置で内部電極を好適に固定することが可能である。
【0012】
また、前記内部電極の一端封止部よりも、チップ部が形成された他端側に偏って密巻部を形成したので、該密巻部に取り付けられたゲッターが、一端封止部の加熱封止する作業時に受ける熱の影響を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】本発明のエキシマランプの断面図(A)と、A−A矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に本発明のエキシマランプの外観斜視図が、
図2に外部電極を取り除いた部分透過斜視図が示されている。
エキシマランプ1は、放電容器2の一端が封止された封止部3を有し、他端には排気チップ残部であるチップ部4が形成されている。該放電容器2には、真空紫外光の吸収率が高い部材を用いることが好適であり、例えば、ソーダ石灰ガラス、オゾンレス石英ガラス、溶融石英ガラスなどを用いることができる。
放電容器2の外周面には、例えば、網形状の外部電極5が設けられ、放電容器2の内部にはその長手方向に延在する内部電極6が設けられている。
図4にも示すように、この内部電極6はコイル形状をしていて、一端部6aにおいて前記封止部3内に埋設された金属箔7に電気的に接続されており、他端部6bは前記チップ部4内に挿入されている。
そして、放電容器2内には希ガスが封入され、例えば、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)であり、これらを単独で用いても良いし、適宜組合せて混合して用いてもよい。
【0015】
図2〜4に示すように、前記コイル状内部電極6は、その長さ方向の一部において巻回ピッチが小さくなる密巻部8が形成されている。
図2および
図4に示すように、この密巻部8は長さ方向においてチップ部4側に偏った位置に形成されており、この密巻部8にはアンカー部9が設けられていて、コイル状内部電極6を保持している。
そして、
図2および
図3に示すように、この密巻部8にはゲッター10が取り付けられている。
【0016】
図5に示すように、このゲッター10は、中空棒状の金属容器11と、その内部に充填されたゲッター材12とからなる。
このゲッター材12としては、例えば、チタニウム、ジルコニウム、ニオブ、バナジウム、鉄、イットリウム、ハフニウム等、またその何れかを含む合金であって、ゲッターの活性化温度が300度〜700度の材料を用いる。
そして、該ゲッター10はコイル状内部電極6の密巻部8において、該内部電極6と略直交するように溶接等により取り付けられていて、
図6に示すように、この配置により、ゲッター10の両端は外部電極5に接近し、該外部電極5との距離が小さくなる。これにより、ゲッター10はランプの始動時に始動補助電極として機能し、始動性の向上をもたらすことになる。
一方、
図4、
図6に示すように、前記放電容器2の内面には、蛍光体15が設けられていて、放電容器2内に封入された発光ガスがエキシマ放電により生成する172nmなどの真空紫外光を、それより長波長の230nm〜250nmなどの紫外光に変換する。
この蛍光体としては、例えば、YPO
4:Nd、LiYP
4O
12:Pr、LaPO
4:Pr、LaPO
4:Pr、YAl
3B
4O
12:Pr、YAl
3B
4O
12:Bi、LaPO
4:Ce、LaMgAl
11O
19:Ce、等が挙げられる。
【0017】
以上の構成において、放電容器2内に封入されたキセノンガスなどの発光ガスは、外部電極5と内部電極6との間に生起されるエキシマ放電により、172nm等の真空紫外光を発光する。これが、蛍光体15により波長230〜250nmなどの紫外光に変換されて、外部に放射される。
そのとき、蛍光体15からは不純ガスや水分などが放出されるが、ゲッター10によって吸着されて、放電容器2内に残留することがない。
そして、ゲッター10は、コイル状内部電極6の密巻部8に設けられているので、より高温となる密巻部8によって活性化され、また、その活性温度が維持される。
また、ゲッター10は、前記内部電極6の長手方向に対して略直交して配置されるので、その両端部が外部電極5に近接して、始動補助の役割を担うので、ランプの始動性の向上に寄与する。
【0018】
また、密巻部8には、アンカー部9が設けられているので、密巻部8にゲッター10を取り付けてその荷重が掛かっても、コイル状内部電極6が変形することがない。
更に、内部電極6の密巻部8は、封止部3よりもチップ部4側に偏って形成されるので、ここに取り付けられるゲッター10が、前記封止部3の熱封止時に、その熱の影響を受けることがない。
【0019】
以上説明したように、本発明においては、コイル状内部電極の密巻部にゲッターを取り付ける構成を採用したことにより、小型で、構造の簡便なエキシマランプが実現して、しかもオゾンを発生することなく、殺菌効果のある紫外光を放射して冷蔵庫など食品保管庫用として好適なランプが得られるものである。
【符号の説明】
【0020】
1 エキシマランプ
2 放電容器
3 封止部
4 チップ部
5 外部電極
6 内部電極
7 金属箔
8 密巻部
9 アンカー部
10 ゲッター
11 棒状の中空容器
12 ゲッター材
15 蛍光体