特許第5741616号(P5741616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5741616
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】生産システム及び製品の生産方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20150611BHJP
   B23Q 41/08 20060101ALI20150611BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20150611BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   G05B19/418 B
   B23Q41/08 B
   B25J13/00 Z
   H05K13/04 Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-55242(P2013-55242)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-182470(P2014-182470A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2013年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 慎悟
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−263403(JP,A)
【文献】 特開2011−079081(JP,A)
【文献】 特開昭63−268577(JP,A)
【文献】 特開昭61−027821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B23Q 41/08
B25J 13/00
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して一連の加工作業を分担して行う複数の生産ロボットと、
前記複数の生産ロボットでの各加工作業を制御する制御部と、
前記複数の生産ロボット間において前記ワークを搬送可能な搬送手段と、を備え、
前記制御部は、前記複数の生産ロボットの内、所定の加工時間に対して加工作業が遅延する第1の生産ロボットの作業遅延情報である遅延時間を取得すると共に、前記第1の生産ロボットで行っている加工作業を代替可能な第2の生産ロボットの作業空き情報である待ち時間を取得し、前記取得した作業遅延情報及び作業空き情報を照合し、前記第1の生産ロボットでの残りの加工作業を、前記第2の生産ロボットにより所定の時間内に代替加工できるか否かの判定を行い、代替加工が可能であると判定した場合、前記搬送手段により前記第1の生産ロボットから前記第2の生産ロボットへ前記ワークを搬送させる、生産システム。
【請求項2】
前記制御部は、加工作業の進捗情報である作業遅延情報及び作業空き情報の少なくとも一方を前記複数の生産ロボットから取得する、請求項1に記載の生産システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の生産ロボットそれぞれから取得した前記進捗情報に基づいて、加工遅延している前記第1の生産ロボット及び代替加工可能な前記第2の生産ロボットを検出する、請求項に記載の生産システム。
【請求項4】
前記制御部は、加工作業の進捗情報である作業遅延情報及び作業空き情報の少なくとも一方を、前記複数の生産ロボットの内、予め定められた生産ロボットのみから取得する、請求項1に記載の生産システム。
【請求項5】
前記第1及び第2の生産ロボットは、少なくとも一部の加工作業を共通して行うことができる加工手段を有する、請求項1〜の何れか一項に記載の生産システム。
【請求項6】
前記第1及び第2の生産ロボットでの代替加工に関する情報を含む作業履歴情報を蓄積する記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記作業履歴情報に基づいて、前記複数の生産ロボットでの代替加工及び前記搬送手段によるワーク搬送の少なくとも一方を制御する、請求項1〜の何れか一項に記載の生産システム。
【請求項7】
前記搬送手段は、搬送ロボット、ベルトコンベア、及び、前記複数の生産ロボットのアームの少なくとも何れか一つである、請求項1〜の何れか一項に記載の生産システム。
【請求項8】
前記作業遅延情報は、前記第1の生産ロボットが、所定の作業時間内に終了しない作業を完了するために追加でかかる時間、又は、所定の作業時間内に終了しない作業項目に関する情報であり、
前記作業空き情報は、前記第2の生産ロボットが、所定の作業を終了し、次のワーク加工まで待っている間の待ち時間に関する情報である、請求項1〜7の何れか一項に記載の生産システム。
【請求項9】
ワークに対して一連の加工作業を分担して行う複数の生産ロボットで製品を生産するための生産方法であって、
前記複数の生産ロボットで前記ワークに対して所定の加工作業を行うステップと、
前記複数の生産ロボットの内、所定の加工時間に対して加工作業が遅延する第1の生産ロボットの作業遅延情報である遅延時間を制御部が取得するステップと、
前記複数の生産ロボットの内、前記第1の生産ロボットで行っていた加工作業を代替可能である第2の生産ロボットの作業空き情報である待ち時間を前記制御部が取得するステップと、
前記取得された作業遅延情報及び作業空き情報を照合し、前記第1の生産ロボットでの残りの加工作業を、前記第2の生産ロボットにより所定の時間内に代替加工できるか否かの判定を行い、代替加工が可能であると判定した場合、前記制御部が搬送手段を制御することにより、加工遅延している前記第1の生産ロボットから代替加工可能な前記第2の生産ロボットへ前記ワークを搬送させるステップと、
前記搬送された前記ワークに対して前記第2の生産ロボットで加工作業を行うステップ
と、を備える、製品の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産システム及び製品の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電機製品や電子製品等の各種製品を生産する際、いわゆるセル生産で対応することがある。このセル生産を複数の組立ロボットを用いて自動化する際、一部のロボットにおいて作業が遅延してしまう場合がある。そこで、仮に作業遅延が発生しても、未実施の作業を後続のアームロボットに行わせることで、後続の作業ロボットを停止させないようにする技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−218093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したロボット生産システムでは、遅延が生じた場合、後続の作業ロボットを用いて作業遅延の影響を低減するようにしているが、作業遅延の影響をより柔軟に低減させることが望まれている。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、ロボットでの作業遅延をより柔軟なシステム構成によって低減させることができる生産システム、及び、製品の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る生産システムは、ワークに対して一連の加工作業を分担して行う複数の生産ロボットと、複数の生産ロボットでの各加工作業を制御する制御部と、複数の生産ロボット間においてワークを搬送可能な搬送手段とを備えている。この生産システムでは、制御部は、複数の生産ロボットの内、所定の加工時間に対して加工作業が遅延する第1の生産ロボットの作業遅延情報を取得すると共に、第1の生産ロボットで行っている加工作業を代替可能な第2の生産ロボットの作業空き情報を取得し、取得した作業遅延情報及び作業空き情報を照合した結果に基づいて搬送手段により第1の生産ロボットから第2の生産ロボットへワークを搬送させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロボットでの作業遅延をより柔軟なシステム構成によって低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る生産システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示す生産システムの制御機構を示すブロック図である。
図3図3は、第2実施形態に係る生産システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しつつ、生産システムの実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0010】
[第1実施形態]
図1に示すように、生産システム1は、複数の組立ロボット装置10,20,30,40,50(以下「組立ロボット装置10〜50」とも記す)と、複数の組立ロボット装置10〜50(複数の生産ロボット)での加工作業を統括的に制御するシステムコントローラ60(制御部)と、各組立ロボット装置10〜50間において、ワークWを搬送可能な搬送ロボット70(搬送手段)とを備えて構成される。各組立ロボット装置10〜50は、例えば図1に示されるように、ワークを順次搬送するワーク搬送方向(組立ロボット装置10から50に向かう方向)に並べて配置される。各組立ロボット装置10〜50は、半製品であるワークに対して所定のワーク用部品を取り付けるといった一連の組立作業(加工作業)をシステムコントローラ60による統括制御に基づいて行い、所定の製品を生産する。
【0011】
図1に示す例では、一例として、5つの組立ロボット装置10〜50を用いているが、これに限定される訳ではなく、2〜4つの組立ロボット装置で生産システム1を構成してもよいし、6つ以上の組立ロボット装置で生産システム1を構成してもよい。
【0012】
ここで、生産システム1を構成する組立ロボット装置10〜50について説明する。組立ロボット装置10は、例えば6軸制御が可能な組立ロボットであり、ワークの組立作業を行うロボットアーム12(加工手段)と、ロボットアーム12が固定されてワークW1の組立作業を行うための作業台14と、作業台14上でワークW1を固定する固定部16と、組立ロボット装置10での組立作業を制御するコンピュータである装置コントローラ18(図2参照)とを備えている。組立ロボット装置20〜50は、組立ロボット装置10と同様の構成であり、ロボットアーム22,32,42,52(加工手段)と、作業台24,34,44,54と、固定部26,36,46,56と、装置コントローラ28,38,48,58(図2参照)とを備えている。
【0013】
各組立ロボット装置10〜50は、ワークに対して一連の加工作業を分担して行うための各組立作業が可能なようにロボットアーム12等が構成されているが、他の組立ロボット装置10〜50と共通する組立作業(例えば、ワークに取り付けた部材のネジ止めなど)が可能なようにも構成されている。即ち、各組立ロボット装置10〜50は、少なくとも一部の作業については、特定の設定変更を行うことなしに、又は、アーム先端のハンド部の交換や作業機能の設定を一部変更すること等により、共通して対応可能なように構成されている。なお、組立ロボット装置10〜50は、他の組立ロボット装置と異なる加工(接着剤の塗布や部材の切断など)ができるように構成されていてもよい。その場合には、加工の種類に応じてロボットアーム12等の構成が多少異なることになる。また、図1に示す例では、組立ロボット装置10〜50として、一腕の作業ロボットを例示したが、双腕ロボット等の他の組立ロボットでもよい。
【0014】
各装置コントローラ18,28,38,48,58(以下「装置コントローラ18〜58」とも記す)は、システムコントローラ60と相互に通信可能となるように接続されており、各組立ロボット装置10〜50それぞれに割り当てられた組立作業に必要な時間(作業時間)の情報、各組立ロボット装置10〜50での作業の進捗情報、及び、各組立ロボット装置10〜50で対応可能な作業項目の情報等をシステムコントローラ60との間で送受信する。装置コントローラ18〜58それぞれには、作業の経過時間を計時可能なタイマーが内蔵されており、組立ロボット装置10〜50での作業の進捗情報として、組立ロボット装置の作業空き情報や、組立ロボット装置における作業遅延情報をシステムコントローラ60に送信する。
【0015】
作業空き情報は、例えば、所定の作業が終了し、次のワーク加工までの待ち時間に関する情報である。作業遅延情報は、例えば、所定の作業時間に対して割り当てられた作業がどの程度終了していないのか(又は終了しないと予測されるのか)、即ち、すべての作業を完了するまでの追加時間、又は、所定の作業時間内に終了しない作業項目などに関する情報である。
【0016】
このような構成を備えた組立ロボット装置10〜50は、上述したように並べて配置され、組立ロボット装置10,20,30,40,50の順でワークに対して所定の組立作業を行うことで製品を完成させる。各組立ロボット装置10〜50間でのワークの受け渡しは、例えば各組立ロボット装置10等に設置されているロボットアーム12等を用いて行うことができるが、組立ロボット装置10〜50に沿ってベルトコンベアを設置し、ロボットアーム12等を用いてベルトコンベア上に加工済みのワークを置いたり、ベルトコンベアから加工用のワークを取り出したりするようにしてもよい。
【0017】
システムコントローラ60は、組立ロボット装置10〜50の上述したような組立動作を各装置に内蔵されて個別の作業制御を行う装置コントローラ18〜58と共働して統括的に制御する制御部であり、記憶装置、電子演算装置、入力装置及び表示装置を有するコンピュータにより構成されている。システムコントローラ60は、機能的には、図2に示すように、組立ロボット装置10〜50での組立作業を統括的に制御する組立ロボット制御部62と、搬送ロボット70を制御する搬送ロボット制御部68とを有している。
【0018】
組立ロボット制御部62は、あるワークWに対して組立ロボット装置10〜50によって所定の組立作業を順に行う際の組立ロボット装置10〜50間でのワークの受渡しタイミング(作業時間)や、各組立ロボット装置10〜50へのワーク用部品の供給タイミング等を制御する。また、組立ロボット制御部62は、空き情報取得部63、遅延情報取得部64及び判定部65を含んでおり、所定のタイミングで隣接する組立ロボット装置10〜50へワークを引き渡すように制御された組立ロボット装置10〜50の作業状況を周期的にモニタする。
【0019】
空き情報取得部63は、各組立ロボット装置10〜50から周期的に送信される作業空き情報を取得する。空き情報取得部63は、取得した作業空き情報を対応可能な組立作業項目データと紐づけて、各ロボット装置10〜50毎に一次的に記憶部に記憶しておく。
【0020】
遅延情報取得部64は、各組立ロボット装置10〜50から非周期的(突発的)に送信される作業遅延情報を取得する。遅延情報取得部64は、作業遅延情報を取得すると、取得した作業遅延情報を、遅延している作業項目データ及び追加作業時間情報を含めて、判定部65へ出力する。
【0021】
判定部65は、遅延情報取得部64から作業遅延情報が入力されると、その作業遅延情報に基づいて、複数の組立ロボット装置10〜50の内、所定の組立時間に対して組立作業が遅延している組立ロボット装置(図1の例では組立ロボット装置50)を検出すると共に、その検出の際に組立ロボット装置で行っていた組立作業(作業項目)を代替可能である組立ロボット装置があるか否かを判定する。つまり、判定部65は、取得した作業遅延情報と作業空き情報とを照合して、作業遅延している組立ロボット装置での残りの組立作業を、代替加工する別の組立ロボットで所定の時間内に代替加工できるか否かの判定を行う。
【0022】
この代替可能なロボット装置の判定では、空き情報取得部63で予め取得された作業空き情報によって、次のワークの引き渡し時間までに代替加工する別の作業が可能であるか否かや、作業遅延している組立ロボット装置での作業項目と同じ作業項目が実施可能であるか否かが判定される。図1に示す例では、判定部65によって、例えば組立ロボット装置20が、作業が遅延している組立ロボット装置50の代替ロボットとして検出される。判定部65は、このように、ある組立ロボット装置での作業が遅延し、別の組立ロボット装置でその作業を代替可能であると判定した場合には、作業遅延している組立ロボット装置から代替可能である組立ロボット装置へのワークの搬送を指示する搬送指示信号を搬送ロボット制御部68に出力する。
【0023】
搬送ロボット制御部68は、組立ロボット装置10〜50で組立作業中に作業遅延が発生した場合にワークを各装置間で移動させて遅延を低減させるために搬送ロボット70の搬送を制御する部分である。具体的には、組立ロボット制御部62の判定部65で遅延していると判定された組立ロボット装置(例えば組立ロボット装置50)から加工中のワークを取得し、判定部65で遅延している組立ロボット装置(例えば組立ロボット装置50)の代替ができる組立ロボット装置と判定された組立ロボット装置(例えば組立ロボット装置20)に、かかるワークを搬送して受け渡す。システムコントローラ60から搬送ロボット70への指示信号は例えば無線等によって送信される。
【0024】
なお、加工中のワークを受け渡された組立ロボット装置(例えば組立ロボット装置20)は、空いている時間を用いて、加工途中のワークの組立作業を行って、残りの加工を完了する。
【0025】
ここで、図1に戻り、生産システム1を用いた製品の生産方法の具体例について説明する。
【0026】
まず、各組立ロボット装置10〜50それぞれは、一連の組立作業の内、予め割り当てられた作業を行い、作業が終了すると、隣接する組立ロボット装置20〜50等に対して加工済みのワークW1〜W5をロボットアーム12等によって搬送する。なお、この通常の搬送は、ベルトコンベアや搬送ロボット等を用いてもよい。
【0027】
続いて、上述した一連の組立作業を行っている際に、いずれかの組立ロボット装置(例えば組立ロボット装置50)において、ワーク用部品の掴み損ない等によってワークW5に対する所定の組立作業が遅延する事態が発生する。このような掴み損ないは、例えば、ワーク用部品の位置を認識するための画像認識処理において、加工を行う工場等での光の具合が時間と共に変化することによって発生し得る。システムコントローラ60は、このようなワークW5に対する作業の遅延を各組立ロボット装置(例えばロボット装置50)からの作業遅延情報を取得することによって認識する。
【0028】
続いて、所定の組立ロボット装置での作業が遅延していることが検出されると、その組立ロボット装置(例えばロボット装置50)で行っていた加工作業を代替可能な組立ロボット装置(例えばロボット装置20)を、各組立ロボット装置10〜50から周期的に取得する作業空き情報に照合することで、検出する。図1に示す例では、例えば、組立ロボット装置20が検出される。この組立ロボット装置20では、組立ロボット装置50がワークW5への組立作業を行う期間と同じ期間で作業するワークW2に対する組立作業は既に終えて組立ロボット装置30へ受け渡しており、また、次に組立作業を行うべきワークW1の作業が直前の組立ロボット装置10で組立作業中であり、作業に空きが発生している状態になっている。
【0029】
続いて、遅延している組立ロボット装置50と代替可能な組立ロボット装置20との検出がされると、システムコントローラ60は、搬送ロボット70を用いて、加工途中のワークW5を組立ロボット装置50から組立ロボット装置20へ搬送して引き渡す。なお、搬送ロボット70は、例えばマニピュレータを有しており、マニピュレータを用いてワークW5の引き渡し等を行う。
【0030】
続いて、組立ロボット装置50からのワークW5を組立ロボット装置20が受け取ると、組立ロボット装置20は、加工途中のワークW5に対して、残りの組立作業を実施する。そして、組立ロボット装置20は、残りの組立作業を実施したワークW5を通常の搬送手段であるベルトコンベア等に搭載し、通常の加工工程に戻す。一方、作業が遅延してしまっていた組立ロボット装置50は、加工中のワークW5を組立ロボット装置20へ引き渡すことができたので、後続のワークW4に対して所定の組立作業を行えるようになり、これにより、システム全体としての作業遅延が防止される。
【0031】
このように、生産システム1では、システムコントローラ60は、複数の組立ロボット装置10〜50の内、所定の加工時間に対して加工作業が遅延する組立ロボット装置(例えば組立ロボット装置50)の作業遅延情報を取得すると共に、作業遅延している組立ロボット装置で行っている加工作業を代替可能な組立ロボット装置(例えば組立ロボット装置20)の作業空き情報を取得し、取得した作業遅延情報及び作業空き情報を照合した結果に基づいて搬送ロボットにより作業遅延している組立ロボット装置から代替加工可能な組立ロボット装置へワークを搬送させている。このため、生産システム1によれば、製造工程の上流又は下流の製造装置であるか否かに関わらず、作業空き状態である組立ロボット装置を有効活用することができるので、ロボットでの作業遅延をより柔軟なシステム構成によって低減させることができる。
【0032】
また、生産システム1では、システムコントローラ60は、取得した作業遅延情報及び作業空き情報を照合して、組立ロボット装置で遅延している残りの加工作業を搬送先の組立ロボット装置で所定の時間内に代替加工できるか否かの判定を行い、代替加工できる場合に、搬送ロボット70により、加工遅延している組立ロボット装置から代替加工可能な組立ロボット装置へワークを搬送させている。このように代替加工可能か否かを判定してから搬送しているため、作業空き状態である組立ロボット装置の有効活用をより確実に行うことができる。
【0033】
また、生産システム1では、システムコントローラ60は、加工作業の進捗情報である作業遅延情報及び作業空き情報を複数の組立ロボット装置10〜50それぞれから取得している。このため、生産システム1全体における作業遅延状態や代替作業などを全体的に把握することができ、ロボットでの作業遅延をより一層柔軟なシステム構成によって低減させることができる。
【0034】
なお、システムコントローラ60は、加工作業の進捗情報である作業遅延情報及び作業空き情報の少なくとも一方を、複数の組立ロボット装置10〜50の内、予め定められた組立ロボット装置(例えば組立ロボット装置50)のみから取得するようにしてもよい。作業が遅延してボトルネックとなる組立ロボット装置は、経験上、推定することができるので、かかる装置からの進捗情報のみに限定することで、システムコントローラ60が処理する情報量を減らして、処理速度を早めることができる。
【0035】
[第2実施形態]
続いて、図3を参照して、第2実施形態に係る生産システムについて説明する。
【0036】
第2実施形態に係る生産システム2は、第1実施形態に係る生産システム1を構成する組立ロボット装置10〜50と、システムコントローラ60と、搬送ロボット70とに加え、組立ロボット装置110,120,130,140,150(以下「組立ロボット装置110〜150」とも記す)を備えている。組立ロボット装置110〜150は、組立ロボット装置10〜50と同様の構成及び配置をしており、それぞれ、ワークの組立作業を行うロボットアーム112,122,132,142,152(加工手段)と、ロボットアーム112等が固定されてワークの組立作業を行うための作業台114,124,134,144,154と、作業台114等の上でワークW11〜W14を固定する固定部116,126,136,146,156と、組立ロボット装置110等での組立作業を制御する装置コントローラとを備えている。組立ロボット装置110〜150は、組立ロボット装置10〜50と同様に、システムコントローラ60によって統括的に制御される。
【0037】
このように、本実施形態に係る生産システム2は、一連の加工作業を分担して行う第1群の組立ロボット装置10〜50と、第1群の組立ロボット装置10〜50とは別の群である一連の加工作業を分担して行う第2群の組立ロボット装置110〜150との2つの生産システムを含んで構成されている。
【0038】
第2の実施形態では、このように異なる群の組立ロボット装置10〜50,110〜150との間においても、第1実施形態と同様に、作業が遅延している組立ロボット装置から代替可能な組立ロボット装置へのワークの搬送を行うようになっている。第2実施形態における代替制御は第1実施形態と同様であるため説明を省略するが、一例としては次のように代替される。
【0039】
例えば、図3に示すように、組立ロボット装置40,50で組立作業が遅延している場合を想定する。この場合、第2実施形態に係る生産システム2では、組立ロボット装置40の遅延作業を行う組立ロボット装置として組立ロボット装置20を、組立ロボット装置50の遅延作業を行う組立ロボット装置として組立ロボット装置150を判定部65による判定によって抽出する。そして、生産システム2では、かかる判定結果に基づいて、組立ロボット装置40で作業遅延しているワークW4を組立ロボット装置20へ、組立ロボット装置50で作業遅延しているワークW6を組立ロボット装置150へ、2台の搬送ロボット70によりそれぞれ搬送する。そして、ワークW4,W6が搬送された組立ロボット装置20,150において、残りの組立作業を完了する。
【0040】
このように、生産システム2でも、第1実施形態と同様、システムコントローラ60は、複数の組立ロボット装置10〜50,110〜150の内、所定の加工時間に対して加工作業が遅延する組立ロボット装置(例えば組立ロボット装置40,50)の作業遅延情報を取得すると共に、作業遅延している生産ロボットで行っている加工作業を代替可能な生産ロボット(例えば組立ロボット装置20,150)の作業空き情報を取得し、取得した作業遅延情報及び作業空き情報を照合した結果に基づいて搬送ロボット70により作業遅延している生産ロボットから代替加工可能な生産ロボットへワークを搬送させている。このため、生産システム2によれば、製造工程の上流又は下流の製造装置であるか否かに関わらず、更に、別の製造群の製造装置であるか否かに関わらず、作業空き状態である組立ロボット装置を有効活用することができるので、ロボットでの作業遅延をより一層柔軟なシステム構成によって低減させることができる。
【0041】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形を適用できる。例えば、システムコントローラ60又は各装置コントローラ18等が、作業遅延していると検出された組立ロボット装置及び代替された別の組立ロボット装置での代替加工に関する情報を含む作業履歴情報を蓄積する記憶部を備えるようにしてもよい。そして、この場合において、システムコントローラ60又は各装置コントローラ18等は、この記憶部に蓄積された作業履歴情報に基づいて、複数の組立ロボット装置10等での代替加工及び搬送ロボット70によるワークの搬送の少なくとも一方を制御するようにしてもよい。この場合、履歴情報を用いることで、システムが学習機能を有することになり、必要とする情報量を効率的に絞ることができるので、より処理速度の速い生産システムとすることができる。
【0042】
また、上記実施形態では、作業遅延している組立ロボット装置から代替する組立ロボット装置への加工中ワークの搬送手段として、搬送ロボットを用いたが、ベルトコンベアや各装置のロボットアーム12等を用いてもよい。また、上記実施形態では、作業遅延している組立ロボット装置の検出や代替可能な組立ロボット装置の抽出等の処理をシステムコントローラ60で行っていたが、係る処理の一部又は全部を各組立ロボット装置10等の装置コントローラ18等で行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1,2…生産システム、10,20,30,40,50,110,120,130,140,150…組立ロボット装置、60…システムコントローラ、70…搬送ロボット。
図1
図2
図3