特許第5741647号(P5741647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5741647ゴムロール製造装置及びゴムロール製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5741647
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】ゴムロール製造装置及びゴムロール製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/02 20060101AFI20150611BHJP
   B29C 47/76 20060101ALI20150611BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20150611BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20150611BHJP
【FI】
   B29C47/02
   B29C47/76
   B29K21:00
   B29L9:00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-166958(P2013-166958)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-33832(P2015-33832A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2014年9月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 英一
(72)【発明者】
【氏名】和田 昇
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−103473(JP,A)
【文献】 特開平06−254988(JP,A)
【文献】 特開2003−185893(JP,A)
【文献】 特開2008−052025(JP,A)
【文献】 特開2003−300239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 47/00−47/96
B29C 47/76
B29K 21/00
G03G 15/02
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の流路を有し、該流路から未加硫のゴム材を円筒状に押し出す押出部と、
前記流路の内周側に前記流路の軸方向に沿って設けられた通路を有し、該通路の一端から芯材を円筒状の前記ゴム材の内部へ供給する供給部と、
前記通路の内周一部に配置され前記通路の内壁に形成された溝部で構成された、前記ゴム材からの気体を前記通路の前記一端から他端側に向けて排出可能な排出部と、
を備えるゴムロール製造装置。
【請求項2】
前記排出部には、前記通路の前記一端から前記ゴム材が流入しない構成とされた請求項1に記載のゴムロール製造装置。
【請求項3】
記溝部の深さは、前記通路の前記一端において、0.2mm以下とされている請求項1又は2に記載のゴムロール製造装置。
【請求項4】
押出部が有する環状の流路から未加硫のゴム材を円筒状に押し出す押出工程と、
前記流路の内周側に前記流路の軸方向に沿って設けられた通路の一端から芯材を円筒状の前記ゴム材の内部へ供給する供給工程と、
前記通路の内周一部に配置され前記通路の内壁に形成された溝部で構成された排出部によって、前記ゴム材からの気体を前記通路の前記一端から他端側に向けて排出する排出工程と、
を有するゴムロール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムロール製造装置及びゴムロール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円筒状に押し出される未加硫のゴム材の中心部に間隔をおいて順次芯金を送り込み、ゴム材で芯金の外周面が被覆されたゴムロール部とゴム材で芯金の間が中空とされた中空部とを交互に排出する排出機と、排出機から排出された中空部のゴム材により芯金の端面の少なくとも周縁部が覆われるように、中空部のゴム材を内方に押圧する押圧機と、を備えるゴムロール製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−103473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ゴム材に含まれる気体によってロール形状に乱れが生じるのを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、環状の流路を有し、該流路から未加硫のゴム材を円筒状に押し出す押出部と、前記流路の内周側に前記流路の軸方向に沿って設けられた通路を有し、該通路の一端から芯材を円筒状の前記ゴム材の内部へ供給する供給部と、前記通路の内周一部に配置され前記通路の内壁に形成された溝部で構成された、前記ゴム材からの気体を前記通路の前記一端から他端側に向けて排出可能な排出部と、を備える。
【0006】
請求項2の発明は、前記排出部には、前記通路の前記一端から前記ゴム材が流入しない構成とされている。
【0007】
請求項3の発明では、前記溝部の深さは、前記通路の前記一端において、0.2mm以下とされている。
【0008】
請求項4の発明は、押出部が有する環状の流路から未加硫のゴム材を円筒状に押し出す押出工程と、前記流路の内周側に前記流路の軸方向に沿って設けられた通路の一端から芯材を円筒状の前記ゴム材の内部へ供給する供給工程と、前記通路の内周一部に配置され前記通路の内壁に形成された溝部で構成された排出部によって、前記ゴム材からの気体を前記通路の前記一端から他端側に向けて排出する排出工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の構成によれば、本構成における排出部を有さない場合に比べ、ゴム材に含まれる気体によってロール形状に乱れが生じるのを抑制できる。
【0010】
本発明の請求項2の構成によれば、排出部に対して通路の一端からゴム材が流入する場合に比べ、ゴム材に含まれる気体によってロール形状に乱れが生じるのを抑制できる。
【0011】
本発明の請求項3の構成によれば、溝部の深さが通路の一端において0.2mmを超える寸法とされている場合に比べ、ゴム材に含まれる気体によってロール形状に乱れが生じるのを抑制できる。
【0012】
本発明の請求項4の製造方法によれば、本製造方法における排出工程を有さない場合に比べ、ゴム材に含まれる気体によってロール形状に乱れが生じるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るゴムロール製造装置の構成を示す図である。
図2図1のゴムロール製造装置における通路及び溝部の構成を示す図である。
図3図1のゴムロール製造装置を用いた製造方法の一工程を示す図である。
図4図1のゴムロール製造装置を用いた製造方法の一工程を示す図である。
図5図1のゴムロール製造装置を用いた製造方法の一工程を示す図である。
図6図1のゴムロール製造装置を用いた製造方法の一工程を示す図である。
図7図1のゴムロール製造装置を用いた製造方法の一工程を示す図である。
図8図1のゴムロール製造装置を用いた製造方法の一工程を示す図である。
図9】実施例及び比較例の評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0015】
(ゴムロール製造装置10)
まず、本実施形態に係るゴムロール製造装置10について説明する。図1は、ゴムロール製造装置10の構成を示す図である。
【0016】
ゴムロール製造装置10は、ゴムロールを製造する装置である。製造対象であるゴムロールは、一例として、画像形成装置の感光体ドラムに接触して回転し感光体ドラムの外周面を帯電する帯電ロールとして用いられる。
【0017】
具体的には、ゴムロール製造装置10は、図1に示されるように、いわゆるクロスヘッドダイから構成される排出機12と、排出機12の下方に配置される分離機14と、分離機14の下方に配置される引出機16と、を備えている。
【0018】
排出機12は、未加硫のゴム材21を供給するゴム材供給部18と、ゴム材供給部18から供給されたゴム材21を円筒状に押し出す押出部20と、押出部20から円筒状に押し出されるゴム材21の内部に芯金22(芯材の一例)を供給する芯金供給部24(供給部の一例)と、を備えている。
【0019】
ゴム材供給部18は、図1における左右方向に沿って配置された円筒状の本体部26と、本体部26の内部に本体部26の軸方向に沿って配置されたスクリュー28と、を有している。スクリュー28は駆動モータ30によって回転駆動される。本体部26の駆動モータ30側(図1における右側)には、ゴム材21を投入する投入口32が設けられている。投入口32から投入されたゴム材21は、本体部26の内部においてスクリュー28によって練られながら押出部20に向けて(図1における左側に向けて)送り出される。
【0020】
なお、ゴム材21としては、一例として、全ポリマー成分100質量部のうち80質量部以上のエピクロルヒドリンゴムを有し、全ポリマー成分100質量部に対しカーボンや炭酸カルシウムなどの無機フィラーを30〜60質量部配合したものが用いられる。さらに、ゴム材21としては、一例として、ムーニー粘度(JIS K6300−1)が45〜60の範囲のものが用いられる。芯金22としては、一例として、円柱状又は円筒状の金属棒が用いられる。
【0021】
押出部20は、図1における上下方向に沿って配置された円筒状のケース34と、ケース34の内部中心にケース34の軸方向に沿って配置される円柱状のマンドレル36と、マンドレル36の下方に配置された排出ヘッド38と、を備えている。
【0022】
円筒状のケース34は、軸方向の中間部において、ゴム材供給部18の本体部26と接続されている。これにより、本体部26からケース34へゴム材21が送り出されるようになっている。マンドレル36は保持部材40によってケース34に保持されている。マンドレル36の下部は下方に向けて先細った形状を呈している。
【0023】
排出ヘッド38は保持部材42によってケース34に保持されている。マンドレル36の外周面(一部において保持部材40の外周面)と保持部材42の内周面(一部において排出ヘッド38の内周面)との間には、ゴム材21が流れる環状の環状流路44(流路の一例)が形成されている。そして、ゴム材供給部18のスクリュー28が駆動することで、当該環状流路44から、マンドレル36の下方に配置された後述の合流域48に向けてゴム材21が円筒状に押し出されるようになっている。
【0024】
芯金供給部24は、マンドレル36の上方に配置されるローラ対50と、マンドレル36の軸中心部に形成された通路46(ガイド孔)と、を備えている。ローラ対50は複数対(例えば、3対)設けられ、各ローラ対50の片側のローラはベルト52を介して駆動ローラ54に接続されている。
【0025】
通路46は、環状流路44の内周側に環状流路44の軸方向に沿って形成された貫通孔で構成されている。当該貫通孔は、マンドレル36の上端から下端に達するシームレス(継ぎ目のない)の孔で構成されている。
【0026】
通路46の内径(最小内径)は、芯金22の外径に対して、0.03mm以上、0.1mm以下の差を有している。芯金22の外径(直径)は、一例として、8mmとされている。
【0027】
なお、通路46の径は、上端の入口46Aから下端の出口46Bまで一定であることが望ましいものの、ゴム材21と合流する出口46B側の径が規定されていれば、通路46における上下方向の全域の径が規定される必要は無い。
【0028】
マンドレル36の先端の下方の領域は、通路46の出口46Bから供給される芯金22と環状流路44から供給されるゴム材21とが合流する合流域48とされている。即ち、この合流域48に向けてゴム材21が円筒状に押し出され、円筒状に押し出されるゴム材21の内部に芯金22が供給されるようになっている。
【0029】
芯金供給部24では、駆動ローラ54が駆動されると、各ローラ対50によって挟持される芯金22はマンドレル36の通路46に向けて送られる。芯金22は予め定められた長さとされており、ローラ対50によって送られる後方の芯金22がマンドレル36の通路46に存在する先方の芯金22を押すことにより、複数の芯金22が順次に通路46を通過するようになっている。また、駆動ローラ54の駆動は、先方の芯金22の前方端がマンドレル36の先端に位置したときに一旦停止されようになっており、マンドレル36の下方の合流域48において、芯金22が間隔をおいて送り込まれるようになっている。
【0030】
また、駆動ローラ54によって、芯金22のゴム材21への供給速度を制御することで、得られるゴムロールの軸方向の外径変化を与えるようになっている。例えば、芯金22の軸方向中央部付近の速度よりも、芯金22の軸方向両端部の速度を速くすることで、クラウン形状(軸方向両端部よりも軸方向中央部のゴム材21の厚みが厚い形状)のゴムロールが製造される。
【0031】
このように、排出機12においては、合流域48においてゴム材21を円筒状に押し出し、ゴム材21の内部に間隔をおいて芯金22が順次送り込まれるようになっている。それにより、外周面がゴム材21で被覆された芯金22が排出ヘッド38から排出されるようになっている。なお、芯金22の外周面にはゴム材21との接着性を高めるためにプライマーが予め塗布されている。
【0032】
分離機14は、ゴム材21を分離する1対の半円筒状の分離部材60を有している。1対の分離部材60は、排出機12から排出されるゴム材21を挟むようにして対向配置されている。各分離部材60には、中心部に向けて突出する突出部62が形成されている。各分離部材60は、駆動機構(図示省略)によって、図1における左右方向及び上下方向に可動されるようになっている。分離機14では、突出部62がゴム材21を挟むように分離部材60が駆動されることで、芯金22とその次に送り出される芯金22との間でゴム材21を分離するようになっている。
【0033】
引出機16は、1対の半円筒状の把持部材64を有している。1対の把持部材64は、排出機12から排出されるゴム材21を挟むようにして対向配置されている。各把持部材64には、ゴム材21の外周面形状に対応した形状の把持部66が形成されている。各把持部材64は駆動機構(図示省略)によって、図1における左右方向および上下方向に可動されるようになっている。引出機16では、把持部66がゴム材21を把持するように把持部材64を駆動すると共に、把持部材64を下方へ移動させることで、ゴム材21を排出機12から引き出すようになっている。
【0034】
ここで、ゴムロール製造装置10は、図2に示されるように、通路46の内周一部に配置され、ゴム材21からの気体を通路46の下端(一端)から上端側(他端側)に向けて排出可能な溝部80(排出部の一例)を備えている。
【0035】
溝部80は、一例として、軸方向視にて、通路46の内壁にその周方向に間隔を置いて3つ形成されている。各溝部80は、通路46の入口46Aから出口46Bに渡って、直線状に形成されている。
【0036】
すなわち、溝部80は、通路46の出口46B(マンドレル36の下端)で下方に開放されると共に、通路46の入口46A(マンドレル36の上端)で上方に開放されている。従って、溝部80の下端から流入した気体は、溝部80の上端へ抜けるようになっている。すなわち、溝部80は、ゴム材21からの気体を、通路46の下端から上端側に向けて排出可能となっている。
【0037】
溝部80によって排出される気体としては、例えば、ゴム材供給部18においてゴム材21が巻き込んだ空気や、ゴム材供給部18への投入前にゴム材21中に含まれる空気等の気体などが該当する。
【0038】
通路46の下端(出口46B)から溝部80にゴム材21が流入しないように、通路46の下端における溝部80の深さDが設定されている。具体的には、溝部80の深さD(最大深さ)は、一例として、0.2mmとされる。この深さDであれば、溝部80の幅Wに関わらず、ムーニー粘度(JISK6300−1)が45〜60の範囲のゴム材21は、溝部80に流入しない。なお、このことは、後述の評価に用いたゴムロール製造装置10での試験により、確認されている。
【0039】
溝部80の幅Wは、少なくとも芯金22の直径よりも小さく、一例として、0.5mmとされている。このとき、通路46の内径Bは、一例として、8.05mmとされる。なお、図2においては、通路46に対する溝部80の深さD及び幅Wを誇張して図示している。
【0040】
また、溝部80は、通路46の出口46Bでの面積、寸法が規定されていれば、溝部80の上下方向の全域で、面積、寸法が規定される必要は無い。従って、溝部80は、通路46の入口46A側に近づくにつれて、断面積や形状を変化させてもよいし、直線であっても曲線であっても、或いは途中で屈曲していても良く、溝部80の形状は、特に限定されるものではない。
【0041】
(ゴムロール製造方法)
次に、ゴムロール製造装置10を用いたゴムロール製造方法について説明する。図3図8は、ゴムロール製造装置10を用いた製造方法の各工程を示す図である。図中において、「V1」は芯金22の送り出し速度を示し、「V2」はゴム材21の押し出し速度を示している。
【0042】
本製造方法では、ゴム材供給部18から押出部20の環状流路44に供給されたゴム材21は、図3に示されるように、排出機12における押出部20の環状流路44から合流域48に向けて、円筒状に押し出される(押出工程)。
【0043】
さらに、芯金供給部24の出口46Bから芯金22を円筒状のゴム材21の内部に供給する(供給工程)。これにより、合流域48において、ゴム材21と芯金22とが継続的に合流し、芯金22の外周をゴム材21が被覆していく。
【0044】
ゴム材21と芯金22とが継続的に合流する際に、ゴム材21から内周側(芯金22側)へ放出される気体が、通路46の溝部80によって、通路46の下端から上端側に向けて排出される(排出工程)。
【0045】
さらに、図4に示すように、ゴム材21が被覆された芯金22が送り出されて、次の芯金22の先端が出口46Bに達すると、当該次の芯金22の供給が停止される(V1=0)。すると、各把持部材64は互いに近づく方向に可動され、各把持部材64の把持部66によってゴム材21が把持される。
【0046】
そして、図5に示すように、ゴム材21を把持した状態で各把持部材64を下方に移動する。即ち、各把持部材64によってゴム材21を排出機12から引き出す。そうすると、合流域48のゴム材21に張力が作用し、ゴム材21で芯金22の間に中空部分58が形成される。
【0047】
図6に示すように、芯金22の送り出しが再開され、中空部分58が1対の分離部材60の対向位置まで移動する。なお、芯金22の送り出し速度V1とゴム材21の押し出し速度V2とは略同一である。そして、中空部分58が1対の分離部材60の対向位置まで移動したとき、図7に示すように、各分離部材60は互いに近づく方向に可動され、中空部分58のゴム材21は各分離部材60の突出部62によって内方に分離される。それにより、先方の芯金22の端面68および後方の芯金22の端面68が中空部分58のゴム材21によって覆われることとなる。
【0048】
そして、図8に示すように、各分離部材60が互いに離れる方向に可動されると、中空部分58において分離され、芯金22を袋とじ状とするゴムロール100が成形される。なお、各把持部材64は分離されたゴムロール100を把持しつつ下方に適宜な距離だけ移動させた後、次のゴム材21を把持するための待機位置として図4の仮想線(二点鎖線)で示す位置に移動する。
【0049】
袋とじ状のゴムロール100は、次工程において加硫処理炉に入れられる。それにより、芯金22を覆うゴム材21に対して加硫処理が施される。
【0050】
加硫処理されたゴムロール100は、次工程において加工処理される。具体的に、ゴムロール100の両端側において芯金22が一定の長さ露出するように両端部のゴム材21が切除される。すなわち、芯金22の端面68を覆う部分のゴム材21は切除されることとなる。これにより、ゴムロールが得られる。
【0051】
なお、ゴム材21は加硫処理が施される前に把持部材64の把持部66によって把持されるため、加硫処理後のゴム材21には把持部66の跡が残る。しかし、ゴム材21における当該跡が付いた部分は、前記した切除される両端部のゴム材21に含まれる(両端部のゴム材21と共に切除される)ため、当該跡が最終製品のゴムロールに残ることはない。
【0052】
(本実施形態の作用)
本実施形態では、通路46の内径(最小内径)が、芯金22の外径に対して、0.1mm以下の寸法差を有している。一方、芯金22の外径に対して0.1mmを超えて大きい場合には、芯金22の径方向(軸方向と直交する方向)における位置の自由度が過剰となる。これにより、ゴム材21により形成されるロール部に対して、芯金22が偏心する原因となる。芯金22が偏心した場合には、帯電ロールを回転させた際に振れが大きくなり、感光体ドラムとの距離が変化して、帯電不良を生じる。
【0053】
本実施形態では、通路46の内径(最小内径)が、芯金22の外径に対して、0.03mm以上の寸法差を有している。一方、芯金22の外径に対して0.03mm未満である場合には、芯金22の振れや外径のバラつきによって、芯金22が通路46内に引っ掛かり、芯金22の詰りが発生する場合がある。なお、0.03mmという下限値は、芯金22の許容される公差に基づき規定されるものである。従って、芯金22の許容される公差がさらに小さければ、0.03mm未満であってもよいし、芯金22の許容される公差が大きい場合には、0.03mm超える値であってもよい。
【0054】
前述のように、本実施形態では、通路46の内径(最小内径)が、芯金22の外径に対して、0.03mm以上、0.1mm以下の差を有しているので、芯金22のロール部に対する偏心、及び、芯金22の詰りが抑制される。
【0055】
このように、通路46の内径(最小内径)と、芯金22の外径との寸法差が、0.1mm以下のように小さい場合には、芯金22と通路46との隙間がないのと等しい状態となり、ゴム材21から内周側(芯金22側)へ放出される気体の逃げ道が塞がれる。
【0056】
これに対して、本実施形態では、通路46に溝部80が形成されているので、前述のように、ゴム材21から内周側(芯金22側)へ放出される気体が、通路46の溝部80によって、通路46の下端から上端側に向けて排出される。このため、ゴム材21と芯金22との界面に気体が残留しない。従って、当該気体によって、製造されるゴムロールにおいて、軸方向及び周方向に部分的な凸部が形成されず、ゴム材21に含まれる気体によってロール形状に乱れが生じることが抑制される。
【0057】
さらに、本実施形態では、溝部80の深さDが0.2mm以下とされており、溝部80にはゴム材21が流入しない。このため、溝部80がゴム材21で塞がらず、ゴム材21の気体が効果的に排出される。
【0058】
また、溝部80の深さDが0.2mm以下とされているため、深さDが0.2mmを超える場合に比べ、先細り形状のマンドレル36の下端側の加工性が良好となる。
【0059】
(評価)
図9に示すように、実施例1〜4、比較例1、2について、以下の通り評価を行った。
【0060】
本評価では、上記のゴムロール製造装置10における排出機12として、内径12.5mmの円形断面をもち、ゴム材21の流路に硬質クロームメッキを施したクロスヘッドダイを用いた。
【0061】
マンドレル36の径方向中心にφ8.05mmの内径を持つ貫通孔を加工して、通路46とした。そして、通路46に沿って内径表面に、各実施例に応じた幅、最大深さの長方形の断面形状を持つ溝部80を周方向に3箇所加工した(図2参照)。比較例では、溝部80を形成していないものを用いた。
【0062】
ゴム材21としては、全ポリマーのうち80質量部以上のエピクロルヒドリンゴムを有し、カーボンや炭酸カルシウムなど無機フィラーを30〜60質量部、その他加硫剤や加硫促進剤、可塑剤などを配合したものを用いた。このゴム材21のムーニー粘度(JISK6300−1)は52であった。
【0063】
芯金22としては、長さ355mm、直径8.0mm、全振れ公差30μm以下の快削鋼のシャフトの表面に厚さ約5μmの無電解ニッケルメッキを施した芯金に、厚さ10μmでプライマーを塗布したものを用いた。
【0064】
そして、上記のクロスヘッドダイを用いたゴムロール製造装置10によって、芯金22に厚さ2mmのゴム材21によるゴム層を形成し、加硫硬化させた後、芯金の端面より15mmの位置でゴム層を切除して両端部に芯金22の露出した導電性ゴムロールを得た。
【0065】
こうして得られたゴムロール10本に対して、外観・形状検査を行い、気体による形状乱れの有無、ゴムロールの振れ値を測定して平均値を算出し、良否の判定を行った。気体による形状の乱れは、目視による官能評価で有無を判定した。振れについては100μm以下が不適合となる。ゴム材21の溝部80への流入は、ゴムロール10本を成形後に、ゴムロール製造装置10を分解することで確認した。
【0066】
この結果、実施例1〜3では、気体による外観異常もなく、また振れも要求値を満足している。さらに、芯金22の通路46への詰まり等、設備トラブルも発生しなかった。
【0067】
実施例4は、芯金22と通路46の隙間(クリアランス)が小さかったことにより、成形4本目で芯金22の通路46に対する詰まりが発生した。なお、成形されたゴムロール3本については、気体による外観異常もなく、また振れも要求値を満足していた。
【0068】
比較例1では、ゴムロール10本中、8本において、気体による外観異常が発生した。
【0069】
比較例2では、気体による外観異常は生じなかったものの、振れが要求値を満足しなかった。
【0070】
(変形例)
上記実施形態では、溝部80が、通路46の内壁に加工されていたが、これに限られず、通路46の内周一部にゴム材21からの気体を排出可能な隙間(空間)があればよい。当該隙間は、異形の空間で構成されていてもよい。また、当該隙間は、通路46と一体に加工することで、形成してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、溝部80は、ゴム材21が流入しないようになっていたが、これに限られず、溝部80が気体を排出可能な範囲でゴム材21が溝部80に流入することは、許容される。
【0072】
また、上記のゴムロール製造装置10では、分離機14により中空部分58でゴムロール100を分離するように構成したが、これに限られず、分離機14により中空部分58のゴム材21を内方に分離した後、別途のカッターによってゴムロール100を分離するように構成してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、ゴム材21としてエピクロルヒドリンゴムを用いたものを例示したが、これに限られず、他のゴム材料を用いても良い。
【0074】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成しても良い。
【符号の説明】
【0075】
10 ゴムロール製造装置
20 押出部
21 ゴム材
22 芯金(芯材の一例)
24 芯金供給部(供給部の一例)
44 環状流路(流路の一例)
46 通路
80 溝部(排出部の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9