特許第5741679号(P5741679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5741679
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/56 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   H01H50/56 C
   H01H50/56 G
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-272856(P2013-272856)
(22)【出願日】2013年12月27日
【審査請求日】2014年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100103012
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 隆宣
(72)【発明者】
【氏名】新海 香織
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘泰
(72)【発明者】
【氏名】小材 裕二
(72)【発明者】
【氏名】中崎 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 純久
(72)【発明者】
【氏名】早田 和也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶
【審査官】 佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−166431(JP,A)
【文献】 特表2012−517092(JP,A)
【文献】 特開2005−183097(JP,A)
【文献】 特開2002−008506(JP,A)
【文献】 実開平02−007840(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石ユニットへの通電によって生じる磁力に基づいて往復移動する操作板で、複数枚の積層した可動接触片からなる可動接触片ユニットを回動し、前記可動接触片ユニットを巾方向に2分割して形成した第1,第2分割片にそれぞれ設けた一対の可動接点を、固定接点端子に設けた一対の固定接点にそれぞれ接離する電磁継電器であって、
前記操作板で直接、押圧される前記可動接触片の分割片の自由端部のうち、開閉用可動接点および通電用可動接点をそれぞれ設けた領域の周囲にスリットを設けるとともに、前記スリットの外側に位置する領域を曲げ起こして弾性変形可能な折り曲げ片をそれぞれ形成し、
前記通電用可動接点を設けた前記分割片の前記折り曲げ片のバネ定数を、前記開閉用可動接点を設けた前記分割片の前記折り曲げ片のバネ定数よりも大きくし、
前記開閉用可動接点を開閉用固定接点に先に接触させた後、前記通電用可動接点を通電用固定接点に接触させることを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
電磁石ユニットへの通電によって生じる磁力に基づいて往復移動する操作板で、複数枚の積層した可動接触片からなる可動接触片ユニットを回動し、前記可動接触片ユニットを巾方向に2分割して形成した第1,第2分割片にそれぞれ設けた一対の可動接点を、固定接点端子に設けた一対の固定接点にそれぞれ接離する電磁継電器であって、
前記操作板で直接、押圧される前記可動接触片の前記分割片の自由端部のうち、開閉用可動接点および通電用可動接点をそれぞれ設けた領域の周囲にスリットを設けるとともに、前記スリットの外側に位置する領域を曲げ起こして弾性変形可能な折り曲げ片をそれぞれ形成し、
前記開閉用可動接点を設けた前記分割片の前記折り曲げ片よりも、前記通電用可動接点を設けた前記分割片の前記折り曲げ片を短くし、
前記開閉用可動接点を開閉用固定接点に先に接触させた後、前記通電用可動接点を通電用固定接点に接触させることを特徴とする電磁継電器。
【請求項3】
前記固定接点端子に設けた開閉用固定接点の高さ寸法を、前記通電用固定接点の高さ寸法よりも高くしたことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記固定接点端子の表面のうち、前記通電用固定接点を設けた領域よりも一段高い領域に、前記開閉用固定接点を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記第1分割片に設けた前記開閉用可動接点よりも前記可動接触片の自由端側に、前記通電用可動接点を第2分割片に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記第1,第2分割片を押圧する前記操作板の押圧面のうち、前記通電用可動接点を設けた第2分割片を押圧する領域よりも、前記開閉用可動接点を設けた第1分割片を押圧する領域を一段高くしたことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記第1,第2分割片のうち、前記開閉用可動接点を設けた第1分割片を、前記第2分割片に設けた前記通電用可動接点よりも前記開閉用可動接点が固定接点側に迫り出すように折り曲げたことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁継電器、特に、ツイン接点構造を有する電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ツイン接点を有する電磁継電器としては、例えば、コイル装置12への通電方向の切り替えに基づいて駆動する操作腕22でバネ装置33を回動し、前記バネ装置33を巾方向に2分割して形成した分割片にそれぞれ設けた一対の接点ボタン37を、端子31に設けた一対の接点ボタン34にそれぞれ接離する電磁継電器がある(特許文献1参照)。
そして、前記電磁継電器のツイン接点構造では、一対の接点ボタン37および一対の接点ボタン34を同一形状および同一材料で形成し、一対の前記接点ボタン37を一対の前記接点ボタン34に同時に接触させることを前提にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7659800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の電磁継電器は、部品精度,組立精度のバラツキによって一対の接点ボタン37が対応する一対の接点ボタン34に同時に接離しにくく、通常、片側の接点ボタン37が対応する接点ボタン34に先に接触する。この結果、先に接触する前記接点ボタン37および前記接点ボタン34の摩耗が進みやすく、寿命が短いという問題点がある。
また、前述の一対の接点ボタン37が一対の接点ボタン34に設計通りに同時に接離するとしても、2組の接点ボタン37,34がアークの発生によって同時に摩耗することにより、接触抵抗が安定しないという問題点がある。
本発明は、前記問題点に鑑み、寿命が長く、常に安定した接触抵抗で通電できる電磁継電器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電磁継電器は、前述の課題を解決すべく、電磁石ユニットへの通電によって生じる磁力に基づいて往復移動する操作板で、複数枚の積層した可動接触片からなる可動接触片ユニットを回動し、前記可動接触片ユニットを巾方向に2分割して形成した第1,第2分割片にそれぞれ設けた一対の可動接点を、固定接点端子に設けた一対の固定接点にそれぞれ接離する電磁継電器であって、前記操作板で直接、押圧される前記可動接触片の分割片の自由端部のうち、開閉用可動接点および通電用可動接点をそれぞれ設けた領域の周囲にスリットを設けるとともに、前記スリットの外側に位置する領域を曲げ起こして弾性変形可能な折り曲げ片をそれぞれ形成し、前記通電用可動接点を設けた前記分割片の前記折り曲げ片のバネ定数を、前記開閉用可動接点を設けた前記分割片の前記折り曲げ片のバネ定数よりも大きくし、前記開閉用可動接点を開閉用固定接点に先に接触させた後、前記通電用可動接点を通電用固定接点に接触させる構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、開閉用可動接点と開閉用固定接点との間にアークが生じても、通電用可動接点と通電用固定接点との間にアークが発生することがない。このため、通電用可動接点および通電用固定接点の接点摩耗が少なく、接点寿命が長いとともに、安定した通電特性を有する電磁継電器が得られる。
また、折り曲げ片を形成することにより、前記折り曲げ片のバネ力で接圧を調整できる。
そして、通電用可動接点に対する押し込み量が開閉用可動接点よりも少ない場合であっても、前記通電用可動接点は最終位置で開閉用可動接点と同一の接圧が得られる。
【0007】
本発明に係る他の電磁継電器としては、電磁石ユニットへの通電によって生じる磁力に基づいて往復移動する操作板で、複数枚の積層した可動接触片からなる可動接触片ユニットを回動し、前記可動接触片ユニットを巾方向に2分割して形成した第1,第2分割片にそれぞれ設けた一対の可動接点を、固定接点端子に設けた一対の固定接点にそれぞれ接離する電磁継電器であって、前記操作板で直接、押圧される前記可動接触片の前記分割片の自由端部のうち、開閉用可動接点および通電用可動接点をそれぞれ設けた領域の周囲にスリットを設けるとともに、前記スリットの外側に位置する領域を曲げ起こして弾性変形可能な折り曲げ片をそれぞれ形成し、前記開閉用可動接点を設けた前記分割片の前記折り曲げ片よりも、前記通電用可動接点を設けた前記分割片の前記折り曲げ片を短くし、前記開閉用可動接点を開閉用固定接点に先に接触させた後、前記通電用可動接点を通電用固定接点に接触させる構成としてもよい
【0008】
本発明によれば、開閉用可動接点と開閉用固定接点との間にアークが生じても、通電用可動接点と通電用固定接点との間にアークが発生することがない。このため、通電用可動接点および通電用固定接点の接点摩耗が少なく、接点寿命が長いとともに、安定した通電特性を有する電磁継電器が得られる。
また、折り曲げ片を形成することにより、前記折り曲げ片のバネ力で接圧を調整できる。
そして、通電用可動接点に対する押し込み量が開閉用可動接点よりも少ない場合であっても、前記通電用可動接点は最終位置で開閉用可動接点と同一の接圧が得られる。
【0009】
本発明の実施形態としては、前記固定接点端子に設けた開閉用固定接点の高さ寸法を、前記通電用固定接点の高さ寸法よりも高くしてもよい。
本実施形態によれば、前述の発明と同等の効果が得られるとともに、開閉用固定接点および通電用固定接点の高さ寸法の調整が容易であるので、部品精度,組立精度が高く、動作特性にバラツキのない電磁継電器が得られる。
【0010】
本発明の他の実施形態としては、前記固定接点端子の表面のうち、前記通電用固定接点を設けた領域よりも一段高い領域に、前記開閉用固定接点を設けてもよい。
本実施形態によれば、前述の発明と同等の効果が得られるとともに、設計の自由度が広がる電磁継電器が得られる。
【0011】
本発明の別の実施形態としては、前記第1分割片に設けた前記開閉用可動接点よりも前記可動接触片の自由端側に、前記通電用可動接点を第2分割片に設けてもよい。
本実施形態によれば、前述の発明と同等の効果が得られるとともに、操作板の押圧に基づくてこの原理で大きな曲げモーメントが開閉用可動接点に作用し、高い接点圧が得られる。
【0012】
本発明の異なる実施形態としては、前記第1,第2分割片を押圧する前記操作板の押圧面のうち、前記通電用可動接点を設けた第2分割片を押圧する領域よりも、前記開閉用可動接点を設けた第1分割片を押圧する領域を一段高くしてもよい。
本実施形態によれば、前述の発明と同等の効果が得られるとともに、前記操作板の押圧面に段差を設けるだけで、所望の接点圧を確保でき、所望の動作特性を確保しやすい。
【0013】
本発明の新たな実施形態としては、前記第1,第2分割片のうち、前記開閉用可動接点を設けた第1分割片を、前記第2分割片に設けた前記通電用可動接点よりも前記開閉用可動接点が固定接点側に迫り出すように折り曲げてもよい。
本実施形態によれば、前述の発明と同等の効果が得られるとともに、前記第1,第2分割片を板厚方向に適宜、曲げることにより、調整がしやすく、動作特性のバラツキの少ない電磁継電器が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図A,Bは本発明に係る電磁継電器の第1実施形態を示す斜視図およびカバーを外した状態を示す斜視図である。
図2図A,Bは図1で示した電磁継電器の動作前後を示す平面図である。
図3図1Aで示した電磁継電器の分解斜視図である。
図4図1Aで示した電磁継電器の異なる角度から視た分解斜視図である。
図5図A,Bは図3で図示した電磁石ユニットの分解斜視図である。
図6図A,Bは図3で示した可動接点端子および可動接触片ユニットの分解斜視図である。
図7図A図6で示した第1可動接触片の斜視図、図Bは可動接点端子および可動接触片ユニットの組み付け方法を説明するための斜視図である。
図8図A,B,C,Dは可動接点端子および可動接触片ユニットの組付工程を説明するための断面図である。
図9図A図6で示した第1可動接触片の変形例を示す斜視図、図Bは可動接点端子および可動接触片の組み付け方法を説明するための斜視図である。
図10図A,B,C,Dは可動接点端子および可動接触片ユニットの変形例の組付工程を説明するための断面図である。
図11図Aは接点機構を示す部分正面図、図B,C,Dは動作過程を説明するためのB−B線断面図である。
図12図Aは本発明に係る電磁継電器の第2実施形態を示す接点機構の部分正面図、図Bは固定接点端子の斜視図、および、図C図12AのC−C線断面図である。
図13図Aは本発明に係る電磁継電器の第3実施形態を示す接点機構の部分正面図、図B,Cは可動接点端子,可動接触片ユニットおよび固定接点端子の斜視図、および、図D図13AのD−D線断面図である。
図14図A,Bは本発明に係る電磁継電器の第4実施形態を示す接点機構の部分正面図,底面図、図C図14A,Bで図示したカードの斜視図、図D図14AのD−D線断面図である。
図15図A,Bは本発明に係る電磁継電器の第5実施形態を示す接点機構の部分正面図,底面図、図C図15A,Bで図示した可動接触片ユニットの斜視図、図D図15AのD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る電磁継電器の実施形態を、図1ないし図15に基づいて説明する。
第1実施形態に係る電磁継電器は、図1ないし図8に示すように、大略、ベース10、電磁石ユニット20、固定接点端子30、可動接触片ユニット50をカシメ固定した可動接点端子40、回動操作体60、操作板70、位置規制板80およびカバー90で構成されている。
【0016】
前記ベース10は平面方形の箱形状を有し、図3に示すように、その底面に仕切り壁11を突設するとともに、前記仕切り壁11の内向面の上方側に嵌合段部11aを形成してある。また、前記ベース10は、前記仕切り壁11で仕切られた一方の内部空間を形成する側壁に、一対の端子スリット12a,12bを設けてある。さらに、一方の前記内部空間には後述する可動接点端子40の一端部を圧入,固定するための圧入溝13を形成してある。そして、前記ベース10は、前記仕切り壁11で仕切られた他方の内部空間に、後述する電磁石ユニット20を位置決めするための位置決め突部14および位置決めリブ15(図2)を設けてある。前記位置決め突部14および位置決めリブ15には、その上端面に位置決め孔14a,15aをそれぞれ設けてある。また、前記ベース10は、対角線上の隅部に取付孔16,16を設けてあるとともに、前記取付孔16の両側に位置する外側面に係止突起17をそれぞれ設けてある。
【0017】
電磁石ユニット20は、図5に示すように、両端に鍔部21a,21bを有し、かつ、コイル22を巻回したスプール21の貫通孔21cに鉄芯23を挿通し、突出する両端部に断面略L字形状のヨーク24,25をそれぞれカシメ固定してある。前記鍔部21bの同一縁部に3本のコイル端子26a,26b,26cを圧入してある。そして、図2に示すように、前記ベース10に前記電磁石ユニット20を前記仕切り壁11、位置決め突部14および位置決めリブ15を介して位置決めし、組み付けられる。
【0018】
前記固定接点端子30は、図3に示すように、その一端部に開閉用固定接点31と通電用固定接点32とをカシメ固定してあるとともに、その他端部を端子部33としてある。前記開閉用固定接点31は、例えば、銀のような導電性に優れた金属材料で形成されている。そして、前記開閉用固定接点31は、前記固定接点端子30から突出する高さ寸法が前記通電用固定接点32の突出する高さ寸法よりも大きいとともに、前記通電用固定接点32よりも大径である。特に、前記開閉用固定接点31の表面を被覆する銀材の厚さは、前記通電用固定接点32の表面を被覆する銀材の厚さよりも厚い。
【0019】
前記可動接点端子40は、その一端部に設けたカシメ突起41(図6B)を介して前記可動接触片ユニット50の一端部をカシメ固定してあるとともに、その他端部を端子部42としてある。
【0020】
前記可動接触片ユニット50は、図6に示すように、4枚の第1,第2,第3,第4可動接触片51,52,53,54を積層し、それらの一端部を前記可動接点端子40のカシメ突起41でカシメ固定したものである。そして、前記可動接触片ユニット50は、図4に示すように、巾方向に2分割して形成した第1,第2分割片55,56の自由端部に、開閉用可動接点57および通電用可動接点58をそれぞれカシメ固定してある。
前記開閉用可動接点57は、例えば、銀のような導電性に優れた金属材料で形成されている。また、前記開閉用可動接点57は、前記可動接触片ユニット50から突出する高さ寸法が前記通電用可動接点58の突出する高さ寸法よりも大きいとともに、前記通電用可動接点58よりも大径である。特に、前記開閉用可動接点57の表面を被覆する銀材の厚さは、前記通電用可動接点58の表面を被覆する銀材の厚さよりも厚い。さらに、前記第1,第2分割片55,56はいずれも、その基部に略U字形状に板厚方向に屈曲した屈曲部55a,56aを形成してある。そして、可動接触片ユニット50は、その一端側角部に切り欠き部50aを形成してある。
【0021】
なお、本実施形態では、前記開閉用固定接点31,前記開閉用可動接点57の両方が、前記通電用固定接点32,前記通電用可動接点58よりも突出する高さ寸法が大きい場合を説明した。しかし、必ずしも前述のものに限らず、前記開閉用固定接点31,前記開閉用可動接点57の少なくともいずれか一方が、前記通電用固定接点32,前記通電用可動接点58よりも高さ寸法が大きければよい。
また、前記可動接触片ユニット50は少なくとも2枚の可動接触片で形成されていればよいことは勿論である。
【0022】
前記第1可動接触片51は、図6に示すように、一端側を巾方向に2分割して分割片51a,51bを形成するとともに、前記分割片51a,51bの基部を略U字形状に屈曲した屈曲部51cを形成してある。また、前記第1可動接触片51は、その他端縁部に複数個のカシメ孔51dを並設してあるとともに、その他端角部に切り欠き部51eを形成してある。また、前記分割片51a,51bは、その自由端部のうち、前記開閉用可動接点57および前記通電用可動接点58をそれぞれ設ける領域の周囲に半円形状のスリット51fを設けるとともに、前記スリット51fの外側に位置する切り残した領域を曲げ起こして弾性変形可能な折り曲げ片51gをそれぞれ形成してある。
【0023】
本実施形態によれば、開閉用可動接点57および通電用可動接点58を設けた領域を囲むように略U字形状のスリット51fを設けてあり、前記スリット51fの外側に位置する切り残した領域を曲げ起こして弾性変形可能な折り曲げ片51gとしてある。このため、前記スリット51fおよび前記折り曲げ片51gの形成の仕方によって接圧を調整できる。
特に、図6Bに示すように、前記第1可動接触片51のうち、開閉用可動接点57を設けた分割片51aに設けた折り曲げ片51gよりも、通電用可動接点58を設けた分割片51bに設けた折り曲げ片51gが短く、バネ定数が大きい。これは、通電用可動接点58に対する押し込み量が開閉用可動接点57よりも少ない場合であっても、通電用可動接点58は動作位置で開閉用可動接点57と同一の接圧を確保するためである。
なお、前記スリットは半円形状である必要は必ずしもなく、少なくとも1本の真直なスリットであってもよい。
【0024】
前記第2可動接触片52は、図6に示すように、一端側を巾方向に2分割して分割片52a,52bを形成するとともに、前記分割片52a,52bの基部を略U字形状に屈曲した屈曲部52cを形成してある。また、前記第2可動接触片52は、その他端縁部に複数個のカシメ孔52dを並設してあるとともに、その他端角部に切り欠き部52eを形成してある。
【0025】
前記第3可動接触片53は、図6に示すように、一端側を巾方向に2分割して分割片53a,53bを形成するとともに、前記分割片53a,53bの基部を略U字形状に屈曲した屈曲部53cを形成してある。また、前記第3可動接触片53は、その他端縁部に複数個のカシメ孔53dを並設してあるとともに、その他端角部に切り欠き部53eを形成してある。
【0026】
前記第4可動接触片54は、図6に示すように、一端側を巾方向に2分割して分割片54a,54bを形成するとともに、前記分割片54a,54bの基部を略U字形状に屈曲した屈曲部54cを形成してある。また、前記第4可動接触片54は、その他端縁部に複数個のカシメ孔54dを並設してあるとともに、その他端角部に切り欠き部54eを形成してあり、残る他端角部に圧入突起54fを突き出し加工で形成してある。
そして、一方の前記分割片54aの先端部には、後述する操作板70の係合腕部72に上下に係合するための一対の位置規制舌片54g,54gを同一方向に折り曲げてある。
さらに、同様に、他方の分割片54bの先端部には、後述する操作板70の係合腕部72を上下に位置決めするための一対の位置規制舌片54h,54hを同一方向に折り曲げてある。一方の前記位置規制舌片54hには、その両端部を曲げ起こすことにより、巾方向の位置規制を行う位置規制リブ54i,54iを形成してある。
【0027】
前記ベース10の圧入溝13に、可動接触片ユニット50をカシメ固定した可動接点端子40の一端部を圧入する場合には、図7に示すように、前記ベース10に設けた圧入溝13に前記可動接点端子40の一端部を上方から位置決めして挿入する。このとき、図8に示すように、前記圧入溝13の巾寸法W2よりもカシメ突起41を含めた前記可動接点端子40の一端部の厚さ寸法W1が小さいので(W1<W2)、削り屑を形成することなく、スムーズに組み付けることができる。特に、前記可動接触片ユニット50の一端側の角部に切り欠き部50aを設けてあるので、圧入作業がより一層容易である。
さらに、前記可動接点端子40の一端部を前記圧入溝13に挿入すると、圧入突起54fを含めた可動接点端子40の厚さ寸法W3が前記圧入溝13の巾寸法W2よりも大きいか、等しいので(W2≦W3)、大きな抵抗を感じることができる。さらに、前記可動接点端子40を押し込むと、前記可動接点端子40の下端縁部が圧入溝13の内側面に形成した削り代部13aに食い込み、強固に保持される。なお、圧入の際に生じた切り屑は圧入溝13の底面に形成した屑溜め溝13bに溜めることができ、可動接点端子40で密封される。
【0028】
前述の実施形態では、可動接触片ユニット50の第4可動接触片54に2個の圧入突起54fを形成した場合について説明したが、必ずしもこれに限らず、少なくとも1つあればよく、また、図9および図10に図示するように、第4可動接触片54の一端部の両側縁部に2個ずつ、計4個の圧入突起54fを形成してもよい。
他は前述の第1実施形態とほぼ同様であるので、同一部分には同一番号を付して説明を省略する。
【0029】
回動操作体60は、図3および図4に示すように、図示しない永久磁石を挟持する2枚の第1,第2可動鉄片61,62を一体成形したものであり、その上下面に回動軸部63,64を同一軸心上に突設してある一方、その側面に操作腕部65を突設してある。
そして、前記回動操作体60は、その回動軸部63を前記ベース10の底面に設けた軸受け凹部(図示せず)に嵌合する一方、前記第1,第2可動鉄片61,62の両端を前記電磁石ユニット20の磁極部24a,25aに交互に接離可能に配置する(図2)。
【0030】
操作板70は、図3および図4に示すように、その一端部に前記回動操作体60の操作腕部65に係合可能な平面方形の係合孔71を設けてある一方、その他端部に係合腕部72を延在して係合スリット73を形成してある。特に、前記係合腕部72の下端には一対の位置規制突起74,74を突設してある。
そして、前記操作板70の係合孔71を前記回動操作体60の操作腕部65に係合する一方、前記係合スリット73に前記可動接触片ユニット50の自由端部を係合する。特に、前記係合腕部72に、第4可動接触片54の分割片54aに設けた一対の位置規制舌片54g,54gを係合するとともに、分割片54bに設けた一対の位置規制舌片54h,54hを係合する。
さらに、前記位置規制舌片54hに形成した位置規制リブ54iが、前記係合腕部72の一対の位置規制突起74,74の間に位置決めされ、可動接触片ユニット50が巾方向に位置ズレを生じないので、動作特性の良い電磁継電器が得られる。
【0031】
位置規制板80は、図3および図4に示すように、前記位置決め突部14および前記位置決めリブ15に架け渡し可能な平面形状を有するとともに、その下面の両端部に、前記位置決め突部14および前記位置決めリブ15の位置決め孔14a,15aにそれぞれ嵌合可能な位置決め突部81,82を突設してある。また、前記位置規制板80は、その中央部に、前記回動操作体60の回動軸部64に嵌合可能な貫通孔83を設けてある。
【0032】
カバー90は、図3および図4に示すように、前記ベース10の開口部を被覆可能な平面形状を有し、その天井面の対向する隅部に貫通孔91aを備えた取付筒部91,91を突設してある。また、前記カバー90は、外周縁部のうち、前記ベース10の前記係止突起17に対応する位置に弾性爪部92をそれぞれ形成してある。さらに、前記カバー90は、その天井面に前記ベース10の仕切り壁11に設けた嵌合段部11aに嵌合する突条93を形成してある。
そして、前述の内部構成部品を組み込んだ前記ベース10に前記カバー90を上方から位置決めし、前記カバー90の取付筒部91を前記ベース10に設けた取付孔16に嵌合するとともに、前記カバー90の弾性爪部92を前記ベース10の係止突起17に係止することにより、組立作業が完了する。
【0033】
本実施形態によれば、大径の開閉用可動接点57がベース10の開口部側に配置されているので、組立工程における検査および調整がしやすく、生産性が高いという利点がある。
【0034】
次に、本実施形態に係る電磁継電器の動作について説明する。
まず、図2Aに示すように、永久磁石の磁力により、第1可動鉄片61の一端部61aおよび第2可動鉄片62の他端部62bが、ヨーク24,25の磁極部24a,25aにそれぞれ吸着しているとして説明を始める。このとき、前記回動操作体60の操作腕部65に係合している操作板70は復帰位置にあり、開閉用および通電用可動接点57,58が、開閉用および通電用固定接点31,32から開離している。このとき、開閉用固定接点31と開閉用可動接点57との対向距離は、通電用固定接点32と通電用可動接点58との対向距離よりも短い(図11A)。
【0035】
そして、前記コイル22に前記永久磁石の磁力を打ち消す方向に電圧を印加して励磁すると、永久磁石の磁力に抗して前記回動操作体60が回動する。このため、第1可動鉄片61の一端部61aおよび第2可動鉄片62の他端部62bが、ヨーク24,25の磁極部24a,25aから開離した後、第1可動鉄片61の他端部61bおよび第2可動鉄片62の一端部62aがヨーク25,24の磁極部25a,24aにそれぞれ吸着する。この結果、回動した回動操作体60の操作腕部65が操作板70をスライド移動させ、前記操作板70の係合スリット73の内側面が第1可動接触片51の折り曲げ片51g,51gを同時に押圧する。このため、開閉用可動接点57および通電用可動接点58がカシメ突起41を介して可動接点端子40にカシメ固定された部分を中心に回動する。そして、開閉用可動接点57が開閉用固定接点31に先に当接した後(図11C)、通電用可動接点58が通電用固定接点32に接触する(図11D)。さらに、操作板70が可動接触片ユニット50の折り曲げ片51gを押し込む。このとき、通電用可動接点58を設けた分割片51bに設けた折り曲げ片51gは、分割片51aに設けた折り曲げ片51gよりも短く、バネ定数が大きい。このため、通電用可動接点58に対する押し込み量が開閉用可動接点57よりも少ないにも拘わらず、開閉用可動接点57および通電用可動接点58が開閉用固定接点31および通電用固定接点32に最終位置において同一の接点圧でそれぞれ圧接する。
ついで、前記コイル22に対する電圧の印加を停止しても、永久磁石の磁力によって前記回動操作体60が、その状態を保持する(図3)。
【0036】
さらに、前記永久磁石の磁力を打ち消す方向に磁束が生じるように前記コイル22に電圧を印加すると、前記回動操作体60が逆方向に回動することにより、操作腕部65が操作板70を引き戻し、前記操作板70の係合腕部72が可動接触片ユニット50の自由端部を引き戻し、元の位置に復帰する(図2)。
【0037】
本実施形態によれば、開閉用可動接点57と開閉用固定接点31との間にアークが生じても、損傷しにくいだけでなく、通電用可動接点58と通電用固定接点32との間にアークが発生することがない。このため、接点摩耗による接点寿命が短くなることがないとともに、安定した通電特性を有する電磁継電器が得られるという利点がある。
【0038】
第2実施形態は、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、異なる点は、図12に示すように、固定接点端子30の表面に突出し加工を施して一段高い段部34および一段低い凹部35を設け、前記段部34および前記凹部35に開閉用固定接点31および通電用固定接点32をそれぞれカシメ固定した場合である。
【0039】
このため、本実施形態によれば、前述の実施形態と同様な効果が得られるだけでなく、設計の自由度が広がるという利点がある。
他は前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分に同一番号を付して説明を省略する。
【0040】
第3実施形態は、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、異なる点は、図13に示すように、第1分割片55に設けた開閉用可動接点57よりも、第2分割片56に設けた通電用可動接点58を第4可動接触片54の自由端側に配置した点である。
より具体的には、可動接触片ユニット50の第1分割片55の基部に開閉用可動接点57を設ける一方、その第2分割片56の自由端部に通電用可動接点58を設けた点である。そして、固定接点端子30は、前記開閉用可動接点57および前記通電用可動接点58に対向する位置に、開閉用固定接点31および通電用固定接点32をカシメ固定してある。
本実施形態によれば、第1,第2分割片55,56は自己のバネ力で固定接点端子30側に移動可能であり、開閉用固定接点31と開閉用可動接点57との対向距離は、通電用固定接点32と通電用可動接点58との対向距離よりも短い。このため、前記可動接触片ユニット50の自由端部を操作板70で押圧して回動させると、開閉用可動接点57が開閉用固定接点31に接触した後、通電用可動接点58が通電用固定接点32に接触する。
【0041】
このため、本実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様な効果が得られるだけでなく、操作板70の押圧によるてこの原理で大きな曲げモーメントが開閉用可動接点57に作用し、高い接点圧力が得られるという利点がある。
他は前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分に同一番号を付して説明を省略する。
【0042】
第4実施形態は、図14に示すように、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、異なる点は、操作板70の係合スリット73の内側面のうち、可動接触片ユニット50の第1分割片55に当接する領域に、可動接触片ユニット50の第2分割片56に当接する領域よりも一段高い押圧突条73aを突設した点である。
本実施形態によれば、前記操作板70をスライド移動させると、第1分割片55が先に押圧されるので、開閉用可動接点57が開閉用固定接点31に先に接触した後、通電用可動接点58が通電用固定接点32に接触する。
【0043】
このため、本実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様な効果が得られるだけでなく、前記操作板70の押圧突条73aの高さ寸法を調整するだけで、所望の接点圧を確保でき、所望の動作特性を確保しやいすという利点がある。
他は前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分に同一番号を付して説明を省略する。
【0044】
第5実施形態は、図15に示すように、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、異なる点は、可動接触片ユニット50の第1分割片55を、第2分割片56よりも固定接点端子30側に迫り出すように曲げ加工を施した点である。
本実施形態によれば、前記操作板70をスライド移動させると、第1分割片55に設けた開閉用可動接点57が開閉用固定接点31に先に接触した後、第2分割片56に設けた通電用可動接点58が通電用固定接点32に接触する。
【0045】
このため、本実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様な効果が得られるだけでなく、前記第1,第2分割片55,56を板厚方向に曲げることにより、調整がしやすく、動作特性のバラツキの少ない電磁継電器が得られるという利点がある。
他は前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分に同一番号を付して説明を省略する。
【0046】
なお、本実施形態では、第1可動接触片51の一の折り曲げ片51gを隣り合う他の折り曲げ片51gよりも可動接点端子40側に大きく折り曲げることにより、開閉用可動接点57の当接するタイミングをずらしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る電磁継電器は、前述の電磁継電器に限らず、他の電磁継電器,電気機器に適用してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 ベース
11 仕切り壁
12a,12b 端子スリット
13 圧入溝
13a 削り代部
13b 屑溜め溝
20 電磁石ユニット
21 スプール
22 コイル
23 鉄芯
24 ヨーク
24a 磁極部
25 ヨーク
25a 磁極部
30 固定接点端子
31 開閉用固定接点
32 通電用固定接点
33 端子部
34 段部
35 凹部
40 可動接点端子
41 カシメ突起
42 端子部
50 可動接触片ユニット
50a 切り欠き部
51 第1可動接触片
51f スリット
51g 折り曲げ片
52 第2可動接触片
53 第3可動接触片
54 第4可動接触片
54f 圧入突起
55 第1分割片
55a 屈曲部
56 第2分割片
56a 屈曲部
57 開閉用可動接点
58 通電用可動接点
60 回動操作体
61 第1可動鉄片
62 第2可動鉄片
63 回動軸部
64 回動軸部
65 操作腕部
70 操作板
71 係合孔
72 係合腕部
73 係合スリット
73a 押圧突条
74 位置規制突起
80 位置規制板
90 カバー
【要約】      (修正有)
【課題】寿命が長く、常に安定した接触抵抗で通電できる電磁継電器を提供する。
【解決手段】電磁石ユニットへの通電によって生じる磁力に基づいて往復移動する操作板70で、複数枚の積層した可動接触片52,53,54からなる可動接触片ユニット50を回動し、前記可動接触片ユニット50を巾方向に2分割して形成した第1,第2分割片55,56にそれぞれ設けた一対の可動接点57,58を、固定接点端子30に設けた一対の固定接点31,32にそれぞれ接離する電磁継電器である。特に、一対の前記可動接点57,58のうち、一方の開閉用可動接点57を一方の開閉用固定接点31に先に接触させた後、他方の通電用可動接点58を他方の通電用固定接点32に接触させる。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15