特許第5741690号(P5741690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5741690-二酸化炭素の回収方法及び回収装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5741690
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】二酸化炭素の回収方法及び回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20150611BHJP
   B01D 53/34 20060101ALI20150611BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20150611BHJP
   C01B 31/20 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   B01D53/34 135Z
   B01D53/34ZAB
   B01D53/14 103
   C01B31/20 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-524000(P2013-524000)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(86)【国際出願番号】JP2012067930
(87)【国際公開番号】WO2013008914
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2014年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-154651(P2011-154651)
(32)【優先日】2011年7月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】奥野 真也
(72)【発明者】
【氏名】中村 至高
(72)【発明者】
【氏名】村上 篤志
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−202054(JP,A)
【文献】 特開平11−137960(JP,A)
【文献】 特開2001−252524(JP,A)
【文献】 特開平06−154554(JP,A)
【文献】 特開2011−000529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34− 53/85
B01D 53/14− 53/18
C01B 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、
前記吸収塔で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生塔と、
前記再生塔から排出される二酸化炭素を含んだ回収ガスに含まれる水蒸気を凝縮水として回収し、前記凝縮水を所定流量で前記再生塔の吸収液に供給する回収手段と、
前記吸収液の液量変動に対応して変化する液面レベルを検出する液面計と、
前記液面計に検出される液面レベルが所定レベルより低下した時に、前記回収手段によって回収される凝縮水から、液面レベルが前記所定レベルに回復する量の凝縮水を前記液面計近くの吸収液に供給する回復システムと
を有し、前記吸収液は、前記吸収塔と前記再生塔とを循環する間に前記吸収塔の底部に貯留され、前記液面計は、前記吸収塔に付設されて前記吸収塔の底部に貯留する吸収液の液面レベルを検出し、前記回復システムは、前記吸収塔の底部に貯留する吸収液に前記凝縮水を添加する二酸化炭素の回収装置。
【請求項2】
二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、
前記吸収塔で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生塔と、
前記再生塔から排出される二酸化炭素を含んだ回収ガスに含まれる水蒸気を凝縮水として回収し、前記凝縮水を所定流量で前記再生塔の吸収液に供給する回収手段と、
前記吸収液の液量変動に対応して変化する液面レベルを検出する液面計と、
前記液面計に検出される液面レベルが所定レベルより低下した時に、前記回収手段によって回収される凝縮水から、液面レベルが前記所定レベルに回復する量の凝縮水を前記液面計近くの吸収液に供給する回復システムと、
前記吸収塔と前記再生塔との間で前記吸収液を循環させる流路と、
前記流路に設けられて吸収液を貯留する液溜りと
を有し、前記液面計は、前記吸収液の液量変動に対応して前記液溜りにおいて変化する液面レベルを検出するように前記液溜りに設けられる二酸化炭素の回収装置。
【請求項3】
前記回収手段は、冷媒との熱交換によって前記回収ガスを冷却して水蒸気を凝縮する冷却器と、前記冷却器に供給される冷媒の流量を調節可能な流量調節弁とを有し、前記流量調節弁によって前記冷媒の流量を調節することによって、前記冷却器による前記回収ガスの冷却温度が調整される請求項1又は2に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項4】
二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生工程と、
前記再生工程から排出される二酸化炭素を含んだ回収ガスに含まれる水蒸気を凝縮水として回収し、前記凝縮水を所定流量で前記再生工程の吸収液に供給する回収工程と、
前記吸収液の液量変動に対応して変化する液面レベルを検出する液面検出工程と、
前記液面検出工程で検出される液面レベルが所定レベルより低下した時に、前記回収工程で回収される凝縮水から、液面レベルが前記所定レベルに回復する量の凝縮水を、前記液面レベルが検出される吸収液の近くに供給する回復工程と
前記吸収工程と前記再生工程との間で前記吸収液を循環させる循環工程と
を有し、前記液面検出工程は、前記循環工程における吸収液を液溜りに貯留して、前記吸収液の液量変動に対応して前記液溜りにおいて変化する液面レベルを検出する工程を有する二酸化炭素の回収方法。
【請求項5】
前記回収工程は、前記回収ガスを冷媒との熱交換によって冷却する冷却工程と、前記冷却工程に供給される冷媒の流量を調節する調節工程とを有し、前記冷媒の流量を調節することによって前記冷却工程による前記回収ガスの冷却温度が調整される請求項に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項6】
二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生工程と、
前記再生工程から排出される二酸化炭素を含んだ回収ガスに含まれる水蒸気を凝縮水として回収し、前記凝縮水を所定流量で前記再生工程の吸収液に供給する回収工程と、
前記吸収液の液量変動に対応して変化する液面レベルを検出する液面検出工程と、
前記液面検出工程で検出される液面レベルが所定レベルより低下した時に、前記回収工程で回収される凝縮水から、液面レベルが前記所定レベルに回復する量の凝縮水を、前記液面レベルが検出される吸収液の近くに供給する回復工程と
を有し、前記吸収液は、前記吸収工程と前記再生工程とを繰り返す間に前記吸収工程を行う吸収塔の底部に貯留され、前記液面検出工程では、吸収塔の底部に貯留する吸収液の液面レベルを検出し、前記回復工程では、前記吸収塔の底部に貯留する吸収液に前記凝縮水を添加する二酸化炭素の回収方法。
【請求項7】
前記回収工程は、前記回収ガスを冷媒との熱交換によって冷却する冷却工程と、前記冷却工程に供給される冷媒の流量を調節する調節工程とを有し、前記冷媒の流量を調節することによって前記冷却工程による前記回収ガスの冷却温度が調整される請求項6に記載の二酸化炭素の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収し、清浄なガスを大気に還元するための二酸化炭素の回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や製鉄所、ボイラーなどの設備では、石炭、重油、超重質油などの燃料を多量に使用しており、燃料の燃焼によって排出される硫黄酸化物、窒素酸化物及び二酸化炭素は、大気汚染防止や地球環境保全の見地から放出に関する量的及び濃度的制限が必要とされている。近年、二酸化炭素は地球温暖化の主原因として問題視され、世界的にも排出を抑制する動きが活発化している。このため、燃焼排ガスやプロセス排ガスの二酸化炭素を大気中に放出せずに回収・貯蔵を可能とするために、様々な研究が精力的に進められ、二酸化炭素の回収方法として、例えば、PSA(圧力スウィング)法、膜分離濃縮法や、塩基性化合物による反応吸収を利用する化学吸収法などが知られている。
【0003】
化学吸収法においては、主にアルカノールアミン系の塩基性化合物を吸収剤として用い、その処理プロセスでは、概して、吸収剤を含む水性液を吸収液として、ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収工程と、吸収された二酸化炭素を吸収液から放出させて吸収液を再生する再生工程とを交互に繰り返すように吸収液を循環させる(例えば、下記特許文献1参照)。再生工程においては、二酸化炭素を放出させるための加熱が必要であり、二酸化炭素回収の操業費用を削減するには、再生のために加熱/冷却に要するエネルギーを低減することが重要となる。
【0004】
吸収液を構成する水や吸収剤は、再生工程における加熱によって気化し易く、又、吸収剤の分解による消耗も考えられる。つまり、吸収液の濃度は、吸収工程と再生工程とを循環する間に変化し、それによって吸収性能も変化する。このため、吸収液の濃度を管理する方法が提案されており、例えば、下記特許文献2では、吸収液の液面を測定する液面計を設けて、吸収工程での液面が一定になるように水を供給することによって吸収液量を一定に保つことが記載されている。また、下記特許文献3では、液面検出器からの液面情報を受けて、吸収塔のアミン回収部又は排ガス用冷却塔への循環水戻り温度を調節し、吸収塔の出口ガスに同伴して失われる水分量を操作して、吸収液のアミン化合物濃度を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−214089号公報
【特許文献2】特開平10−202054号公報
【特許文献3】特許第4523691号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二酸化炭素の回収装置において、導入された排ガス及びそれより回収される二酸化炭素は必ず装置から排出されるので、これらに伴う水分の放出による吸収液の濃度変動は完全には避けられない。又、吸収液の温度上昇に伴って、水分だけでなく、吸収液に含まれる吸収剤であるアミン化合物も気化し、特に、再生塔における加熱は、回収される二酸化炭素の放出において水蒸気と共にアミン化合物を放出し易い。
【0007】
本発明の課題は、上述の問題を解決し、二酸化炭素の回収に用いる吸収液の変化を検知して調整し、安定的に二酸化炭素を回収可能な二酸化炭素の回収方法及び回収装置を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の課題は、吸収液の液質の変動が軽減され、二酸化炭素の回収性能が安定して発揮できる二酸化炭素の回収方法及び回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、吸収液の液面レベルによって検出される吸収液濃度の変動を、再生工程から回収される二酸化炭素に伴って放出される水蒸気の凝縮分を利用して効率的に調整することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の一態様によれば、二酸化炭素の回収装置は、二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、前記吸収塔で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生塔と、前記再生塔から排出される二酸化炭素を含んだ回収ガスに含まれる水蒸気を凝縮水として回収し、前記凝縮水を所定流量で前記再生塔の吸収液に供給する回収手段と、前記吸収液の液量変動に対応して変化する液面レベルを検出する液面計と、前記液面計に検出される液面レベルが所定レベルより低下した時に、前記回収手段によって回収される凝縮水から、液面レベルが前記所定レベルに回復する量の凝縮水を前記液面計近くの吸収液に供給する回復システムとを有し、前記吸収液は、前記吸収塔と前記再生塔とを循環する間に前記吸収塔の底部に貯留され、前記液面計は、前記吸収塔に付設されて前記吸収塔の底部に貯留する吸収液の液面レベルを検出し、前記回復システムは、前記吸収塔の底部に貯留する吸収液に前記凝縮水を添加することを要旨とする。
更に、本発明の他の態様によれば、二酸化炭素の回収装置は、二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、前記吸収塔で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生塔と、前記再生塔から排出される二酸化炭素を含んだ回収ガスに含まれる水蒸気を凝縮水として回収し、前記凝縮水を所定流量で前記再生塔の吸収液に供給する回収手段と、前記吸収液の液量変動に対応して変化する液面レベルを検出する液面計と、前記液面計に検出される液面レベルが所定レベルより低下した時に、前記回収手段によって回収される凝縮水から、液面レベルが前記所定レベルに回復する量の凝縮水を前記液面計近くの吸収液に供給する回復システムと、前記吸収塔と前記再生塔との間で前記吸収液を循環させる流路と、前記流路に設けられて吸収液を貯留する液溜りとを有し、前記液面計は、前記吸収液の液量変動に対応して前記液溜りにおいて変化する液面レベルを検出するように前記液溜りに設けられることを要旨とする。
【0011】
又、本発明の一態様によれば、二酸化炭素の回収方法は、二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収工程と、前記吸収工程で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生工程と、前記再生工程から排出される二酸化炭素を含んだ回収ガスに含まれる水蒸気を凝縮水として回収し、前記凝縮水を所定流量で前記再生工程の吸収液に供給する回収工程と、前記吸収液の液量変動に対応して変化する液面レベルを検出する液面検出工程と、前記液面検出工程で検出される液面レベルが所定レベルより低下した時に、前記回収工程で回収される凝縮水から、液面レベルが前記所定レベルに回復する量の凝縮水を、前記液面レベルが検出される吸収液の近くに供給する回復工程と、前記吸収工程と前記再生工程との間で前記吸収液を循環させる循環工程とを有し、前記液面検出工程は、前記循環工程における吸収液を液溜りに貯留して、前記吸収液の液量変動に対応して前記液溜りにおいて変化する液面レベルを検出する工程を有することを要旨とする。
更に、本発明の他の態様によれば、二酸化炭素の回収方法は、二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収工程と、前記吸収工程で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生工程と、前記再生工程から排出される二酸化炭素を含んだ回収ガスに含まれる水蒸気を凝縮水として回収し、前記凝縮水を所定流量で前記再生工程の吸収液に供給する回収工程と、前記吸収液の液量変動に対応して変化する液面レベルを検出する液面検出工程と、前記液面検出工程で検出される液面レベルが所定レベルより低下した時に、前記回収工程で回収される凝縮水から、液面レベルが前記所定レベルに回復する量の凝縮水を、前記液面レベルが検出される吸収液の近くに供給する回復工程とを有し、前記吸収液は、前記吸収工程と前記再生工程とを繰り返す間に前記吸収工程を行う吸収塔の底部に貯留され、前記液面検出工程では、吸収塔の底部に貯留する吸収液の液面レベルを検出し、前記回復工程では、前記吸収塔の底部に貯留する吸収液に前記凝縮水を添加することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガスに含まれる二酸化炭素を回収するプロセスにおいて、回収二酸化炭素から凝縮分離する水分を用いて、吸収液の濃度変動を調整するので、装置外への吸収剤の放出が抑制され、吸収液の調整が効率的且つ安定的に行うことができ、吸収液の組成変動の抑制や運転コストの軽減にも有効な二酸化炭素の回収方法及び回収装置が提供される。特殊な装備や高価な装置を必要とせず、一般的な設備を利用して簡易に実施できるので、経済的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置を示す概略構成図。
図2】本発明の第2の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置を示す概略構成図。
図3】本発明の第3の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
化学吸収法による二酸化炭素の吸収プロセスにおいては、ガスに含まれる二酸化炭素を低温の吸収液に吸収させる吸収工程と、吸収された二酸化炭素を吸収液から放出させて吸収液を再生する高温の再生工程との間で吸収液を循環させて、吸収工程と再生工程とを交互に繰り返す。吸収工程においては、二酸化炭素の吸収によって吸収液は発熱し、再生工程においては二酸化炭素を放出させるために高温で加熱されるので、何れの工程においても、排出されるガスは、吸収液から気化する水蒸気や吸収剤を含み得る。従って、吸収液の濃度は循環中に変動し、これを放置すれば、吸収液によって吸収/放出可能な二酸化炭素量が変化して二酸化炭素の回収効率に影響を及ぼす。従って、吸収液の二酸化炭素回収性能を維持するには、吸収液の濃度変化を検出し、それに応じて補整を行うことが必要であり、的確に濃度変化を把握するためには連続測定が可能であることが望ましい。
【0015】
本発明においては、上記の点を考慮して、水蒸気の気化による吸収液の減量を液面レベルの変動として検知し、その変動に基づいて吸収液の液量を回復して元の濃度に調整する。濃度調整に使用する希釈水としては、再生塔から放出される回収二酸化炭素の冷却によって分離回収される凝縮水を使用する。
【0016】
以下、本発明の二酸化炭素の回収方法及び回収装置について、図面を参照して詳細に説明する。尚、図において破線で記載する接続は電気的接続を示す。
【0017】
図1は、本発明の二酸化炭素の回収方法及びそれを実施する回収装置の一実施形態を示す。回収装置1は、二酸化炭素を含有するガスGを吸収液に接触させて二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔10と、二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して二酸化炭素を吸収液から放出させ、吸収液を再生する再生塔20とを有する。更に、吸収塔10に供給されるガスGを二酸化炭素の吸収に適した低温に維持し易いように冷却塔30が設けられているので、燃焼排ガスやプロセス排ガスなどの様々なガスの取扱いが可能であり、回収装置1に供給されるガスGについて特に制限はない。吸収塔10、再生塔20及び冷却塔30は、各々、向流型気液接触装置として構成され、接触面積を大きくするための充填材11,21,31を各々内部に保持している。充填材11,21,31は、概して、ステンレス鋼、炭素鋼等の鉄系金属材料製のものが用いられるが、特に限定されず、処理温度における耐久性及び耐腐食性を有する素材で、所望の接触面積を提供し得る形状のものを適宜選択するとよい。吸収液として、アルカノールアミン類等の二酸化炭素に親和性を有する化合物を吸収剤として含有する水性液が用いられる。
【0018】
冷却塔30底部から供給されるガスGは、塔内に保持される充填材31を通過し、冷却塔30の上部から供給される冷却水によって冷却された後に、吸収塔10に供給される。これにより、冷却温度において飽和湿度以下のガスGが吸収塔10に供給され、ガスGに起因する吸収塔10の温度上昇が防止される。ガスGを冷却して温度上昇した冷却水は、ポンプ32によって水冷式冷却器33に送られ、冷却された後に冷却塔30に還流される。吸収塔10底部に接続される送気管18’に設けられる温度センサー46の検出温度に応じてポンプ32の駆動が制御され、ガスGの温度が高いと、ポンプ32による冷却水の流量が増加して熱交換率の上昇によってガスGの温度を低下させる。
【0019】
冷却塔30を通過した二酸化炭素を含んだガスGは、逆止弁18を通じて吸収塔10の下部から充填材11へ供給される。一方、吸収液は、吸収塔10の上部から充填材11へ供給され、ガスG及び吸収液が充填材11を通過する間に気液接触してガスG中の二酸化炭素が吸収液に吸収される。二酸化炭素を吸収した吸収液A1は、吸収塔10底部に貯溜され、ポンプ12によって、吸収塔10底部と再生塔20上部とを接続する供給路16を通じて再生塔20へ供給される。二酸化炭素が除去されたガスG’は、吸収塔10頂部から排出される。この実施形態では、ガスG’は圧力調節弁19を通じて排出するように構成されるので、必要に応じて、吸収塔10内のガス圧力を圧力調節弁19によって調節できる。加圧状態に設定して気液接触を行うと、ガスGから吸収液への二酸化炭素の移行が促進され、ガス圧力の増加に従って吸収率が向上する。
【0020】
吸収液が二酸化炭素を吸収することによって発熱して液温が上昇するので、必要に応じて、ガスG’に含まれ得る水蒸気等を凝縮するための冷却凝縮部13が吸収塔10頂部に設けられ、これにより、水蒸気等が塔外へ漏出するのをある程度抑制できる。これを更に確実にするために、吸収塔外に付設される冷却器14及びポンプ15を有し、冷却凝縮部13下に貯留される凝縮水の一部(塔内のガスG’を含んでも良い)は、ポンプ15によって冷却器14との間で循環させる。冷却器14で冷却されて塔頂部に供給される凝縮水等は冷却凝縮部13を低温に維持し、冷却凝縮部13を通過するガスG’を確実に冷却する。吸収塔10頂部の排気管19’に設けられる温度センサー47の検出温度に応じてポンプ15の駆動が制御され、ガスG’の温度が高いと、ポンプ15による凝縮水の循環流量が増加して冷却凝縮部13の冷却を促進し、ガスG’の温度を低下させる。又、冷却凝縮部13で凝縮する水は充填材11に流下し、塔内の吸収液の組成変動が補整される。塔外へ排出されるガスG’の温度は60℃程度以下が好ましく、より好ましくは45℃以下となるように温度センサー47の検出温度に基づいてポンプ15の駆動が制御される。
【0021】
吸収塔10の吸収液A1は、供給路16から再生塔20の上部に供給され、充填材21間を流下して底部に貯溜される。再生塔20の底部には、リボイラーが付設される。即ち、吸収液を加熱するために再生塔20外に付設されるスチームヒーター22と、吸収液をスチームヒーター22を介して循環させる循環路22’とが付設され、塔底部の吸収液A2の一部が循環路22’を通してスチームヒーター22に分流され、高温蒸気との熱交換によって加熱された後に塔内へ還流される。この加熱によって、底部の吸収液から二酸化炭素が放出され、又、充填材21も間接的に加熱されて充填材21上での気液接触による二酸化炭素の放出が促進される。
【0022】
再生塔20で二酸化炭素を放出して再生された吸収液A2は、還流路17を通じてポンプ23によって吸収塔10に還流され、その間に、熱交換器24において、吸収塔10から再生塔20に供給される供給路16の吸収液A1との間で熱交換して冷却され、更に、冷却水を用いた冷却器25によって、二酸化炭素の吸収に適した温度まで充分に冷却される。
【0023】
再生塔20における加熱で放出される二酸化炭素を含むガスは、回収ガスCとして再生塔20上部の凝縮部26を通って頂部から排出される。凝縮部26は、ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて過度の放出を抑制し、また、吸収剤の放出も抑制する。回収ガスCは、再生塔20の頂部から排気管34を通って冷却水との熱交換を利用した冷却器27によって充分に冷却し、含まれる水蒸気等を可能な限り凝縮して、気液分離器28によって凝縮水を除去した後に回収される。回収ガスCに含まれる二酸化炭素は、例えば、地中又は油田中に注入することによって、地中での炭酸ガス固定及び再有機化が可能である。気液分離器28において分離・回収された凝縮水は、ポンプ36によって所定流量で流路35から再生塔20の凝縮部26上へ供給され、冷却水として機能する。従って、再生塔20の吸収液から気化する水蒸気を、冷却器27及び気液分離器28によって凝縮水としてガスCから分離し、ポンプ36によって再生塔20の吸収液に所定流量で供給することによって水蒸気の回収がなされ、吸収液の液量が定常的に維持される。尚、流路35から供給する凝縮水の流量は、後述する液面計41の検出レベルを利用してポンプ36の駆動を調節することによって予め設定することできる。
【0024】
吸収液A1,A2は、吸収塔10と再生塔20との間を循環する間に水分の気化が進んで液量が減少する場合がある。特に、処理条件等の設定変更や処理される排ガスの温度変動、外気温の変動等に関連して液量の変動が起こり易く、この際に、排気管34から気液分離器28へ至るガスの温度も変動し易い。本発明では、このような不定期又は想定外の吸収液の液量変動に対処可能なように構成されている。具体的には、気液分離器28に流入するガスの温度を検出する温度センサー44と、これに電気的に接続される流量調節弁45と、気液分離器28の凝縮水を吸収塔に供給するポンプ42とを有し、流量調節弁45は、温度センサー44の検出温度に基づいて制御され、検出温度が上昇又は降下すると流量調節弁45の開度が調節されて回収ガスが適正温度になるように冷却器27の冷却効率つまり冷却水の流量が調整される。吸収液からの気化が進む時は、装置内を循環する吸収液の液量減少に対応する液面レベルの低下を吸収塔10において液面計41が検知し、液面計41と電気的に接続されるポンプ42に制御信号を送信してポンプ42を駆動することにより、気液分離器28の凝縮水を流路43から吸収塔10の上部又は下部に供給する。それと共に、流量調節弁45の開度調節により冷却器27を流れる冷却水Wの流量を増加して冷却効率を上げ、これにより回収ガスCの温度が低下して、気液分離器28で収集される凝縮水量が増加し、回収ガスCの水蒸気量が低下する。更に、必要に応じて、ポンプ15の駆動調節によって吸収塔10の排出ガスG’の温度も低下させて水蒸気の放出量を低下させる。ポンプ42は、液面計41に検出される吸収液の液面レベルが回復するまで駆動されるので、低下した液面レベルを元のレベルに回復するのに必要量の凝縮水が、気液分離器28から分流されて吸収塔10に追加供給される。従って、気液分離器28の凝縮水の主たる部分は、吸収液の加熱再生における減量分の定常的回収分として使用され、凝縮水の残部は、状況変化等によって生じる吸収液の減量に対応した一時的供給による不定期な回復に使用される。
【0025】
吸収液の液面レベルは、吸収塔10に導入されるガスGに起因して上昇する場合もある。例えば、ガスGの温度上昇によって湿分が多く吸収塔10に導入されると、装置内での冷却によって凝縮する水分が吸収液に加わり、液量の増加及び吸収剤濃度の低下が生じて液面レベルが上昇する。このような場合は、ポンプ42は駆動せず、気液分離器28から余剰水を抜き取り、冷却塔30における冷却効率を上げるためにポンプ32の駆動を制御する。更に、必要に応じて、冷却器14の冷却効率を低下させるようにポンプ15の駆動を制御して水蒸気を装置外に放出させると液面レベルが回復する。前述したように、気液分離器28の凝縮水は主として再生塔20に一定流量で還流されるが、ポンプ36を制御して再生塔20への還流量を一時的に減少させることによっても、液面レベルを回復させることができる。
【0026】
吸収液に含まれる吸収剤は、加熱による分解・消耗等に起因する減少分を補充する必要があるが、この補充を必要以上に行わないためには、回収装置1からの吸収剤の逃出を防止する必要がある。再生塔20から放出される回収ガスには相対的に吸収剤が含まれ易いので、回収ガスCから水及び吸収剤を回収して装置内に還元することは重要であり、回収ガスCから分離される凝縮水を吸収液の液量/濃度調整用補充水として用いることは有意義である。気液分離器28の凝縮水を吸収塔10の上部に供給すると、凝縮水は、充填材11及びガスG’を冷却して吸収液の気化を抑制する点でも有用であり、冷却凝縮部13で凝縮する水及び吸収剤と共に充填材11上に流下する。
【0027】
図1の実施形態では、液面計41は吸収塔10の底部に設けられ、底部に貯留する吸収液A1の液面の推移に応じて、液面が一定に維持されるようにポンプ42の駆動が制御されるが、液面計を他の箇所に設置することも可能である。例えば、吸収液が循環する流路16,17の途中に、吸収液を一時保留する液溜りを設けて、その中の吸収液の液面レベルを液面計によって検出して凝縮水の供給を制御しても良い。
【0028】
図1の実施形態において、気液分離器28の凝縮水は、液面計41が付設される吸収塔10に供給されるので、その結果は比較的早く液面計41の検出に反映され、吸収液の液量回復は比較的迅速に検知される。液面計41への反映を更に優先する場合は、液面計41により近い箇所、つまり、吸収塔10の下部、具体的には充填材11の下方に凝縮水を供給すれば、吸収塔10底部に貯留される吸収液A1に直接添加されて液面レベルに即時反映される。従って、液面計41の即時応答性の点で最も都合が良い。あるいは、例えば流路16,17途中に、装置内を循環する吸収液の液量に対応して液面が変動するように設けられる液溜りに液面計41を付設して、気液分離器28の凝縮水を液溜りに直接供給するように構成してもよい。液溜りを有する実施形態については後述する。
【0029】
二酸化炭素の回収装置においては、ガス及び吸収液の温度調節を行うために複数の冷却器が使用され、図1の実施形態では冷却器14,25,27,33が設置される。これらの冷却器は、各々適正温度となるように設定する必要があり、図1の実施形態においては、冷却器27における冷却温度は前述のように適宜調整されるが、この調整は、冷却水Wの流量変更による冷却効率つまり熱交換率の調節によって行われるので、冷却水W自体の温度は変動させる必要がない。従って、冷却器27の設定温度と他の冷却器の設定温度とが異なっても、冷却器14,25,33における冷却は、冷却器27と同じ冷却水を使用して単一冷媒システムで実施可能である。同様に、冷却器14,25,33についても、必要に応じて流量調節弁を用いて冷却水の流量を制御するように構成すると、異なる冷却効率つまり異なる冷却温度に個別に調整することができる。この実施形態の冷却器は水冷式であるが、他の冷媒を用いた冷却方式であって良く、冷媒による冷凍サイクルを用いて冷却能を高めてもよい。
【0030】
尚、図1の回収装置は、吸収塔10及び再生塔20の排気管19’,34に圧力調整弁19,29が各々設けられ、必要に応じて吸収塔10及び再生塔20内を加圧して圧力を調節可能なように構成されているが、大気圧に設定する場合には省略して良い。
【0031】
図1の回収装置1において実施される回収方法について説明する。
【0032】
吸収塔10において、燃焼排ガスやプロセス排ガスなどの二酸化炭素を含有するガスGを底部から供給し、吸収液を上部から供給すると、充填材11上でガスGと吸収液とが気液接触し、吸収液に二酸化炭素が吸収される。二酸化炭素は、低温において良好に吸収されるので、概して50℃程度以下、好ましくは40℃以下となるように吸収液の液温又は吸収塔10(特に充填材11)の温度を調整する。吸収液は二酸化炭素の吸収によって発熱するので、これによる液温上昇を考慮し、液温が60℃を超えないように配慮することが望ましい。吸収塔10に供給されるガスGについても、上述を勘案して、冷却塔30によって適正な温度に調整する。吸収液として、二酸化炭素に親和性を有する化合物を吸収剤として含有する水性液が用いられる。吸収塔10内のガス圧力は常圧に設定されるが、吸収液の二酸化炭素回収率を上げる必要がある場合には、圧力調節弁19によって、常圧を超える120kPaG程度以下、好ましくは10〜100kPaG程度の圧力範囲に調整するとよい。吸収剤としては、アルカノールアミン類やアルコール性水酸基を有するヒンダードアミン類などが挙げられ、具体的には、アルカノールアミンとして、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン等を例示することができ、アルコール性水酸基を有するヒンダードアミンとしては、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2−(メチルアミノ)エタノール(MAE)等を例示できる。通常、モノエタノールアミン(MEA)の使用が好まれ、これらを複数種混合しても良い。吸収液の吸収剤濃度は、処理対象とするガスに含まれる二酸化炭素量や処理速度等に応じて適宜設定することができ、吸収液の流動性や消耗損失抑制などの点を考慮すると、概して、10〜50質量%程度の濃度が適用され、例えば、二酸化炭素含有量20%程度のガスGの処理に対して、濃度30質量%程度の吸収液が好適に使用される。ガスG及び吸収液の供給速度は、ガスに含まれる二酸化炭素量及び気液接触効率等に応じて、吸収が充分に進行するように適宜設定される。
【0033】
二酸化炭素を吸収した吸収液A1は、再生塔20に供給されると、沸点近辺の高温度に加熱されるが、再生塔20に供給される前に熱交換器24において、再生塔20から還流する吸収液A2と熱交換されるので、吸収液A1は、再生塔20での加熱温度に近い温度に昇温されて二酸化炭素が放出され易い状態で再生塔20に投入される。この実施形態では、90〜115℃程度で再生塔20に投入される。更に、充填材21上での気液接触によって二酸化炭素の放出が促進されると共に、再生塔20底部での加熱によって更に昇温及び二酸化炭素の放出が進行する。底部に貯留される吸収液A2は、部分循環加熱によって沸点付近に加熱され、吸収液の沸点は組成(吸収剤濃度)及び再生塔20内の圧力に依存する。この際、吸収液から失う水の気化潜熱及び吸収液の顕熱の供給が必要であり、気化を抑制するために加圧すると、沸点上昇により顕熱が増加するので、これらのバランスを考慮すると、通常、再生塔20内を100kPaG程度に加圧した時、吸収液は120〜130℃に加熱する。
【0034】
上述の回収処理の定常状態において、冷却塔30から吸収塔10に導入されるガスGの温度は30〜60℃程度になるように、吸収塔10から排出されるガスG’の温度は、30〜60℃程度になるように、各々、温度センサー46又は温度センサー47の検出温度に基づくポンプ32又はポンプ15の駆動制御による冷却水の流量調節によって調整する。又、再生塔20の上部の温度は、投入される吸収液A1の温度に近くなるため、凝縮部26を通過した回収ガスを冷却器27において十分に冷却するために、回収ガスCの温度が30〜60℃程度になるように、温度センサー44に検出される回収ガスCの温度に基づいて冷却水Wの流量が流量調節弁45の開度によって調節される。回収ガスCから凝縮する水分及び吸収剤は気液分離器28において回収ガスCから分離され、凝縮部26に供給することによって凝縮部26を冷却すると共に、再生塔20における吸収液の濃度上昇及び吸収剤の気化放散を抑制する。定常状態においては、気液分離器28から凝縮部26に一定流量で凝縮水が供給されることにより、気液分離器28に貯溜する凝縮水はほぼ一定となる。再生塔20への凝縮水の供給は、過度に行うと、再生塔20内の温度低下による吸収液の再生効率の低下を引き起こす虞があるが、上述のように再生塔20への凝縮水の供給を基本的に一定に維持する構成は、再生効率の低下を回避しつつ吸収液の濃縮を防止する上で意味がある。回収ガスCから分離される凝縮水の温度(概して40〜50℃程度)は、むしろ吸収塔10への供給、特に、底部の吸収液A1への供給に適した温度であるので、気液分離器28の凝縮水を吸収塔10へ不定期に供給する形態は、エネルギー効率に支障がなく都合の良い形態である。
【0035】
液面計41によって吸収液A1の液面レベルの低下が検出されると、ポンプ42の駆動によって気液分離器28の凝縮水を吸収塔10に供給し、冷却器27を通る冷却水の増量によって気液分離器で回収される凝縮水は増加する。検出される液面が所定レベルに回復したらポンプ42は停止する。逆に、吸収液A1の液面レベルの上昇が検出されると、気液分離器28の余剰水を抜き取り、ポンプ32の駆動制御によって冷却器33の冷却効率を上げて、送気管18’を通過するガスGの温度を低下させると共に、必要に応じて、吸収塔10から排出されるガスG’の温度を上昇させ、ガスに伴って放出される水蒸気を増加させることによって吸収液A1の液面レベルは回復する。液面が所定レベルに回復した後にガスG’温度は元の温度に戻すことができる。液面レベルの調整のために変更されるガスG,G’及び回収ガスCの温度の変更幅は、概して5℃程度以下が好ましい。
上記構成において、再生塔20底部の吸収液A2の液面は、液量変動に関わらず一定に維持されるように再生塔20の貯留構造が設計される。これにより、装置内を循環する吸収液全体としての液量変動は、吸収塔10の底部に貯留される吸収液A1の液面レベルの変動として集中的に現れる。このように、吸収液の液量変化が一カ所の液面レベルに集中して現れると、液面計41によって吸収液の液量変化を鋭敏に感知することができる。
【0036】
このようにして、吸収液は、吸収塔10と再生塔20との間で循環し、吸収工程と再生工程とが交互に繰り返されて、吸収液の液面レベルの調節によって吸収液の液量及び濃度が維持される。
【0037】
図2及び図3は、吸収液を循環させる流路に設けられる液溜りに液面計41を設置する回収装置の実施形態を示す。図2の回収装置2においては、吸収塔10とポンプ12との間の流路16に液溜り50aが設けられて、吸収塔10から再生塔20へ供給される吸収液A1が液溜り50aに一旦貯留され、液溜り50aの吸収液の液面レベルを液面計41aが検出して、その低下に応じてポンプ42を駆動させて気液分離器28の凝縮水を液溜り50aに供給する。図3の回収装置3においては、ポンプ23と吸収塔10との間の流路17に液溜り50bが設けられて、再生塔20から吸収塔10へ供給される吸収液A2が液溜り50bに一旦貯留され、液溜り50bの吸収液の液面レベルを液面計41bが検出して、その低下に応じてポンプ42を駆動させて気液分離器28の凝縮水を液溜り50bに供給する。尚、図3の実施形態においては、液溜り50bは、冷却器25と吸収塔10との間に配置されるが、ポンプ23と冷却器25との間に配置してもよい。
【0038】
図2及び図3の実施形態において、吸収塔10及び再生塔20は、底部の吸収液の液面が、液量変動に関わらず一定に維持されるように設計される。これにより、装置内を循環する吸収液全体としての液量変動は、液溜まり50a,50bに貯留される吸収液の液面レベルの変動として集中的に現れる。吸収塔10及び再生塔20における底部の液面レベルの維持は、既知の構造又は制御手法を利用して適宜実現可能であり、例えば、塔の底部にオーバーフロー構造を適用して一定量を超える吸収液が吸収塔10及び再生塔20から排出されるように構成したり、底部の吸収液の液面レベルを検出する液面計を用いて検出レベルに応じてポンプ12,23の駆動を調節するように構成することによって、液面レベルを一定に維持できる。吸収塔10を流下する吸収液が底部に貯留されずに(つまり、液面レベル=ゼロとなる)全て流路16に排出されるように設定してもよい。
【0039】
図2,3の構成において、液溜り50a,50bの寸法・形状及び配置は、吸収塔10及び再生塔20のレイアウトや塔径に関係なく設定することができるので、液溜り50a,50bを利用してレベル検出する構成は、吸収液の液量変動を検出する精度を高めるための設計変更が容易な点で有益である。図2,3のように吸収塔10への供給前後の吸収液に凝縮水を補給する構成では、凝縮水の温度と吸収液の温度とが近いので、再生塔20に近い位置で凝縮水を補給する構成に比べて熱エネルギー的に有利である。この利点は、液溜りを吸収塔10と熱交換器24との間の流路に設けることによって享受できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、火力発電所や製鉄所、ボイラーなどの設備から排出される二酸化炭素含有ガスの処理等に利用して、その二酸化炭素放出量や、環境に与える影響などの軽減に有用である。二酸化炭素の回収処理に要する費用が削減され、省エネルギー及び環境保護に貢献可能な二酸化炭素の回収装置を提供できる。
図1
図2
図3