特許第5741720号(P5741720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5741720
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】X線撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20150611BHJP
   A61B 6/08 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   A61B6/00 390B
   A61B6/08 307
   A61B6/00 320M
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-10896(P2014-10896)
(22)【出願日】2014年1月24日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3167287号
【原出願日】2011年2月2日
(65)【公開番号】特開2014-64960(P2014-64960A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 俊文
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】奥野 智晴
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−229396(JP,A)
【文献】 特開平04−038934(JP,A)
【文献】 特開2010−240286(JP,A)
【文献】 特開2002−100268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を被検体に照射するX線管と、X線照射野を調節するためのコリメータと、前記X線照射野を可視光によって視認するための可視光源と、被検体の体厚を測定する体厚測定装置とを有するX線撮像装置において、前記体厚測定装置の出力信号の変化が定められた閾値を超えた場合に前記可視光源を消灯あるいは点灯する光源制御装置を備えたことを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記体厚測定装置は、被検体とX線管の距離を非接触にて測定する被検体距離測定装置にて構成されていることを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記被検体距離測定装置が超音波距離センサであることを特徴とする請求項2記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記被検体距離測定装置が光学距離センサであることを特徴とする請求項2記載のX線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管を有するX線照射部と、X線検出器を有する撮影台とを備え、被検体を通過したX線を検出することによりX線撮像を行うX線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にX線撮像装置においては、被検体の被曝を最小限に抑えるため、X線管から出射したX線束のうち、撮像に不要な部分をコリメータで遮蔽して、通常矩形のX線照射野で被検体を撮影する。被検体の撮影対象部位の位置や大きさによって照射野のサイズは調節しなければならない。このため、コリメータには照射野サイズを調節するための調節機構が備えられている。
【0003】
しかしながら、照射野のサイズ調節をX線を照射しつつ行うことは、被検体および操作者を過度に被曝させることになる。この危険を防止するため、通常コリメータ内部には、可視光を発する照射野ランプが備えられており、X線の代わりに可視光によってX線照射野と一致する矩形の像を表示するように調整されている。
【0004】
X線撮像装置には被検体を撮影台上に横たえて撮影する臥位型と、被検体を撮影台前に立たせて撮影する立位型がある。図5に従来の臥位型のX線撮像装置の概念図を示す。
【0005】
臥位型のX線撮像装置は、天井から懸垂されたX線照射部1と床上に設置された撮影台2によって構成される。X線照射部1にはX線管3とコリメータ4がX線管保持装置11によって保持され、コリメータ4は、X線管の発するX線のうち撮影に不要な部分を遮蔽して被検体の被曝を抑えるためのもので、これによって通常矩形のX線の照射野36がステージ5の上に投影される。この照射野36の縦横の長さは、コリメータ4のパネル上の縦寸法調節つまみ7と横寸法調節つまみ8によって調節可能である。
【0006】
しかしながら、実際に照射野36の大きさの調節をステージ5にX線を照射しながら行うことは、被曝量増大の危険性を有し、不可能である。この被曝を防止するため通常コリメータ4は、可視光光源となる照射野ランプを内蔵し、X線の代わりに可視光を照射する機能を有しており、X線の照射野36と一致すべく調整された光の照射野36を観察しながら撮影前に照射野36の位置および寸法の調整を行うことができる。また可視光の照射開始あるいは終了は光照射ボタン9によって照射野ランプを点滅させることによって行われ、例えば光照射ボタン9を押す毎に開始と終了を繰り返す。
【0007】
図6に立位型のX線撮像装置の概念図を示す。被検体は撮影台2に垂直に取り付けられたX線検出器6の前に立って撮影される。X線管3はX線管保持装置11によって保持され、支持部13と移動機構12によって天井に取り付けられている。
【0008】
コリメータ4には縦寸法調節つまみ7と横寸法調節つまみ8および光照射ボタン9が備えられており、臥位型のX線撮像装置の場合と同様に、照射野の大きさと位置の調節および可視光源の点滅が行われる。
【0009】
可視光照射の開始と終了を制御する回路の一例を図7に示す。制御回路19は光照射ボタン9より信号を受け、端子Qより出力する。この結果リレードライバ18が動作し、ON/OFFリレー16のコイル17が駆動され、ON/OFFリレー16の接点がランプ電圧の出力を照射野ランプ15に供給すべく動作して照射野ランプ15が点灯する。なお、光照射ボタン9は説明の簡略化のためチャタリングを発生しない理想的なスイッチとしている。また、ランプ寿命を長くし、ランプ点灯による装置の温度上昇を防止するため、制御回路19はタイマ機能を備え、一定時間(30秒)が経過すると自動的にランプを消灯させる。
【0010】
一方、被検体の体厚を測定し、被検体の体厚に応じてX線管の管電圧や管電流時間積などのX線撮影条件を変更することで撮影品質を高めることができるため、非接触の体厚測定装置を内蔵させたX線撮像装置も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−240286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のX線撮像装置の構成は以上のとおりであるが、以下の欠点がある。
操作者は可視光照射を行い、被検体に触れながら姿勢の指示等の位置決めを行った後、光照射ボタンを押して照射野ランプを消灯するために一旦被検体から離れ、X線照射部のそばまで移動する必要がある。また、照射野ランプは消耗防止と装置の温度上昇防止のため、照射野ランプは点灯後一定後に自動的に消灯すべく設定されていることが多い。このため、位置決めに時間を要した場合などには、途中で照射野ランプが消灯し、操作者に再度ランプを点灯させる手間を要する。立位型のX線撮像装置では、被検体から光照射ボタンまでの距離が長いため、移動の時間と手間による負担は無視できない。一方、臥位型のX線撮像装置では、光照射ボタンの位置が高くなることが多く、点消灯動作時に無理な姿勢を強いられることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の問題点を解決するため、本発明に係るX線撮像装置は、X線を照射するX線管と、X線照射野の形状を調節するためのコリメータと、前記照射野を可視光によって視認するための可視光源と、被検体の体厚を測定する体厚測定装置とを有するX線撮像装置において、前記体厚測定装置の出力信号の変化が定められた閾値を超えた場合に前記可視光源を消灯あるいは点灯する光源制御装置を備えたものである。
【0014】
なお、前記体厚測定装置には、被検体とX線管の距離を非接触にて測定する被検体距離測定装置を採用することができる。
【0015】
また、本発明では、前記被検体距離測定装置として超音波距離センサを採用することができる。
【0016】
さらに本発明では、前記被検体距離測定装置に光学距離センサを用いることも可能である。
【0017】
本発明では、従来は被検体の体厚の測定のためにのみ使用されていた体厚測定装置を、照射野ランプの点灯および消灯のスイッチの代替として活用することを特徴としている。また、操作者が被検体に近接したままで容易に体厚測定装置の出力を変化させられるため、大きなコストをかけずに目的を達成できる特徴がある。
【発明の効果】
【0018】
操作者は照射野ランプを点灯させる場合、被検体とX線照射部の間に手を挿入するなどの操作を行い、被検体の体厚を見かけ上増やすことで照射野ランプを点灯させることができる。したがってランプの点灯のため装置のそばまで移動する必要がなくなり、被検体のそばでランプの点灯操作が可能になる。立位型X線撮像装置においては移動の往復の手数を省略できる。臥位型X線撮像装置においては身長の低い操作者の負担を軽減できる。また、X線撮影の位置決め時間を短くすることができることから、被検者にとっても負担を軽減できる。
さらに、既存の体厚検出手段を用いることで、装置に大幅な改良を加えることなく装置の操作性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るX線撮像装置の概念図である。
図2】本発明に係るX線撮像装置の体厚測定装置の概念図である。
図3】本発明に係るX線撮像装置の信号処理系の模式図である。
図4】本発明に係るX線撮像装置の信号処理系の他の実施例の模式図である。
図5】従来の臥位型X線撮像装置の概念図である。
図6】従来の立位型X線撮像装置の概念図である。
図7】従来のX線撮像装置の照射野ランプ点灯回路図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のX線撮像装置の実施例を、図1図4に従って説明する。
被検体の体厚を測定するには、物差しや巻尺などを用いることも可能であるが、清潔度や自動化等の発展性からみて、非接触の測定法の優位性が高い。本実施例では、超音波センサを距離測定装置として利用している。
【0021】
図1に本発明のX線撮像装置の構成を示す。装置はX線照射部1と撮影台2に分かれている。撮影台2は、被検体が立った状態で撮像を行う立位撮影台であり、基台10と、X線検出器6と、X線検出器6を上下に移動させる昇降機構14で構成されている。X線検出器6は、例えば、フラットパネルディテクタ(FPD)やイメージインテンシファイア(I.I.)等を使用することができる。このX線検出器6は、昇降機構14の駆動により、被検体の身長等に応じて昇降する。
【0022】
また、X線照射部1は、X線を放射するX線管3を備える。このX線管3は、移動機構12を介して支持部13に支持されている。このX線管3は、移動機構12により、図1において矢印で示すとおり、撮影台2におけるX線検出器6との距離が変更可能で、この距離は、内部にポテンショメータを有する撮影距離測定装置22によって測定される。
【0023】
X線管3にはコリメータ4が取り付けられ、このコリメータ4によってX線管から発射されたX線のうち不要な部分が遮蔽される。コリメータ4を通過したX線は、X線検出器6上に、矩形の照射野を投影する。照射野の大きさは、コリメータ4のパネル上に備えられた縦寸法調節つまみ7と横寸法調節つまみ8によって調節される。
【0024】
コリメータ4内には、可視光を発する照射野ランプ(図1には示されていない)が内蔵されており、この照射野ランプによって、照射野がX線検出器6上に可視光により示される。上述の縦寸法調節つまみ7と横寸法調節つまみ8による照射野の大きさの調節は、この可視光による照射野を観察しながら行うことができる。
【0025】
また、X線管3には、超音波センサを用いてX線管3と被検体の体表との間の距離を測定する被検体距離測定装置21が付設されており、図2にこの被検体距離測定装置21の動作を示す。
【0026】
被検体距離測定装置21は、超音波を発信する発信部24と、前記発信部24から発信され被検体25で反射した超音波を受信する受信部23とを備える。発信部24から発信された超音波は、図2に示すように、空気中を放射状に伝播し、被検体25の体表で反射して受信部23に到達する。この時の発信から受信までの時間を測定すれば、空気中の超音波の伝播速度を基に、被検体25と被検体距離測定装置21との距離、ひいては被検体25とX線検出器の距離を求めることが可能となる。
【0027】
図3に本発明のX線撮像装置における照射野ランプの点灯消灯動作の信号処理のブロックダイヤグラムを示す。
【0028】
図1に示したポテンショメータを用いた撮影距離測定装置22と、被検体距離測定装置21と、演算装置27によって、図3における体厚測定装置26を構成する。撮影距離測定装置22の出力は、X線検出器6とX線管3の距離を示す。また、被検体距離測定装置21の出力は、被検体25の体表からX線検出器6までの距離を示す。演算装置27はこの二つの出力の差を計算して出力する。したがって、体厚測定装置26の出力は、被検体25の体厚を示す。
【0029】
図3の点灯制御装置28には、記憶回路29と比較回路30と照射野ランプをON/OFFする光源点灯回路31が含まれる。
【0030】
体厚測定装置26による被検体25の体厚測定は、連続的にではなく、間欠的に、例えば0.5秒に1回行われる。よってその出力も0.5秒に1回ずつ記憶回路29と比較回路30に送られる。記憶回路29は1回の入力を記憶して、これを0.5秒らせて比較回路30に送る。
【0031】
比較回路30は今回の入力と1回前の入力との差を求め、この差と、比較回路30内に別途記憶されている閾値とを比較し、差が閾値より大きい時には光源点灯回路に指令信号を送る。
【0032】
光源点灯回路31は、照射野ランプが消灯している時に指令信号を受けた場合には、照射野ランプを点灯し、照射野ランプが点灯している時に指令信号を受けた場合には、照射野ランプを消灯する。
【0033】
操作者が照射野ランプを点灯したい時、あるいは消灯したい時のいずれの場合も、操作者の手などを被検体25と被検体距離測定装置21の間の空中に挿入する。これによって被検体距離測定装置21は被検体25までの距離が短縮されたと判断し、出力を低下させる。結果として体厚測定装置26の出力は増大し、比較回路30は指令信号を光源点灯回路31に出力し、光源点灯回路31は操作者の望む方向に照射野ランプの状態を変化させる。
【0034】
図4に示すとおり、信号処理をCPUを用いて行うことも可能である。
【0035】
撮影距離測定装置22と被検体距離測定装置21の出力は制御装置32のCPU33に送られる。CPU33は0.5秒毎の被検体の体厚を計算し、これを記憶回路35に蓄える。CPU33は、各回の体厚値と、記憶回路35内の前回の体厚値の差を計算し、この差が、記憶回路35の蓄えられた閾値を超えた場合には、CPU33が指令信号を光源点灯回路34に送る。光源点灯回路34はこの指令を受けた時に照射野ランプを点灯あるいは消灯する。
【0036】
上記の説明では、被検体距離測定装置21に使用するセンサに超音波センサを用いたが、同様な効果は、光学距離センサを使用することも可能である。
【0037】
上記の説明では、立位型X線撮像装置について説明を行ったが、臥位型X線撮像装置においても適用できる。なお、図1から図7において同一符号で示される部品は、同一の機能を有する。
【符号の説明】
【0038】
1 X線照射部
2 撮影台
3 X線管
4 コリメータ
5 ステージ
6 X線検出器
7 縦寸法調節つまみ
8 横寸法調節つまみ
9 光照射ボタン
10 基台
11 X線管保持装置
12 移動機構
13 支持部
14 昇降機構
15 照射野ランプ
16 ON/OFFリレー
17 コイル
18 リレードライバ
19 制御回路
21 被検体距離測定装置
22 撮影距離測定装置
23 受信部
24 発信部
25 被検体
26 体厚測定装置
27 演算装置
28 点灯制御装置
29 記憶回路
30 比較回路
31 光源点灯回路
32 制御装置
33 CPU
34 光源点灯回路
35 記憶回路
36 照射野
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7