(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
室外空気(OA)と室内空気(RA)の間で潜熱の交換と顕熱の交換を行いつつ室内と室外の間で換気を行う全熱交換換気と、上記室外空気(OA)と上記室内空気(RA)の間の熱交換をともなわずに室内と室外の間で換気を行う普通換気との切換が可能な換気装置において、
上記室外空気(OA)の不快指数(DI)に応じて上記全熱交換換気と上記普通換気とを切り換える快適運転モードと、上記室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)と上記室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)との差に応じて上記全熱交換換気と上記普通換気とを切り換える省エネルギー運転モードとの何れかに運転状態を制御する制御部(60)を備えたことを特徴とする換気装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、全熱交換器を用いた換気と、全熱交換器を用いない換気とを単に季節に応じて切り換えていたのでは、ユーザの快適性は担保されたとしても、十分な省エネルギーは期待できない。
【0006】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであり、室内の換気を行う換気装置において、ユーザの快適性が損なわれることなく、省エネルギー性も向上できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の発明は、
室外空気(OA)と室内空気(RA)の間で潜熱の交換と顕熱の交換を行いつつ室内と室外の間で換気を行う全熱交換換気と、上記室外空気(OA)と上記室内空気(RA)の間の熱交換をともなわずに室内と室外の間で換気を行う普通換気との切換が可能な換気装置において、
上記室外空気(OA)の不快指数(DI)に応じて上記全熱交換換気と上記普通換気とを切り換える快適運転モードと、上記室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)と上記室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)との差に応じて上記全熱交換換気と上記普通換気とを切り換える省エネルギー運転モードとの何れかに運転状態を制御する制御部(60)を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成では、上記快適運転モードと、上記省エネルギー運転モードとを使い分けることができる。
【0009】
また、第2の発明は、
第1の発明において、
上記室内空気(RA)の二酸化炭素濃度(C)を検出する二酸化炭素濃度センサ(40)を備え、
上記制御部(60)は、上記二酸化炭素濃度センサ(40)の検出値(C)が所定閾値(Th)よりも高い場合には、上記快適運転モードによって運転を制御し、上記検出値(C)が上記閾値(Th)以下の場合には、上記省エネルギー運転モードによって運転を制御することを特徴とする。
【0010】
この構成では、二酸化炭素濃度に応じて快適運転モードと、省エネルギー運転モードを使い分ける。
【0011】
また、第3の発明は、
第1の発明において、
上記室内空気(RA)の空気調和を行う空気調和機(1)との通信手段を備え、
上記制御部(60)は、上記空気調和機(1)の負荷に応じて、上記快適運転モードと上記省エネルギー運転モードとを切り換えることを特徴とする。
【0012】
この構成では、空気調和機(1)の負荷に応じて快適運転モードと、省エネルギー運転モードを使い分ける。
【0013】
また、第4の発明は、
第1から第3の発明に何れかにおいて、
上記室外空気(OA)の相対湿度(Ro)を検出する室外湿度センサ(44)と、
上記室外空気(OA)の温度(To)を検出する室外温度センサ(43)と、
上記室外湿度センサ(44)の検出値(Ro)、及び上記室外温度センサ(43)の検出値(To)に基づいて、上記室外空気(OA)の不快指数(DI)を算出する不快指数算出部(62)と、
を備え、
上記制御部(60)は、上記快適運転モードにおいては、上記不快指数(DI)が所定範囲内にある場合に上記普通換気が行われ、上記不快指数(DI)が上記所定範囲外にある場合に上記全熱交換換気が行われるように制御を行うことを特徴とする。
【0014】
この構成では、快適運転モードにおいては、不快指数(DI)が所定範囲内にある場合に普通換気が行われ、不快指数(DI)が上記所定範囲外にある場合に上記全熱交換換気が行われる。例えば、室外空気(OA)が快適な場合には、それを取り込むことが可能になる。
【0015】
また、第5の発明は、
第1から第4の発明に何れかにおいて、
上記制御部(60)は、上記省エネルギー運転モードにおいて、
室内で暖房が行われている場合は、上記室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)が上記室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)よりも大きい場合に上記普通換気が行われ、上記室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)が上記室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)よりも小さい場合に上記全熱交換換気が行われるように制御を行うとともに、
室内で冷房が行われている場合には、上記室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)が上記室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)よりも大きい場合に上記全熱交換換気が行われ、上記室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)が上記室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)よりも小さい場合に上記普通換気が行われるように制御を行う
ことを特徴とする。
【0016】
この構成では、室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)と室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)との差に応じて快適運転モードと、省エネルギー運転モードを使い分けるので、冷房や暖房に室外空気(OA)を利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、快適運転モードと、上記省エネルギー運転モードとを使い分けることによって、ユーザの快適性が損なわれることなく、省エネルギー性も向上できる。
【0018】
また、第2の発明によれば、二酸化炭素濃度に応じて快適運転モードと、省エネルギー運転モードを切り換えるので、より効果的に省エネルギー性を向上し、且つユーザの快適性が損なうことがない。
【0019】
また、第3の発明によれば、空気調和機(1)の負荷に応じて快適運転モードと、省エネルギー運転モードを切り換えるので、より効果的にユーザの快適性や省エネルギー性を向上できる。
【0020】
また、第4の発明によれば、例えば、室外空気(OA)が快適な場合には、それを取り込むことが可能になるので、より効果的に省エネルギー性を向上し、且つユーザの快適性が損なうことがない。
【0021】
また、第5の発明によれば、冷房や暖房に室外空気(OA)を利用することができるので、より効果的に省エネルギー性を向上し、且つユーザの快適性が損なうことがない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0024】
《発明の実施形態》
〈空気調和機〉
図1は、実施形態による空気調和機(1)の構成例を示している。この空気調和機(1)は、室内の空気調和と室内の換気を行うものであり、所謂、ビル用マルチ式の空気調和機を構成している。具体的には、空気調和機(1)は、室外に設置された室外機(2)と、室内に設置された複数の室内機(3)および換気装置(10)と、操作者によって操作されるコントローラ(4)とを備えている。空気調和機(1)では、室外機(2)に二つの冷媒管(ガス側連絡管(5a)および液側連絡管(5b))が接続され、その二つの冷媒管(5a,5b)に複数の室内機(3)が並列に接続されている。これにより、冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路(5)が構成されている。
【0025】
−室外機−
室外機(2)には、圧縮機(2a)と室外熱交換器(2b)と室外膨張弁(2c)と四方切換弁(2d)と室外ファン(2e)と室外制御部(2f)とが設けられている。四方切換弁(2d)は、圧縮機(2a)の吐出側に接続された第1ポートと、圧縮機(2a)の吸入側に接続された第2ポートと、室外熱交換器(2b)のガス側に接続された第3ポートと、ガス側連絡管(5a)に接続された第4ポートとを有している。また、四方切換弁(2d)は、第1ポートと第4ポートとを連通させ且つ第2ポートと第3ポートとを連通させる第1状態(
図1の実線で示した状態)と、第1ポートと第3ポートとを連通させ且つ第2ポートと第4ポートとを連通させる第2状態(
図1の破線で示した状態)とに切換可能に構成されている。室外熱交換器(2b)の液側は、室外膨張弁(2c)を介して液側連絡管(5b)に接続されている。室外制御部(2f)は、コントローラ(4)との間で通信可能に構成され、圧縮機(2a)と四方切換弁(2d)と室外ファン(2e)とを制御する。
【0026】
−室内機−
各室内機(3)には、室内熱交換器(3a)と室内膨張弁(3b)と室内ファン(3c)と室内制御部(3d)とが設けられている。室内熱交換器(3a)は、その液側が室内膨張弁(3b)を介して液側連絡管(5b)に接続され、そのガス側がガス側連絡管(5a)に接続されている。室内制御部(3d)は、コントローラ(4)との間で通信可能に構成され、室内膨張弁(3b)と室内ファン(3c)とを制御する。
【0027】
−換気装置−
図2は、本発明の実施形態に係る換気装置(10)の構成を模式的に示す。
図2に示すように、換気装置(10)は、ケーシング(20)、全熱交換器(15)、各種センサ(40〜45)、及び換気制御部(60)を備えている。換気制御部(60)は、コントローラ(4)との間で通信可能に構成され、給気ファン(13)と排気ファン(14)とを制御する。なお、換気装置(10)の構成については、後で詳しく説明する。
【0028】
−コントローラ−
コントローラ(4)は、室外制御部(2f)と室内制御部(3d)と換気制御部(60)との間で通信可能に構成され、操作者による操作(例えば、運転モードの選択や設定温度の入力など)に応答して室内の空気調和および室内の換気のための制御信号を送受信する。
【0029】
〈空気調和機の運転動作〉
上記のように、空気調和機(1)では、圧縮機(2a)と室外熱交換器(2b)と室外膨張弁(2c)と四方切換弁(2d)と室内熱交換器(3a)と室内膨張弁(3b)とが接続されて冷媒回路(5)が構成されている。そして、空気調和機(1)では、暖房運転と冷房運転とが行われる。なお、この例では、全室内機(3)が同一の空気調和運転(暖房運転または冷房運転)を行う。すなわち、空気調和機(1)は、全室内機(3)が暖房運転または冷房運転を行う冷暖切換機を構成している。
【0030】
−暖房運転−
暖房運転では、四方切換弁(2d)が第1状態に設定され、液冷媒を所定の圧力まで減圧するように室外膨張弁(2c)の開度が調節され、各室内機(3)において室内膨張弁(3b)の開度が所定の開度に調節され、圧縮機(2a)と室外ファン(2e)と室内ファン(3c)とが駆動する。これにより、冷媒回路(5)では、各室内機(3)において室内熱交換器(3a)が凝縮器となり室外熱交換器(2b)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。このようにして室内の暖房が行われる。
【0031】
−冷房運転−
冷房運転では、四方切換弁(2d)が第2状態に設定され、室外膨張弁(2c)の開度が全開に設定され、各室内機(3)において室内膨張弁(3b)の開度が所定の開度に調節され、圧縮機(2a)と室外ファン(2e)と室内ファン(3c)とが駆動する。これにより、冷媒回路(5)では、室外熱交換器(2b)が凝縮器となり各室内機(3)において室内熱交換器(3a)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。このようにして室内の冷房が行われる。
【0032】
〈換気装置の構成〉
換気装置(10)は、建物に設置され、例えば24時間換気を行うように構成されている。この換気装置(10)では、室外空気(OA)と室内空気(RA)の間で潜熱と顕熱と交換しつつ室内と室外の間で換気を行う全熱交換換気と、室外空気(OA)と室内空気(RA)の間の熱交換をともなわずに室内と室外の間で換気を行う普通換気との切換ができるようになっている。
【0033】
−ケーシング−
ケーシング(20)は、箱状に形成され、全熱交換器(15)が設けられている。また、ケーシング(20)内には、給気通路(11)及び排気通路(12)が形成されている。詳しくは、給気通路(11)と排気通路(12)は、全熱交換器(15)で交差するように形成されている。
【0034】
給気通路(11)は、室外側の外気吸込口(21)において室外に開口し、室内側の給気口(22)において室内に開口している。給気通路(11)には、全熱交換器(15)よりも室内側に給気ファン(13)が設けられている。
【0035】
排気通路(12)は、室内側の内気吸込口(23)において室内に開口し、室外側の排気口(24)において室外に開口している。排気通路(12)には、全熱交換器(15)よりも室外側に排気ファン(14)が設けられている。
【0036】
排気通路(12)には、
図3に示すように、全熱交換器(15)をバイパスするバイパス通路(25)が接続されている。バイパス通路(25)の室外側は、全熱交換器(15)と排気ファン(14)の間に接続され、バイパス通路(25)の室内側は、全熱交換器(15)と内気吸込口(23)の間に接続されている。
【0037】
バイパス通路(25)の室内側には、ダンパ(31)が設けられている。ダンパ(31)は、室内空気(RA)の流通経路をバイパス通路(25)と全熱交換器(15)の間で切り換えるように構成されている。具体的に、ダンパ(31)は、バイパス通路(25)を閉鎖する第1状態と、バイパス通路(25)を開口する第2状態とに切り換わる。ダンパ(31)は、第1状態では全熱交換器(15)への空気の流れを許容し、第2状態では全熱交換器(15)側への空気の流れを禁止する。
【0038】
−全熱交換器−
全熱交換器(15)は、給気通路(11)を流通する空気と排気通路(12)を流通する空気とを熱交換させる。全熱交換器(15)は、
図4に示すように、四角柱状に形成されている。全熱交換器(15)では、隣り合う側面の一方に給気通路(11)の空気を流すための給気用流路(15a)が形成され、隣り合う側面の他方に排気通路(12)の空気を流すための排気用流路(15b)が形成されるように、平板部材と波状部材とが交互に積層されている。平板部材と波状部材は、透湿性を有した材料(例えば紙)で構成されており、給気用流路(15a)内の空気と排気用流路(15b)内の空気との間で、水分の移動が可能となっている。これにより、全熱交換器(15)では、顕熱の交換に加え、潜熱の交換が可能になる。
【0039】
そして、全熱交換器(15))は、給気用流路(15a)が開口する側面が給気通路(11)に臨み、排気用流路(15b)が開口する側面が排気通路(12)に臨むように配置されている。全熱交換器(15)は、給気用流路(15a)の伸長方向と排気用流路(15b)の伸長方向とが互いに直交する直交流型の熱交換器である。
【0040】
−各種センサ−
換気装置(10)には、二酸化炭素濃度センサ(40)、室内温度センサ(41)、室内湿度センサ(42)、室外温度センサ(43)、及び室外湿度センサ(44)が設けられている。
【0041】
二酸化炭素濃度センサ(40)は、排気通路(12)内であって、全熱交換器(15)よりも室内側となる位置に設けられ、室内空気(RA)の二酸化炭素濃度(C)を検出する。二酸化炭素濃度センサ(40)の検出値は換気制御部(60)に入力されている。
【0042】
室内温度センサ(41)は、排気通路(12)内における全熱交換器(15)よりも室内側に設けられ、室内空気(RA)の温度(Tr)を検出する。室内温度センサ(41)の検出値も換気制御部(60)に入力される。
【0043】
室内湿度センサ(42)は、排気通路(12)内であって、全熱交換器(15)よりも室内側となる位置に設けられ、室内空気(RA)の相対湿度(Rr)を検出する。室内湿度センサ(42)の検出値も換気制御部(60)に入力されている。
【0044】
室外温度センサ(43)は、給気通路(11)内であって、全熱交換器(15)よりも室外側となる位置に設けられ、室外空気(OA)の温度(To)(すなわち外気温)を検出する。室外温度センサ(43)の検出値も換気制御部(60)に入力されている。
【0045】
室外湿度センサ(44)は、給気通路(11)内であって、全熱交換器(15)よりも室外側となる位置に設けられている。室外湿度センサ(44)は、室外空気(OA)の相対湿度(Ro)を検出する。検出値は換気制御部(60)に入力されている。
【0046】
−換気制御部−
換気制御部(60)は、マイクロコンピュータとそれを動作させるプログラムとを用いて構成されており、運転切換部(61)、不快指数算出部(62)、及びエンタルピー算出部(63)を備えている。
【0047】
−運転切換部(61)−
運転切換部(61)は、室内空気(RA)の二酸化炭素濃度(C)に応じてダンパ(31)等を制御することによって、快適運転モードと省エネルギー運転モードとを切り換えるようになっている。ここで、快適運転モードとは、室外空気(OA)の不快指数(DI)に応じて上記全熱交換換気と上記普通換気とを切り換える運転モードである。また、省エネルギー運転モードとは、室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)と室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)との差に応じて上記全熱交換換気と上記普通換気とを切り換える運転モードである。
【0048】
−不快指数算出部(62)−
不快指数算出部(62)は、室外空気(OA)における不快指数(DI)を算出する。この例では、不快指数算出部(62)は、次の式に基づいて不快指数(DI)を算出する。
【0049】
DI=0.81×To+0.01×Ro×(0.99×To-14.3)+46.3
ここで、温度(To)は、室外温度センサ(43)の検出値であり、相対湿度(Ro)は、室外湿度センサ(44)の検出値である。
【0050】
−エンタルピー算出部(63)−
エンタルピー算出部(63)は、室外空気(OA)及び室内空気(RA)の空気エンタルピーをそれぞれ算出する。この例では、エンタルピー算出部(63)は、次の式に基づいて、室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)、及び室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)を算出する。
【0051】
Ho=1.006×To+(1.0805×To+2501)×Rzo/1000
Hr=1.006×Tr+(1.0805×Tr+2501)×Rzr/1000
ここで温度(To)は、室外温度センサ(43)の検出値であり、温度(Tr)は、室内温度センサ(41)の検出値である。
【0052】
また、Rzoは室外空気(OA)の絶対湿度であり、Rzrは室内空気(RA)の絶対湿度である。エンタルピー算出部(63)は、Rzo、Rzrを次の式から算出する。
【0053】
Rzo=(係数A×To+係数B)×Ro/100
Rzr=(係数A×Tr+係数B)×Rr/100
ただし、Roは室外空気(OA)の相対湿度であり、Rrは室内空気(RA)の相対湿度である。また、係数A、及び係数Bは、温度に応じて定まる定数である。
【0054】
〈換気装置の運転動作〉
既述の通り、換気装置(10)では、室内空気(RA)における二酸化炭素濃度(C)に応じて、快適運転モードと省エネルギー運転モードとを切り換えるようになっている。以下では、まず、快適運転モードにおける動作と、省エネルギー運転モードにおける動作についてそれぞれ説明する。
【0055】
−快適運転モード−
快適運転モードにおいては、まず、不快指数算出部(62)が不快指数(DI)を算出する。運転切換部(61)は、不快指数(DI)の値が所定範囲内にある場合に普通換気が行われ、不快指数(DI)が上記所定範囲外にある場合に全熱交換換気が行われるように制御を行う。この例では、所定範囲は、66〜74に設定してある。
【0056】
本実施形態では、不快指数算出部(62)が算出した不快指数(DI)が、66〜74の範囲内の場合には、普通換気が選択される。普通換気を行う場合には、運転切換部(61)は、ダンパ(31)を上記第2状態に切り換える。これにより、室内空気(RA)はバイパス通路(25)側を流れ、全熱交換器(15)側へは流れないようになる。また、室外空気(OA)は、全熱交換器(15)を通過するが、室内空気(RA)が全熱交換器(15)を流れないので、全熱交換器(15)においては、熱交換が行われない。このように、不快指数(DI)が、66〜74の範囲内の場合には、快適な室外空気(OA)がそのまま室内に取り入れられて、ユーザの快適性が担保される。また、この場合には、省エネルギーの効果も得られる。
【0057】
一方、不快指数(DI)が66〜74の範囲外の場合には、全熱交換換気が選択される。全熱交換換気を行う場合には、運転切換部(61)は、ダンパ(31)を第1状態に切り換える。これにより、室内空気(RA)は、全熱交換器(15)を通過する。また、室外空気(OA)も、全熱交換器(15)を通過する。したがって、全熱交換器(15)においては、室外空気(OA)と室内空気(RA)との間で、顕熱による熱交換が行われる。また、全熱交換器(15)では、室外空気(OA)と室内空気(RA)との間で水分の移動が可能なので、潜熱の交換も行われる。すなわち、全熱交換器(15)においては、室外空気(OA)と室内空気(RA)の間で、顕熱の交換と潜熱の交換(いわゆる全熱交換)が行われる。
【0058】
このように、不快指数(DI)が、66〜74の範囲外では、全熱交換換気が行われ、室内では効率的に冷房や暖房を行うことができる。すなわち、この場合も、ユーザの快適性が担保される。
【0059】
−省エネルギー運転モード−
省エネルギー運転モードでは、可能な限り室外空気(OA)をそのまま室内に取り込んで空気調和に利用する。具体的には、まず、エンタルピー算出部(63)が室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)、及び室内空気(RA)エンタルピー(Hr)を算出する。その後は、省エネルギー運転モードでは、室内において暖房が行われている場合と冷房が行われている場合とで動作が異なる。
【0060】
−暖房時−
例えば、室内で暖房が行われている場合で、室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)が室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)よりも大きい場合には、運転切換部(61)は、上記普通換気が行われるように制御を行う。こうすることで、室内空気(RA)よりも熱量が大きな室外空気(OA)が取り入れられ、室内の温度(Tr)を上昇させることができる。そのため、室外空気(OA)を取り入れている間は、暖房を停止させることが可能になり、省エネルギー性が向上する。
【0061】
また、室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)が室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)よりも小さい場合には、運転切換部(61)は、上記全熱交換換気が行われるように制御を行う。全熱交換換気が行われると、室内において効率的に暖房を行うことが可能になり、この点においても省エネルギー性が向上する。
【0062】
−冷房時−
一方、室内で冷房が行われている場合で、室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)が室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)よりも小さい場合には、運転切換部(61)は、上記普通換気が行われるように制御を行う。こうすることで、室内空気(RA)空気よりも熱量が小さな室外空気(OA)が室内にそのまま取り入れられ、室内の温度(Tr)を低下させることができる。そのため、室外空気(OA)を取り入れている間は、冷房を停止させることが可能になり、省エネルギー性が向上する。
【0063】
また、運転切換部(61)は、室外空気(OA)のエンタルピー(Ho)が室内空気(RA)のエンタルピー(Hr)よりも大きい場合に全熱交換換気が行われるように制御を行う。全熱交換換気が行われると、室内において効率的に冷房を行うことが可能になり、この点においても省エネルギー性が向上する。
【0064】
以上のように、快適運転モードは、快適性を重視しつつ省エネルギー性を担保するものであり、また、省エネルギー運転モードは、省エネルギー性を重視しつつ快適性を担保するものである。
【0065】
−快適運転モード、省エネルギー運転モードの切換−
本実施形態では、運転切換部(61)は、二酸化炭素濃度センサ(40)の検出値(C)と、所定の閾値(Th)とを比較して、比較の結果に応じて快適運転モードと省エネルギー運転モードとを切り換えるようになっている。より具体的には、運転切換部(61)は、二酸化炭素濃度(C)が閾値(Th)を超えた場合に快適運転モードを選択し、二酸化炭素濃度(C)が閾値(Th)以下の場合に、省エネルギー運転モードを選択する。この例では、閾値は1000ppmに設定してある。
【0066】
図5は、換気装置(10)が設置された事務所における、在室人数と二酸化炭素濃度(C)の時間変化を例示する。同図では、折れ線の方が二酸化炭素濃度(C)である。
図5に示すように、二酸化炭素濃度(C)は、在室人数に応じて変化する。例えば、日中であっても昼休み時間は、在室人数が減少し、二酸化炭素濃度(C)も低下している。すなわち、在室人数と二酸化炭素濃度(C)とは相関性を有している。
【0067】
そこで、換気装置(10)では、二酸化炭素濃度(C)が閾値(Th)以下の場合(すなわち昼休みや夜間などの在室人数が少ない場合)に、省エネルギー性を重視して省エネルギー運転モードを選択する。これにより、従来の換気装置と比べ、省エネルギー性が向上する。また、ユーザの快適性を損なう可能性も低くなる。
【0068】
一方、二酸化炭素濃度(C)が閾値(Th)を超えた場合(すなわち在室人数が多い場合)には、ユーザの快適性を重視して快適運転モードを選択する。したがって、ユーザは、より快適に過ごすことが可能になる。
【0069】
〈本実施形態における効果〉
以上の通り、本実施形態によれば、室内の換気を行う換気装置において、ユーザの快適性が損なわれることなく、省エネルギー性を向上させることが可能になる。
【0070】
《その他の実施形態》
なお、快適運転モードと省エネルギー運転モードとの切換は、二酸化炭素濃度(C)に基づいて行う他に、種々の観点から切り換えることができる。
【0071】
例えば、空気調和機(1)における負荷に応じて、快適運転モードと省エネルギー運転モードとを切り換えるようにしてもよい。この場合は、例えば換気制御部(60)が、空気調和機(1)のコントローラ(4)との通信を行うことで、負荷の情報を空気調和機(1)から取得すれば実現できる。
【0072】
また、室内の人を検知して、快適運転モードと省エネルギー運転モードとを切り換えるようにしてもよい。例えば、人が在室の場合には快適運転モードを選択し、人が室内にいない場合には省エネルギー運転モードを選択することが考えられる。なお、人の検知は、例えば、人を検知するセンサを備えた空気調和機からの情報を利用することで可能である。
【0073】
また、換気制御部(60)によって、快適運転モードと省エネルギー運転モードとを自動的に切り換えるほか、ユーザが手動で切り換えるようにしてもよい。具体的にはリモートコントローラなどを介してユーザが換気制御部(60)に指令を送るように換気装置(10)を構成すればよい。
【0074】
また、換気制御部(60)にスケジュールタイマー機能を設け、このスケジュールタイマー機能によって、快適運転モードと省エネルギー運転モードの切換を行うようにしてもよい。一例として、昼間に快適運転モードが選択され、夜間に省エネルギー運転モードが選択されるようにスケジュールを組むことが考えられる。
【0075】
また、空気調和機(1)の設置時に、快適運転モード専用機とするか、省エネルギー運転モード専用機とするかを、設置作業者が設定するようにしてもよい。
【0076】
また、空気調和機(1)において全室内機(3)が暖房運転または冷房運転を行う冷暖切換機を構成している場合を例に挙げたが、空気調和機(1)は、全室内機(3)が暖房運転のみを行う暖房専用機を構成していてもよいし、各室内機(3)が暖房運転または冷房運転を個別に行う冷暖フリー機を構成していてもよい。
【解決手段】室外空気(OA)の不快指数に応じて全熱交換換気と普通換気とを切り換える快適運転モードと、室外空気(OA)のエンタルピーと室内空気(RA)のエンタルピーとの差に応じて全熱交換換気と普通換気とを切り換える省エネルギー運転モードとの何れかに運転状態を制御する制御部(60)を設ける。