特許第5741757号(P5741757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5741757
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】配線部材及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   H01B7/08
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-226480(P2014-226480)
(22)【出願日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年11月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(72)【発明者】
【氏名】富川 伊知朗
(72)【発明者】
【氏名】浅谷 康正
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−151371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド線を含む複数の配線、及び前記複数の配線を被覆するとともに前記グランド線の少なくとも一部を露出させる開口部が形成された第1の絶縁層を有する配線基材と、
一方の面側に第2の絶縁層、他方の面側に導電性接着層が設けられ、前記第2の絶縁層同士が向かい合うように折り返された状態で前記配線基材の前記開口部を含む前記第1の絶縁層上に配置され、折り返されていない部分の前記導電性接着層が前記開口部を介して前記グランド線に電気的に接続された導電性シートと、
前記配線基材及び前記導電性シート上に配置されて前記導電性シートの折り返された部分の前記導電性接着層に接着され、前記折り返された部分を介して前記グランド線に電気的に接続されたシールド部材と、
を備えた配線部材。
【請求項2】
前記シールド部材は、金属層と、前記金属層の一方の面に設けられた絶縁性接着層とを有し、前記導電性シートの前記折り返された部分の前記導電性接着層に接着される前記シールド部材の領域の少なくとも一部は、前記絶縁性接着層を有さない、請求項1に記載の配線部材。
【請求項3】
前記シールド部材の前記絶縁性接着層は、前記配線基材の長手方向、又は前記長手方向に対して交差した方向に延びる互いに平行な複数のラインパターンからなる、請求項2に記載の配線部材。
【請求項4】
前記導電性シートは、前記シールド部材よりも厚みが薄い、請求項1に記載の配線部材。
【請求項5】
前記導電性シート及び前記シールド部材は、それぞれ金属層を有し、
前記導電性シートの前記金属層は、前記シールド部材の前記金属層よりも延性が大きい、請求項1に記載の配線部材。
【請求項6】
前記導電性シートは、前記第2の絶縁層と前記導電性接着層との間に金属層を有し
前記シールド部材は、金属層と、当該金属層上に設けられた接着層とを有し、
前記導電性シートの前記金属層は、前記シールド部材の前記金属層よりも厚さが薄い、請求項1に記載の配線部材。
【請求項7】
グランド線を含む複数の配線を絶縁層で被覆するとともに、前記グランド線の少なくとも一部を前記絶縁層から露出させた配線基材と、
折り返された折返し部と折り返されていない非折返し部とを有し、前記非折返し部が前記絶縁層から露出した前記グランド線に電気的に接続された導電性シートと、
前記配線基材及び前記導電性シート上に配置され、前記導電性シートの前記折返し部を介して前記グランド線に電気的に接続されたシールド部材と、
を備えた配線部材。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の配線部材と、
前記配線部材によって互いに接続された第1及び第2の基板と、を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線部材及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号線及びグランド線を含む複数の配線と、この複数の配線を被覆する絶縁層とを有する配線基材にシールド部材を設ける場合、グランド線の少なくとも一部を露出させた開口部を絶縁層に設け、シールド部材をこの開口部を介してグランド線に接地させる配線部材が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、導体群の上下面に絶縁膜を有するフレキシブルフラットケーブルにシールド材を貼り付ける構造において、導体が露出するように絶縁膜に開口部を設け、この開口部を介して、露出した導体とシールド材のシールド金属とを超音波接合で電気的に接続する構造が開示されている。
【0004】
特許文献2には、フラットケーブルの被覆材から露出したグランド線に、導電性熱接着層を有するシールド材を加熱ゴムローラで熱接着することで、シールド材をグランド線に電気的に接続する方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、フラットケーブルの絶縁フィルムの接地用導体に対向する部分に接触孔を設け、熱プレスローラによりシールドフィルムを接地用導体に加熱圧着する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−259619号公報
【特許文献2】特開2002−329425号公報
【特許文献3】実開平04−36722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、シールド部材とグランド線とを導電性シートを介さずに電気的に接続する構成と比較して、シールド部材の制約の少ない配線部材及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]グランド線を含む複数の配線、及び前記複数の配線を被覆するとともに前記グランド線の少なくとも一部を露出させる開口部が形成された第1の絶縁層を有する配線基材と、
一方の面側に第2の絶縁層、他方の面側に導電性接着層が設けられ、前記第2の絶縁層同士が向かい合うように折り返された状態で前記配線基材の前記開口部を含む前記第1の絶縁層上に配置され、折り返されていない部分の前記導電性接着層が前記開口部を介して前記グランド線に電気的に接続された導電性シートと、
前記配線基材及び前記導電性シート上に配置されて前記導電性シートの折り返された部分の前記導電性接着層に接着され、前記折り返された部分を介して前記グランド線に電気的に接続されたシールド部材と、
を備えた配線部材。
[2]前記シールド部材は、金属層と、前記金属層の一方の面に設けられた絶縁性接着層とを有し、前記導電性シートの前記折り返された部分の前記導電性接着層に接着される前記シールド部材の領域の少なくとも一部は、前記絶縁性接着層を有さない、前記[1]に記載の配線部材。
[3]前記シールド部材の前記絶縁性接着層は、前記配線基材の長手方向、又は前記長手方向に対して交差した方向に延びる互いに平行な複数のラインパターンからなる、前記[2]に記載の配線部材。
[4]前記導電性シートは、前記シールド部材よりも厚みが薄い、前記[1]に記載の配線部材。
[5]前記導電性シート及び前記シールド部材は、それぞれ金属層を有し、
前記導電性シートの前記金属層は、前記シールド部材の前記金属層よりも延性が大きい、前記[1]に記載の配線部材。
[6]前記導電性シートは、前記第2の絶縁層と前記導電性接着層との間に金属層を有し
前記シールド部材は、金属層と、当該金属層上に設けられた接着層とを有し、
前記導電性シートの前記金属層は、前記シールド部材の前記金属層よりも厚さが薄い、前記[1]に記載の配線部材。
[7]グランド線を含む複数の配線を絶縁層で被覆するとともに、前記グランド線の少なくとも一部を前記絶縁層から露出させた配線基材と、
折り返された折返し部と折り返されていない非折返し部とを有し、前記非折返し部が前記絶縁層から露出した前記グランド線に電気的に接続された導電性シートと、
前記配線基材及び前記導電性シート上に配置され、前記導電性シートの前記折返し部を介して前記グランド線に電気的に接続されたシールド部材と、
を備えた配線部材。
[8]前記[1]から[7]のいずれかに記載の配線部材と、
前記配線部材によって互いに接続された第1及び第2の基板と、を備えた電子機器。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、7、8に係る発明によれば、シールド部材とグランド線とを導電性シートを介さずに電気的に接続する構成と比較して、シールド部材の制約が少なくなる。
請求項2に係る発明によれば、シールド部材の接着層として、絶縁性接着剤を用いることができる。
請求項3に係る発明によれば、シールド部材の素材としてテープ状のものを用い、そのテープ状のものから必要な長さを切り出してシールド部材として用いることができる。
請求項4〜6に係る発明によれば、導電性シートはシールド部材よりも開口部の形状に追従し易くなる。また、シールド部材を直接配線基材に圧着する構成と比較して、所望のシールド特性と接地特性を両立し易くなる。この結果、例えば、シールド部材は単体としてのシールド特性を重視して選択し、導電性シートは開口部への追従性を重視して選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る配線部材の概略の構成例、及びこの配線部材が適用された電子機器の概略の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、配線部材の一方の端部近傍の分解斜視図である。
図3図3は、図2に示すE−E線断面図である。
図4図4(a)、(b)、(c)は、それぞれ図3に示すA−A線断面図、B−B線断面図、C−C線断面図である。
図5図5は、シールド部材の要部平面図である。
図6図6(a)〜(d)は、導電性シートの変形例を示す斜視図である。
図7図7は、熱圧着プレス機を用いて導電性シートを配線基材に熱圧着する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。なお、図面のスケールや形状は、発明の特徴を分かり易くするために強調している部分を含んでおり、必ずしも実際の部材のスケールや形状と同一ではない。
【0012】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る配線部材の概略の構成例、及びこの配線部材が適用された電子機器の概略の構成例を示す斜視図である。
【0013】
この電子機器100は、第1のコネクタ111Aを有する第1の基板110Aと、第2のコネクタ111Bを有する第2の基板110Bと、第1のコネクタ111Aと第2のコネクタ111Bとを電気的に接続する本実施の形態に係る配線部材1とを備える。配線部材1の数は、1つに限られず2つ以上でもよい。
【0014】
電子機器100として、例えばテレビジョン受像機、カーナビゲーション装置やオーディオ装置等の車載機器、プリンタや複合機等の画像形成装置等が挙げられるが、これらに限られない。
【0015】
第1及び第2の基板110A、110Bには、例えば電子部品や電源等が実装される。配線部材1は、例えば周波数10MHz〜1GHzの信号や電力を伝送する。電子機器100が画像形成装置の場合は、例えば、コントローラから露光装置にC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)、K(ブラック)に対応した4つの配線部材1を介して、CMYK各色の画像データに基づいて変調された画像書込信号が送信される。
【0016】
配線部材1は、複数の配線を絶縁層で被覆した配線基材4と、配線基材4を覆うシールド部材6と、配線基材4の複数の配線のうちグランド線とシールド部材6とを電気的に接続する後述する導電性シートとを備える。また、配線部材1は、長手方向Dの両端部に複数の配線2が露出した端子部20a、20bが設けられている。両端部の端子部20a、20bは、第1の基板110Aに設けられた第1のコネクタ111A、及び第2の基板110Bに設けられた第2のコネクタ111Bにそれぞれ電気的に接続される。
【0017】
ここで、「配線部材」とは、平板型の長尺形状を有し、複数の配線を絶縁層で被覆し、配線が長手方向Dの両端部に端子部として露出した可撓性を有するものをいう。「端部」とは、端子部20a、20bが存在している配線部材1の部分をいう。配線部材には、フレキシブルフラットケーブル(FFC)、基板上に素子が実装されたフレキシブルプリント配線板(FPC)等が含まれる。「導電性シート」とは、幅や長さよりも厚さの薄いシート状のものであって、導電性を有するものをいう。導電性シートには、絶縁層の一方の面に金属層を形成し、その金属層上に導電性接着層を形成したもの、絶縁層や導電性接着層を有していないもの、金属層のみからなるものが含まれる。「シールド部材」とは、配線から外部に放射されるノイズ、及び外部から配線に侵入するノイズを遮蔽する機能を有するものをいう。シールド部材には、絶縁層の一方の面に金属層を形成し、その金属層上に接着層を形成したもの、絶縁層や接着層を有していないもの、金属層のみからなるものが含まれる。
【0018】
図2は、配線部材1の一方の端部近傍の分解斜視図である。図3は、図2に示すE−E線断面図である。図4(a)、(b)、(c)は、それぞれ図3に示すA−A線断面図、B−B線断面図、C−C線断面図である。
【0019】
配線部材1は、図2に示すように、端部近傍の領域(例えば、端部との間の間隔が長手方向Dの全長の1/4以下となる領域)に導電性シート5が配置されている。なお、導電性シート5が配置される領域は、端部近傍の領域以外の領域でもよい。
【0020】
(配線基材の構成)
配線基材4は、グランド線2bを含む複数の配線2、及び複数の配線2を被覆するとともにグランド線2bの少なくとも一部を露出させる開口部が形成された絶縁層3を有する。具体的には、配線基材4は、一定の間隔で平行に配列された複数の配線2と、複数の配線2を被覆する絶縁層3とを有する。
【0021】
配線2は、信号線2a及びグランド線2bを含む。グランド線2bの数は、同図では2本であるが、1本でも3本以上でもよい。配線2の数は、同図では6本であるが、6本に限られない。配線2は、例えば断面矩形の平板型の導体からなるが、断面円形等の他の形状でもよい。平板型の導体は、導電性シート5との電気的接続を図る上で好ましい。配線2は、例えば、銅に金めっきを施したものを用いることができる。
【0022】
配線基材4は、接着層付き絶縁層3aの一方の面に複数の配線2を配置し、一対の接着層付き絶縁層3a、3bで複数の配線2を挟むように加熱ロールで加圧することで形成される。絶縁層3a、3bは、例えばポリエステルテレフタレート(PET)等を用いることができる。上側の絶縁層3bには、図2に示すように、グランド線2bを露出させる溝30が長手方向Dに沿って形成されている。
【0023】
溝30は、開口部の一例であり、長穴、円形等の穴でもよい。開口部の数は、1つのグランド線2bに対して1つでもよいが、端部近傍の領域にそれぞれ1つでもよく、端子部近傍の領域に長手方向Dに沿ってそれぞれ複数の開口部が形成されていてもよい。開口部の位置は、端部近傍の領域以外の領域でもよい。
【0024】
(導電性シートの構成)
導電性シート5は、一方の面側に絶縁層50、他方の面側に導電性接着層52が設けられ、絶縁層50同士が向かい合うように折り返された状態で配線基材4の溝30を含む絶縁層3上に配置され、折り返されていない部分の導電性接着層52が溝30を介してグランド線2bに電気的に接続される。
【0025】
具体的には、導電性シート5は、絶縁層50と、絶縁層50上に設けられた金属層51と、金属層51上に設けられた導電性接着層52とを備える。
【0026】
導電性シート5は、図2に示すように、配線基材4側に位置する基部5aに対して絶縁層50同士が向かい合うように折返し部5bが折り返された状態で溝30を含む配線基材4の接着層付き絶縁層3bの表面に配置される。そして、図2に示すように、基部5aのグランド線2bに対向する2ヵ所の位置のコンタクト部5c及びその周辺を熱圧着プレス機で加圧することにより、図4(a)に示すように、導電性接着層52が溝30に押し込まれ、導電性接着層52がグランド線2bに熱圧着されて電気的に接続される。
【0027】
なお、導電性シート5をグランド線2bに電気的に接続する方法は、熱圧着に限られず、加熱ローラを用いた方法や超音波接合等の他の方法でもよい。超音波接合は、導電性シート5が金属層のみ、又は金属層と導電性接着層からなる場合に有効な方法である。また、熱圧着プレス機の上プレートのプレス面に溝30に入る突起を設けてもよい。これにより、導電性シート5の導電性接着層52が溝30に押し込まれ易くなり、グランド線2bとの電気的接続がより確実となる。
【0028】
導電性シート5は、導電性シート5を介さずにシールド部材6を直接配線基材4に接続する構成と比較し、同一条件で貼りつけた場合であっても、シールド部材6とグランド線2b間の電気抵抗が抑制される特性を有するものを使用することが好ましい。例えば、導電性シート5は、シールド部材6よりも厚みが薄いのが好ましい。また、導電性シート5の金属層51は、シールド部材6の金属層61よりも延性が大きく、シールド部材6の金属層61よりも厚さが薄いのが好ましい。
【0029】
具体的には、導電性シート5の全体の厚さは、本実施の形態ではシールド部材6よりも厚さの薄い約30μmのものを用いる。導電性シート5の絶縁層50は、例えば厚さ10μm程度のPETを用いることができる。金属層51は、シールド部材6の金属層61よりも延性が大きい、例えば、銀等からなる。また、金属層51は、シールド部材6の金属層61よりも厚さの薄い、例えば0.1μm程度であり、表面抵抗は200mΩ/□程度のものを用いることができる。導電性接着層52は、例えば、ポリエステル系の熱可塑性樹脂に銀コート銅粉を混合した厚さ20μm程度のものを用いることができる。導電性接着層52の接着強度は、例えば4N/cm(対PET)程度のものを用いることができる。
【0030】
導電性シート5の数や長手方向Dの位置は特に限定されないが、配線基材4におけるグランド線2bの長手方向Dの端部、好ましくは両端部に設けられていることが好ましい。配線基材4の端部近傍の領域以外の領域、例えば中央部に設けられている場合と比較して、電子機器100のグランドに近い位置でシールド部材6を接地できるため、より高いシールド効果が期待できる。
【0031】
(シールド部材の構成)
シールド部材6は、配線基材4及び導電性シート5上に配置されて導電性シート5の折り返された部分の導電性接着層52に接着され、折り返された部分を介してグランド線2bに電気的に接続される。
【0032】
具体的には、シールド部材6は、絶縁層60と、絶縁層60の一方の面に設けられた金属層61と、金属層61の表面に部分的に設けられた絶縁性接着層62とを備える。絶縁層60は、例えば厚さ10〜20μm程度のPET等を用いることができる。金属層61は、例えば厚さ10〜20μm程度のアルミニウム等を用いることができる。絶縁性接着層62は、例えば厚さ10〜20μm程度の熱硬化型接着剤を用いることができる。
【0033】
シールド部材6は、端子部を除く配線基材4の周囲及び導電性シート5を覆うように設けられるとともに導電性シート5の折返し部5bの導電性接着層52に接着され、折返し部5b及び基部5aを介してグランド線2bに電気的に接続される。
【0034】
図5は、シールド部材6の要部平面図である。シールド部材6の絶縁性接着層62は、長手方向Dに対して交差した方向に延びる互いに平行な複数のラインパターン620からなる。すなわち、絶縁性接着層62は、ラインパターン620が長手方向Dに直交する幅方向に繰り返された繰り返しパターンとなっている。このパターンは、シールド部材6を導電性シート5の折返し部5bに貼り付けた際に、電気的な導通がとれればよいことから、図5以外の繰り返しパターンであってもよい。例えば、長手方向Dに延びる互いに平行な複数のラインパターンでもよく、折返し部5bを全て覆わない大きさのドットからなるドットパターンや他の繰り返しパターンでもよい。更には、電気的な導通がとれるのであれば、繰り返しパターンでなくてもよい。
【0035】
絶縁性接着層62として長手方向Dに交差する方向に延びる複数のラインパターン620を用いることにより、ラインパターン620が設けられていない金属層61の領域が導電性シート5の導電性接着層52に接触してシールド部材6の金属層61をグランド線2bに電気的に接続することができる。また、シールド部材6を貼り付ける際の、折返し部5bに対する正確な位置決めが不要になる。また、シールド部材6を絶縁性接着層62により配線基材4に密着させることにより、シールド特性が安定する。
【0036】
(配線部材の製造方法)
次に、配線部材1の製造方法の一例について説明する。
【0037】
(1)配線基材の形成
まず、接着層付き絶縁層3bの端部に対応する領域を打ち抜き等で切欠き窓を開けておき、複数の配線2が形成された接着層付き絶縁層3aと複数の配線2を覆う接着層付き絶縁層3bとを加熱ローラによって接合する。次に、絶縁層3bのうちグランド線2bを覆っている部分を長手方向Dに沿って剥離する。このようにして配線基材4が形成される。
【0038】
(2)導電性シートの配置
次に、導電性シート5を端子部20a、20bの近傍の領域にそれぞれ配置する。次に、コンタクト部5cを含む領域を温度120°、圧力0.5〜1MPa、時間5〜10秒の条件で熱圧着によって導電性シート5を絶縁層3bの表面に接合するとともに、導電性接着層52をグランド線2bに接触させて電気的に接続する。次に、導電性シート5の端子部20a、20bの側と反対側の部分を折り返して折返し部5bを形成する。なお、折返し部5bがコンタクト部5cを全て覆わない大きさである場合には、折返し部5bを形成した後、覆われていないコンタクト部5cを熱圧着してもよい。また、折り返した状態を維持するために、折返し部5bの絶縁層50側に両面テープ等の接着部材を適用して、折返し部5bが元の状態に戻らないように固定してもよい。
【0039】
(3)シールド部材による被覆
導電性シート5が配置された配線基材4の端子部20a、20bを除く全体をシールド部材6で覆い、加熱ローラにてシールド部材6を導電性シート5及び配線基材4に接合する。以上のようにして配線部材1が形成される。
【0040】
(本実施の形態の作用・効果)
導電性シートを用いずに、金属層の一方の面に導電性接着層を形成したシールド部材を用いた場合、その導電性接着層を利用してシールド部材を直接、導電性シートを介さずにグランド線に接着させる構成を採用することが考えられる。この場合、開口部の形成に追従させるようにするため、金属層を薄くする必要があるが、シールド特性の低下を招くおそれがある。一方、所望のシールド特性を得るためにシールド部材の金属層を厚くすると、開口部の凹凸形状に追従し難くなり、接地インピーダンスが増加するおそれがある。よって、このような構成を採用しがたい場合がある。
【0041】
そこで、シールド部材の金属層として比較的厚いものを用い、使用するシールド部材よりも開口部の形状に追従させ易い特性の両面導電性テープ(表裏に導電性接着層を有し、表裏間で導電性を有するテープ)をシールド部材と開口部との間に介在させ、両面導電性テープを介してシールド部材をグランド線に電気的に接続する構成を採用することが考えられる。この場合、所望の性能を有する両面導電性テープの入手が困難であったり、所望のコストで入手できない場合がある。よって、このような構成も採用しがたい場合がある。
【0042】
そこで、本実施の形態のように、一方の面側が絶縁層50で他方の面側が導電性接着層52を有する導電性シート5を用いてシールド部材6を配線基材4のグランド線2bに接地することにより、シールド部材6とグランド線2bとを導電性シート5を介さずに電気的に接続する構成と比較して、シールド部材6の制約が少なくなる。すなわち、シールド部材6の厚みが厚いものを用いることにより優れたシールド特性を発揮することができる。一方、導電性シート5の金属層51は、シールド部材6の金属層61よりも厚さが薄いため、導電性シート5とグランド線2bとの接地インピーダンスを小さくすることができる。
【0043】
(シールド部材の変形例)
シールド部材6は、配線基材4の周囲を覆うなどすることで接着剤を用いなくても配線基材4に近接した状態で配置できるのであれば、接着層を有しないシールド部材6を用いてもよい。また、シールド部材6は、導電性シート5が設けられた側にのみ設けられてもよい。また、シールド部材6は、配線基材4の端子部20、20b周辺を除き配線基材4全体を覆うのが好ましいが、配線基材4の一部のみの周囲を覆う構成、例えば、端部近傍の領域のみに設けられてもよく、端部近傍の領域以外の領域に設けられてもよい。また、接着層として導電性接着層を金属層61の全面に又は部分的に形成してもよい。
【0044】
(導電性シートの変形例)
図6(a)〜(d)は、導電性シート5の変形例を示す斜視図である。導電性シート5は、図6(a)に示すように、端子部20a側に折返し部5bを配置してもよい。一方の端子部20bも同様である。また、導電性シート5は、図6(b)に示すように、長手方向Dの両端側にそれぞれ折返し部5bを設けてもよい。また、導電性シート5は、図6(c)に示すように、長手方向Dに直交する方向の向きに配置し、両端側にそれぞれ折返し部5bを設けてもよい。また、導電性シート5は、図6(d)に示すように、折返し部5bを基部5aと同じ大きさとしてもよい。
【0045】
導電性シート5は、全体がシールド部材6で覆われていれば、一部分のみが覆われている場合と比較してノイズを抑制できることから、全体がシールド部材6で覆われていることが好ましい。なお、導電性シート5とシールド部材6とが重なった部分が二重シールドの機能を果たすことから、導電性シート5全体がシールド部材6で覆われていなくてもよい。
【0046】
導電性シート5の辺のうち、どこを折り返してもよいが、一方の端子部20a、20b側から他方の端子部20b、20a側に向けて折り返せは、複数のグランド線が存在する場合であっても、各グランド線への接地が確実にとれるため好ましい。
【0047】
導電性シート5の折り返す量も任意であるが、開口部に追従させる側の基部5aを折返し部5bよりも広くした方が、シールド部材6とグランド線2b間の接触面積が多くなるため、シールド部材6とグランド線2b間のインピーダンスを低減し易くなり好ましい。
【実施例】
【0048】
実施例のサンプルとして、本実施の形態に対応するものを作製した。すなわち、配線基材4は、銅の表面を金めっきしたものを、接着層付きのPETからなる絶縁層3a、3bで挟んだ構成を用いた。導電性シート5の絶縁層50は、PETシートを用い、導電性接着層52は、ポリエステル系の熱可塑性樹脂に銀コート銅粉を混合したものを用い、金属層51は、銀からなる厚さが約0.1μmのものを用いた。シールド部材6は、絶縁層60として厚さ15μmのPETシートを用い、金属層61として厚さ15μmのアルミニウムを用い、絶縁性接着層62として厚さ15μmのものを用いた。
【0049】
導電性シート5は、図7に示す熱圧着プレス機で配線基材4に接合し、シールド部材6は加熱ローラで貼り付けた。熱圧着プレス機200は、上プレート201と、下プレート202と、下プレート202の上に配置された弾性部材203とを備える。弾性部材203は、例えば硬度30程度のスポンジが好ましい。
【0050】
(環境試験)
弾性部材203の上に配線基材4を配置し、配線基材4の上に導電性シート5を配置し、上プレート201を98℃又は110℃に加熱し、下プレート202を予め定められた温度(例えば100℃〜110℃)に加熱しつつ、上プレート201を下方に向けて予め定められた圧力(例えば0.35Mpa)で予め定められた時間(例えば2秒)加圧した。上記のようにして5つのサンプルを作製し、環境試験(温度55℃・湿度95%RH)の前後におけるグランド線とシールド部材間の抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
環境試験後のグランド線とシールド部材間の抵抗値は、環境試験前の抵抗値に対して3〜5Ω増えた程度であり、目標値を満たした。
【0053】
(抵抗値の平均値と標準偏差)
弾性部材203の上に配線基材4を配置し、配線基材4の上に導電性シート5を配置し、上プレート201及び下プレート202を予め定められた温度(例えば100℃〜110℃)に加熱しつつ、上プレート201を下方に向けて予め定められた圧力(例えば0.35Mpa)で予め定められた時間(例えば2秒)加圧した。
【0054】
上記のようにして5つのサンプルを作製してグランド線とシールド部材間の抵抗値を測定し、その測定結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
(比較例)
比較例は、導電性テープなしとし、接着層付きシールド部材を加熱ローラを用いて直接配線基材4のグランド線2bに接続した。
【0057】
8つのサンプルを作製してグランド線とシールド部材間の抵抗値を測定し、その測定結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
(ノイズ測定結果)
比較例のサンプルと本実施例のサンプルをそれぞれプリンタに搭載し、プリンタを動作された状態でノイズ測定を行った。その結果を表4に示す。表4は、VCCI規格値に対する測定結果であり、測定周波数帯域のうち最もマージン(余裕度)が少ない周波数(220Mhz付近)における、VCCIのノイズ規格値に対するマージンを示している。なお、規格値は、QP値(準尖頭値/Quasi−peak)に対するマージンを表しており、220Mhzは、FFCに伝送される基本周波数の4次高調波に相当する周波数である。
【0060】
【表4】
【0061】
(評価結果)
抵抗については、本実施例は、比較例と比べて抵抗値の平均値及び標準偏差(ばらつき)がともに大幅に改善されている。ノイズについては、比較例では規格値に対して2.8dBのマージンしかなかったが、本実施例では7.5dBのマージンが確保できている。
【0062】
なお、本発明の実施の形態は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々に変形、実施が可能である。
【0063】
また、本発明の要旨を変更しない範囲内で、上記実施の形態の構成要素の一部を省くことが可能であり、上記実施の形態のフローにおいて、ステップの追加、削除、変更、入替え等が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…配線部材、2…配線、2a…信号線、2b…グランド線、
3、3a、3b…接着層付き絶縁層、4…配線基材、5…導電性シート、5a…基部、
5b…折返し部、5c…コンタクト部、6…シールド部材、20a、20b…端子部、
30…溝、50…絶縁層、51…金属層、52…導電性接着層、60…絶縁層、
61…金属層、62…絶縁性接着層、100…電子機器、110A…第1の基板、
110B…第2の基板、111A…第1のコネクタ、111B…第2のコネクタ、
200…熱圧着プレス機、201…上プレート、202…下プレート、
203…弾性部材、620…ラインパターン
【要約】
【課題】シールド部材とグランド線とを導電性シートを介さずに電気的に接続する構成と比較して、シールド部材の制約の少ない配線部材及び電子機器を提供する。
【解決手段】配線部材1は、グランド線2bを含む複数の配線2を被覆するとともにグランド線2bを露出させる溝30が形成された絶縁層3を有する配線基材4と、一方の面側に絶縁層50、他方の面側に導電性接着層52が設けられ、絶縁層50同士が向かい合うように折り返された状態で配線基材4の溝30を含む絶縁層3上に配置され、折り返されていない部分の導電性接着層52が溝30を介してグランド線2bに電気的に接続された導電性シート5と、配線基材4及び導電性シート5上に配置されて導電性シート5の折り返された部分の導電性接着層52に接着され、折り返された部分を介してグランド線2bに電気的に接続されたシールド部材6とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7