【実施例】
【0061】
ベンザゾール化合物の調製
(製造例1−ベンザゾール化合物(A)の調製)
ポリリン酸(オルトリン酸換算で濃度116質量%)58.5gに、アルゴン雰囲気下、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン四塩酸塩4.0gと、4−ブロモ安息香酸5.8gとを加え、60℃で30分間攪拌した後、さらに120℃で5時間撹拌した。得られた反応液を水5L中へ投入し再沈させて、粉末を吸引ろ過により取り出した。この粉末を水で十分に洗浄した後、真空乾燥して、表1に示すベンザゾール化合物(A)を得た。
【0062】
(製造例2−ベンザゾール化合物(B)の調製)
ポリリン酸(オルトリン酸換算で濃度116質量%)58.5gに、アルゴン雰囲気下、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン四塩酸塩4.0gと、4−(ブロモメチル)安息香酸6.2gとを加え、60℃で30分間攪拌した後、さらに120℃で5時間撹拌した。得られた反応液を水5L中へ投入し再沈させて、粉末を吸引ろ過より取り出した。この粉末を水で十分に洗浄した後、真空乾燥して、表1に示すベンザゾール化合物(B)を得た。
【0063】
(製造例3−ベンザゾール化合物(C)の調製)
製造例1で得たベンザゾール化合物(A)4.7gに、アルゴン雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加え、室温でしばらく撹拌した後、水素化ナトリウム0.5gを加えた。その後、1−ヨードブタン3.7gとN,N−ジメチルホルムアミド30mLとの混合液を滴下して、室温で17時間撹拌した後、水5L中へ投入し再沈させて、白色固体を得た。この白色固体5.0gにメタノール100mLを加えて加熱還流した後、室温まで冷却し、析出した固体を吸引ろ過して、表1に示すベンザゾール化合物(C)を得た。
【0064】
(製造例4−ベンザゾール化合物(D)の調製)
製造例1で得たベンザゾール化合物(A)4.7gに、アルゴン雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加え、室温でしばらく撹拌した後、水素化ナトリウム0.5gを加えた。その後、1−ヨードドデカン5.9gとN,N−ジメチルホルムアミド30mLとの混合液を滴下して、室温で17時間撹拌した後、水5L中へ投入し再沈させて、白色固体を得た。この白色固体5.0gにメタノール100mLを加えて加熱還流した後、室温まで冷却し、析出した固体を吸引ろ過して、表1に示すベンザゾール化合物(D)を得た。
【0065】
(製造例5−ベンザゾール化合物(E)の調製)
ポリリン酸(オルトリン酸換算で濃度116質量%)58.5gに、アルゴン雰囲気下、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン四塩酸塩4.0gと、4−ブロモフェニル酢酸6.2gとを加え、60℃で30分間攪拌した後、さらに120℃で5時間撹拌した。この反応液を水5L中へ投入し再沈させて、粉末を吸引ろ過より取り出した。この粉末を水で十分に洗浄した後、真空乾燥した。次に、この粉末5.0gに、アルゴン雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加え、室温でしばらく撹拌した後、水素化ナトリウム0.5gを加えた。その後、1−ヨードブタン3.7gとN,N−ジメチルホルムアミド50mLとの混合液を滴下して、室温で17時間撹拌した後、吸引ろ過して得られた母液を水5L中へ投入し再沈させて、白色固体を得た。この白色固体6.95gにメタノール100mLを加えて加熱還流した後、室温まで冷却し、析出した固体を吸引ろ過して、表1に示すベンザゾール化合物(E)を得た。
【0066】
(製造例6−ベンザゾール化合物(F)の調製)
ポリリン酸(オルトリン酸換算で濃度116質量%)58.5gに、アルゴン雰囲気下、4,6−ジアミノレゾルシノール・二塩酸塩3.0gと、4−ブロモ安息香酸5.8gとを加え、60℃で30分間攪拌した後、さらに120℃で5時間撹拌した。この反応液を水5L中へ投入し再沈させて、粉末を吸引ろ過より取り出した。この粉末を水で十分に洗浄した後、真空乾燥して、表1に示すベンザゾール化合物(F)を得た。
【0067】
(製造例7−ベンザゾール化合物(G)の調製)
ポリリン酸(オルトリン酸換算で濃度116質量%)58.5gに、アルゴン雰囲気下、4,6−ジアミノレゾルシノール・二塩酸塩3.0gと、4−ブロモフェニル酢酸6.2gとを加え、60℃で30分間攪拌した後、さらに120℃で5時間撹拌した。得られた反応液を水5L中へ投入し再沈させて、粉末を吸引ろ過より取り出した。この粉末を水で十分に洗浄した後、真空乾燥して、表1に示すベンザゾール化合物(G)を得た。
【0068】
(製造例8−ベンザゾール化合物(H)の調製)
ポリリン酸(オルトリン酸換算で濃度116質量%)58.5gに、アルゴン雰囲気下、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール二塩酸塩3.4gと、4−ブロモ安息香酸5.8gとを加え、60℃で30分間攪拌した後、さらに120℃で5時間撹拌した。得られた反応液を水5L中へ投入し再沈させて、粉末を吸引ろ過より取り出した。この粉末を水で十分に洗浄した後、真空乾燥して、表1に示すベンザゾール化合物(H)を得た。
【0069】
(製造例9−ベンザゾール化合物(I)の調製)
ポリリン酸(オルトリン酸換算で濃度116質量%)58.5gに、アルゴン雰囲気下、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン四塩酸塩4.0gと、5−ブロモ−2−ピリジンカルボン酸5.9gとを加え、60℃で30分間攪拌した後、さらに120℃で5時間撹拌した。得られた反応液を水5L中へ投入し再沈させて、粉末を吸引ろ過より取り出した。この粉末を水で十分に洗浄した後、真空乾燥した。次いで、得られた粉末5.0gに、アルゴン雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加え、室温でしばらく撹拌した後、水素化ナトリウム0.5gを加えた。その後、1−ヨードドデカン5.9gとN,N−ジメチルホルムアミド50mLとの混合液を滴下して、室温で17時間撹拌した後、水5L中へ投入し再沈させて、白色固体を得た。この白色固体5.0gにメタノール100mLを加えて加熱還流した後、室温まで冷却し、析出した固体を吸引ろ過して、表1に示すベンザゾール化合物(I)を得た。
【0070】
【表1】
【0071】
オリゴチオフェンの調製
表2に示すオリゴチオフェン(J)〜(M)を「Synthetic Metals」、2001年、第119巻、p67−p68に記載された方法に従い調製した。
【0072】
【表2】
【0073】
(実施例1)
アルゴン雰囲気下、ベンザゾール化合物(A)23mgと、オリゴチオフェン(J)262mgと、さらに触媒としてパラジウム触媒(Pd(PPh
3)
2Cl
2)3mgおよび塩化リチウム4mgとをフラスコに加えた後、クロロベンゼン3mLを注入し、3時間145℃で加熱還流した。その後、反応溶液にジエチルエーテルおよび飽和食塩水を加えて分液操作を行い、有機層を分離し、回収した有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥させた。その後、溶媒を留去し、残留物をカラムクロマトグラフィー (シリカゲル:富士シリシア化学製「NH−DM1020」を使用、溶出液:トルエン/酢酸エチル=1/1(v/v))を用いて分離精製して、油状物質を得た。
次いで、得られた油状物質90mgと、N−ブロモこはく酸イミド11mgとを5mLバイアルに入れ、テトラヒドロフラン1mLを加えて溶かした後、空気中、−10℃に保ち、145分間撹拌した。その後、溶媒を留去し、残留物にジエチルエーテルおよび飽和食塩水を加えて分液操作を行い、有機層を分離し、回収した有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥させた。
【0074】
次に、乾燥した有機層に、アルゴン雰囲気下、オリゴチオフェン(K)263mgと、さらに触媒としてパラジウム触媒(Pd(PPh
3)
2Cl
2)2mgおよび塩化リチウム9mgとを加えた後、クロロベンゼン10 mLを注入し、5時間135℃で加熱還流した。その後、反応溶液にジエチルエーテルおよび飽和食塩水を加えて分液操作を行い、有機層を分離し、回収した有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥させた。その後、溶媒を留去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:富士シリシア化学製「NH−DM1020」を使用、溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=19/1(v/v)からヘキサン/酢酸エチル=4/1(v/v)まで徐々に極性を上げていった)で分離精製し、さらに得られた油状物質をGPCカラム(日本分析工業製「JAIGEL−2H」)を用いてリサイクル分取(装置:日本分析工業製「LC−9201」、溶出液:トルエン)して、下記に示す構造を有する発光性化合物(N)を得た。
【0075】
【化10】
【0076】
(実施例2)
実施例1において、ベンザゾール化合物(A)に代えてベンザゾール化合物(B)25mgを用いたこと以外は、実施例1と同様にリサイクル分取の手前まで操作して(GPCカラムによるリサイクル分取は行わない)、GPCカラムによるリサイクル分取に供する前の油状物質(ベンザゾール化合物(B)の両端に6量体からなるオリゴチオフェン分子鎖が結合した化合物)を得た。
得られた油状物質100mgと、N−ブロモこはく酸イミド11mgとを5mLバイアルに入れ、テトラヒドロフラン2mLを加えて溶かした後、空気中、−10℃に保ち、145分間撹拌した。その後、溶媒を留去し、残留物にジエチルエーテルおよび飽和食塩水を加えて分液操作を行い、有機層を分離し、回収した有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥させた。
【0077】
次に、乾燥した有機層に、アルゴン雰囲気下、オリゴチオフェン(K)263mgと、さらに触媒としてパラジウム触媒(Pd(PPh
3)
2Cl
2)2mgおよび塩化リチウム9mgとを加えた後、クロロベンゼン10 mLを注入し、5時間135℃で加熱還流した。その後、反応溶液にジエチルエーテルおよび飽和食塩水を加えて分液操作を行い、有機層を分離し、回収した有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥させた。その後、溶媒を留去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:富士シリシア化学製「NH−DM1020」を使用、溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=19/1(v/v)からヘキサン/酢酸エチル=4/1(v/v)まで徐々に極性を上げていった)で分離精製し、さらに得られた油状物質をGPCカラム(日本分析工業製「JAIGEL−2H」)を用いてリサイクル分取(装置:日本分析工業製「LC−9201」、溶出液:トルエン) して、下記に示す構造を有する発光性化合物(O)を得た。
【0078】
【化11】
【0079】
(実施例3)
実施例1において、ベンザゾール化合物(A)に代えてベンザゾール化合物(C)29mgを用い、オリゴチオフェン(J)に代えてオリゴチオフェン(L)313mgを用い、オリゴチオフェン(K)に代えてオリゴチオフェン(M)318mgを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、下記に示す構造を有する発光性化合物(P)を得た。
【0080】
【化12】
【0081】
(実施例4)
実施例2において、ベンザゾール化合物(B)に代えてベンザゾール化合物(D)40mgを用い、オリゴチオフェン(J)に代えてオリゴチオフェン(L)313mgを用い、オリゴチオフェン(K)に代えてオリゴチオフェン(M)318mg(×2回)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、下記に示す構造を有する発光性化合物(Q)を得た。
【0082】
【化13】
【0083】
(実施例5)
実施例3において、ベンザゾール化合物(C)に代えてベンザゾール化合物(E)30mgを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、下記に示す構造を有する発光性化合物(R)を得た。
【0084】
【化14】
【0085】
なお、実施例5で得られた発光性化合物(5)の
1Hスペクトルデータは、以下の通りであった。
1H-NMR (400 MHz, テトラヒドロフラン-d8) ; −0.23 (s, 12H), −0.16 (s, 12H), −0.13 (s, 120H), 0.38 (s, 12H), 0.40 (s, 12H), 0.44 (s, 12H), 0.45 (s, 120H), 0.60-076 (m, 96H), 0.83-0.89 (m, 78H), 1.27 (br s, 436H), 1.57−1.80 (m, 52H), 2.62−2.70 (m, 48H), 4.13 (br s, 4H), 4.46 (br s, 4H), 6.96 (d, J = 5.1 Hz, 2H), 7.10−7.15 (m, 21H), 7.25 (s, 2H), 7.35 (d, J = 5.1 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 7.57 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 9.15 (s, 1H).
MALDI−TOFMS (DIT) m/z 11222.81 (M+)
【0086】
(実施例6)
実施例4において、ベンザゾール化合物(D)に代えてベンザゾール化合物(E)30mg(×2回)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、下記に示す構造を有する発光性化合物(S)を得た。
【0087】
【化15】
【0088】
(実施例7)
実施例3において、ベンザゾール化合物(C)に代えてベンザゾール化合物(F)24mgを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、下記に示す構造を有する発光性化合物(T)を得た。
【0089】
【化16】
【0090】
(実施例8)
実施例3において、ベンザゾール化合物(C)に代えてベンザゾール化合物(G)25mgを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、下記に示す構造を有する発光性化合物(U)を得た。
【0091】
【化17】
【0092】
(実施例9)
実施例3において、ベンザゾール化合物(C)に代えてベンザゾール化合物(H)25mgを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、下記に示す構造を有する発光性化合物(V)を得た。
【0093】
【化18】
【0094】
(実施例10)
実施例4において、ベンザゾール化合物(D)に代えてベンザゾール化合物(I)40mgを用いたこと以外は、実施例4と同様にして、下記に示す構造を有する発光性化合物(W)を得た。
【0095】
【化19】
【0096】
(実施例11〜20)
上記実施例1〜10で得られた発光性化合物(N)〜(W)を用いて、一対の金電極間を接続し、単一分子発光デバイスを作製する。
すなわち、まず、各実施例で得られた発光性化合物を、不活性ガス雰囲気下、テトラヒドロフラン中で、N−ブロモこはく酸イミドと反応させてブロモ化した後、n−ブチルリチウムと反応させることにより、各発光性化合物の両末端(オリゴチオフェン分子鎖の末端)のチオフェン環のアルファ位をリチオ化する。次いで、Bu
3SnClを添加することにより、両末端をトリブチルスズ化させた後、4−(2−シアノエチルチオ)ブロモベンゼンを加えてカップリング反応させ、各発光性化合物の両末端に接続部位として−SCH
2CH
2CN基を導入する。なお、4−(2−シアノエチルチオ)ブロモベンゼンは、「Organic Letters」、2001年、第3巻、p271−p273に記載された方法に従い調製することとする。
【0097】
次に、上記で得られた接続部位を導入した各発光性化合物に、ジアザビシクロウンデセンを加えることにより両末端のシアノエチル基を脱保護化してチオレートに変換した後、発光性化合物が10μmol/Lの濃度となるように溶媒(クロロベンゼン)中に溶解させて電極結合溶液を調製する。この電極結合溶液に、電極間の距離が表3に示す通りである一対の金電極を一定時間浸漬した後、窒素気流下、室温で溶媒を除去することで、単一分子発光デバイスを作製する。
【0098】
【表3】