特許第5741833号(P5741833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5741833
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】レーザレーダ装置及びレーザレーダ法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20060101AFI20150611BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   G01S17/89
   G01C3/06 140
   G01C3/06 120Q
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-105365(P2011-105365)
(22)【出願日】2011年5月10日
(65)【公開番号】特開2012-237592(P2012-237592A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】高野 武寿
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/024683(WO,A1)
【文献】 特開2006−266801(JP,A)
【文献】 特開平11−038141(JP,A)
【文献】 特開平11−337636(JP,A)
【文献】 特開2004−280372(JP,A)
【文献】 特開2006−194617(JP,A)
【文献】 特開2010−096574(JP,A)
【文献】 特開2002−090456(JP,A)
【文献】 特開平06−194442(JP,A)
【文献】 特表2002−531870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/00−7/51
G01S13/00−13/95
G01S17/00−17/95
G01C3/00−3/32
G01B11/00−11/30
G08G1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定用レーザ光を測定空間に走査しながら投光し、前記測定用レーザ光の戻り光を受光器で受光することで得られる点データの分布から海上の検知対象物の検知を行うレーザレーダ装置であって、
複数の前記点データから鉛直方向に連続して配列される複数の前記点データからなる連続点データ群を抽出し、抽出した前記連続点データ群のうち高さ距離が海上に発生する波の想定最大高さ距離を上限として設定される除外閾値以下の連続点データ群に含まれる前記点データを除外して前記検知対象物の検知を行う信号処理手段を備えることを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
水平方向の移動速度より鉛直方向の移動速度を速めて前記測定用レーザ光を走査する走査手段を備えることを特徴とする請求項1記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記走査手段は、
前記測定用レーザ光を鉛直方向に走査するポリゴンスキャナと、
前記測定用レーザ光を水平方向に走査するガルバノスキャナと
を備えることを特徴とする請求項2記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
測定用レーザ光を測定空間に走査しながら投光し、前記測定用レーザ光の戻り光を受光器で受光することで得られる点データの分布から海上の検知対象物の検知を行うレーザレーダ法であって、
複数の前記点データから鉛直方向に連続して配列される複数の前記点データからなる連続点データ群を抽出し、抽出した前記連続点データ群のうち高さ距離が海上に発生する波の想定最大高さ距離を上限として設定される除外閾値以下の連続点データ群に含まれる前記点データを除外して前記検知対象物の検知を行うことを特徴とするレーザレーダ法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ装置及びレーザレーダ法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、海上の船舶を検知するために、三次元レーザレーダ装置が用いられている。
この三次元レーザレーダ装置は、測定空間に対して測定用レーザ光を走査しながら投光し、測定用レーザ光の戻り光を受光することによって得られる点データの分布から海上の船舶を検知する。
より詳細には、三次元レーザレーダ装置は、測定用レーザ光の戻り光が受光されるか否かによって検知対象物の有無を検知し、また測定用レーザ光を射出してから戻り光が受光されるまでの時間から検知した検知対象物までの距離を計測すると共に測定用レーザ光の射出角度から検知対象物の方位を計測する。
【0003】
このような三次元レーザレーダ装置では、検知対象物以外の領域で測定用レーザ光が反射して発生する戻り光と、船舶等の検知対象物で測定用レーザ光が反射して発生する戻り光とを識別することができない。
一方、測定用レーザ光は、波の立ち上がり領域や波が崩れる際に生じる白波等の波の一部で反射される場合がある。
このため、三次元レーザレーダ装置は、波の一部で測定用レーザ光が反射して発生した戻り光を識別することができず、波の一部を船舶であると誤検知する可能性がある。
【0004】
このような誤検知は、海面よりも下方をマスキングして存在しないものとすることによって防ぐことが可能である。このため、三次元レーザレーダ装置において、海面高さに基づいて設定される基準面を予め記憶し、この基準面よりも下方の点データを無視することによって波の一部を船舶と誤検知することを防ぐことが考えられる。
【0005】
ところが、上述のように波の一部で反射される場合を除き基本的に測定用レーザ光が海面に対して全反射するため、海面では三次元レーザレーダ装置に到達する戻り光が発生しない。このため、三次元レーザレーダ装置では、海面位置の計測を行うことができない。一方で、周知のように潮の満ち引きによって海面の高さは常に変動してしまう。
このため、特許文献1では、GPSや電波時計、ジャイロコンパス等を用いて潮位を算出して、上述の基準面を常に補正する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−281380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、潮位を算出するためには、上述のようにGPS、電波時計及びジャイロコンパス等の機器を三次元レーザレーダ装置に搭載する必要が生じ、三次元レーザレーダ装置の複雑化を招くこととなる。
つまり、このような三次元レーザレーダ装置では、GPS、電波時計及びジャイロコンパスの各々が正常に作動していなければ正確に潮位を算出することができないため、装置の信頼性が低下する。
【0008】
また、GPS、電波時計及びジャイロコンパス等を用いて算出される海面位置は、三次元レーザレーダに対する海面位置ではなく、陸地に対する海面位置(潮位)である。このため、電波時計及びジャイロコンパス等の機器を搭載する三次元レーザレーダ装置は、陸地に対して固定する必要がある。
仮に上記三次元レーザレーダ装置を船舶等の移動体に搭載した場合には、正確に海面位置を算出することができずに正確にマスキングを行うことが難しくなり、他の船舶等を検知できない恐れがある。
【0009】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、三次元レーザレーダ装置及び方法において、海面位置に関わらず、確実に検知対象物を検知可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0011】
第1の発明は、測定用レーザ光を測定空間に走査しながら投光し、上記測定用レーザ光の戻り光を受光器で受光することで得られる点データの分布から海上の検知対象物の検知を行うレーザレーダ装置であって、鉛直方向に連続して配列される複数の上記点データからなる連続点データ群のうち高さ距離が海上に発生する波の想定最大値を上限として設定される除外閾値以下の連続点データ群に含まれる上記点データを除外して上記検知対象物の検知を行う信号処理手段を備えるという構成を採用する。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、水平方向の移動速度より鉛直方向の移動速度を速めて上記測定用レーザ光を走査する走査手段を備えるという構成を採用する。
【0013】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記走査手段は、上記測定用レーザ光を鉛直方向に走査するポリゴンスキャナと、上記測定用レーザ光を水平方向に走査するガルバノスキャナとを備えるという構成を採用する。
【0014】
第4の発明は、 測定用レーザ光を測定空間に走査しながら投光し、上記測定用レーザ光の戻り光を受光器で受光することで得られる点データの分布から海上の検知対象物の検知を行うレーザレーダ法であって、鉛直方向に連続して配列される複数の上記点データからなる連続点データ群のうち高さ距離が海上に発生する波の想定最大値を上限として設定される除外閾値以下の連続点データ群に含まれる上記点データを除外して上記検知対象物の検知を行うという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
三次元レーザレーダ装置では、測定用レーザ光が検知対象物に照射された場合に発生する戻り光を受光することによって検知対象物を検知するが、当該戻り光は海面に形成される波の一部(波の立ち上がり領域や波の一部が崩れて形成される白波等)に測定用レーザ光が照射された場合にも発生する。
ただし、通常、海上における波は、三次元レーザレーダ装置の検知対象物でとなる船舶等と比較して高さが低い。このため、このような波の一部は、当然のことながら船舶等と比較してその高さが僅かなものとなる。
なお、波の進行方向としては、三次元レーザレーダ装置に対して前後方向である場合と、三次元レーザレーダ装置に対して左右方向である場合とが考えられる。測定用レーザ光が照射された場合に三次元レーザレーダ装置に到達する戻り光が発生する領域は、波の進行方向によって大きさが変化する。ただし、この領域の高さは、波の大きさを超えることはなく、船舶等と比較して十分に小さい。つまり、三次元レーザレーダ装置において検知されてしまう波の一部領域の高さは、波の進行方向に関わらず船舶等と比較して常に小さなものとなる。
【0016】
そして、本発明は、このような知見に基づき、鉛直方向に連続して配列される複数の点データがグルーピングされて形成される連続点データ群のうち当該連続点データ群の高さ距離が波の想定最大値を上限として設定される除外閾値以下の連続点データ群に含まれる上記点データを除外して上記検知対象物の検知を行うという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明によれば、波の想定最大値を上限として設定される除外閾値以下の高さを有する連続点データ群に含まれる点データ(すなわち測定用レーザ光が波の一部によって散乱されて発生した戻り光を受光して得られた点データ)が削除されて検知対象物の検知が行われる。
つまり、本発明によれば、海面位置がどこに存在しようとも、波の一部に測定用レーザ光が反射して得られた点データが除外されるため、海面位置を取得することなく船舶等を検知することができる。
【0017】
したがって、本発明によれば、海面位置に関わらず、確実に検知対象物を検知することが可能となり、GPS、電波時計及びジャイロコンパス等を搭載する必要がなく、また陸地に限らず船舶等の移動体に対して搭載することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における三次元レーザレーダ装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態における三次元レーザレーダ装置で得られる点データの分布を模式的に示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態における三次元レーザレーダ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態におけるレーザセンサ装置の変形例の概略構成を示すブロック図である。
図5図4に示す本発明の一実施形態におけるレーザセンサ装置の変形例が備えるポリゴンミラー及びその周囲を拡大して示す三面図及び断面図である。
図6図4に示す本発明の一実施形態におけるレーザセンサ装置の変形例の更なる変形例が備えるポリゴンミラー及びその周囲を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係るレーザレーダ装置及びレーザレーダ法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
図1は、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1(レーザレーダ装置)の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1は、測定空間(検知対象物が存在する可能性のあるエリア)に対して測定用レーザ光を照射して船舶(検知対象物)の検知を行うものであり、当該測定空間に船舶が存在する場合に、その船舶の位置を示す信号を出力する。
そして、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1は、図1に示すように、レーザ投光器1と、受光器2と、ポリゴンスキャナ3と、ガルバノスキャナ4と、距離演算器5と、信号処理部6(信号処理手段)と、制御器7とを備えている。
【0021】
レーザ投光器1は、ポリゴンスキャナ3に向けて測定用レーザ光L1を射出するものであり、制御器7から入力される投光指令に基づいて測定用レーザ光L1を射出する。
【0022】
受光器2は、測定用レーザ光L1が反射(鏡面反射及び拡散反射を含む)されて生じる戻りレーザ光L2(戻り光)を受光して電気信号に変換して出力するものであり、ポリゴンスキャナ3によって案内された戻りレーザ光L2を受光する。
なお、受光器2は、戻りレーザ光L2を受光した際にパルス信号を出力するものであり、つまりは戻りレーザ光L2の受光タイミング情報を出力する。そして、受光器2は、距離演算器5と電気的に接続されており、距離演算器5に対して上記受光タイミング情報を入力する。
【0023】
ポリゴンスキャナ3は、測定用レーザ光L1及び戻りレーザ光L2を案内すると共に、周面が反射面とされたポリゴンミラーを水平配置された回転軸を中心として連続的に回動させることによって、測定用レーザ光L1を鉛直方向に走査するものである。
なお、ポリゴンスキャナ3は、制御器7から入力される速度指令に基づいて稼働する。
【0024】
ガルバノスキャナ4は、測定用レーザ光L1及び戻りレーザ光L2を案内すると共に、表面が反射面とされたガルバノミラーを水平面内で回動させることによって、測定用レーザ光L1を水平方向に走査するものである。
なお、ガルバノスキャナ4は、制御器7から入力される速度指令に基づいて稼働する。
【0025】
このようなポリゴンスキャナ3とガルバノスキャナ4とが連動することによって、測定用レーザ光L1が鉛直方向及び水平方向に走査される。
なお、ポリゴンスキャナ3は、ガルバノスキャナ4と比較して測定用レーザ光L1を高速で走査することに適している。そして、本実施形態においては、上述のようにポリゴンスキャナ3が測定用レーザ光L1を鉛直方向に走査し、ガルバノスキャナ4が測定用レーザ光L1を水平方向に走査する。
このため、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1においては、ポリゴンスキャナ3とガルバノスキャナ4とが連動することによって、水平方向に移動速度より鉛直方向の移動速度が速められて測定用レーザ光L1が走査され、いわゆる縦方向のラスタスキャンが行われる。
このように、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1においては、本発明の走査手段がポリゴンスキャナ3とガルバノスキャナ4とによって構成されている。
【0026】
距離演算器5は、測定空間に存在する測定用レーザ光L1を反射する反射体までの距離を算出するものである。
より詳細には、距離演算器5は、制御器7からレーザ投光器1に入力される投光指令を同時に入力され、この投光指令の入力タイミングと受光器2から入力される受光タイミングとの差から反射体までの距離を算出する。
なお、距離演算器5は、算出した距離情報を計測情報として信号処理部6に入力する。
【0027】
信号処理部6は、図2に示すように、測定空間を示すグローバル座標系上に、戻りレーザ光L2が存在したことを示す点データを分布させる。
例えば、信号処理部6は、距離演算器5から計測情報が入力されると、当該計測情報の基となった戻りレーザ光L2が発生した位置を、制御器7から入力される測定用レーザ光L1の照射位置から取得し、上述のグローバル座標系上の戻りレーザ光L2が発生した位置に点データをプロットする。なお、測定用レーザ光L1の照射位置は、ポリゴンスキャナ3とガルバノスキャナ4から制御器7を介して入力される角度情報から求めることができる。
そして、図2においては、黒丸で示す位置が点データのプロットされた位置である。なお、図2においては、今後の説明を分かり易くするために、平面上に点データがプロットされているが、実際のグローバル座標系は、図2に示す平面に加えて奥行き方向を有しており、点データは立体的にプロットされる。
【0028】
なお、信号処理部6は、各点データに対して、水平角度φ(ガルバノスキャナ4の回動角度)と、垂直角度θ(ポリゴンスキャナ3の回転角度)と、距離R(距離情報)とを関連付けて記憶する。つまり、本実施形態において信号処理部6によって得られる点データは、極座標系における座標を示している。
【0029】
この信号処理部6では、測定用レーザ光L1が測定空間の全領域を走査された場合には、受光器2から見たグローバル座標系の全領域にて点データを分布させてグローバル座標系の各箇所における点データの有無を含めた分布データが取得されることとなる。
【0030】
そして、本実施形態のレーザレーダ装置S1において信号処理部6は、上記グローバル座標系において連続する複数の点データからなる連続点データ群を抽出し、当該連続点データ群の高さ距離が海上に発生する波の想定最大値を上限として設定される除外閾値以下の小さな連続点データ群に含まれる点データを除外して検知対象物の検知を行う。
なお、この信号処理部6での処理は、後に図3に示すフローチャートを参照しながら詳しく説明する。
【0031】
図1に戻り、制御器7は、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1の動作全体を制御するものであり、レーザ投光器1と、ポリゴンスキャナ3と、ガルバノスキャナ4と、距離演算器5と、信号処理部6とに電気的に接続されている。
【0032】
続いて、図3を参照して本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1の動作(レーザレーダ法)について説明する。
なお、以下の説明において、動作主体は、制御器7の制御の下で処理を行う信号処理部6である。また、以下の説明においては、信号処理部6が受光器2から見たグローバル座標系の全領域にて点データを取得している状態をスタートとして説明を行う。ただし、以下の動作は、必ずしもグローバル座標系の全領域にて点データを取得している状態からスタートする必要はなく、より処理時間を短くするために点データを取得しながら進めても良い。
【0033】
信号処理部6は、まず図3に示すグローバル座標系にプロットされた点データをのうち、鉛直方向に連続して配列される点データ同士を連続点データ群として抽出する(ステップS1)。
ここで、点データが鉛直方向に連続して配列されるとは、2つの点データが鉛直方向に並びかつ隣接距離以内の離間距離とされていることを指す。なお、隣接距離は、単一の検知対象物として可能性のある距離であり、かつ、三次元レーザレーダ装置S1の分解能を超えない範囲で任意に設定可能である。具体的には、本実施形態における検知対象物は船舶であるため、隣接距離を20cm程度に設定することが考えられる。
そして、信号処理部6は、上記隣接距離を予め記憶し、鉛直方向に並ぶ点データを極座標から直交座標に変換してこれらの点データ間の距離を算出し、この算出した距離が上述の隣接距離以下である場合には、これらの点データ同士を単一の連続点データ群とする。
【0034】
なお、ここで信号処理部6は、鉛直方向に3つ以上の点データが連続すると共に隣合う点データ同士の距離が隣接距離以内である場合には、これらの全ての点データを1つの連続点データ群として抽出する。つまり、信号処理部6は、上下方向に一繋ぎで連なる全ての点データを1つの連続点データ群としてグルーピングする。この結果、図2に実線にて囲まれることによって示される連続点データ群が抽出される。
なお、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1において信号処理部6は、連続点データ群に属されなかった点データ(すなわち鉛直方向に連続しない点データ)を削除する。
【0035】
続いて、信号処理部6は、ステップS1にて抽出された連続点データ群の高さ距離が予め記憶する除外閾値以下であるかの判定を行う(ステップS2)。
【0036】
ここで、除外閾値とは、測定空間に含まれる海上にて発生が想定される波の想定最大値を上限として設定される高さ距離である。
なお、測定用レーザ光L1が照射された際に波において受光器2に到達する戻り光L2が発生する領域はごく一部である。このため、実験やシミュレーションによって、受光器2に到達する戻り光L2を発生する領域を取得し、この取得値に基づいて上記除外閾値を設定することも可能である。
つまり、本発明において除外閾値は、波の想定最大値とされている必要はなく、例えば、受光器2に到達する戻り光L2を発生する領域に基づく高さ距離を最小値、波の最大の高さ距離を最大値として設定することができる。
なお、ここでの波の想定最大値は、例えば、海面が穏やかな場合において想定される波の最大高さであっても良いし、海面が荒れている場合において想定される波の最大高さであっても良く、三次元レーザレーダ装置S1が設置される環境や検知したい検知対象物によって適宜設定される。
【0037】
なお、上述のようにグローバル座標系における波の上下方向の大きさは、波の進行方向に関わらず常に小さいものとなる。このため、除外閾値も大きな値とはならず、グローバル座標系における船舶の大きさと比較すれば小さな値となる。
【0038】
そして、信号処理部6は、ステップS2において、連続点データ群の高さ距離が除外閾値以下であると判定した場合には、この連続点データ群に属する点データの削除を行う(ステップS3)。
一方、ステップS2において、連続点データ群の高さ距離が除外閾値以下でないと判定した場合には、信号処理部6は、この連続点データ群を、検知対象物を示す部分点データ群として記憶する。
【0039】
続いて、信号処理部6は、全ての点データに対して、ステップS1〜ステップS4に示す処理が完了しているかの判定を行い(ステップS5)、全ての点データに対するステップS1〜ステップS4に示す処理が完了するまで、対象とする点データを変更してステップS1〜ステップS4を繰り返す。
【0040】
そして、信号処理部6は、ステップS5にて全ての点データの処理を完了したと判定した場合には、グローバル座標系にて隣り合う部分点データ群をグルーピングして船舶を示す物体点データ群の生成を行う(ステップS6)。
ここで、信号処理部6は、隣り合う部分点データ群がステップS1で用いた隣接距離以内に存在するかを判定し、隣接距離以内に存在する場合には、これらの部分点データ群が単一の船舶を示すものとしてグルーピングする。
【0041】
最後に、信号処理部6は、ステップS6にて得られた物体点データ群に基づいて、検知対象物までの距離や方位を算出して、船舶の有無と合わせて当該船舶の位置を外部に出力する。
なお、船舶の位置は、物体点データ群から船舶の中心を求めて当該中心の位置としても良いし、物体点データ群から船舶の重心を求めて当該重心の位置としても良い。
【0042】
以上のような本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1及び三次元レーザレーダ法によれば、グローバル座標系における高さ距離が波の想定最大値を上限として設定される除外閾値以下の連続点データ群に含まれる点データが削除されて船舶の検知が行われる。
つまり、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1及び三次元レーザレーダ法によれば、海面の高さが何処に存在しようと、波を船舶と誤検知することを防止することができる。
したがって、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1及び三次元レーザレーダ法によれば、波の一部に測定用レーザ光が反射して得られた点データが除外されるため、海面位置を取得することなく船舶等を検知することができる。
つまり、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1及び三次元レーザレーダ法によれば、海面位置に関わらず、確実に検知対象物を検知することが可能となり、GPS、電波時計及びジャイロコンパス等を搭載する必要がなく、また陸地に限らず船舶等の移動体に対して搭載することも可能となる。
【0043】
また、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1においては、波の一部に測定用レーザ光が反射して得られた点データが除外されるため、この除外される点データの隣接距離以内に他の点データが存在するか否かの計算を行う必要がなくなる。
このため、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1によれば、物体点データ群の生成を行う際の信号処理部6の負荷を低減させることができる。
【0044】
また、本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1においては、ポリゴンスキャナ3とガルバノスキャナ4とを用いることによって、水平方向の移動速度より鉛直方向の移動速度を速めて測定用レーザ光L1を走査する構成(いわゆるラスタスキャン)を実現している。
このように、水平方向の移動速度より鉛直方向の移動速度を速めて測定用レーザ光L1を走査することによって、鉛直方向に連続する点データの取得タイミングが近づき、波の進行速度が前後方向に速い場合であっても、実際の波の大きさよりも広い範囲で当該波を示す点データが取得されることを防止することができる。
このため、このような本実施形態の三次元レーザレーダ装置S1によれば、船舶の検知精度をより高めることが可能となる。
【0045】
また、いわゆるラスタスキャンを採用することによって、鉛直方向に連続して配列される点データ(連続点データ群を構成する点データ)は、その取得タイミングが時系列的に連続することとなる。
このため、ラスタスキャンを行いながら、上述の動作を行う場合には、点データの取得しながら直ぐに連続点データ群を抽出することができると共に、直ぐに除外閾値以下の高さの連続点データ群を構成する点データを除外することができる。したがって、最も短時間で必要とされない点データを除外することができ、信号処理部6の負担をより低減させることが可能となる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、検知しようとする検知対象物が船舶である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、検知しようとする検知対象物が船舶以外のものであっても、その大きさが波に対して十分に大きいものであれば検知することが可能である。
【0048】
また、上記実施形態においては、測定用レーザ光L1を水平方向よりも鉛直方向に速く移動させる構成を採用した。
しかしながら、測定用レーザ光L1の移動速度が波や船舶の進行速度と比較して十分に速い場合には、上記構成に拘る必要はない。
【0049】
また、上記実施形態においては、走査手段がポリゴンスキャナ3とガルバノスキャナ4とからなる構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、回転プリズムを用いたスキャナ等の他のスキャナを用いて走査手段を構成することもできる。
また、ガルバノミラーを備えずにポリゴンミラーを交差する2軸を中心として回転可能とする走査手段、ポリゴンミラーを備えずにガルバノミラーを交差する2軸を中心として回転可能とする走査手段、あるいは、ポリゴンスキャナを水平方向走査に用いてガルバノスキャナを鉛直方向走査に用いる走査手段を用いることも可能である。
【0050】
以下に、レーザレーダ装置の他の形態について説明する。
図4は、レーザセンサ装置S2の概略構成を示すブロック図である。
また、図5は、レーザセンサ装置S2が備えるポリゴンミラー及びその周囲を拡大して示す三面図及び断面図である。
レーザセンサ装置S2は、測定対象エリア(測定対象物が存在する可能性のあるエリア)に対して測定用レーザ光を照射して測定を行うものであり、当該測定対象エリアに測定対象物が存在する場合に、その測定対象物の位置や形状を示す信号を出力する。
そして、レーザセンサ装置S2は、図4に示すように、レーザ投光器11と、受光器12と、ポリゴンミラー13と、回転用モータ14と、回動用モータ15と、距離演算器16と、制御器17とを備えている。
【0051】
レーザ投光器11は、ポリゴンミラー13の周面(反射面)に向けて測定用レーザ光L1を射出するものであり、図5に示すように、測定用レーザ光L1の光源となる投光光源11aと、当該投光光源11aを囲んで保護する投光カバー11bと、投光光源11aから射出された測定用レーザ光L1をポリゴンミラー13に向けて案内する投光レンズ11cとを備えている。
なお、レーザ投光器11は、制御器17から入力される投光指令に基づいて測定用レーザ光L1を射出する。
【0052】
受光器12は、測定用レーザ光L1が測定対象物に照射されて反射することによって生じる戻りレーザ光L2を受光して電気信号に変換して出力するものであり、ポリゴンミラー13の周面(反射面)によって反射されて案内された戻りレーザ光L2を受光する。
この受光器12は、図5に示すように、戻りレーザ光L2を電気信号に変換する受光素子12aと、当該受光素子12aを囲んで保護する受光カバー12bと、ポリゴンミラー13から反射された戻りレーザ光L2を受光素子12aに向けて案内する受光レンズ12cとを備えている。
なお、受光器12は、戻りレーザ光L2を受光した際にパルス信号を出力するものであり、つまりは戻りレーザ光L2の受光タイミング情報を出力する。そして、受光器12は、距離演算器16と電気的に接続されており、距離演算器16に対して上記受光タイミング情報を入力する。
【0053】
これらのレーザ投光器11と受光器12とは、図5に示すように、不図示の支持機構によって支持されて設置面に対して固定される側板8に対してポリゴンミラー13の回転軸La方向に並んで設置されている。
なお、後に詳説するが、レーザセンサ装置S2においてポリゴンミラー13は、図6に示す回動軸Lbを中心に回動される。そして、ポリゴンミラー13が回動する際に、レーザ投光器11及び受光器12とポリゴンミラー13との位置関係が大きくずれて測定用レーザ光L1と戻りレーザ光L2とがポリゴンミラー13の周面から外れないように、これらのレーザ投光器11及び受光器12は、できるだけ回動軸Lbに近づけて配置されている。
【0054】
ポリゴンミラー13は、測定用レーザ光L1及び戻りレーザ光L2を案内する反射面を周面として有する、平面視正方形の導光部材である。
本実施形態におけるポリゴンミラー13は、回転用モータ14によって回転軸Laを中心として回転されると共に、図5に示すように、スリット19によって回転軸La方向に2つに分割されている。
より詳細には、ポリゴンミラー13は、スリット19によって、測定用レーザ光L1を案内する測定用レーザ光案内部13aと、戻りレーザ光L2を案内する戻りレーザ光案内部13bとに分割されている。
なお、ポリゴンミラー13には回転用モータ14に接続される軸部110が貫通して取り付けられており、当該軸部110が回転用モータ14によって回転駆動されることによってポリゴンミラー13が回転される。
【0055】
そして、レーザセンサ装置S2は、図5に示すように、ポリゴンミラー13を収容する収容ケース111と、収容ケース111の内部に配置される遮光板112(遮光部)とを備えている。
【0056】
本実施形態において収容ケース111は、図5に示すように、窓部111aと支持部111bとから構成されている。
【0057】
窓部111aは、測定用レーザ光L1及び戻りレーザ光L2を通過可能な部位であり、例えばアクリル材によって形成されている。この窓部111aは、レーザセンサ装置S2が測定を行う側に向けて配置されており、不図示の支持機構によって設置面に対して固定されている。
そして、図5に示すように、本実施形態において窓部111aは、回動軸Lb方向から見て、回動軸Lbを中心とする円弧状に形状設定されている。
【0058】
支持部111bは、軸部110を軸支することによって当該軸部110に固定されたポリゴンミラー13を支持するものであり、収容ケース111の窓部111a以外の領域を形成している。
この支持部111bは、測定用レーザ光L1及び戻りレーザ光L2に対して不透明な材料によって形成されており、例えば遮光板112と同一の材料によって形成されている。
そして、支持部111bは、窓部111a側と、レーザ投光器11及び受光器12側とに、測定用レーザ光L1及び戻りレーザ光L2を通過可能とする開口を有している。
【0059】
そして、本実施形態において支持部111bは、回動用モータ15と機械的に接続されており、当該回動用モータ15によって図5に示す回動軸Lbを中心として回動可能に不図示の支持機構によって軸支されている。
なお、支持部111bの窓部111a側の先端111cは、窓部111aに対して僅かに隙間を空けて対向配置されている。
ここで、収容ケース111の窓部111aは設置面に固定され、支持部111bは回動可能に軸支されている。このため、支持部111bを回動させた際には、窓部111aと支持部111bとの位置関係が変化する。ただし、窓部111aが回動軸Lbを中心とする円弧状に形状設定されているため、支持部111bの窓部111a側の先端111cから窓部111aまでは、常に僅かな隙間に保たれることとなる。
【0060】
遮光板112は、収容ケース111の内部に配置され、収容ケース111の内部を、レーザ投光器11からポリゴンミラー13の測定用レーザ光案内部13aに至る測定用レーザ光案内空間K1(第1空間)と、ポリゴンミラー13の戻りレーザ光案内部13bから受光器12に至る戻りレーザ光案内空間K2(第2空間)とに分割している。
この遮光板112は、測定用レーザ光L1及び戻りレーザ光L2に対して不透明な材料によって形成されており、測定用レーザ光案内空間K1から戻りレーザ光案内空間K2への光の侵入、及び、レーザ光案内空間K2から測定用レーザ光案内空間K1への光の進入を防ぐものである。
そして、レーザセンサ装置S2においては、遮光板112がポリゴンミラー13のスリット19内にも配設されており、これによって遮光板112にて支持部111bに囲まれた空間が、完全に測定用レーザ光案内空間K1と戻りレーザ光案内空間K2とに隔離されている。
なお、遮光板112の窓部111a側の先端112aは、窓部111aに対して僅かに隙間を空けて対向配置されている。そして、遮光板112は、支持部111bの回動に伴って回動軸Lbを中心に回動され、この際、遮光板112の窓部111a側の先端112aから窓部111aまでは、常に僅かな隙間に保たれる。
【0061】
図4に戻り、回転用モータ14は、ポリゴンミラー13を回転させることによって測定用レーザ光L1を回転軸La及び光軸と直交する方向(第1方向)に走査ものであり、例えば減速機等を挟んで軸部110(図5参照)と接続されている。
なお、本実施形態においては、回転軸Laが水平となるように配設されている。このため、ポリゴンミラー13が回転されることによって測定用レーザ光L1が垂直方向に走査される。
なお、回転用モータ14は、制御器17から入力される速度指令に基づいてポリゴンミラー13を回転させる。また、回転用モータ14には、不図示のエンコーダが設置されており、当該エンコーダから回転用モータ14の角度情報が制御器17に入力される。
【0062】
回動用モータ15は、回動軸Lbを中心として収容ケース111の支持部111bを回動することによって、上記回動軸Lbを中心として支持部111bに軸支されたポリゴンミラー13を回動させるものである。
ここで、回動軸Lbは、回転軸La(回転用モータ14による回転の中心軸)に対して直交(交差)する中心軸である。このため、回動用モータ15によってポリゴンミラー13が回動されることによって、測定用レーザ光L1がポリゴンミラー13の回転軸Laを中心とする回転による走査方向と異なる方向(第2方向)に走査される。
なお、本実施形態においては、回動軸Lbが垂直となるように配設されている。このため、ポリゴンミラー13が回動されることによって測定用レーザ光L1が水平方向に走査される。
なお、回動用モータ15は、制御器17から入力される速度指令に基づいてポリゴンミラー13を回動させる。また、回動用モータ15には、不図示のエンコーダが設置されており、当該エンコーダから回動用モータ15の角度情報が制御器17に入力される。
【0063】
距離演算器16は、測定領域に存在する測定用レーザ光を反射する反射体までの距離を算出して、この算出結果を距離情報として制御器17に入力するものである。
より詳細には、距離演算器16は、制御器17からレーザ投光器11に入力される投光指令を同時に入力され、この投光指令の入力タイミングと受光器12から入力される受光タイミングとの差から反射体までの距離を算出する。
【0064】
制御器17は、レーザセンサ装置S2の動作全体を制御するものであり、図4に示すように、レーザ投光器11と、ポリゴンミラー13と、回転用モータ14と、回動用モータ15と、距離演算器16と電気的に接続されている。
そして、制御器17は、上記実施形態の信号処理部6及び制御器7として機能する。
【0065】
以上のようなレーザセンサ装置S2によれば、遮光板112によって、収容ケース111の内部空間が、レーザ投光器11からポリゴンミラー13の測定用レーザ光案内部13aに至る測定用レーザ光案内空間K1と、ポリゴンミラー13の戻りレーザ光案内部13bから受光器12に至る戻りレーザ光案内空間K2とに分割されている。
つまり、レーザセンサ装置S2においては、収容ケース111の内部空間で測定用レーザ光案内空間K1から戻りレーザ光案内空間K2への光の入射及び戻りレーザ光案内空間K2から測定用レーザ光案内空間K1への光の入射が遮光板112によって防がれる。
このため、測定用レーザ光L1が収容ケース111内で意図せずに反射することによって発生する迷光が測定用レーザ光案内空間K1から戻りレーザ光案内空間K2に入射することを防止することができ、当該迷光が受光器12に到達することを防ぐことができる。
したがって、レーザセンサ装置S2によれば、迷光による測定精度の悪化を防止することが可能となる。
このように迷光による測定精度の悪化が防止されることによって、戻りレーザ光L2の強度が弱くなる遠距離での測定を可能とすることができる。さらに、迷光が受光器12に入射することを防止できるために、測定用レーザ光L1の出力を高めることが可能となり、より遠距離での測定が可能となる。
【0066】
また、レーザセンサ装置S2によれば、回転用モータ14によってポリゴンミラー13が回転されることによって測定用レーザ光L1が垂直方向に走査され、回動用モータ15によってポリゴンミラー13が回動されることによって測定用レーザ光が水平方向に走査される。
このため、回転用モータ14による回転と回動用モータ15による回動とを組み合わせることによって、測定用レーザ光L1を三次元領域の全領域において走査することができる。
よって、レーザセンサ装置S2によれば、三次元領域での測定を行うことができる。
【0067】
また、レーザセンサ装置S2によれば、ポリゴンミラー13を回転及び回動させることによって測定用レーザ光L1が走査される。
このため、レーザセンサ装置S2の全体を移動させることなく測定用レーザ光L1を走査することができ、これによって測定用レーザ光L1を高速で走査することができる。
【0068】
以上のように、レーザセンサ装置S2によれば、高速で三次元領域での測定を可能とし、さらに迷光による測定精度の悪化を防止することが可能となる。
【0069】
また、レーザセンサ装置S2においては、測定用レーザ光案内部13aと戻りレーザ光案内部13bとに分割するスリット19をポリゴンミラー13が有し、遮光板112がスリット19内にも配設されている。
このため、支持部12bの内部を測定用レーザ光案内空間K1と戻りレーザ光案内空間K2とに完全に隔離することができ、より迷光が受光器12に入射することを防止することができる。
【0070】
また、レーザセンサ装置S2においては、収容ケース111が、測定用レーザ光L1及び戻りレーザ光L2を通過可能に形成されると共に回動用モータ15によるポリゴンミラー13の回動中心(回動軸Lb)を中心とする円弧状に形状設定された窓部111aと、ポリゴンミラー13を支持すると共に回動用モータ15によってポリゴンミラー13と一緒に回動される支持部111bとを備える。
このため、収容ケース111の全体を回動させることなくポリゴンミラー13を回動させることができると共に、収容ケース111の内部に異物が侵入することを防止することもできる。
【0071】
また、レーザセンサ装置S2は、図6に示すような形態を採用することも可能である。
図6は、レーザセンサ装置S2が備えるポリゴンミラー13及びその周囲を拡大して示す模式図である。
この図に示すように、レーザセンサ装置S2は、戻りレーザ光案内空間K2に遮光筒13を備えている。
この遮光筒13は、戻りレーザ光案内部13bと受光器12との間に配置されており、戻りレーザ光案内部13bと受光器12との間において、戻りレーザ光L2の光路を囲うものである。
この遮光筒13は、例えば可視光に対して不透明な材料によって形成されており、遮光筒13の内部領域への外乱光(迷光を含む)の侵入を防止するものである。
【0072】
このような構成を有するレーザセンサ装置S2によれば、遮光筒13によって、外乱光が受光器12に到達することを防止することができる。
したがって、より測定精度を向上させることが可能となる。
【0073】
なお、レーザセンサ装置S2においては、回転軸Laと回動軸Lbとが直交する構成を採用した。
しかしながら、回転軸Laと回動軸Lbとが交差していれば、測定用レーザ光L1を三次元領域で走査することが可能である。
【0074】
また、レーザセンサ装置S2においては、回転軸Laが水平に設定され、回動軸Lbが垂直に設定された構成について説明した。
しかしながら、回転軸Laを垂直に設定し、回動軸Lbを水平に設定しても良い。
【0075】
また、レーザセンサ装置S2においては、ポリゴンミラー13の回転軸La方向から見た形状が正方形である構成について説明した。
しかしながら、ポリゴンミラー13の回転軸La方向から見た形状は、三角形以上の多面体とすることができる。
【符号の説明】
【0076】
S1,S2……三次元レーザレーダ装置(レーザレーダ装置)、2……受光器、3……ポリゴンスキャナ、4……ガルバノスキャナ、6……信号処理部(信号処理手段)、L1……測定用レーザ光、L2……戻りレーザ光(戻り光)
図1
図2
図3
図4
図5
図6