(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記規制情報生成部は、前記災害発生判定部により発生が判定された自然災害の種別に応じて前記通行規制情報を配信する期間である規制期間を設定し、当該規制期間の情報を更に含む前記通行規制情報を生成する請求項1に記載の交通情報配信システム。
自然災害の種別に応じて被災し得る地理的環境にある領域である潜在的被災領域が予め規定されると共に、前記関係規定情報には自然災害の種別と前記潜在的被災領域との関係が更に含まれ、
対象となる前記特定領域である対象特定領域において前記災害発生判定部により特定種別の自然災害の発生が判定された場合に、前記自然災害情報取得部は、前記対象特定領域を含む前記潜在的被災領域内の前記対象特定領域以外の領域における、前記特定種別の自然災害に対応する車両挙動についての前記基準値を、相対的に小さくする請求項1又は2に記載の交通情報配信システム。
自然災害の種別に応じて被災し得る地理的環境にある領域である潜在的被災領域が予め規定されると共に、前記関係規定情報には自然災害の種別と前記潜在的被災領域との関係が更に含まれ、
前記災害発生判定部は、前記特定領域の位置が、前記自然災害情報に示される自然災害の種別に対応する前記潜在的被災領域に含まれていることを更なる条件として、前記自然災害情報に示される種別の自然災害が発生したと判定する請求項1から3のいずれか一項に記載の交通情報配信システム。
前記関係規定情報に規定された車両挙動である規定対象車両挙動は、道路上での進路反転挙動、及び道路が複数車線を有する場合における車線変更挙動、の少なくとも一方を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の交通情報配信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、ユーザーにとって有益となり得る情報を含む通行規制情報を、交通情報として迅速に配信することが可能な交通情報配信システム等の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、交通情報を配信する交通情報配信システムの特徴構成は、各種の自然災害が発生した場合にそれぞれの自然災害に応じて発生し得る車両挙動が予め規定されると共に、自然災害の種別と発生し得る車両挙動との関係を表す関係規定情報を記憶して備え、複数の車両から、位置情報に関連付けられた走行軌跡の情報を含む走行履歴情報を収集する走行履歴情報収集部と、前記走行履歴情報に基づいて特定領域で予め定められた基準値以上の回数の特定車両挙動を検知したことを条件として、前記特定領域を含む地域のその時点での自然災害情報を外部サーバから取得する自然災害情報取得部と、取得された前記自然災害情報に示される自然災害の種別と前記特定車両挙動との関係が、前記関係規定情報に規定された関係に合致していることを条件として、前記自然災害情報に示される種別の自然災害が発生したと判定する災害発生判定部と、前記災害発生判定部により自然災害の発生が判定された場合に、前記交通情報として、前記特定領域の位置の情報と前記特定車両挙動に応じた規制内容の情報とを含む通行規制情報を生成する規制情報生成部と、を備える点にある。
【0007】
この特徴構成によれば、複数の車両から収集される走行履歴情報に基づいて特定領域において有意な頻度で特定車両挙動が検知された場合に、関係規定情報と外部サーバから取得される自然災害情報とを参照して、自然災害の発生の有無を迅速に判定することができる。自然災害の発生が判定されると、次に、特定車両挙動に対応する走行履歴情報に関連付けられた複数の位置情報から導出される特定領域の位置の情報と、特定車両挙動に応じた規制内容の情報とを含む通行規制情報が生成される。つまり、道路における車両の通行が平時に比べて規制されていることを表す通行規制情報として、自然災害の発生位置及びそれに伴う交通規制の内容が具体的に特定された比較的詳細な情報を生成することができる。従って、ユーザーにとって有益となり得る情報を含む通行規制情報を、交通情報として迅速に配信することが可能な交通情報配信システムを実現することができる。
【0008】
ここで、前記規制情報生成部は、前記災害発生判定部により発生が判定された自然災害の種別に応じて前記通行規制情報を配信する期間である規制期間を設定し、当該規制期間の情報を更に含む前記通行規制情報を生成すると好適である。
【0009】
自然災害の発生によって生じる、道路における車両の通行が平時に比べて規制された状態が解消されるまでの期間は、自然災害の内容に応じて異なり得る。この構成によれば、自然災害の内容(種別)に応じてそれぞれ適切に設定される規制期間の情報を更に含む通行規制情報を配信することができる。よって、ユーザーにとって有益となり得る情報を、当該情報を有効かつ適切に利用できる期間の情報に関連付けて配信することができる。また、規制期間の情報に基づいて、交通情報としての通行規制情報を配信する期間自体を適正化することもでき、例えば不必要に長期間に亘って通行規制情報を配信し続けることを回避できる。
【0010】
また、自然災害の種別に応じて被災し得る地理的環境にある領域である潜在的被災領域が予め規定されると共に、前記関係規定情報には自然災害の種別と前記潜在的被災領域との関係が更に含まれ、対象となる前記特定領域である対象特定領域において前記災害発生判定部により特定種別の自然災害の発生が判定された場合に、前記自然災害情報取得部は、前記対象特定領域を含む前記潜在的被災領域内の前記対象特定領域以外の領域における、前記特定種別の自然災害に対応する車両挙動についての前記基準値を、相対的に小さくすると好適である。
【0011】
対象特定領域において特定種別の自然災害の発生が判定された場合には、当該対象特定領域を含む潜在的被災領域内では、対象特定領域以外の領域でも同様に特定種別の自然災害が発生している可能性が高いと考えられる。この構成によれば、そのような領域において、特定種別の自然災害に対応する車両挙動に関し、自然災害情報の取得のための開始判定のためのしきい値である基準値を相対的に小さくすることで、特定種別の自然災害の発生を早期に判定することができる。よって、結果的に、ユーザーにとって有益となり得る情報を、迅速にかつより多くの領域に関して配信することができる。
【0012】
また、自然災害の種別に応じて被災し得る地理的環境にある領域である潜在的被災領域が予め規定されると共に、前記関係規定情報には自然災害の種別と前記潜在的被災領域との関係が更に含まれ、前記災害発生判定部は、前記特定領域の位置が、前記自然災害情報に示される自然災害の種別に対応する前記潜在的被災領域に含まれていることを更なる条件として、前記自然災害情報に示される種別の自然災害が発生したと判定すると好適である。
【0013】
特定の地点における地理的環境と発生し得る自然災害の内容(種別)との間には、ある程度の対応関係がある。よって、特定の地理的環境にある地点に注目した場合、特定の種別の自然災害が発生しやすく、それ以外の種別の自然災害は発生しにくい場合が多い。この点に鑑み、上記の構成によれば、潜在的被災領域との関係も含めた関係性の合致を条件とすることで、自然災害の発生に係る誤判定を抑制することができる。
【0014】
また、前記関係規定情報に規定された車両挙動である規定対象車両挙動は、道路上での進路反転挙動、及び道路が複数車線を有する場合における車線変更挙動、の少なくとも一方を含むと好適である。
【0015】
一般に、自然災害により、道路自体の損傷や道路上での障害物の滞留が発生し得る。そのため、道路における車両の通行が平時に比べて規制された状態には、例えば特定領域を境界としてその道路の通行が完全に遮断されて通行できない状態や、特定領域において障害物を回避して通行することが必要な状態等が含まれ得る。上記の構成によれば、これらの状態を、進路反転挙動及び車線変更挙動の少なくとも一方に基づいて適切に判定することができる。
【0016】
また、前記規定対象車両挙動は、前記進路反転挙動及び前記車線変更挙動の双方を含み、前記車線変更挙動についての前記基準値が、前記進路反転挙動についての前記基準値よりも高い値に設定されていると好適である。
【0017】
例えば自然災害が未発生で、道路における車両の通行が特に規制されていない状態を想定すると、車線変更挙動は追い越し等に対応してある程度生じ得るものの、経路間違い等の特別な事情がない限り進路反転挙動はほとんど生じないと考えることができる。つまり、平時においては、車線変更挙動は進路反転挙動に比べて高い頻度で発生すると考えることができる。この点に鑑み、上記の構成によれば、平時における各挙動の発生頻度を考慮してそれぞれの基準値を適切に設定することができ、自然災害の発生に係る誤判定(特に、車線変更挙動に基づく誤判定)を抑制することができる。
【0018】
本発明に係るナビゲーションシステムの特徴構成は、上述した各構成の交通情報配信システムから配信された前記交通情報を受信する交通情報受信部と、受信した前記交通情報に含まれる前記通行規制情報に基づいて、前記特定領域における通行に関する規制内容を通知する案内通知処理部と、を備える点にある。
【0019】
この特徴構成によれば、受信した交通情報に含まれる通行規制情報に基づいて、自然災害の発生位置及びそれに伴う交通規制の内容を、ユーザーに対して具体的に通知することができる。よって、ユーザーに対して例えば走行経路を決定する上での有益な判断材料を与えることができ、ユーザーにとっての利便性を向上させることができる。
【0020】
ここで、地図情報に含まれる各リンクにそれぞれ設定されるリンクコストに基づいて目的地までの案内経路を探索する案内経路探索部を更に備え、前記案内経路探索部は、受信した前記交通情報に含まれる前記通行規制情報に基づいて、自然災害の発生が判定された前記特定領域を通るリンクのリンクコストを、相対的に大きくすると好適である。
【0021】
この構成によれば、目的地までの案内経路を探索する際に、自然災害の発生が判定された特定領域を通る道路を含む経路の優先度を相対的に低くすることができる。よって、自然災害の発生が判定された特定領域を回避する経路を優先的に探索してユーザーに提供することができ、ユーザーにとっての利便性を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る交通情報配信システムの技術的特徴は、交通情報配信プログラムや交通情報配信方法にも適用可能であり、本発明はそのようなプログラムや方法も権利の対象とすることができる。
【0023】
その場合における、交通情報を配信する機能をコンピュータに実現させる交通情報配信プログラムの特徴構成は、各種の自然災害が発生した場合にそれぞれの自然災害に応じて発生し得る車両挙動が予め規定されると共に、自然災害の種別と発生し得る車両挙動との関係を表す関係規定情報を参照し、複数の車両から、位置情報に関連付けられた走行軌跡の情報を含む走行履歴情報を収集する走行履歴情報収集機能と、前記走行履歴情報に基づいて特定領域で予め定められた基準値以上の回数の特定車両挙動を検知したことを条件として、前記特定領域を含む地域のその時点での自然災害情報を外部サーバから取得する自然災害情報取得機能と、取得された前記自然災害情報に示される自然災害の種別と前記特定車両挙動との関係が、前記関係規定情報に規定された関係に合致していることを条件として、前記自然災害情報に示される種別の自然災害が発生したと判定する災害発生判定機能と、前記災害発生判定機能により自然災害の発生が判定された場合に、前記交通情報として、前記特定領域の位置の情報と前記特定車両挙動に応じた規制内容の情報とを含む通行規制情報を生成する規制情報生成機能と、をコンピュータに実現させる点にある。
【0024】
また、
交通情報配信システムによって交通情報を配信する交通情報配信方法の特徴構成は、各種の自然災害が発生した場合にそれぞれの自然災害に応じて発生し得る車両挙動が予め規定されると共に、自然災害の種別と発生し得る車両挙動との関係を表す関係規定情報を参照し、
走行履歴情報収集部が、複数の車両から、位置情報に関連付けられた走行軌跡の情報を含む走行履歴情報を収集する走行履歴情報収集ステップと、
自然災害情報取得部が、前記走行履歴情報に基づいて特定領域で予め定められた基準値以上の回数の特定車両挙動を検知したことを条件として、前記特定領域を含む地域のその時点での自然災害情報を外部サーバから取得する自然災害情報取得ステップと、
災害発生判定部が、取得された前記自然災害情報に示される自然災害の種別と前記特定車両挙動との関係が前記関係規定情報に規定された関係に合致していることを条件として、前記自然災害情報に示される種別の自然災害が発生したと判定する災害発生判定ステップと、
規制情報生成部が、前記災害発生判定ステップにより自然災害の発生が判定された場合に、前記交通情報として、前記特定領域の位置の情報と前記特定車両挙動に応じた規制内容の情報とを含む通行規制情報を生成する規制情報生成ステップと、を備える点にある。
【0025】
当然ながら、これらの交通情報配信プログラムや交通情報配信方法も、上述した交通情報配信システムに係る作用効果を得ることができる。また、これらの交通情報配信プログラムや交通情報配信方法に、上述した交通情報配信システムの好適な構成の例として挙げたいくつかの付加的技術を組み込むことも可能である。この場合、それぞれの付加的技術に対応する作用効果も得ることができる。
【0026】
更に、本発明に係るナビゲーションシステムの技術的特徴に関しても、ナビゲーションプログラムやナビゲーション方法にも適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る交通情報配信システムの実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る交通情報配信システム(配信システム2)を含む交通情報システム1の構成を示す模式図である。この交通情報システム1は、管理装置60に備えられる配信システム2と、複数の車両70に備えられた複数のナビゲーションシステム3と、により構成されている。各車両70のナビゲーションシステム3は、配信システム2と通信可能とされていると共に、走行履歴情報L等を取得し、その走行履歴情報Lをプローブ情報PIとして配信システム2に送信する。配信システム2は、複数の車両70から収集された種々のプローブ情報PIに基づいて交通情報TIを生成し、その交通情報TIを各車両70のナビゲーションシステム3に配信する。ナビゲーションシステム3は、受信した交通情報TIに基づいて、各種の案内や目的地までの経路案内等のナビゲーション処理を行う。
【0029】
1.ナビゲーションシステムの構成
図3に示すように、ナビゲーションシステム3は、送受信部31と、車両位置特定部32と、走行履歴情報取得部33と、ナビゲーション用演算部34と、プローブ情報送信部35と、交通情報受信部36とを備えている。これらの各機能部は、CPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための演算部がハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実装されて構成されている。また、これらの各機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されていると共に、ナビゲーションシステム3に備えられる記憶部37,38,39からデータを抽出可能に構成されている。
【0030】
送受信部31は、配信システム2(管理装置60)との間でデータの送受信を行う通信モジュールを備えている。本実施形態では、送受信部31が備える通信モジュールは無線通信モジュールとされ、ナビゲーションシステム3と配信システム2との間のデータの送受信は、無線通信を利用して行われる。この無線通信は、例えば、携帯電話網、無線LAN(Local Area Network)、及び路車間通信等を利用して行う構成とすることができる。
【0031】
車両位置特定部32は、車両70が存在する位置である車両位置を特定する機能部である。車両位置特定部32は、車両70に備えられたGPS受信器42、距離センサ43、及び方位センサ44からの出力に基づいて、座標(緯度及び経度)で表された車両位置(推定車両位置)を演算により特定する。車両位置特定部32は、GPS(Global Positioning System)信号に基づいて導出されるGPS位置データと、距離センサ43及び方位センサ44の出力に基づいて導出される推測航法位置データとから、車両位置を特定する。車両位置が道路上から外れる場合には、必要に応じてマップマッチング処理が行われ、車両位置が補正される。
【0032】
本実施形態では、車両70にカメラ41が搭載されており、車両位置特定部32は、画像認識機能をも利用して車両位置を特定することが可能である。すなわち、車両位置特定部32は、車両周辺を撮影した画像データから路面に設けられた道路標示(ペイント)等の地物を画像認識すると共に、地図情報記憶部37に格納された道路表示の位置情報と照合することによって、車両位置を更に高精度に特定可能である。
【0033】
走行履歴情報取得部33は、走行履歴情報Lを取得する機能部である。走行履歴情報取得部33は、車両位置特定部32によって特定された車両位置(プローブ車両位置)の情報を、走行履歴情報Lの元情報として取得する。また、走行履歴情報取得部33は、距離センサ43の検出結果に基づいて車両70の走行速度や走行距離の情報を取得し、方位センサ44の検出結果に基づいて車両70の進行方向の情報を取得する。そして、走行履歴情報取得部33は、これらに基づいて車両70の走行軌跡の情報を取得し、位置情報に関連付けられた走行軌跡の情報を含む走行履歴情報Lを取得する。なお、車両70の走行時における各種挙動(車線変更、旋回、加減速、停止等の走行動作やウィンカー等の付属機器の操作等)をナビゲーションシステム3側で判定し、これらの情報を走行履歴情報Lに含ませても良い。また、ナビゲーションシステム3(車両70)に備えられる内蔵時計の出力等に基づいて取得される現在時刻の情報を走行履歴情報Lに含ませても良い。取得された走行履歴情報Lは、走行履歴情報記憶部38に記憶される。
【0034】
ナビゲーション用演算部34は、ナビゲーション機能を実行するための各種演算を実行する機能部である。本実施形態では、ナビゲーション用演算部34は、特に案内経路探索部34aと案内通知処理部34bとを備えている。案内経路探索部34aは、設定された目的地までの案内経路を探索する案内経路探索処理を実行する。案内経路探索部34aは、経由地や探索条件(高速道路の利用の有無等)等の経路探索条件に基づいて、案内経路探索処理を実行する。この案内経路探索処理の実行に際して、案内経路探索部34aは、各リンクにそれぞれ設定されるリンクコストに基づいて、目的地までの経路の全体での合計コスト(経路探索条件に応じた合計コスト)が最小となるような経路を案内経路として決定する。
【0035】
案内通知処理部34bは、表示装置46による案内表示や音声出力装置47による案内音声により、ユーザーに対して各種の案内通知処理を実行する。例えば案内通知処理部34bは、案内経路探索部34aにより決定された案内経路に基づいて、分岐点での進行方向や合流地点での注意喚起等の案内通知処理を実行する。なお、表示装置46は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置とタッチパネル等の入力装置とが一体となった装置とすることができる。また、音声出力装置47は、例えばスピーカ等により構成される。
【0036】
なお、ナビゲーション用演算部34は、案内経路探索処理や案内通知処理以外にも、ナビゲーション機能を実行するための各種処理を実行可能である。例えば、地図情報記憶部37から自車両周辺の地図情報Mを取得して表示装置46に地図画像を表示すると共に、当該地図画像上に、車両位置を示すマークを重ね合わせて表示する地図表示処理等も実行可能である。
【0037】
プローブ情報送信部35は、配信システム2に対してプローブ情報PIを送信する機能部である。プローブ情報PIには、走行履歴情報取得部33により取得された走行履歴情報Lが含まれる。プローブ情報送信部35は、予め規定された送信スケジュールに従い、送受信部31を介して、走行履歴情報Lを含むプローブ情報PIを送信する。この場合における送信スケジュールは、一定時間(例えば、10分、1時間、6時間、1日等)毎の定期的なものとしても良いし、例えばナビゲーションシステム3が搭載された車両70の主電源がオフされる毎等の不定期のものとしても良い。
【0038】
交通情報受信部36は、配信システム2から配信される交通情報TIを受信する機能部である。交通情報TIには、配信システム2の規制情報生成部25aにより生成される通行規制情報Rが含まれる。通行規制情報Rの具体的内容に関しては後述する。なお、交通情報TIには、通行規制情報R以外にも、例えば特定の道路で渋滞が発生していることを表す渋滞情報や、特定の地点で生じ易い特定の事象(急ブレーキの発生や逆走車両の発生等)についての注意を促す注意情報等が含まれても良い。交通情報受信部36は、送受信部31を介して、通行規制情報Rを含む交通情報TIを受信する。
【0039】
地図情報記憶部37には、地図情報Mが記憶(格納)されている。地図情報記憶部37は、地図情報Mを構成する道路ネットワークの情報が格納されたデータベース(道路地図データベース)として構成されている。地図情報Mは、ナビゲーション用演算部34により、地図表示処理、経路探索処理、及び案内通知処理を実行する際等に参照される。地図情報Mには、複数のノードと各ノード間を接続する道路に対応する複数のリンクとにより構成される道路ネットワークデータが含まれる。また、地図情報Mには、各リンクのそれぞれに対応する実際の道路を通行するために要する時間及び通行しやすさ等を数値化した情報として、コスト(リンクコスト)の情報が含まれる。各リンクのコストは、それぞれのリンク長や道路属性(制限速度、道路種別、及び車線数等)に応じて設定されている。また、地図情報Mには、道路の種別、長さ、形状、道路幅等の情報が含まれる。更に、地図情報Mには、道路上や道路周辺に設けられた各種の地物(例えば、道路標示、道路標識、信号機、陸橋、トンネル等)の情報(地物情報)が含まれる。このような地物情報は、車両位置特定部32による、カメラ41からの撮影画像の情報を利用した車両位置の特定のために参照される。
【0040】
走行履歴情報記憶部38には、走行履歴情報取得部33により取得された走行履歴情報Lが記憶される。走行履歴情報記憶部38は、走行履歴情報Lが格納されたデータベース(走行履歴データベース)として構成されている。走行履歴情報Lは、時系列に沿って格納されていると好適である。走行履歴情報Lは、プローブ情報送信部35により、各タイミングにおいてそれぞれ必要分(例えば、前回送信時との差分)ずつ走行履歴情報記憶部38から抽出され、その後送信される。走行履歴情報Lは、累積的に蓄積される構成としても良いし、所定期間経過後に削除され期間を区切って格納される構成としても良い。なお、送信と同時に削除される構成等としても良い。
【0041】
交通情報記憶部39には、交通情報受信部36により受信された交通情報TIが記憶される。交通情報記憶部39は、交通情報TIが格納されたデータベース(交通情報データベース)として構成されている。交通情報受信部36により新たな(新バージョンの)交通情報TIが受信された場合には、古い(旧バージョンの)交通情報TIが更新(差分更新や全部更新等)されて、交通情報記憶部39には、最新の情報を反映した交通情報TIが記憶される。交通情報TIは、ナビゲーション用演算部34により、経路探索処理及び案内通知処理を実行する際等に参照される。
【0042】
2.配信システムの構成
図2に示すように、配信システム2は、送受信部21と、走行履歴情報収集部22と、自然災害情報取得部23と、災害発生判定部24と、交通情報生成部25(規制情報生成部25a)と、交通情報配信部26とを備えている。これらの各機能部は、CPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための演算部がハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実装されて構成されている。また、これらの各機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されていると共に、配信システム2に備えられる記憶部27,28,29からデータを抽出可能に構成されている。
【0043】
送受信部21は、複数のナビゲーションシステム3(車両70)との間でデータの送受信を行う通信モジュールを備えている。送受信部21が備える通信モジュールは、本実施形態では無線通信モジュールとされ、ナビゲーションシステム3が備える送受信部31と共通の通信規格のものが使用される。
【0044】
走行履歴情報収集部22は、複数のナビゲーションシステム3(車両70)から走行履歴情報Lを収集する機能部である。走行履歴情報収集部22は、複数のナビゲーションシステム3から送信されるプローブ情報PIを逐次受け付けて収集する。ここで、上述したように、プローブ情報PIには走行履歴情報Lが含まれている。走行履歴情報Lには、位置情報に関連付けられた走行軌跡の情報が少なくとも含まれ、車両70の走行時における各種挙動の情報も含まれ得る。走行履歴情報収集部22は、送受信部21を介して、走行履歴情報Lを含むプローブ情報PIを受信することにより、多量の走行履歴情報Lを収集する。収集された走行履歴情報Lは、走行履歴情報記憶部28に記憶される。
【0045】
走行履歴情報記憶部28には、走行履歴情報収集部22により収集された走行履歴情報Lが記憶される。走行履歴情報記憶部28は、複数の車両70の走行履歴情報Lがまとめて格納されたデータベース(全体走行履歴データベース)として構成されている。なお、プローブ情報PIに含まれる他の情報も、走行履歴情報Lと共に走行履歴情報記憶部28に記憶される構成として良い。また、走行履歴情報Lは、累積的に蓄積される構成としても良いし、所定期間経過後に削除され期間を区切って格納される構成としても良い。走行履歴情報Lは、災害発生判定部24により災害発生判定処理を実行する際や、規制情報生成部25aにより規制情報生成処理を実行する際等に参照される。これらの具体的内容については、後述する。
【0046】
本実施形態に係る配信システム2は、関係規定情報記憶部27を備えている。関係規定情報記憶部27には、自然災害の内容(種別)と発生し得る車両挙動との関係を表す関係規定情報RTが記憶されている。本実施形態では、配信システム2において、各種の自然災害が発生した場合にそれぞれの自然災害に応じて発生し得る車両挙動が予め規定されており、それに応じた関係規定情報RTが記憶されている。また、本実施形態では、関係規定情報RTは、一例として
図4に示すように、関係規定テーブルの形態で関係規定情報記憶部27に記憶されている。
【0047】
本例では、
図4に示すように、自然災害の内容(種別)の典型例として、「暴風」、「洪水」、「地震」、「津波」、及び「土砂崩れ」の5つが規定されている。「暴風」は激しく強い風による災害を表し、「洪水」は河川の増水・氾濫による災害を表し、「地震」は地震動(大きな地面の振動)による災害を表し、「津波」は大規模な高波による災害を表し、「土砂崩れ」は土砂の移動による災害を表す。また、発生し得る車両挙動の内容(種別)の典型例として、「進路反転」及び「車線変更」の2つが規定されている。「進路反転」は車両70が道路上での進行方向を反転する挙動(いわゆるUターン)を表し、「車線変更挙動」は車両70が走行車線を変更する挙動(いわゆるレーンチェンジ)を表す。ここで、「車線変更挙動」は、反対方向に向かう車線への変更も含むものとする。なお、例えば狭隘道路等、対象となる道路が1車線のみで構成され、複数車線を有さない場合には、車両挙動種別として上記のうちの一方である「進路反転」のみが規定された構成としても良い。本実施形態では、これらの「進路反転」及び「車線変更」が本発明における「規定対象車両挙動」に相当する。
【0048】
そして、関係規定情報RT(関係規定テーブル)には、暴風及び土砂崩れ等の比較的小規模な自然災害(小規模災害)の発生時には、それぞれ進路反転及び車線変更の双方が発生し得ることが規定されている。また、洪水、地震、及び津波等の比較的大規模な自然災害(大規模災害)の発生時には、それぞれ進路反転のみが発生し得ることが規定されている。これらの関係は、過去に生じた自然災害とそれに伴う被害内容とに基づいて規定されている。つまり、大規模災害の発生時には、道路が著しく損傷する等の甚大な被害が発生し、特定の地点を境界としてその道路が完全に遮断されて通行できない状態(通行不可能状態)となり得ることが経験的に判明している。このような場合には、必然的に、車両70は進路反転を行って、それまで走行中であった道路を引き返さざるを得ない(
図5を参照)。一方、小規模災害の発生時には、道路上での障害物90の滞留が発生して特定の地点において障害物90を回避して通行することが必要な状態(部分的通行可能状態)となる等、被害も比較的軽微なものにとどまり得ることが経験的に判明している。このような場合には、ユーザーの判断により、車線変更して障害物90を回避して通行するか(
図6を参照)、進路反転を行って走行中であった道路を引き返すか(
図5を参照)が選択される。そこで、これらの点を考慮して、上記のような関係規定情報RTが規定されている。
【0049】
また、本実施形態では、配信システム2において、自然災害の内容(種別)に応じて被災し得る地理的環境にある領域(潜在的被災領域Rp)が予め規定されており、それに応じた関係が関係規定情報RTに更に含まれている。本例では、潜在的被災領域Rpの内容(種別)の典型例として、「低地」、「沿岸部」、及び「山間部」の3つが規定されている。「低地」は周囲(ここでは特に周囲の水面)と比べて標高が低い領域、又は予め定められたしきい値よりも標高が低い領域を表し、「沿岸部」は海岸線よりも内陸側の予め定められた範囲の領域を表し、「山間部」は山の周辺の予め定められた範囲の領域を表す。そして、関係規定情報RT(関係規定テーブル)には、低地において洪水の被害を受ける可能性が高く、沿岸部において津波の被害を受ける可能性が高く、山間部において土砂崩れの被害を受ける可能性が高いことが規定されている。これらの関係は、過去に生じた自然災害とその発生環境とに基づいて規定されている。なお、地理的環境との関係性が低く、位置によらずに普遍的に発生し得る暴風及び地震については、「−」として示されているように、潜在的被災領域Rpは設定されていない。
【0050】
なお、本実施形態では、関係規定情報RT(関係規定テーブル)には、自然災害情報取得部23の機能発現のための車両挙動の計数値Naについてのしきい値である基準値Vの情報も含まれている。基準値Vは、車両挙動種別毎に異なる値に設定されている。本実施形態では、車線変更挙動についての基準値V(Vc、図示の例では「10」)が、進路反転挙動についての基準値V(Vt、図示の例では「5」)よりも高い値に設定されている(Vc>Vt)。本例では、車線変更挙動についての基準値Vcは、進路反転挙動についての基準値Vtの2倍に設定されている(Vc=2*Vt)。
【0051】
自然災害情報取得部23は、特定領域Rsを含む地域の、その時点での自然災害情報DIを外部サーバ80から取得する機能部である。自然災害情報取得部23は、定常的に自然災害情報DIを取得するのではなく、所定条件が満たされた場合に初めて自然災害情報DIを取得する。本実施形態では、自然災害情報取得部23は、走行履歴情報Lに基づいて、自然災害情報DIの取得のための開始判定対象となる車両挙動(判定対象車両挙動)として、車線変更挙動及び進路反転挙動の有無を判定する。なお、この判定対象車両挙動は、関係規定情報RTに規定された車両挙動と同一のものである。そして、自然災害情報取得部23は、特定領域Rsで予め定められた基準値V以上の回数の特定の判定対象車両挙動を検知したことを条件として、自然災害情報DIを取得する。この自然災害情報DIの取得判定について、
図5及び
図6を参照して説明する。
【0052】
なお、
図5及び
図6の上段には、自然災害の発生により生じた障害物90により、道路における車両70の通行が平時に比べて規制されている状態を模式的に示している。
図5が通行不可能状態の例であり、
図6が部分的通行可能状態の例である。また、
図5及び
図6の下段には、道路に対応するリンク上での車両70の走行軌跡を模式的に示している。これらの図において、各横実線はリンクを表し、破線矢印は走行軌跡を表し、丸印は各判定対象車両挙動が行われた位置を表している。
【0053】
自然災害情報取得部23により参照される走行履歴情報Lは、複数のナビゲーションシステム3から収集された情報である。上述したように、走行履歴情報Lは、互いに関連付けられた走行軌跡情報と位置情報とを含んでいる。走行履歴情報Lに含まれる走行軌跡情報に基づいて、最初の判定対象車両挙動(進路反転挙動又は車線変更挙動)が検知されると、自然災害情報取得部23は、その挙動に関連付けられた位置情報に基づいて特定領域Rsを設定する。自然災害情報取得部23は、最初の判定対象車両挙動が検知された位置(第一検知位置Pa)を含み、かつ、道路に沿って第一基準距離X内にある領域を、特定領域Rsとして設定する。本例では、第一検知位置Paを中心として道路に沿って前後に等距離(それぞれX/2)内にある領域を、特定領域Rsとして設定する。
【0054】
自然災害情報取得部23は、他の走行履歴情報Lに基づき、最初の判定対象車両挙動と同種の車両挙動を特定領域Rs内で検知する毎に、計数値Naを1つずつ増加させつつ、その判定対象車両挙動についての基準値Vとの大小関係を判定する。上述したように、基準値Vは、車両挙動種別毎に異なる値に設定されている。なお、自然災害情報取得部23は、特定領域Rs内であっても、最初の判定対象車両挙動とは異種の車両挙動が検知された場合には、上記の計数値Naを増加させることはない。この場合、特定領域Rs内において、当該他の判定対象車両挙動も対象として自然災害情報DIの取得判定が並行して行われることになる。また、自然災害情報取得部23は、最初の判定対象車両挙動と同種の車両挙動であっても、それが特定領域Rsの外で検知された場合には、上記の計数値Naを増加させることはない。この場合、別の特定領域Rsが設定されて、当該別の特定領域Rsにおいても自然災害情報DIの取得判定が並行して行われることになる。
【0055】
自然災害情報取得部23は、特定領域Rsにおいて、特定の判定対象車両挙動に係る計数値Naが当該判定対象車両挙動についての基準値V以上となったことを条件として、自然災害情報DIを取得する。自然災害情報取得部23は、外部サーバ80から配信される自然災害情報DIを取得する。ここで、外部サーバ80は、例えば官公庁や民間企業が運営する気象情報のサーバ等とすることができ、自然災害情報DIは自然災害の種別及び発生状況を表す情報とすることができる。このような自然災害情報DIは、例えば関東、関西、中部等の「地方」単位や、都道府県等の「行政区画」単位、複数の市町村に亘る地域等の「広域行政区画」単位等で配信されて良い。自然災害情報DIは、これらの単位領域毎に一律の情報として配信される。なお、自然災害情報DIは、発生した自然災害の種別を表すだけであり、例えば道路における車両70の通行が平時に比べて規制されていることを表す情報等は含んでいない。自然災害情報取得部23は、送受信部21を介して、自然災害情報DIを受信して取得する。取得された自然災害情報DIは、災害発生判定部24に送られる。
【0056】
災害発生判定部24は、自然災害の発生の有無を判定する機能部である。災害発生判定部24は、取得された自然災害情報DIと、計数値Naが基準値Vに達した判定対象車両挙動(これを「特定車両挙動」という)と、関係規定情報RTとに基づいて、自然災害の発生の有無を判定する。災害発生判定部24は、自然災害情報DIに示される自然災害の種別と特定車両挙動との関係が、関係規定情報RTに規定された関係に合致していることを条件として、自然災害情報DIに示される種別の自然災害が発生したと判定する。一例として、特定車両挙動が進路反転挙動である場合に、自然災害情報DIに示される自然災害が洪水であれば、関係規定情報RTに規定された関係に合致しているため、その洪水が特定領域Rsにおいて実際に発生していることが判定される。また、他の一例として、特定車両挙動が車線変更挙動である場合に、自然災害情報DIに示される自然災害が土砂崩れであれば、関係規定情報RTに規定された関係に合致しているため、その土砂崩れが特定領域Rsにおいて実際に発生していることが判定される。
【0057】
なお、災害発生判定部24は、特定領域Rsの位置が、自然災害情報DIに示される自然災害の種別に対応する潜在的被災領域Rpに含まれていることを更なる条件として、自然災害情報DIに示される種別の自然災害が発生したと判定する構成としても好適である。一例として、上記の例において自然災害情報DIに示される自然災害が洪水である場合に特定領域Rsの位置が低地に含まれていること、又は、自然災害情報DIに示される自然災害が土砂崩れである場合に特定領域Rsの位置が山間部に含まれていることを、自然災害の発生判定のための更なる条件とすることができる。特定の地点における地理的環境と発生し得る自然災害の内容(種別)との間には、ある程度の対応関係がある。よって、特定の地理的環境にある地点に注目した場合、特定の種別の自然災害が発生しやすく、それ以外の種別の自然災害は発生しにくい場合が多い。この点に鑑み、上記のように潜在的被災領域Rpとの関係も含めた関係性の合致を条件とすることで、自然災害の発生に係る誤判定を抑制することができる。
【0058】
これに対して、災害発生判定部24は、自然災害情報DIに示される自然災害の種別と特定車両挙動との関係が、関係規定情報RTに規定された関係と不合致の場合には、特定領域Rsにおいて自然災害は発生していないものと判定する。一例として、特定車両挙動が車線変更挙動である場合に、自然災害情報DIに示される自然災害が津波であれば、関係規定情報RTに規定された関係に合致していないため、その津波が特定領域Rsにおいて実際には発生していないと判定される。また、潜在的被災領域Rpとの関係性も条件とされる場合において、一例として、自然災害情報DIに示される自然災害が洪水である場合に特定領域Rsの位置が山間部に含まれている場合には、その洪水が特定領域Rsにおいて実際には発生していないと判定される。
【0059】
ところで、ある1つの特定領域Rsに注目した場合に、注目対象の特定領域Rs(これを「対象特定領域Ro」とする)においてある種別の自然災害の発生が判定された場合には、当該対象特定領域Roを含む潜在的被災領域Rp内では、対象特定領域Ro以外の領域でも同種の自然災害が発生している可能性が高いと考えられる。そこで、災害発生判定部24は、自然災害の発生を判定した場合には、その対象特定領域Roの位置及び潜在的被災領域Rpの情報と、発生した自然災害の内容(種別)の情報とを、自然災害情報取得部23に送る。自然災害情報取得部23は、これらの情報に基づいて、対象特定領域Roを含む潜在的被災領域Rp内の対象特定領域Ro以外の領域(非対象特定領域)における、対象特定領域Roで発生したものと同種の自然災害に対応する判定対象車両挙動についての基準値Vを、補正前に比べて小さくしてVc(Vc<V)とする。もちろん、補正後の基準値Vcも、車両挙動種別毎に異なる値に設定される。
【0060】
一例として、
図7の山間部(B)における地点(A1)において土砂崩れの発生が判定されたとする。この場合、同じ山間部(B)に含まれる他の領域(例えば、地点(A2)の周辺領域や地点(A3)の周辺領域等)における進路反転挙動及び車線変更挙動についての基準値Vが、相対的に小さくされる。例えば、変更前の基準値Vの1/2倍等とすることができる。このようにすれば、対象特定領域Roで判定された自然災害の発生に係る情報に基づいて、当該対象特定領域Roを含む潜在的被災領域Rp内での他の領域における同種の自然災害の発生を早期に判定することができる。なお、山間部(B)とは異なる領域である沿岸部(C)に含まれる領域(例えば、地点(A4)の周辺領域や地点(A5)の周辺領域等)では、基準値Vは補正されることなくそのままの値に維持される。
【0061】
なお、自然災害情報取得部23が、対象特定領域Roの反対車線における、同種の自然災害に対応する判定対象車両挙動についての基準値Vを、補正後の基準値Vcに比べて更に小さくする構成としても好適である。
【0062】
災害発生判定部24は、自然災害の発生を判定した場合には、道路上に存在する障害物90(
図5等を参照)の推定位置を導出する。ここで、障害物90は、道路における車両70の通行を妨げるものであり、例えば道路上に滞留する倒木、土砂、落石、冠水等が含まれる。なお、障害物90には、例えば道路の陥没、分断等、有体物以外の障害も含まれるものとする。災害発生判定部24は、自然災害の発生判定(自然災害情報DIの取得のための開始判定)の基礎となった複数(基準値V以上)の特定車両挙動にそれぞれ関連付けられた位置情報に基づいて、障害物90の推定位置Poを導出する。
【0063】
本例では、災害発生判定部24は、全ての特定車両挙動が検知された位置の平均位置Pmを算出する。そして、その平均位置Pmから特定車両挙動の種別に応じた基準距離(第二基準距離Y又は第三基準距離Z)だけ前方の位置を、障害物90の推定位置Poとして導出する。なお、「前方」とは、特定車両挙動が検知された車両70の進行方向の前方である。
図5及び
図6を参照して理解できるように、車線変更挙動についての第三基準距離Zは、進路反転挙動についての第二基準距離Yよりも小さい値に設定されている(Z<Y)。これは、進路反転が必要なほどに大規模な災害が発生している場合には、障害物90よりも十分に手前の地点で実際に進路反転を行うことが多いと考えられるのに対して、車線変更で障害物90を回避する場合には、障害物90の直前の地点で実際に進路反転を行うことが多いと考えられることによる。
【0064】
災害発生判定部24は、自然災害の発生を判定した場合、当該自然災害の発生判定の基礎となった特定車両挙動(これを「基礎車両挙動」という)の種別、各基礎車両挙動の検知位置の平均位置Pm、及び障害物90の推定位置Poの情報を規制情報生成部25aに送る。
【0065】
交通情報生成部25は、交通情報TIを生成する機能部である。交通情報生成部25は、収集されたプローブ情報PIに基づいて、交通情報TIを生成する。このような交通情報TIには、例えば特定の道路で渋滞が発生していることを表す渋滞情報や、特定の地点で生じ易い特定の事象(急ブレーキの発生や逆走車両の発生等)についての注意を促す注意情報等が含まれる。
【0066】
本実施形態では、交通情報生成部25は規制情報生成部25aを含んでいる。規制情報生成部25aは、災害発生判定部24により自然災害の発生が判定された場合に、通行規制情報Rを生成する機能部である。ここで、通行規制情報Rは、道路における車両70の通行が平時に比べて規制されていることを表す情報である。本実施形態では、このような通行規制情報Rも、交通情報TIに含まれる。
【0067】
通行規制情報Rは、自然災害の発生が判定された特定領域Rsの位置の情報(位置情報P)と、その自然災害に係る基礎車両挙動に応じた規制内容の情報(規制内容情報C)とを少なくとも含む情報である。位置情報Pに含まれる特定領域Rsの位置は、各基礎車両挙動の検知位置の平均位置Pmや障害物90の推定位置Po等とすることができ、これらが並存しても良い。規制内容情報Cに含まれる規制内容は、判定対象車両挙動の種別数に応じた数(本例では2つ)だけ規定されている。具体的には、「通行止」と「車線規制」とが規定されている。「通行止」は車両70が通行できない状態(通行不可能状態)にあることを表し、「車線規制」は一部の車線のみが通行できる状態(部分的通行可能状態)にあることを表す。そして、基礎車両挙動が進路反転挙動である場合には、それに応じて「通行止」との情報が規制内容情報Cに付加され、基礎車両挙動が車線変更挙動である場合には、それに応じて「車線規制」との情報が規制内容情報Cに付加される(
図4を参照)。
【0068】
また、規制情報生成部25aは、災害発生判定部24により発生が判定された自然災害の種別に応じて規制期間Trを設定し、当該規制期間Trの情報(規制期間情報T)を更に含む通行規制情報Rを生成する。各種の自然災害が発生した場合における、復旧までの期間は自然災害の内容(種別)に応じて異なり得る。そこで、過去に生じた自然災害とそれに伴う被害の復旧期間との関係に基づいて、自然災害の種別に応じた規制期間Trが規定されている。本例では、「暴風」及び「洪水」の規制期間Trは「1日」とされ、「津波」及び「土砂崩れ」の規制期間Trは「3日」とされ、「地震」の規制期間Trは「1週間」とされている(
図4を参照)。この規制期間Trは、一義的には通行規制情報Rを配信する期間として規定される。また、規制期間Trは、後にナビゲーションシステム3において通行規制情報Rが案内経路探索処理や案内通知処理で参照される際の、当該通行規制情報Rの利用期限を規定するための期間として利用され得る。このように、規制情報生成部25aは、位置情報P、規制内容情報C、及び規制期間情報Tを含む通行規制情報Rを生成する。
【0069】
交通情報記憶部29には、交通情報生成部25により生成された交通情報TI(通行規制情報Rを含む)が記憶される。交通情報記憶部29は、交通情報TIが格納されたデータベース(交通情報データベース)として構成されている。交通情報TIは、時系列に沿って格納されていると好適である。
【0070】
交通情報配信部26は、複数のナビゲーションシステム3(車両70)に対して交通情報TIを配信する機能部である。交通情報配信部26は、予め規定された配信スケジュールに従い、送受信部21を介して、通行規制情報Rを含む交通情報TIをナビゲーションシステム3に配信する。この場合における配信スケジュールとしては、一定時間(例えば、5分、10分、20分等)毎の定期的なもの等とすることができる。
【0071】
このように、本実施形態では、複数の車両70から収集される走行履歴情報Lに基づいて、特定領域Rsにおいて有意な頻度で判定対象車両挙動が検知された場合に、関係規定情報RTと自然災害情報DIとを参照して、自然災害の発生の有無を迅速に判定することができる。自然災害の発生が判定されると、次に、特定車両挙動に対応する走行履歴情報Lに関連付けられた複数の位置情報から導出される特定領域Rsの位置情報Pと、特定車両挙動に応じた規制内容情報Cとを含む通行規制情報Rが生成される。また、本実施形態では、自然災害の内容(種別)に応じた規制期間情報Tを更に含む通行規制情報Rが生成される。つまり、自然災害の発生位置、並びにそれに伴う交通規制の内容及び期間が具体的に特定された比較的詳細な情報(通行規制情報R)を生成することができる。従って、ユーザーにとって有益となり得る情報を含む通行規制情報Rを、交通情報TIとして迅速に配信することが可能な配信システム2が実現される。
【0072】
上記のような通行規制情報Rを含む交通情報TIは、ナビゲーションシステム3において、具体的には以下のように利用され得る。
【0073】
案内通知処理部34bは、交通情報TIに含まれる通行規制情報Rに基づいて、特定領域Rsにおける通行に関する規制内容を通知する。案内通知処理部34bは、通行規制情報Rに含まれる規制内容情報Cに応じて、前方の道路が通行止めとなっていること、又は、車線規制が行われていることをユーザーに対して通知する。案内通知処理部34bは、このような案内通知処理を、表示装置46による案内表示画像(文字やアイコン等の画像)の出力と、音声出力装置47による案内音声の出力との少なくとも一方により実行する。これにより、自然災害の発生位置及びそれに伴う交通規制の内容を、ユーザーに対して具体的に通知することができる。よって、ユーザーに対して例えば走行経路を決定する上での有益な判断材料を与えることができ、ユーザーにとっての利便性を向上させることが可能となる。
【0074】
案内経路探索部34aは、交通情報TIに含まれる通行規制情報Rに基づいて、特定領域Rsを通るリンクのリンクコストを、それ以外の領域を通るリンクのリンクコストに比べて大きくする。このように、特定領域Rsを通るリンクのリンクコストを相対的に大きくすることで、目的地までの案内経路を探索する際に、特定領域Rsを通る道路を含む経路の優先度を相対的に低くすることができる。よって、自然災害の発生が判定された特定領域Rsを回避する経路を優先的に探索してユーザーに提供することができ、ユーザーにとっての利便性を向上させることができる。この場合において、案内経路探索部34aは、通行規制情報Rに含まれる規制内容情報Cに応じて補正後のリンクコストを異ならせても良い。例えば、「通行止」の状態にある特定領域Rsを通るリンクのリンクコストを、「車線規制」の状態にある特定領域Rsを通るリンクのリンクコストに比べて大きく設定すると好適である。この場合、前者のリンクコストを無限大(∞)に設定しても好適である。
【0075】
通行規制情報Rを含む交通情報TIは、規制期間情報Tに示される規制期間Trだけ利用される。すなわち、通行規制情報Rについて設定された利用期限に基づいて、ユーザーは、当該通行規制情報Rを有効かつ適切に利用できる期間に限って利用して、上記の各恩恵を得ることができる。言い換えれば、自然災害の復旧が予想される時点以降は通行規制情報Rの利用を制限(禁止)し、不必要に長期間に亘って通行規制情報Rを利用し続けることによる、誤案内や非合理的な案内経路の決定等の不都合が生じることを回避できる。
【0076】
3.交通情報配信の処理手順
本実施形態に係る配信システム2において実行される交通情報配信処理の手順(交通情報配信方法)について説明する。以下に説明する交通情報配信処理の手順は、配信システム2の各機能部を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実行される。各機能部がプログラムにより構成される場合には、配信システム2が有する演算処理装置が、上記の各機能部を構成するプログラムを実行する(各機能を実現させるための)コンピュータとして動作する。
【0077】
図8に示すように、交通情報配信処理ではまず、走行履歴情報収集部22により、走行履歴情報Lが収集される(ステップ#01)。収集された走行履歴情報Lに基づいて、自然災害情報取得部23により、判定対象車両挙動(規定対象車両挙動)が検知されたか否かが判定される(#02)。最初に判定対象車両挙動が検知されると(#02:Yes)、当該判定対象車両挙動に関連付けられた位置情報に基づいて特定領域Rsが設定される(#03)。また、計数値Naの初期値に「1」が設定されると共に(#04)、基準値Vが設定される(#05)。
【0078】
図9に示すように、基準値設定処理では、特定領域Rsに設定された潜在的被災領域Rpの情報が取得される(#21)。次に、その潜在的被災領域Rp内で同一種別の自然災害の発生が判定されているか否かが判定される(#22)。発生していない場合には(#22:No)、標準基準値Vsが基準値Vとして設定される(#24)。なお、図示は省略しているが、特定領域Rsに潜在的被災領域Rpが設定されていない場合にも、標準基準値Vsが基準値Vとして設定される。一方、発生している場合には(#22:Yes)、その発生位置が、同一の特定領域Rsの反対車線であるか否かが判定される(#23)。そもそも同一の特定領域Rsには含まれず、特定領域Rs以外の領域である場合には(#23:No)、標準基準値Vsよりも小さい第一修正基準値Vcαが基準値Vとして設定される(#25)。特定領域Rsの反対車線である場合には(#23:Yes)、第一修正基準値Vcαよりも更に小さい第二修正基準値Vcβが基準値Vとして設定される(#26)。以上で、基準値設定処理を終了する。
【0079】
基準値設定処理が終了すると、
図8に戻り、特定領域Rs内で判定対象車両挙動(規定対象車両挙動)が検知されたか否かが判定される(#06)。判定対象車両挙動が検知される毎に(#06:Yes)、計数値Naが「1」ずつ増加される(#07)。計数値Naと基準値Vとの大小関係が比較され(#08)、やがて計数値Naが基準値V以上となると(#08:Yes)、その判定対象車両挙動が「特定車両挙動」として特定される(#09)。それと同時に、自然災害情報取得部23により、外部サーバ80から配信される自然災害情報DIが取得される(#10)。特定された特定車両挙動と自然災害情報DIとに基づいて、災害発生判定部24により、自然災害の種別と特定車両挙動との関係が関係規定情報RTに規定された関係に合致しているか否かが判定される(#11)。両者の関係性が不合致の場合には(#11:No)、そのまま交通情報配信処理を終了する。
【0080】
一方、両者の関係性が合致する場合には(#11:Yes)、その自然災害情報DIに示される種別の自然災害が実際に発生したことが判定される(#12)。そして、この災害発生判定を受けて、規制情報生成部25aにより、特定領域Rsの位置、規制内容、及び規制期間Trの情報を含む通行規制情報Rが生成される(#13)。また、交通情報生成部25により、通行規制情報Rを含む交通情報TIが生成される(#14)。生成された交通情報TIは、交通情報配信部26により、複数のナビゲーションシステム3に対して配信される(#15)。以上で、交通情報配信処理を終了する。
【0081】
配信された交通情報TI(通行規制情報Rを含む)は、ナビゲーションシステム3において、上述したように、特定領域Rsにおける通行に関する規制内容の案内通知処理や、案内経路探索処理において特定領域Rsを回避する経路優先的に探索するために利用される。
【0082】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係る配信システム等の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0083】
(1)上記の実施形態では、
図4を参照して、関係規定情報RTに規定された各種の関係について具体的に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。上記の実施形態で説明した関係規定情報RTはあくまで一例であり、自然災害、車両挙動、及び潜在的被災領域Rp等のそれぞれの種別は適宜変更することができる。すなわち、それぞれについて、上記の一部の種別が含まれなかったり他の種別が含まれたりしても良い。設計者は、自然災害が発生した場合にそれに応じて発生し得る車両挙動を想定し、その想定結果に応じた関係規定情報RTを適宜整備することができる。
【0084】
(2)上記の実施形態では、通行規制情報Rの位置情報Pに含まれる特定領域Rsの位置が、各基礎車両挙動の検知位置の平均位置Pmや障害物90の推定位置Poとされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、位置情報Pの内容は適宜変更することができる。例えば、最初の判定対象車両挙動の検知位置(第一検知位置Pa)や、進行方向に沿った最も奥側(障害物90に近い側)の判定対象車両挙動の検知位置、特定領域Rsの進行方向に沿った最も奥側の位置(第一検知位置Paから、X/2だけ奥側の位置)等を、特定領域Rsの位置としても良い。
【0085】
(3)上記の実施形態では、
図4も参照して、発生が判定された自然災害の種別に応じて設定される規制期間Trについて具体的に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。上記の実施形態で説明した自然災害種別と規制期間Trとの対応関係はあくまで一例であり、各自然災害種別に対応する規制期間Trは、適宜変更することができる。また、規制期間Trが、更に特定車両挙動の種別にも応じて設定されても良い。この場合、自然災害の種別毎に、予想される被害規模を考慮して、特定車両挙動が進路反転挙動である場合の規制期間Trを、特定車両挙動が車線変更挙動である場合の規制期間Trに比べて長く設定すると好適である。なお、規制期間Trを、例えば自然災害の規模に応じて設定したり、自然災害の種別によらずに一律に設定したりすることも可能である。
【0086】
(4)上記の実施形態では、
図4や
図9も参照して、自然災害情報取得部23の機能発現のための車両挙動の計数値Naについてのしきい値である基準値Vの設定について具体的に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。上記の実施形態で説明した基準値Vの設定はあくまで一例であり、基準値Vは適宜変更することができる。例えば、対象特定領域Roにおいてある種別の自然災害の発生が判定された場合に、当該対象特定領域Roの周辺の予め定められた近接距離内の領域(近接領域)における、対象特定領域Roで発生したものと同種の自然災害に対応する判定対象車両挙動についての基準値Vを、相対的に小さくする構成としても良い。また、基準値Vを、例えば自然災害の規模に応じて設定したり、判定対象車両挙動の種別や他の領域における自然災害の発生判定の有無等によらずに一律に設定したりすることも可能である。
【0087】
(5)上記の実施形態では、配信システム2が各機能部(記憶部を含む)21〜29を備えると共に、ナビゲーションシステム3が各機能部(記憶部を含む)31〜39を備えている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。上記の実施形態で説明した機能部の割り当ては単なる一例であり、複数の機能部を組み合わせたり、1つの機能部を更に区分けしたりすることも可能である。
【0088】
(6)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。