【文献】
GenBank,2008年 2月29日,ACCESSION XM_001129783,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/XM_001129783.2?report=genbank
【文献】
GenBank,2008年 4月29日,ACCESSION NM_006088,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/68051719?sat=13&satkey=4913042
【文献】
GenBank,2008年 5月 1日,ACCESSION NM_014878,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/109948282?sat=12&satkey=6397554
【文献】
GenBank,2008年 2月11日,ACCESSION NM_207514,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/46447819?sat=13&satkey=9233161
【文献】
GenBank,2008年 8月10日,ACCESSION NM_001128847,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/192807317?sat=12&satkey=6283470
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GenBank,2008年 6月22日,ACCESSION NM_031229,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/144953897?sat=12&satkey=8748316
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GenBank,2008年 8月10日,ACCESSION NM_005406,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/112382209?sat=12&satkey=6437871
【文献】
GenBank,2008年 2月10日,ACCESSION NM_032408,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/115387100?sat=12&satkey=10261291
【文献】
GenBank,2008年 1月13日,ACCESSION NM_014377,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/94538369?sat=12&satkey=1599023
【文献】
GenBank,2008年 2月10日,ACCESSION NM_003692,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/29568104?sat=12&satkey=6666250
【文献】
GenBank,2008年 8月10日,ACCESSION NM_006807,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/187960060?sat=12&satkey=6643917
【文献】
GenBank,2007年 1月25日,ACCESSION BC030642,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/34190122?sat=13&satkey=9500377
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーを用い、被験体血中における、該動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーに特異的に結合する動脈硬化マーカー抗体の発現を検出する、動脈硬化の検出を補助する方法。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化症は、大動脈、冠状動脈、脳動脈或いは頚動脈に多く発生し、心筋梗塞や脳梗塞などの主因となっている疾患である。現在、死亡原因の最上位を占める虚血性心疾患や脳血管障害などの虚血性臓器疾患発症の基礎には、粥状動脈硬化(アテローム性動脈硬化)の存在が重要であるといわれている。動脈硬化病変の病理形態学的特徴は、内皮下にコレステロールエステルを蓄積した細胞(泡沫化細胞)が集積した脂肪線状、更に進行した状態である平滑筋細胞、マクロファージ、T細胞などの浸潤と細胞壊死と脂肪蓄積が認められる繊維性硬班(fibrous plaque)にある。脂肪蓄積した部位は構造的脆弱性を示し、血行力学的な力が引き金となり硬班が破綻し、組織因子と血液凝固系因子との反応により急激に血栓が形成される。冠動脈で硬班が破綻し血栓性閉塞が起きることが急性心筋梗塞、不安定狭心症、心臓性突然死などのいわゆる急性冠症候群の発症に密接に関係することが明らかにされて来ている(非特許文献1)。
【0003】
動脈硬化は、自覚症状がないまま徐々に進行し、突如として心筋梗塞、脳梗塞、狭心症などに襲われるため早期発見が必要である。動脈硬化の病変の診断は、従来から、超音波検査、血管撮影、MRI(核磁気共鳴画像装置)等の画像検査、心電図、脳波測定などが広く行われているが、動脈硬化の病変の診断を早期発見に繋げるために、生化学的検査による方法が望まれている。
【0004】
生化学的検査による動脈硬化の病変の診断には、血清中或いは血漿中のLDL(低密度リポ蛋白質)、リポ蛋白(Lp−α)、レムナントリポ蛋白、酸化LDLなどの血管壁脂質蓄積と関連する動脈硬化症惹起性のリポ蛋白の測定が知られている。特に、近年血液中の動脈硬化関連物質の測定が注目され、炎症性物質:CRP(C反応性蛋白)の測定、クラミジア抗体価の測定が有用であるとの報告がある。
【0005】
これらの動脈硬化症惹起性のリポ蛋白の測定による動脈硬化の病変の診断方法としては、以下に示す方法が知られている。例えば、LDLの測定に関するものとしては、血清若しくは血漿中に存在する酸化LDLと複合体を形成するラクトフェリン、ミエロペルオキシダーゼ、又は顆粒球エラスターゼなどの血清若しくは血漿中の好中球、単球/マクロファージなどの炎症細胞由来成分を免疫学的方法で測定するもの(特許文献1)、酸化LDL受容体の細胞外領域と免疫グロブリンの重鎖の定常領域の一部からなる融合ポリペプチドを用いた免疫学的アッセイ法を用いるもの(特許文献2)、酸化LDLとα1アンチトリプシン複合体を特異的に認識する抗ヒトアルデヒド修飾−α1アンチトリプシンモノクローナル抗体を用いるもの(特許文献3、4)、血漿中のLDLの酸化変性度をV−70等のアゾ化合物からなる酸化剤により測定することよりなるもの(特許文献5)等が示されている。
【0006】
更にリポ蛋白を測定する動脈硬化の病変の診断に関するものとしては、変性血液中のレムナントリポ蛋白(RLP)を測定するもの(特許文献6)、ヒト軟骨GP39−Lポリペプチドの遺伝子の発現を検出して、リウマチや動脈硬化の病変の診断を行うもの(特許文献7)、血液中のアポB100リポ蛋白を測定して動脈硬化の病変の診断を行うもの(特許文献8)、ヒトリン脂質転送蛋白質(PLTP)に対するモノクローナル抗体を用いてPLTPを測定することによるもの(特許文献9)、及びアポリポ蛋白A−I抗体を動脈硬化診断用マーカーとして用いるもの(特許文献10)等が開示されている。
【0007】
また、動脈硬化の病変の診断に関するその他のものとしては、ナトリウム依存性胆汁酸トランスポーター蛋白質の抗体を用いて、高脂血症や動脈硬化の病変の診断を行うもの(特許文献11)、第VII凝固因子−活性プロテアーゼ(FSAP)をアテローム性動脈硬化症の危険因子として測定して診断するもの(特許文献12)、血管内皮細胞・平滑筋細胞由来ニューロピリン様分子(ESDN)や、その遺伝子の発現を検出して動脈硬化の検査を行うもの(特許文献13)、抗ヒト肝性トリグリセリドリパーゼ抗体を用いるもの(特許文献14)、血漿試料中のセロトニン濃度をマーカーとして動脈硬化の病変の診断を行うもの(特許文献15、16)、等が示されている。
【0008】
更に、動脈硬化の病変の診断に関するその他のものとして、サイトカイン/増殖因子のTGF−ファミリーのメンバーであるDPPのシグナル伝達に必要とされるMADのイソ型sMAD3ポリペプチドを標的として、慢性腎不全、アテローム性動脈硬化の診断を行うもの(特許文献17)、血液中のLp−αとα2−マクログロブリン/インターロイキン6との複合体を測定対象とし、その抗体を用いて免疫学的方法により測定するもの(特許文献18)、パラオキソナ−ゼに対するモノクローナル抗体を用いるもの(特許文献19)、飽和極長脂肪酸を測定して動脈硬化の検定を行うもの(特許文献20)、RC−9蛋白質、及びその抗体を用いてアテローム性動脈硬化症の診断を行うもの(特許文献21)等が示されている。
このように、動脈硬化の病変の診断に関する生化学的検査については多くの方法が示されているが、それらの検出マーカーはリスクマーカーがほとんどである。より本質的である動脈硬化の病変の特異的診断のためには、該病変を特異的に検出できるマーカーの更なる開発が望まれていた。
【0009】
そこで、特許文献22には、動脈硬化の病変を特異的に検出するためのマーカーとして、動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー及び動脈硬化診断用遺伝子マーカー、前記動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーに特異的に結合する抗体、動脈硬化診断用遺伝子マーカーを検出するプローブ、並びに動脈硬化病変の検出方法が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献22の技術によれば、簡便な操作で動脈硬化の病変の検出を行うことができ、動脈硬化の早期発見も期待できるが十分なものではなかった。より多くの動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー及び動脈硬化診断用遺伝子マーカー等を用いた、より高い精度の動脈硬化病変の検出が望まれている。
そこで本発明は、動脈硬化病変の検出の精度をさらに向上させることのできる動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー、動脈硬化診断用遺伝子マーカー、抗体、動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブ、動脈硬化マーカー遺伝子検出用DNAマイクロアレイ又はDNAチップ、及び動脈硬化の検出方法、並びに動脈硬化診断用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、動脈硬化病変を特異的に検出することができる動脈硬化診断用マーカーを更に見い出すべく、動脈硬化性病変罹患患者の血清中に発現する蛋白質について探索を行った。その結果、動脈硬化病変を特異的に検出することができる新たな動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーを見い出し、本発明を完成するに至った。
具体的な探索方法としては、病院、及び協力施設に入院した動脈硬化性病変罹患患者の血清を本人、又は家族の了解を得て下記のようにスクリーニングを行った。得られたcDNAクローンはプラスミドpBluescriptIIに組み込み塩基配列を決定した。その後プラスミドpGEXに組換えて大腸菌に導入し、IPTG(isopropyl β-D-thiogalactoside)により蛋白質を大量発現させて蛋白質抽出液を調製した。次いで、その蛋白質抽出液を96穴プレートに固相化し、動脈硬化患者群と、健常者群でELISA法により抗体血清レベルの測定を行い、その測定値より有意差を調べたところ、本発明のマーカーである13クローンについて、患者群と健常者群の間で有意差が見られた。さらに、蛋白質抽出液と多数の患者血清との反応をウェスタンブロット法により調べた。その結果、本発明のマーカーである5クローンが新たに動脈硬化病変罹患患者血清と陽性反応を示し動脈硬化性病変の存在、もしくは不安定性プラークの特異的マーカーとして有用であることを見い出した。そして、これらのクローンの抗原性や遺伝子のプローブを利用し、動脈硬化の検出方法を開発し、更には該検出方法に用いる診断キットの作製が可能となった。
【0014】
即ち、本発明は、以下に示す動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー、動脈硬化診断用遺伝子マーカー、抗体、動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブ、動脈硬化マーカー遺伝子検出用DNAマイクロアレイ又はDNAチップ、及び動脈硬化の検出方法、並びに動脈硬化診断用キットを含む。
【0015】
[1]配列表の配列番号1、3、5、7、9、19、23、27、29、31、33もしくは35に示されるアミノ酸配
列で示されるポリペプチドからなる動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー。
[2][1]に記載の動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーのアミノ酸配
列をコードする塩基配列で示される遺伝子からなる動脈硬化診断用遺伝子マーカー。
[3]配列表の配列番号2、4、6、8、10、20、24、28、30、32、34もしくは36に示される塩基配列、又はその
15塩基以上の部分塩基配列で示される遺伝子からなる動脈硬化診断用遺伝子マーカー。
【0017】
[4][3]に記載の遺伝子に対するアンチセンスDNA
からなる動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブ。
【0018】
[
5]基板に、[
4]に記載の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プロー
ブが固定化された動脈硬化マーカー遺伝子検出用DNAマイクロアレイ又はDNAチップ。
【0019】
[
6]
[1]に記載のポリペプチドを抗原とする、該ポリペプチドに特異的に結合する抗体を用い、被検試料における、該抗体に特異的に結合する動脈硬化マーカーポリペプチドの発現を検出する
、動脈硬化の検出
を補助する方法。
[
7][1]に記載の動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーを用い、被験体血中における、該動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーに特異的に結合する抗体の発現を検出する
、動脈硬化の検出
を補助する方法。
[
8]
[4]に記載の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブを用い、被検細胞における、該動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブとハイブリダイズする遺伝子の発現を検出する
、動脈硬化の検出
を補助する方法。
【0020】
[9][4]に記載の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブ、[
5]に記載の動脈硬化マーカー遺伝子検出用DNAマイクロアレイ又はDNAチップ、及び
[1]に記載のポリペプチドを抗原とする、該ポリペプチドに特異的に結合する抗体からなる群から選択される少なくとも1
つを具備する動脈硬化診断用キット。
【0021】
[
10]配列表の配列番号1、3、5、7、9、19、23、27、29、31、33もしくは35に示されるアミノ酸配
列で示されるポリペプチドからなる動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーを具備する動脈硬化診断用キット。
【発明の効果】
【0022】
本発明の動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー、動脈硬化診断用遺伝子マーカー、抗体、動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブ、動脈硬化マーカー遺伝子検出用DNAマイクロアレイ又はDNAチップ、及び動脈硬化の検出方法、並びに動脈硬化診断用キットを動脈硬化病変の検出に用いることにより、その検出をさらに高精度に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー及び動脈硬化診断用遺伝子マーカーは、動脈硬化の病変で特異的に発現するため、動脈硬化の検出に用いることができる。本発明の動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーとなるポリペプチドは、配列表の配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29に示されるアミノ酸配列、又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドである。
ここで、部分アミノ酸配列とは、前記配列表の各配列番号に示されるアミノ酸配列のうちの一部分の配列であり、4個以上、好ましくは5個以上、より好ましくは6個以上、更に好ましくは7個以上のアミノ酸からなる配列である。
【0025】
本発明の前記ポリペプチドのアミノ酸配列情報は、平成20年(2008年)7月31日現在NCBIの遺伝子データーベースにおいて、アクセッションナンバー:XM_001129783(配列番号1)、NM_006088(配列番号3)、NM_014878(配列番号5)、NM_207514(配列番号7)、NM_001128847(配列番号9)、NM_001017408(配列番号11)、NM_015089(配列番号13)、NM_133337(配列番号15)、NM_022406(配列番号17)、NM_001402(配列番号19)、NM_005349(配列番号21)、NM_005406(配列番号23)、NM_016436(配列番号25)、NM_032408(配列番号27)、NM_014377(配列番号29)としてアプローチすることができる。
【0026】
また、本発明の動脈硬化診断用遺伝子マーカーは、前記アミノ酸配列及びその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列で示される遺伝子からなる。該動脈硬化診断用遺伝子マーカーの遺伝子は、前記ポリペプチドを発現することができる塩基配列を有する遺伝子であればよい。
【0027】
本発明の動脈硬化診断用遺伝子マーカーとなる遺伝子としては、例えば、以下に示すクローンの遺伝子であり、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34もしくは36に示される塩基配列、又はその部分塩基配列を有する遺伝子が挙げられる。これら各々の遺伝子情報(塩基配列情報)は、NCBIの遺伝子データーベースにおいて、以下に記載する各アクセッションナンバーによりアプローチすることができる。
【0028】
すなわち、動脈硬化診断用遺伝子マーカーとなる遺伝子としては、[クローン名:S19A3;配列表の配列番号2;Accession No.:XM_001129783;遺伝子名:(PREDICTED)similar to LIM and senescent domain 1(LOC729260);遺伝子の説明:LIMS1遺伝子に類似している。LIMS1は5つのLIMドメイン、又はダブルジンクフィンガーを含むアダプター蛋白質である。またLIMS1はインテグリンが仲介する細胞接着あるいは伸展に働く可能性がある。]、[クローン名:TS27A2;配列表の配列番号4;Accession No.:NM_006088;遺伝子名:tubulin, beta 2C(TUBB2C);遺伝子の説明:微小管の構成蛋白質。]、[クローン名:S21B1;配列表の配列番号6;Accession No.:NM_014878;遺伝子名:KIAA0020(KIAA0020);遺伝子の説明;マイナー組織適合抗原との報告がある。]、[クローン名:S25E1;配列表の配列番号8;Accession No.:NM_207514;遺伝子名:differentially expressed in FDCP 8 homolog (mouse)(DEF8);遺伝子の説明:機能不詳]、[クローン名:TS12D2;配列表の配列番号10;Accession No.:NM_001128847;遺伝子名:SWI/SNF related, matrix associated, actin dependent regulator of chromatin, subfamily a, member 4(SMARCA4);遺伝子の説明:不詳]、[クローン名:S36C3;配列表の配列番号12;Accession No.:NM_001017408;遺伝子名:golgi associated PDZ and coiled-coil motif containing(GOPC);遺伝子の説明:低分子量GTP結合蛋白質RhoのエフェクターのRhotekinと結合する。またRhotekinとGOPCの結合はRho依存的に制御されているという報告がある。]、[クローン名:N48B1;配列表の配列番号14;Accession No.:NM_015089;遺伝子名:p53-associated parkin-like cytoplasmic protein(PARC);遺伝子の説明:細胞分裂の中期から後期への移行に関与する。ユビキチン依存的な蛋白質の分解に関与する。]、[クローン名:S28D1;配列表の配列番号16;Accession No.:NM_133337;遺伝子名:fer-1-like 3, myoferlin (C. elegans)(FER1L3);遺伝子の説明:骨格筋蛋白質dysferlinに類似したタイプII膜蛋白質。C2ドメインを持つこの遺伝子は細胞膜や核膜の再生や修復に関与する可能性が示唆されている。]、[クローン名:TS27H1;配列表の配列番号18;Accession No.:NM_022406;遺伝子名:X-ray repair complementing defective repair in Chinese hamster cells 4(XRCC4);遺伝子の説明:この遺伝子によって指令される蛋白質はDNA連結酵素IV及びDNA依存性蛋白質リン酸化酵素とともに、非相同末端結合によるDNA二本鎖の修復と、V(D)J組換えの完了に働く。非相同末端結合経路は正常発生と腫瘍の抑制に必要である。]、[クローン名:PA105;配列表の配列番号20;Accession No.:NM_031229;遺伝子名:RanBP-type and C3HC4-type zinc finger containing 1 (RBCK1);遺伝子の説明:機能不詳。マウスのUIP28/UbcM4相互作用タンパク質とアミノ酸配列が類似する。]、[クローン名:S16D2;配列表の配列番号22;Accession No.:NM_005349;遺伝子名:recombination signal binding protein for immunoglobulin kappa J region(RBPJ);遺伝子の説明:不詳]、[クローン名:S27D3;配列表の配列番号24;Accession No.:NM_005406;遺伝子名:Rho-associated, coiled-coil containing protein kinase 1(ROCK1);遺伝子の説明:低分子量GTP結合蛋白質Rhoに活性化されるセリン/スレオニンキナーゼである。細胞の収縮のみならず、形態制御、遊走、遺伝子発現制御などの生理機能に関与している。]、[クローン名:S36E1;配列表の配列番号26;Accession No.:NM_016436;遺伝子名:PHD finger protein 20(PHF20);遺伝子の説明:DNA依存的な転写制御に関与する。]、[クローン名:S39D6;配列表の配列番号28;Accession No.:NM_032408;遺伝子名:bromodomain adjacent to zinc finger domain, 1B(BAZ1B);遺伝子の説明:転写のクロマチン依存的制御に関与するブロモドメインを持つ蛋白質のひとつである。]、[クローン名:TS27B2;配列表の配列番号30;Accession No.:NM_014377;遺伝子名:zuotin related factor 1(ZRF1);遺伝子の説明:細胞周期のM期リン酸化蛋白質のひとつ。分子シャペロンとして作用する。]、[クローン名:PA202;配列表の配列番号32;Accession No.:NM_003692;遺伝子名:transmembrane protein with EGF-like and two follistatin-like domains 1 (TMEFF1);遺伝子の説明:アフリカツメガエルにおいてNodalコレセプターのCriptpに結合することによりNodalシグナル伝達を阻害することが報告されている。]、[クローン名:PA213;配列表の配列番号34;Accession No.:NM_006807;遺伝子名:chromobox homolog 1 (HP1 beta homolog Drosophila ) (CBX1);遺伝子の説明:異質染色質部位に局在し、そこで遺伝子サイレンシングを仲介する。]、[クローン名:PA234;配列表の配列番号36;Accession No.:BC030642;遺伝子名:PARK2 co-regulated (PACRG);遺伝子の説明:パーキンソン病関連遺伝子である。ユビキチン−プロテアソーム系により制御されていることが報告されている。]が挙げられる。
また、部分塩基配列とは、前記配列表の各配列番号に示される塩基配列のうちの一部分の配列であり、12個以上、好ましくは15個以上、より好ましくは18個以上、更に好ましくは20個以上の塩基からなる配列である(以下、同じ。)。
前述の動脈硬化診断用遺伝子マーカーとなる遺伝子を表1にまとめる。
【0030】
また、本発明の抗体は、前記動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーとなるポリペプチドを抗原とする、該ポリペプチドに特異的に結合する抗体である。該抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。これらの抗体は、前記ポリペプチドを抗原として用いた常法により製造することができる。
【0031】
本発明の抗体は、標識物質により標識化されていてもよい。標識物質は、酵素、放射性同位体、蛍光色素、biotin、digoxygenin等を使用することができる。酵素は、turnover number(回転数)が大きい、抗体と結合した状態で安定である、基質を特異的に着色させることができる等の条件を満たすものであれば制限されず、例えば、通常のEIA(酵素免疫検定法)に用いられるペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコース−6−リン酸化脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素等を用いることができる。また、酵素阻害物質や補酵素等を用いることもできる。これら酵素と抗体の結合は、マレイミド化合物等の架橋剤を用いる公知の方法により行うことができる。
基質としては、使用する酵素の種類に応じて公知の物質を用いることができる。例えば、酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合には基質として3,3’,5,5’−テトラメチルベンジシンを用いることができ、酵素としてアルカリフォスファターゼを用いる場合には基質としてパラニトロフェノールを用いることができる。
【0032】
放射性同位体としては、
125Iや
3H等の通常のRIA(放射線免疫検定法)で用いられているものを用いることができる。
蛍光色素としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)等の通常の蛍光抗体法に用いられるものを使用することができる。
【0033】
また、これらの標識化された抗体には、マンガンや鉄等の金属を結合させてもよい。このような金属結合抗体を体内に投与し、MRI等により該金属を測定することにより、抗体が結合した抗原ペプチド(動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー)の存在を検出することができる。
【0034】
また、本発明の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブは、前述の動脈硬化診断用遺伝子マーカーとなる遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの全部又は一部を有するプローブである。ここで、本発明における「ストリンジェントな条件」とは、例えば、50% ホルムアミド、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.1M リン酸二水素ナトリウム(pH6.5) 、0.5% SDS、100μg/ml denatured salmon sperm DNAを含む緩衝液における42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC(0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム)、0.1%のSDS(Sodium dodecyl sulfate)を含む緩衝液による42℃での洗浄処理(条件1)、または5×SSC、5×デンハルト溶液、0.1M リン酸二水素ナトリウム(pH6.5)、0.5% SDS、100μg/ml denatured salmon sperm DNAを含む緩衝液における65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理(条件2)を挙げることができ、後者(条件2)がより好ましい。なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、当業者であれば種々の要素を組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0035】
また、本発明の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブとしては、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34もしくは36に示される塩基配列で示される遺伝子に対するアンチセンスDNAの全部又は一部を有するプローブが挙げられる。すなわち、前記配列番号に示される塩基配列に相補的な塩基配列、又はその部分塩基配列を有するDNAからなるプローブである。
これらの動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブは、適宜蛍光標識等の標識を付与しておいてもよい。
【0036】
また、本発明の動脈硬化マーカー遺伝子検出用DNAマイクロアレイ又はDNAチップは、前記動脈硬化診断用遺伝子マーカーとなる遺伝子の発現の検出、及び該検出による動脈硬化病変の診断に用いるものであり、基板に前述の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブが固定化されている。固定される動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブは、前述したもののうち1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0037】
前記DNAマイクロアレイ又はDNAチップは、常法により製造することができる。DNAマイクロアレイは、例えば、予め調製しておいた各動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブを含む溶液を基板上に各々スポットし、乾燥することにより得られる。また、DNAチップは、例えば、基板上でフォトリソグラフィーにより所望の塩基配列を有するDNAを合成することにより得られる。
【0038】
以下、本発明の動脈硬化の検出方法について説明する。
本発明の動脈硬化の検出方法は、前述の動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーを用い、被験体血中における、該動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーに特異的に結合する抗体(動脈硬化マーカー抗体)の発現を検出する方法(以下、「検出方法(1)」という。)である。動脈硬化病変罹患患者から得られる被験体血中では、動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーとなるポリペプチドの発現により前記動脈硬化マーカー抗体が誘導されているため、動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーにより該動脈硬化マーカー抗体を検出することにより動脈硬化を検出することができる。
【0039】
検出方法(1)は、具体的には、固相化した動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーに被験者から得られた血清を接触させ、血清中の抗体を結合させ、結合しなかった蛋白質を除去し、次いで、血清中の抗体と特異的に結合する標識化抗体(二次抗体)を反応させた後、該標識化抗体のシグナルを検出する方法等が挙げられる。前記標識化抗体の標識物質としては、本発明の抗体を標識するものとして挙げた酵素、放射性同位体、蛍光色素、biotin、digoxygenin等を用いることができる。
標識物質として酵素を用いる場合は、酵素作用によって分解して発色する基質を加え、該基質の分解量を光学的に測定することにより酵素活性を求め、これを結合抗体量に換算し、標準値と比較することにより抗体量を算出することができる。あるいは酵素作用によって発光する基質を加え、微弱発光測定装置(ルミノメーター)で高感度に測定できる。
標識物質として放射性同位体を用いる場合は、該放射性同位体から発せられる放射線量をシンチレーションカウンター等により測定することにより抗体量を算出することができる。標的物質として蛍光色素を用いる場合は、蛍光分光計を具備する測定装置等により蛍光量を測定することにより抗体量を算出することができる。
【0040】
検出方法(1)では、ウェスタンブロット法を用いることができる。また、動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー、被験体血中の抗体、及び標識化抗体の結合体を、公知の分離手段(クロマト法、塩析法、アルコール沈殿法、酵素法、同相法等)によって分離した後に、標識化抗体のシグナルを検出するようにしてもよい。
【0041】
また、検出方法(1)を用いた動脈硬化の診断では、被験者から得られる被験体血中に動脈硬化マーカー抗体が存在するか否かを試験し、該動脈硬化マーカー抗体が1種類以上存在する被験者を動脈硬化病変罹患患者、又は動脈硬化病変ハイリスク者として判定することができる。
【0042】
また、本発明の動脈硬化の検出方法は、前述の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブを用い、被験細胞における、該動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブとハイブリダイズする遺伝子(動脈硬化マーカー遺伝子)の発現を検出する方法(以下、「検出方法(2)」という。)である。動脈硬化病変罹患患者から得られる被験細胞中では、動脈硬化マーカー遺伝子が発現しているため、動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブにより該動脈硬化マーカー遺伝子の発現を検出することにより動脈硬化を検出することができる。
【0043】
検出方法(2)は、具体的には、前述したような塩基配列を有する、ハイブリダイゼーションに適した鎖長の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブを調製し、適宜蛍光標識等の標識を付与し、これを被験細胞から得られた試料と接触させ、ハイブリダイゼーション反応を行い、動脈硬化診断用遺伝子マーカーとなる遺伝子の発現を検出する方法が挙げられる。
【0044】
検出方法(2)では、本発明の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブを用いる以外は公知の検出方法を使用することができ、例えば、ノーザンブロット法を用いることができる。また、検出方法(2)では、前述の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブのいずれを用いてもよく、1種の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブであっても複数種の動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブであってもよい。
また、検出方法(2)では、該動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブが基板に固定化されたDNAマイクロアレイ又はDNAチップを用いてもよい。
【0045】
また、検出方法(2)では、被検細胞から得られる試料における動脈硬化マーカー遺伝子を増幅するために、定量的又は半定量的PCR(Polymerase Chain Reaction)を用いることもできる。該PCRとしてはRT−PCR(逆転写PCR)又はリアルタイムRT−PCR法を用いることができる。該PCRを行うに際しては、動脈硬化マーカー遺伝子を増幅するためのセンスプライマー及びアンチセンスプライマーからなるプライマーを用いる。該プライマーの構築は、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34もしくは36に示される塩基配列に基づいて適宜行うことができる。
このように、前記定量的又は半定量的PCRを行って動脈硬化マーカー遺伝子を増幅した後、その試料を用いて該動脈硬化マーカー遺伝子の発現の検出を行なうことにより、検出感度を向上させることができる。
【0046】
また、検出方法(2)を用いた動脈硬化の診断では、被験者における動脈硬化マーカー遺伝子を検出し、同様の方法で検出した健常者の結果と比較することにより、その検出量が健常者よりも多い被験者を動脈硬化病変罹患患者、又は動脈硬化病変のハイリスク者と判定することができる。
【0047】
また、本発明の動脈硬化の検出方法は、本発明の動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーとなるポリペプチドを抗原とする抗体を用い、被検試料における、該抗体に特異的に結合するポリペプチド(動脈硬化マーカーポリペプチド)の発現を検出する方法(以下、「検出方法(3)」という。)である。動脈硬化病変罹患患者から得られる被検試料中では、動脈硬化マーカーポリペプチドが発現しているため、本発明の抗体を用いて該動脈硬化マーカーポリペプチドを検出することにより動脈硬化を検出することができる。
【0048】
検出方法(3)は、本発明の抗体を用いる以外は公知の免疫学的測定法を用いて実施することができる。免疫学的測定法としては、例えばウェスタンブロット法、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)法、放射線免疫検定法、蛍光抗体法が挙げられる。
検出方法(3)に用いる抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。
【0049】
検出方法(3)に蛍光抗体法を用いる場合は、直接蛍光抗体法を用いてもよく、間接蛍光抗体法を用いてもよい。直接蛍光抗体法とは、検出に用いる抗体を蛍光標識しておき、その抗体を被検試料である試料細胞に接触させて結合させ、動脈硬化マーカーポリペプチドを発現している細胞を標識化する方法である。また、間接蛍光抗体法とは、試料細胞に未標識の本発明の抗体を接触させて結合させた後、該抗体に標識化した二次抗体(抗免疫グロブリン抗体)をさらに結合させることにより、動脈硬化マーカーポリペプチドを発現する細胞を標識化する方法である。
【0050】
また、動脈硬化マーカーポリペプチドの発現を検出することにより動脈硬化を検出する際には、前述のように本発明の抗体を用いる以外に、TOF−MASSを用いて該動脈硬化マーカーポリペプチドを直接検出する方法や、基板に動脈硬化マーカーポリペプチドと相互作用する蛋白質が固定化されたチップを用いる方法を用いてもよい。
【0051】
また、検出方法(3)を用いた動脈硬化の診断では、被験者から得られる被検試料中に動脈硬化マーカーポリペプチドが存在するか否かを試験し、該動脈硬化マーカーポリペプチドが1種類以上存在する被験者を動脈硬化病変罹患患者、又は動脈硬化病変ハイリスク者として判定することができる。
【0052】
本発明の動脈硬化病変の検出に用いる動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブ、該動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブが固定された動脈硬化マーカー遺伝子検出用DNAマイクロアレイ又はDNAチップ、及び本発明の動脈硬化マーカーポリペプチド検出用の抗体は、それらの1つ以上を具備した前述の動脈硬化の検出及び診断が行なえるような動脈硬化診断用キットとして製品化しておくことができる。
また、本発明の動脈硬化診断用ポリペプチドマーカーについても、前述の動脈硬化の検出及び診断が行なえるような動脈硬化診断用キットとして製品化しておくことができる。
【0053】
以上説明した本発明の動脈硬化診断用ポリペプチドマーカー、動脈硬化診断用遺伝子マーカー、抗体、動脈硬化マーカー遺伝子検出用プローブを、特許文献22のものと併用することにより、動脈硬化の検出をさらに高精度に行うことができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
<製造例>
(試料の調製)
(1)病院及び研究協力施設を受診した頚動脈狭窄症患者を対象とし、外来受診者の中から性別・年齢(±5歳)を一致させ、正常被験者を基準(コントロール)として選択した。外来受診時又は脳神経外科入院時に、1)研究目的や研究協力の任意性等を家族に説明し、インフォームド・コンセントを得た上で、2)家族歴・既往歴・飲酒や喫煙等のライフスタイル、作業態様に関する問診を行い、3)採血を行って血清と血球成分を分離凍結保存した。さらに、4)医師の診療録を基に、臨床的重症度、治療経過、血液検査所見等を記載した。解析対象の患者血液は血清分離後マイナス80度にて研究開始まで凍結保存した。抗体及び診療録は暗号匿名化した後、使用した。
(2)血清によるスクリーニング対象は、ヒト毛細血管内皮由来のcDNAライブラリーを組み込んだ市販λZAP IIファージベクター(STRATAGENE)を用いた。
【0055】
(発現クローニング法)
(3)発現クローニング法によるスクリーニングは、St John, T(Science, 231, 845-850, 1986)らの方法に準じて実施した。
1)上記(2)のファージベクターを大腸菌(XL1-Blue)に感染させ、NZYagar培地(φ15cm dish)上で培養した。
2)プラークが出現したのを確認後、IPTG処理したニトロセルロース膜を培地上に載せ、該ニトロセルロース膜にファージ由来蛋白質を発現、転写させた。
3)1%BSA/PBSで2000倍希釈した患者血清とニトロセルロース膜とを一夜インキュベートし、発現蛋白質と血清中抗体(血清IgG)を反応させた。
4)洗浄後、二次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgG抗体をニトロセルロース膜と反応させた。
5)発色試薬としてNBT(nitroblue terazolium)、BCIP(5-bromo-4-chloro-3-indolyl-phosphate)を用いて血清IgG認識クローンを同定した。
6)陽性クローンは二次、三次スクリーニング(φ10cm dish)を行い、偽陽性クローンを排除した。
7)選択されたファージをExAssist helper phage system(Stratagene, La Jolla, CA)によりpBlueScriptに変換した。
8)Plasmid Miniprep kit(Sigma)を用いプラスミドを精製した。
9)得られたクローンはシークエンサーにより塩基配列を決定し、公開されているデーターベースと相同性検索を行い、遺伝子を同定し、抗原蛋白質候補とした。
【0056】
(ELISA法)
(4)二次スクリーニングとしてのELISA法
1)抗原蛋白質候補のインサートを含むpBluescriptの、蛋白質発現、精製用ベクターpGEX−4T(Amersham Bioscience)への組換えを行った。得られた塩基配列情報よりpBluescriptからpGEX−4Tへの組換えに適した制限酵素を選択し、BamH I, Sal I, Not I, EcoR I, Xho I, Sma Iなどの制限酵素により処理を行った。
2)アガロースゲル電気泳動後、目的のバンドを精製キットGeneElute Minus EtBr Spin Columns(SIGMA)を用い切り出し、制限酵素処理されたインサート及びpGEX−4Tを回収した。
3)Ligation-Convenience Kit(ニッポンジーン)を用い、前記インサートとpGEX−4Tをライゲーションし、インサートを含むプラスミドを作製した。
4)クローンにより適当な制限酵素が存在しない場合には、PCR法によりインサートを作製した。あらかじめ制限酵素認識部位を持つプライマーを作製し、動脈瘤組織より抽出したRNAを鋳型に逆転写PCRを行ってcDNAを作製し、さらにPCRを行い全長のインサートを得た。以下は同様に制限酵素、ライゲーションキットによる処理を行った。
5)真核細胞蛋白質発現用に改良された大腸菌コンピテントセルBL21(ニッポンジーン)に、得られたpGEX−4Tの組換え体を形質転換した。
6)アンピシリン入りLB培地で培養し、IPTGでインサートDNA由来蛋白質の発現を誘導した。
7)大腸菌を遠心分離回収し、超音波破砕後、可溶画分と不溶画分に分離した。
8)目的蛋白質が不溶画分に入る場合は、尿素を用い可溶化を行った。
9)抗原蛋白質はglutathione-Sepharose(Amersham Pharmacia)を用いて精製した。
10)96穴ELISAプレートに10μg/mlの濃度で抗原蛋白質を注入し、一晩4℃で保存し、固相化させた。
11)PBS洗浄、10%ウシ胎児血清PBS溶液でブロッキング後、患者血清、及び対照血清(健常者の血清)を2000倍希釈し、固相化した蛋白質と反応させた。
12)PBS洗浄後、HRP標識ヤギ抗ヒトIgG抗体を加えた。
13)基質を加えて発色させ、プレートリーダーにてOD490nmの吸収を測定した。
【0057】
(ウェスタンブロット法)
(5)ウェスタンブロット法による二次スクリーニング
1)上記で得られた抗原蛋白質候補のインサートを含むpBluescript又はpGEX−4Tにより形質転換した大腸菌(SOLR、JM109、BL21)をLBアンピシリン(50μg/ml)2mlで1夜培養した。
2)LBアンピシリン20mlに移し換えた後、1時間培養後、IPTGを終濃度1mMとなるように加えたものと、コントロール(IPTGを加えないもの)とをさらに3時間培養した。
3)培養液を遠心後、大腸菌を回収し、SDSサンプルバッファーにて溶解、ウェスタン法のサンプルとした。
4)10%ポリアクリルアミドゲル上で前記サンプルを電気泳動後、転写装置でニトロセルロース膜に蛋白質を転写した。
5)1%スキムミルクでブロッキング後、2000倍希釈した患者血清を一次抗体として加え、1夜インキュベートした。
6)PBST(20 mM Tris-HCl, (pH 7.6), 50 mM NaCl, 0.1% Tween-20)で洗浄後、3万倍希釈HRP標識ヤギ抗ヒトIgG抗体を加え、20分間反応させた。
7)PBSTで洗浄後、発光試薬Immobilon Western(MILLIPORE)を用いて発光させた。
8)フィルムに露光させ現像した。
9)IPTG処理に依存して検出されるバンドを抗原蛋白質と推定した。
【0058】
[シークエンシングによる動脈硬化診断用遺伝子マーカーの確認]
検出したクローンの遺伝子(動脈硬化診断用遺伝子マーカー)の塩基配列決定をシークエンシングにより行った。それにより得られた塩基配列を、公開されている遺伝子データーベース上の塩基配列と照合した結果、得られたクローンの遺伝子は、前記動脈硬化診断用ポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列と一致した。
【0059】
<実施例1>
[ELISA法による抗体価の測定]
上記製造例の実験手順を用いて、検出した18種類のうち13種類のクローンの動脈硬化診断用遺伝子マーカー候補について、ELISA法による抗体価の測定を行い、動脈硬化患者における血清抗体の上昇を確認した。その測定結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
<実施例2>
[ウェスタンブロット法による動脈硬化マーカー遺伝子発現の確認]
上記発現クローニング法により同定されたマーカー候補遺伝子のうち実施例1で用いたものを除く5種のクローンについて、ウェスタンブロット法により、動脈硬化患者における動脈硬化マーカー遺伝子の発現を確認した。その検出結果(ウェスタンブロット法による陽性シグナル:図中の矢印)を
図1に示す。
図1(a)がクローン名:S16D2(配列表の配列番号22)、
図1(b)がクローン名:S27D3(配列表の配列番号24)、
図1(c)がクローン名:S36E1(配列表の配列番号26)、
図1(d)がクローン名:S39D6(配列表の配列番号28)、
図1(e)がクローン名:TS27B2(配列表の配列番号30)の結果を示したものである。
【0062】
表2に示すように、本実施例のスクリーニングで得られた13種類の動脈硬化診断用遺伝子マーカー候補については、ELISA法による測定により、患者の血清の抗体価と健常者の血清の抗体価とに差が見られ、さらに11種類について有意差が見られた。
また、
図1に示すように、本実施例のスクリーニングで得られた5種類については、ウェスタンブロット法により特異的反応陽性シグナルが確認された。