(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性連結部は、前記第1の回転部の他端の外周と前記第2の回転部の他端の外周との間にそれぞれ外嵌され、前記作業用工具の通常の駆動方向において、前記第1の回転部と前記第2の回転部との間に所定値以上のトルクが発生したときに、内径が広がるように変形するコイルスプリングである、
ことを特徴とする請求項1に記載の動力工具。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に沿って説明する。
図1に示すように、刈払機1(動力工具)は中空のパイプ状の操作桿2(竿部)を備え、操作桿2の一方の端部には例えばコード式の回転刃3(作業用工具)が回転可能にギアケース4を介して取り付けられる。また、操作桿2の他端にはコード式回転刃3を回転させるための回転駆動力を発生させるエンジン10が収納された駆動部5が取り付けられる。また、操作桿2には作業者が把持してエンジン10の回転数を調整するためのスロットルレバーや作動中のエンジン10を停止するためのストップスイッチ等が設けられた操作部6が設けられる。また、操作桿2の中央には作業者が把持するための操作ハンドル7が設けられる。
【0017】
図2に示すように、駆動部5内のエンジン10のクランク軸11には遠心クラッチ機構12が取り付けられる。遠心クラッチ機構12のクラッチドラム13は、操作桿2に向かって先細りとなるクラッチケース8内に収納される。クラッチケース8の先細り部分には略円筒状の凹部14が形成され、凹部14内に設けられたゴム部材15およびスペーサ16を介して操作桿2が挿嵌される。また凹部14内のクラッチドラム13側の端部にはベアリング17が取り付けられ、ベアリング17はクラッチドラム13に固定されて操作桿2に向かって突出する段付円柱状の動力軸20(第1の回転部)を回転可能に支持する。また、操作桿2内にはギアケース4に収納された傘歯車機構に接続される段付円柱状の従動軸30(第2の回転部)がブッシュ18により回転可能に支持される。
【0018】
図2、
図3に示すように、動力軸20は操作桿2側にベアリング17に支持された部分より小径の断面円形の端部21を有し、従動軸30は駆動部5側にブッシュ18に支持された部分より小径の断面円形の端部31を有する。動力軸20の端部21と従動軸30の端部31とは操作桿2内で離間して対向し、動力軸20、従動軸30、動力軸20の端部21、および従動軸30の端部31は同軸になるように配置される。また、動力軸20の端部21と従動軸30の端部31の径は等しい。
【0019】
図3、
図4に示すように、動力軸20の端部21の外周面と従動軸30の端部31の外周面には、スプリング40(弾性連結部)が跨って取り付けられる。スプリング40は円筒コイルばねであり、スプリング40の内径は端部21、31の外径より小さい。そして、動力軸20の端部21と従動軸30の端部31はそれぞれスプリング40の内側に圧入され、動力軸20の端部21と従動軸30の端部31の外周面とスプリング40の内周面との間には与圧が発生する。また、スプリング40の巻き方向は、スプリング40に動力軸20および従動軸30が取り付けられた状態において、従動軸30に対して動力軸20がエンジン10の正回転方向に回転する際にトルクがスプリング40に加わると、スプリング40の内径が広がる方向である。なお、従動軸30は、
図5に示すようにスプリング40によって接続される側と反対側の端部55が角状に形成され、ギヤケース4内に回転可能に支持された傘歯車56の対応する角状穴部に挿入することで、傘歯車との回転方向の係合状態を維持したまま軸方向に相対移動可能に配設されている。
【0020】
スプリング40の内径が拡大する方向に所定値以上のねじりトルクが加わると、スプリング40の内径が拡大し、スプリング40と端部21、31との間の与圧(摩擦力)が減少し、スプリング40と端部21および/または端部31との間で相対回転が可能となる。なお、スプリング40に与えられる与圧は、通常の作業状態でスプリング40に発生するねじりトルクの範囲内ではスプリング40と端部21、31との間には十分な摩擦力が生じる(滑りが生じることが無い)程度の与圧である。また、所定値以上のねじりトルクは遠心クラッチ機構12の許容トルクより小さいトルクである。なお、
図6に示すように、動力軸20の端部21と従動軸30の端部31との間にゴム等の軸方向およびねじり方向に粘弾性特性を示す弾性体45を取り付けてもよい。この場合、弾性体45は端部21または端部31のいずれか一方の端部21(31)の対向面に固定され、他方の端部31(21)の対向面に押圧される。
【0021】
このように構成された刈払機1によれば、通常の作業状態では、動力軸20の端部21および従動軸30の端部31とスプリング40との間には十分な与圧が発生しているので、エンジン10のクランク軸11の回転は遠心クラッチ機構12を介して動力軸20、スプリング40、従動軸30、傘歯車機構へと伝わって、回転刃3が回転する。作業中の回転刃3の草等への接触やエンジン回転数の加減速により駆動伝達系にトルク変動が生じ、従動軸30と動力軸20との間にねじり振動が発生した場合、スプリング40は内径が縮まる方向や拡がる方向に回転するとともに軸方向にも変位する(内径が縮まる場合には軸方向に伸びる方向に変位し、内径が拡がる場合には軸方向に縮まる方向に変位する)。スプリング40を介して伝達されるトルクの変動成分は、スプリング40自体の緩衝作用およびスプリング40と端部21、31との間で軸方向変位時に発生する摩擦により、スプリング40は効果的にねじり振動の発生を抑制し、減衰させることができる。また、
図6のように、粘弾性特性を示す弾性体45を端部21と端部31の間に取り付けた場合には、端部21または端部31の対向面との間の弾性体45の押圧および弾性体45自体がねじられることにより緩衝作用が生じ、より効果的にねじり振動の発生を抑制し、減衰させることができる。
【0022】
一方、回転刃3が回転中に、例えば草等が絡みついたりして回転刃3の回転が急停止すると、スプリング40に発生するトルクが急上昇してスプリング40の内径が拡がる方向に変位する。この結果、スプリング40と端部21、31との間の与圧が急低下し、上昇したトルクが所定値を越えると、スプリング40と端部21および/または端部31との間で相対回転が生じる。このため、エンジン10の回転トルクのロックしている従動軸30への伝達はスプリング40の拡径により遮断され、回転刃3、傘歯車機構、従動軸30、動力軸20、遠心クラッチ機構12、エンジン10等に過大な負荷が加わることが抑制される。特に、相対回転が生じるトルクは遠心クラッチ機構12の許容トルクよりも低いトルクに設定されているため、遠心クラッチ機構12に負荷を与えることも抑制される。したがって、これらの構成部品に加わる負荷が軽減され、構成部品の摩耗や破損を防止して寿命を長くすることができ、整備の頻度を抑えて使い勝手を向上させることができる。
【0023】
次に、本発明の第2実施形態を、
図7−
図9に基づいて説明する。本実施形態では、第1実施形態の円筒コイルばね状のスプリング40、断面円形の動力軸20の端部21、および断面円形の従動軸30の端部31の形状をそれぞれ変更したものである。なお、第1実施形態と同等の機能を有する構成については同一符号を付して説明は省略する。
【0024】
スプリング140はコイル状に巻かれており、スプリング140の長手方向に垂直な断面は、
図7に示すように、非円形の形状を備え、内側に平行に対向する平行対向部141が形成された、二つの等しい長さの平行線と二つの半円形からなる角丸長方形または略長円形を成す。
図7に示すように、動力軸20の端部121は断面が略正八角形の断面を有する。また、
図8に示すように、従動軸30の端部131も断面が略正八角形の断面を有する。動力軸20の端部121の断面の形状は従動軸30の端部131の断面の形状より僅かに小さい。そして、動力軸20の端部121の断面における平行な対辺の距離はスプリング140の断面における平行対向部141の距離より僅かに大きく、従動軸30の端部131の断面における平行な対辺の距離はスプリング140の断面における平行対向部141の距離より僅かに小さい。なお、いずれの端部121、131の断面における最外径も、動力軸20および受動軸30の断面の直径よりも小さい。
【0025】
動力軸20の端部121はスプリング140の内周に圧入して嵌挿され、従動軸30の端部131はスプリング140の内周に僅かな遊び(図示せず)をもって緩挿される。また、スプリング140の巻き方向は、スプリング140に動力軸20および従動軸30が取り付けられた状態において、従動軸30に対して動力軸20がエンジン10の正回転方向に回転する際にトルクがスプリング140に加わると、スプリング140の内径が広がる方向である。
【0026】
スプリング140の内径が広がる方向に所定値以上のねじりトルクが加わると、
図9に示すように、スプリング140の内径が拡大し、スプリング140の断面における平行対向部141の距離が従動軸30の端部131の最外径より大きくなり、スプリング140と従動軸30との相対回転が可能となる。なお、通常の作業状態でスプリング140に発生するねじりトルクの範囲内では、スプリング140の断面における平行対向部141の距離が動力軸20の端部121および従動軸30の端部131の最外径より大きくなることは無い程度の与圧(相対回転が生じない程度の与圧)がスプリング140には与えられる。また、所定値以上のねじりトルクは遠心クラッチ機構12の許容トルクより小さいトルクである。なお、端部121、131の断面形状は略正八角形に限られるものでは無く、スプリング140の平行対向部141に当接可能な少なくとも一組の平行な対辺を有する断面形状であれば、例えば正六角形や長方形等各種の多角形形状や角丸長方形状等であってもよい。また、スプリング140の平行対向部141は、非円形で、端部121、131が回転した際に当接して動力を伝達可能であれば別の断面形状であってもよく、例えば対辺が曲率を有する長円や内側に凹むような形状であってもよい。
【0027】
このように構成された刈払機1によれば、通常の作業状態では、
図8、
図9に示すように、スプリング140の平行対向部141が動力軸20の端部121および/または従動軸30の端部131の最外径より拡がることは無いので、エンジン10のクランク軸11の回転は遠心クラッチ機構12を介して動力軸20、スプリング140、従動軸30、傘歯車機構へと伝わって、回転刃3が回転する。作業中の回転刃3の草等への接触やエンジン回転数の加減速により駆動伝達系にトルク変動が生じ、従動軸30と動力軸20との間にねじり振動が発生した場合、スプリング140は内径が縮まる方向や拡がる方向に回転するとともに軸方向にも変位する(内径が縮まる場合には軸方向に伸びる方向に変位し、内径が拡がる場合には軸方向に縮まる方向に変位する)。このため、ねじり振動発生時には、スプリング140と端部121と端部131(スプリング140の内径が縮まって端部131と接触する場合)との間でスプリング140の緩衝作用および軸方向変位時に発生する摩擦により、スプリング140は効果的にねじり振動の発生を抑制し、減衰させることができる。また、弾性体45を端部121と端部131の間に取り付けた場合には、端部121または端部131の対向面との間の弾性体45の押圧および弾性体45自体がねじられることにより緩衝作用が生じ、より効果的にねじり振動の発生を抑制し、減衰させることができる。
【0028】
一方、回転刃3が回転中に、例えば草等が絡みついたりして回転刃3の回転が急停止すると、スプリング140に発生するトルクが急上昇してスプリング140の内径が拡がる方向に変位する。この結果、
図9に示すように、スプリング140の断面における平行対向部141の距離が従動軸30の端部131の最外径より大きくなり、スプリング140は従動軸130に対して回転する。このため、エンジン10の回転トルクのロックしている従動軸30への伝達はスプリング140の拡径により遮断され、回転刃3、傘歯車機構、従動軸30、動力軸20、遠心クラッチ機構12、エンジン10等に過大な負荷が加わることが抑制される。特に、相対回転が生じるトルクは遠心クラッチ機構12の許容トルクよりも低いトルクに設定されているため、遠心クラッチ機構12に負荷を与えることも抑制される。したがって、これらの構成部品に加わる負荷が軽減され、構成部品の摩耗や破損を防止して寿命を長くすることができ、整備の頻度を抑えて使い勝手を向上させることができる。
【0029】
さらに、本実施形態の場合、従動軸30の端部131の断面における平行な対辺の距離はスプリング140の断面における平行対向部141より僅かに小さい。したがって、従動軸30のスプリング140への組み付けは、従動軸30の端部131の平行な対辺がスプリングの平行対向部141と平行になるように位置を合わせて従動軸30をスプリング140内に挿入するだけで良い。このため、組み付け作業を容易に行なうことができ、製造コストの低減や整備性の向上を図ることもできる。
【0030】
なお、上述の構成に限らず、スプリング140が断面非円形で、動力軸側の端部または、従動軸側の端部の何れか一方が断面非円形であれば、圧入を必要とせずに回転の伝達を行うことができるため、組み付け作業が容易となり、製造コストの低減や整備性の向上を図ることができる。また、動力軸120の端部121はスプリング140の内周に圧入して嵌挿されるようにしたが、正回転時における端部121とスプリング140との相対回転や抜け止めを行う係止部を、端部121もしくは操作棹2の内壁に備えるようにしてもよい。
【0031】
なお、上述のスプリング140と従動軸30の端部131および動力軸20の端部121との関係は、動力軸20の端部121がスプリング140の内周に僅かな遊びをもって緩挿され、従動軸30の端部131がスプリング140の内周に圧入して嵌挿される関係としてもよく、この場合も上述と同様の効果を得ることができる。
【0032】
次に、本発明の第3実施形態を、
図10−
図15に基づいて説明する。本実施形態では、第1および第2実施形態のコイル状のスプリング40、140の代わりにカップリング部材240を用いたものである。なお、第1および第2実施形態と同等の機能を有する構成については同一符号を付して説明は省略する。
【0033】
図10に示すように、カップリング部材240(弾性連結部)は、円筒部241と板バネ部245から構成される。円筒部241には、一方の端部から軸250と平行に延びる第1切り欠き部242と第2切り欠き部243とが形成される。第1切り欠き部242の軸250と平行に平面状に形成される軸250側の壁面(軸側壁面)242aと軸250から離れる側の壁面(縁側壁面)242bとは
図11に示すように平行に対向する。また、第2切り欠き部243の軸250と平行に平面状に形成される軸側壁面243aは、第1切り欠き部242の軸側壁面242aと同一の平面上に位置するように形成される。そして、第2切り欠き部243の軸250と平行に平面状に形成される縁側壁面243bは、軸側壁面243aに対して反時計方向に所定角度α傾き、第1切り欠き部242の縁側壁面242bに接続する。したがって、第1切り欠き部242の軸側壁面242aと縁側壁面242bとの距離は、第2切り欠き部243の軸側壁面243aと縁側壁面243bとの距離より小さい。
【0034】
板バネ部245は、例えばばね鋼等から成る矩形状の金属板であり、第1切り欠き部242の軸側壁面242aと縁側壁面242bとの距離に略等しい厚さを有する。また、板バネ部245は、
図10において軸方向には切り欠き部242及び243の軸250の方向の長さと略等しい長さを有し、
図10の左右方向には第1切り欠き部242の軸側壁面242aから第2切り欠き部243の軸側壁面243aに達する長さを有する。
【0035】
図12、
図14に示すように、板バネ部245は、円筒部241の第1切り欠き部242内に軸側壁面242aと縁側壁面242bとの間に挟まれて固定され、第2切り欠き部243に向かって円筒部241の内部空間を塞ぐように円筒部241に組み付けられてカップリング部材240を構成する。なお、板バネ部245は第1切り欠き部242で固定され、第2切り欠き部243側は自由端となるので、カップリング部材240の径方向(円筒部241の第2切り欠き部242の縁側壁面243bの方向)に弾性変形可能である。
【0036】
図12に示すように、回転刃3とは反対側の従動軸30の端部にはカップリング部材240が固定される。従動軸30は、カップリング部材240の板バネ部245が設けられた側とは反対側の端部に、従動軸30とカップリング部材240とが同軸になるように固定される。そして、カップリング部材240の板バネ部245側の端部から板バネ部245と円筒部241の内部で形成される空間に、動力軸20の端部221が緩挿される。動力軸20の端部221には平坦面221a(平坦部)が形成され、刈払機1が組み立てられた状態では、
図12に示すように、動力軸20の端部221の平坦部221aは板バネ部245に僅かな遊び(図示せず)を持って対向し、動力軸20、従動軸30、およびカップリング部材240は同軸になるように配置される。動力軸20がカップリング部材240に対して回転すると、平坦面221aが板バネ部245に当接し、板バネ部245を径方向の外側(第2切り欠き部242の縁側壁面243bの方向)に変形させる。
【0037】
図13において矢印で示すように、カップリング部材240に対して動力軸20が反時計方向に回転して動力軸20とカップリング部材240との間に所定値以上のねじりトルクが発生すると、平坦面221aが板バネ部245を乗り越え可能となるように板バネ部245が縁側壁面243bの方向に変形し、動力軸20とカップリング部材240とが相対回転となる。なお、通常の作業状態でカップリング部材240に発生するねじりトルクの範囲内では板バネ部245が変形して動力軸20とカップリング部材240との相対回転が生じないような与圧が板バネ部245には与えられる。また、所定値以上のねじりトルクは遠心クラッチ機構12の許容トルクより小さいトルクである。
【0038】
このように構成された刈払機1によれば、通常の作業状態では、
図14に示すように、カップリング部材240の板バネ部245がカップリング部材240の径方向の外側に変形してカップリング部材240と動力軸20との相対回転が生じることが無いので、エンジン10のクランク軸11の回転は遠心クラッチ機構12を介して動力軸20、カップリング部材240、従動軸30、傘歯車機構へと伝わって、回転刃3が回転する。作業中の回転刃3の草等への接触やエンジン回転数の加減速により駆動伝達系にトルク変動が生じ、カップリング部材240と一体に動く従動軸30と動力軸20との間にねじり振動が発生した場合、動力軸20の端部221の平坦面221aが板バネ部245を変形させる。板バネ部245の変形時に端部221の回転軸方向に作用する緩衝力および平坦面221aと板バネ部245との間に発生する摩擦により、板バネ部245と平坦面221aとが効果的にねじり振動の発生を抑制し、減衰させることができる。なお、板バネ部245に粘弾性特性を有する材料を用いることで、より振動減衰効果を発揮させることも可能である。
【0039】
一方、回転刃3が回転中に、例えば草等が絡みついたりして回転刃3の回転が急停止すると、カップリング部材240と動力軸20との間に生じるトルクが急上昇して板バネ部245を径方向外側に変形させる。この結果、
図15に示すように、動力軸20の端部221の平坦面221aが板バネ部245を乗り越えて、動力軸20がカップリング部材240に対して矢印の方向に回転する。このため、エンジン10の回転トルクのロックしている従動軸30への伝達はカップリング部材240の板バネ部245の変形により遮断され、回転刃3、傘歯車機構、従動軸30、動力軸20、遠心クラッチ機構12、エンジン10等に過大な負荷が加わることが抑制される。特に、相対回転が生じるトルクは遠心クラッチ機構12の許容トルクよりも低いトルクに設定されているため、遠心クラッチ機構12に負荷を与えることも抑制される。したがって、これらの構成部品に加わる負荷が軽減され、構成部品の摩耗や破損を防止して寿命を長くすることができ、整備の頻度を抑えて使い勝手を向上させることができる。
【0040】
さらに、本実施形態の場合、動力軸20の端部221の平坦面221aはカップリング部材240の板バネ部245に対して、僅かな遊びを持って対向する。したがって、動力軸20と従動軸30に固定されたカップリング部材240との組み付けは、動力軸20の端部221の平坦面221aと板バネ部245とが平行になるように位置を合わせてカップリング部材240の円筒部241内に動力軸20の端部221を挿入すれば良い。このため、組み付け作業を容易に行なうことができ、製造コストの低減や整備性の向上を図ることもできる。
【0041】
なお、上述のようにカップリング部材240と従動軸30とが固定され、動力軸20をカップリング部材240に組み付けるだけで無く、カップリング部材240と動力軸20とを固定して、従動軸30の端部231に平坦面を形成してカップリング部材240に組み付けるようにしてもよく、この場合も上述と同様の効果を得ることができる。
【0042】
上述の実施形態はいずれも操作桿2が一つの中空パイプで構成され、エンジン10側で動力軸20と従動軸30とがスプリング40、140、またはカップリング部材240によって連結されていたが、以下に
図16、
図17に沿って説明する本発明の第4実施形態のような構成としてもよい。なお、第1−第3実施形態と同等の機能を有する構成については同一符号を付して説明は省略する。
【0043】
図16に示すように、刈払機1の操作桿302は、第1パイプ303と第2パイプ304とが接合部305にそれぞれ取付けられて構成される。第1パイプ303は、一方の端部が駆動部5に取り付けられ、他方の端部は接合部305に取り付けられる。第2パイプ304は、一方の端部がギアケース4に取り付けられ、他方の端部は接合部305にピン309により着脱可能に取り付けられる。
【0044】
図17に示すように、操作桿302内には、第1パイプ303内に回転可能に支持される第1従動軸330と、第2パイプ304内に回転可能に支持される第2従動軸335とが収容される。第1従動軸330の駆動部5側の構造は上述の第1−第3実施形態のいずれかにおける従動軸30の駆動部5側の構造と同じであり、上述の第1−第3実施形態のいずれかで説明した構成を用いて駆動部5に対して取付けられる。一方、第1従動軸330は、接合部305側で第1パイプ303の端部から第1パイプ303に固定された接合部305内に突出し、ブッシュ318により回転可能に支持される。そして、第1従動軸330の接合部305側の端部331は、上述の第2実施形態の動力軸の端部121と同様に断面が略正八角形に構成される。この場合は、第1従動軸330も第1の回転部に相当する。
【0045】
第2従動軸335の回転刃3側の端部は、上述の第1−第3実施形態のいずれかにおける従動軸30と同様に構成され、上述の第1−第3実施形態の場合と同様に駆動部5に対して取付けられる。第2従動軸335の回転刃3側の構造は上述の第1−第3実施形態のいずれかにおける従動軸30の回転刃3側の構造と同じであり、上述の第1−第3実施形態のいずれかの場合と同様にギアケース4内の傘歯車機構に接続される。一方、第2従動軸335は、回転刃3側で第2パイプ304の端部を突出して第2パイプ304にピン309で固定された接合部305内に突出する。そして、第2従動軸335の接合部305側の端部336は、上述の第2実施形態の従動軸130の端部131と同様に断面が略正八角形に構成される。この場合は第2従動軸335も第2の回転部に相当する。
【0046】
第1従動軸330の端部331と第2従動軸335の端部336とは、接合部305内で、上述の第2実施形態のスプリング140と同様に断面が角丸長方形のコイルばねからなる第2スプリング340(弾性連結部)で連結される。なお、この場合、第1従動軸330の端部331は第2スプリング340の内周に圧入して嵌挿され、第2従動軸335の端部336は第2スプリング340の内側に僅かな遊び(図示せず)をもって緩挿される。また、第2スプリング340の巻き方向は、第2スプリング340に第1従動軸330および第2従動軸335が取り付けられた状態において、第2従動軸335に対して第1従動軸330がエンジン10の正回転時の回転方向に回転する場合にトルクが第2スプリング340に加わると、第2スプリング340の内径が広がる方向である。なお、この他の第2スプリング340と第1従動軸330および第2従動軸335が組み付けられた状態での特性は第2実施形態の場合と同様である。
【0047】
このように構成された刈払機1によれば、接合部305内の第1従動軸330と第2スプリング340と第2従動軸335との間で、第2実施形態の場合と同様に、ねじり振動の低減効果および所定値以上のトルクが発生した場合の動力伝達の遮断による構成部品の保護効果を有する。なお、本実施形態の場合、第1従動軸330の両端でねじり振動の低減および動力伝達の遮断を行なうことができる。このため、振動低減効果がより向上するだけでなく、動力伝達の遮断もより確実に行なうことができ、構成部品を保護してより長寿命な刈払機1を提供することができる。
【0048】
さらに、第2パイプ304を接合部305からピン309を外して引き抜くと第2従動軸335の端部336もスプリング340から同時に引き抜かれるので、長尺の操作桿302を容易に分割することができる。また、分割した操作桿302の組立ては、第2従動軸335の接合部305側の端部336の平行な対辺が第2スプリング340の平行対向部(図示せず)と平行になるように位置を合わせて第2パイプ304を接合部305内に挿入した後にピン309で固定するだけで容易に行なうことができる。このため、刈払機1の整備性がより向上するとともに、収納や持ち運びを容易に行なうこともできる。
【0049】
なお、上述の第2スプリング340と第1従動軸330の端部331および第2従動軸335の端部336との組み付けの関係は、第1従動軸330の端部331が第2スプリング340の内周に僅かな遊びをもって緩挿され、第2従動軸335の端部336が第2スプリング340の内周に圧入して嵌挿される関係としてもよく、この場合も上述と同様の効果を得ることができる。
【0050】
さらに、上述の第2スプリング340と第1従動軸330の端部331および第2従動軸335の端部336は、第2実施形態の構成と同様であったが、これらを第3実施形態の構成と置き換えてもよい。この場合、第1従動軸330または第2従動軸335を第3実施形態のカップリング部材240と同様の第2カップリング部材に固定し、平坦面を形成した第2従動軸335の端部336または第1従動軸330の端部331を第2カップリング部材に緩挿する。そして、この場合も上述と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、第1従動軸330の両端と動力軸20および第2従動軸335とは、同じ構成(例えば第2実施形態と同様のスプリング140、340を用いる構成)を用いて連結されてもよいし、異なる構成(例えば動力軸20とはスプリング40、第2従動軸335とはスプリング340)を用いて連結されてもよく、動力軸20と第1従動軸330とが一体あるいは直結される構成であってもよい。
【0052】
さらに、第1従動軸330および/または第2従動軸335は可撓性を有するフレキシブルシャフトであってもよい。この場合、ねじり振動が発生すると、フレキシブルシャフト自体もねじり振動の変位を吸収するため、より振動減衰効果を向上させることができる。特に第3実施形態のようなカップリング部材240を用いた場合にフレキシブルシャフトを組み合わせた場合には効果的である。
【0053】
なお、本発明は、上述の第1−第4実施形態のように操作桿2、302の両端に駆動部5と回転刃3が設けられた刈払機1への適用に限られるものでは無く、例えば、背負い式の刈払機や、刈払機以外のポールソーやカルチベータ等の駆動軸を介して動力の伝達を行う動力工具に適用することも可能である。例えば、一端でエンジン10が収容された駆動部のクラッチカバーと操作桿とに着脱可能に接続されるフレキシブルシャフトが内挿されたフレキシブルカバーを用いた背負い式刈払機の場合には、フレキシブルシャフトと従動軸との接続部分に第2または第3実施形態の構成を適用し、フレキシブルシャフトと駆動部との接続部分にも第2または第3実施形態の構成を適用すればよい。このようにすれば、フレキシブルカバーの操作桿およびクラッチカバーへの着脱が容易になると同時に過大なトルクが発生した場合には動力伝達を遮断して構成部品を保護することが可能になる。