特許第5742128号(P5742128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許5742128-バーナ装置 図000002
  • 特許5742128-バーナ装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5742128
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】バーナ装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/70 20060101AFI20150611BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   F23D14/70 A
   F01N3/02 331S
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-170467(P2010-170467)
(22)【出願日】2010年7月29日
(65)【公開番号】特開2012-32049(P2012-32049A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 洋一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正治
(72)【発明者】
【氏名】足利 泰宜
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 昭彦
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−140114(JP,U)
【文献】 実開昭63−23520(JP,U)
【文献】 特開2006−112401(JP,A)
【文献】 特開2010−84710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00 − 14/84
F01N 3/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流体の流れる途中に設けられ、燃料と酸素とを含む混合気に着火して高温ガスを生成するバーナ装置であって、
前記高温ガスの生成される箇所の下流側に設置され、発熱体が配置されていない位置に循環流を形成する循環流形成手段を備え
前記高温ガスの生成される箇所は、前記ガス流体が流れる供給流路に対して屈曲して接続される管体部の内部に設けられ、
前記循環流形成手段は、前記供給流路の前記管体部が接続される側と反対側の壁面に設けられ、前記高温ガスの流れに晒される邪魔板からなる
ことを特徴とするバーナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の排気ガス中には、微粒子(パティキュレートマター)が含まれている。当該微粒子を大気中に放出することによる環境への影響が懸念されることから、近年は、ディーゼルエンジン等を搭載する車両には、排気ガス中の微粒子を除去するためのフィルタ(DPF)が設置されている。
このフィルタは、上記微粒子よりも小さな孔を複数備える多孔質体であるセラミックス等によって形成されており、上記微粒子の通過を阻止することによって微粒子の捕集を行っている。
【0003】
ところが、このようなフィルタを長時間使用していると、捕集した微粒子が蓄積されてフィルタが目詰まり状態となる。
このようなフィルタの目詰まりを防止するために、例えば特許文献1に示されるように、フィルタに対して高温ガスを供給することによって、フィルタに捕集された微粒子を燃焼させて除去する方法が用いられている。
【0004】
具体的には、例えば、ディーゼルエンジンとフィルタとの間にバーナ装置を設置し、排気ガスと燃料とが混合された混合気を燃焼させて高温ガスを発生させ、当該高温ガスをフィルタに供給することによって微粒子を燃焼させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−154772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バーナ装置においては、高温ガスの温度をフィルタの再生が可能な温度まで高める必要があり、そのためには、予め定められた量の燃料を燃焼させることが必要となる。
しかしながら、バーナ装置に供給される排気ガス等における酸素濃度が減少した場合には、燃料が完全に燃焼することなく未燃焼の燃料が残存して下流側に流れ、フィルタの上流側に設けられている触媒を汚損するおそれがあった。
このように触媒が未燃の燃料で汚損されると、触媒を活性温度に高める障害になることに加え、次回の再生処理の際に付着した燃料が燃焼して高温となり触媒の寿命を低下させるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、バーナ装置において、より多くの燃料を燃焼させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、ガス流体の流れる途中に設けられ、燃料と酸素とを含む混合気に着火して高温ガスを生成するバーナ装置であって、上記高温ガスの生成される箇所の下流側に設置されて循環流を形成する循環流形成手段を備えるという構成を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記循環流形成手段が、上記高温ガスの流れに晒される邪魔板からなるという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記循環流形成手段で形成される上記循環流中に設置される発熱体を備えるという構成を採用する。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記発熱体が、グロープラグからなるという構成を採用する。
【0013】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記発熱体が、上記循環流形成手段の下流側に配置されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高温ガスの生成される箇所の下流側に、循環流を形成する循環流形成手段が設けられているので、循環流により高温ガスの滞留時間が長くなり、高温ガス中に未然分の燃料が残存している場合は、その滞留時間を利用して燃焼させることができる。
したがって、本発明によれば、バーナ装置において、より多くの燃料を燃焼させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態におけるバーナ装置の概略構成を示す断面図である。
図2図1のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るバーナ装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
図1は、本実施形態のバーナ装置S1の概略構成を示す断面図である。図2は、図1のX−X線断面図である。
このバーナ装置S1は、上流側に配置されるディーゼルエンジン等の排気ガスを排出する装置の排気口と接続され、酸素を含む排気ガスXと燃料を混合して燃焼させることによって高温ガスZを発生させると共に当該高温ガスZを後流側のフィルタに供給するためのものであり、例えばディーゼルエンジンとパティキュレートフィルタとの間に配置される。そして、本実施形態のバーナ装置S1は、供給流路1と、燃焼部2とを備えている。
【0018】
供給流路1は、ディーゼルエンジン等の装置から供給される排気ガスXを通過させて直接フィルタに対して供給するための流路であり、一方の端部がディーゼエンジン等の装置の排気口と接続され、他方の端部がフィルタに接続された円筒形状の配管によって構成されている。
【0019】
燃焼部2は、供給流路1と接続されると共に、内部において供給流路1を流れる排気ガスXの一部と燃料とを混合させて燃焼させることによって高温ガスを生成するものである。そして、この燃焼部2は、管体部4と、燃料噴射装置5と、着火装置7と、仕切り部材8と、助燃空気供給装置9とを備えている。
【0020】
管体部4は、燃焼部2の外形を形成する管状の部材であり、内部が中空とされている。そして、管体部4は、内部が供給流路1に対して上方から接続されている。また、本実施形態のバーナ装置S1において管体部4は、垂直方向から内部が供給流路1に対して接続されている。なお、管体部4は、その水平断面形状が矩形とされている。
【0021】
燃料噴射装置5は、フィルタの再生に必要な量の燃料Nを供給するものであり、管体部4の側壁に対して固定されている。そして、着火装置7に向けて(すなわち着火領域R2に)燃料Nを噴射するものである。
【0022】
着火装置7は、供給される燃料と排気ガスXとからなる混合気Yに対して着火するものであり、管体部4の天井に固定されている。この着火装置7は、グロープラグ7aとその先端に設置される燃料保持部7bとによって構成されている。
なお、燃料保持部7bは、例えば、金網、焼結金属、金属繊維、ガラス布、セラミック多孔体、セラミックファイバ、軽石等によって形成される多孔質体から構成される。
【0023】
仕切り部材8は、管体部4の内部を、排気ガスXを取り込むための排気ガス流路領域R1と、着火装置7が設置される着火領域R2と、混合気Yの燃焼が維持される保炎領域R3とに区分けするものである。そして、仕切り部材8は、管体部4の中央部に上下に延在すると共に管体部4の天井と離間して配置される中央板8aと、中央板8aから水平に延在すると共に管体部4の内壁と離間する側板8bとを有している。この側板8bの面積は、燃料保持部7bの上方から見た面積よりも広く設定されている。そして、中央板8aによって排気ガス流路領域R1と着火領域R2及び保炎領域R3とが区分けされ、側板8bによって着火領域R2と保炎領域R3とが区分けされている。
【0024】
この仕切り部材8は、図1に示すように、側板8bに形成された貫通孔8cを介して着火領域R2から保炎領域R3に混合気Yを通気可能とする。
また、仕切り部材8は、図1に示すように、中央板8aと管体部4の天井との隙間によって排気ガス流路領域R1から着火領域R2に排気ガスXを通気可能とする。
つまり、仕切り部材8は、排気ガス流路領域R1と、着火領域R2と、保炎領域R3とを順に通気可能に区分けしている。
【0025】
さらに、仕切り部材8は、排気ガス流路領域R1から保炎領域R3に排気ガスXの一部を直接供給するための貫通孔8dも備えている。
【0026】
また、仕切り部材8は、燃料噴射装置5から噴射された燃料を着火領域R2と保炎領域R3とに分けて供給する分流板8eを備えている。
この分流板8eは、燃料噴射装置5から噴射された燃料Nの一部を保炎領域R3に分流して供給するものであり、側板8bの端部に固定されると共に着火装置7と燃料噴射装置5との間に配置されている。
また分流板8eは、その表面を燃料噴射装置5に向けて配置されており、表面で受けた燃料Nを燃料Nの自重によって伝わらせて側板8bの保炎領域R3側に供給する。
【0027】
このような仕切り部材8は、側板8bに形成された貫通孔8cを介して着火領域R2から保炎領域R3に混合気Yを通気することによって、当該混合気Yの流速を、保炎領域R3において燃焼が安定化される流速に調節する。
また、仕切り部材8は、排気ガス流路領域R1を流れる排気ガスXを中央板8aと管体部4の天井との隙間を介して着火領域R2に供給する。
また、仕切り部材8は、排気ガス流路領域R1を流れる排気ガスXの一部を貫通孔8dを介して保炎領域R3に供給する。
【0028】
助燃空気供給装置9は、必要に応じて補助的に管体部4の内部(排気ガス流路領域R1)に空気を供給するものであり、空気を供給する空気供給装置や、この空気供給装置と管体部4の内部とを接続する配管等を備えている。
【0029】
そして、本実施形態のバーナ装置S1は、供給流路1に設置される保炎板10(循環流形成手段、邪魔板)と、補助着火装置11(発熱体)とを備えている。
保炎板10は、耐熱性の板材からなり、供給流路1内で、かつ、管体部4(高温ガスの生成される箇所)の下流側に設けられ、供給流路1内に循環流Rを生じさせるように、供給流路1の内壁の一部から突出するように設けられた邪魔板である。なお、図示の例では、保炎板10は供給流路1の下側壁面に設けられているが、供給流路1内に循環流を生じさせることができれば、供給流路の上側壁面または側壁面に設けるようにしても良い。
そして、保炎板10は、供給流路1内で高温ガスZの流れに晒され、高温ガスZの流れの一部を堰き止めることによって、後流側に循環流Rを形成する。
【0030】
補助着火装置11は、通電することにより発熱するグロープラグから構成されており、保炎板10の下流であって、保炎板10によって形成される循環流R中に設置されている。この補助着火装置11は、保炎領域R3から循環流Rまで火炎が伝播されなかった場合であっても、循環流Rにおいて、高温ガスZ中に残存する混合気に対して着火を行うことを可能とするものである。
【0031】
このように構成された本実施形態におけるバーナ装置S1においては、供給流路1から排気ガス流路領域R1に取り込まれた排気ガスXが着火領域R2に供給される。
一方で、不図示の制御装置下において着火装置7が加熱され、燃料噴射装置5から着火装置7に向けて燃料Nが噴射される。
【0032】
燃料噴射装置5から噴射された燃料Nの一部が分流板8eによって遮られて保炎領域R3に供給され、分流板8eによって遮られなかった残りの燃料Nが着火装置7に供給される。
着火装置7に供給された燃料Nは、気化されて混合気Yとなり、その後さらに加熱されて着火する。
【0033】
このように着火領域R2において混合気Yが着火されると、着火によって生成された火炎が未燃の混合気Yと共に保炎領域R3に伝播する。この結果、保炎領域R3において火炎Fが形成され、保炎が図られる。
そして、分流板8eを伝わる燃料Nは、仕切り部材8の側板8bを伝わりながら加熱されて気化あるいは微粒化して保炎領域R3に供給される。
この結果、分流板8eによって保炎領域R3に供給された燃料Nは、火炎Fによって燃焼される。ただし、一部の燃料は残存して高温ガスZに含有されることとなる。つまり、高温ガスZ中には、未燃の混合気Yが残存している。
【0034】
なお、混合気Yが着火された後は、着火領域R2においても、混合気Yの着火後には火炎が形成される。このため、混合気Yは、着火領域R2において1次燃焼し、その後保炎領域R3で2次燃焼する。
そして、このような場合であっても、分流板8eによって保炎領域R3に供給された燃料Nは、火炎Fによって燃焼されるか残存して高温ガスZに含有されることとなる。
【0035】
そして、高温ガスZは、供給流路1を流れ、一部が保炎板10に流れを遮られる。この結果、保炎板10の下流側に循環流Rが形成される。ここで、保炎領域R3で形成された火炎Fが循環流Rまで伝播している場合には、高温ガスZに含まれる混合気Yは、循環流Rで循環されながら燃焼を続ける。一方、保炎領域R3で形成された火炎Fが循環流Rまで伝播しない場合には、補助着火装置11によって混合気Yが再度着火温度以上に加熱されて着火され、循環流Rにおいて混合気Yの燃焼が継続される。
【0036】
本実施形態のバーナ装置S1によれば、高温ガスZの生成される箇所の下流側に、循環流Rを形成する保炎板10が設けられているので、循環流Rにより高温ガスZの滞留時間が長くなり、高温ガスZ中に未然分の燃料が残存している場合は、その滞留時間を利用して燃焼させることができる。
したがって、本実施形態のバーナ装置S1によれば、より多くの燃料を燃焼させることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態のバーナ装置S1では、本発明の循環流形成手段が高温ガスの流れに晒される邪魔板である保炎板10からなる構成を採用している。このため、簡易な構成で循環流Rを形成することができる。
【0038】
また、本実施形態のバーナ装置S1では、循環流R中に設置される補助着火装置11を備えている。このため、仮に保炎領域R3から循環流Rに火炎が伝播されない場合であっても、循環流Rにおいて再度着火することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態のバーナ装置S1では、本発明の発熱体としてグロープラグを用いている。グロープラグは、既に世の中で量産されて安価な部品であるため、循環流R中に発熱体を設置することによるコスト増を抑えることが可能となる。
【0040】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態においては、助燃空気供給装置9を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、排気ガス中に十分な濃度の酸素が含有されている場合には、助燃空気供給装置9を省略することも可能である。
【0042】
また、循環流形成手段として、保炎板10に換えて、他の形状の部材を設置しても良い。また、確実に火炎が循環流Rに伝播する場合には、補助着火装置11を省略することもできる。さらに、複数の循環流形成手段を設けても良い。
【符号の説明】
【0043】
S1……バーナ装置、R1……排気ガス流路領域、R2……着火領域、R3……保炎領域、X……排気ガス(ガス流体)、Y……混合気(ガス流体)、Z……高温ガス(ガス流体)、R……循環流、10……保炎板(循環流形成手段)、11……補助着火装置(発熱体)
図1
図2