特許第5742138号(P5742138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5742138
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】温水暖房装置
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   F24D3/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-193817(P2010-193817)
(22)【出願日】2010年8月31日
(65)【公開番号】特開2012-52708(P2012-52708A)
(43)【公開日】2012年3月15日
【審査請求日】2013年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100107445
【弁理士】
【氏名又は名称】小根田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 諒一
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山下 諭
(72)【発明者】
【氏名】岩本 淳
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−218916(JP,A)
【文献】 特開2006−084160(JP,A)
【文献】 特許第4140746(JP,B2)
【文献】 特開平04−198631(JP,A)
【文献】 特開2002−022193(JP,A)
【文献】 特開2003−185158(JP,A)
【文献】 特開2006−046809(JP,A)
【文献】 特開2004−191005(JP,A)
【文献】 特開平01−244220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
F24D 3/02−10
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を循環させる循環ポンプと、前記熱媒を加熱する熱媒加熱手段と、前記循環ポンプの吐出側の分岐点から一側に延びて前記熱媒加熱手段を通して高温熱媒を機外の高温暖房端末に循環供給する高温熱媒回路と、前記分岐点から他側に延びて開閉弁を介して低温熱媒を機外の低温暖房端末に循環供給する低温熱媒回路と、前記高温熱媒回路の途中から逆止弁を介して高温熱媒を前記開閉弁の下流側位置の低温熱媒回路に供給する高温バイパス回路とを備えた温水暖房装置であって、
前記低温暖房端末の側にのみ熱媒供給が行われる低温単独運転状態において前記開閉弁を開閉制御する開閉制御手段を備え、
前記開閉制御手段は、
機外に設置された前記低温暖房端末であってそのときに暖房運転されている低温暖房端末に流れる熱媒の流量である機外流量を推定する機外流量推定手段と、
前記機外流量推定手段により推定される機外流量の値が予め設定された設定判定値よりも小さければ前記開閉弁を閉に制御する一方、大きければ前記開閉弁を開に制御する開閉判定処理手段と
を備えており、
前記機外流量推定手段は、前記開閉弁を開にした状態で前記分岐点から前記開閉弁側に流れる分岐流量に対する、前記分岐点から前記熱媒加熱手段側に流れる分岐流量の流量比を演算処理により取得する流量比演算処理手段を備え、前記流量比演算処理手段により取得された流量比に基づいて、前記流量比と前記機外流量との関係について予め記憶設定された関係テーブルから機外流量を割り出すように構成される一方、
前記熱媒加熱手段の出口側の高温熱媒回路内の高温熱媒の温度を検出する高温往き温度センサと、前記分岐点よりも上流側の低温熱媒の温度を検出する戻り温度センサと、前記高温バイパス回路からの高温熱媒が合流された後の低温熱媒回路内の低温熱媒の温度を検出する低温往き温度センサとを備え、
前記流量比演算処理手段は、前記高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から、前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた温度差が設定温度差よりも大きいことを条件に、前記高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から前記低温往き温度センサにより検出される熱媒温度を減じた値と、前記低温往き温度センサにより検出される熱媒温度から前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた値との比として前記流量比を演算処理により取得するように構成されている、
ことを特徴とする温水暖房装置。
【請求項2】
熱媒を循環させる循環ポンプと、前記熱媒を加熱する熱媒加熱手段と、前記循環ポンプの吐出側の分岐点から一側に延びて前記熱媒加熱手段を通して高温熱媒を機外の高温暖房端末に循環供給する高温熱媒回路と、前記分岐点から他側に延びて開閉弁を介して低温熱媒を機外の低温暖房端末に循環供給する低温熱媒回路と、前記高温熱媒回路の途中から逆止弁を介して高温熱媒を前記開閉弁の下流側位置の低温熱媒回路に供給する高温バイパス回路とを備えた温水暖房装置であって、
前記低温暖房端末の側にのみ熱媒供給が行われる低温単独運転状態において前記開閉弁を開閉制御する開閉制御手段を備え、
前記開閉制御手段は、
前記開閉弁を開にした状態で前記分岐点から前記開閉弁側に流れる分岐流量に対する、前記分岐点から前記熱媒加熱手段側に流れる分岐流量の流量比を演算処理により取得する流量比演算処理手段と、
前記流量比演算処理手段により取得された流量比の値が予め設定された設定判定値よりも小さければ前記開閉弁を閉に制御する一方、大きければ前記開閉弁を開に制御する開閉判定処理手段と
を備える一方、
前記熱媒加熱手段の出口側の高温熱媒回路内の高温熱媒の温度を検出する高温往き温度センサと、前記分岐点よりも上流側の低温熱媒の温度を検出する戻り温度センサと、前記高温バイパス回路からの高温熱媒が合流された後の低温熱媒回路内の低温熱媒の温度を検出する低温往き温度センサとを備え、
前記流量比演算処理手段は、前記高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から、前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた温度差が設定温度差よりも大きいことを条件に、前記高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から前記低温往き温度センサにより検出される熱媒温度を減じた値と、前記低温往き温度センサにより検出される熱媒温度から前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた値との比として前記流量比を演算処理により取得するように構成されている、
ことを特徴とする温水暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房用の熱源として低温水を低温暖房端末に対し循環供給する一方、その低温水を加熱した上で高温水を高温暖房端末に対し循環供給するようにした温水暖房装置に関し、特に低温暖房端末に対しそのときの運転状況に応じて最適かつ効率の良い暖房出力(暖房のために供給し得る熱量)を実現させ得る技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、温水暖房装置として、低温暖房端末に対し暖房用熱源として温水を供給する上で、低温水を供給する循環ポンプの下流側(吐出側)で分岐させて、一方を開閉弁を介して低温水供給回路に延ばし、他方を加熱装置を介して高温水供給回路に延ばすようにし、加熱装置で加熱した高温水を高温水供給回路の途中から分岐させたバイパス回路により前記開閉弁の下流側位置の低温水供給回路に導いて前記開閉弁を通過してきた低温水と混合させた上で低温暖房端末に供給するように構成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。そして、この特許文献1では、低温暖房端末として複数ある場合に、暖房使用する低温暖房端末の数に応じて前記開閉弁を開閉することで暖房使用中の低温暖房端末に供給する温水量を可変にすることが提案されている。
【0003】
又、温水暖房装置の流量検出方法として、内部を流れる温水温度T1とその流量Q1が既知である第1の入水路と、内部を流れる湯水温度T2のみが既知の第2の入水路と、両入水路が合流した後の内部を流れる湯水温度T3が既知の出水路とを備えた温水暖房装置において、次式に基づく演算により前記第2の入水路の流量Q2が得られることが提案されている。
Q2=Q1×(T1−T3)/(T3−T2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−191005号公報
【特許文献2】特許第4140746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記の特許文献1で提案された温水暖房装置の構造の如く、低温水を供給する循環ポンプの下流側で分岐させて、一方を開閉弁を介して低温水供給回路に延ばし、他方を加熱装置を介して高温水供給回路に延ばすようにし、加熱装置で加熱した高温水を高温水供給回路の途中から分岐させたバイパス回路により前記開閉弁の下流側位置の低温水供給回路に導いて前記開閉弁を通過してきた低温水と混合させた上で低温暖房端末に供給するようにした場合には、低温暖房端末の設置数の多少、又は、複数設置した低温暖房端末の暖房使用数の多少によって、暖房出力は前記開閉弁の開閉如何との関係において次のような特性を示すことになると考えられる。
【0006】
すなわち、複数設置されている低温暖房端末の運転数(暖房使用数)が多ければ、前記開閉弁を開にした方が機外流量(機外に流れる温水流量)の増加により暖房出力を高くし得るのに対し、前記運転数が少なければ前記開閉弁を閉にした方が機外流量は低下するかもしれないが加熱装置で加熱されてバイパス回路から合流される高温水の混合量が増加する結果、暖房出力を高くし得ることになる。
【0007】
本発明者らは、このような特性に鑑み、そのときの運転状況等に応じて変化する機外流量を把握できれば、その機外流量に応じて前記の開閉弁の開閉制御を最適化することができ、これにより、低温暖房端末の運転状況の如何に拘わらずそのときの運転状況に応じて発揮し得る最大の暖房出力を実現させることができると考えた。すなわち、暖房端末の運転数の如何と機外流量の如何とは対応せず、暖房端末の運転数の把握だけによる開閉弁の開閉制御では必ずしも現実の運転状況には合致しないと考えられる。このため、開閉制御に基づく開閉弁の開閉切換が不正確なものとなって暖房出力を最適化することはできないと考えられる。
【0008】
しかしながら、温水暖房装置から外部に設置されている種々の暖房端末に流れる流量(機外流量)を把握するには、流量計等の設置が必要になると考えられるものの、これらの経路には暖房熱源用の温水として不凍液等の様々な液体が充填されているため、通常の流量検出のための機器(例えば羽根車式流量センサ)で計測することは困難となる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流量計等の流量を直接に計測するための機器を用いることなく機外流量を把握し、把握した機外流量に基づき低温水供給路に設置した開閉弁の開閉制御を実行することにより、最大の暖房出力を発揮させ得るようにした温水暖房装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、第1の発明(請求項1)では、熱媒を循環させる循環ポンプと、前記熱媒を加熱する熱媒加熱手段と、前記循環ポンプの吐出側の分岐点から一側に延びて前記熱媒加熱手段を通して高温熱媒を機外の高温暖房端末に循環供給する高温熱媒回路と、前記分岐点から他側に延びて開閉弁を介して低温熱媒を機外の低温暖房端末に循環供給する低温熱媒回路と、前記高温熱媒回路の途中から逆止弁を介して高温熱媒を前記開閉弁の下流側位置の低温熱媒回路に供給する高温バイパス回路とを備えた温水暖房装置を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記低温暖房端末の側にのみ熱媒供給が行われる低温単独運転状態において前記開閉弁を開閉制御する開閉制御手段を備えることとし、前記開閉制御手段として、機外に設置された前記低温暖房端末であってそのときに暖房運転されている低温暖房端末に流れる熱媒の流量である機外流量を推定する機外流量推定手段と、前記機外流量推定手段により推定される機外流量の値が予め設定された設定判定値よりも小さければ前記開閉弁を閉に制御する一方、大きければ前記開閉弁を開に制御する開閉判定処理手段とを備える構成とする
【0011】
以上の特定事項の場合、前記循環ポンプの吐出側の分岐点からの低温熱媒回路に介装された前記開閉弁の開閉制御が機外流量推定手段により推定された機外流量とその設定判定値との大小比較により行われるため、かかる機外流量に基づく開閉制御によってそのときの運転状況に応じて最大の暖房出力を得るための開閉切換を最適化することが可能になる。その上に、機外流量について流量計等の機器を用いた直接計測という手段を用いることなく、流量計等の機器設置に伴うコスト増等の不都合発生を回避することが可能になる。
【0012】
第1の発明(請求項1)では、さらに、前記機外流量推定手段として、前記開閉弁を開にした状態で前記分岐点から前記開閉弁側に流れる分岐流量に対する、前記分岐点から前記熱媒加熱手段側に流れる分岐流量の流量比を演算処理により取得する流量比演算処理手段を備え、前記流量比演算処理手段により取得された流量比に基づいて、前記流量比と前記機外流量との関係について予め記憶設定された関係テーブルから機外流量を割り出す構成とした。この特定事項の場合、機外流量について、流量計等の機器を用いた直接計測という手段を用いなくても、前記流量比演算処理手段により取得される流量比に基づいて前記関係テーブルから精度良く割り出すことが可能となる。そして、精度良く割り出された機外流量に基づいて前記開閉弁の開閉制御をより最適に行うことが可能となってそのときの運転状況に応じた最大の暖房出力を精度よく実現させ得るようになる。その上、本発明(請求項1)では、前記熱媒加熱手段の出口側の高温熱媒回路内の高温熱媒の温度を検出する高温往き温度センサと、前記分岐点よりも上流側の低温熱媒の温度を検出する戻り温度センサと、前記高温バイパス回路からの高温熱媒が合流された後の低温熱媒回路内の低温熱媒の温度を検出する低温往き温度センサとを備え、前記流量比演算処理手段として、前記高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から、前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた温度差が設定温度差よりも大きいことを条件に、前記高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から前記低温往き温度センサにより検出される熱媒温度を減じた値と、前記低温往き温度センサにより検出される熱媒温度から前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた値との比として前記流量比を演算処理により取得する構成とした。この特定事項の場合、実際に流れている熱媒温度の検出値を用いた演算処理により取得された流量比に基づいて、現在の運転状況での機外流量が把握されるため、前記開閉弁について、より精度の良い開閉制御の実行が可能となる。その際、高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から、前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた温度差が設定温度差よりも大きいことを条件にして演算を行うようにしているため、演算した流量比から機外流量の割り出しを精度良く行うことが可能となる。これらにより、最大の暖房出力を得るための開閉制御をより精度良く行い得るようになる。
【0013】
又、第2の発明(請求項2)では、熱媒を循環させる循環ポンプと、前記熱媒を加熱する熱媒加熱手段と、前記循環ポンプの吐出側の分岐点から一側に延びて前記熱媒加熱手段を通して高温熱媒を機外の高温暖房端末に循環供給する高温熱媒回路と、前記分岐点から他側に延びて開閉弁を介して低温熱媒を機外の低温暖房端末に循環供給する低温熱媒回路と、前記高温熱媒回路の途中から逆止弁を介して高温熱媒を前記開閉弁の下流側位置の低温熱媒回路に供給する高温バイパス回路とを備えた温水暖房装置を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記低温暖房端末の側にのみ熱媒供給が行われる低温単独運転状態において前記開閉弁を開閉制御する開閉制御手段を備え、前記開閉制御手段として、前記開閉弁を開にした状態で前記分岐点から前記開閉弁側に流れる分岐流量に対する、前記分岐点から前記熱媒加熱手段側に流れる分岐流量の流量比を演算処理により取得する流量比演算処理手段と、前記流量比演算処理手段により取得された流量比の値が予め設定された設定判定値よりも小さければ前記開閉弁を閉に制御する一方、大きければ前記開閉弁を開に制御する開閉判定処理手段とを備えることとする
【0014】
この特定事項の場合、請求項1の場合よりも簡易な制御内容によって、請求項1の場合と同様の作用が得られることになる。すなわち、前記循環ポンプの吐出側の分岐点からの低温熱媒回路に介装された前記開閉弁の開閉制御が流量比演算処理手段により取得された前記流量比とその設定判定値との大小比較により行われるため、かかる流量比に基づく開閉制御によってそのときの運転状況に応じて最大の暖房出力を得るための開閉切換を最適化することが可能になる。その上に、機外流量について流量計等の機器を用いた直接計測という手段を用いることなく、前記流量比によって機外流量の如何を把握することが可能であるため、流量計等の機器設置に伴うコスト増等の不都合発生を回避することが可能になる。
【0015】
さらに、第2の発明(請求項2)では、前記熱媒加熱手段の出口側の高温熱媒回路内の高温熱媒の温度を検出する高温往き温度センサと、前記分岐点よりも上流側の低温熱媒の温度を検出する戻り温度センサと、前記高温バイパス回路からの高温熱媒が合流された後の低温熱媒回路内の低温熱媒の温度を検出する低温往き温度センサとを備え、前記流量比演算処理手段として、前記高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から、前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた温度差が設定温度差よりも大きいことを条件に、前記高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から前記低温往き温度センサにより検出される熱媒温度を減じた値と、前記低温往き温度センサにより検出される熱媒温度から前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた値との比として前記流量比を演算処理により取得する構成とした。この特定事項の場合、実際に流れている熱媒温度の検出値を用いた演算処理により取得された流量比に基づいて、現在の運転状況での機外流量が把握されるため、前記開閉弁について、より精度の良い開閉制御の実行が可能となる。その際、高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から、前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた温度差が設定温度差よりも大きいことを条件にして演算を行うようにしているため、演算した流量比から機外流量の割り出しを精度良く行うことが可能となる。これにより、最大の暖房出力を得るための開閉制御をより精度良く行い得るようになる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、請求項1の温水暖房装置によれば、循環ポンプの吐出側の分岐点からの低温熱媒回路に介装された開閉弁の開閉制御を、機外流量推定手段により推定された機外流量とその設定判定値との大小比較により行うようにしているため、かかる機外流量に基づく開閉制御によってそのときの運転状況に応じて最大の暖房出力を得るための最適な開閉切換を行うことができるようになる。その上に、機外流量について流量計等の機器を用いた直接計測という手段を用いることなく、流量計等の機器設置に伴うコスト増等の不都合発生を回避することができる。
【0017】
、分岐点から開閉弁側に流れる分岐流量と、分岐点から熱媒加熱手段側に流れる分岐流量との流量比を流量比演算処理手段により取得し、取得した流量比に基づいて、流量比と機外流量との関係について予め記憶設定した関係テーブルから機外流量を割り出すようにしているため、機外流量について、流量計等の機器を用いた直接計測という手段を用いなくても、前記流量比に基づいて精度良く割り出すことができ、精度良く割り出された機外流量に基づいて開閉弁の開閉制御をより最適に行うことができるようになる。この結果、そのときの運転状況に応じた最大の暖房出力を精度よく実現させることができるようになる。加えて、高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から、前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた温度差が設定温度差よりも大きいことを条件にして演算を行っているため、演算した流量比から機外流量の割り出しを精度良く行うことができる上に、実際に流れている熱媒温度の検出値を用いて演算処理により取得された流量比に基づいて、現在の運転状況での機外流量を把握することができ、前記開閉弁について、より精度の良い開閉制御を実行することができるようになる。これにより、最大の暖房出力を得るための開閉制御をより精度良く行うことができるようになる。
【0018】
又、請求項の温水暖房装置によれば、請求項1の場合よりも簡易な制御内容によって、請求項1の場合と同様の効果を得ることができるようになる。循環ポンプの吐出側の分岐点からの低温熱媒回路に介装された開閉弁の開閉制御を、流量比演算処理手段により取得された前記流量比とその設定判定値との大小比較により行うようにしているため、かかる流量比に基づく開閉制御によってそのときの運転状況に応じて最大の暖房出力を得るための最適な開閉切換を行うことができるようになる。その上に、機外流量について流量計等の機器を用いた直接計測という手段を用いることなく、前記流量比によって機外流量の如何を把握することができるため、流量計等の機器設置に伴うコスト増等の不都合発生を回避することができる。
【0019】
加えて、高温往き温度センサにより検出される熱媒温度から、前記戻り温度センサにより検出される熱媒温度を減じた温度差が設定温度差よりも大きいことを条件にして演算を行っているため、演算した流量比から機外流量の割り出しを精度良く行うことができる上に、実際に流れている熱媒温度の検出値を用いて演算処理により取得された流量比に基づいて、現在の運転状況での機外流量を把握することができ、前記開閉弁について、より精度の良い開閉制御を実行することができるようになる。これにより、最大の暖房出力を得るための開閉制御をより精度良く行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態を示す模式図である。
図2】バイパス用熱動弁の開閉制御に係る第1実施形態のブロック図である。
図3図3(a)はバイパス熱動弁が開状態の場合と、閉状態の場合とにおける、機外流量に対する暖房出力/単位機外流量の関係を示す関係テーブルであり、図3(b)は循環ポンプ下流側で分岐する低温バイパス側に対する高温往き側の流量比と、機外流量との関係テーブルである。
図4】バイパス用熱動弁の作動制御に係る第1実施形態のフローチャートである。
図5】バイパス用熱動弁の開閉制御に係る第2実施形態のブロック図である。
図6】バイパス用熱動弁の作動制御に係る第2実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る温水暖房装置を示す。同図中の符号Sは外部熱源として太陽熱を集熱する集熱器、1は熱集熱器Sでの集熱を利用する集熱利用循環回路、4は外部から水道水等を給水する給水回路、5は貯湯槽3からの貯湯又は補助熱源機6からの補助加熱後の湯を用いて給湯栓50に給湯する給湯回路、7は暖房用熱源としての不凍液や水道水等の熱媒を前記貯湯槽3又は補助熱源機6からの湯で加熱する暖房回路、9は同様に貯湯槽3又は補助熱源機6からの湯を追い焚き熱源とする他の外部熱負荷としての風呂追い焚き回路である。
【0023】
集熱利用循環回路1は、集熱器Sでの集熱で貯湯槽3内の湯水を熱交換加熱して蓄熱する蓄熱循環回路11と、前記集熱器Sでの集熱で暖房回路7の戻り温水を液−液熱交換式の熱交換器12で熱交換加熱する直接循環回路13とを備え、これらの回路11,13は切換弁14により切換られて循環ポンプ15の作動によりいずれかが運転されるようになっている。そして、熱交換後に低温となった熱媒は膨張タンク16を経て集熱器Sに供給されるようになっている。
【0024】
貯湯槽3は密閉式に構成され、適所(少なくとも頂部位置)に貯湯の温度を検出するための貯湯温度センサ31が設けられている。そして、循環路21は、循環ポンプ22の作動により貯湯槽3の底部32から内部の湯水を取り出して、補助熱源機6を通過させて貯湯槽3の頂部33に戻すように配設されている。その際に、補助熱源機6を出た後、閉止機能付きの流量調整弁23を介して貯湯槽3の頂部33に至るようになっている。又、補助熱源機6と流量調整弁23との間には後述の分岐点24、分岐点25が配設され、流量調整弁23の下流側位置には分岐点26が配設されている。以下、この分岐点26から貯湯槽3の頂部33までの循環路21の一部を頂部側回路部27と呼ぶことにする。さらに、循環ポンプ22の上流側の循環路21には頂部側回路部27や貯湯槽3の頂部33に連通する連通路51の下流端が第1混合弁52を介して接続されている。すなわち、循環路21により貯湯槽3の底部から取り出した湯水と、連通路51により貯湯槽3の頂部33から取り出した湯水とを第1混合弁52において所定の混合比(0〜100%:100〜0%)で混合した上で、下流側である補助熱源機6の側に流し得るようになっている。なお、図1の符号61は補助熱源機6から出た直後の循環路21内の湯水温度を検出する補助熱源機下流側の温度センサである。
【0025】
給水回路4は、主給水路41の上流端が外部の水道管等に接続され、下流端が逆止弁42を介して貯湯槽3の底部32近傍位置の循環路21に接続されて、貯湯槽3の底部32に対し給水したり、循環路21の下流側に給水したりすることができるようになっている。又、主給水路41の上流側から逆止弁43を介して分岐した混水用給水路44が給湯回路5の後述の第2混合弁54に対し給水可能に接続されている。なお、図1の符号46は給水回路4により給水される水の温度を検出する給水温度センサである。
【0026】
給湯回路5は、循環路21の前記の分岐点26に上流端が接続されて循環路21から分岐するように接続されて下流端側が給湯栓50まで延びるように接続された給湯路53と、この給湯路53に介装された第2混合弁54と、第2混合弁54の下流側位置に配設された給湯温度センサ55とを備えている。前記の第2混合弁54は、給湯路53の上流側から供給される湯水と、前記の混水用給水路44から給水とを所定の混合比で混合(混水)させることにより所定の設定給湯温度に温調した上で、給湯栓50に給湯するものである。そして、前記の給湯温度センサ55は、温調後に最終的に給湯させる湯の温度を検出してコントローラ20に出力するようになっており、この給湯温度センサ55からの出力に基づいて第2混合弁54による温調制御が後述のコントローラ20により行われるようになっている。
【0027】
前記の給湯路53に対しては、貯湯槽3の頂部33から湯水が頂部側回路部27及び分岐点26を通して給湯用の湯として供給されたり、貯湯槽3の頂部33から湯水が連通路51及び第1混合弁52を通して補助熱源機6に供給されて補助加熱後の湯が給湯用の湯として供給されたりするようになっている。なお、図1中の符号56は機器異常の発生等に起因する高温水の給湯を阻止して回避するための回避弁である。
【0028】
補助熱源機6は、例えば瞬間式湯沸器により構成され、循環路21の途中に介装されたものである。後述のコントローラ20からの指令により燃焼作動されると、循環路21の一方から流入する湯水を熱交換加熱して、加熱後の湯水を循環路21の他方に出湯させることにより、循環路21を流れる湯水を補助加熱するようになっている。
【0029】
暖房回路7は、循環用の暖房ポンプ70の作動により膨張タンク71から取り出された低温熱媒を分岐点72から一側に延びて熱媒加熱手段としての熱交換器73で液−液熱交換により加熱して高温熱媒にし、これを高温暖房端末(例えば浴室乾燥機)74に循環供給する高温熱媒回路75と、前記分岐点72から他側に開閉弁としてのバイパス熱動弁76を介して低温暖房端末(例えば床暖房)77,77,…に対し低温熱媒を循環供給する低温熱媒回路78とを備えている。加えて、高温熱媒回路75の途中から分岐して逆止弁79を介してバイパス熱動弁76の下流側位置の低温熱媒回路78に合流させる高温バイパス回路80が設けられ、熱交換器73で加熱された高温熱媒をバイパス熱動弁76を介して供給された低温熱媒に合流させて昇温させ得るようになっている。各低温暖房端末77や高温暖房端末74で放熱されて低温になった熱媒は前記の直接循環回路13の熱交換器12を通過することにより加温された後に、前記膨張タンク71に戻されることになる。前記の熱交換器73の出口側の高温熱媒回路75には熱交換器73で熱交換加熱されて高温バイパス回路80等に供給される高温熱媒の温度(高温往き温度)Thを検出する高温往き温度センサ81が設置され、膨張タンク71近傍には戻り熱媒の温度(戻り温度)Tmを検出する戻り温度センサ82が設置され、低温熱媒回路78と高温バイパス回路80との合流点83の下流側位置において低温熱媒と高温熱媒とが混合されて低温暖房端末77に供給される低温熱媒の温度(低温往き温度)Tcを検出する低温往き温度センサ84が設置されている。図1の符号74a,77aは端末熱動弁であり、各端末熱動弁74a,77aが開作動されることにより低温熱媒又は高温熱媒が対応する暖房端末74,77に供給され、これにより、暖房運転状態となる。
【0030】
そして、前記の熱交換器73での液−液熱交換の加熱源(暖房用熱源)として、循環路21から所定の湯が熱交換器73の熱源側に循環供給されるようになっている。すなわち、補助熱源機6の下流側の循環路21の分岐点24から分岐した熱源供給路28を通して所定の湯が熱交換器73に暖房用熱源として供給され、液−液熱交換により温度低下した湯が開閉弁28aを経て循環路21に対し導出され、この循環路21を介して種々の経路を経て循環されることになる。
【0031】
風呂追い焚き回路9は、追い焚きポンプ91を作動させることにより浴槽92内の湯水を追い焚き循環路93を通して熱交換器94との間で循環させ、この熱交換器94での液−液熱交換により追い焚き加熱するようになっている。熱交換器94の熱源側には、補助熱源機6の下流側の循環路21の分岐点25から分岐した熱源供給路95を通して所定の湯が風呂追い焚き加熱用熱源として供給され、液−液熱交換により温度低下した湯が開閉弁95aを経て、暖房回路7と同様に循環路21に対し導出され、この循環路21を介して前記と同様に循環されることになる。
【0032】
以上の各回路1,5,7,9の運転作動は、リモコン20aからの入力設定信号や操作信号の出力や、種々の温度センサ31,46,55,61等からの検出信号の出力を受けて、コントローラ20により作動制御されるようになっている。コントローラ20は、そのような作動制御のために、蓄熱制御部や、給湯制御部に加え、外部熱負荷制御手段としての暖房制御部及び追い焚き制御部等の種々の制御を備えている。
【0033】
まず、暖房制御部による制御について概略を説明すると、ユーザのリモコン20aの操作により暖房要求指令が出力された際に、貯湯槽3内に暖房用熱源として要求される温度よりも高温の高温水が貯湯されている場合、つまり十分な蓄熱量を有している場合に、貯湯槽3内の貯湯を単独で暖房用熱源として供給して循環させ、不足であれば補助熱源機6で補助加熱した上で循環させるものである。例えば、流量調整弁23を閉状態に維持し、第1混合弁52の連通路51側を100%の開度とし、貯湯槽3の底部32からの循環路21の側を0%、つまり閉止させ、開閉弁28a開切換する一方、暖房回路7側の循環ポンプ70を作動させる。すると、熱源側では貯湯槽3内の湯が頂部33から連通路51及び第1混合弁52を通して、次いで、補助熱源機6を通過して分岐点24から熱源供給路28に流入して熱交換器73に供給されることになる。
【0034】
一方、暖房回路7側では、循環ポンプ70から吐出された低温熱媒が熱交換器73と、バイパス熱動弁76が開であればバイパス熱動弁76との二方に分岐され、低温暖房端末77が暖房運転開始(端末熱動弁77aの開作動)であれば熱交換器73で加熱されて高温バイパス回路80を通して供給された高温熱媒がバイパス熱動弁76を通して供給された低温熱媒に混合され、混合後の低温熱媒が暖房運転開始の低温暖房端末77に循環供給されることになる。バイパス熱動弁76が閉で低温暖房端末77が暖房運転開始(端末熱動弁77aの開作動)であれば、低温暖房端末77には高温バイパス回路80を通して供給された高温熱媒が供給されることになる。これらの際に、高温暖房端末74も暖房運転開始(端末熱動弁74aの開作動)であれば、熱交換器73からの高温熱媒はその一部が高温バイパス回路80を通して低温熱媒回路78に供給され、残りの他部が高温熱媒回路75を通して高温暖房端末74に供給されることになる。
【0035】
<第1実施形態>
以上の構成を前提として、コントローラ20の暖房制御部は、前記のバイパス熱動弁76を対象にして開閉制御を実行する第1実施形態に係る開閉制御手段としての開閉制御部201を備えており、この開閉制御部201は図2に示すように、流量比演算処理手段としての流量比演算処理部202と、機外流量割り出し処理部203と、開閉判定処理手段としての開閉判定処理部204と、タイマ205とを備えて構成されている。この開閉制御部201は、前記の高温暖房端末74が暖房運転を停止(端末熱動弁74aが閉止)しており低温暖房端末77,77,…のいずれか1以上が暖房運転(いずれか1以上の端末熱動弁77aが開作動)しているという低温単独運転状態において実行されるものであり、バイパス熱動弁76を機外流量の如何に応じて適切に開閉制御することにより、その運転状態における最大限の暖房出力が得られるようにするものである。前記の低温単独運転状態では、バイパス熱動弁76が開であると、低温暖房端末77の側にはバイパス熱動弁76を通過した低温熱媒と、熱交換器73及び高温バイパス回路80を通過した高温熱媒とが混合した熱媒が循環供給されることになり、バイパス熱動弁76が閉であると、低温暖房端末77の側には熱交換器73及び高温バイパス回路80を通過した高温熱媒のみが循環供給されることになる。
【0036】
前記の流量比演算処理部202には後述の流量比αを3つの温度検出値に基づいて得るための後述の演算式(1)が予め記憶設定されており、機外流量割り出し処理部203には図3(a)に詳細を示す流量比αと機外流量Qとの関係テーブル206が予め記憶設定されており、又、開閉判定処理部204には図3(b)に詳細を示す機外流量Qと単位機外流量当たりの暖房出力(暖房出力/単位機外流量)との関係テーブル207が予め記憶設定されている。
【0037】
前記の流量比αとは、バイパス熱動弁76が開状態のときに、分岐点72からバイパス熱動弁76側(低温熱媒回路78)への分岐流量Qcに対する、分岐点72から熱交換器73側(高温熱媒回路75)への分岐流量Qhの比(α=Qh/Qc)のことである。又、3つの温度検出値とは、高温往き温度センサ81により検出される高温往き温度Thと、戻り温度センサ82により検出される戻り温度Tmと、低温往き温度センサ84により検出される低温往き温度Tcとの3つである。ここで、戻り温度Tmは実際には膨張タンク71底部の検出温度であるが、膨張タンク71から循環ポンプ71,分岐点72を通してバイパス熱動弁76の側に分岐して流れる低温熱媒の温度と同等であり、この低温熱媒が合流点83で高温往き温度Thの高温熱媒と混合されて低温往き温度Tcの低温熱媒となる。すなわち、前記の3つの温度検出値は、2つの入水路が合流して1つの出水路を構成する場合の、第1の入水路の温度(Th)、第2の入水路の温度(Tm)、合流後の出水路の温度(Tc)に相当する。従って、次の流量比αに関する演算式(1)が成立することになる。
α=Qh/Qc=(Tc−Tm)/(Th−Tc) … (1)
【0038】
又、関係テーブル206は、実際の暖房回路7を対象にして、演算式(1)により得られる流量比αの値と、機外流量Q(温水暖房装置から機外に設置された低温暖房端末77,77,…の側に流れる熱媒の流量)の値との関係について実際に暖房回路7を稼動させた実験により得られたものであり、条件の変更(配管抵抗要素の増減等の暖房回路の機内構成の変更)があれば、その条件変更後の暖房回路を対象にして実験により求めればよい。そして、この関係テーブル206によれば、流量比αが得られれば、その流量比αのときの機外流量Qを割り出すことが可能となる。すなわち、演算により得られた流量比がαaであれば、関係テーブル206から機外流量はQa、流量比がαbであれば機外流量はQbというように割り出すことができる。
【0039】
さらに、関係テーブル207は、前記と同様に実際の暖房回路7を対象にして、機外流量Qの値と、そのときの単位機外流量当たりの暖房出力(暖房用熱源として供給し得る熱量)の値との関係について、バイパス熱動弁76を閉状態にして実際に暖房回路7を稼動した実験により得られた関係線(図3(b)の実線参照)と、同様の関係についてバイパス熱動弁76を開状態にした実験により得られた関係線(図3(b)の一点鎖線参照)とを関係テーブル上に描いたものである。バイパス熱動弁76を閉状態にすると機外流量の増加に従って暖房出力は急増するものの、比較的小さい機外流量の値を境に暖房出力は早期に低減することになる。一方、バイパス熱動弁76を開状態にすると機外流量の増加に従って暖房出力は緩増していき、この緩増傾向が比較的大きい機外流量の値まで続き、そして暖房出力は緩やかに低減することになる。このため、機外流量Qの増加に従って、その単位機外流量当たりの暖房出力は前記両関係線の交点である変曲点K(機外流量がQc)において特性を変化させることになる。
【0040】
すなわち、機外流量Qが小のときから変曲点Kに相当する流量値Qcまでの間はバイパス熱動弁76を閉にした方が開のときよりも暖房出力は高くなるものの、機外流量がQcを超えてQcよりも大きい範囲になると暖房出力特性は逆転してバイパス熱動弁76を開にした方が閉のままよりも暖房出力は高くなる。従って、機外流量が暖房出力の変曲点Kに対応する流量値Qcを境にして、より小さい機外流量の範囲ではバイパス熱動弁76を閉にした方がより高い暖房出力が得られる一方、より大きい機外流量の範囲ではバイパス熱動弁76を開にした方がより高い暖房出力が得られることが分かる。そこで、開閉判定処理部204では、前記の暖房出力の変曲点Kに対応する流量値Qcを予め設定判定値として設定し、機外流量割り出し処理部203で割り出された現在の機外流量Qの値が設定判定値Qcより大きいか小さいかにより、バイパス熱動弁76を開か閉かのいずれにした方が暖房出力が高くなるかを判定し、この判定結果に基づいてバイパス熱動弁76の開閉切換を行うようにしている。例えば、前記の関係テーブル206により割り出された機外流量がQaであれば設定判定値Qcよりも小さいためバイパス熱動弁76は閉制御し、機外流量がQbであれば設定判定値Qcよりも大きいためバイパス熱動弁76は開制御するというように開閉切換制御することになる。なお、このような関係テーブル207についても、前記と同様に、条件の変更(配管抵抗要素の増減等の暖房回路の機内構成の変更)があれば、その条件変更後の暖房回路を対象にして実験により求めればよい。以上の流量比演算処理部202と、機外流量割り出し処理部203とが、機外流量を流量計等の直接に計測する手段によらずして、機外流量を推定して把握するための機外流量推定手段を構成する。
【0041】
前記の開閉制御部201による制御について、図4のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、流量比演算処理部202による流量比演算処理のためにバイパス熱動弁76を開にして(ステップS1)、暖房ポンプ70がONしていることを確認する(ステップS2でYES)。さらに、直近における端末熱動弁77aの開作動から時間t1(例えば2分間)が経過していることを前記タイマ205により確認し、未経過であれば時間t1が経過するまで待つ(ステップS3でNO)。これは端末熱動弁77aが開作動信号の入力を受けて完全に開状態に状態変化するまでに所要の時間を要するため、完全に開状態になるのを待ってその完全開状態での通過流量に安定するまで待機するためである。従って、時間t1もそれに見合う時間値を設定すればよい。
【0042】
時間t1が経過すれば(ステップS3でYES)、高温往き温度センサ81により検出される高温往き温度Thから、戻り温度センサ82により検出される戻り温度Tmを減じた温度差(Th−Tm)が設定温度差Ts(例えば20℃分の温度差)よりも大きいことの確認を行った上で(ステップS4でYES)、演算式(1)を用いた流量比αの演算を行う(ステップS5)。ここで、ステップS4で設定温度差Tsよりも温度差(Th−Tm)が大きいことを確認する理由は演算した流量比から機外流量の割り出しを精度良く行うためである。すなわち、前記の温度差が少ない(例えば5℃分の温度差)と、図3(a)の関係テーブル206において同図に太線で示す正確な関係線に対し誤差範囲Gとして例示するような誤差が生じてしまうからであり、前記の温度差が設定温度差Ts以上あれば、流量比αと機外流量Qとの関係が関係テーブル206に太線で示す関係線で示されるものとなるからである。
【0043】
そして、ステップS5では、3つの温度検出値(高温往き温度Th,戻り温度Tm,低温往き温度Tc)を用いて演算式(1)により流量比αの値を得て、得られた流量比αの値に基づいて関係テーブル206から機外流量Qの値を割り出す。そして、割り出した機外流量Qの値が設定判定値Qcよりも小さいか大きいかを判定し(ステップS6)、設定判定値Qcよりも大きければ(ステップS6でNO)、バイパス熱動弁76を開にしたほうが暖房出力を高くすることができるため(図3(b)参照)、バイパス熱動弁76を開状態のままにしてステップS2に戻り、ステップS2〜ステップS6の処理を繰り返す。一方、割り出した機外流量Qの値が設定判定値Qcよりも小さければ(ステップS6でYES)、バイパス熱動弁76を閉にしたほうが暖房出力を高くすることができるため(図3(b)参照)、バイパス熱動弁76を開から閉に切換制御する(ステップS7)。
【0044】
次に、端末系統数が増加しているか否か、つまり端末熱動弁77aが開とされて暖房運転が開始された端末数が増加したか否かを確認し(ステップS8)、増加していればリターンして再度ステップS1からの処理を繰り返す(ステップS8でYES)。一方、増加していなければ、さらに数自体は増加していなくても暖房運転されている端末(動作端末)が変化したか否かを確認し(ステップS9)、変化していればリターンして再度ステップS1からの処理を繰り返す一方(ステップS9でYES)、変化していなければステップS8に戻りバイパス熱動弁76を閉状態に維持しつつ動作端末の数等の変化を監視する(ステップS9でNO)。
【0045】
以上によれば、現在の運転状況における機外流量Qの値を、実際に暖房回路7に流れている3種類の熱媒検出温度Th,Tm,Tcから演算した流量比αの値に基づいて割り出し、この割り出した機外流量Qの値と設定判定値Qcとの対比に基づいてバイパス熱動弁76を開閉切換制御することができる。このため、常にそのときの運転状況に応じて最大の暖房出力を得ることができる上に、このような最大の暖房出力を得るための開閉制御を実際に流れている熱媒検出温度Th,Tm,Tcに基づき把握された正確な機外流量に基づき最適化することができる。その上に、機外流量について、流量計等の機器を用いた直接計測という手段を用いることなく、熱媒検出温度Th,Tm,Tcから演算により得た流量比αの値との関係に基づいて割り出すことができ、流量計等の機器設置に伴うコスト増等の不都合発生を回避することができる。
【0046】
<第2実施形態>
バイパス熱動弁76を対象にして開閉制御を実行する第2実施形態に係る開閉制御部201aは、図5に示すように、流量演算処理部202と、開閉判定処理部204aと、タイマ205とを備えて構成されている。この第2実施形態に係る開閉制御部201も、前記の高温暖房端末74が暖房運転を停止(端末熱動弁74aが閉止)しており低温暖房端末77,77,…のいずれか1以上が暖房運転(いずれか1以上の端末熱動弁77aが開作動)しているという低温単独運転状態において実行されるものであり、バイパス熱動弁76を機外流量の如何に応じて適切に開閉制御することにより、その運転状態における最大限の暖房出力が得られるようにするものである。但し、この第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、機外流量の如何を流量比の如何によって把握し、流量比の如何に応じてバイパス熱動弁76を開閉制御することにより、バイパス熱動弁76を機外流量の如何に応じて適切に開閉制御するという第1実施形態と同じ原理に基づきながらも、第1実施形態よりも簡易な処理により第1実施形態と同様の作用効果が得られるようにしたものである。なお、第1実施形態と同じ構成要素については第1実施形態と同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0047】
すなわち、第2実施形態の開閉判定処理部204aは流量比αと機外流量Qとの関係テーブル206(図3(a)参照)と、機外流量の値がQc(前述の関係テーブル207の変曲点Kに対応する機外流量の値)であるときの流量比の値αcを開閉制御用の判定値として設定した設定判定値とが予め記憶設定されている。つまり、関係テーブル207(図3(b)参照)における変曲点Kでの機外流量の値Qcを第1実施形態では設定判定値として用いたが、第2実施形態ではその機外流量の値Qcのときの流量比の値αcを設定判定値として用いるようにしている。
【0048】
以上の第2実施形態の開閉制御部201aによる開閉制御は、図6に示すように、ステップS1〜ステップS4までの処理を第1実施形態(図4参照)のそれらと同様に行い、ステップS4で温度差(Th−Tm)が設定温度差Tsよりも大きければ(ステップS4でYES)、3つの温度検出値(高温往き温度Th,戻り温度Tm,低温往き温度Tc)を用いて演算式(1)により流量比αの値を演算する(ステップS5a)。そして、演算された流量比αが設定判定値αcよりも小さいか大きいかを判定し(ステップS6a)、設定判定値αcよりも大きければ(ステップS6aでNO)、機外流量はQcよりも大きくバイパス熱動弁76を開にしたほうが暖房出力を高くすることができるため(図3(b)参照)、バイパス熱動弁76を開状態のままにしてステップS2に戻り、ステップS2〜ステップS6aの処理を繰り返す。一方、演算された流量比αが設定判定値αcよりも小さければ(ステップS6aでYES)、機外流量はQcよりも小さくバイパス熱動弁76を閉にしたほうが暖房出力を高くすることができるため(図3(b)参照)、バイパス熱動弁76を開から閉に切換制御する(ステップS7)。以下、端末系統数が増加しているか否か(ステップS8)、動作端末が変化したか否か(ステップS9)の確認をそれぞれ行って確認結果に応じた以後の処理を続行する点は第1実施形態と同様である。
【0049】
以上の第2実施形態の場合、第1実施形態と同様の作用効果が得られる他、開閉制御の処理を第1実施形態よりも少し簡略化することができるようになる。
【0050】
<他の実施形態>
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前記各実施形態では貯湯槽3に貯湯して蓄熱する熱回収の対象である外部熱源を集熱器Sによる太陽熱を用い、蓄熱した貯湯を、熱媒加熱手段としての熱交換器73で暖房用熱媒を熱交換加熱する熱源として利用するものを示したが、これに限らず、外部熱源として、ガスエンジン(エンジン冷却水排熱)、燃料電池(冷却水排熱)、あるいは、ヒートポンプ(冷媒の排熱)を用いて貯湯として蓄熱し、これを前記熱源として利用するようにしてもよく、このような場合においても本発明を適用することができる。さらに、外部熱源を用いたものではなくて燃焼バーナや電気ヒータ等を熱媒加熱手段として利用し、これらを加熱源として暖房用熱媒を加熱するように構成した温水暖房装置に対しても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
70 循環ポンプ
73 熱交換器(熱媒加熱手段)
74 高温暖房端末
75 高温熱媒回路
76 バイパス熱動弁(開閉弁)
77 低温暖房端末
78 低温熱媒回路
79 逆止弁
80 高温バイパス回路
201,201a 開閉制御部(開閉制御手段)
202 流量比演算処理部(流量比演算処理手段,機外流量推定手段)
203 機外流量割り出し処理部(機外流量推定手段)
204,204a 開閉判定処理部(開閉判定処理手段)
206 流量比と機外流量との関係テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6