【文献】
槇弘倫,米沢良治,小川英邦,”ウェアラブル生体情報記録システム”,医学機器学,日本,日本医療機器学会,2009年10月 1日,79巻,7号,p.617
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生体の随意運動に伴う繰り返しリズム運動に基づく信号(以下、体動信号という)にフィルタリング処理を施すことにより、前記体動信号から、前記生体の呼吸リズムを抽出する抽出過程をそなえた
ことを特徴とする、情報処理方法。
前記抽出過程が、前記体動信号に対してバンドパスフィルタを適用した場合の出力に基づいて、決定された時定数(以下、第1時定数という)を用いて前記体動信号にフィルタリング処理を施すことにより、前記生体の呼吸リズムを抽出する過程である
ことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理方法。
前記抽出過程が、前記生体の呼吸リズムを抽出することに加え、前記体動信号に対してバンドパスフィルタを適用した場合の出力に基づいて、決定された前記第1時定数とは異なる時定数(以下、第2時定数という)を用いて、前記体動信号にフィルタリング処理を施すことにより、前記随意運動のリズムを抽出する過程である
ことを特徴とする、請求項2に記載の情報処理方法。
前記時定数決定過程が、前記第1時定数の決定に加え、前記体動信号に対して、バンドパスフィルタを適用した場合の出力に基づいて、前記第2の時定数を決定する過程であることを特徴とする、請求項4に記載の情報処理方法。
前記リズム抽出部が、前記体動信号に対して、バンドパスフィルタを適用した場合の出力に基づいて、決定された時定数(以下、第1時定数という)を用いて、前記体動信号にフィルタリング処理を施すことにより、前記生体の呼吸リズムを抽出することを特徴とする、請求項10記載の情報処理システム。
前記リズム抽出部が、前記生体の呼吸リズムを抽出することに加え、前記体動信号に対してバンドパスフィルタを適用した場合の出力に基づいて、決定された前記第1時定数とは異なる時定数(以下、第2時定数という)を用いて、前記体動信号にフィルタリング処理を施すことにより、前記随意運動のリズムを抽出する
ことを特徴とする、請求項11に記載の情報処理システム。
生体の随意運動に伴う繰り返しリズム運動に基づく信号(以下、体動信号という)にフィルタリング処理を施すことにより、前記体動信号から、前記生体の呼吸リズムを抽出するリズム抽出部をそなえた
ことを特徴とする、情報処理装置。
前記リズム抽出部が、前記体動信号に対して、バンドパスフィルタを適用した場合の出力に基づいて、決定された時定数(以下、第1時定数という)を用いて、前記体動信号にフィルタリング処理を施すことにより、前記生体の呼吸リズムを抽出することを特徴とする、請求項16記載の情報処理装置。
前記リズム抽出部が、前記生体の呼吸リズムを抽出することに加え、前記体動信号に対してバンドパスフィルタを適用した場合の出力に基づいて、決定された前記第1時定数とは異なる時定数(以下、第2時定数という)を用いて、前記体動信号にフィルタリング処理を施すことにより、前記随意運動のリズムを抽出する
ことを特徴とする、請求項17に記載の情報処理装置。
生体の随意運動に伴う繰り返しリズム運動に基づく信号(以下、体動信号という)にフィルタリング処理を施すことにより、前記体動信号から、前記生体の呼吸リズムを抽出する抽出過程をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする、情報処理用プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本情報処理方法に係る実施の形態を説明する。
〔A〕実施形態の説明
図1は、実施形態の一例にかかるシステムの構成を示す図である。システム1は、体動信号検出装置10と情報処理装置20とをそなえる。体動信号検出装置10は、情報処理装置20と、例えば、インターネット等の有線または無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)等の無線を介して通信可能に接続されている。
【0014】
体動信号検出装置10は、例えば、被験者(生体)の随意運動に伴う繰り返しリズム運動を非侵襲的かつ連続的に検出(測定)するものである。以下、随意運動に伴う繰り返しリズム運動を、単にリズム運動という場合がある。随意運動とは、言い換えれば、被験者が意識的に制御可能な運動である。また、随意運動が規則的に繰り返される運動である場合に、随意運動自体のリズムや呼吸リズムをより正確に求めることができる。なお、規則的に繰り返される随意運動とは、完全に同じ運動が繰り返されることのみではなく、略同じ運動が繰り返されることを含む。
【0015】
ここで、随意運動とは、例えば、随意運動中の被験者の呼吸リズムよりも周期が短いもの(好ましくは、半分以下)であり、例えば、歩行、ジョギング、ランニング、自転車、水泳、体操、ウェートトレーニング、体力測定(踏み台昇降、反復横とび)、ジャグリング(お手玉、サッカーボールのリフティング)等である。また、随意運動に伴う繰り返しリズム運動には、例えば、随意運動である歩行に伴う、呼吸や歩行自体のリズム運動が含まれる。
【0016】
なお、本願において、呼吸運動等は随意運動に該当しない。また、非侵襲的とは、例えば、被験者の体に傷をつけないことや、被験者に対して負担を与えないことを意味する。
体動信号検出装置10は、例えば、携帯可能に構成される。体動信号検出装置10の被験者への取り付け位置は、体の動きを検知できる部位であれば、特に制限はないが、呼吸リズムを正確に捉えるために被験者の体幹に装着することが望ましく、さらに好ましくは、被験者の腹部あるいは胸部に取り付けることが望ましい。
【0017】
体動信号検出装置10は、例えば、体動信号検出部11,記憶部12およびインターフェース部13をそなえる。体動信号検出部11,記憶部12およびインターフェース部13は、相互に通信可能に接続されている。
体動信号検出部11は、例えば、随意運動に伴う繰り返しリズム運動を体動信号(生体の随意運動に伴う繰り返しリズム運動に基づく信号)として検出(測定)する。すなわち、体動信号検出部11は、生体の随意運動に伴う繰り返しリズム運動に基づく信号を体動信号として検出する。異なる観点から見れば、体動信号検出部11は、例えば、生体の随意運動に伴う繰り返しリズム運動を一つの体動信号として検出する。具体的には、被験者のリズム運動による、例えば、力の変化、空間的な身体の位置の変化、身体から発する音、電磁波等の波や微細エネルギーの変化または身体の周りにおける場の変化等を体動信号として検出(測定)する。すなわち、体動信号検出部11は、随意運動に伴う繰り返しリズム運動に基づく信号を測定する。
【0018】
ここで、体動信号検出部11は、例えば、加速度センサ,速度センサ,ジャイロセンサ等の慣性センサにより実現される。上記体動信号を検出する慣性センサについては、例えば、検出する信号の種類に応じて適宜選択される。通常、歩行リズムを検出する場合には、体の動きの加速度を測定する加速度センサが好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0019】
また、加速度センサとしては、一軸〜三軸のものを任意に用いることができるが、歩行時における鉛直方向、水平前後方向、及び水平左右方向の三方向へ作用する加速度を検出するための三軸加速度センサを用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。
なお、体動信号検出部11は、例えば、所定のサンプリング周波数(例えば、100Hz)で体動信号を測定する。
【0020】
記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory),HDD(Hard Disk Drive),SSD(Solid State Drive),フラッシュメモリ等の各種情報を記憶可能な記憶装置である。記憶部12は、具体的には、例えば、体動信号検出部11によって得られた体動信号を記憶する。また、記憶部12は、例えば、体動信号検出装置10に対して着脱自在に設けられてもよいし、体動信号検出装置10に固定されてもよい。
【0021】
インターフェース部13は、例えば、情報処理装置20と通信可能に接続されるインターフェースである。体動信号検出装置10が情報処理装置20と無線を介して接続されている場合には、例えば、インターフェース部13はアンテナを含むものである。また、体動信号検出装置10が情報処理装置20と有線を介して接続されている場合には、例えば、インターフェース部13は、有線の接続端子である。なお、記憶部12が、例えば、体動信号検出装置10に対して着脱自在に設けられており、記憶部12を体動信号検出装置10から取り外して情報処理装置20に接続する場合には、インターフェース部13は、体動信号検出装置10に設けられなくてもよい。 情報処理装置20は、例えば、PC(Personal Computer)であり、体動信号検出装置10により得られた体動信号から被験者の呼吸リズムを表す信号(以下、単に呼吸リズムという場合がある)を抽出する。
【0022】
情報処理装置20は、例えば、中央演算部21,記憶部22,出力部23およびインターフェース部24をそなえる。ここで、中央演算部21,記憶部22,出力部23およびインターフェース部24は、相互に通信可能に接続されている。
記憶部22は、例えば、RAM,HDD,SSD等のデータを格納可能な記憶装置であり、各種情報を記憶する。
【0023】
中央演算部21は、例えば、記憶部22に記憶された各種アプリケーションプログラムを実行することにより種々の演算や制御を行ない、これにより、各種機能を実現する処理装置である。
例えば、中央演算部21は、記憶部22に記憶された情報処理用プログラムを実行することにより、時定数決定部211,呼吸リズム抽出部212,運動リズム抽出部213,比決定部214,判定部215および出力制御部216として機能する。すなわち、情報処理用プログラムは、中央演算部21を、時定数決定部211,呼吸リズム抽出部212,運動リズム抽出部213,比決定部214,判定部215および出力制御部216として機能させるプログラムである。
【0024】
時定数決定部211は、例えば、体動信号検出部11により得られた体動信号を記憶部12から取得し、取得した体動信号に基づいて、呼吸リズムと随意運動自体のリズムを表す信号(以下、単に運動リズムという場合がある)とを抽出するために用いる時定数を算出する。
具体的には、時定数決定部211は、以下の処理を行なうことで、時定数を決定する。
【0025】
(1)時定数決定部211は、体動信号Xを、ある時定数Tで特徴付けられるハイパスフィルタ、あるいはバンドパスフィルタにかける。ここで、例えば、ハイパスフィルタとしては、体動信号Xを時間幅(時定数)Tのゼロ位相移動平均フィルタで平滑化する処理をF(X,T)と記載するとき、出力波形(信号)Y=X-F(X,T)で表現される処理を行なう。また、例えば、バンドパスフィルタとしては、Y=F(X-F(X,T),T/2.5)で表現される処理を行なう。ここで、ゼロ位相移動平均フィルタとは、位相ずれが0である移動平均フィルタを指す。なお、ゼロ位相移動平均フィルタは既知の種々の手法を用いて実現可能であり、詳細な説明は省略する。なお、バンドパスフィルタの時定数の一例として、T/2.5としているが、これに限定されるものではない。
【0026】
(2)次に、時定数決定部211は、出力波形Yの規則性を数値化する。時定数決定部211は、例えば、出力波形Yの極大及び極小のピークにおける値の絶対値のCV(=標準偏差/平均値:Coefficient of Variation)を求める。より具体的には、時定数決定部211は、出力波形Yから、極大および極小のピークを抽出し、ピーク位置における波形の振幅の絶対値を求め、求められた波形の振幅から標準偏差および平均値を求める。そして、時定数決定部211は、標準偏差を平均値で除することで、分散すなわちCVを算出する。
【0027】
(3)さらに、時定数決定部211は、時定数Tを変化させた場合の出力波形Yの規則性を求める。時定数決定部211は、例えば、時定数Tを変化させた場合のYの規則性をグラフ化する。具体的には、時定数決定部211は、例えば、時定数Tを変化させた場合の、各時定数TにおけるCVを算出することで、時定数Tに対する出力波形Yの規則性の変化を求める。
【0028】
(4)時定数決定部211は、上記(3)の処理で求められた時定数Tに対する出力波形Yの規則性の変化(CVの変化)から、極小点を求める。そして、時定数決定部211は、例えば、求められた極小点(例えば2つの極小点)のうち時定数Tの小さい方の極小点に対応する時定数Tを、運動リズムを体動信号から分離して抽出するための時定数(以下、第2時定数という場合がある)として決定する。さらに、時定数決定部211は、例えば、求められた極小点のうち時定数Tの大きい方の極小点に対応する時定数Tを、呼吸リズムを体動信号から分離して抽出するための時定数(以下、第1時定数という場合がある)として決定する。すなわち、時定数決定部211は、なるべく規則性のあるような波形を分離して抽出することが可能となる時定数を選択する。言い換えれば、時定数決定部211は、複数の極小点(例えば2点)を選択し、時定数Tの大きい方の極小点に対応する時定数Tを第1時定数、時定数Tの小さい方の極小点に対応する時定数Tを第2時定数として決定する。すなわち、時定数決定部211は、体動信号に対してバンドパスフィルタを適用した場合の出力に基づいて第1時定数および第2時定数を決定する。
【0029】
なお、上記(1)〜(4)の過程で、体動信号をN階積分(N=1,2,3.…)する過程を含めた方がノイズ除去の観点から好ましい。N階積分する場合、上記(1)の処理(フィルタ処理)をN回以上施すことが好ましい。積分操作とフィルタ処理の順番は、例えば、以下の条件の下であればどのような順番でも良い。
・フィルタ処理は2回以上連続して行わない。
・フィルタ処理のうち1回は積分処理がすべて終了してから行う。
・フィルタ処理を2回以上行う場合、最後の1回を除いて、そのフィルタはハイパスフィルタとする。
【0030】
呼吸リズム抽出部212は、例えば、体動信号検出部11により得られた体動信号を記憶部12から取得し、時定数決定部211により決定された第1時定数(T1)を用いて、フィルタリング処理を行なうことで体動信号から呼吸リズムを抽出する。
具体的には、呼吸リズム抽出部212は、例えば、以下の処理(フィルタリング処理)を行なうことで体動信号から呼吸リズムを抽出する。なお、下記の処理は、例示であり、これに限定されるものではない。
【0031】
(5)例えば、呼吸リズム抽出部212は、体動信号に対して、第1時定数のゼロ位相移動平均フィルタを施すことで、体動信号の低周波成分をもとめる。すなわち、呼吸リズム抽出部212は、体動信号に対して、F(X,T1)で表される処理を行なう。次に、呼吸リズム抽出部212は、体動信号から、F(X,T1)で表される処理を行なうことで求められた低周波成分を引く。すなわち、呼吸リズム抽出部212は、Y=X-F(X,T1)を求める。言い換えれば、呼吸リズム抽出部212は、第1時定数を用いて、体動信号に対してハイパスフィルタリングを行なう。
【0032】
なお、このハイパスフィルタリングによって、例えば、後述する積分処理において発散防止が可能となる。
(6)次に、呼吸リズム抽出部212は、ハイパスフィルタリング後の信号に対して積分を行なう。積分の階数は任意であり、例えば、呼吸リズム抽出部212は、ハイパスフィルタリング後の信号に対して2階積分を行なう。
【0033】
(7)呼吸リズム抽出部212は、上記(6)の処理で得られた積分後の信号X1に対して、(5)と同様の処理を行なう。すなわち、呼吸リズム抽出部212は、積分後の体動信号に対して、F(X1,T1)で表される処理を行なう。言い換えれば、呼吸リズム抽出部212は、第1時定数を用いて、積分後の信号に対してハイパスフィルタリングを行なう。
(8)次に、呼吸リズム抽出部212は、上記(7)の処理で得られた信号X2に対してローパスフィルタリングを行なうことで、運動リズムを除去する。すなわち、本ローパスフィルタリングの時定数をT3として、上記(7)の処理で得られた信号に対して、F(X2,T3)で表される処理を行なう。ここで、本ローパスフィルタリングの時定数T3は、T3=T1/2.5とすることができるが、これに限定されるものではなく、第2時定数T2よりも大きな値であればよい。
【0034】
すなわち、呼吸リズム抽出部212は、上記(5)〜(8)の処理によって、第1時定数を用いて、体動信号に対してバンドパスフィルタリングを行なう。
(9)さらに、呼吸リズム抽出部212は、上記(8)の処理で得られた信号の極大値を結ぶ包絡線と、極小値を結ぶ包絡線とを作成し、これらの2本の包絡線の平均からなる信号を、上記(8)の処理で得られた信号から引く処理を行なう。この処理により得られた信号の振幅は、振幅の値0を挟んで変化することとなるため、後述するヒルベルト変換法を用いる場合において、位相を正確に求めることが可能となる。なお、後述するパターンマッチング法を用いる場合には、この処理を省略してもよい。
【0035】
上記(5)〜(9)の過程により、呼吸リズム抽出部212は、体動信号から呼吸リズムを抽出する。すなわち、呼吸リズム抽出部212は、体動信号にフィルタリング処理を施すことにより、体動信号から、呼吸リズムを抽出するリズム抽出部として機能する。
なお、上記(6)の過程で、体動信号を2階積分しているが、これに限定されるものではなく、積分処理を行なわなくてもよい。また、2階積分に限定されるものではなく、N階積分を行なってもよい(N=1,2,3,…)。なお、N階積分する場合、上記(5)[または(7)]の処理(フィルタ処理)をN回以上施すことが好ましい。さらに、上記(5)および(7)において2回ハイパスフィルタリングを行なっているが、これに限定されるものではない。積分操作とフィルタ処理の順番は、例えば、以下の条件の下であればどのような順番でも良い。
・フィルタ処理は2回以上連続して行わない。
・フィルタ処理のうち1回は積分処理がすべて終了してから行う。
・フィルタ処理を2回以上行う場合、最後の1回を除いて、そのフィルタはハイパスフィルタとする。
【0036】
運動リズム抽出部213は、例えば、体動信号検出部11により得られた体動信号を記憶部12から取得し、時定数決定部211により決定された第2時定数(T2)を用いて、フィルタリング処理を行なうことで体動信号から運動リズムを抽出する。
具体的には、運動リズム抽出部213は、例えば、以下の処理(フィルタリング処理)を行なうことで体動信号から運動リズムを抽出する。なお、下記の処理は、例示であり、これに限定されるものではない。
【0037】
(10)例えば、運動リズム抽出部213は、体動信号に対して、第2時定数のゼロ位相移動平均フィルタを施すことで、体動信号の低周波成分を求める。すなわち、運動リズム抽出部213は、体動信号に対して、F(X,T2)で表される処理を行なう。次に、運動リズム抽出部213は、体動信号から、F(X,T2)で表される処理を行なうことで求められた低周波成分を引く。すなわち、運動リズム抽出部213は、Y=X-F(X,T2)を求める。言い換えれば、運動リズム抽出部213は、第2時定数を用いて、体動信号に対してハイパスフィルタリングを行なう。
【0038】
なお、このハイパスフィルタリングによって、例えば、後述する積分処理において発散防止が可能となる。
(11)次に、運動リズム抽出部213は、ハイパスフィルタリング後の信号に対して積分を行なう。積分の階数は任意であり、例えば、運動リズム抽出部213は、ハイパスフィルタリング後の信号に対して2階積分を行なう。
【0039】
(12)運動リズム抽出部213は、処理(11)における積分後の信号X2に対して、(10)と同様の処理を行なう。すなわち、運動リズム抽出部213は、積分後の体動信号に対して、F(X2,T2)で表される処理を行なう。言い換えれば、運動リズム抽出部213は、第2時定数を用いて、積分後の信号に対してハイパスフィルタリングを行なう。
上記(10)〜(12)の過程により、運動リズム抽出部213は、体動信号から運動リズムを抽出する。すなわち、運動リズム抽出部213は、体動信号にフィルタリング処理を施すことにより、体動信号から、随意運動のリズム(運動リズム)を抽出するリズム抽出部として機能する。
【0040】
なお、上記(11)の過程で、体動信号を2階積分しているが、これに限定されるものではなく、積分処理を行なわなくてもよい。また、2階積分に限定されるものではなく、N階積分を行なってもよい(N=1,2,3,…)。なお、N階積分する場合、上記(10)[または(12)]の処理(フィルタ処理)をN回以上施すことが好ましい。積分操作とフィルタ処理の順番は、例えば、以下の条件の下であればどのような順番でも良い。
・フィルタ処理は2回以上連続して行わない。
・フィルタ処理のうち1回は積分処理がすべて終了してから行う。
・フィルタ処理を2回以上行う場合、最後の1回を除いて、そのフィルタはハイパスフィルタとする。なお、上記(12)の処理の後に上記(9)と同様の処理を行なってもよい。
【0041】
比決定部214は、例えば、呼吸リズムおよび運動リズムの一定時間における位相変化量の比(例えば、サイクル比)を決定する。ここで、位相とは、時間的に繰り返されるリズムを、円周上を回転する運動と見立て、リズム波形上の各点が何度の回転角度に相当するかを表す指標である。例えば、正弦波において隣り合う二つのピーク点の位相には360度の差がある。また、サイクル比とは、例えば、一呼吸の間における運動リズムの繰り返し数をいう。より具体的には、サイクル比とは、例えば、呼吸リズム1周期内に、運動リズムが何サイクルあるか、あるいは、運動リズムのピークが何個あるかを示す値である。なお、一定時間とは、例えば、いずれか一つのリズムの位相(例えば、呼吸リズムの位相)が360度の整数倍変化する時間であるが、これに限定されるものではなく、一定時間は任意の値とすることができる。
【0042】
比決定部214は、位相算出部224および比算出部234をそなえる。
位相算出部224は、例えば、呼吸リズムおよび運動リズムの位相を算出することで、呼吸リズム及び運動リズムのそれぞれについて、一定時間における位相の変化量を求める。位相算出部224は、例えば、ヒルベルト変換法またはパターンマッチング法を用いて、呼吸リズムおよび運動リズムの位相を算出する。なお、位相を算出する方法は、ヒルベルト変換法またはパターンマッチング法に限定されるものではない。
【0043】
ここで、ヒルベルト変換法は、波形の所定の位置における位相を具体的に算出する手法であり、パターンマッチング法は直接的に位相を特定しないが、互いに位相が360度ずれた点を見つける手法である。すなわち、パターンマッチング法は、波形の所定の位置から位相が360度の整数倍ずれた点を見つける手法である。言い換えれば、パターンマッチング法は、波形の所定の位置に対する相対的な位相(例えば360度)を算出する。
【0044】
比算出部234は、例えば、位相算出部224によって算出された、呼吸リズムの位相変化量と運動リズムの位相変化量との比を算出する。比算出部234は、例えばサイクル比を算出する
まず、位相算出部224および比算出部234が、ヒルベルト変換法を用いて位相変化量の比を算出する場合について説明する。
(A)ヒルベルト変換法を用いる場合
ヒルベルト変換は、任意の実数時系列信号X(t)から対応する虚数部分Y(t)を導く数学的手法である。これにより、位相算出部224は、下記(1)式からX(t)の位相θ(t)を直接的に求めることができる。すなわち、位相算出部224は、下記(1)式から所定時刻における呼吸リズムおよび運動リズムの位相を求めることができる。
(数1)
Z(t)=X(t)+iY(t)=A(t)exp(iθ(t)) ・・(1)
また、任意の時刻tにおける呼吸リズムおよび運動リズムの位相をそれぞれθB(t)度、θG(t)度とすると、上記(1)式から、呼吸リズムの位相を求めることで、例えば、θB(t1)=θB(t)+360となるような時刻t1を求めることができる。すなわち、位相算出部224は、呼吸リズムについて、一定時間t- t1における位相の変化量θB(t1)-θB(t)を求める。また、位相算出224は、(1)式から、時刻tおよび時刻t1における、運動リズムの位相を算出することで、運動リズムについての一定時間における位相の変化量θG(t1)-θG(t)を求める。すなわち、位相算出部224は、呼吸リズム及び運動リズムのそれぞれについて、一定時間における位相の変化量を求める位相算出部として機能する。
【0045】
そして、比算出部234は、例えば、位相算出部224によって算出された呼吸リズムの位相変化量θB(t1)-θB(t)と運動リズムの位相変化量θB(t1)-θB(t)との比[θG(t1)-θG(t)]/[θB(t1)-θB(t)]を算出する。例えば、比算出部234は、[θG(t1)-θG(t)]/360を計算することでサイクル比を算出する。
次に、位相算出部224および比算出部234が、パターンマッチング法を用いて位相変化量の比を算出する場合について説明する。
(B)パターンマッチング法を用いる場合
パターンマッチング法は二つの信号の類似性を定量化する手法である。類似度の定義や計算法は多数あるが、具体的には例えば、「画像処理工学(末松良一・山田宏尚著、コロナ社)」等に記載の方法が用いられる。最も代表的なのが自己相関係数である。例えば3次元の体動信号については以下のような計算を行う。
【0046】
まず体動データから適当な基準波を選び出す。基準波の座標を下記(2)式とする。
【0048】
ここでp個のx、y、zはそれぞれの平均値がゼロになっているとする。下記(3)式で自己相関係数が計算される。
【0050】
これはいわゆるスカラー量であり、座標系のとり方に依存しない。すなわち、体動測定中に体動信号検出装置10が装着部位で回転のずれを起こしても同じ値となる。なお、1次元の信号についても同様にして計算する。
上記パターンマッチング法を用いると、任意の時刻tにおけるリズム波形の位相から、360度の整数倍だけ位相がずれた時刻t1を容易に求めることができる。言い換えれば、位相算出部224は、パターンマッチングを用いることで、時刻tにおける呼吸リズムおよび運動リズムの位相から、それぞれ360度の整数倍だけ位相がずれた点を求めることができる。すなわち、位相算出部224は、時刻tにおける呼吸リズムおよび運動リズムの点に対する相対的な位相(例えば360度)を算出する。つまり、位相算出部224は、呼吸リズムについて、一定時間における位相の変化量(例えば360度)を算出する。
【0051】
また、位相算出部224は、例えば、時刻tから時刻t1の一定時間において、運動リズムが何サイクルあるか、あるいは運動リズムのピークが何個あるか算出する。ここで、一定時間における運動リズムのサイクル数、あるいは、運動リズムのピーク数を算出することは、一定時間における運動リズムの位相変化を算出することと等価である。つまり、位相算出部224は、運動リズムについて、一定時間における位相の変化量を算出する。すなわち、位相算出部224は、呼吸リズム及び運動リズムのそれぞれについて、一定時間における位相の変化量を求める位相算出部として機能する。なお、位相算出部224によって算出される運動リズムのサイクル数や、運動リズムのピーク数は、整数に限られるものではない。
【0052】
そして、比算出部234は、位相算出部224によって算出された呼吸リズムの位相変化量と運動リズムの位相変化量との比を算出する。
判定部215は、例えば、比決定部214により求められた、サイクル比が所定の範囲内の値か否かを判定する。さらに、判定部215は、サイクル比が所定時間、所定範囲にあるか否かを判定することもできる。この所定の範囲および所定時間は、例えば、システム1の管理者等によって任意に設定可能である。ここで、所定の範囲とは、例えば、目標とするサイクル比の±1の範囲と設定することができるが、これに限定されるものではない。また、所定の時間とは、例えば、30分と設定することができるが、これに限定されるものではない。すなわち、所定の範囲や所定の時間は、目的に応じて任意の値に設定可能である。例えば、30分の一定スピードのジョギングを行なう場合には、運動が定常状態になった後、所定の範囲を4±1の範囲に、所定時間を30分に設定する。
【0053】
出力制御部216は、出力部23を制御する。例えば、出力部23がディスプレイの表示部をそなえる場合には、出力制御部216は、出力部23の表示状態を制御することで、各種の情報を出力部23に表示させる。例えば、出力制御部216は、呼吸リズム抽出部212および運動リズム抽出部213によってそれぞれ抽出された呼吸リズムおよび運動リズムや比決定部214によって求められサイクル比を表示部23に表示させる。サイクル比の表示は、グラフとして出力部23に表示させてもよいし、「サイクル比は**です」のようにメッセージとして表示させてもよい。また、判定部215により、例えば、サイクル比が所定の範囲内の値ではないと判断された場合には、サイクル比の表示に加え、または、サイクル比の表示に替えて、その旨の警告を表示させる。サイクル比が所定の範囲内の値ではないと判断された場合の表示例としては、例えば、「呼吸リズムが乱れています→運動をやめてください、運動強度を落としてください」や「呼吸と運動が合っていません」等がある。
【0054】
また、出力部23が、例えば、アラームや振動等により警告を行なうものであれば、判定部215により、例えば、サイクル比が所定の範囲内の値ではないと判断された場合に、出力制御部216は、出力部23を制御することで出力部23に警告を行なわせる。
また、出力部23が、情報処理装置20外にそなえられている場合には、出力制御部216は、例えば、呼吸リズム抽出部212および運動リズム抽出部213によってそれぞれ抽出された呼吸リズムおよび運動リズムや比決定部214によって求められサイクル比等の各種情報を、無線または有線を介して出力部23に送信することで、出力部23の表示状態を制御する。
【0055】
出力部23は、出力制御部216の制御の下、各種の情報を出力する。例えば、出力部23は、ディスプレイであり、比決定部214によって求められたサイクル比や、判定部215により、例えば、サイクル比が所定の範囲内の値ではないと判断された場合には、警告を表示する。
また、出力部23は、例えばアラームや振動等によって、状態の変化や突然の異常について報知するもの等であってもよく、判定部215により、例えば、サイクル比が所定の範囲内の値ではないと判断された場合には、アラームや振動等により警告を行なう。
【0056】
なお、出力部23は、情報処理装置20にそなえられなくともよく、情報処理装置20外にそなえられてもよい。ここで、出力部23が、情報処理装置20外にそなえられている場合とは、例えば、出力部23が体動信号検出装置10に含まれる場合や、体動信号検出装置10および情報処理装置20にどちらにも含まれない場合である。情報処理装置20外にそなえられている場合において、例えば、情報処理装置20は、無線または有線を介して出力部23と接続されている。すなわち、出力部23は、情報処理装置により抽出された結果を出力する出力部として機能する。また、出力部23は、情報処理装置により抽出された結果を出力する出力部をそなえた表示装置として機能する。
【0057】
インターフェース部24は、例えば、体動信号検出装置10と通信可能に接続されるインターフェースである。情報処理装置20が体動信号検出装置10と無線を介して接続されている場合には、例えば、インターフェース部24はアンテナを含むものである。また、情報処理装置20が体動信号検出装置10と有線を介して接続されている場合には、例えば、インターフェース部24は、有線の接続端子である。なお、記憶部12が、例えば、体動信号検出装置10に対して着脱自在に設けられており、記憶部12を体動信号検出装置10から取り外して情報処理装置20に接続する場合には、インターフェース部24は、例えば、記憶部12が接続されるスロットとしても機能する。
上述の如く構成された、実施形態の一例としてのシステム1の呼吸リズム抽出処理を、
図2に示すフローチャート(ステップA1〜A3)を参照しながら説明する。以下、積分信号をもとにリズムの抽出を行う具体的な方法の一例を、歩行中の加速度信号を用いた場合について詳細に説明するが、他の慣性センサや他の運動中の信号の場合でも同様の処理が適用できる。
【0058】
まず、体動信号検出部11が、随意運動に伴う繰り返しリズム運動を体動信号として検出する(ステップA1)。
図3(A)は、被験者の腹部中央に体動信号検出装置10(3軸の加速度センサ)を装着した状態で、体動信号検出装置10(体動信号検出部11)が100Hzサンプリングにて測定した200秒間の連続歩行の加速度信号の一部である。なお、
図3(A)においては、3軸のうち、進行方向の加速度変化のみを示している。次に、体動信号検出部11により検出された体動信号に基づいて、情報処理装置20は、呼吸リズムを抽出するための時定数や、運動リズムを抽出するための時定数を決定する(ステップA2:時定数決定過程)。そして、ステップA2にて決定された時定数を用いて、体動信号から呼吸リズムおよび運動リズムを抽出する(ステップA3:抽出過程)。
【0059】
次に、時定数決定部211の詳細、すなわち
図2におけるステップA2の詳細な動作を、
図4示すフローチャート(ステップA21〜A26)を参照しながら説明する。
まず、時定数決定部211は、所定の時定数Tを用いて、体信号検出部11により検出された体動信号に対してフィルタリングを行なう(ステップA21)。例えば、時定数決定部211は、体動信号に対してY=X-F(X,T)で表現されるハイパスフィルタリングを行なった後に、2階積分を行ない、積分後の信号に再度Y=X-F(X,T)で表現されるハイパスフィルタリングを行なう。さらに、時定数決定部211は、例えば、ハイパスフィルタリング後に、Y=F(X,T/2.5)で表現されるローパスフィルタリングを行なう。すなわち、時定数決定部211は、体動信号に対して、バンドバスフィルタリングを行なう。
【0060】
次に、時定数決定部211は、例えば、出力波形Yの極大及び極小のピークにおける値の絶対値のCVを求める(ステップA22)。そして、時定数決定部211は、例えば、時定数Tを変化させ、上記ステップA21,A22の処理を行なうことで、時定数Tの変化に対するCVの変化を求める(ステップA23)。
図5は、ステップA23により求められた時定数(フィルタ時間)Tの変化に対するCV(分散)の変化の一例を示す図である。次に、時定数決定部211は、ステップA23により求められた時定数Tの変化に対するCVの変化から、極小点を求める。時定数決定部211は、例えば、
図5に示すように、CVの値が小さい2つの極小点(
図5中、●印および◆印)を求める。そして、時定数決定部211は、時定数Tの小さい方の極小点(
図5中、●印)に対応する時定数T(例えば0.3)を、第2時定数、時定数Tの大きい方の極小点(
図5中、◆印)に対応する時定数T(例えば1.3)を、第1時定数として決定する(ステップA24)。第1時定数および第2時定数が決定されていれば、ステップA2の処理を終了する(ステップA25のYesルート参照)。一方、例えば、複数の極小点が求まらず、時定数決定部211が、第1時定数を決定できなかった場合には(ステップA25のNoルート参照)、例えば、出力制御部216が、出力部23に、呼吸リズムが抽出できない旨の警告を行なわせる(ステップA26)。この際、例えば、出力制御部216は、出力部23に、「呼吸が正しく測定できません→センサ位置を調節してください」や「呼吸が正しく測定できません→同調性が評価できませんでした」等のメッセージを表示させることで警告を行なってもよい。すなわち、ステップA2(ステップA21〜A24)は、体動信号に対して、バンドパスフィルタを適用した場合の出力に基づいて、第1の時定数を決定する時定数決定過程の一例である。
【0061】
次に、呼吸リズム抽出部212の詳細、すなわち
図2におけるステップA3の詳細な動作を、
図6示すフローチャート(ステップA31〜A36)を参照しながら説明する。
まず、呼吸リズム抽出部212は、体動信号検出部11によって検出された体動信号に対して、第1時定数を用いてハイパスフィルタリングを行なう(ステップA31)。次に、呼吸リズム抽出部212は、N(例えば2)階積分を行なう(ステップA32)。そして、積分後の信号に対して、再び、第1時定数を用いてハイパスフィルタリングを行なう(ステップA33)。次に、呼吸リズム抽出部212は、ステップA33で得られた信号に対して、第2時定数よりも大きな時定数(例えば0.6)を用いてローパスフィルタリングを行なう(ステップA34)。さらに、呼吸リズム抽出部212は、ローパスフィルタリング後の信号の極大値を結ぶ包絡線と、極小値を結ぶ包絡線とを作成する(ステップA35)。そして、リズム抽出部212は、これらの包絡線の平均を、ローパスフィルタリング後の信号から減算を行なう(ステップA36)。
【0062】
図3(B)の破線は、ステップA36にて得られる信号の一例を示す図である。この破線によって示された波形は、被験者の呼吸による腹部の運動軌道、すなわち呼吸リズムに相当する。これは、一般的に、随意運動中(特に規則的に繰り返される随意運動中)に、呼吸による腹部の運動以外に規則的に繰り返される運動を行なうことは困難であることによる。すなわち、ステップA3(ステップA31〜A36)は、生体の随意運動に伴う繰り返しリズム運動に基づく信号にフィルタリング処理を施すことにより、前記体動信号から、前記生体の呼吸リズムを抽出する抽出過程の一例である。
【0063】
次に、運動リズム抽出部213の詳細、すなわち
図2におけるステップA3の詳細な動作を、
図7に示すフローチャート(ステップA37〜A39)を参照しながら説明する。
まず、運動リズム抽出部213は、体動信号検出部11によって検出された体動信号に対して、第2時定数を用いてハイパスフィルタリングを行なう(ステップA37)。運動リズム抽出部213は、N(例えば2)階積分を行なう(ステップA38)。そして、積分後の信号に対して、再び、第2時定数を用いてハイパスフィルタリングを行なう(ステップA39)。
図3(B)の実線は、ステップA39にて得られる信号の一例を示す図である。この実線によって示された波形は、例えば、歩行である被験者の随意運動に相当する。すなわち、
図3(B)の実線によって示された波形は、運動リズムに相当する。
【0064】
次に、上述の如く構成された、実施形態の一例としてのシステム1の判定処理を、
図8に示すフローチャート(ステップA4〜A6)を参照しながら説明する。
まず、比決定部214は、呼吸リズム抽出部212および運動リズム抽出部213によって、それぞれ抽出された呼吸リズムおよび運動リズムから、例えば、サイクル比を決定する(ステップA4)。そして、判定部215は、ステップA4にて算出されたサイクル比が、例えば、所定の範囲内の値であるか否かを判定する(ステップA5)。判定部215の判定結果に基づいて、出力制御部216は出力部23に判定結果を出力させる(ステップA6)。判定結果とは、例えば、サイクル比が所定範囲内にあるか否か等である。
【0065】
次に、比決定部214の詳細、すなわち
図8におけるステップA4の詳細な動作を、
図9に示すフローチャート(ステップA41〜A44)を参照しながら説明する。
まず、位相算出部224は、呼吸リズムの任意の時刻tにおける任意の点を選択する(ステップA41)。位相算出部224は、例えば、ヒルベルト変換またはパターンマッチング等を用いて位相を算出することで、任意の点から位相が360度ずれた点の時刻t1を算出する(ステップA42)。すなわち、位相算出部224は、呼吸リズムについて、時間t-t1における位相変化量を算出する。次に、位相算出部224は、運動リズムの時間t-t1における位相変化量を算出する(ステップA43:位相算出過程)。比算出部234は、例えば、時間t-t1における、呼吸リズムの位相変化量(例えば360度)と運動リズムの位相変化量との比をサイクル比として算出する(ステップA44:比算出過程)。
【0066】
ここで、
図10は、パターンマッチング法を用いた場合に得られる信号の一例を説明するための図である。
図10を用いてパターンマッチングを用いた場合の比決定部214の詳細な動作の一例を説明する。ここで、ステップA42およびA43は、抽出過程により抽出された呼吸リズム及び随意運動のリズムのそれぞれについて、一定時間における位相の変化量を求める位相算出過程の一例である。また、ステップA44は、呼吸リズムの位相変化量とリズム運動に基づくリズムの位相変化量との比を算出する比算出過程の一例である。
【0067】
図10(A)は、
図3(B)のデータから一部の波形を抜き出したものであり、実線は運動リズム、破線は呼吸リズムを示す。ここで位相算出部224が、*印で示した時間を中心として、呼吸リズムについては幅2秒の基準波、運動リズムについては幅0.4秒の基準波を選び自己相関係数を計算した結果が
図10(B)である。呼吸リズムについてちょうど位相が360度ずれた2点の位置を点線で示している。この2点の間隔(時間t-t1に相当)が呼吸リズムの1サイクルに相当する。同様に、
図10(A)の○印を中心とする基準波から得られた自己相関係数が
図10(C)である。
【0068】
位相算出部224が、
図10(B)または
図10(C)に示された波形から、呼吸リズムの位相変化量が360度である時間t-t1における、運動リズムのサイクル数あるいは運動リズムのピーク数を算出、すなわち、位相変化量を算出する。そして、比算出部234がサイクル比を算出する。すなわち、位相算出部224は、時間t-t1における、運動リズムの位相変化量を算出する。そして、比算出部234は、時間t-t1における、運動リズムの位相変化量を呼吸リズムの位相変化量(360度)で除することでサイクル比を算出する(
図10の例ではサイクル比は5)。
【0069】
次に、
図3(A)で例示したデータについて、ヒルベルト変換法を用いて呼吸リズムの位相が3.6度増加するごとにサイクル比を求めた例の結果を
図11の実線で示す。これは時間間隔に換算すると0.02〜0.04秒ごとにサイクル比を求めていることになる。
図11の場合、サイクル比はほぼ5で一定しており、呼吸と運動との同調性は高いといえる。
【0070】
また、
図3(A)で例示したデータについて、パターンマッチング法を用いて時間間隔0.07秒ごとにサイクル比を求めた結果を
図11の破線で示す。
図11からヒルベルト変換法で求めた結果とほぼ同じ傾向の結果が得られているのがわかる。
次に、判定部215の詳細、すなわち
図8におけるステップA5の詳細な動作を、
図12に示すフローチャート(ステップA51〜A54:判定過程)を参照しながら説明する。
【0071】
まず、判定部215は、比決定部214により決定されたサイクル比が所定範囲の値であるか否かを判定する(ステップA51)。サイクル比が所定範囲の値でれば(ステップA51のYesルート参照)、所定時間時間経過したか否かを判定する(ステップA52)。所定時間経過していれば(ステップA52のYesルート参照)、判定部215は、同調性は高いと判定する(ステップA53)。すなわち、判定部215は、例えば、サイクル比が、所定時間にわたって、所定範囲の値となっているときには、同調性は高いと判定する。一方、サイクル比が所定範囲の値でない場合(ステップA51のNoルート参照)には、同調性は低いと判定する(ステップA54)。すなわち、ステップA51〜A54は、位相変化量の比が、所定時間にわたって、所定の範囲内であるかを判定する判定過程の一例である。
【0072】
〔B〕リアルタイム処理の説明
上述した方法が適用できるためには、呼吸リズムの位相が最低でも1サイクル変化する時間分(多くの場合、例えば3秒以上)のデータを用いる必要がる。従って、あらかじめ測定された長時間の体動信号へ信号処理を施す場合に適している。
一方、この処理をリアルタイムで行なうためには、より短時間のデータからサイクル比を求める必要がある。そのために、リアルタイム処理(解析)を行なう際には、例えば、3秒以下の小さな時間幅Δtを設定し、時刻tから時刻t+Δtまでの間における呼吸リズムの位相の変化ΔθBと運動リズムの位相の変化ΔθGを求め、ΔθG/ΔθBから近似的にサイクル比を計算する。具体的には、例えば、位相算出部224が、ヒルベルト変換やパターンマッチング等を用いて、時間t-t+Δtにおける呼吸リズムおよび運動リズムの位相変化量をそれぞれ算出し、比算出部234が、算出された呼吸リズムの位相変化量と運動リズムの位相変化量との比を求める。
【0073】
また、リアルタイム処理のためには、現在の時刻までに測定および蓄積されたデータを用いて解析を行う必要がある。その際問題となるのは、データの境界の効果である。すなわち、スペクトル解析やヒルベルト変換等の信号処理を施すと、データの端点(測定開始点および終了点)近傍で誤差が大きくなる現象である。つまり、現在の時刻におけるサイクル比はこのような信号処理に基づく誤差を含んでいる可能性がある。これを見積もるために、
図3(A)で例示した加速度データについて時間t1(16秒)を現在時刻とし、この時間までのデータのみを用いて時間幅Δt=1.11秒のヒルベルト変換法による位相変化から近似的なサイクル比を算出した。結果を
図13の破線で示す。なお、
図13における実線は、
図10における実線と同様であり、データ全体を使用した正確な計算法による結果である。これらを比較すると、時刻t1の時点では両者の差が大きい。しかし、時刻t1から1.5秒程度さかのぼった時刻t2の時点でほとんど誤差の無い値が得られている。従って2秒弱の時間遅れで正確なサイクル比が求められている。これは実用的なリアルタイム処理としては充分な性能といえる。
【0074】
なお、リアルタイム処理を行なう際には、例えば、情報処理装置20に対して時定数Tを予め設定しておくこととしてもよい。この時定数Tは、体動信号から決定しなくとも、被験者に応じて呼吸リズムや運動リズムは多少の差はあるものの、大きく異なるものではないので、一般的な値として経験的に定めることが可能である。また、時定数Tを、上述の方法で体動信号からリアルタイムで算出してもよい。
【0075】
このように、本実施形態の一例におけるシステム1によれば、被験者の随意運動に伴う繰り返しリズム運動から得られた体動信号より、呼吸リズムを正確に抽出することができる。すなわち、本願のシステム1によれば、安静状態ではない随意運動中に得られた体動信号から、呼吸リズムを正確に抽出することができる。言い換えれば、本願のシステム1によれば、安静状態でなくとも呼吸リズムを正確に抽出することができる。
【0076】
また、本実施形態の一例におけるシステム1によれば、位相に着目し、所定時間における呼吸リズムの位相変化と運動リズムの位相変化との比(例えばサイクル比)を算出しているので、明瞭なピークを持たないデータからも、正確にサイクル比等を算出することができる。すなわち、本実施形態の一例におけるシステム1によれば、位相に着目しているため、体動信号から抽出された呼吸リズムや運動リズムのピークに着目しなくても、精度よくサイクル比を求めることができる。
【0077】
さらに、本実施形態の一例におけるシステム1によれば、正確にサイクル比を算出できるため、正確に同調性を評価することができる。
また、本実施形態の一例におけるシステム1によれば、パターンマッチングを用いることで、自己相関をとった後の波形は元の体動信号に比べてノイズが少なくなっているのでピークが明瞭であり、その位置を正確に特定できるため、サイクル比等が精度よく求まる。
【0078】
さらに、本実施形態の一例におけるシステム1によれば、リアルタイム処理を正確に行なうことができる。
〔C〕その他
なお、開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0079】
例えば、本実施形態の一例においては、
図3(A)において、3軸のうち、進行方向(前後方向)の加速度変化のみを示し、この信号に基づいて、呼吸リズムや運動リズムを抽出し、サイクル比を算出しているがこれに限定されるものではない。例えば、3軸センサ等を用いて複数次元の信号を測定する際には、呼吸リズムと運動リズムとを抽出する波形は同じ信号であってもよいし、異なる波形であってもよい。具体的には、例えば、呼吸リズムは前後方向(前後方向)の加速度信号から、運動リズムは上下方向の加速度信号から抽出することとしてもよい。但し、歩行やジョギング等の運動の場合、左右方向のリズムの周期(ストライド周期)は、上下方向や前後方向のリズム周期(ステップ周期)の約2倍になるので、例えば左右方向の加速度信号からサイクル比を算出する場合には、算出したサイクル比を2倍すると正しい値を得ることができる。左右方向の加速度信号からヒルベルト変換を用いて、上述の如くサイクル比を算出した場合の波形を
図14の実線で示す。
図14において、点線は、進行方向(前後方向)の加速度からヒルベルト変換を用いて算出されたサイクル比を示す。この
図14から、両者がよく一致していることがわかる。
【0080】
また、本実施形態の一例では、本実施形態の一例においては、
図3(A)において、3軸のうち、進行方向の加速度変化のみを示し、この信号に基づいて、呼吸リズムや運動リズムを抽出しているがこれに限定されるものではない。例えば、時定数決定部211が、2軸以上(例えば、3軸全て)の方向の信号について上記(1)〜(4)の処理を施し、(4)の処理において呼吸リズムに相当する極小点の分散値が最も小さくなるような信号を選ぶこととしてもよい。例えば、時定数決定部211が、3軸全ての方向の信号について上記(1)〜(4)の処理を施すことで
図15に示す特性を得たとすると、時定数決定部211は、上下方向の信号を用いて時定数を決定する。また、
図15において、上下及び左右方向の信号には、フィルタ時間(時定数)1.5秒近辺に明瞭な極小点が存在するが、前後方向の信号には、極小点は見られない。このような場合、時定数決定部211は、時定数を決定するために左右方向の信号を用いない。すなわち、時定数決定部211は、複数軸方向の信号から呼吸リズムを抽出するために最適な信号を抽出する。
【0081】
例えば、本実施形態の一例においては、
図3(A)において、3軸のうち、進行方向(前後方向)の加速度変化のみを示し、この信号に基づいて、
図11に示すようにサイクル比を算出しているがこれに限定されるものではない。例えば、上下方向や左右方向の加速度を用いてサイクル比を算出してもよい。
さらに、本実施形態の一例では、体動信号検出装置10は、中央演算部21をそなえていないが、これに限定されるものではなく、体動信号検出装置10が中央演算部21をそなえてもよい。この場合、中央演算部21は、体動信号検出装置10内の記憶装置(例えば、記憶部12)や体動信号検出装置10外の図示しない記憶部に格納された情報処理用プログラムを実行することで、上述の機能を発揮する。すなわち、この場合、体動信号検出装置10は、情報処理装置としても機能する。
【0082】
また、本実施形態の一例では、体動信号検出装置10は、体動信号検出部11と記憶部12とをそなえて構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、体動信号検出装置10は体動信号検出部11をそなえるが、記憶部12をそなえない構成としてもよい。この場合、例えば、体動信号検出装置10と記憶部12とは、有線または無線により接続され、体動信号検出部11により検出された体動信号は、有線または無線を介して記憶部12に格納される。また、この場合、記憶部12と情報処理装置20とは有線または無線により接続され、情報処理装置20は、記憶部12から体動信号を取得する。
【0083】
さらに、体動信号検出装置10と、情報処理装置20(もしくは、記憶部12)とが無線を介して接続される場合、体動信号検出装置10は、体動信号検出部11が検出した体動信号をアンテナであるインターフェース部13を介して情報処理装置20(もしくは、記憶部12)に送信する機能を有する。この送信機能は、体動信号検出装置10がそなえる図示しないたとえば中央演算部である処理部が、図示しない記憶部に格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0084】
また、本実施形態の一例では、情報処理装置20は、体動信号から第1時定数および第2時定数を決定し、第1時定数および第2時定数に基づいて呼吸リズムおよび運動リズムを抽出しているが、これに限定されるものではない。例えば、FFT(Fast Fourier Transform)やウェイブレット解析等のスペクトル解析により体動信号の周波数特性を求め、スペクトル解析の結果から呼吸リズムと運動リズムの周波数域を特定する。そして、例えば、それぞれの周波数域に対応するバンドパスフィルタを体動信号にかけて呼吸リズムと運動リズムを抽出することとしてもよい。
【0085】
また、体動信号をEMD(Empirical Mode Decomposition)やEEMD(Ensemble Empirical Mode Decomposition)により各モード波形(Intrinsic Mode Function)に分解し、この結果から、呼吸リズムと運動リズムに対応するモード波形(例えば、強度の強い波形)を選択することとしてもよい。
さらに、本実施形態の一例では、時定数決定部211が時定数を決定した後に、呼吸リズム抽出部212および運動リズム抽出部213がそれぞれ、体動信号から呼吸リズムおよび体動リズムをフィルタリング処理により抽出しているが、これに限定されるものではない。例えば、上記(3)の処理において、時定数Tを変化させた場合の出力波形Yを全て記憶部22に記憶しておく。そして、呼吸リズム抽出部212および運動リズム抽出部213はそれぞれ、全ての出力波形Yの中から、上記(4)の処理において決定された第1時定数及び第2時定数に対応する波形を選択することとしてもよい。
【0086】
また、本実施形態の一例では、呼吸リズム抽出部212および運動リズム抽出部213がそれぞれ、体動信号から呼吸リズムおよび運動リズムを抽出しているが、これに限定されるものではなく、呼吸リズム抽出部212によって、体動信号から呼吸リズムのみを抽出してもよい。
さらに、本実施形態の一例では、時定数Tの変化に対するCVの変化から、CVの値が小さい2つの極小点を求め、時定数Tの小さい方の極小点に対応する時定数Tを、第2時定数、時定数Tの大きい方の極小点に対応する時定数Tを、第1時定数として決定しているが、これに限定されるものではない。例えば、極小点そのものに対応する時定数を、第1時定数または第2時定数とするのではなく、極小点の近傍の時定数を第1時定数または第2時定数としてもよい。例えば、
図5の例では、例えば、第1時定数を1.5、第2時定数を0.4としてもよい。
【0087】
また、本実施形態の一例は、人に限らず、ペット,家畜,馬等の動物に適応可能である。例えば、馬はギャロップ時に1完歩1呼吸で同期していることが知られているため、本実施形態の一例を用いれば、例えば、馬の健康管理等が可能となる。
さらに、本実施形態の一例では、時定数決定部211により決定された2つの時定数を用いて、体動信号から呼吸リズムおよび運動リズムが抽出されるが、これに限定されるものではない。例えば、時定数決定部211が3以上の時定数を決定し、運動リズム抽出部212および呼吸リズム抽出部213が、3以上の時定数を用いて体動信号から3以上のリズムを抽出してもよい。例えば、被験者が体動信号から、呼吸リズム,運動リズムに加え、他のリズムを抽出することとしても良い。例えば、被験者が歩行しながらジャグリングを行なった場合に検出された体動信号から、呼吸リズム,歩行リズムおよび歩行中でのジャグリングのリズムの3つのリズムを抽出してもよい。この場合には、時定数決定部211は、体動信号に対してハイパスフィルタあるいはバンドパスフィルタを適用した場合の出力から得られる時定数Tに対するCVの変化から、CVの値が小さい3つの極小点を選択する。例えば、呼吸リズムの周期が一番長く、次に歩行中でのジャグリングのリズムの周期が長く、歩行リズムの周期の周期が一番短いと仮定した場合には、時定数決定部211は、求められた3つの極小点のうち時定数Tが最も大きい極小点に対応する時定数Tを呼吸リズムを体動信号から分離して抽出するための時定数とし、求められた極小点のうち次に時定数Tの大きい極小点に対応する時定数Tを歩行中でのジャグリングのリズムを体動信号から分離して抽出するための時定数とて決定する。さらに、時定数決定部211は、求められた極小点のうち時定数Tの最も小さい極小点に対応する時定数Tを、歩行リズムを体動信号から分離して抽出するための時定数として決定する。そして、時定数決定部211により決定された3つの時定数を用いて、呼吸リズム抽出部212および運動リズム抽出部213が、体動信号から呼吸リズム,運動リズムおよび歩行中でのジャグリングのリズムが抽出する。具体的には、例えば、呼吸リズム抽出部212は、呼吸リズムを体動信号から分離して抽出するための時定数を用いて上記(5)〜(9)の処理を行なうことで体動信号から呼吸リズムを抽出する。また、呼吸リズム抽出部212は、歩行中でのジャグリングのリズムを体動信号から分離して抽出するための時定数を用いて上記(5)〜(9)の処理を行なうことで体動信号から歩行中でのジャグリングのリズムを抽出する。さらに、運動リズム抽出部213が、歩行リズムを体動信号から分離して抽出するための時定数を用いて上記(10)〜(12)の処理を行なうことで体動信号から歩行リズムを抽出する。
【0088】
なお、情報処理装置10にそなえられる中央演算部21の各機能を実現するための種々のアプリケーションプログラムは、例えばフレキシブルディスク,CD(CD−ROM,CD−R,CD−RW等),DVD(DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−R,DVD+R,DVD−RW,DVD+RW,HD DVD等),ブルーレイディスク,磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。そして、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送し格納して用いる。又、そのプログラムを、例えば磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の記憶装置(記録媒体)に記録しておき、その記憶装置から通信経路を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【0089】
また、体動信号検出装置10にそなえられる図示しない中央演算部の各機能を実現するための種々のアプリケーションプログラムは、例えばフレキシブルディスク,CD(CD−ROM,CD−R,CD−RW等),DVD(DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−R,DVD+R,DVD−RW,DVD+RW,HD DVD等),ブルーレイディスク,磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。そして、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送し格納して用いる。又、そのプログラムを、例えば磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の記憶装置(記録媒体)に記録しておき、その記憶装置から通信経路を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0091】
体動信号検出装置10として三菱化学社製加速度レコーダー「見守りゲイト」を専用ベルトに入れて被験者の腹部に巻き、トレッドミル上でのウォーキングとジョギング中における体動信号を100Hzでサンプリングした。レコーダー(体動信号検出装置10)は腹部中央に位置するようにした。
運動は、以下の順に連続的に行った。
【0092】
・ 速度を毎時4km(4km/hr)から毎時6km(6km/hr)へ段階的に増やすウォーキング。
・ 速度を6km/hrから10km/hrへ段階的に増やすジョギングの後、再び6km/hrへ減らしていくジョギング。
・ 速度を6km/hrから4km/hrへ段階的に減らすウォーキングの後、6km/hrでのウォーキング。
【0093】
・ 速度7.5km/hrのジョギング。途中に短時間、1回深く吸って1回深く吐く呼吸を繰り返し、その直後に2回吸って2回吐くリズミカルな呼吸を繰り返す。
測定したデータのうち前後方向の加速度信号についてヒルベルト変換法により位相を求め、呼吸リズムと運動リズムとのサイクル比を算出した。結果を、ステップ周期(一歩一歩の時間間隔)の時間変化と共に
図16に示す。ウォーキングやジョギングの速度に対応して、ステップ周期も変化している。サイクル比は、運動開始から10時40分(図中10:40と記載)頃まで徐々に減少しているが、それ以降はおおよそ4近辺で安定している。途中、深い呼吸を行っているところでは、7まで増加している。
図17は、
図16における一部分を拡大した図である。
図17は、2回吸って2回吐くリズミカルな呼吸の箇所ではサイクル比が一定しており、呼吸リズムとジョギングリズムとの同調性が非常に良いことを示している。
【0094】
本実施例においては、運動中の呼吸リズムと運動リズムとの同調性の評価が、定量的、連続的、かつ正確に行われている。
【実施例2】
【0095】
体動信号検出装置10としてマイクロストーン社製3軸ジャイロセンサMP-G3-01Bを被験者の腹部中央に設置し、(机や椅子等の障害物のある)室内を周回歩行した際の信号を100Hzで計測した。被験者は計測途中から6歩に1回の呼吸を意識しながらの歩行と、4歩に1回の呼吸を意識しながらの歩行を行った。
上下方向の軸周りの角速度信号から、歩行ストライドによるリズムを以下の処理で抽出した。
1.時定数0.88を用いてハイパスフィルタリングを行なう。
2.ハイパスフィルタリング後の信号に対して1回積分を行なう。
3.再び、時定数0.88を用いてハイパスフィルタリングを行なう。
4.時定数0.35を用いてローパスフィルタリングを行なう。
【0096】
さらに、前後方向の軸周りの角速度信号から、呼吸リズム以下の処理で抽出した。
1.時定数2.55を用いてハイパスフィルタリング。
2.ハイパスフィルタリング後の信号に対して1回積分を行なう。
3.時定数2.55を用いてハイパスフィルタリング。
4.時定数1.02を用いてローパスフィルタリング。
5.ローパスフィルタリング後の信号の極大値および極小値をそれぞれ結ぶ二本の包絡線の平均からなる信号を、ローパスフィルタリング後の信号から引く。
【0097】
歩行については幅0.51秒の基準波、呼吸については幅2.55秒の基準波によりそれぞれ自己相関法により位相の情報を求め、サイクル比を計算した。結果を
図18に示す。
サイクル比は6歩に1回の呼吸の際には6を、4歩に1回の呼吸の際には4を平均値として小さくゆらいでおり、呼吸と歩行との同調性がよくとらえられていることがわかる。