【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
<実施例1>
ポリエステル(ユニチカ株式会社製商品名UE3200、数平均分子量16000、ガラス転移点65℃)の20%溶液10重量部、30%付加反応型シリコーン溶液(信越化学工業株式会社製商品名KS−3703)15重量部、30%付加反応型剥離コントロール剤(信越化学工業株式会社製商品名KS−3800)20重量部、白金硬化触媒(信越化学工業株式会社製商品名PL−50T)0.3重量部、ブロックイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製商品名コロネート2513)1重量部、トルエン30重量部及びMEK33重量部を、均一に混合して離型剤組成物を調製した。
【0042】
得られた離型剤組成物をフィルム基材である50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に乾燥厚で0.3μmとなるようにコイルバーで塗工し、160℃のオーブンに入れ、その温度を1分間保持した後、オーブンより取り出し、これにより、フィルム基材の片面に離型層が設けられた離型フィルムを得た。
【0043】
<実施例2>
ブロックイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製商品名コロネート2513)1重量部を添加しない以外は、実施例1と同様の方法で離型剤組成物を調整し、離型フィルムを得た。
【0044】
<比較例1>
ポリエステル(ユニチカ株式会社製商品名UE3200)の20%溶液10重量部の代わりに、10%エチルセルロース溶液(米国ハーキュレス社製商品名N100)20重量部を添加した以外は、実施例1と同様の方法で離型剤組成物を調整し、離型フィルムを得た。
【0045】
<比較例2>
ポリエステル(ユニチカ株式会社製商品名UE3200)を添加しない以外は、実施例1と同様の方法で離型剤組成物を調整し、離型フィルムを得た。
【0046】
<評価>
実施例1、2で得られた離型フィルムの離型層について、走査型顕微鏡写真を撮ると共に、電子線マイクロアナライザ(EPMA)でシリコンのマッピング像を得た。その結果、シリコーン樹脂の海の中にポリエステル樹脂の塊が散在した海島構造を確認することができた。
また、実施例1、2及び比較例1、2で得られた離型フィルムについて、「(a)初期剥離力」「(b)初期残留接着率」「(c)耐溶剤性残留接着率」「(d)異方性導電膜剥離力」「(e)ジャーキー性」を以下に説明するように試験し、評価した。
【0047】
(a)初期剥離力
離型フィルムの離型層の面に、アクリル樹脂を主成分とする粘着フィルム(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製商品名T4090)を貼り合わせ、長さ200mmで幅50mmの短冊状にカットし、得られた短冊状サンプルに2kgの荷重を載せたまま70℃で20時間エージングした。
エージング終了後、25℃でT型剥離試験を行い、初期剥離力(g/5cm)を剥離強度試験機(株式会社オリエンテック製商品名テンシロン)を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
【0048】
(b)初期残留接着率
初期剥離力の試験において引き剥がしたアクリル系粘着フィルムを、平坦なステンレス板にハンドローラで剤り付け、剥離力を上述と同様に測定し、残留剥離力とした。
これとは別に未使用のアクリル系粘着フィルムを平滑なステンレス板にハンドローラで貼り付け、剥離力を上述と同様に測定し、基準剥離力とした。
そして基準剥離力に対する残留剥離力の割合を算出して初期残留接着率(%)とした。得られた結果を表1に示す。
【0049】
(c)耐溶剤性残留接着率
異方性導電膜の構成材料となる液状反応性エポキシ(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製商品名PF−55TA)を、離型フィルムの離型層上に塗布し、80℃オーブンで5分乾燥して溶媒を飛ばし、更に80℃オーブンにて5時間エージングして乾燥させ、離型フィルム上でエポキシ樹脂膜を作成した後、エポキシ樹脂膜を剥離した。
【0050】
その離型フィルムの剥離面にアクリル樹脂を主成分とする粘着フィルム(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製商品名T4090)を貼り合わせ、上述と同様に残留剥離力を測定し、残留接着率(基準剥離力に対する割合(%))を算出し、得られた値を耐溶剤性残留接着率とした。得られた結果を表1に示す。
【0051】
なお、残留接着率と耐溶剤性残留接着率について、一般的な粘着剤では80%以上の値が求められ、異方性導電膜では95%以上の値が求められている。
【0052】
(d)異方性導電膜剥離力
まず、フェノキシ樹脂(東都化成株式会社製商品名YP50)50重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名エピコート828)60重量部、イミダゾール系硬化剤(旭化成株式会社製商品名HX3941HP)70重量部、シランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製商品名A187)3.2重量部、無機粒子として平均粒径1μmのSiO2粒子(株式会社龍森製の二酸化ケイ素)123.2重量部(40重量%)を、溶剤トルエンに溶解して固形分50%の絶縁性接着剤樹脂、すなわち、バインダー溶液を調製した。
【0053】
そして、このバインダー溶液100重量部に、導電性粒子として、平均粒径5.0μmのジビニルベンゼン粒子にニッケル−金めっきを施したものを7重量部(12.3重量%)加えてバインダーペーストとした。
このバインダーペーストを離型フィルムの離型層上に、乾燥後の厚みが40μmになるようにコーティングし、80℃のオーブンで1分間保持して溶媒除去し、異方性導電膜を形成して接着フィルムを得た。
【0054】
この接着フィルムの異方性導電膜上に、ポリプロピレン基材上にアクリル系粘着剤層を設けた粘着フィルム(日東電工株式会社製のPPテープ)を貼り合わせ、長さ200mmで幅50mmの短冊状にカットし、25℃で、剥離フィルムから異方性導電膜を剥離するT型剥離試験を行い、初期剥離力(g/5cm)を剥離強度試験機(株式会社オリエンテック製商品名テンシロン)を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
【0055】
(e)ジャーキー性
そこで、これらの剥離力チャートにおける測定開始30分の時点から1分間の最大値(Max)、最小値(Min)、及び平均値(Ave)を求め、ジャーキー性の指標としてMaxとMinの差のAve剥離力に対する割合R(R=(Max―Min)/Ave×100)を算出し、次の評価基準で判断した。得られた結果を表1に示す。
[評価基準]
A:Rの値が20%以下
B:Rの値が20%以上50%未満
C:Rの値が50%以上
【0056】
【表1】
【0057】
表1の実施例1から分かるように、ポリエステル樹脂の架橋剤としてブロックイソシアネート系架橋剤を使用することにより、初期剥離力、初期残留接着率、耐溶剤性残留接着率、異方性導電膜剥離力及びジャーキー性のいずれも改善されており、異方性導電膜用の離型フィルムとして好適であることがわかる。
実施例2の場合には、ブロックイソシアネート系架橋剤を使用していないので、ポリエステル樹脂が架橋反応しておらず、実施例1に比べると、異方性導電膜剥離力と耐溶剤性残留接着率が小さいが、ジャーキー性は良好であり、一般向け粘着剤の離型フィルムとしては十分に好適なことがわかる。
【0058】
比較例1の場合には、ポリエステル樹脂の代わりにセルロース系樹脂を使用したことにより、ポリエステル樹脂を使用している実施例1に比べ、初期残留接着率と耐溶剤性残留接着率が大きく劣り、ポリエステル架橋反応をしていない実施例2に比しても劣っている。
比較例2の場合には、ポリエステル樹脂を使用していないので、粘着剤との親和性が悪く、ジャーキー現象が発生した。
【0059】
<実施例3>
ポリエステルの種類によるジャーキー性に対する影響を調べるために、実施例1と同じ量でポリエステルの種類だけ変更した離型剤組成物を調整し、得られた離型剤組成物を実施例1と同様に処理して複数の離型フィルムを得て、前述の(d)異方性導電膜剥離力(接着強度)の試験を行った。
【0060】
使用したポリエステル樹脂の名称と、測定した接着強度の値を
図2に示す。各商品名は、ユニチカ社製のポリエステル樹脂である。剥離力の測定値の変動が小さいポリエステルは、ジャーキー現象が発生しなかったことを意味している。
図2の測定結果から、添加するポリエステルはUE3200若しくはUE9200が好ましい。より好ましいのはUE3200である。
【0061】
<実施例4>
ポリエステル樹脂の添加量は、ジャーキー現象に与える影響は少ないが、添加量が多くなるとACFを塗布した後の離型層の被膜性能、即ち、耐溶剤性が低下してしまう。
実施例1と同じ種類のポリエステル(UE3200)を用い、ポリエステル以外の成分の量は実施例1と同じで、シリコーンの固形成分100重量部に対し、ポリエステルの添加量を固形成分で0〜200%の範囲で変更して離型剤組成物を調整し、得られた離型剤組成物を実施例1と同様に処理して複数種類の離型フィルムを作成した。
【0062】
得られた離型フィルムについて前述の(d)異方性導電膜剥離力(接着強度)及び(c)耐溶剤性残留接着率(残接率)の測定を行った。測定結果を
図3のグラフに示す。
図3のグラフから、ポリエステルの添加量は、ジャーキー現象に与える影響は少ないが、添加量が多くなると、異方性導電膜を塗布した後の離型層の耐溶剤性が低下することがわかる。
【0063】
従って、シリコーンの固形成分100重量部に対し、ポリエステルの好ましい添加量は、固形成分で5〜100重量部(即ち、
図3の5〜100%)、より好ましくは10〜30重量部(即ち、
図3の10〜30%)である。
またポリエステルの添加量がシリコーン樹脂に対し、
図3の150%を超えると残留接着率が低下し、好ましくないことがわかる。