(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のリチウム二次電池は、正極と負極とがポリマー製の多孔性セパレータを介して積層された電極体と、前記電極体に電解液を含浸させた状態で収納し密閉した電池ケースと、前記電池ケースの外側から前記電極体を積層方向に4kgf/cm
2以上で加圧する加圧機構と、を備えたものであり、前記多孔性セパレータは、前記ポリマーよりも硬度の高い絶縁粒子が内部に分散されている。
【0014】
本発明のリチウム二次電池において、正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、これらを適当な分散材に分散させてペースト状の正極合材としたものを、集電体(例えばアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼などの箔)の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、通常知られているものを用いることができるが、例えば、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などが挙げられる。前者としては、TiS
2、TiS
3、MoS
3、FeS
2などが挙げられる。後者としては、Li
(1-x)MnO
2(0<x<1など、以下同じ)、Li
(1-x)Mn
2O
4などのリチウムマンガン複合酸化物、Li
(1-x)CoO
2などのリチウムコバルト複合酸化物、Li
(1-x)NiO
2などのリチウムニッケル複合酸化物、LiFePO
4などのオリビン型複合酸化物、LiV
2O
3などのリチウムバナジウム複合酸化物、V
2O
5などの遷移金属酸化物などが挙げられる。導電材としては、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。分散材としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。
【0015】
本発明のリチウム二次電池において、負極は、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、これらを適当な分散材に分散させてペースト状の負極合材としたものを、集電体(例えば銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼などの箔)の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金などのアルカリ金属材料のほか、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、導電性ポリマーなどが挙げられるが、このうち炭素質材料が安全性の面から見て好ましい。炭素質材料としては、特に限定されるものではないが、黒鉛、石油系コークス、石炭系コークス、石油系ピッチの炭化物、石炭系ピッチの炭化物、フェノール樹脂,結晶セルロースなど樹脂の炭化物、及びこれらを一部炭化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維などが挙げられる。また、負極に用いられる導電材、結着材、分散材などについては、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。
【0016】
本発明のリチウム二次電池において、電解液としては、例えば支持塩を含む有機溶媒やイオン性液体を用いることができる。支持塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、LiPF
6,LiClO
4,LiAsF
6,LiBF
4,Li(CF
3SO
2)
2N,Li(CF
3SO
3),LiN(C
2F
5SO
2)などの公知の支持塩を用いることができる。これらの支持塩は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。支持塩の濃度としては、0.1〜2.0Mであることが好ましく、0.8〜1.2Mであることがより好ましい。有機溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニルカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等が挙げられる。環状エステルカーボネートとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等が挙げられる。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、例えばジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。
【0017】
本発明のリチウム二次電池において、ポリマー製の多孔性セパレータは、使用されているポリマーよりも硬度の高い絶縁粒子が内部に分散されたものである。ポリマーの材質としては、二次電池の使用条件に耐えうるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。絶縁粒子としては、化学的安定性や耐電解液性を考慮すると、セラミック粒子が好ましい。セラミック粒子としては、例えばアルミナセラミック粒子、マグネシアセラミック粒子、窒化アルミニウムセラミック粒子、窒化ケイ素セラミック粒子、炭化ケイ素セラミック粒子などが挙げられる。本発明の効果を顕著に得ることを考慮すると、絶縁粒子の平均粒子径は、多孔性セパレータの厚さの30〜100%であることが好ましく、多孔性セパレータに対する絶縁粒子の体積分率が10〜70%であることが好ましい。このような多孔性セパレータの製造方法としては、大きく分けて乾式プロセスと湿式プロセスとがある。乾式プロセスでは、ポリマーを溶解し、溶解したポリマーに絶縁粒子を均一に分散させ、その状態でフィルム状に押し出し、アニーリング後、延伸することでクレーズを成長させることにより多孔化を行う。湿式プロセスでは、炭化水素溶媒(又は他の低分子溶媒)とポリマーと絶縁粒子とを混合し、これをシート状に加工し、溶媒を除去することにより多孔化を行う。なお、こうした乾式プロセスや湿式プロセスの手順は従来より広く知られているものである。
【0018】
本発明のリチウム二次電池において、電池ケースは、加圧機構によって加圧されたときにその圧力を電極体へ伝達できるものである。こうした電池ケースとしては、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金など)製の薄板で組み立てられたケースなどが挙げられる。なお、電池ケースは、金属ラミネートフィルム(アルミラミネートフィルムなど)で組み立てられていてもよい。
【0019】
本発明のリチウム二次電池において、加圧機構は、電池ケースの外側から電極体を積層方向(正極と負極と多孔性セパレータとが積層された方向)に4kgf/cm
2以上で加圧する機構である。こうした加圧機構としては、例えば、電池ケースのうち互いに対向する2つ面のそれぞれに加圧治具(加圧板)を当接させ、両加圧治具に対して互いに接近する方向に圧力を加える機構などが挙げられる。圧力を加えるには、バネなどの弾性体を利用してもよいし、電池ケースを挟み込んだ両加圧治具の距離が電池ケースの幅(加圧治具に当接している2つの面の間隔)より狭くなるようにビームなどで固定してもよい。加圧機構による圧力は、4kgf/cm
2未満だと初期放電容量が小さいうえ、充放電を繰り返し行ったあとの容量維持率(サイクル試験後の容量維持率)も低くなるため、4kgf/cm
2以上に設定する必要がある。また、圧力は高くても特に大きな問題はないが、150kgf/cm
2を超えると、初期放電容量やサイクル試験後の容量維持率がやや低下する傾向にあるため好ましくない。加圧治具は、電池ケースと当接する加圧面が平坦であってもよいが、加圧面に複数の溝を設け、溝以外の部分で電極ケースを加圧する一方、溝部分に冷媒を通過させて電池を冷却するようにしてもよい。
【0020】
本発明のリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。これらのリチウム二次電池は、複数個を直列に接続して使用してもよいし、並列に接続して使用してもよい。
【0021】
次に、本発明の好適な実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態であるリチウム二次電池10の全体を示す概略斜視図、
図2は電池本体20の概略斜視図、
図3は電極体22の説明図であり、
図3(a)は概略斜視図、
図3(b)はA視図である。
【0022】
リチウム二次電池10は、
図1に示すように、角型の電池本体20と、この電池本体を加圧する加圧機構40とを備えている。
【0023】
電池本体20は、
図2に示すように、シート状の電極体22を上面が楕円形の筒状になるように捲回し、捲回された電極体22に電解液を含浸させた状態で、厚さ2mm以下、例えば0.3〜1mmのアルミニウム製の電池ケース30に収納し、密閉したものである。
【0024】
電極体22は、
図3(b)に示すように、多孔性セパレータ28、正極シート24、多孔性セパレータ28及び負極シート26を積層したものである。具体的には、電極体22は、正極シート24の正極合材シート24aと負極シート26の負極合材シート26aとがセパレータ28を介して重なり合うように積層され、シート幅方向の一方には正極集電体露出部24cが露出し、シート幅方向の他方には負極集電体露出部26cが露出している。この電極体22を捲回した状態では、外側から内側に向かって、多孔性セパレータ28、正極シート24、多孔性セパレータ28、負極シート26、多孔性セパレータ28、正極シート24、多孔性セパレータ28、負極シート26、……という順に積層されている。つまり、正極シート24と負極シート26とが多孔性セパレータ28を介して積層される。
【0025】
正極シート24は、アルミニウム箔からなる長方形状の正極集電体24bの両面に、長方形状の正極合材シート24aを形成したものである。ここで、正極合材シート24aの幅は正極集電体24bの幅よりも短く、正極合材シート24aの一方の長辺は正極集電体24bの一方の長辺と一致している。このため、正極集電体24bには、他方の長辺に沿って正極合材シート24aが形成されていない部分つまり正極集電体露出部24cが存在する。電極体22が捲回された状態では、これらの正極集電体露出部24cが面接触して互いに電気的に接続される。なお、ここでは、正極合材シート24aに含まれる正極活物質として、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物(例えばLiCoO
2など)を用いることとする。
【0026】
負極シート26は、銅箔からなる長方形状の負極集電体26bの両面に、長方形状の負極合材シート26aを形成したものである。ここで、負極合材シート26aの幅は負極集電体26bの幅よりも短く、負極合材シート26aの一方の長辺は負極集電体26bの一方の長辺と一致している。このため、負極集電体26bには、他方の長辺に沿って負極合材シート26aが形成されていない部分つまり負極集電体露出部26cが存在する。電極体22が捲回された状態では、これらの負極集電体露出部26cが面接触して互いに電気的に接続される。なお、ここでは、負極活物質として、炭素質材料(例えば黒鉛)を用いることとする。
【0027】
多孔性セパレータ28は、この多孔性セパレータ28に使用されているポリマーよりも硬度の高い絶縁粒子としてセラミック粒子(例えばアルミナ粒子)が内部に分散されている。この多孔性セパレータ28は、長方形状であり、正極合材シート24aや負極合材シート26aと同じ大きさである。セラミック粒子は、ここでは、平均粒子径が多孔性セパレータの厚さの30〜100%で、多孔性セパレータに対する体積分率が10〜70%のものとした。
【0028】
捲回された電極体22の外周面には、
図2に示すように、正極集電体露出部24cと多孔性セパレータ28と負極集電体露出部26cが現れる。このうち、正極集電体露出部24cには正極端子24dが設けられ、負極集電体露出部26cには負極端子26dが設けられている。正極端子24d及び負極端子26dは、電池ケース30の上面に設けられた貫通孔を介して外部に露出している。また、各端子24d,26dと各貫通孔との間には絶縁材34d,36dが介在しており、各端子24d,26dと電池ケース30との絶縁性が確保されている。
【0029】
加圧機構40は、
図1に示すように、一対の均一加圧治具42,42をバネ44により互いに接近する方向に4kgf/cm
2以上の圧力で押圧するものである。均一加圧治具42は、平坦な加圧面を有している。均一加圧治具42,42の各加圧面は、扁平状で角型の電池ケース30のうち最も面積の大きな2面にそれぞれ当接しており、その2面を介して、
図2に示す電極体22を正極合材シート、多孔性セパレータ及び負極シートの積層方向に4kgf/cm
2以上の圧力で押圧する。
【0030】
次に、このリチウム二次電池10の充放電について簡単に説明する。電池本体20は、リチウムイオン二次電池であり、負極活物質としてリチウムイオンを取り込む炭素質材料を用いているため、組み立てた直後は放電状態となっている。このため、最初に充電してから電池として使用することになる。正極活物質にコバルト酸リチウム、負極活物質に黒鉛を用いた場合の電池反応式を以下に示す。
【0032】
こうしたリチウム二次電池10によれば、通常使用されるポリマー製の多孔性セパレータを使用した場合に比べて、出力特性もサイクル特性も向上する。その理由は、加圧機構40によって電極体22が加圧されたとしても、多孔性セパレータ28の内部には高硬度なセラミック粒子が分散されているため、多孔性セパレータ28が押しつぶされるのをセラミック粒子が抑制する役割を果たし、その結果、電解液が含浸した多孔性セパレータ中のイオン伝導率が低下せず、出力特性やサイクル特性が向上したと考えられる。
【0033】
また、セラミック粒子として、平均粒子径が多孔性セパレータの厚さの30〜100%で、多孔性セパレータに対する体積分率が10〜70%のものを用いているため、出力特性やサイクル特性が大きく向上する。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、均一加圧治具42として加圧面が平坦なものを用いたが、
図4に示す櫛歯加圧治具142を用いてもよい。リチウム二次電池110の櫛歯加圧治具142は、加圧面に複数の溝142aが設けられ、溝142a以外の部分で電池ケース30を介して電極体22を加圧する一方、溝142aに冷媒が通過して電池本体20を冷却するようになっている。こうすれば、冷媒によって電池本体20の温度を適正に維持することができる。また、この場合、電極体22には加圧される部分と加圧されない部分とが生じるため、電極体22に対して面圧が不均一となるが、多孔性セパレータ28が押しつぶされるのをセラミック粒子が抑制する役割を果たすため、電解液が含浸した多孔性セパレータ28中のイオン伝導率に分布が生じず、出力特性やサイクル特性が向上する。なお、溝142aは、縦方向に複数形成したが、横方向や斜め方向に複数形成してもよいし、加圧面の辺上の2箇所に入口と出口を設け入口から出口に向かって一筆書きの要領で形成してもよい。
【0036】
上述した実施形態では、一つの電池本体20を加圧機構40で加圧するリチウム二次電池10を例示したが、複数の電池本体20を積層した積層体を加圧機構40で加圧してもよい。この場合、複数の電池本体20を各端子を直列接続してもよいし、並列接続してもよい。
【0037】
上述した実施形態では、電極体22を捲回して電池ケース30に収納したが、捲回する代わりに、電極体22を電池ケース30の最も広い面よりやや小さいシートに切断し、それらを積層して電池ケース30に収納してもよい。
【0038】
上述した実施形態では、加圧機構40をバネ44により加圧するものとしたが、一対の均一加圧治具42,42の間隔が電池ケース30の幅W(
図1参照、電池ケース30のうち均一加圧治具42,42が当接している2面間の距離)より小さくなるようにビーム(梁)などで固定してもよい。
【実施例】
【0039】
[実施例1]
正極活物質として、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2の層状構造リチウムニッケル複合酸化物を用いた。この正極活物質を85wt%、導電材としてカーボンブラックを10wt%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5wt%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状正極合材とした。スラリー状正極合材を20μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に塗布し、140℃で熱風乾燥させた。その後、ロールプレスで正極合材部の密度を2.5g/cm
3に高密度化し、54mm幅×450mm長の形状に切り出したものを正極シートとした。なお、正極活物質の塗布量は、片面当り7mg/cm
2程度である。
【0040】
負極活物質としては、球状人造黒鉛を用いた。この負極活物質を95wt%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5wt%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状負極合材とした。スラリー状負極合材を10μm厚の銅箔集電体の両面に塗布した後、140℃で熱風乾燥させた。その後、ロールプレスで負極合材密度を1.5g/cm
3に高密度化し、56mm幅×500mm長の形状に切り出したものを負極シートとした。なお、負極活物質の塗布量は、片面当り5mg/cm
2程度とである。
【0041】
このようにして製造した正極シートと負極シートを、58mm幅で25μm厚のポリエチレン製の多孔性セパレータを挟んで楕円状に捲回し(
図3参照)、楕円ロール状電極体を作製した。実施例1では、多孔性セパレータとして、内部に平均粒子径25μmのアルミナ粒子が分散され、多孔性セパレータ全体の体積に占めるアルミナ粒子の体積の割合(セパレータ内絶縁粒子体積分率)が10%、多孔性セパレータ内の空孔率が30%のものを使用した。そして、ロール状電極体を幅100mm、高さ65mm、厚み5mmの角型アルミ缶に挿入し、非水電解液を含侵させた後に密閉して、リチウムイオン二次電池の電池本体を作製した。非水電解液には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを30:70vol%で混合した混合溶媒に、LiPF
6を1Mの濃度で溶解したものを用いた。
【0042】
この電池本体の充放電を行う際には、電極体の厚さ方向(正極シート、多孔性セパレータ及び負極シートの積層方向)に加圧を行うものとした。加圧には、
図1に示す均一加圧治具42と、
図4に示す櫛歯加圧治具142の2種類を用いた。
図1に示す均一加圧治具は、電池本体の幅100mm全体を均一に加圧するものである。
図4に示す櫛歯加圧治具は、加圧面に複数の溝が形成され、溝以外の部分(櫛歯)で電池本体を押圧し、溝部分に冷媒を通過させて電池本体を冷却するものである。櫛歯加圧治具では、電池本体の幅100mm中、トータルで50mm分が櫛歯となっている。こうした2種類の治具を用いて、加圧力1kgf/cm
2〜150kgf/cm
2で加圧して充放電させた。なお、加圧力は電池本体の幅と高さに作用する平均圧力とした。
【0043】
充放電サイクル試験は、0℃の温度条件下で、電流密度10mA/cm
2の定電流で充電上限電圧4.1Vまで充電を行い、次いで電流密度10mA/cm
2の定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクルとし、このサイクルを合計200サイクル行うものとした。そして、充放電サイクル試験前の放電容量を初期放電容量として、{200サイクル後の放電容量/初期放電容量×100%}という式を用いて、200サイクル後の容量維持率を計算した。なお、試験結果については後で詳述する。
【0044】
[実施例2]
実施例1の多孔性セパレータの代わりに、内部に平均粒子径7.5μmのアルミナ粒子が分散され、セパレータ内絶縁粒子体積分率が10%、セパレータ内の空孔率が30%の多孔性セパレータを使用した以外は、実施例1と同様にして電池本体を作製し、充放電サイクル試験を行った。
【0045】
[実施例3]
実施例1の多孔性セパレータの代わりに、内部に平均粒子径25μmのアルミナ粒子が分散され、セパレータ内絶縁粒子体積分率が70%、セパレータ内の空孔率が20%の多孔性セパレータを使用した以外は、実施例1と同様にして電池本体を作製し、充放電サイクル試験を行った。
【0046】
[実施例4]
実施例1の多孔性セパレータの代わりに、内部に平均粒子径7.5μmのアルミナ粒子が分散され、セパレータ内絶縁粒子体積分率が70%、セパレータ内の空孔率が20%の多孔性セパレータを使用した以外は、実施例1と同様にして電池本体を作製し、充放電サイクル試験を行った。
【0047】
[実施例5]
実施例1の多孔性セパレータの代わりに、内部に平均粒子径25μmのアルミナ粒子が分散され、セパレータ内絶縁粒子体積分率が5%、セパレータ内の空孔率が30%の多孔性セパレータを使用した以外は、実施例1と同様にして電池本体を作製し、充放電サイクル試験を行った。
【0048】
[実施例6]
実施例1の多孔性セパレータの代わりに、内部に平均粒子径7.5μmのアルミナ粒子が分散され、セパレータ内絶縁粒子体積分率が5%、セパレータ内の空孔率が30%の多孔性セパレータを使用した以外は、実施例1と同様にして電池本体を作製し、充放電サイクル試験を行った。
【0049】
[実施例7]
実施例1の多孔性セパレータの代わりに、内部に平均粒子径5μmのアルミナ粒子が分散され、セパレータ内絶縁粒子体積分率が10%、セパレータ内の空孔率が30%の多孔性セパレータを使用した以外は、実施例1と同様にして電池本体を作製し、充放電サイクル試験を行った。
【0050】
[比較例1]
実施例1の多孔性セパレータの代わりに、内部ではなく表面に平均粒子径25μmのアルミナ粒子を充填成形し、セパレータ内の空孔率が30%の多孔性セパレータを使用した以外は、実施例1と同様にして電池本体を作製し、充放電サイクル試験を行った。なお、比較例1は、特許文献1(特開2010−113966号公報)の請求項1を参考にして作成したものである。
【0051】
[比較例2]
実施例1の多孔性セパレータの代わりに、通常のポリエチレン製の多孔性セパレータ(アルミナ粒子なし)を使用した以外は、実施例1と同様にして電池本体を作製し、充放電サイクル試験を行った。
【0052】
なお、各実施例、各比較例で使用した多孔性セパレータの特徴を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
[試験結果]
各実施例、各比較例で均一加圧冶具を用い加圧力を変化させた時の1サイクル目の正極活物質1g当たりの放電容量を
図5に示す。各実施例、各比較例とも、加圧力が<4kgf/cm
2の範囲では加圧力の増大に伴って放電容量が増加したが、4〜25kgf/cm
2の範囲では加圧力の増大に伴って放電容量が減少する傾向がみられた。しかしながら、実施例1〜4では、4〜150kgf/cm
2の範囲でいずれも85mAh/g以上という高い放電容量が得られ、実用的に問題ないレベルであった。また、実施例5〜7では、実施例1〜4と比べると放電容量は減少したものの、比較例1,2と比べると放電容量は向上した。
【0055】
各実施例、各比較例で均一加圧冶具を用い加圧力を変化させた時の200サイクル後の容量維持率を
図6に示す。実施例1〜4では、加圧力が4〜150kgf/cm
2の範囲でいずれも80%以上の容量維持率が得られ、実用的に問題ないレベルであった。また、実施例5〜7では、実施例1〜4と比べると容量維持率は減少したものの、比較例1,2と比べると容量維持率は向上した。
【0056】
各実施例、各比較例で櫛歯加圧冶具を用い加圧力を変化させた時の200サイクル後の容量維持率を
図7に示す。実施例1〜4では、加圧力が4〜150kgf/cm
2の範囲でいずれも80%以上の容量維持率が得られ、実用的に問題ないレベルであった。また、実施例5〜7では、実施例1〜4と比べると容量維持率は減少したものの、比較例1,2と比べると容量維持率は向上した。