(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガイドレールとローダとを備え、前記ローダは、前記ガイドレールに沿って走行する走行体と、この走行体に昇降可能に設置されたロッド状の昇降体と、この昇降体の下端に設けられたローダヘッドと、このローダヘッドに設けられて下向き姿勢が可能でありワークを把持するチャックと、このチャックで保持したワークを工作機械のワーク保持部に対して搬入する搬送装置であって、
前記ローダヘッドを前記昇降体の昇降方向の軸心回りに回転させる回転位相変更機構を設けると共に、前記ローダに前記チャックの下方を撮像するカメラを設け、このカメラにより撮像を行わせて撮像結果に応じてローダを制御する撮像・ローダ制御手段を設け、
前記回転位相変更機構は前記ロッド状の昇降体の上部に設けられた駆動源とその駆動を前記ローダヘッドに伝達する伝達機構とでなり、
前記撮像・ローダ制御手段は、前記カメラに前記ワーク供給台上のワークを撮像させる撮像処理と、この撮像処理で得た画像データからワークの定められた基準位置回りの回転位相を認識する認識処理と、この認識された回転位相に応じて前記回転位相変更機構によりローダヘッドと共にチャックの回転位相を修正する調整処理とを行う機能を有することを特徴とする搬送装置。
ガイドレールとローダとを備え、前記ローダは、前記ガイドレールに沿って走行する走行体と、この走行体に昇降可能に設置された昇降体と、この昇降体の下端に設けられたローダヘッドと、このローダヘッドに設けられて下向き姿勢が可能でありワークを把持するチャックと、このチャックで保持したワークを工作機械のワーク保持部に対して搬入する搬送装置であって、
前記ローダヘッドを前記昇降体の昇降方向の軸心回りに回転させる回転位相変更機構を設けると共に、前記ローダに前記チャックの下方を撮像するカメラを設け、このカメラにより撮像を行わせて撮像結果に応じてローダを制御する撮像・ローダ制御手段を設け、
この撮像・ローダ制御手段は、定められたローダの位置で、前記カメラにワーク供給台上のワークを撮像させる第1回撮像処理と、この第1回撮像処理で得た画像データから少なくともワークの定められた基準位置を認識する第1回認識処理と、この認識されたワークの基準位置にカメラ視野の中心が位置するように前記ローダの位置を調整させる第1回調整処理と、この調整された位置で前記カメラに前記ワーク供給台上のワークを再度撮像させる第2回撮像処理と、この第2回撮像処理で得た画像データから少なくともワークの基準位置回りの回転位相を認識する第2回認識処理と、この認識された回転位相に応じて前記回転位相変更機構によりローダヘッドと共にチャックの回転位相を修正する第2回調整処理とを行う機能を有することを特徴とする搬送装置。
前記撮像・ローダ制御手段は、ワークの種類毎に、定められた項目についての情報を登録したマスタ登録手段を有し、前記撮像・ローダ制御手段は、前記第1回認識処理において、前記ワークの前記基準位置の認識に加えて、ワークの種類を、前記マスタ登録手段に登録されたワーク種類の中のいずれであるかを判別する処理と、判別されたワークの種類に応じて、マスタ登録手段に登録された情報を用い、第2回撮像処理を行うときの撮像条件の決定の処理、および第2回認識処理を行うときの認識条件の決定の処理の両方またはいずれか片方を行う請求項2または請求項3記載の搬送装置。
前記マスタ登録手段に、ワークの種類毎に、第2回認識処理を行うときの探索領域を決める情報と、前記チャックでワークを把持するときのワークにおける把持位置を決めた情報とが登録され、前記撮像・ローダ制御手段は、前記第1回認識処理で判別されたワークの種類に応じて、マスタ登録手段に登録された情報を用い、第2回認識処理を行うときの探索領域を決め、かつ前記チャックでワークを把持するときのワークにおける把持位置を決める請求項4記載の搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の撮像・画像処理の方法では、いずれも、回転位相を精度良く認識するには、多大な処理過程が必要で、処理時間がかかり実用的ではない。そのため、ワーク供給台での位置決め治具や、回転位相決め治具がワーク毎に必要であった。これらの治具がない場合、ワーク供給台上でのワークの位置や回転位相にずれが生じることになる。
【0005】
例えば、画像処理による方法として、ワーク供給台上におけるワークの位置や回転位相にずれがあったり、ワークの種類が複数種類のいずれであるかが分からない場合、ワークをカメラで撮像し、ワーク位置、回転位相、ワーク種類等を精度良く認識してから、認識結果に応じてローダによりワークを把持するようにすると、正しくワークを把持し、工作機械に正しくワークを渡すことができる。
しかし、カメラで撮像した画像データを処理して、ワーク位置、回転位相、ワーク種類等を精度良く認識するには、画像処理に多大な処理過程が必要で、時間がかかり、ワークの搬送に要する時間に影響して加工のサイクルタイムが長くなる。
一般的に、カメラ視野内の外周部では、光学系の構造上の特性等から撮像結果に歪みが生じており、校正を行うようにしているが、校正を行っても高精度を得ることが難しい。そのため、ワークの中心がカメラ視野の中心から大きく外れていると、ワークを正しく認識することが難しい。平坦なワークではカメラ視野の中心からずれていても、比較的に影響が少ないが、高さの高いワークでは、大きく歪んだ画像データとなり、全く異なった形に見えることもある。画像処理で、ある程度は修正できるが、このような歪んだ画像データでは、精度良くワークを認識するには、処理に時間がかかる。
【0006】
上記の特許文献1〜3の技術は、いずれも上記のような課題を解消するものではない。特許文献1の技術では、複数回撮像し、必要に応じて複数回繰り返してミスを排除するため、より精度の良い認識方法と、より短時間で処理されることが望まれる。特許文献2の技術は、ワークの位置認識、位相認識を行うものでない。特許文献3では、判定結果に基づいてワークの把持を行うものではない。
【0007】
すなわち、画像により位置認識、位相認識、異種判別を精度良く判定し、判定結果に基づいたワークの正しいを把持を行う技術は、いまだ提案されていない。また、トレードオフの関係にある認識精度と処理時間を、ワークに応じたユーザの要望に合わせて選択できるモードもない。
【0008】
この発明の目的は、ワーク供給台上のワークの回転位相の認識が行えて、チャックによりワークを正しい回転位相で把持することのできる搬送装置を提供することである。
この発明の他の目的は、ワーク供給台上のワークの中心位置と回転位相の精度の良い認識が迅速に行えて、ワークを正しく把持することのできる搬送装置を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、ワークを近い位置で撮像できて、ワークの中心位置と回転位相の認識をより精度良く行えるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、画像処理時間を短縮しながら、精度の良い回転位相の認識を可能とすることである。
この発明さらに他の目的は、チャックによるワークの把持を、ワークの種類や、そのワーク種類による適切な把持位置に応じて行えるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、ワーク供給台上のワークの中心位置と回転位相につき、精度の良い認識が迅速に行えて、ワークを正しく把持することができ、精度の良い加工を迅速に行える加工システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明における第1の搬送装置(2)は、ガイドレール(11)とローダ(12)とを備え、前記ローダ(12)は、前記ガイドレール(11)に沿って走行する走行体(13)と、この走行体(13)に昇降可能に設置されたロッド状の昇降体(15)と、この昇降体(15)の下端に設けられたローダヘッド(16)と、このローダヘッド(16)に設けられて下向き姿勢が可能でありワーク(W)を把持するチャック(19)と、このチャック(19)で保持したワーク(W)を工作機械(1)のワーク保持部(6)に対して搬入する搬送装置(2)であって、
前記ローダヘッド(16)を前記昇降体(15)の昇降方向の軸心回りに回転させる回転位相変更機構(17)を設けると共に、前記ローダ(12)に前記チャック(19)の下方を撮像するカメラ(23)を設け、このカメラ(23)により撮像を行わせて撮像結果に応じてローダ(12)を制御する撮像・ローダ制御手段(33)を設ける。
前記回転位相変更機構(17)は前記ロッド状の昇降体(15)の上部に設けられ
た駆動源(17a)とその駆動を前記ローダヘッド(16)に伝達する伝達機構(17b)とでなる。
前記撮像・ローダ制御手段(33)は、前記カメラに前記ワーク供給台(3)上のワーク(W)を撮像させる撮像処理と、この撮像処理で得た画像データからワーク(W)の定められた基準位置回りの回転位相を認識する認識処理と、この認識された回転位相に応じて前記回転位相変更機構(17)によりローダヘッド(16)と共にチャック(19)の回転位相を修正する調整処理とを行う機能を有する。前記ワーク(W)の基準位置は、ワーク(W)の種類毎に任意に定めれば良いが、例えば、ワーク(W)の平面図形の図心や、把持すべき部分の中心、特定の辺の中心、特定の角部等とされる。
【0010】
この構成によると、撮像・ローダ制御手段(33)の制御により、前記カメラ(23)に前記ワーク供給台(3)上のワーク(W)を撮像させる。この撮像処理で得た画像データからワーク(W)の基準位置回りの回転位相を認識する。このように認識された回転位相に応じて、回転位相変更機構(17)により、ローダヘッド(16)と共にチャック(19)の回転位相を修正する。これにより、正しい回転位相でワーク(W)をチャック(19)により把持することができる。このようにして、ワーク供給台(3)上のワーク(W)の回転位相の認識が行え、ワーク(W)を正しい回転位相で把持することができる。
【0011】
この発明における第2の搬送装置(2)は、ガイドレール(11)とローダ(12)とを備え、前記ローダ(12)は、前記ガイドレール(11)に沿って走行する走行体(13)と、この走行体(13)に昇降可能に設置された昇降体(15)と、この昇降体(15)の下端に設けられたローダヘッド(16)と、このローダヘッド(16)に設けられて下向き姿勢が可能でありワーク(W)を把持するチャック(19)と、このチャック(19)で保持したワーク(W)を工作機械(1)のワーク保持部(6)に対して搬入する搬送装置(2)であって、
前記ローダヘッド(16)を前記昇降体(15)の昇降方向の軸心回りに回転させる回転位相変更機構(17)を設けると共に、前記ローダ(12)に前記チャック(19)の下方を撮像するカメラ(23)を設け、このカメラ(23)により撮像を行わせて撮像結果に応じてローダ(12)を制御する撮像・ローダ制御手段(33)を設ける。
この撮像・ローダ制御手段(33)は、定められたローダ(12)の位置で、前記カメラ(23)にワーク供給台(3)上のワーク(W)を撮像させる第1回撮像処理と、この第1回撮像処理で得た画像データから少なくともワーク(W)の基準位置(Wo )を認識する第1回認識処理と、この認識されたワーク(W)の基準位置(Wo )にカメラ視野の中心が位置するように前記ローダ(12)の位置を調整させる第1回調整処理と、この調整された位置で前記カメラに前記ワーク供給台(3)上のワーク(W)を再度撮像させる第2回撮像処理と、この第2回撮像処理で得た画像データからワーク(W)の基準位置回りの回転位相を認識する第2回認識処理と、この認識された回転位相に応じて前記回転位相変更機構(17)によりローダヘッド(16)と共にチャック(19)の回転位相を修正する第2回調整処理とを行う機能を有する。
【0012】
この構成によると、撮像・ローダ制御手段(33)の制御により、定められたローダ(12)の位置で、ローダ(12)に取付けられたカメラ(23)により、ワーク供給台(3)上のワーク(W)を撮像させる。この第1回撮像処理で得た画像データから、少なくともワーク(W)の基準位置(Wo )を認識する。ワーク(W)の基準位置(Wo )の認識は、簡単な画像処理で行えるため、短時間で済む。ついで、この第1回認識処理で認識されたワーク(W)の基準位置(Wo )にカメラ視野の中心が位置するように前記ローダ(12)の位置を調整させる。この調整された位置で前記カメラ(23)に前記ワーク供給台(3)上のワーク(W)を再度撮像させる。この第2回撮像処理で得た画像データからワーク(W)の基準位置回りの回転位相を認識する。回転位相の認識は、ワーク位置にばらつきがあると、精度良く行うには多大な処理時間が必要となる。しかし、第2回撮像処理では、ワーク(W)の基準位置(Wo )にカメラ視野の中心が概ね位置するため、比較的簡単な画像処理で、回転位相を精度良く求めることができ、処理時間が短時間で済む。現在、搬送装置に実用化が可能なパソコン等のコンピュータ等の演算処理手段の処理能力では、上記のように2回の撮像を行い、その間にローダの位置を調整する過程を含んでも、ワーク基準位置とカメラ視野の中心が不一致の状態で行う1回の撮像結果から回転位相を演算する場合に比べて、短時間で精度良く回転位相を演算することができる。このように認識された回転位相に応じて、回転位相変更機構(17)により、ローダヘッド(16)と共にチャック(19)の回転位相を修正する。これにより、正しい回転位相でワーク(W)をチャック(19)により把持することができる。このようにして、ワーク供給台(3)上のワーク(W)の基準位置(Wo )と回転位相の精度の良い認識が迅速に行え、ワーク(W)を正しく把持することができる。なお、第2回撮像処理においても、位置認識を行っても良い。これにより、第1回撮像処理よりも、さらに精度良く、ワーク(W)の中心等の基準位置(Wo )を得ることができる。
なお、第1回認識処理部(42)および第2回認識処理部(43)における位置の認識は、ワーク(W)の中心位置が望ましいが、中心位置そのものでなくても良い。基準とする位置を認識し、回転位相も合わせて認識させ、これらの結果に基づいてワーク(W)の中心を求めることもできる。
【0013】
前記カメラ(23)は前記ローダヘッド(16)に取付けるのが良い。ローダ(12)の走行体(13)にカメラ(23)を取付けても良いが、その場合、ワーク(W)からカメラ(23)の位置が遠く、ワーク(W)の画像を精度良く得ることが難しい。チャック(19)を装備したローダヘッド(16)にカメラ(23)があると、ワーク(W)の直上でワーク(W)を撮像することができ、精度の良い撮像が行え、それだけ画像処理も簡単な処理で精度良く行うことができる。すなわち、斜めの位置から撮像すると、歪みが生じるため、補正を行う必要があり、精度が悪くなるが、真上であると歪みが生じず、精度の良い撮像が行える。
【0014】
前記撮像・ローダ制御手段(33)は、ワーク(W)の種類毎に、定められた項目の情報を登録したマスタ登録手段(40)を有し、前記撮像・ローダ制御手段(33)は、前記第1回認識処理において、前記ワーク(W)の基準位置(Wo )の認識に加えて、ワーク(W)の種類を、前記マスタ登録手段(40)に登録されたワーク種類の中のいずれであるかを判別する処理と、判別されたワーク(W)の種類に応じて、第2回撮像処理を行うときの撮像条件の決定の処理、および第2回認識処理を行うときの認識条件の決定の処理の両方またはいずれか片方の処理を行うようにしても良い。
ワーク(W)の種類を登録しておき、その中のいずれのワーク(W)であるかを判別できれば、ワーク(W)の種類による寸法の大小や特徴部分等に応じて、第2回撮像処理を行うときの撮像条件の決定や、第2回認識処理を行うときの認識条件の決定の処理を行うことができる。認識条件として、探索領域を適切に定めることで、画像データとして不要なデータを省き、必要なデータをできるだけ多く得ることができる。そのため、演算に時間の係る第2回認識処理における回転位相の演算を、できるだけ短時間で精度良く行うことができる。前記撮像条件としては、カメラ視野移動のための情報や、カメラが倍率調整機構を有する場合の倍率などが挙げられる。
【0015】
前記マスタ登録手段(40)に、ワークの種類毎に、第2回認識処理を行うときの探索領域を決める情報と、前記チャック(19)でワーク(W)を把持するときのワーク(W)における把持位置を決めた情報とが登録され、前記撮像・ローダ制御手段(33)は、前記第1回認識処理で判別されたワーク(W)の種類に応じて、マスタ登録手段(40)に登録された情報を用い、第2回認識処理を行うときの探索領域を決め、かつ前記チャック(9)でワーク(W)を把持するときのワーク(W)における把持位置を決めるようにしても良い。
ワーク(W)の種類が分かれば、適切な探索領域を決めることができ、適切な探索領域を決めることで、効率良く回転位相を計算することができる。また、ワーク(W)の種類に応じて、ワーク(W)における把持位置を定めておくことで、ワーク(W)の適切な把持が行える。
また、マスタ登録手段(40)に、ワーク(W)の種類毎に、第2回撮像処理を行うときのカメラ視野を決める情報と、前記チャック(19)でワーク(W)を把持するときのワーク(W)における把持位置(Wa)を定めた情報と、第2回認識処理で認識された回転位相と前記把持位置を定めた情報とによって前記回転位相変更機構により前記回転位相を修正するときの回転角度とを登録しておけば、各処理を簡単に精度良く行うことができる。特に、チャック(19)によるワークの把持を、ワーク(W)の種類や、そのワーク種類による適切な把持位置に応じて行える。
ワーク(W)に位相のずれがある場合、必ずしもそのずれ分だけ調整することが、ワーク(W)の把持に適切になるとは限らず、例えば55°位相のずれがある場合に、10°位相を変えるだけでワーク把持位置(Wa)が適切となる場合がある。このような場合、マスタ登録手段(40)に上記のように認識された回転位相と把持位置を定めた情報とによって回転位相を修正するときの回転角度とを登録しておけば、適切な回転位相に簡単な処理で調整することが出来る。
【0016】
この発明の加工システムは、この発明の上記いずれかの構成の搬送装置(2)と、工作機械(1)と、ワーク供給台(3)とを備える。
この構成の加工システムによると、この発明の搬送装置(2)の持つ上記の各作用,効果により、ワーク供給台(3)上のワーク(W)の基準位置(Wo )と回転位相の精度の良い認識が迅速に行えて、ワーク(W)を正しく把持することができ、精度の良い加工を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明における第1の搬送装置は、ガイドレールとローダとを備え、前記ローダは、前記ガイドレールに沿って走行する走行体と、この走行体に昇降可能に設置されたロッド状の昇降体と、この昇降体の下端に設けられたローダヘッドと、このローダヘッドに設けられて下向き姿勢が可能でありワークを把持するチャックと、このチャックで保持したワークを工作機械のワーク保持部に対して搬入する搬送装置であって、前記ローダヘッドを前記昇降体の昇降方向の軸心回りに回転させる回転位相変更機構を設けると共に、前記ローダに前記チャックの下方を撮像するカメラを設け、このカメラにより撮像を行わせて撮像結果に応じてローダを制御する撮像・ローダ制御手段を設け、前記回転位相変更機構は前記ロッド状の昇降体の上部に設けられ
た駆動源とその駆動を前記ローダヘッドに伝達する伝達機構とでなり、前記撮像・ローダ制御手段は、前記カメラに前記ワーク供給台上のワークを撮像させる撮像処理と、この撮像処理で得た画像データからワークの定められた基準位置回りの回転位相を認識する認識処理と、この認識された回転位相に応じて前記回転位相変更機構によりローダヘッドと共にチャックの回転位相を修正する調整処理とを行う機能を有するため、ワーク供給台上部に、同じ位相に整えられておらず、任意の回転位相で置かれていたとしても、ワークの回転位相の認識が行えて、ワークを正しい回転位相で把持することができる。
【0018】
この発明における第2の搬送装置は、ガイドレールとローダとを備え、前記ローダは、前記ガイドレールに沿って走行する走行体と、この走行体に昇降可能に設置された昇降体と、この昇降体の下端に設けられたローダヘッドと、このローダヘッドに設けられて下向き姿勢が可能でありワークを把持するチャックと、このチャックで保持したワークを工作機械のワーク保持部に対して搬入する搬送装置であって、前記ローダヘッドを前記昇降体の昇降方向の軸心回りに回転させる回転位相変更機構を設けると共に、前記ローダに前記チャックの下方を撮像するカメラを設け、このカメラにより撮像を行わせて撮像結果に応じてローダを制御する撮像・ローダ制御手段とを設け、この撮像・ローダ制御手段は、定められたローダの位置で、前記カメラにワーク供給台上のワークを撮像させる第1回撮像処理と、この第1回撮像処理で得た画像データから少なくともワークの基準位置を認識する第1回認識処理と、この認識されたワークの基準位置にカメラ視野の中心が位置するように前記ローダの位置を調整させる第1回調整処理と、この調整された位置で前記カメラに前記ワーク供給台上のワークを再度撮像させる第2回撮像処理と、この第2回撮像処理で得た画像データからワークの基準位置回りの回転位相を認識する第2回認識処理と、この認識された回転位相に応じて前記回転位相変更機構によりローダヘッドと共にチャックの回転位相を修正する第2回調整処理とを行う機能を有するため、ワーク供給台上に、同じ位置、同じ位相に整えられておらず、任意の位置に置かれて搬入されたとしても、ワークの基準位置と回転位相の精度の良い認識が迅速に行えて、ワークを正しく把持することができる。
前記カメラを前記ローダヘッドに取付けた場合は、ワークを近い位置で撮像でき、さらに真上から撮像できて、ワークの基準位置と回転位相の認識をより精度良く行える。
【0019】
前記撮像・ローダ制御手段は、ワークの種類毎に、定められた項目についての情報を登録したマスタ登録手段を有し、前記撮像・ローダ制御手段は、前記第1回認識処理において、前記ワークの前記基準位置の認識に加えて、ワークの種類を、前記マスタ登録手段に登録されたワーク種類の中のいずれであるかを判別する処理と、判別されたワークの種類に応じて、マスタ登録手段に登録された情報を用い、第2回撮像処理を行うときの撮像条件の決定の処理、および第2回認識処理を行うときの認識条件の決定の処理の両方またはいずれか片方を行う場合は、ワーク毎に適切な撮像を行うことができ、画像処理時
間を短縮しても、精度の良い回転位相の認識が可能となる。
【0020】
前記マスタ登録手段に、ワークの種類毎に、第2回認識処理を行うときの探索領域を決める情報と、前記チャックでワークを把持するときのワークにおける把持位置を決めた情報とが登録され、前記撮像・ローダ制御手段は、前記第1回認識処理で判別されたワークの種類に応じて、マスタ登録手段に登録された情報を用い、第2回認識処理を行うときの探索領域を決め、かつ前記チャックでワークを把持するときのワークにおける把持位置を決めるようにした場合は、異なるワークが供給されたとしても、チャックによるワークの把持を、ワークの種類や、そのワーク種類による適切な把持位置に応じて行える。
【0021】
この発明の加工システムは、この発明の上記いずれかの構成の搬送装置と、工作機械と、ワーク供給台とを備えるため、ワーク供給台上に、同じ位置、同じ位相、同じワーク種類、表裏が整えられておらず、任意の位置に置かれて搬入されたり、異なるワークが供給されたとしても、ワークの基準位置と回転位相の精度の良い認識が迅速に行えて、ワークを正しく把持することができ、精度の良い加工を迅速に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施形態を
図1ないし
図15と共に説明する。
図1に概念構成を示すように、この加工システムは、工作機械1と、搬送装置2と、素材となるワークWのワーク供給台3と、ワーク搬出台4と、前記工作機械1および搬送装置2を制御する制御装置5とで構成される。なお、搬送装置2は、搬送装置本体21Aと前記制御装置5とで主に構成され、さらにカメラ23と画像処理装置25とが設けられている。
【0024】
図4,
図5に示すように、工作機械1は平行2軸旋盤であり、ワーク保持部となる2本の主軸6,6が中央に設けられ、その両側に刃物台7,7が設けられている。また、中央の上部に、ワークWを表裏反転させる反転装置8が設けられている。
工作機械1の左右(X方向)の両側に、前記ワーク供給台3とワーク搬出台4とがそれぞれ設置されている。ワーク供給台3は、例えば、それぞれが複数または1個のワークWを載せるパレットまたは搬送治具となる可動台9を、上面で周回経路10に沿って可動台移動機構(図示せず)により移動させるワークフィーダ、またはコンベアである。可動台9は、複数のワークWを積層状態に載せるものであっても良く、また移動用の車輪(図示せず)を有している。周回経路10は、前後(Z方向)に長いトラック形状とされ
ている。可動台移動機構は、例えば案内レールと駆動手段とで構成される。ワーク搬出台4は、例えば前後に搬送するコンベア等からなる。
【0025】
搬送装置2は、制御系を除く部分である搬送装置本体2Aと、この搬送装置本体2Aを制御する制御手段とでなる。搬送装置本体2Aは、図示の例ではガントリローダ形式であり、工作機械1の上方に、ワーク供給台3およびワーク搬出台4の上方に渡って設けられたレール11と、このレール11上を走行するローダ12とでなる。
【0026】
図1に示すように、ローダ12は、レール11上を走行する走行体13に、前後方向に移動自在な前後移動台14を設置し、前後移動台14に、ロッド状の昇降体15を昇降自在に設置し、昇降体15の下端にローダヘッド16が設けられている。走行体13、前後移動台14、および昇降体15は、それぞれの駆動源(図示せず)により、走行、前後移動、および昇降の駆動が行われる。
【0027】
ローダヘッド16は、昇降体15に設
けられた回転位相変更機構17により、昇降体15の中心となる昇降方向の軸心O回りに、正逆に旋回して回転位相の変更が可能とされている。軸心Oは鉛直方向とされる。回転位相変更機構17は、モータ等の駆動源17aとその駆動の伝達機構17bとでなる。
【0028】
図6に拡大して示すように、ローダヘッド16には、スイベル式のチャック位置入替機構18が設けられている。ローダヘッド16には、スイベル用の旋回体18aが、前記鉛直方向の軸心Oに対して45°傾斜した傾斜軸心Qの回りに旋回自在に設置され、旋回駆動装置18bにより旋回駆動される。上記旋回体18の下面と正面とに、チャック19がそれぞれ設けられている。これら2個のチャック19,19は、旋回体18の旋回によって、互いの位置が入替え可能とされる。上記旋回体18aと旋回駆動装置18bとで、チャック位置入替機構18が構成される。
【0029】
各チャック19は、チャック中心Pに対して放射方向(すなわち、チャック中心O回りの円の半径方向)に進退自在な複数のチャック爪20と、プッシャ21とを有している。図示の例では、チャック爪20は3個とされている。なお、チャック爪20は2個であっても、また4個以上であっても良い。各チャック19のチャック爪20は、各チャック19に設けられたチャック開閉駆動源22により互いに同期して前記放射方向に進退駆動される。なお、前記正面は、
図7に示すように、工作機械1の主軸6に対向する方向であり、下向きのチャック19のチャック中心Pは、ローダヘッド16の回転中心となる前記軸心Oと一致する。プッシャ21は、ワークWの端面を押すプッシャプレート21aを、弾性的に進退自在とした機構である。プッシャプレート21aは、チャック爪20が移動しても干渉しない配置とされ、
図6(B)のように、例えば3又のアーム状とされる。
【0030】
上記構成のローダヘッド16において、このローダヘッド16の本体部の側面に、カメラ23が下向きに設置されている。ワーク供給台3には、
図2に示すように、撮像範囲を照明する照明具24が付設されている。照明具24は、例えば、ワークWを4方から取り囲むように、4本設置される。カメラ23は画像処理装置25に接続されている。画像処理装置25はモニタ26に接続されている。
【0031】
次に制御系を説明する。
図2において、制御装置5は、搬送装置2の搬送装置本体2Aを制御する装置であり、コンピュータ式の数値制御装置であるNC装置31と、コンピュータ式のプログラマブルコントローラからなるローダ制御装置32とでなる。これらNC装置31とローダ制御装置32とは、同じコンピュータに設けられたものであっても、また別のコンピュータに設けられて互いにLAN(ローカルエリアネットワーク)等により接続されたものであっても良い。また制御装置5は、搬送装置本体2Aの他に、工作機械1(
図1)制御する機能を持つものであっても良い。画像処理装置25およびカメラ23,照明具24は、制御装置5により制御される。
【0032】
図1において、制御装置5はコンピュータとこれに実行されるプログラム等からなり、各過程の制御を行うが、搬送装置本体2Aがワーク供給台3上のワークWを把持して主軸6へ渡す制御を行う機能達成手段として、制御装置5と画像処理装置25とで、撮像・ローダ制御手段33が構成されている。
撮像・ローダ制御手段33は、
図3に流れ図で示す各処理を主に行う手段であるが、
図1と共にその構成を機能達成手段毎に分けて説明すると、第1回撮像処理命令部34、第1回調整処理部35、第2回撮像処理命令部36、第2回調整処理部37、認識方法切替部38、マスター登録処理部39、マスタ登録手段40、および校正時処理部41を有している。マスタ登録手段40は、画像処理装置25に設けても良い。
画像処理装置25は、例えば独立したコンピュータとこれに実行されるプログラムとでなるが、第1回認識処理部42、第2回認識処理部43、登録時処理部44、および校正時処理部45を有している。
なお、
図3の流れ図の各ステップS1〜S6に、そのステップの処理を行う手段となる
図1の上記各部の符号を付した。これら各部34〜45は、次の機能を持つ。
認識方法切替部38、マスター登録処理部39、マスタ登録手段40、校正時処理部41、登録時処理部44、および校正時処理部45は、必ずしも設けなくても良い。
【0033】
第1回撮像処理命令部34は、定められたローダ12の位置で、カメラ23にワーク供給台3上のワークWを撮像させる。第1回認識処理部42は、第1回撮像処理で得た画像データから、少なくともワークWの基準位置(この例では中心軸Woの位置)を認識する。なお、ワーク(W)の基準位置は、ワーク(W)の種類毎に任意に定めれば良いが、例えば、把持すべき部分の中心、特定の辺の中心、特定の角部等とされる。第1回調整処理部35は、この認識されたワークWの基準位置(Wo)にカメラ視野の中心が位置するように、ローダ12の位置を調整させる。
【0034】
第2回撮像処理命令部34は、この調整された位置で、カメラ23にワーク供給台3上のワークWを再度撮像させる。第2回認識処理部43は、この第2回撮像処理で得た画像データからワークWの中心軸Wo回りの回転位相を認識する。第2回調整処理部35は、この認識された回転位相に応じて前記回転位相変更機構17により、ローダヘッド16と共にチャック19の回転位相を修正する。
【0035】
なお、第1回撮像処理命令部34、第1回認識処理部42、第1回調整処理部35、第2回撮像処理命令部34、第2回認識処理部43、および第2回調整処理部35は、それぞれ
図3の各ステップの処理を行う手段であり、前述のように、対応するステップに上記各部の符号を付した。
【0036】
具体的に説明すると、
図8(A)に示すように、ワーク供給台3上のワークWをローダ12で把持するとき、ローダ12は定められた位置に位置決めされ、その位置で、カメラ23に撮像させる(
図3のステップS1)。上記の「定められた位置」は、望ましくは、ワーク供給台3において、ワークWが置かれる範囲の中心である。第1回認識処理部42は、この第1回撮像処理で得た画像データから、少なくともワークWの基準位置(中心軸Woの位置)を認識する(S2)。ワークWの基準位置(Wo)の認識は簡単な画像処理で行えるため、短時間で済む。同図の下部に、カメラ視野Rと、撮像されたワークWの画像Wgとの関係を示した。
第1回調整処理部35は、この第1回認識処理で認識されたワークWの基準位置(Wo)にカメラ視野の中心O23が位置するように、ローダ12の位置を調整させる。すなわち、ワーク基準位置(Wo)とカメラ視野中心O23との距離Lだけ、ローダ12を移動させる。
図8では左右方向(X方向)にのみずれている場合を示し、その場合は走行体13を走行させるが、前後方向(Z方向)にもずれている場合は、前後移動台14を移動させる(S3)。
【0037】
この調整された位置で、カメラ23にワーク供給台3上のワークWを再度撮像させる(S4)。この第2回撮像処理で得た画像データからワークWの中心軸Wo回りの回転位相α(
図11(A))を認識する(S5)。ワークWの平面形状が全体にわたって円形の場合は回転位相は関係しないが、非円形であると回転位相αが加工や把持に重要となる。この回転位相αは、任意に定められるワークWの基準姿勢に対する回転角度である。
図11(A)の例では、同図に1点鎖線で示した姿勢が基準姿勢であり、ワークWは回転位相αだけ基準姿勢に対して回転している。
回転位相αの認識は、ワーク位置にばらつきがあると、精度良く行うには多大な処理時間が必要となる。しかし、第2回撮像処理では、ワークWの基準位置(Wo)にカメラ視野の中心O23が位置するため、比較的簡単な画像処理で、回転位相αを精度良く求めることができ、処理時間が短時間で済む。現在、コスト面を含めて搬送装置に実用化可能な程度の性能のコンピュータ等の演算処理手段の処理能力では、上記のように2回の撮像を行い、その間にローダ12の位置を調整する過程を含んでも、ワーク中心とカメラ視野の中心が不一致の状態で行う1回の撮像結果から回転位相を演算する場合に比べて、短時間で精度良く回転位相を演算することができる。
【0038】
このように認識された回転位相αに応じて、回転位相変更機構17により、ローダヘッド16と共にチャック19の回転位相を修正する(S6)。これにより、正しい回転位相でワークWをチャック19により把持することができる。例えば、
図11はワークWの底部の平面形状が三角形状であって、その三角形状の部分をチャック19の3つのチャック爪20で把持するが、
図11(A)のように回転位相αが生じた状態では、チャック爪20の位置とワークWの各辺中央の位置や、その辺の面の方向が一致しない。そのため、そのままで把持するとワークWの把持姿勢が定まらず、不正確となる。
図11(B)のようにチャック爪20がワークWの各辺に正しく対応するチャック19の回転位相でワークWを把持することにより、把持時にワークWがチャック19に対して位置ずれ等を生じることなく、精度良く把持することができる。
なお、
図10,
図11のような底部が三角形状であって、上部が円筒状ないし円柱状のワークWの場合、ローダチャック20のチャック爪19で底部の3辺をそれぞれ把持するときは、
図11(D)のように、主軸のチャック爪6aはその円筒状ないし円柱状のワーク上部Wbを、ローダ側のチャック爪19とは異なる位相で把持する。ローダ側のチャック爪19による把持位置間の真ん中の位相が好ましい。上記とは逆に、主軸のチャック爪6aでワークの三角形状の底部を把持し、ローダのチャック爪19でワーク上部Wbを把持しても良いが、その場合も、両チャック爪6a,19は、互いに異なる位相で把持する。
【0039】
このようにして、ワーク供給台3上のワークWの基準位置(Wo)と回転位相αの精度の良い認識が迅速に行え、ワークWを正しく把持することができる。
ワークWを把持したときに、チャック19の回転位相を変えたため、把持は適切に行えるが、そのままでは、チャック位置入替機構18により下向きのチャック19を主軸6に対向する方向に切り替えたときに、主軸6に正しく渡すことができない。そのため、ワークWを把持した後、第2回調整処理の一部として、
図11(C)のようにチャック19を元の回転位相に戻す。これにより、ワークWを正しい回転位相で主軸6に渡すことができる。
【0040】
なお、
図3の流れ図で示す各動作は、より具体的には、
図13のタイムチャートで示すように、制御装置5や画像処理装置25の間で認識エラー等を確認しながら行われる。
【0041】
第1回認識処理部42および第2回認識処理部43における位置の認識は、ワークWの中心位置が望ましいが、中心位置そのものでなくても良い。基準とする位置を認識し、回転位相も合わせて認識させ、これらの結果に基づいてワークWの中心を求めることもできる。
【0042】
また、上記の各認識処理や調整処理は、次のようにマスタ登録手段40に各ワークWについての登録を行っておいて行っても良い。
すなわち、撮像・ローダ制御手段33は、第1回認識処理部42による第1回認識処理において、ワークWの基準位置(Wo)の認識に加えて、ワークWの種類を、マスタ登録手段40に登録されたワーク種類の中のいずれであるかを判別する処理を行う。このワーク種類の判別は、パターンマッチング等の手法で簡単に行える。マスタ登録手段40には、各種ワークWの画像のデータ、またはその画像を処理して特徴部分等を抽出したデータ等を登録する。マスタ登録手段40には、この他に後述の事項を登録しても良い。
【0043】
また、第1回調整処理部35では、第1回調整処理の一つとして、判別されたワークWの種類に応じて、第2回撮像処理(S4)を行うときのカメラ視野、または探索領域を調整する処理を行う。例えば
図9(A)に示すように、第1回撮像処理(S1)を行ったときの画像Wgがカメラ視野Rのごく一部であった場合に、
図9(B)のように、第2回撮像処理(S4)では視野Rに入る範囲で、できるだけ大きな画像Wgとなるように、カメラ23の持つ光学機構(図示せず)の倍率調整を行う。倍率調整ではなく、
図9(C)のように、探索領域Raを調整するものとしても良い。
マスタ登録手段40にワークWの種類毎のデータを登録しておき、その中のいずれのワークWであるかを判別できれば、ワークWの種類による寸法の大小や特徴部分等に応じて、第2回撮像処理を行うときのカメラ視野Rを適切に調整することができる。カメラ視野Rを適切に調整することで、画像データとして不要なデータを省き、必要なデータをできるだけ多く得ることができる。そのため、演算に時間の係る第2回認識処理における回転位相の演算を、できるだけ短時間で精度良く行うことができる。
【0044】
マスタ登録手段40には、ワークWの種類毎に、第2回撮像処理(S4)を行うときのカメラ視野,または探索領域を決める情報と、チャック19でワークWを把持するときのワークWにおける把持位置Wa(
図10)を定めた情報と、第2回認識処理(S5)で認識された回転位相に対して前記把持位置Waを定めた情報によって前記回転位相変更機構17により回転位相を修正するときの回転角度や、第2回認識処理(S5)で認識するときの探索領域とを登録しておいても良い。撮像・ローダ制御手段33は、このマスタ登録手段40に登録された情報に応じた制御を行うものとする。
ワークWの種類としては、例えば、
図12に示すように各種のものがある。同図には、一部のワークWにつき1点鎖線で囲ったように、各ワークWの平面図と正面とを対として示してある。
【0045】
上記のようにマスタ登録手段40に、ワークWの種類毎に、第2回撮像処理を行うときのカメラ視野Rを決める情報と、チャック
19でワークWを把持するときのワークWにおける把持位置Waを定めた情報と、第2回認識処理(S5)で認識された回転位相をαと前記把持位置(Wa)を定めた情報とによって前記回転位相変更機構17により回転位相を修正するときの回転角度とを登録しておけば、各処理を簡単に精度良く行うことができる。特に、チャック19によるワークWの把持を、ワークWの種類や、そのワーク種類による適切な把持位置Waに応じて行える。ワークWに位相のずれがある場合、必ずしもそのずれ分だけ調整することが、ワークWの把持に適切になるとは限らず、例えば55°位相のずれがある場合に、10°位相を変えるだけでワーク把持位置が適切となる場合がある。このような場合、マスタ登録手段40に上記のように認識された回転位相と把持位置を定めた情報とによって回転位相を修正するときの回転角度とを登録しておけば、適切な回転位相に簡単な処理で調整することができる。
【0046】
マスタ登録手段40へのワークWの情報の登録は、入力手段(図示せず)から手入力で行っても、また別に作成しておいたデータを通信手段や媒体等を介して入力するようにしても良い。また、マスタ登録処理部39と、登録時処理部44とを設け、自動で行うようにしても良い。マスタ登録処理部39は、カメラ23にワークWの画像を撮像させると共に、登録時処理部44で処理された結果のデータをマスタ登録手段40に登録する手段である。またマスタ登録処理部39は、登録時処理部44で処理された結果のデータに対して、例えば把持位置等のデータを入力手段から入力するようにしても良い。登録時処理部44は、撮像された画像から、マスタ登録手段40に登録するための、特徴抽出等の画像処理を行う手段である。
【0047】
マスタ登録処理部39は、具体的には、例えば
図14に流れ図を示す手順で、マスター登録のジョブ指示、ジョブロード、名称入力指示、名称入力、ワーク情報入力指示、ワーク情報入力、画像取込指示、画像取込、エクスポート指示、エクスポート(結果のマスタ登録手段40への登録)等を行うようにしても良い。名称入力、ワーク情報入力は、入力手段から手入力等で行う。
【0048】
マスタ登録処理部39を用いて登録する操作手順は、例えば次の手順等とされる。
・主軸6にワークWを取付ける。この状態が基準となり、ローダ12へ渡されると、ローダ12における基準となる。すなわち、チャック中心がワークWの基準となり、上視した形状の重心が等しい形状ならば、ワークWの中心となる。
・ワークWのパラメータを設定する。これはマスタ登録処理部39が行う。パラメータとして、例えば、登録番号(自動付与)、ワーク名、ワークのチャックする部分の半径、ークの基準位置からの縦長さ(上、下)、ワークの基準位置からの横長さ(右、左)、ワークのチャック部分の高さ、等配分割数(等しい形状が円周方向に並ぶ数)、ワーク材質、片面加工か両面加工かの情報、特徴点指定の有無等の認識条件である。
開始指示によって自動撮像と自動テストが開始される。結果はモニタ26(
図2)に表示する。「OK」の場合は、保存して自動マスタ登録が完了する。「NG」の場合は、手動による画像取り込みが必要である。ジョブは保存する。
【0049】
マスタ登録処理部39の処理内容は、次のように行う。
・画像取り込み位置へのワークWの搬送。主軸6よりワークWを画像撮像位置へ搬送する(主軸移動型旋盤の場合)。画像取り込み位置は、望ましくは、コンベアやワークフィーダ等のワーク供給台3である。
・画像取り込み基準位置へのカメラ23の移動。カメラ中心を、ワーク中心、すなわちローダ12のチャック19の中心の上方へ移動し、チャック19やカメラ23からワークWまでの高さを作動距離WD(
図8(A))に合わせる。この場合の距離WDは、ワークフィーダからなるワーク供給台3を用いる場合である。コンベアからなるワーク供給台3の場合は、ワーク高さによって異なるため、底面からの距離としても良い。
・自動画像取り込み。カメラ視野の中心位置から、ワークWの縦長さ,横長さに基づいた範囲を含む領域を撮像し、マスター画像とする。
・認識テスト。ワークWをチャックして所定量の位置・位相をずらす。画像認識位置へカメラ23を移動させる。位置認識、位相認識を行って、ずらせた量と一致するか判定する。所定内容のずらしテストを行って、基準内であれば、完了する。基準外であれば、自動取り込みはNGとなる。
【0050】
図1において、校正処理部41は、カメラ23のレンズ歪みの校正(すなわちキャリブレーション)を行う手
段である。校正過程として、カメラ23に画像の取り込ませ、校正のための画像処理を校正時処理部45に行わせる。校正処理部41による処理は、例えば
図15に示すように行う。
操作手順としては、キャリブレーションシートを基準位置に置き、開始指示を与える。
校正処理部41は、キャリブレーション画像を取り込む。この後、キャリブレーション処理(カメラにおける画素座標と絶対座標、およびカメラにおける絶対座標とローダ位置の絶対座標について関係の校正を行う)。キャリブレーションシートは、規定の寸法のドット(円)や矩形が、規定の間隔で配置されており、絶対座標を得ることができるものである。
【0051】
図1において、認識方法切替部38は、画像認識の方法を、入力手段からの入力によるモード選択によって切り替える手段である。例えば、「判別モード」、「優先モード」、「表裏判別モード」等のモードを設定する。「判別モード」は、複数ワーク指定モード(ワーク種類、表裏の判定)か、単ワークモード(正誤判定)とする。「優先モード」は、例えば高精度モード、中間モード、高速モードを設ける。「表裏判別モード」は、ワークWに表裏の区別があるかないかの決めておくモードである。表裏区別有りの場合は、裏のマスター登録も行う。