(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送方向の上流側に受け取り部が設けられ、下流側に受け渡し部が設けられた薄板ガラス基板の搬送手段と、この搬送手段の上方に配設されるとともに、平板状の複数枚のプレートが無端状に連結されたトップチェーンとを備え、上記搬送手段の上記受け取り部において上記薄板ガラス基板を上記トップチェーンに吸着させて上記搬送手段上方に沿って搬送し、上記搬送手段の上記受け渡し部において上記吸着を解いて上記薄板ガラス基板を上記トップチェーンより離脱させる薄板吸着搬送コンベヤ装置において、
上記トップチェーンは、隣接する上記プレートの対向辺の一方側に凸部が形成され、かつ他方側に上記凸部が係合する凹部が形成されて、これら係合部の幅方向にピン材が挿通されて回動自在に連結されているとともに、外表面の上記プレートの上記幅方向両側に、上記トップチェーンの走行方向に延在する独立気泡型パッドが周設されてなり、
上記トップチェーンの上記受け取り部と上記受け渡し部との間には、上記トップチェーンの内表面を覆うとともに、上記プレートの間を介して上記外表面に周設された上記独立気泡型パッド間の空間に連通する真空吸引室が延設され、
上記真空吸引室には、当該真空吸引室内を真空吸引することにより、上記真空吸引室に連通した上記独立気泡型パッド間の空間と上記薄板ガラス基板との間を負圧に保持する真空吸引手段が設けられていることを特徴とする薄板吸着搬送コンベヤ装置。
上記真空吸引室には、上記トップチェーンの上記受け取り部と上記受け渡し部との間の空間を区画する仕切り板が、少なくとも1枚設けられていることを特徴とする請求項1に記載の薄板吸着搬送コンベヤ装置。
上記独立気泡型パッドは、上記プレートごとに設けられているとともに、上記トップチェーンの走行方向に周設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の薄板吸着搬送コンベヤ装置。
上記独立気泡型パッドは、上記プレートごとに設けられているとともに、隣接する上記独立気泡型パッド同士の間に、上記トップチェーンの走行方向に対して、上方から下方に向けて傾斜した隙間が形成され、かつ上記トップチェーンの走行方向に周設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の薄板吸着搬送コンベヤ装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、薄板ガラス基板などの薄板材は、大きく撓むため破損しやすく、取り扱いが難しい。そのため、面積の大きな薄板ガラス基板などの薄板材を取り扱う製造工程においては、薄板材を一枚ごと吸着して、次工程に搬送している。
【0003】
この吸着による搬送に用いられる搬送装置は、例えば、薄板材を吸着・保持する吸着保持手段が取り付けられてなるハンド部と、このハンド部を移動自在に支持するアーム部と、このアーム部を作動させることにより、当該薄板ガラス基板を搬送する駆動装置とを備えたハンドリング装置が知られている。
【0004】
このハンドリング装置は、1枚目の上記薄板材を搬送方向の上流側において、複数の上記吸着パッドを備え上記ハンド部により吸着し、上記アーム部を上記駆動装置により作動させ、アーム部の移動により下流側まで搬送した後に、当該下流側において、上記吸着を解いて当該薄板材を上記吸着パッドより離脱させ、再び上記ハンド部を上記アームを移動させて当該上流側に戻して、2枚目の薄板材を吸着し当該下流側に搬送する工程となっている。
【0005】
ところで、従来の上記ハンドリング装置は、上記薄板ガラス基板を上記ハンド部の上記吸着手段に吸着・保持した状態のまま、上記アーム部を移動させるため、移動速度を遅くする必要があるとともに、1枚を搬送した後に上記ハンド部を搬送方向の上記上流側に戻す必要がある。これにより、生産工程の均等なタイミングを図るための工程作業時間、いわゆるタクトタイムが長くなり、作業効率が悪いという問題がある。
【0006】
そこで、下記特許文献においては、エンドレス走行する一対のチェーン間に、内部を真空吸引室とする多数本の中空バーが架設された搬送ベルト部を構成し、各中空バーがコンベヤ周回の外側に臨む複数の吸引孔と端面に臨む排気口とを備えると共に、各吸引孔内には弁座とばね力により開弁方向に付勢されて、該弁座の外側に配置した弁体とを有し、各中空バーが吸引孔を下向きとして水平移動する往動行程の一側に、各中空バーの排気口を有する端面と気密状態で摺接する固定枠部が配設され、この固定枠部の中空バーとの摺接部に、真空吸引路に連通した複数の通気孔が当該摺接部に沿って所定間隔置きに開設されているコンベヤ装置が提案されている。
【0007】
この従来のコンベヤ装置は、中空バーにより構成される搬送ベルト部に、平板体が当接した場合に、この平板体に覆われた表面領域にある吸引孔のみが開放し、他の吸引孔は全て閉塞状態を維持して真空吸引室への空気の流入を防止するため、この空気の流入により起こる真空吸引力の低下が少なく、確実に吸着することができる。これにより、各中空バーに設けられた吸引孔を下向きに配設し、水平移動する往動行程において、平板体を搬送ベルトの下面側に吸着させて、搬送ベルト部の走行とともに、前方へ搬送するとともに、搬送途上の定位置に搬送された際に、中空バー内の真空吸引を停止させることにより、当該搬送ベルト部から離脱させ、平板体を搬送することができる。
【0008】
しかしながら、この従来のコンベヤ装置は、搬送ベルトの下面に吸着させて搬送することにより、連続搬送が可能になるものの、上記平板体を真空吸着するために、複数本の中空バーを一対の上記チェーン間に架設するとともに、これら複数本の中空バーに設けられた退入作動する弁体よりなる複数の吸引孔を設ける必要があるため、構造が複雑になり製造コストが嵩むとともに、複数本の中空バーおよび複数の吸引孔のメンテナンスに多大な時間を要するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡素な構造であるとともに、薄板材を確実に吸着して連続搬送することができ、かつメンテナンスが容易な薄板吸着搬送コンベヤ装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、搬送方向の上流側に受け取り部が設けられ、下流側に受け渡し部が設けられた薄板ガラス基板の搬送手段と、この搬送手段の上方に配設されるとともに、平板状の複数枚のプレートが無端状に連結されたトップチェーンとを備え、上記搬送手段の上記受け取り部において上記薄板ガラス基板を上記トップチェーンに吸着させて上記搬送手段上方に沿って搬送し、上記搬送手段の上記受け渡し部において上記吸着を解いて上記薄板ガラス基板を上記トップチェーンより離脱させる薄板吸着搬送コンベヤ装置において、
上記トップチェーンは、隣接する上記プレートの対向辺の一方側に凸部が形成され、かつ他方側に上記凸部が係合する凹部が形成されて、これら係合部の幅方向にピン材が挿通されて回動自在に連結されているとともに、外表面の上記プレートの上記幅方向両側に、上記トップチェーンの走行方向に延在する独立気泡型パッドが周設されてなり、
上記トップチェーンの上記受け取り部と上記受け渡し部との間には、上記トップチェーンの内表面を覆うとともに、上記プレートの間を介して上記外表面に周設された上記独立気泡型パッド間の空間に連通する真空吸引室が延設され、
上記真空吸引室には、
当該真空吸引室内を真空吸引することにより、上記真空吸引室に連通した上記独立気泡型パッド間の空間と上記薄板ガラス基板との間を負圧
に保持する真空吸引手段が設けられていることを特徴とする薄板吸着搬送コンベヤ装置。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記真空吸引室には、上記トップチェーンの上記受け取り部と上記受け渡し部との間の空間を区画する仕切り板が、少なくとも1枚設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
そして、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記独立気泡型パッドは、上記プレートごとに設けられているとともに、上記トップチェーンの走行方向に周設されていることを特徴とするものである。
【0014】
そして、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記独立気泡型パッドは、上記プレートごとに設けられているとともに、隣接する上記独立気泡型パッド同士の間に、上記トップチェーンの走行方向に対して、上方から下方に向けて傾斜した隙間が形成され、かつ上記トップチェーンの走行方向に周設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜4に記載の本発明によれば、無端状に連結されたトップチェーンの外表面の幅方向両側に、上記トップチェーンの走行方向に延在する独立気泡型パッドを周設するとともに、その内表面を覆い、かつ当該トップチェーンの隣接するプレート同士の間隙を介して、上記独立気泡型パッド間に連通する真空吸引室を、搬送方向の受け取り部と受け渡し部との間に延設しているため、上記真空吸引室が延設された上記受け取り部と上記受け渡し部との間の任意の位置において、真空吸引手段のON/OFFを行うことにより、薄板ガラス基板を上記トップチェーンの上記独立気泡型パッド間において、吸着および離脱させることができ、当該薄板ガラス基板を一枚ごと連続搬送することができる。これにより、生産工程の均等なタイミングを図るための工程作業時間であるタクトタイムを短くすることができるとともに、作業効率を向上させることができる。
【0016】
また、無端状に形成された上記トップチェーンの複数のプレート同士の間隙を介して、上記独立気泡型パッド間に連通する上記真空吸引室を吸引し、上記薄板ガラス基板を上記独立気泡型パッド間の空間により吸着するため、従来のように、上記ガラス基板を吸着するための複数の吸盤や、これら複数の吸盤に負圧を発生させる真空吸引手段からの配管などの複雑な設備を必要としない。この結果、設備のスリム化を図ることができるとともに、簡素な構造により修理や補修が容易に行え、メンテナンスコストも抑えることができる。
【0017】
そして、上記トップチェーンに周設されている上記独立気泡型パッドが、柔軟性を備えているとともに、空気を通し難いため、上記薄板ガラス基板を上記搬送手段の上記受け取り部において、上記真空吸引手段の作動により吸着する際に、上記薄板ガラス基板への衝撃を緩和させることができるとともに、上記薄板ガラス基板と上記独立気泡型パッド間の空間との気密を確保することができる。この結果、破損しやすく取り扱いの難しい上記薄板ガラス基板を効率良く連続搬送することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、上記真空吸引室に、上記トップチェーンの上記受け取り部と上記受け渡し部との間の空間を区画する仕切り板が、少なくとも1枚設けられているため、区画毎に上記真空吸引手段を設けることにより、区画毎に真空吸引のON/OFFを切り換えることができる。これにより、上記薄板ガラス基板を上記搬送手段の上記受け取り部において吸着させ、上記搬送手段上方に沿って搬送し、上記搬送手段の上記受け渡し部において、上記薄板ガラス基板を離脱させる際に、次の上記薄板ガラス基板を上記受け取り部において吸着させることができ、複数枚を連続搬送させることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、上記独立気泡型パッドが、上記プレートごとに設けられているとともに、上記トップチェーンの走行方向に周設されているため、上記トップチェーンを走行させるトップスプロケットおよびテールスプロケットに、上記トップチェーンが歯合される際に、円周方向に生じる伸びを吸収することができる。これにより、上記独立気泡型パッドの破断や早期の劣化を防止することができる。
【0020】
なお、上記独立気泡型パッドに上記切断部を形成したとても、上記真空吸引室内を上記真空吸引手段により吸引し、上記トップチェーンの隣接する上記プレート同士の間隙を介して吸引されて、上記薄板ガラス基板を上記独立気泡型パッドに当接させる際に、柔軟性を有する上記独立気泡型パッドが圧縮されることにより、上記切断部が密着するため、上記独立気泡型パッド間および上記独立気泡型パッド間に連通した上記真空吸引室内の気密を保つことができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、上記独立気泡型パッドが、上記プレートごとに設けられているとともに、隣接する上記独立気泡型パッド同士の間に、上記トップチェーンの走行方向に対して、上方から下方に向けて傾斜した隙間が形成されているため、上記独立気泡型パッドの使用量を抑えることができる。これにより、設備コストのコストを抑えることができる。
【0022】
なお、上記独立気泡型パッドの上記切断部に、上記隙間を形成したとても、上記真空吸引室内を上記真空吸引手段により吸引し、上記トップチェーンの隣接する上記プレート同士の間隙を介して吸引されて、上記薄板ガラス基板を上記独立気泡型パッドに当接させる際に、柔軟性を有する上記独立気泡型パッドが圧縮されることにより、上記隙間が密着するため、上記独立気泡型パッド間および上記独立気泡型パッド間に連通した上記真空吸引室内の気密を保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜
図3に示すように、本発明の一実施形態の薄板吸着搬送コンベヤ装置1は、薄板ガラス基板tの搬送手段2と、この搬送手段2の上方に間隔を置いて配設されているとともに、平板状の複数枚のプレート7が無端状に連結されたトップチェーン6と、このトップチェーン6のトップスプロケット11とテールスプロケット12との間に延設された真空吸引室9と、この真空吸引室の負圧を保持するを真空吸引手段10およびこの真空吸引手段10に連結されたダクト10aとを備え概略構成されている。
【0025】
ここで、搬送手段2は、ローラコンベヤ2が用いられている。このローラコンベヤ2は、搬送方向Fの上流側(図中左側)に、受け取り部3が設けられた第1ローラコンベヤ2cと、下流側(図中右側)に、受け渡し部4が設けられた第2ローラコンベヤ2dとにより構成されている。また、第1および第2ローラコンベヤ2
c、2
dは、薄板ガラス基板tが載置される載置台を上下に可動させるリフト手段14が各々備えられている。このリフト手段14は、エアーシリンダが用いられている。
【0026】
また、トップチェーン6は、搬送方向Fに延在しているとともに、4つが並列に等間隔でローラコンベヤ2の上方に配設されている。また、各々のトップチェーン6は、
図5に示すように、平板状の複数枚のプレート7が、無端状に連結されている。このプレート7は、隣接する対向辺の一方側に凸部7aが形成されているとともに、他方側に凸部7aが係合する凹部7bが形成されている。
【0027】
さらに、凸部7aには、プレート7の幅方向に貫通した貫通孔7dが形成されている。そして、凸部7aと係合する凹部7b側には、凸部7aの貫通孔7dと連通するとともに、凹部7bの上記幅方向両側の突状部に貫通する貫通孔7eが形成されている。そして、凸部7aと凹部7bとを係合するとともに、貫通孔7d、7eにピン材6bが挿通されて係合部6aが回動自在に形成されているとともに、隣接するプレート7間に間隙が形成されている。
【0028】
また、トップチェーン6の内表面6d側には、プレート7の上記幅方向に対向配置された係合片7cが形成されている。この係合片7cは、凹部7bの上記幅方向両側の突状部に対向配置されているとともに、開口部の対向する内壁の鉛直から外方に突出し、かつプレート7と平行に間隔を置いて一体に形成されている。
【0029】
さらに、トップチェーン6は、
図6(a)および
図6(b)に示すように、搬送方向Fの上流2a側のトップスプロケット11、および下流2b側のテールスプロケット12に各々歯合されている。また、トップスプロケット11は、モータkのチェーンmを介して回転自在に設けられている。さらに、トップスプロケット11とテールスプロケット12との間には、案内レール13が設けられている。この案内レール13は、
図4に示すように、トップチェーン6の内表面6dに形成された係合片7cと、プレート7との間にが係合されている。また、案内レール13は、トップチェーン6の走行方向に沿って延設されているとともに、鉛直方向の間隔を保持してトップチェーン6が走行するように設けられている。
【0030】
また、トップチェーン6の外表面6cには、プレート7の上記幅方向両側に、トップチェーン6の走行方向に延在する独立気泡型パッド8が周設されている。この独立気泡型パッド8は、樹脂を発泡させたもので、気泡が各々個別に封じられている。また、独立気泡型パッド8は、
図6(a)および
図6(b)に示すように、各々のプレート7ごとに設けられているとともに、隣接する独立気泡型パッド8同士の間に切断部8aが形成されている。
【0031】
また、独立気泡型パッド8の変形例として、
図9に示すように、独立気泡型パッド8が、プレート7ごとに設けられているとともに、隣接する上記独立気泡型パッド8同士の間に、トップチェーンの走行方向に対して、上方から下方に向けて45°の角度により傾斜して切断されているとともに、1.0〜1.5mmの隙間8bが形成されている。
【0032】
そして、各々のトップチェーン6のトップスプロケット11とテールスプロケット12との間のローラコンベヤ2側には、トップチェーン6の内表面6dを覆うとともに、トップチェーン6の隣接するプレート7の間隙を介して、外表面6cに周設された独立気泡型パッド8間に連通する真空吸引室9が延設されている。真空吸引室9は、トップスプロケット11側およびテールスプロケット12側の突き板9bにより、空間が仕切られている。
【0033】
さらに、
図8(b)に示す真空吸引室9の変形例においては、真空吸引室9に、トップチェーン6のトップスプロケット11とテールスプロケット12との間の空間を区画する仕切り板9aが2箇所設けられている。この2箇所に設けられた仕切り板9aにより、上流2a側から、第1真空吸引室9c、第2真空吸引室9d、第3真空吸引室9eが形成されている。
【0034】
また、真空吸引室9には、トップチェーン6のトップスプロケット11とテールスプロケット12との間に、間隔を置いて配設されたダクト10aが3箇所設けられている。このダクト10aは、各箇所に2つトップチェーン6の幅方向に設けられているとともに、各々のダクト10aに負圧を保持する真空吸引手段10が接続されている。また、
図8(b)の真空吸引室9の変形例においては、トップチェーン6の走行方向に配設された仕切り板9aにより区画された、第1真空吸引室9c、第2真空吸引室9d、第3真空吸引室9eに、ダクト10aが各々接続されている。また、各部屋ごとに接続されたダクト10aに接続された真空吸引手段10は、真空吸引のON/OFFを個別に行えるようになっている。
【0035】
以上の構成による薄板吸着搬送コンベヤ装置1を用いて、薄板ガラス基板tを連続搬送するには、まず、
図1に示す搬送方向Fの上流2a側の第1ローラコンベヤ2cに、薄板ガラス基板tを載置する。次に、薄板ガラス基板tを第1ローラコンベヤ2cの受け取り部3に搬送する。
【0036】
そして、真空吸引手段10を作動させて、ローラコンベヤ2の上方に配設された4箇所のトップチェーン6の内表面6dを覆う真空吸引室9内を真空吸引することにより、トップチェーン6の回動自在に係合されたプレート7の各々の隙間から吸引され、薄板ガラス基板t間の空間とトップチェーン6との間に負圧が生じて、薄板ガラス基板tがトップチェーン6に引き寄せられて、独立気泡型パッド8間の空間に吸着する。
【0037】
この際、
図7に示すように、独立気泡型パッド8間に吸着した薄板ガラス基板tは、独立気泡型パッド8が外気を遮断し、気密性を確保するため、真空吸引室9に連通した独立気泡型パッド8間の空間と薄板ガラス基板との間の負圧が保持されて、薄板ガラス基板tを確実に独立気泡型パッド8に支持させることができる。
【0038】
次に、モータkを作動させて、トップチェーン6に歯合されているトップスプロケット11をチェーンmを介して回転させる。そして、薄板ガラス基板tを搬送方向Fの上流2a側から下流2b側に、ローラコンベヤ2上方に沿って搬送する。この際に、トップチェーン6の外表面6cに周設された独立気泡型パッド8が、プレート7ごとに設けることにより形成された各々の独立気泡型パッド間の切断部8aにより、トップスプロケット11およびテールスプロケット12に歯合される際の、円周方向の伸びをこの切断部8aにより吸収して、独立気泡型パッド8の負担が軽減される。
【0039】
そして、薄板ガラス基板tを搬送方向Fの下流2b側に配設されている第2ローラコンベヤ2dまで搬送する。さらに、第2ローラコンベヤ2dの受け渡し部4において、真空吸引手段を停止させることにより、真空吸引室9および真空吸引室9と連通している独立気泡型パッド8間が、負圧から正圧に戻り、薄板カラス基板tが独立気泡型パッド8から離脱して、第2ローラコンベヤ2dに載置され、さらに薄板ガラス基板tが次工程に搬送される。
【0040】
また、独立気泡型パッド8を
図9の変形例に示すように、プレート7ごとに設けることにより形成された各々の独立気泡型パッド間の切断部8aに、45°に傾斜した隙間8bを設けた場合には、トップスプロケット11およびテールスプロケット12に歯合される際の独立気泡型パッド8に生じる伸びを吸収するとともに、真空吸引手段10の作動により、第1ローラコンベヤ2cの受け取り部3において、薄板ガラス基板tを独立気泡型パッド8に吸着させる際に、真空吸引により薄板ガラス基板tが吸着した独立気泡型パッド8は、その柔軟性により変形することにより、隙間8bが密着して、気密性を保持することができる。
【0041】
さらに、通常の連続搬送では、仕切り板9aが無い
図8(a)に示すように、1枚目を搬送方向Fの上流2a側の受け取り部3で吸着し、吸着を保持したまま下流2b側の受け渡し部4まで搬送し、薄板ガラス基板tを離脱した後に、2枚目の薄板ガラス基板tを上流2a側の受け取り部3において吸着する。
【0042】
一方、真空吸引室9に、トップチェーン6のトップスプロケット11とテールスプロケット12との間を区画する仕切る仕切り板9aを設けた場合には、
図8(b)に示すように、1枚目を上流2a側の受け取り部3の第1真空吸引室9cにおいて吸着し、薄板ガラス基板tが仕切り板9aを超えて、第2真空吸引室9dまで搬送させることにより、トップチェーン6の走行および受け取り部3の真空吸引室9cの吸引を停止して、2枚目の薄板ガラス基板tを第1ローラコンベアにセットした後に、受け取り部3の第1真空吸引室9cにおいて、真空急進手段を作動させて、2枚目の薄板ガラス基板tを吸着することができる。
【0043】
さらに、2枚目の薄板ガラス基板tを吸着後に、トップスプロケット11を回転させ、トップチェーン6を走行させて、2枚目の薄板ガラス基板tを第2真空吸引室9dに搬送する。このときに、一枚目の薄板ガラス基板tが第3真空吸引室9eに搬送されるとともに、第2ローラコンベヤ2dの受け渡し部4に搬送されるため、第3真空吸引室9dの真空吸引を停止することにより、薄板ガラス基板tが第2ローラコンベア上に載置される。
また、1枚目の薄板ガラス基板tを下流2b側の受け渡し部4において、離脱させると同時に、上流2a側の受け取り部3において、3枚目の薄板ガラス基板tを吸着することができる。このように、真空吸引室9のトップチェーン6の走行方向の空間を仕切ることにより、複数枚の薄板ガラス基板tを連続搬送することができる。
【0044】
上述の実施形態による薄板吸着搬送コンベヤ装置1によれば、無端状に連結されたトップチェーン6の外表面6cの幅方向両側に、当該トップチェーン6の走行方向に延在する独立気泡型パッド8を周設するとともに、その内表面6dを覆い、かつ当該トップチェーン6の隣接するプレート7同士の間隙を介して、独立気泡型パッド8間に連通する真空吸引室9を、搬送方向Fの受け取り部3と受け渡し部4との間に延設しているため、真空吸引室9が延設された受け取り部3と受け渡し部4との間の任意の位置において、真空吸引手段10のON/OFFを行うことにより、薄板ガラス基板tをトップチェーン6の独立気泡型パッド8間において、吸着および離脱させることができ、薄板ガラス基板tを一枚ごと連続搬送することができる。これにより、生産工程の均等なタイミングを図るための工程作業時間であるタクトタイムを短くすることができるとともに、作業効率を向上させることができる。
【0045】
また、無端状に形成されたトップチェーン6の複数のプレート7同士の間隙を介して、独立気泡型パッド8間に連通する真空吸引室9を真空吸引手段10により吸引し、薄板ガラス基板tを独立気泡型パッド8間の空間により吸着するため、従来のように、薄板ガラス基板tを吸着するための複数の吸盤や、これら複数の吸盤に負圧を発生させる真空吸引手段10からの複数の配管などの設備を必要としない。この結果、設備のスリム化を図ることができるとともに、簡素な構造により修理や補修が容易に行え、メンテナンスコストも抑えることができる。
【0046】
そして、トップチェーン6に周設された独立気泡型パッド8が、柔軟性を備えているとともに、空気を通し難いため、薄板ガラス基板tを第1ローラコンベヤ2cの受け取り部3において、真空吸引手段10の作動により吸着する際に、薄板ガラス基板tに及ぼす衝撃を緩和させることができるとともに、薄板ガラス基板tと独立気泡型パッド8間の空間との気密性を確保することができる。この結果、破損しやすく、しかもキズが付きやすい上記薄板ガラス基板を効率良く連続搬送することができる。
【0047】
さらに、
図8(b)に示すように、真空吸引室9に、トップチェーン6の受け取り部3と受け渡し部4と間の空間を区画する仕切り板9aが、2枚間隔を置いて設けられているとともに、この仕切り板9aにより、第1真空吸引室9c、第2真空吸引室9d、第3真空吸引室9eが形成されているため、各々の真空吸引室9c、9d、9eに、真空吸引手段10を設けることにより、各々の真空吸引室9c、9d、9eごとに真空吸引のON/NOFFを切り換えることができ、複数枚の薄板ガラス基板tを搬送することができる。これにより、さらにタクトタイムを短縮することができ、作業効率を向上させることができる。
【0048】
また、独立気泡型パッド8が、プレート7ごとに設けられて、トップチェーン6の走行方向に周設されているため、トップスプロケット11およびテールスプロケット12に、トップチェーン6が歯合される際に、円周方向に生じる伸びを吸収することができる。これにより、独立気泡型パッド8の破断や早期の劣化を防止することができる。
【0049】
なお、独立気泡型パッドに切断部8aを形成したとても、真空吸引室内9を真空吸引手段10により吸引し、トップチェーン6の隣接するプレート7同士の間隙を介して吸引されて、薄板ガラス基板tを独立気泡型パッド8に当接させる際に、柔軟性を有する独立気泡型パッド8が圧縮されることにより、切断部8aが密着するため、独立気泡型パッド8間および独立気泡型パッド8間に連通した真空吸引室9内の気密を保つことができる。
【0050】
さらに、
図9に示す独立気泡型パッドの変形例においては、独立気泡型パッド8が、プレート7ごとに設けられているとともに、隣接する独立気泡型パッド8同士の間に、トップチェーンの走6行方向に対して、上方から下方に向けて傾斜した隙間8bが形成されているため、独立気泡型パッド8の使用量を抑えることができる。これにより、設備コストのコストを抑えることができる。
【0051】
なお、独立気泡型パッド8の切断部8aに、隙間8bを形成したとても、真空吸引室9内を吸引手段10により吸引し、トップチェーン6の隣接するプレート7同士の間隙を介して真空吸引され、薄板ガラス基板tを独立気泡型パッド8に当接させる際に、柔軟性を有する独立気泡型パッド8が圧縮されることにより、隙間8bが密着するため、独立気泡型パッド8間および独立気泡型パッド8間に連通した真空吸引室9内の気密を保つことができる。
【0052】
なお、上記実施の形態において、独立気泡型パッド8を気泡を各々独立させて発泡した樹脂を用いる場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、柔軟性を有するゴムでも対応可能である。
また、ローラコンベヤ2を第1ローラコンベヤ2cおよび第2ローラコンベヤ2dに分離している場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、一連のローラコンベヤ2でも対応可能である。
されに、搬送手段2をローラコンベヤ2を用いる場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、ベルトコンベヤでも対応可能である。