特許第5742204号(P5742204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5742204光電変換素子、太陽電池及び太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5742204
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】光電変換素子、太陽電池及び太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/46 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   H01L31/04 154F
【請求項の数】6
【全頁数】93
(21)【出願番号】特願2010-283006(P2010-283006)
(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公開番号】特開2011-222957(P2011-222957A)
(43)【公開日】2011年11月4日
【審査請求日】2013年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2010-73160(P2010-73160)
(32)【優先日】2010年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武井 出
(72)【発明者】
【氏名】河井 潤也
(72)【発明者】
【氏名】新実 高明
(72)【発明者】
【氏名】太田 一司
(72)【発明者】
【氏名】横山 孝理
(72)【発明者】
【氏名】今村 悟
(72)【発明者】
【氏名】遠田 淳
(72)【発明者】
【氏名】森竹 美子
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 晋司
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/039490(WO,A2)
【文献】 特開2008−135622(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/012324(WO,A1)
【文献】 特開昭57−007115(JP,A)
【文献】 特開2006−073583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/20、51/42−51/48
H02S 10/00−50/15
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも活性層と一対の電極とを含む光電変換素子であって、該活性層が、フラーレンに4員環以上の環が縮合してなるフラーレン化合物と低分子有機半導体化合物とを含有し、
該フラーレン化合物が下記のフラーレン化合物A又は下記のフラーレン化合物Bであることを特徴とする光電変換素子。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記低分子有機半導体化合物が結晶性を有する、請求項に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記低分子有機半導体化合物がフタロシアニン化合物及びその金属錯体、並びにポルフィリン化合物及びその金属錯体から選択される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記光電変換素子が更にバッファ層を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子を含むことを特徴とする太陽電池。
【請求項6】
請求項に記載の太陽電池を含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラーレン化合物を半導体材料に用いた光電変換素子に関する。特に、有機太陽電池に用いて好適な有機光電変換素子、これを用いた太陽電池及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池としては塗布系高分子有機半導体層又は蒸着系低分子有機半導体層を使用するものが従来知られており、また近年、テトラベンゾポルフィリン等を用いた塗布変換系低分子有機半導体層を使用する有機薄膜太陽電池が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
塗布系高分子有機薄膜太陽電池としては、p型半導体に可溶性の共役高分子であるポリヘキシルチオフェン(P3HT)等が、n型半導体にPCBM等のフラーレンの溶解度を高めた誘導体が用いられることが多い。半導体層の層構造としては、p型半導体とn型半導体の分子が共存したバルクヘテロ層のみで構成される場合が大半である。
【0003】
蒸着系低分子有機薄膜太陽電池としては、p型半導体にフタロシアニン類、ペンタセン、オリゴチオフェンが、n型半導体にC60が用いられることが多い。半導体層の層構造としては、p型半導体からなるp層、n型半導体からなるn層に加えp−n接合界面にp型半導体とn型半導体が共存するi層を導入したp−i−n積層構造を取る場合もある(非特許文献2)。
【0004】
塗布変換系低分子有機薄膜太陽電池としては、p型半導体にテトラベンゾポルフィリン等が、n型半導体にフラーレン化合物等が用いられている。半導体層の層構造は低分子蒸着系のものと同様である(特許文献1、非特許文献1)。
フラーレン化合物はn型半導体材料として注目され、特に置換基を有するフラーレン化
合物は塗布製膜が容易になることから注目を集めている。
【0005】
置換基を有するフラーレン化合物としては、[6,6]−Phenyl−C61−Butyric Acid Methyl Ester(フェニルC61酪酸メチルエステル、PCBM)が一般的に用いられてきたが、さらなる光電変換効率の向上が望まれてきた。最近、シリルメチル基を置換基として有するフラーレン化合物が低コストで製造が可能であることが報告されている(特許文献2、3)。またこのフラーレン化合物を用いた光電変換素子である有機薄膜太陽電池において、PCBMよりも高い変換効率が達成されることが報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/126102号
【特許文献2】特開平7−89972号公報
【特許文献3】国際公開第2008/059771号
【特許文献4】国際公開第2009/008323号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Matsuo,Y. et al. J.Am.Chem.Soc.2009,131,16048.
【非特許文献2】Hiramoto,M. et al. Appl.Phys.Lett. 1991,58,1062.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らの検討によれば、特許文献1、4に記載のフラーレン化合物は熱安定性が低く、光電変換素子の全層を積層したあとにその素子全体を加熱処理した場合、加熱処理後の光電変換効率が急激に下がることが判明した。特に太陽電池用途においては高温条件下での耐久性が求められるため、素子全体の加熱処理により光電変換効率が低下することは高温条件下での耐久性がないことにつながると予想され、実用化にあたり課題となる。またこのフラーレン化合物を用いた場合、開放端電圧(Voc)が必ずしも充分ではないという課題も判明した。
【0009】
一方、高分子塗布系半導体層を有する有機薄膜太陽電池は、光電変換効率が5%程度と比較的優れるものの光電変換素子としての耐久性に課題があることが判明した。また高分子材料の高純度精製が必須であることや、分子量や分子量分布の制御の点で材料の安定供給が困難であることも懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来の実情に鑑み、熱安定性に優れ高い開放端電圧を付与しうるフラーレン化合物と、材料の高純度精製及び大量合成が容易であり、かつ熱安定性に優れる低分子有機半導体化合物とを組み合わせることにより、太陽電池に用いた場合に優れた性能を有する光電変換素子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]少なくとも活性層と一対の電極とを含む光電変換素子であって、該活性層が、フラーレンに4員環以上の環が縮合してなるフラーレン化合物と低分子有機半導体化合物とを含有し、該フラーレン化合物が下記のフラーレン化合物A又は下記のフラーレン化合物Bであることを特徴とする光電変換素子。
【0011】
【化70】
【化71】
【0012】
[2]前記低分子有機半導体化合物が結晶性を有する、[1]に記載の光電変換素子。
[3]前記低分子有機半導体化合物がフタロシアニン化合物及びその金属錯体、並びにポルフィリン化合物及びその金属錯体から選択される化合物であることを特徴とする[1]に記載の光電変換素子。
【0013】
[4]前記光電変換素子が更にバッファ層を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の光電変換素子。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の光電変換素子を含むことを特徴とする太陽電池。
[6][5]に記載の太陽電池を含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱安定性、開放端電圧が高く、光電変換効率に優れるのみならず、耐久性にも優れた光電変換素子、これを用いた太陽電池及び太陽電池モジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態としての光電変換素子の構成を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態としての太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態としての太陽電池モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明のその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
<光電変換素子>
本発明に係る光電変換素子は、少なくとも活性層とこれを挟む1対の電極とを有し、活性層が4員環以上の環構造が縮合してなるフラーレン化合物と低分子有機半導体とを含有する。また、本発明の光電変換素子は更にバッファ層を有していることが好ましい。バッファ層は、通常、電極と活性層の間に配置されている。
【0017】
図1に一般的な有機薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子の構成の一例を表す。本発明の一実施形態としての光電変換素子109は、基板100上にカソード(透明電極)101、正孔取り出し層102、活性層108(p型半導体化合物層103、p型半導体化合物とn型半導体化合物の混合層104及びn型半導体化合物層105)、電子取り出し層106、アノード(対向電極)107が順次形成された層構造を有する。
【0018】
<活性層108>
本発明に係る光電変換素子において、活性層108はp型半導体化合物とn型半導体化合物を含む。光電変換素子109が光を受けると、光が活性層108に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物の界面で電気が発生し、発生した電気が電極101及び107から取り出される。
【0019】
活性層の層構成としては、p型半導体化合物とn型半導体化合物が積層された薄膜積層型構造や、図1のようにp型半導体化合物層103とn型半導体化合物層105からなる薄膜積層型の中間層としてp型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層(i層)104を有するp−i−n積層構造等が挙げられる。
<n型半導体化合物>
本発明においては、n型半導体化合物として、フラーレンに4員環以上の環が縮合してなる、下記一般式(1)で表されるフラーレン化合物を用いることを特徴のひとつとする。
【0020】
【化2】
【0021】
式中、環Aは、フラーレン(以下、FLNと称する場合がある。)に炭素数2以上の2価の置換基Rが結合し、該置換基Rとフラーレン中の2以上の炭素とで形成された4員環以上の環である。簡潔のため、本発明においてはこの状態を「フラーレンに4員環以上の環が縮合してなる」と称する。
置換基Rはフラーレンに対してどのように結合してもよい。例えば下式のように、置換基Rがフラーレン環上の隣接する2つの炭素原子に対して結合して環Aを形成してもよい。また、置換基Rがフラーレン環上で1つの炭素原子を挟んで位置する2つの炭素原子に対して結合して環Aを形成してもよい。さらには、置換基Rがフラーレン環上で2つ以上の炭素原子を挟んで位置する2つの炭素原子に対して結合して環Aを形成してもよい。また、置換基Rは、フラーレン骨格中の同一の五員環又は六員環に結合されていることが好ましい。さらに、置換基Rがフラーレン骨格中の同一の五員環又は六員環上の隣接する2つの炭素原子に対して結合されていることが特に好ましい。
【0022】
【化3】
【0023】
環Aは4員環以上であり、好ましくは5員環以上である。また、環Aは10員環以下が好ましく、より好ましくは7員環以下、さらに好ましくは6員環以下である。環Aは脂肪族環であっても芳香族環であってもよいが好ましくは脂肪族環である。更に、環Aは脂肪族炭化水素環であってもよいし窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む脂肪族複素環であってもよい。より好ましくは脂肪族炭化水素環である。
【0024】
環Aの具体例としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン又はビシクロ[2,2,2]オクタン等の脂肪族炭化水素環;ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、モルホリン、アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン、
オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、チアビシクロ[2,2,1]ヘプタン又はジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の脂肪族複素環が挙げられる。
【0025】
なかでも好ましくはシクロペンタン、シクロヘキサン又はビシクロ[2,2,1]ヘプタンであり、より好ましくはシクロペンタン又はシクロヘキサンである。
mは整数を表し、通常1以上であり、好ましくは2以上である。一方、mは通常10以下であり、好ましくは6以下である。mが2以上である場合、各々の環Aは同一でも良いし異なっていてもよい。また、これら環同士が直接又は置換基を介してさらに環を形成していてもよい。なお、mが2以上の場合は環Aの縮合位置により異性体が存在し得るが、本発明のフラーレン化合物としては、単一の異性体を用いてもよいし複数の異性体の混合物を用いてもよい。
【0026】
本発明に係るフラーレンは閉殻構造を有する炭素クラスターである。フラーレンの炭素数は、通常、60〜130の偶数である。フラーレンとしては、例えば、C60 、C70 、C76、C78 、C82 、C84 、C90 、C94、C96及びこれらより多くの
炭素を有する高次の炭素クラスター等が挙げられる。中でもC60又はC7 0が好ましく
、C60 がさらに好ましい。
【0027】
本発明において、フラーレンは一部のフラーレン環上の炭素−炭素結合が切れていてもよい。また、一部の炭素原子が他の原子に置き換えられていてもよい。さらに、金属原子、非金属原子或いはこれらから構成される原子団をフラーレンケージ内に内包していてもよい。
本発明のフラーレン化合物としては、環Aにさらに他の環が縮合していることが好ましい。なかでも好ましくは下記一般式(2)に表すフラーレン化合物である。
【0028】
【化4】
【0029】
一般式(2)において、環Aには環Bが縮合してなる。環Bは脂肪族環であっても芳香族環であってもよいが好ましくは芳香族環である。芳香族環としては芳香族炭化水素環であっても芳香族複素環であってもよい。また環構造を形成する原子数は通常5〜20であり、好ましくは原子数が5〜18であり、より好ましくは原子数が5〜12である。
環Bに係る脂肪族炭化水素環の具体例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン又はシクロデカン等が挙げられる。中でも好ましくはシクロペンタン又はシクロヘキサンである。
【0030】
環Bに係る脂肪族複素環の具体例としては、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン又はモルホリン等が挙げられる。中でも好ましくはピペリジン又はモルホリンである。
環Bに係る芳香族炭化水素環の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、アントラセン又はピレン等が挙げられる。中でも好ましくはベンゼンである。さらに縮合していてもよい芳香族複素環の具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサ
ゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン又はキノキサリン等が挙げられる。中でも好ましくはフラン又はチオフェンである。
【0031】
以上説明した環A及び環Bは、他に置換基を有していてもよい。置換基を複数有する場合、各々の置換基は同一でもよいし異なっていてもよい。
環A及び環Bの置換基としては、本発明の目的を損なわないものであれば特に制限は無く、具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、エステル基、カルボキシル基、カルボニル基、アセチル基、スルホニル基、シリル基、ボリル基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基又は芳香族基等が挙げられる。
【0032】
アルキル基としては炭素数1〜20のものが好ましく、具体例としてはメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては炭素数2〜20のものが好ましく、具体例としてはビニル基、スチリル基又はジフェニルビニル基等が挙げられる。
【0033】
アルキニル基としては炭素数2〜20のものが好ましく、具体例としてはメチルエチニル基、フェニルエチニル基又はトリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては炭素数1〜20のものが好ましく、具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基又はt−ブトキシ基等が挙げられる。
【0034】
アリールオキシ基としては炭素数2〜20のものが好ましく、具体例としてはフェノキシ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては炭素数1〜20のものが好ましく、具体例としてはメチルチオ基又はエチルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては炭素数2〜20のものが好ましく、具体例としてはフェニルチオ基等が挙げられる。
【0035】
アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基又はジイソプロピルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基又はカルバゾイル基等のアリールアミノ基が挙げられる。
シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基等のアルキルシリル基;ジメチルフェニル基又はトリフェニルシリル基等のアリールシリル基が挙げられる。
【0036】
ボリル基の具体例としては、アリール基で置換されたジメチルボリル基等が挙げられる。
芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニレニル基、トリフェニレン基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基又はクオーターフェニル基等の芳香族炭化水素基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロール基、オキサゾール基、チアゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、イミダゾイル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾイル基、フェノキサチエニル基、キサンテニル基、ベンゾフラニル基、チアントレニル基、インドリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基又はキノキサリニル基等の芳香族複素環基が挙げられる。なかでも好ましくは、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、ナフチル基
、フェナントリル基、トリフェニレン基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ペリレニル基又はトリフェニレニル基であり、芳香族複素環基としてはピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾイル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、キノキサリニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾイル基、キサンテニル基又はフェノキサジニル基である。
【0037】
本発明のフラーレン化合物として特に好ましいのは、下記一般式(3)又は(4)に表すフラーレン化合物である。
【0038】
【化5】
【0039】
一般式(3)及び(4)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、アミノ基、アルキレン基又はアリーレン基である。アルキレン基としては炭素数1〜2が好ましい。アリーレン基としては炭素数5〜12が好ましく、例えばフェニレン基である。
アミノ基は、メチル基やエチル基等の炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0040】
アルキレン基は、メトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基で置換されていてもよい。
アリーレン基は、メトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基で置換されていてもよい。
【0041】
Arは、環Bにおいて芳香族環である場合と同義である。好ましい範囲及び例示も環Bに準ずる。
nは整数を表し、通常1以上であり、好ましくは2以上である。一方、nは通常10以下であり、好ましくは6以下である。nが2以上である場合、フラーレンに縮合してなる各々の環構造は同一でも良いし異なっていてもよい。また、これら環同士が直接又は置換基を介してさらに環を形成していてもよい。なお、nが2以上の場合は環構造の縮合位置により異性体が存在し得るが、本発明のフラーレン化合物としては、単一の異性体を用いてもよいし複数の異性体の混合物を用いてもよい。
【0042】
なお、本発明のフラーレン化合物において、環A、環B及びそれらの置換基が金属への配位能を有する場合、金属原子との配位結合を介して金属錯体を形成していてもよい。
また、本発明に係わるフラーレン化合物は、下記一般式(n1) 又は(n2)で表される
部分構造を有することが望ましい。
【0043】
【化6】
【0044】
一般式(n1)及び(n2)中、FLNはフラーレンを表す。一般式(n1)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−Rと−(CHとがそれぞれ付加している。一般式(n2)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して−C(R)(R)が付加し3員環を形成してなる。d及びeはそれぞれ独立して整数であり、d及びeの合計は通常1以上であり、一方、通常5以下であり、好ましくは3以下である。Lは整数であって通常1以上であり、一方、通常8以下であり、好ましくは4以下である。Lはより好ましくは1又は2である。
【0045】
一般式(n1)中のRは置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
【0046】
アルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。
芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。
【0047】
上記アルキル基、アルコキシ基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子又はシリル基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。シリル基としては、ジアリールアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基又はトリアルキルシリル基が好ましく、ジアルキルアリールシリル基がより好ましく、ジメチルアリールシリル基がさらに好ましい。
【0048】
一般式(n1)中のR〜Rは各々独立して置換基を表し、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ヘキシル基が好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
【0049】
芳香族基は、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基又は炭素数3〜10の芳香族基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1〜14のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、n−ブトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が更に好ましい。芳香族基が置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。芳香族基が置換基を複数有する場合、その置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
【0050】
一般式(n2)中のR〜Rは各々独立して、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数1〜12のフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基又はn−ヘキソキシ基が特に好ましい。
【0051】
アルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖アルキル基が好ましく、n−プロピル基がより好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基には特に限定は無いが、好ましくはアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基のアルコキシ基としては、炭素数1〜14のアルコキシ基又はフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜14の炭化水素基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又はn−ブトキシ基が特に好ましい。
【0052】
芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基が好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基又は炭素数1〜14のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜14のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が特に好ましい。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても同一でもよく、好ましくは同一である。
【0053】
一般式(n2)の構造として好ましくは、R、Rが共にアルコキシカルボニル基であるか、R、Rが共に芳香族基であるか又はRが芳香族基でかつRが3−(アルコキシカルボニル)プロピル基である。
なお、本発明に用いられるn型半導体化合物は一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
【0054】
フラーレンに4員環以上の環が縮合してなるフラーレン化合物の具体的構造の例としては以下が挙げられる。
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
【化9】
【0058】
【化10】
【0059】
【化11】
【0060】
【化12】
【0061】
本発明のフラーレン化合物は、後述する低分子有機半導体化合物と併用することにより、従来と比較して、耐久性に優れた光電変換素子及び有機太陽電池を製造できる点、該光電変換素子及び有機太陽電池に高い開放端電圧を付与しうる点で好ましい。
[フラーレン化合物の製膜方法]
本発明のフラーレン化合物の製膜方法としては蒸着法、塗布法などがあるが、プロセス性能に鑑み、塗布法による製膜が可能なフラーレン化合物がより好ましい。このため、フラーレン化合物自体が液状で塗布可能であること又はフラーレン化合物が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。
【0062】
本発明のフラーレン化合物の塗布溶媒は、フラーレン化合物の溶解性が高ければ特に制限はないが、非極性有機溶媒が好ましく、環境負荷の面等から非ハロゲン系溶媒がより好ましい。非ハロゲン系溶媒としては、例えば非ハロゲン系の芳香族炭化水素類が挙げられる。なかでも好ましくはトルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン等である。
[熱安定性]
本発明のフラーレン化合物のガラス転移温度は観測されてもよいし観測されなくてもよいが、好ましくは、ガラス転移温度が観測されないか、180℃以上である。製膜過程における温度範囲で化合物がアモルファス状態と結晶状態に変化しないため、n型半導体としての機能安定性が損なわれず光電変換素子効率が低下することがない利点がある。ガラス転移温度が観測される場合、より好ましくは200℃以上であり、更に好ましくは250℃以上であり、特に好ましくは280℃以上である。一方、上限は特に限定されないが
通常400℃以下であり、好ましくは350℃以下である。
【0063】
ガラス転移温度は公知の方法で測定すれば良く、たとえばDSC法が挙げられる。DSC法とは、JIS K−0129“熱分析通則”に定義された熱物性の測定法(示差走査熱量測定法)である。有機材料の非晶質固体状態がガラス転移温度は、ガラス状態から分子運動が開始する温度であり、比熱の変化する温度としてDSCで測定できる。ガラス転移温度をより明確に決める為に、一度ガラス点移転以上の温度に加熱したサンプルを急冷した後に測定することが望ましい。
【0064】
本発明のフラーレン化合物の最低空分子軌道(LUMO)の値は、特に限定はされないが、例えばサイクリックボルタモグラム測定法により算出される真空準位に対する値が、通常−3.85eV以上、好ましくは−3.80eV以上である。電子供与体層(p型半導体層)から効率良く電子受容体層(n型半導体層)へと電子を移動させるためには、各電子供与体層及び電子受容体層に用いられる材料の最低空軌道(LUMO)の相対関係が重要である。具体的には、電子供与体層の材料のLUMOが、電子受容体層の材料のLUMOより所定のエネルギーだけ上にあること、言い換えると、電子受容体の電子親和力が電子供与体の電子親和力より所定のエネルギーだけ大きいことが好ましい。開放電圧(Voc)は電子供与体層の材料の最高被占軌道(HOMO)と電子受容体層の材料のLUMOの差で決定されるため、電子受容体のLUMOを高くすると、Vocが高くなる傾向がある。一方、LUMOの値は通常−1.0eV以下、好ましくは−2.0eV以下、より好ましくは−3.0eV以下、更に好ましくは−3.3eV以下である。電子受容体のLUMOを低くすることで、電子の移動が起こりやすくなり、短絡電流(Jsc)が高くなる傾向がある。
【0065】
該フラーレン化合物のLUMOの値の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法が挙げられ、実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法やサイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。その中でも好ましくは、サイクリックボルタモグラム測定法である。
【0066】
[フラーレン化合物の製造方法]
本発明のフラーレン化合物の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、一般式(II)に表すフラーレンの合成方法としては、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1993, 32, 78−80、Tetrahedron Lett. 1997, 38, 285−288、国際公開第2008/018931号、国際公開第2009/086210号に記載されている公知文献によって実施可能である。その中でもディールス・アルダー反応法が好ましい。
【0067】
ディールス・アルダー反応によって形成されるフラーレンの製造方法とは、具体的には以下の反応式に代表される反応による製造方法であり、フラーレンへの[4+2]環化付加反応によって置換基が共有結合を形成する反応による。付加する置換基ひとつあたり2つの共有結合が生成し、該共有結合が生成するフラーレン上の2つの炭素原子はそれぞれ隣接して位置する。反応式中の反応物のpは置換基の付加数を表わし、pは通常1以上、より好ましくは2以上の整数、一方、通常10以下、より好ましくは6以下の整数であり、反応式中のEは該付加基への置換基を表し、既に上記で述べた置換基を有していてもよい置換基と同様である。
【0068】
【化13】
【0069】
(n1)で表される付加基を有するフラーレンの合成方法としては、国際公開第2008/059771号及びJ.Am.Chem.Soc.,2008,130(46),15429−15436に記載されている公知文献によって、実施可能である。
(n2)で表される付加基を有するフラーレンの合成方法としては、J.Chem.Soc., Perkin Trans.1,1997 1595、Thin Solid
Films 489(2005)251−256、Adv.Funct.Mater.2005,15,1979−1987及びJ.Org.Chem.1995,60,532−538に記載されている公知文献によって、実施可能である。
【0070】
<p型半導体化合物>
本発明においては、p型半導体化合物として低分子有機半導体化合物を用いる。
本発明のフラーレン化合物と低分子有機半導体化合物と併用することにより、従来と比較して、耐久性に優れた光電変換素子及び有機太陽電池を製造できる点、該光電変換素子及び有機太陽電池に高い開放端電圧を付与しうる点で好ましい。
【0071】
低分子有機半導体化合物の分子量は、上限、下限ともに特に制限されないが、通常5000以下、好ましくは2000以下であり、一方、通常100以上、好ましくは200以上である。
また、低分子有機半導体化合物は結晶性を有するものが好ましい。結晶性を有するp型半導体化合物は分子間相互作用が強く、活性層においてp型半導体とn型半導体の混合物層界面で生成した正孔(ホール)を効率よく正極へ輸送できることが期待されるためである。
【0072】
本発明における結晶性とは、分子間相互作用等によって配向の揃った3次元周期配列をとる化合物の性質である。
結晶性の測定方法としては、X線回折法(XRD)又は電界効果移動度測定等が挙げられる。特に電界効果移動度測定において、正孔移動度が1.0×10(−5)cm/(Vs)以上である結晶性化合物が好ましく、1.0×10(−4)cm/(Vs)以上である結晶性化合物がより好ましい。一方、正孔移動度が通常1.0×10(4)cm/(Vs)以下である結晶性化合物が好ましく、1.0×10(3)cm/(Vs)以下である結晶性化合物がより好ましく、1.0×10(2)cm/(Vs)以下である結晶性化合物が更に好ましい。
【0073】
該低分子有機半導体化合物は、上記性能を満たせば特段の制限はないが、具体的には、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等が挙げられる。好ましくは、フタロシアニン化合物及びその金属錯体又はポルフィリン化合物及びその金属錯体である。
上記低分子有機半導体化合物、特にフタロシアニン化合物等やポルフィリン化合物等は
、熱安定性が優れているために好ましい。つまり、本発明の熱安定性の優れたフラーレンと組み合せることで、高温条件下における耐久性に優れた光電変換素子となりうる。
【0074】
p型半導体化合物として用いられるポルフィリン化合物及びその金属錯体(図中のQがCH)、フタロシアニン化合物及びその金属錯体(図中のQがN)としては、例えば、以下のような構造の化合物が挙げられる。
【0075】
【化14】
【0076】
【化15】
【0077】
【化16】
【0078】
ここで、Mは金属あるいは2個の水素原子を表し、金属としては、Cu、Zn、Pb、Mg、Co又はNi等の2価の金属のほか、軸配位子を有する3価以上の金属、例えば、TiO、VO、SnCl、AlCl、InCl又はSi等も挙げられる。
〜Yはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜24のアルキル基である。炭素数1〜24のアルキル基とは、炭素数が1〜24の飽和もしくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数が3〜24の飽和もしくは不飽和の環式炭化水素である。その中でも好ましく
は炭素数1〜12の飽和もしくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数が3〜12の飽和もしくは不飽和の環式炭化水素である。
【0079】
フタロシアニン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、29H,31H−フタロシアニン、銅フタロシアニン錯体、亜鉛フタロシアニン錯体、チタンフタロシアニンオキシド錯体、マグネシウムフタロシアニン錯体、鉛フタロシアニン錯体又は銅4,4’,4’’,4’’’−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン錯体であり、より好ましくは、29H,31H−フタロシアニン又は銅フタロシアニン錯体である。なお、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
【0080】
ポルフィリン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンニッケル(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンコバルト(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン銅(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン亜鉛(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンニッケル(II)又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンバナジウム(IV)オキシドであり、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンである。なお、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
【0081】
低分子有機半導体化合物の製膜方法としては、蒸着法によって製膜する方法や低分子有機半導体化合物前駆体を塗布後に低分子有機半導体化合物に変換することで製膜する方法がある。塗布製膜できるというプロセス上の利点からは後者が好ましい。
[低分子有機半導体化合物前駆体]
低分子有機半導体化合物前駆体とは、例えば加熱や光照射等の外的刺激を与えることにより、その化学構造が変化し、低分子有機半導体化合物に変換される物質である。本発明に係る低分子有機半導体化合物前駆体は成膜性に優れるものが好ましい。特に、塗布法を適用できるようにするためには、前駆体自体が液状で塗布可能であるか又は前駆体が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。このため、低分子有機半導体化合物前駆体の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。一方、上限に特段の制限はないが、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
【0082】
溶媒の種類としては、半導体前駆体化合物を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロ
ロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類である。より好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。なお、溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0083】
さらに、本発明に係る低分子有機半導体化合物前駆体は、容易に半導体化合物に変換できることが好ましい。後述する低分子有機半導体化合物前駆体から半導体化合物への変換工程において、どのような外的刺激を半導体前躯体に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理、光処理等を行なう。好ましくは、熱処理である。この場合には、低分子有機半導体化合物前駆体の骨格の一部に逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有するものが好ましい。
【0084】
また、本発明に係る低分子有機半導体化合物前駆体は、変換工程を経て、高い収率で半導体化合物に変換されることが好ましい。この際、低分子有機半導体化合物前駆体から変換して得られる半導体化合物の収率は有機光電変換素子の性能を損なわない限り任意であるが、低分子有機半導体化合物前躯体から得られる低分子有機半導体化合物の収率は、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上である。
【0085】
本発明に係る低分子有機半導体化合物前駆体は上記特徴を有するものであれば特に制限はないが、具体的には特開2007−324587に記載の化合物などが用いられうる。なかでも好ましい例としては、下記式(5)で表わされる化合物が挙げられる。
【0086】
【化17】
【0087】
式(5)において、X及びXの少なくとも一方はπ共役した2価の芳香族環を形成する基を表わし、Z−Zは熱又は光により脱離可能な基であって、Z−Zが脱離して得られるπ共役化合物が顔料分子となるものを表わす。また、X及びXのうちπ共役した2価の芳香族環を形成する基でないものは、置換又は無置換のエテニレン基を表わす。
【0088】
式(5)で表わされる化合物は、下記化学反応式に示すように熱又は光によりZ−Zが脱離して、平面性の高いπ共役化合物を生成する。この生成されたπ共役化合物が本発明に係る半導体化合物である。本発明においては、この半導体化合物が半導体特性を示すことが好ましい。
【0089】
【化18】
【0090】
式(5)で表わされる化合物の例としては、以下のものが挙げられる。なお、t−Buはt−ブチル基を表わす。Mは、2価の金属原子又は3価以上の金属と他の原子とが結合した原子団を表わす。
【0091】
【化19】
【0092】
【化20】
【0093】
【化21】
【0094】
上記低分子有機半導体化合物前駆体の半導体化合物への変換の具体例としては、例えば以下が挙げられる。
【0095】
【化22】
【0096】
【化23】
【0097】
【化24】
【0098】
式(5)で表わされる低分子有機半導体化合物前駆体は、位置異性体が存在する構造であってもよく、またその場合、複数の位置異性体の混合物から成っていてもよい。複数の位置異性体からなる低分子有機半導体化合物前駆体は、単一異性体成分からなる低分子有機半導体化合物前駆体と比較して溶媒に対する溶解度が向上するため、塗布製膜が行いやすく好ましい。複数の位置異性体の混合物とすると溶解度が向上する理由は、詳細なメカニズムは明確ではないが、化合物そのものの結晶性が潜在的に保持されつつも、複数の異性体混合物が溶液内に混在することで、三次元規則的な分子間相互作用が困難になるためと想定される。本発明においては、複数の異性体化合物からなる前駆体混合物の非ハロゲン性溶媒への溶解度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。上限に制限は無いが、通常50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
【0099】
<p−i−n積層構造>
本発明における活性層の層構成としては、図1に示すようなp型半導体化合物層103とn型半導体化合物層105からなる薄膜積層型の中間層としてp型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層(i層)104を有するp−i−n積層構造をとることが好ましい。p−i−n積層構造は光電流を発生しうる活性層を厚く形成できる利点がある。
更に、p−i−n積層構造においてi層104がナノ構造を有すると、混合接合層から発生する電子とホールを輸送するルートができ、光電流を増大しうるため特に好ましい。ナノ構造とは例えば、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが1nm〜500nm程度の深さの凹凸を形成して互いに接触している状態を指す。
【0100】
i層に用いるn型半導体化合物としては、本発明に係わるフラーレン化合物を用いてもよいし他のn型半導体化合物を用いてもよい。
i層の製造方法について説明する。i層はp型半導体化合物とn型半導体化合物を混合し塗布することで製膜できるが、望ましい形状のナノ構造に制御するために、ナノ構造形成用化合物を用いてもよい。
【0101】
即ち、まずp型半導体化合物とナノ構造形成用化合物とを用いてナノ構造を形成し、その後ナノ構造形成用化合物とn型半導体化合物とを置換することで製膜してもよい。ナノ構造形成用化合物としては、溶解性その他ナノ構造の制御に適した性質を持つn型半導体化合物を用いることができ、例えば後述するSIMEF2等が挙げられる。
本方法によれば、光電変換素子に適したフラーレン化合物を用いながら、ナノ構造を好
ましく制御することができ、ひいては光電流の増大と開放端電圧の向上とをそれぞれ独立に達成しうる利点がある。
【0102】
<電極101、107>
本発明に係る電極(101及び107)は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有するものである。したがって、一対の電極には、正孔の捕集に適した電極101(以下、アノードと記載する場合もある)と電子の捕集に適した電極107(以下、カソードと記載する場合もある)を用いることが好ましい。1対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは太陽光が40%以上透過する程度のものである。また、透明電極の太陽光線透過率が70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層に光を到達させるためには、好ましい。なお、光の透過率は、通常の分光光度計で測定可能できる。
【0103】
正孔の捕集に適した電極101(アノード)とは、一般には仕事関数がカソードよりも高い値を有する導電性材料で、活性層108で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
アノード101の材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、インジウムージルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金が挙げられる。
【0104】
これらの物質は高い仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルフォン酸をドーピングしたPEDOT/PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、その導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、AlやMg等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。
【0105】
ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルフォン酸をドーピングしたPEDOT/PSSや、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等のドーピングした導電性高分子材料をアノードの材料として使用することもできる。
また、アノード101が透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛又は酸化錫等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOが好ましい。
【0106】
アノード101の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは、50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノード101の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノード101の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率が低下せずに効率よく光を電気に変換することができる。透明電極に用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。
【0107】
アノード101のシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。
アノード101の形成方法は、蒸着若しくはスパッタ等の真空成膜方法又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する方法等がある。
【0108】
電子の捕集に適した電極107(カソード)とは、一般には仕事関数がアノードよりも高い値を有する導電性材料で、活性層108で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極であり、本発明の電子取り出し層106と隣接することを特徴とする。
カソード107の材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム又は酸化セシウムのような金属酸化物等が挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料のため、好ましい。カソード107についてもアノード101と同様に、電子取り出し層106にチタニアのようなn型半導体で導電性を有するものを用いることにより、アノード101に適した高い仕事関数を有する材料も用いることができる。電極保護の観点から、アノード101材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、カルシウム又はインジウム等の金属及びこれらの金属を用いた合金である。
【0109】
カソード107の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上下、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは1μm以下である。透明電極に用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。カソード107の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソード107の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率が低下せずに効率よく光を電気に変換することができる。
【0110】
カソード107のシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。
カソード107の形成方法は、蒸着若しくはスパッタ等の真空成膜方法又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する方法等がある。
【0111】
さらに、アノード101あるいはカソード107は2層以上積層してもよく、表面処理により特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
アノード101及びカソード107を積層した後に、当該光電変換素子を通常50℃以上、好ましくは80℃以上、一方、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニール処理工程と称する場合がある)。該アニール処理工程の温度を50℃以上にすることで、電子取り出し層106と電極107及び/又は電子取り出し層106と活性層108の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。該アニール処理工程の温度が300℃以下にすることで、活性層の有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。
【0112】
なお、温度操作については上記範囲内で段階的に加熱してもよい。
加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下である。該アニール処理は太陽電池性能のパラメーターである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、該アニール処理の雰囲気は常圧下、かつ不活性ガス雰囲気で実施することが好ましい。
【0113】
該アニール処理工程により、電子取り出し層と電極及び/又は電子取り出し層と活性層の密着性を向上させることで、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上する効果とともに、有機活性層の自己組織化が促進される効果が得られる。
加熱する方法としては、ホットプレート等の熱源に当該光電変換素子を載せても良いし、オーブン等の加熱雰囲気下に当該光電変換素子を入れても良い。また、バッチ式であっても連続方式であっても構わない。
【0114】
<基板>
本発明に係る光電変換素子は、通常は支持体となる基板を有する。すなわち、基板上に
電極、活性層、及び好ましくは後述のバッファー層が形成される。基板の材料(基板材料)は本発明効果を著しく損なわない限り任意である。基板材料の好適な例を挙げると、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニルやポリエチレン等のポリオレフィン;セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネンやエポキシ樹脂等の有機材料;紙や合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に表面をコート又はラミネートして絶縁性を付与した複合材料等が挙げられる。ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ないことから無アルカリガラスが好ましい。
【0115】
基板の形状に制限はなく、例えば、板、フィルム又はシート等の形状を用いることができる。基板の厚みは特段の制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、また、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。基板の厚みをこの範囲とすることで、半導体デバイスの強度が充分に保つことができ、かつ基板にかかるコストが抑えられ、重量が重くなることがないので好ましい。また、基板がガラスの場合は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上がよい。一方、好ましくは1cm以下、より好ましくは0.5cm以下である。ガラス基板の厚みをこの範囲とすることで、機械的強度が充分に保つことができ割れる可能性が低くなり、かつ基板の重量が重くなることがないので好ましい。
【0116】
<バッファ層(102、106)>
本発明の光電変換素子は、1対の電極(101、107)、及びその間に配置された活性層108の他に、さらにバッファ層を1以上有することが好ましい。バッファ層としては、正孔取り出し層及び電子取り出し層に分類することができ、それぞれ、活性層108と電極(101、107)の間に設けることができる。
【0117】
<電子取り出し層106>
電子取り出し層の材料は、電子取り出し層には、p半導体化合物とn半導体化合物を含む活性層108から電極(カソード107)へ電子の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
【0118】
無機化合物の材料としては、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属の塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型の酸化物半導体が望ましい。
アルカリ金属塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が望ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等の電子取り出し電極(カソード)と組み合わされてカソードの仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
【0119】
有機化合物の材料としては、具体的には、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、又はホスフィンオキサイド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。なかでも好ましくは、アリール基で置換されたホスフィンオキサイド化合物又はアリール基で置換されたホスフィンスルフィド化合物等のアリール基で置換された第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物であり、
より好ましくは、トリアリールホスフィンオキサイド化合物、トリアリールホスフィンスルフィド化合物、ジアリールホスフィンオキシドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物、ジアリールホスフィンスルフィドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物又はジアリールホスフィンオキシドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物である。上記アリール基にはフッ素原子又はパーフルオロアルキル基等のフッ素原子が置換されたアルキル基が置換されていてもよい。上記材料に加えてアルカリ金属又はアルカリ土類金属をドープしてもよい。
【0120】
アリール基で置換された第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物とは、下記一般式(6)で表される。
【0121】
【化25】
【0122】
式中、R、Rは各々独立して置換基を有しても良い芳香族基を表わし、nは1以上の整数を表す。R10は芳香族基である。Uは第16族元素である。
式中、R、Rは各々独立して置換基を有していてもよい芳香族基である。好ましくは、R及びRのうち少なくとも一つは置換基を有していてもよい縮合多環芳香族基である。
【0123】
芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニレニル基、トリフェニレン基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基又はトリフェニレニル基等の芳香族炭化水素基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロール基、オキサゾール基、チアゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、イミダゾイル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾイル、フェノキサチエニル基、キサンテニル基、ベンゾフラニル基、チアントレニル基、インドリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基又はキノキサリニル基等の芳香族複素環基が挙げられる。好ましくは、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、トリフェニレン基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ペリレニル基又はトリフェニレニル基等の芳香族炭化水素基;ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾイル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、キノキサリニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾイル、キサンテニル基又はフェノキサジニル基等の芳香族複素環基である。
【0124】
また、縮合多環芳香族基を形成する環として好ましくは、置換基を有していてもよい環状アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。
環状アルキル基の具体例としては、シクロペンチル基やシクロヘキシル基が挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基である。芳香族複素環基の具体例としては、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロール基、オキサゾール基、チアゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基又はイミダゾイル基等が挙げられる。芳香族複素環基として好ましくは、ピリジル基やチエ
ニル基である。
【0125】
環状アルキル基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、特に限定はないが、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アセチル基、スルホニル基、シリル基、ボリル基、ニトリル基、アルキル基、フッ化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
【0126】
縮合多環芳香族基は、前記環が縮合した基である。好ましくは、フェナントリル基、アントリル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基又はトリフェニレニル基等の縮合多環式炭化水素基;フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基又はフェナントリジニル基等の縮合多環式複素環基が挙げられる。
【0127】
Uは第16族元素である。その中でも好ましくは、酸素原子又は硫黄原子である。
本発明のアリール基で置換されたホスフィンオキサイド化合物又はアリール基で置換されたホスフィンスルフィド化合物の好ましい具体例としては、例えば、以下に例示されるものが挙げられる。ただし、本発明の要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0128】
【化26】
【0129】
【化27】
【0130】
【化28】
【0131】
【化29】
【0132】
【化30】
【0133】
【化31】
【0134】
【化32】
【0135】
【化33】
【0136】
【化34】
【0137】
【化35】
【0138】
【化36】
【0139】
【化37】
【0140】
【化38】
【0141】
【化39】
【0142】
【化40】
【0143】
【化41】
【0144】
【化42】
【0145】
【化43】
【0146】
【化44】
【0147】
【化45】
【0148】
【化46】
【0149】
【化47】
【0150】
【化48】
【0151】
【化49】
【0152】
【化50】
【0153】
また、上記アリール基で置換されたホスフィンオキサイド化合物、アリール基で置換されたホスフィンスルフィド化合物以外の例としては、次に示すものが挙げられる。
【0154】
【化51】
【0155】
【化52】
【0156】
【化53】
【0157】
本発明に係る電子取り出し層で使用される有機化合物のガラス転移温度としては、特に限定はないが、50℃以上が好ましく、さらに好ましくは80℃以上である。上限は特に限定はないが、DSC法によるガラス転移温度が300℃以下に観測されない化合物である。
本発明に係るガラス転移温度とは、有機化合物のアモルファス状態の固体が、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度とされており、比熱が変化する点として定義される。さらに温度が上がると、固体構造が変化して結晶化が起こる(この時の温度を結晶化温度(Tc)とする)。さらに温度が上がると、融点(Tm)で融解し液体状態に変化するのが一般的である。但し、高温で分子が分解したり、昇華したりして、それらの相転移が見られないこともある。ガラス転移温度は公知の方法で測定すれば良く、たとえば上述のDSC法が挙げられる。
【0158】
電子取り出し層で使用される有機化合物のガラス転移温度が50℃以上であることにより、該化合物は、印加される電場、流れる電流、曲げや温度変化による応力等の外部ストレスに対して構造が変化しにくいため、耐久性の面で好ましい。さらに、該有機化合物の薄膜の結晶化が進みにくい傾向も有すことから、使用温度範囲において該有機化合物がアモルファス状態と結晶状態に変化しにくくなることにより電子取り出し層としての安定性が良くなるため、耐久性の面で好ましい。本発明の電子取り出し層で使用される化合物の中には、DSC法によるガラス転移温度が300℃以下に観測されないものが存在し、それは熱的に高い安定性を有しており好ましいものである。
【0159】
電子取り出し層106の膜厚は特に限定はないが、通常0.01nm以上である。一方、通常40nm以下、好ましくは20nm以下である。電子取り出し層106の膜厚が0.01nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、電子取り出し層106の膜厚が40nm以下であることで、電子が取り出し易くなり、光電変換効率が向上する。
【0160】
<正孔取り出し層102>
正孔取り出し層102の材料は、p型半導体化合物とn型半導体化合物を含む活性層108から電極101(アノード)へ正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン又はトリフェニレンジアミン等の導電性有機化合物等が挙げられる。また、Au、In、Ag又はPd等の金属等の薄膜も使用することができる。さらに、金属等の薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
【0161】
正孔取り出し層102の膜厚は特に限定はないが、通常2nm以上である。一方、通常40nm以下、好ましくは20nm以下である。正孔取り出し層102の膜厚が2nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、正孔取り出し層102の膜厚が40nm以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上する。
[太陽電池モジュール]
本発明の光電変換素子は、太陽電池素子として薄膜太陽電池として使用されることが好ましい。
【0162】
図2は本発明の一実施形態としての薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備え、更に、耐候性保護フィルム1とバックシート10の縁部をシールするシール材11を備えている。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
【0163】
[耐候性保護フィルム1]
耐候性保護フィルム1は天候変化から太陽電池素子6を保護するフィルムである。
太陽電池素子6の構成部品のなかには、温度変化、湿度変化、自然光及び/又は風雨による侵食等により劣化するものがある。そこで、耐候性保護フィルム1で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を天候変化等から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
【0164】
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池14の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性及び/又は機械強度等の、薄膜太陽電池14の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護フィルム1は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましくは95%である。
【0165】
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム1も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム1の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に耐候性保護フィルム1が融解・劣化する可能性を低減できる。
【0166】
耐候性保護フィルム1を構成する材料は、天候変化から太陽電池素子6を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0167】
中でも好ましくはフッ素系樹脂が挙げられ、その具体例を挙げるとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
【0168】
なお、耐候性保護フィルム1は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、耐候性保護フィルム1は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
耐候性保護フィルム1の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
【0169】
また耐候性保護フィルム1には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理及び/又はプラズマ処理等の表面処理を行なってもよい。
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池14においてできるだけ外側に設けることが好ましい。薄膜太陽電池14の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
【0170】
[紫外線カットフィルム2]
紫外線カットフィルム2は紫外線の透過を防止するフィルムである。
薄膜太陽電池14の構成部品のなかには紫外線により劣化するものがある。また、ガスバリアフィルム3、9等は種類によっては紫外線により劣化するものがある。そこで、
紫外線カットフィルム2を薄膜太陽電池14の受光部分に設け、紫外線カットフィルム2で太陽電池素子6の受光面6aを覆うことにより、太陽電池素子6及び必要に応じてガスバリアフィルム3、9等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
【0171】
紫外線カットフィルム2に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、特に好ましくは10%以下である。
また、紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率
が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましくは95%以上である。
【0172】
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム2も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム2の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点が低すぎると薄膜太陽電池14の使用時に紫外線カットフィルム2が融解する可能性がある。
【0173】
また、紫外線カットフィルム2は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうるものが好ましい。
紫外線カットフィルム2を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系又はエステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルム等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いてもよい。
【0174】
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系のものを用いることができる。中でもベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系が好ましい。この例としては、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の種々の芳香族系有機化合物等が挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0175】
前記したように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
【0176】
塗布は任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。また、これらの方法は1種を単独で行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行うこともできる。
【0177】
塗布液に用いる溶剤は、紫外線吸収剤を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されない。例えば液状の樹脂を溶剤として用いることができ、その例を挙げると、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカ−ボネ−ト系又はポリスチレン系等の各種合成樹脂等が挙げられる。また、例えば、ゼラチンやセルロース誘導体等の天然高分子;水、水とエタノール等のアルコール混合溶液等も溶剤として用いることができる。さらに、溶剤として有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤を使用すれば、色素や樹脂を溶解又は分散させることが可能となり、塗工性を向上させることが可能となる。なお、溶剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0178】
塗布液にはさらに界面活性剤も含有させてもよい。界面活性剤の使用により、紫外線吸収色素の樹脂への分散性が向上する。これにより、紫外線吸収層において、微小な泡によるヌケ、異物等の付着による凹み及び/又は乾燥工程でのハジキ等の発生が抑制される。

界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤)を用いることができる。中でも、シリコン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0179】
なお、塗布液を基材フィルムに塗布した後の乾燥は、例えば熱風乾燥、赤外線ヒーターによる乾燥等の公知の乾燥方法が採用できる。中でも、乾燥速度が速い熱風乾燥が好適である。
紫外線カットフィルム2の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)等が挙げられる。
【0180】
なお、紫外線カットフィルム2は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、紫外線カットフィルム2は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
紫外線カットフィルム2の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで紫外線の吸収が高まる傾向にあり、薄くすることで可視光の透過率を増加させられる傾向にある。
【0181】
紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の受光面6aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは太陽電池素子6の受光面6aの全てを覆う位置に設ける。
ただし、太陽電池素子6の受光面6aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム2が設けられていてもよい。
[ガスバリアフィルム3]
ガスバリアフィルム3は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。
【0182】
太陽電池素子6は湿気及び酸素に弱い傾向があり、特に、ZnO:Al等の透明電極や、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子が水分及び酸素により劣化することがある。そこで、ガスバリアフィルム3で太陽電池素子6を被覆することにより、太陽電池素子6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム3に要求される防湿能力の程度は、太陽電池素子6の種類等に応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が化合物半導体系太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。
【0183】
また、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。水蒸気が透過しなければしないほど、太陽電池素子6及び当該素子6のZnO:Al等の透明電極の水分との反応に起因する劣化が抑えられるので、発電効率が上がると共に寿命が延びる。
【0184】
ガスバリアフィルム3に要求される酸素透過性の程度は、太陽電池素子6の種類等に応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が化合物半導体系太陽電池素子である場合には
、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。また、例えば、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、太陽電池素子6及び当該素子6のZnO:Al等の透明電極の酸化による劣化が抑えられる。
【0185】
従来はこのように高い防湿及び酸素遮断能力を有するガスバリアフィルム3の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなガスバリアフィルム3を適用することにより化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子等の優れた性質を活かした薄膜太陽電池14の実施が容易となる。
【0186】
また、ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
【0187】
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム3も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム3の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時にガスバリアフィルム3が融解・劣化する可能性を低減できる。
【0188】
ガスバリアフィルム3の具体的な構成は、太陽電池素子6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム3を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
以下、ガスバリアフィルム3の構成について、例を挙げて説明する。
【0189】
ガスバリアフィルム3の構成として好ましいものは以下の2例が挙げられる。
一つ目の例は、プラスチックフィルム基材に無機バリア層を配置したフィルムである。この際、無機バリア層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。
【0190】
二つ目の例は、プラスチックフィルム基材に、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層が形成されたフィルムである。この際、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層を1単位とし
て、このユニット層が1単位(無機バリア層1層とポリマー層1層を合わせて1単位の意味)のみを形成しても良いが、2単位以上形成しても良い。例えば2〜5単位、積層してもよい。
【0191】
ユニット層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層及びポリマー層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。また、プラスチックフィルム基材上にユニット層を形成する場合、無機バリア層を形成してからその上にポリマー層を形成してもよいし、ポリマー層を形成してから無機バリア層を形成してもよい。
【0192】
(プラスチックフィルム基材)
ガスバリアフィルム3に使用されるプラスチックフィルム基材は、上記の無機バリア層及びポリマー層を保持しうるフィルムであれば特に制限はなく、ガスバリアフィルム3の使用目的等から適宜選択することができる。
プラスチックフィルム基材の材料の例を挙げると、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂又はアクリロイル化合物が挙げられる。また、スピロビインダン、スピロビクロマンを含む縮合ポリマーを用いるのも好ましい。ポリエステル樹脂の中でも、二軸延伸を施したポリエチレンテレフタレート(PET)又は同じく二軸延伸したポリエチレンナフタレート(PEN)は、熱的寸度安定性に優れるため、プラスチックフィルム基材として好ましく用いられる。
【0193】
なおプラスチックフィルム基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
プラスチックフィルム基材の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
【0194】
プラスチックフィルム基材は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
【0195】
プラスチックフィルム基材には、無機バリア層との密着性向上のため、アンカーコート剤の層(アンカーコート層)を形成してもよい。通常、アンカーコート層はアンカーコート剤を塗布して形成される。アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂の中から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂と、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂及びイソシアネート基含有樹脂の中から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂とを組み合わせたものが好ましい。なお、アンカーコート剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0196】
アンカーコート層の厚さは、通常0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは1μm以下である。この範囲の上限値以下の厚さであ
れば滑り性が良好であり、アンカーコート層自体の内部応力によるプラスチックフィルム基材からの剥離もほとんどない。また、この範囲の下限値以上の厚さであれば、均一な厚さを保つことができ好ましい。
【0197】
また、プラスチックフィルム基材へのアンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するため、アンカーコート剤の塗布前に、プラスチックフィルム基材に通常の化学処理、放電処理等の表面処理を施してもよい。
(無機バリア層)
無機バリア層は通常は金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物により形成される層である。なお、無機バリア層を形成する金属酸化物、窒化物及び酸化窒化物は、1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0198】
金属酸化物としては、例えば、Si、Al、Mg、In、Ni、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce又はTa等の酸化物が挙げられる。中でも、高いバリア性と高透明性とを両立させるために、酸化アルミニウム又は酸化珪素を含むことが好ましく、特に水分の透過性、光線透過性の観点から、酸化珪素を含むことが好ましい。
各々の金属原子と酸素原子との比率も任意であるが、無機バリア層の透明度を向上させ着色を防ぐためには、酸素原子の比率が酸化物の化学量論的な比率から極端に少なくないことが望ましい。一方、無機バリア層の緻密性を向上させバリア性を高くするためには、酸素原子を少なくすることが望ましい。この観点から、例えば金属酸化物としてSiOを用いる場合には前記xの値は1.5〜1.8が特に好ましい。また、例えば金属酸化物としてAlOを用いる場合には前記xの値は1.0〜1.4が特に好ましい。
【0199】
また、2種以上の金属酸化物より無機バリア層を構成する場合、金属酸化物としては酸化アルミニウム及び酸化珪素を含むことが望ましい。中でも無機バリア層が酸化アルミニウム及び酸化珪素からなる場合、無機バリア層中のアルミニウムとケイ素との比率は任意に設定することができるが、Si/Alの比率は、通常1/9以上、好ましくは2/8以上であり、また、通常9/1以下、好ましくは2/8以下である。
【0200】
無機バリア層の厚みを厚くするとバリア性が高まる傾向にあるが、曲げた際にクラックを生じにくくし割れを防ぐためには、厚みを薄くすることが望ましい。そこで無機バリア層の適正な厚みとしては、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは200nm以下である。
無機バリア層の成膜方法に制限は無いが、一般的にスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等で行うことができる。例えばスパッタリング法では1種類のあるいは複数の金属ターゲットと酸素ガスを原料とし、プラズマを用いた反応性スパッタ方式で形成することができる。
【0201】
(ポリマー層)
ポリマー層にはいずれのポリマーでも使用することができ、例えば真空チャンバー内で成膜できるものも用いることができる。なお、ポリマー層を構成するポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
前記ポリマーを与える化合物としては多種多様なものを用いることができるが、例えば以下の(i)〜(vii)のようなものが例示される。なお、モノマーは1種を用いてもよ
く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0202】
(i)例えばヘキサメチルジシロキサン等のシロキサンが挙げられる。ヘキサメチルジシロキサンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、RF電極を用いた平行平板型のプラズマ装置にヘキサメチルジシロキサンを蒸気として導入し、プラズマ中で重合反応を起こさせ、プラスチックフィルム基材上に堆積させることでポリマー層をポリシ
ロキサン薄膜として形成できる。
【0203】
(ii)例えばジパラキシリレン等のパラキシリレンが挙げられる。ジパラキシリレンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、まず高真空中でジパラキシリレンの蒸気を650℃〜700℃で加熱することで熱分解させて熱ラジカルを発生させる。そして、そのラジカルモノマー蒸気をチャンバー内に導いて、プラスチックフィルム基材への吸着させると同時にラジカル重合反応を進行させてポリパラキシリレンを堆積させることでポリマー層を形成できる。
【0204】
(iii)例えば二種のモノマーを交互に繰り返し付加重合させることができるモノマー
が挙げられる。これにより得られるポリマーは重付加ポリマーである。重付加ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン(ジイソシアナート/グリコール)、ポリ尿素(ジイソシアナート/ジアミン)、ポリチオ尿素(ジチオイソシアナート/ジアミン)、ポリチオエーテルウレタン(ビスエチレンウレタン/ジチオール)、ポリイミン(ビスエポキシ/第一アミン)、ポリペプチドアミド(ビスアゾラクトン/ジアミン)又はポリアミド(ジオレフィン/ジアミド)等が挙げられる。
【0205】
(iv)例えばアクリレートモノマーが挙げられる。アクリレートモノマーには単官能、2官能又は多官能のアクリレートモノマーがあるが、いずれを用いてもよい。ただし、適切な蒸発速度、硬化度及び/又は硬化速度等を得るために、前記のアクリレートモノマーを2種以上組み合わせて併用することが好ましい。
また、単官能アクリレートモノマーとしては、例えば脂肪族アクリレートモノマー、脂環式アクリレートモノマー、エーテル系アクリレートモノマー、環状エーテル系アクリレートモノマー、芳香族系アクリレートモノマー、水酸基含有アクリレートモノマー又はカルボキシ基含有アクリレートモノマー等があるが、いずれも用いることができる。
【0206】
(v)例えばエポキシ系やオキセタン系等の、光カチオン硬化ポリマーが得られるモノマーが挙げられる。エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環式エポキシ系モノマー、2官能性モノマー又は多官能性オリゴマー等が挙げられる。また、オキセタン系モノマーとしては、例えば、単官能オキセタン、2官能オキセタン又はシルセスキオキサン構造を有するオキセタン等が挙げられる。
【0207】
(vi)例えば酢酸ビニルが挙げられる。モノマーとして酢酸ビニルを用いると、その重合体をケン化することでポリビニルアルコールが得られ、このポリビニルアルコールをポリマーとして使用できる。
(vii)例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、
イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸又は無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらは、エチレンとの共重合体を構成させ、この共重合体をポリマーとして使用できる。さらに、これらの混合物、あるいはグリシジルエーテル化合物を混合した混合物、さらにはエポキシ化合物との混合物もポリマーとして用いることができる。
【0208】
前記のモノマーを重合してポリマーを生成させる際、モノマーの重合方法に制限は無い。ただし、通常は、モノマーを含む組成物を塗布又は蒸着して成膜した後で重合を行うようにする。重合方法の例を挙げると、熱重合開始剤を用いたときはヒーター等による接触加熱又は赤外線若しくはマイクロ波等の放射加熱等により重合を開始させる。また、光重合開始剤を用いたときは活性エネルギー線を照射して重合を開始させる。活性エネルギー線を照射する場合には様々な光源を使用することができ、例えば、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステンーハロゲン輻射ランプ又は日光による照射光等を用いることができる。また、電子線照射や大気圧プラズマ処
理を行うこともできる。
【0209】
ポリマー層の形成方法は、例えば、塗布法、真空成膜法等が挙げられる。
塗布法でポリマー層を形成する場合、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンフローコート、スプレーコート、バーコート等の方法を用いることができる。また、ポリマー層形成用の塗布液をミスト状で塗布するようにしてもよい。この場合の液滴の平均粒径は適切な範囲に調整すればよく、例えば重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状でプラスチックフィルム基材上に成膜して形成する場合には、液滴の平均粒径は通常5μm以下、好ましくは1μm以下である。
【0210】
他方、真空成膜法でポリマー層を形成する場合、例えば、蒸着やプラズマCVD等の成膜方法が挙げられる。
ポリマー層の厚みについては特に限定はないが、通常10nm以上であり、また、通常5000nm以下、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下である。ポリマー層の厚みを厚くすることで、厚みの均一性が得やすくなり無機バリア層の構造欠陥を効率よくポリマー層で埋めることができ、バリア性が向上する傾向にある。また、ポリマー層の厚みを薄くする事で、曲げ等の外力によりポリマー層自身がクラックを発生しにくくなるためバリア性が向上しうる。
【0211】
中でも好適なガスバリアフィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOを真空蒸着したフィルム等が挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム3は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ガスバリアフィルム3は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
【0212】
ガスバリアフィルム3の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることでガスバリア性が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
【0213】
ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施形態ではガスバリアフィルム3が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム9が太陽電池素子6の背面を覆うようになっている。そして、ガスバリアフィルム3、9の縁部をシール材11でシールし、ガスバリアフィルム3、9及びシール材11で囲まれた空間内に太陽電池素子6を納めることにより、太陽電池素子6を湿気及び酸素から保護できるようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
【0214】
[ゲッター材フィルム4]
ゲッター材フィルム4は水分及び/又は酸素を吸収するフィルムである。太陽電池素子6の構成部品のなかには前記のように水分で劣化するものがあり、また、酸素によって劣化するものもある。そこで、ゲッター材フィルム4で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにして
いる。
【0215】
ここで、ゲッター材フィルム4は前記のようなガスバリアフィルム3とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム3等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3、9及びシール材11で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム4が捕捉して水分による太陽電池素子6への影響を排除できる。
【0216】
ゲッター材フィルム4の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm以上、好ましくは0.5mg/cm以上、より好ましくは1mg/cm以上である。この数値が高いほど水分吸収能力が高く太陽電池素子6の劣化を抑制しうる。また、上限に制限は無いが、通常10mg/cm以下である。
また、ゲッター材フィルム4が酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム3、9等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3、9及びシール材11で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム4が捕捉して酸素による太陽電池素子6への影響を排除できる。
【0217】
さらに、ゲッター材フィルム4は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
【0218】
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム4も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム4の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時にゲッター材フィルム4が融解・劣化する可能性を低減できる。
【0219】
ゲッター材フィルム4を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属の酸化物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケル等の硫酸塩;アルミニウム金属錯体又はアルミニウムオキサイドオクチレート等の有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr又はBa等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO又はBaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOやアルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
【0220】
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム又は酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム4は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ゲッター材フィルム4は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
【0221】
ゲッター材フィルム4の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10
μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
ゲッター材フィルム4は、ガスバリアフィルム3、9及びシール材11で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム4はガスバリアフィルム3と太陽電池素子6との間に設けることが好ましい。本実施形態ではゲッター材フィルム4が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム8が太陽電池素子6の背面を覆い、ゲッター材フィルム4、8がそれぞれ太陽電池素子6とガスバリアフィルム3、9との間に位置するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
【0222】
ゲッター材フィルム4は吸水剤又は乾燥剤の種類に応じて任意の方法で形成することができるが、例えば、吸水剤又は乾燥剤を分散したフィルムを粘着剤で添付する方法、吸水剤又は乾燥剤の溶液をスピンコート法、インクジェット法又はディスペンサー法等で塗布する方法等を用いることができる。また真空蒸着法やスパッタリング法等の成膜法を使用してもよい。
【0223】
吸水剤又は乾燥剤のためのフィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。中でも、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂又はポリカーボネート系樹脂のフィルムが好ましい。なお、前記樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0224】
[封止材5]
封止材5は、太陽電池素子6を補強するフィルムである。太陽電池素子6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては薄膜太陽電池の強度が弱くなる傾向があるが、封止材5により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材5は、薄膜太陽電池14の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。
【0225】
具体的強度については、封止材5以外の耐候性保護フィルム1やバックシート10の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、薄膜太陽電池14全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材5は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
【0226】
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、封止材5も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材5の構成材料の融点は、通常1
00℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に封止材5が融解・劣化する可能性を低減できる。
【0227】
封止材5の厚みは特に規定されないが、通常100μm以上、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上であり、また、通常700μm以下、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。厚みを厚くすることで薄膜太陽電池14全体の強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
【0228】
封止材5を構成する材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物をフィルムにしたもの(EVAフィルム)等を用いることができる。EVAフィルムには通常は耐候性の向上のために架橋剤を配合して架橋構造を構成させる。この架橋剤としては、一般に、100℃以上でラジカルを発生する有機過酸化物が用いられる。このような有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン又は3−ジ−t−ブチルパーオキサイド等を用いることができる。これらの有機過酸化物の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下であり、通常1重量部以上である。なお、架橋剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0229】
このEVA樹脂組成物には、接着力向上の目的で、シランカップリング剤を含有させてもよい。この目的に供されるシランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン又はβ−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは2重量部以下であり、通常0.1重量部以上である。なお、シランカップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0230】
更に、EVA樹脂のゲル分率を向上させ、耐久性を向上するために、EVA樹脂組成物に架橋助剤を含有させてもよい。この目的に供される架橋助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート又はトリアリルイソシアネート等の3官能の架橋助剤等の単官能の架橋助剤等が挙げられる。これらの架橋助剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下であり、また、通常1重量部以上である。なお、架橋助剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0231】
更に、EVA樹脂の安定性を向上する目的で、EVA樹脂組成物に、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン又はメチルハイドロキノンなどを含有させてもよい。これらの配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下である。
しかし、EVA樹脂の架橋処理には1〜2時間程度の比較的長時間を要するため、薄膜太陽電池14の生産速度及び生産効率を低下させる原因となる場合がある。また、長期間使用の際には、EVA樹脂組成物の分解ガス(酢酸ガス)又はEVA樹脂自体が有する酢酸ビニル基が、太陽電池素子6に悪影響を与えて発電効率が低下させる場合がある。
そこで、封止材5としては、EVAフィルムの他に、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体のフィルムを用いることもできる。この共重合体としては
、例えば、下記成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
【0232】
・成分1:プロピレン系重合体が、通常0重量部以上、好ましくは10重量部以上であり、また、通常70重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
・成分2:軟質プロピレン系共重合体が、30重量部以上、好ましくは50重量部以上であり、また、通常100重量部以下、好ましくは90重量部以下である。
なお、成分1及び成分2の合計量は100重量部である。上記のように、成分1および成分2が好ましい範囲にあると、封止材5のシートへの成形性が良好であるとともに、得られる封止材5の耐熱性、透明性及び柔軟性が良好となり、薄膜太陽電池14に好適である。
【0233】
上記の成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物は、メルトフローレート(ASTM D 1238、230度、荷重2.16kg)が、通常0.0001g/10分以上であり、また、通常1000g/10分以下、好ましくは900g/10分以下、より好ましくは800g/10分以下である。
成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の融点は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上である。また通常140℃以下、好ましくは135℃以下である。
【0234】
また成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の密度は、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。
この封止材5においては、上記成分1及び成分2に、プラスチック等に対する接着促進剤としてカップリング剤を配合することが可能である。カップリング剤は、シラン系、チタネート系、クロム系の各カップリング剤が好ましく用いられ、特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。
【0235】
上記シランカップリング剤としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシーエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン又はγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なお、カップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0236】
また、これらは熱可塑性樹脂組成物(成分1及び成分2の合計量)100重量部に対して、上記シランカップリング剤を通常0.1重量部以上含み、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下含むことが望ましい。
また、上記カップリング剤は、有機過酸化物を用いて、当該熱可塑性樹脂組成物にグラフト反応させてもよい。この場合、熱可塑性樹脂組成物(成分1及び成分2の合計量)100重量部に対して、上記カップリング剤を0.1〜5重量部含むことが望ましい。シラングラフト化された熱可塑性樹脂組成物を用いても、ガラスやプラスチックに対して、シランカップリング剤ブレンドと同等以上の接着性が得られる。
【0237】
有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物は、熱可塑性樹脂組成物(成分1及び成分2の合計量)100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上であり、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下である。
また、封止材5としてエチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体を用いることもできる。この共重合体としては、下記に示す成分A及び成分Bからなる封止材用樹脂組成物と基材とを積層してなる、ホットタック性が5〜25℃のラミネートフィルムが例示される。
【0238】
・成分A:エチレン系樹脂。
・成分B:以下の(a)〜(d)の性状を有するエチレンとα−オレフィンとの共重合体。
(a)密度が0.86〜0.935g/cm
(b)メルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分。
【0239】
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり、かつ該ピーク温度が100℃以下である。
(d)温度上昇溶離分別(TREF)による積分溶出量が、90℃のとき90%以上である。
成分Aと成分Bとの配合割合(成分A/成分B)は、重量比で、通常50/50以上、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上であり、また、通常99/1以下、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下である。成分Bの配合量を多くすることで透明性やヒートシール性が高まる傾向にあり、成分Bの配合量を少なくすることでフィルムの作業性が高まる傾向にある。
【0240】
成分Aと成分Bを配合して生成される封止材用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、通常2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、通常50g/10分以下、好ましくは40g/10分以下である。なおMFRの測定と評価は、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠する方法によって実施することができる。
【0241】
封止材用樹脂組成物の融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、また、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材用樹脂組成物の密度は、0.80g/cm以上が好ましく、0.85g/cm以上がより好ましく、また、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
【0242】
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた封止材5において、前記プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた場合と同様に、カップリング剤を用いることが可能である。
上述した封止材5は、材料由来の分解ガスを発生することがないため、太陽電池素子6への悪影響がなく、良好な耐熱性、機械強度、柔軟性(太陽電池封止性)及び透明性を有する。また、材料の架橋工程を必要としないため、シート成形時及び薄膜太陽電池100の製造時間が大きく短縮できるとともに、使用後の薄膜太陽電池14のリサイクルも容易となる。
【0243】
なお、封止材5は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、封止材5は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
封止材5の厚みは、通常2μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた光線透過率が高まる傾向にある。
【0244】
封止材5を設ける位置に制限は無いが、通常は太陽電池素子6を挟み込むように設ける。太陽電池素子6を確実に保護するためである。本実施形態では、太陽電池素子6の正面及び背面にそれぞれ封止材5及び封止材7を設けるようにしている。
[太陽電池素子6]
太陽電池素子6は、前述の光電変換素子と同様である。
【0245】
・太陽電池素子同士の接続
太陽電池素子6は、薄膜太陽電池14の1個あたり1個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の太陽電池素子6を設ける。具体的な太陽電池素子6の個数は任意に設定すればよい。太陽電池素子6を複数設ける場合、太陽電池素子6はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
【0246】
太陽電池素子6を複数設ける場合、通常は、太陽電池素子6同士は電気的に接続され、接続された一群の太陽電池素子6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は太陽電池素子は直列に接続される。
このように太陽電池素子6同士を接続する場合には、太陽電池素子6間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、太陽電池素子6と太陽電池素子6との間の隙間は狭いことが好ましい。太陽電池素子6の受光面積を広くして受光量を増加させ、薄膜太陽電池14の発電量を増加させるためである。
【0247】
[封止材7]
封止材7は、上述した封止材5と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は封止材7と同様のものを同様に用いることができる。
また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
【0248】
[ゲッター材フィルム8]
ゲッター材フィルム8は、上述したゲッター材フィルム4と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はゲッター材フィルム4と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。
また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。また使用する水分あるいは酸素吸収剤をゲッター材フィルム4よりも多く含有するフィルムを用いることも可能となる。このような吸収剤としては、水分吸収剤としてCaO、BaO又はZr−Al−BaO等が挙げられ、酸素の吸収剤として活性炭やモレキュラーシーブ等が挙げられる。
【0249】
[ガスバリアフィルム9]
ガスバリアフィルム9は、上述したガスバリアフィルム3と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はガスバリアフィルム9と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。
また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
【0250】
[バックシート10]
バックシート10は、上述した耐候性保護フィルム1と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は耐候性保護フィルム1と同様のものを同様に用いることができる。また、このバックシート10が水及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート10をガスバリア層として機能させることも可能である。
【0251】
また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。このため、バックシート10としては、以下に説明するもの(i)〜(iv)を用いることが特に好ましい。
(i)バックシート10としては、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性及び/又は耐
光性に優れた各種の樹脂のフィルム又はシートを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂又はその他等の各種の樹脂のシートを使用することができる。これらの樹脂のシートの中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂のシートを使用することが好ましい。なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0252】
(ii)バックシート10としては、金属薄膜を用いることもできる。例えば、腐蝕防止したアルミニウム金属箔、ステンレス製薄膜等が挙げられる。なお、前記の金属は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(iii)バックシート10としては、例えばアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フイルムを
接着した防水性の高いシートを用いてもよい。フッ素系樹脂としては、例えば、一弗化エチレン(商品名:テドラー、デュポン社製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレン若しくはプロピレンとのコポリマー(ETFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)又はフッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。なお、フッ素系樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0253】
(iv)バックシート10としては、例えば、基材フィルムの片面又は両面に、無機酸化物の蒸着膜を設け、更に、上記の無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムの両面に、耐熱性のポリプロピレン系樹脂フィルムを積層したものを用いてもよい。なお、通常は、基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、ラミネート用接着剤で張り合わせることで積層する。無機酸化物の蒸着膜を設けることで、水分及び/又は酸素等の侵入を防止する防湿性に優れたバックシート10として使用できる。
【0254】
・基材フィルム
基材フィルムとしては、基本的には、無機酸化物の蒸着膜等との密接着性に優れ、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性に優れた各種の樹脂のフィルムを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂又はその他等の各種の樹脂のフィルムを使用することができる。中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂のフィルムを使用することが好ましい。
【0255】
上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)又はフッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂のフィルムを使用することがより好ましい。更に、このフッ素系樹脂の
フィルムの中でも、特に、ポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)又はテトラフルオロエチレンとエチレン若しくはプロピレンとのコポリマー(ETFE)からなるフッ素系樹脂のフィルムが、強度等の観点から特に好ましい。なお、前記樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0256】
また、上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、シクロペンタジエン及びその誘導体又はシクロヘキサジエン及びその誘導体等の環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムを使用することもより好ましい。
基材フィルムの膜厚としては、通常12μm以上、好ましくは20μm以上であり、また、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
【0257】
・無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、基本的に金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば使用可能である。例えば、ケイ素(Si)やアルミニウム(Al)の酸化物の蒸着膜を使用することができる。この際、酸化ケイ素としては例えばSiO(x=1.0〜2.0)を用いることができ、酸化アルミニウムとしては例えばAlO(x=0.5〜1.5)を用いることができる。
【0258】
なお、使用する金属及び無機酸化物の種類は1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、通常50Å以上、好ましくは100Å以上であり、また、通常4000Å以下、好ましくは1000Å以下である。
蒸着膜の作製方法としては、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を用いることができる。具体例を挙げると、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0259】
・ポリプロピレン系樹脂フィルム
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと他のモノマー(例えばα−オレフィン等)との共重合体を使用することができる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチック重合体を用いることもできる。
ポリプロピレン系樹脂の融点は通常164℃以上であり、一方、通常170℃以下である。ポリプロピレン系樹脂の比重は通常0.90以上であり、一方、通常0.91以下である。ポリプロピレン系樹脂の分子量は通常10万以上であり、一方、通常20万以下である。
【0260】
ポリプロピレン系樹脂は、その結晶性により性質が大きく支配されるが、アイソタクチックの高いポリマーは、引っ張り強さ、衝撃強度に優れ、耐熱性、耐屈曲疲労強度を良好であり、かつ、加工性は極めて良好なものである。
・接着剤
基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、通常はラミネート用接着剤を用いる。これにより、基材フィルムとポリプロピレン系樹脂フィルムとはラミネート用接着剤層を介して積層されることになる。
【0261】
ラミネート用接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系
接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤又はシリコーン系接着剤等が挙げられる。なお、接着剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0262】
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型又は分散型等のいずれの組成物形態でもよい。また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよい。さらに、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型又は熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法又はその他等のコート法あるいは印刷法等によって施すことができる。そのコーティング量としては、乾燥状態で通常0.1g/m以上が望ましく、一方、通常10g/m以下が望ましい。
【0263】
[シール材11]
シール材11は、上述した耐候性保護フィルム1、紫外線カットフィルム2、ガスバリアフィルム3、ゲッター材フィルム4、封止材5、封止材7、ゲッター材フィルム8、ガスバリアフィルム9及びバックシート10の縁部をシールして、これらのフィルムで被覆された空間内に湿気及び酸素が浸入しないようにシールする部材である。
【0264】
シール材11に要求される防湿能力の程度は、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が0.1g/m/day以下であることが好ましく、0.05g/m/day以下であることがより好ましい。従来はこのように高い防湿能力を有するシール材11の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなシール材11を適用することにより化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子の優れた性質を活かした薄膜太陽電池14の実施が容易となる。
【0265】
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せされることが多いため、シール材11も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、シール材11の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
融点が低すぎると薄膜太陽電池14の使用時にシール材11が融解する可能性がある。
【0266】

シール材11を構成する材料としては、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂等のポリマーが挙げられる。
なお、シール材11は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。
【0267】
シール材11は、少なくともガスバリアフィルム3、9の縁部をシールできる位置に設ける。これにより、少なくともガスバリアフィルム3、9及びシール材11で囲まれた空間を密閉し、この空間内に湿気及び酸素が侵入しないようにすることができる。
このシール材11を形成する方法に制限は無いが、例えば、材料を耐候性保護フィルム1とバックシート10との間に注入することにより形成できる。形成方法の具体例を挙げると、以下の方法が挙げられる。
【0268】
即ち、例えば封止材5の硬化が進行する途中で、半硬化状態の薄膜太陽電池14を前記ラミネート装置から取り出し、太陽電池素子6の外周部であって耐候性保護シート1とバ
ックシート10との間の部分に液状のポリマーを注入し、このポリマーを封止材5と共に硬化させればよい。また、封止材5の硬化が終了した後にラミネート装置から取り出して単独で硬化させてもよい。なお、前記のポリマーを架橋・硬化させるための温度範囲は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。
【0269】
[寸法等]
本実施形態の薄膜太陽電池14は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として薄膜太陽電池14を形成することにより、薄膜太陽電池14を建材、自動車又はインテリア等に容易に設置できるようになっている。薄膜太陽電池14は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。薄くて軽いため輸送や保管等流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロール・トゥ・ロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
【0270】
薄膜太陽電池14の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、通常300μm以上、好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上であり、また、通常3000μm以下、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
[製造方法]
本実施形態の薄膜太陽電池14の製造方法に制限は無いが、例えば、耐候性保護フィルム1とバックシート10との間に、1個又は2個以上の太陽電池素子6を直列又は並列接続したものを、紫外線カットフィルム2、ガスバリアフィルム3、9、ゲッター材フィルム4、8及び封止材5、7と共に一般的な真空ラミネート装置でラミネートすることで製造できる。この際、加熱温度は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。また、加熱時間は通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。圧力は通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材5、7がはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。
【0271】
[用途]
上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく任意である。例えば、図3に模式的に示すように、何らかの基材12上に薄膜太陽電池14を設けた太陽電池モジュール13を用意し、これを使用場所に設置して用いればよい。具定例を挙げると、基材12として建材用板材を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けて太陽電池モジュール13として太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルを建物の外壁等に設置して使用すればよい。
【0272】
基材12は太陽電池素子6を支持する支持部材である。基材12を形成する材料としては、例えば、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン等の有機材料;紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられる。なお、基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、これら有機材料あるいは紙材料に炭素繊維を含ませ、機械的強度を補強させても良い。
【0273】
本発明の薄膜太陽電池を適用する分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等に用いて好適である。具体例として以下のようなものを挙げることができる。
1.建築用途
1.1ハウス屋根材として太陽電池
基材として屋根用板材等を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けて太陽電池ユニットとして太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルをハウスの屋根の上に設置して使用すればよい。また、基材として瓦を直接用いることもできる。本発明の太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、瓦の曲線に密着させることができるので好適である。
【0274】
1.2屋上
ビルの屋上に取り付けることもできる。基材上に薄膜太陽電池を設けた太陽電池ユニットを用意し、これをビルの屋上に設置することもできる。この時基材とともに防水シートを併用し、防水作用を有するのが望ましい。さらに、本発明の薄膜太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、平面ではない屋根、例えば折半屋根に密着させることもできる。この場合も防水シートを併用するのが望ましい。
【0275】
1.3トップライト
エントランスや吹き抜け部分に外装として本発明の薄膜太陽電池を用いることもできる。何らかのデザイン処理を施されたエントランス等は曲線が用いられている場合が多く、そのような場合において本発明の薄膜太陽電池の柔軟性が生かされる。またエントランス等ではシースルーである場合があり、このような場合には、有機太陽電池の緑色系の色合いが、環境対策が重要視される時代において意匠的な美観も得られるので好適である。
【0276】
1.4壁
基材として建材用板材を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けて太陽電池ユニットとして太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルを建物の外壁等に設置して使用すればよい。また、カーテンウオールに設置することもできる。その他、スパンドレルや方立等への取り付けも可能である。
【0277】
この場合、基材の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。このような基材の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)等が挙げられる。
1.5窓
また、シースルーの窓に使用することもできる。有機太陽電池の緑色系の色合いが、環境対策が重要視される時代において意匠的な美観も得られるので好適である。
【0278】
1.6その他
その他建築の外装としてひさし、ルーバー、手摺等にも使用できる。このような場合においても、本発明の薄膜太陽電池の柔軟性が、これら用途にとり好適である。
2.内装
本発明の薄膜太陽電池はブラインドのスラットに取り付けることもできる。本発明の薄膜太陽電池は軽量であり、柔軟性に富むことから、このような用途が可能となる。また、内容用窓についても有機太陽電池素子がシースルーである特性を生かし使用することができる。
【0279】
3.野菜工場
蛍光灯等の照明光を活用する植物工場の設置件数は増えているが、照明に掛かる電気代
や光源の交換費用等によって栽培コストを引き下げにくいというのが現状である。そこで本発明の薄膜太陽電池を野菜工場に設置し、LED又は蛍光灯と組み合わせた照明システムを作製することができる。
【0280】
このとき蛍光灯よりも寿命が長いLEDと本発明の太陽電池を組み合わせた照明システムを用いることで、照明に要するコストを現状に比べて30%程度減らせることができるので好適である。
また、野菜等を一定温度で輸送するリーファー・コンテナ (reefer container)の屋根や側壁に本発明の太陽電池を用いることもできる。
【0281】
4.道路資材・土木
本発明の薄膜太陽電池は、駐車場の外壁や高速道路の遮音壁や浄水場の外壁等にも用いることができる。
5.自動車
本発明の薄膜太陽電池は、自動車のボンネット、ルーフ、トランクリッド、ドア、フロントフェンダー、リアフェンダー、ピラー、バンパー又はバックミラー等の表面に用いることができる。なおルーフとしてはトラック車輌の荷台のルーフも含まれる。得られた電力は走行用モータ、モータ駆動用バッテリー、電装品及び電装品用バッテリーのいずれに供給することができる。太陽電池パネルにおける発電状況と該走行用モータ、該モータ駆動用バッテリー、該電装品及び該電装品用バッテリーにおける電力使用状況とに合わせて選択する制御手段とを備えることで、得られた電力が適正にかつ効率的に使用することができる
前記の場合、基材12の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材12の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。
【0282】
このような基材12の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)等が挙げられる。
【実施例】
【0283】
以下、本発明の実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[合成例1]
Dimethylbicyclopyrrole誘導体の製造
窒素雰囲気下、冷却器を備えた500mLの4ツ口フラスコにEthyl−4,7−dihydro−8,8−dimethyl−4,7−ethano−2Hisoindole−1−carboxylate 5.00g (20.4mmol)とあらかじめ乳鉢ですりつぶした水酸化ナトリウム6.25g(150mmol)をエチレングリコール150mLに溶解し、溶媒を脱気し窒素置換した。反応容器を遮光し、170℃、60分撹拌し、室温に冷却した。反応溶液を300mL氷水に投入し、クロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムを添加して乾燥した。粉体をろ過後、ろ液を減圧濃縮した。得られたオイルを昇華精製し、Dimethylbicyclopyrrole誘導体を2.54g(14.7mmol,72%)得た。
【0284】
得られた化合物がDimethylbicyclopyrrole誘導体であることを、1H NMRで確認した。1H NMRの結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz,CDCl3)δ7.46(brs,1H),6.54(m, 1H),6.48(m,1H),6.47(m,1H),6.41(m,1H),3.70(m, 1H), 3.22(d,1H,J.5.9Hz),1.41(dd,1H,J.11.5, 2.7Hz),1.24(dd,1H,J.11.5,2.7Hz),1.04(s,3H), and 0.72(s,3H).
【0285】
【化54】
【0286】
[合成例2]
ビシクロポルフィリン化合物異性体混合物(CP−1)の製造
実施例1で合成したDimethylbicyclopyrrole誘導体3.81g(22mmol)をクロロホルム(アミレン含有)400mLに溶解し、これに窒素雰囲気下で850mgのパラホルムアルデヒドを添加し、ついでp−トルエンスルホン酸一水和物200mgを添加し、室温で5時間撹拌した。続いてp−クロラニル2.17gを添加してさらに5時間撹拌した。反応液を水に注入し、有機層を分離して飽和炭酸水素ナトリウム溶液、水、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。粉体をろ過後、ろ液を減圧濃縮し、残渣をクロロホルム溶媒としてまずアルミナのカラムクロマトグラフィーで精製し、ついでシリカゲルクロマトグラフィーで酢酸エチル/クロロホルムで精製することで、目的の位置異性体から構成されるビシクロポルフィリン化合物の混合物が2.44g(3.30mmol,60%)得られた(以後、CP−1と表記する)。
【0287】
得られた化合物が目的のビシクロポルフィリン化合物の異性体混合物であることを、1HNMR、LC分析、MS分析によって確認した。以下に各種分析結果を示す。LC分析結果については表1に記す。質量分析(FAB−MS法)により、目的物の質量と一致するm/z:736[M]を検出した。
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ10.26−10.33(m,4H),7.11−7.26(m,8H),5.63(m,4H),5.12−5.16(m,4H),2.06−2.11(m,4H),1.75−1.88(m,4H),1.55−1.56(m, 12H),0.59−0.80(m,12H),and −4.63(brs,2H).
【0288】
【化55】
【0289】
[合成例3]
Tetrakis(bicyclo[2.2.2]octadiene)porphyr
in(CP−2)の製造
特開2003−304014の[0060]〜[0066]の記載を元に合成した。得られた化合物を化合物CP−2と記す。LC分析結果については表1に記す。質量分析(FAB−MS法)により、目的物の質量と一致するm/z:623[M+1]を検出した。
1H NMR (400MHz,CDCl3)δ10.40(m,4H),7.20(m,8H),5.81(m,8H),2.24(m,8H),and −4.80(brs,2H).
【0290】
【化56】
【0291】
LC分析結果
【0292】
【表1】
【0293】
[合成例4]
POPy2の合成例
【0294】
【化57】
【0295】
窒素雰囲気下、1−ブロモピレン(東京化成:14g、50mmol)を脱水THF(関東化学:200mL)に溶かし、―78℃に冷却した後、n−BuLi(関東化学:33mL、1.6M)をゆっくり滴下し、―78℃を保持したまま、30分撹拌した。つづ
いて、ジクロロフェニルホスフィン(東京化成:4.3g、9.0mmol)を滴下し、十分攪拌した後、室温まで昇温し、1.5時間撹拌した。得られた反応溶液にメタノール(純正化学)30mLを加え、得られた粗精製物をろ過し、ベンゼンを用いて再結晶することにより、10.7gの目的物を得た。ここで得られた化合物をTHF(純正化学)350mL、CHCl(関東化学)300mL、アセトン(関東化学)100mLに溶かし、過酸化水素水(和光純薬:30%溶液10mL)を加え、室温で30分撹拌した。反応溶液に水30mLを加え600mLまで濃縮後、ろ過することにより、目的物(POPy)を7.5g得た。
【0296】
[合成例5]
60(QM)(フラーレン化合物A)の合成
【0297】
【化58】
【0298】
窒素雰囲気下、500mL三口ナスフラスコ中、フラーレンC60(500mg、0.694mmol)、ヨウ化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAI;1.28g、3.47mmol、5当量)、トルエン(230mL)を入れた。減圧脱気後、α、α’−ジブロモ−o−キシレン(916mg、3.47mmol、5当量)を加えて加熱還流した。10時間後、室温に戻し、シリカゲルろ過カラム(トルエン)に供し、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(二硫化炭素:ヘキサン=1:2)に供した後、GPC精製(クロロホルム)を行うことにより、収率47%(304mg、0.328mmol)で目的物を得た。質量分析(APCI法、negative)により、目的物の質量と一致するm/z:928[M]を検出した。ガラス転移温度はDSC法において250℃以下では観測されなかった。
【0299】
[合成例6]
60(Ind)(フラーレン化合物B)の合成
【0300】
【化59】
【0301】
60(Ind)の合成は、特許文献(国際公開第2008/018931号)を参考にして行い、異性体混合物として取得した。GPC精製(クロロホルム)を行うことにより精製し、質量分析(APCI法、negative)により、目的物の質量と一致する
m/z:952[M]を検出した。ガラス転移温度はDSC法において200℃以下では観測されなかった。
【0302】
[合成例7]
C60(PCBM)(QM)(フラーレン化合物C)の合成
【0303】
【化60】
【0304】
窒素雰囲気下、500mL三口ナスフラスコ中、PCBM(1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル(6,6)−C60、フロンティアカーボン社製E100H、1.0g、1.098mmol)、ヨウ化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAI;2.03g、5.49mmol、5当量)、トルエン(200mL)を入れた。減圧脱気後、α、α’−ジブロモ−o−キシレン(1.45g、5.49mmol、5当量)を加えて加熱還流した。9時間後、室温に戻し、シリカゲルろ過カラム(トルエン)に供し、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)に供した後、GPC精製(クロロホルム)を行うことにより、収率49%(545mg、0.537mmol)で目的物(C60(PCBM)(QM))を得た。質量分析(APCI法、negative)により、目的物の質量と一致するm/z:1014[M]を検出した。ガラス転移温度はDSC法において200℃以下では観測されなかった。
【0305】
[合成例8]
C60(PCBM)(Ind)(フラーレン化合物D)の合成
【0306】
【化61】
【0307】
窒素雰囲気下、200mL三口ナスフラスコ中、PCBM(1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル(6,6)−C60、フロンティアカーボン社製E100H、300mg、0.329mmol)、インデン(0.46mL、3.95mmol)、o−ジクロロベンゼン(50mL)を入れ、減圧脱気後、21時間加熱還流した。溶媒を濃縮後、GPC精製(クロロホルム)を行うことにより、収率43%(145mg、0
.141mmol)で目的物(C60(PCBM)(Ind))を得た。質量分析(APCI法、positive)により、目的物の質量と一致するm/z:1026[M]を検出した。ガラス転移温度はDSC法において200℃以下では観測されなかった。
【0308】
[合成例9]
SIMEF(フラーレン化合物E)の合成
【0309】
【化62】
【0310】
フラーレン化合物Eの合成は、特許文献(国際公開第2009/008323号)に記載の方法で合成を行った。
[合成例10]
SIMEF2(フラーレン化合物F)の合成
【0311】
【化63】
【0312】
フラーレン化合物Fの合成は、以下のように行った。
[中間体1]
クロロメチル(2−メトキシフェニル)ジメチルシラン、(o−An)MeSiCHCl
【0313】
【化64】
【0314】
500−mL三口ナスフラスコに、窒素雰囲気下、臭化2−メトキシフェニルマグネシウムの1.0M THF溶液(100mL、0.1mol)を入れて室温で攪拌した。ここに、クロロメチルジメチルクロロシラン(11.25mL、0.085mol)をゆっくり滴下した。室温で1時間攪拌後、40℃で3時間攪拌した。室温に戻し、ゆっくりと水を加えた。酢酸エチルで抽出し、食塩水洗浄後、硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過し、減圧下濃縮した。得られた液体を減圧蒸留することにより、目的物(クロロメチル(2−メトキシフェニル)ジメチルシラン、(o−An)MeSiCHCl)を無色液体として収率52%(11.2g、0.0522mol)で得た。
【0315】
[中間体2]
1−(ジメチルフェニルシリルメチル)―1,9−ジヒドロ(C60−I)[5,6]フラーレン,C60(CHSiMePh)H
【0316】
【化65】
【0317】
窒素雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド (6.45mL、83.3mmol)、フラーレンC60(2.00g、2.78mmol)、1,2−ジクロロベンゼン溶液(500mL)を混合し、脱気した後、窒素で復圧した。ここに、(クロロメチル)ジメチルフェニルシランから調整したGrignard試薬(PhMeSiCHMgCl、9.80mL、0.850M、8.33mmol)のTHF溶液を25℃で加えた。10分間攪拌した後、脱気した飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0mL)を加え攪拌した。得られた溶液を濃縮した後、トルエン(200mL)に溶解させ、シリカゲルろ過カラムを通した後、濃縮した。メタノール(約100〜200mL)を加え、再沈させることにより茶色の固体を得た。得られた固体をHPLC(Buckyprep column,eluent:toluene/2−propanol=7/3)分取することにより、目的物である1−(ジメチルフェニルシリルメチル)―1,9−ジヒドロ(C60−I)[5,6]フラーレン(C60(CHSiMePh)H、1.99g、2.28mmol、82% isolated yield、analytically pure)を得た。
【0318】
[フラーレン化合物F(C60(CHSiMePh)[CHSiMe(o−An)])]
【0319】
【化66】
【0320】
窒素雰囲気下、中間体2の製造で得られた1−(ジメチルフェニルシリルメチル)―1,9−ジヒドロ(C60−I)[5,6]フラーレン(C60(CHSiMePh)H、1.02g、1.17mmol)のベンゾニトリル溶液を脱気した後、t−ブトキシカリウム (1.41mL、1.0M、1.41mmol)のTHF溶液を25℃で加えた。10分間攪拌した後、中間体1の製造で得られたクロロメチル(2−メトキシフェニル)ジメチルシラン((o−An)MeSiCHCl、5.03g、23.4mmol)とヨウ化カリウムを加え110℃で17時間攪拌した。得られた溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液1.0mLを加え、濃縮した。得られた粗生成物にトルエン(100mL)を加え、ろ過濃縮した後、メタノール(ca.50〜100mL)を加え、再沈を行った。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(eluent: CS/hexane = 1/1)精製に供し、続いてHPLC分取(Buckyprep
column,eluents:toluene/2−propanol=7/3)精製を行うことにより、目的物(0.810g、0.772mmol、66% isolated yield)を得た。
【0321】
[合成例11]
テトラベンゾポルフィリン(BP)の合成方法
合成例3で製造した化合物(CP−2)2.75gを窒素雰囲気下、三角フラスコの中にいれ、窒素雰囲気中のまま、280℃、3時間加熱した。色が完全に変化したことを確認した後、容器を室温まで戻し、褐色ガラスバイアル瓶に移し変えて、BP2.05g(収率90.9%)を得た。
【0322】
【化67】
【0323】
[実施例1]
フラーレン化合物A(C60(QM))を用いた塗布変換型有機薄膜太陽電池
ITO電極がパターニングされたガラス基板上に、正孔取り出し層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製 商品名「CLEVIOUSTM PVP AI4083」)をスピンコートにより塗布した後、当該基板を120℃のホットプレート上で大気中10分間、加熱処理を施した。その膜厚は約30nmであった。
【0324】
窒素雰囲気下で上記基板をまず180℃で3分間加熱処理してから、合成例2で製造した塗布変換型ビシクロポルフィリン化合物CP−1を0.5重量%含むトルエン溶液を、ろ過し、上記基板上に1500rpmでスピンコートすることにより塗布した。窒素雰囲気下で上記基板を180℃で20分間加熱処理することにより、正孔取り出し層の上に約
25nmのp型半導体テトランベンゾポルフィリン(BP)の層を形成した。
【0325】
合成例3で製造した塗布変換型ビシクロポルフィリン化合物CP−2を0.75重量%とフラーレン化合物Fを1.75重量%含むクロロホルム:クロロベンゼン=1:1(重量比)溶液を調製し、ろ過し、窒素雰囲気下で得られたろ液を1500rpmでスピンコートし、180℃で20分間加熱した。これによって、p型半導体の層上に約100nmのテトラベンゾポルフィリン(BP)と合成例10で製造したフラーレン化合物Fとを含む混合物層を形成した。
【0326】
次に、トルエンに合成例5で製造したフラーレン化合物Aを0.65重量%溶解した液を調し、ろ過し、窒素雰囲気下で得られたろ液を3000rpmでスピンコートし、120℃で5分間加熱処理を施した。これによって、混合物層のフラーレン化合物Fはフラーレン化合物Aによって置換され、テトラベンゾポルフィリン(BP)層上にフラーレン化合物Aの層を形成した。
【0327】
続いて、真空蒸着装置内に配置されたメタルボートに合成例4で合成したPOPy2を入れ、加熱して、膜厚6nmになるまで蒸着し、フラーレン化合物Aの層上にバッファ層を形成した。
更に、バッファ層の上に真空蒸着により厚さが80nmのアルミニウム電極を設けた後、この太陽電池を180℃のホットプレートで10分間、210℃のホットプレートで10分間、220℃のホットプレートで10分間、230℃のホットプレートで10分間、加熱することによって、光電変換素子を作製した。
【0328】
ガラス板を封止板として用いて封止した太陽電池に、ITO電極側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cmの強度の光を照射し、ソースメーター(ケイスレー社製、2400型)にて、ITO電極とアルミニウム電極と間における電流−電圧特性を測定した。その後、基板温度85℃に設定した英弘精機株式会社製屋内太陽電池耐久性試験装置ECL−350で光照射を一定の時間連続照射した。電流−電圧特性を測定する際は、一旦、ECL−350から取り出して、室温下で、電流−電圧特性(耐久性試験)を測定した。各時間の変換効率(%)ならびに初期を100%としたときの各時間の変換効率を耐久性(%)とし、表2に記載した。
【0329】
[実施例2]
フラーレン化合物Bを用いた塗布変換型有機薄膜太陽電池
実施例1において、フラーレン化合物Aの代わりに、合成例6で得られた化合物Bを用いた以外は、同様にして、太陽電池を作製し、耐久性試験を行った。各時間の変換効率(%)ならびに耐久性(%)を表2に記載した。
【0330】
[実施例3]
フラーレン化合物Cを用いた塗布変換型有機薄膜太陽電池
実施例1において、フラーレン化合物Aの代わりに、合成例7で得られたフラーレン化合物Cを用いた以外は、同様にして、太陽電池を作製し、耐久性試験を行った。各時間の変換効率(%)ならびに耐久性(%)を表2に記載した。
【0331】
[実施例4]
フラーレン化合物Dを用いた塗布変換型有機薄膜太陽電池
実施例1において、フラーレン化合物Aの代わりに、合成例8で得られたフラーレン化合物Dを用いた以外は、同様にして、太陽電池を作製し、耐久性試験を行った。各時間の変換効率(%)ならびに耐久性(%)を表2に記載した。
【0332】
[比較例1]
フラーレン化合物Cを用いた塗布変換型有機薄膜太陽電池
ITO電極がパターニングされたガラス基板上に、正孔取り出し層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製 商品名「CLEVIOUSTM PVP AI4083」)をスピンコートにより塗布した後、当該基板を120℃のホットプレート上で大気中10分間、加熱処理を施した。その膜厚は約30nmであった。
【0333】
メタルボートに合成例11で合成したテトラベンゾポルフィリン(BP)を入れ、上記基板上に真空蒸着し、その後、窒素雰囲気下で上記基板を180℃で20分間加熱処理することにより、正孔取り出し層の上に約25nmのp型半導体の層を形成した。
【0334】
【化68】
【0335】
【化69】
【0336】
クロロホルム/モノクロロベンゼンの1:1混合溶媒(重量)に、合成例3で得られた化合物CP−2を0.6重量%と合成例9で得られたフラーレン化合物Eを1.4重量%溶解した液を調製し、ろ過し、窒素雰囲気下で得られたろ液を1500rpmでスピンコートし、180℃で20分間加熱した。これによって、p型半導体の層上にテトラベンゾポルフィリン(BP)とフラーレン化合物Eを含む混合物層を形成した。
【0337】
次に、トルエンにフラーレン化合物Eを1.2重量%溶解した液を調整し、ろ過し、窒
素雰囲気下で得られたろ液を3000rpmでスピンコートし、120℃で5分間加熱処理を施した。これによって、混合物層上にフラーレン化合物Eの層を形成した。
その後、80nmの膜厚のアルミニウムを抵抗加熱型真空蒸着法により成膜させ、5mm角のバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池を作製した。ガラス板を封止板として用いて封止した太陽電池に4mm角のメタルマスクを付け、ITO電極側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cmの強度の光を照射し、ソースメーター(ケイスレー社製、2400型)にて、ITO電極とアルミニウム電極と間における電流−電圧特性を測定した。その後、基板温度85℃に設定した英弘精機株式会社製屋内太陽電池耐久性試験装置ECL−350で光照射を一定の時間連続照射した。電流−電圧特性を測定する際は、一旦、ECL−350から取り出して、室温下で、電流−電圧特性(耐久性試験)を測定した。各時間の変換効率(%)ならびに初期を100%としたときの各時間の変換効率を耐久性(%)とし、表2に記載した。
【0338】
[比較例2]
高分子型有機薄膜太陽電池
電子供与性分子構造を有するレジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT、Rieke Metals社製)及び合成例6で得られたフラーレン化合物Bを重量比1:0.8で、2.1重量%の濃度でo−ジクロロベンゼンに溶解させた。得られた溶液を、40℃で窒素雰囲気中、4時間スターラーで攪拌混合した。0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過し、光電変換層塗布液を作製した。
【0339】
155nmの厚みでインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を堆積したガラス基板を界面活性剤による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、120℃で大気中5分間加熱乾燥した。最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
この透明基板上に、0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで濾過したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製 商品名「CLEVIOUSTM PVP AI4083」)をスピンコートした後、120℃で大気中10分間加熱乾燥した。更に窒素雰囲気下で上記基板を180℃で3分間加熱処理を施した。その膜厚は60nmであった。
【0340】
窒素雰囲気下でガラス基板上に、前記光電変換層塗布液をスピンコートで塗布することにより、200nmの厚みの活性層を形成させた。窒素雰囲気中150℃で10分アニーリング処理を行った。その後、80nmの膜厚のアルミニウムを抵抗加熱型真空蒸着法により成膜させ、5mm角のバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池を作製した。
照射光源としてエアマス(AM)1.5、放射照度100mW/cmのソーラシミュレータを用い、ソースメーター(ケイスレー社製、2400型)により、作製した太陽電池の電流電圧特性を4mm角のメタルマスクを付けて測定した。耐久性試験は基板温度85℃に設定した英弘精機株式会社製屋内太陽電池耐久性試験装置ECL−350で擬似太陽光を22時間連続照射することにより評価した。各時間の変換効率(%)ならびに初期を100%としたときの各時間の変換効率を耐久性(%)とし、表2に記載した。
【0341】
【表2】
【0342】
以上より、実施例は比較例と比較して、有機太陽電池素子の光電変換効率及び耐久性が向上したことが判る。
【符号の説明】
【0343】
100 基板
101 アノード(透明電極)
102 正孔取り出し層
103 p型半導体化合物層
104 p型半導体化合物とn型半導体化合物の混合層
105 n型半導体化合物層
106 電子取り出し層
107 カソード(対向電極)
108 活性層
109 光電変換素子
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3、9 ガスバリアフィルム
4、8 ゲッター材フィルム
5、7 封止材
6 太陽電池素子
10 バックシート
11 シール材
12 基材
13 太陽電池モジュール
14 薄膜太陽電池
図2
図3
図1