(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、省電力モード時における消費電力を効果的に抑制しつつ、省電力モードから迅速に復帰することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、通信処理プログラムを保持する揮発性メモリに対する電源供給を停止することにより、省電力モード時における消費電力を抑制するとともに、省電力モード時におけるパケット受信時に、省電力モードから迅速に復帰することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明による画像形成装置は、動作モードとして、通常電力モード及び省電力モードを選択することができる画像形成装置において、通常電力モード時及び省電力モード時に給電され、通信ネットワークを介して1又は2以上のユーザ端末に接続された通信フロントエンド部と、通常電力モード時に給電される一方、省電力モード時に給電が停止又は抑制され、通常電力モード時に通信処理を行う通信バックエンド部とを備えている。
【0011】
上記通信バックエンド部は、通常電力モード時に通常プログラムを保持し、省電力モード時に給電が停止される第1揮発性メモリと、通常電力モード時に一時プログラムを保持し、省電力モード時に給電が停止される第2揮発性メモリと、上記通常プログラムを保持する第1不揮発性メモリと、通常電力モード時に第1揮発性メモリ内の上記通常プログラム及び第2揮発性メモリ内の上記一時プログラムのいずれかを実行するプロセッサとを有する。
【0012】
上記通信フロントエンド部は、上記通信ネットワークからの受信パケットを解析し、当該受信パケットの種別を判別するパケット解析部と、上記受信パケットの種別に基づいて、省電力モードから通常電力モードへの上記動作モードの切り替えの要否を判別するモード切替判別部とを有する。
【0013】
そして、
上記通常プログラム及び上記一時プログラムは、いずれも上記受信パケットの通信処理を行うためのプログラムであり、第1揮発性メモリは、省電力モードから通常電力モードへの切り替え後に、上記通常プログラムの書き込みが開始され、第2揮発性メモリは、省電力モードから通常電力モードへの切り替え後に、
2以上の上記一時プログラムのうち、当該切り替えの契機となった上記受信パケットの種別に対応づけられた上記一時プログラムの書き込みが開始され、
上記2以上の一時プログラムは、いずれも上記通常プログラムよりも小さく、互いに異なるパケットの種別に予め対応づけられ、上記通常プログラムは、上記パケットの種別の全てに対応づけられ、上記プロセッサは、省電力モードから通常
電力モードへの切り替え後であって、上記通常プログラムの書込終了前に、上記一時プログラムの実行を開始し、上記通常プログラムの書込終了後に、上記通常プログラムの実行を開始する。
【0014】
この様な構成により、省電力モード時において、通信フロントエンド部への給電を行う一方、通信バックエンド部への給電を停止又は抑制することにより、パケットを受信しつつ、消費電力を抑制することができる。
【0015】
しかも、省電力モード時に通信バックエンド部による通信処理が必要なパケットを受信した場合に、動作モードを通常電力モードへ切り替え、一時プログラムを第2揮発性メモリへ書き込んだ後に一時プログラムの実行を開始する。このため、パケットを受信してから通信処理を開始するまでの時間を短くすることができる。
【0016】
具体的には、省電力モード時にパケットを受信した場合、モード切替判別部が、当該受信パケットの種別に基づいて、動作モードの切り替えの要否を判別する。通信バックエンド部による通信処理が必要であれば、動作モードが通常電力モードに切り替えられ、通信バックエンド部において、通常プログラムの第1揮発性メモリへの書き込みと、一時プログラムの第2揮発性メモリへの書き込みとが、それぞれ開始される。一時プログラムは、受信パケットに対応づけられたプログラムであり、通常プログラムよりもサイズが小さいことから、一時プログラムの書き込みは、通常プログラムの書き込みよりも先に終了する。このため、プロセッサは、動作モードの切り替え後に、まず一時プログラムの実行を開始し、その後に通常プログラムの書き込みが終了すれば、通常プログラムの実行を開始する。
【0017】
従って、省電力モード時に通信バックエンド部による通信処理が必要なパケットを受信した場合に、動作モードを通常電力モードへ切り替え、さらに通常プログラムを第1揮発性メモリへ転送し、当該転送が終了した後に通信処理を開始する場合に比べて、パケットを受信してから、通信バックエンド部において通信処理が開始されるまでの時間を短くすることができる。
【0018】
第2の本発明による画像形成装置は、上記構成に加えて、上記一時プログラムを保持する第2不揮発性メモリと、上記一時プログラムを第2不揮発性メモリから読み出し、第2揮発性メモリに書き込む一時プログラム書込部とを備えて構成される。
【0019】
この様な構成により、不揮発性メモリから第2揮発性メモリへ一時プログラムを高速に転送することができるので、省電力モード時にパケットを受信してから、通信バックエンド部において通信処理が開始されるまでの時間を短くすることができる。
【0020】
第3の本発明による画像形成装置は、上記構成に加えて、上記一時プログラムを上記ユーザ端末に要求し、当該要求への応答として上記一時プログラムを上記ユーザ端末から受信するプログラム取得部を備え、上記プログラム取得部が受信した上記一時プログラムが第2揮発性メモリに書き込まれるように構成される。
【0021】
この様な構成により、不揮発性メモリ内に一時プログラムを保持する必要がないことから、画像形成装置内における不揮発性メモリの記憶容量を低減し、コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、省電力モード時における消費電力を効果的に抑制しつつ、省電力モードから迅速に復帰する画像形成装置を提供することができる。
【0026】
また、本発明によれば、通信処理プログラムを保持する揮発性メモリに対する電源供給を停止することにより、省電力モード時における消費電力を抑制するとともに、省電力モード時におけるパケット受信時に、省電力モードから迅速に復帰する画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の実施の形態による画像形成装置1を含むネットワーク通信システムの一構成例を示した図である。画像形成装置1は、プリンタ、スキャナ、コピー、ファクシミリ通信などの機能を有する複合機(MFP:Multifunction peripheral)であり、通信ネットワーク3a,3bに接続されている。
【0029】
通信ネットワーク3aは、他のファクシミリ通信装置(不図示)と接続するための公衆交換電話網(PSTN)である。通信ネットワーク3bは、パケット通信を行うためのイーサネット通信網(イーサネットは登録商標)であり、ここでは、画像形成装置1と、1又は2以上のユーザ端末2とが接続されたLAN(Local Area Network)であるものとする。
【0030】
ユーザ端末2は、画像形成装置1に対し、印刷処理やファクシミリ送信などを要求するためのPC(Personal Computer)であり、画像形成装置1と通信するための専用プログラム、いわゆるデバイスドライバが予めインストールされている。このデバイスドライバは、ユーザ端末2の常駐プログラムであり、画像形成装置1に対し要求を行うだけでなく、画像形成装置1からの要求に応答することもできる。
【0031】
画像形成装置1は、原稿紙の画像を光学的に読み取る原稿読取部10と、記録紙に画像を形成する印刷部11、ユーザインターフェースとしての操作入力部12及び表示部13と、ファクシミリ通信を行うFAX通信部14と、動作モードを制御するためのモード制御部15と、通信ネットワーク3bを介してパケット通信を行うネットワーク通信部16とを備えている。
【0032】
モード制御部15は、画像形成装置1の動作モードとして、消費電力の互いに異なる通常電力モード及び省電力モードを切り替え、各構成ブロック10〜16への電源供給を制御している。省電力モードは、外部入力を受け付けるために必要な操作入力部12、FAX通信部14及びネットワーク通信部16の一部を除いて、画像形成装置1内の各構成ブロック10〜16への電源供給を遮断し、通常電力モードよりも消費電力を抑制した動作モードである。画像形成装置1に主電源を投入した直後の動作モードは、通常電力モードであるが、通常電力モード時において、外部入力のない期間が一定時間を越えて継続すれば、動作モードが省電力モードへ切り替えられる。また、省電力モード時に、通常モードへの切り替えが必要となる外部入力があれば、動作モードが通常電力モードへ切り替えられる。
【0033】
なお、本実施の形態では、便宜上、画像形成装置1の動作モードとして、通常電力モード及び省電力モードを切り替える場合について説明するが、画像形成装置1の動作モードは、通常電力モード及び省電力モードを含んでいればよく、モード制御部15が3以上の動作モードを切り替えるものであってもよいことは言うまでもない。
【0034】
図2は、
図1のネットワーク通信部の詳細構成例を示したブロック図である。このネットワーク通信部16は、通信フロントエンド部16F及び通信バックエンド部16Bからなる。通信フロントエンド部16Fは、通信ネットワーク3bに接続され、通常電力モード時のみならず省電力モード時にも電源が供給されている。一方、通信バックエンド部16Bは、通信フロントエンド部16Fによる通信処理を制御しており、通常電力モード時には電源が供給されるが、省電力モード時には電源供給が停止される。
【0035】
<通信バックエンド部>
通信バックエンド部16Bは、通信制御部20、通常プログラムROM21、通常プログラムロード部22、通常プログラムRAM23、一時プログラムROM24、一時プログラムロード部25及び一時プログラムRAM26からなる。
【0036】
通信制御部20は、通信ネットワーク3bを介して、パケット通信を行うプロセッサである。この通信制御部20は、通常プログラム又は一時プログラムのいずれを実行することもできるが、一時プログラムよりも通常プログラムを優先的に実行する。一時プログラムは、通常プログラムよりもデータサイズが小さいため、通常プログラムのロードと、一時プログラムのロードとを同時に開始すれば、一時プログラムのロードが先に完了する。このため、通信制御部20は、一時プログラムのロード完了後であって、通常プログラムのロード完了前であれば、まず一時プログラムを実行し、その後、通常プログラムのロードが完了すれば、通常プログラムの実行を開始する。
【0037】
通常プログラムは、通信制御部20が実行可能な全ての機能が記述されたプログラムであるのに対し、一時プログラムは、通常プログラムの一部の機能のみが記述されたプログラム、例えば、機能別のプログラムである。ここでは、通常プログラムが、LPD(Line Printer Daemon Protocol)、TCP/IPのポート9100及びHTTPD(Hyper Text Transfer Protocol Daemon)の各通信プロトコルについて通信処理を行うことができるのに対し、一時プログラムは、LPD専用、TCP/IPのポート9100専用又はHTTPD専用のプログラムである。このため、通常プログラムを用いる場合には、上記パケット種別の全てについて通信処理を行うことができるのに対し、一時プログラムを用いる場合には、上記パケット種別のうち、特定のパケット種別についてのみ通信処理を行うことができる。
【0038】
通常プログラムROM21は、通常プログラムを保持するための不揮発性メモリであり、例えば、CF(Compact Flash)などの書き換え可能なEEPROMが用いられている。通常プログラムRAM23は、通常プログラムを保持するための揮発性メモリであり、例えばDRAMやSRAMが用いられている。
【0039】
通常プログラムロード部22は、通常プログラムROM21から通常プログラムRAM23へ通常プログラムをロードする。つまり、通常プログラムが通常プログラムROM21から読み出され、通常プログラムRAM23へ書き込まれる。通常プログラムのロードは、通信バックエンド部16Bへの電源供給の開始時、つまり、画像形成装置1に主電源が投入された場合や、省電力モードの解除時に行われる。受信パケットに起因して、省電力モードが解除され、画像形成装置1の動作モードが通常電力モードへ切り替えられることは、モード切替制御部32からの切替信号に基づいて判別することができる。
【0040】
一時プログラムROM24は、一時プログラムを保持するための不揮発性メモリであり、例えば、CFなどの書き換え可能なEEPROMが用いられている。一時プログラムROM24内には、2以上の一時プログラムが保持されており、これらの一時プログラムは、互いに異なるパケット種別に応じた通信制御に用いられる。
【0041】
一時プログラムRAM26は、一時プログラムを保持するための揮発性メモリであり、例えばDRAMやSRAMが用いられている。一時プログラムRAM26には、一時プログラムROM24内の任意の一時プログラムをロードすることができる。
【0042】
一時プログラムロード部25は、一時プログラムROM24から一時プログラムRAM26へ通常プログラムをロードする。つまり、一時プログラムが一時プログラムROM24から読み出され、一時プログラムRAM26へ書き込まれる。一時プログラムのロードは、モード切替制御部32からの切替信号に基づいて、省電力モードの解除時に行われる。
【0043】
一般に、揮発性メモリは、データの読出速度が不揮発性メモリよりも早いことから、プロセッサは、揮発性メモリからプログラムコードを順にフェッチして動作する。しかしながら、揮発性メモリは、電源供給の停止によりデータが消失するため、電源供給の開始後に、不揮発性メモリから揮発性メモリへプログラムをロードする必要がある。このため、画像形成装置1に対し主電源が投入され、通信バックエンド部16Bへの電源供給が開始された場合、通常プログラムロード部22が、通常プログラムROM21から通常プログラムRAM23へ通常プログラムをロードしている。
【0044】
さらに、受信パケットに起因して省電力モードが解除され、通信バックエンド部16Bへの電源供給が再開された場合にも、通常プログラムロード部22が、通常プログラムROM21から通常プログラムRAM23へ通常プログラムをロードする。このとき、一時プログラムロード部25も、一時プログラムROM24から一時プログラムRAM26へ一時プログラムをロードする。一時プログラムは、通常プログラムよりもデータサイズが小さいため、一時プログラムのロードは、通常プログラムのロードよりも先に完了する。このため、通信制御部20は、通常プログラムのロード完了前に、一時プログラムに基づいて通信制御を開始することができる。従って、受信パケットに基づいて省電力モードを解除し、通信処理を開始する場合、一時プログラムロード部25が、上記受信パケットのパケット種別に応じた一時プログラムをロードすれば、通常プログラムのロード完了を待つことなく、一時プログラムに基づいて、短い時間で通信処理を開始することができる。
【0045】
<通信フロントエンド部>
通信フロントエンド部16Fは、プロセッサ30、PCアライブリスト記憶部35及び信号送受信部36からなる。プロセッサ30は、通信フロントエンド部16F内の揮発性メモリ(不図示)が保持しているプログラムを実行している。このプログラムは、画像形成装置1への主電源の投入直後に、通信バックエンド部16B内の不揮発性メモリ(不図示)からロードされる。このプロセッサ30は、通信バックエンド部16Bのプロセッサ(通信制御部20)に比べて、消費電力が小さく演算速度が遅い演算手段であり、パケット解析部31、モード切替制御部32、プログラム取得部33及びプログラム配信部34として機能する。
【0046】
信号送受信部36は、電気信号の送受信を行うPHY(Physical)回路と、データフレームの制御を行うMAC(Media Access Control)回路とを備えた通信コントローラであり、データの送受信を行っている。
【0047】
パケット解析部31は、省電力モード時に、通信ネットワーク3bを介して受信したパケットの内容を解析している。その結果、受信パケットが処理負荷の軽いパケット種別であった場合、自ら応答パケットを生成する。例えば、受信パケットが、ARP(Address Resolution Protocol)、ICMP(Internet Control Message Protocol)、SNMP(Simple Network Management Protocol)のパケットであった場合、パケット解析部31が応答パケットを生成する。これらの応答パケットは、信号送受信部36を介して通信ネットワーク3bへ送信される。
【0048】
モード切替制御部32は、パケット解析部31の解析結果に基づいて、モード切替信号を生成する。受信パケットが処理負荷の重いパケット種別であった場合、通信フロントエンド部16Fにおいて処理することができないことから、省電力モードから復帰し、通信バックエンド部16Bにより処理する必要がある。このため、モード切替制御部32が、上記解析結果に基づいて、省電力モードを通常電力モードへ切り替えるためのモード切替信号を生成する。モード制御部15は、このモード切替信号に基づいて、画像形成装置1の動作モードを切り替える。また、通常プログラムロード部22も、モード切替信号に基づいて、通常プログラムのロードを開始する。
【0049】
プログラム取得部33は、省電力モードが解除され、画像形成装置1の動作モードが通常電力モードへ切り替わる場合に、通信ネットワーク3bを介して、ユーザ端末2から一時プログラムを取得し、一時プログラムRAM26へ書き込む。つまり、省電力モードの解除時に、ユーザ端末2から一時プログラムRAM26へ一時プログラムをロードする。
【0050】
具体的には、モード切替制御部32からのモード切替信号に基づいて、プログラム取得部33が、PCアライブリストに示されているユーザ端末2に対し一時プログラムを要求する。当該要求において指定される一時プログラムは、パケット解析部31の解析結果に応じた一時プログラム、すなわち、省電力モードが解除される契機となった受信パケットのパケット種別に対応する一時プログラムである。上記要求を受信したユーザ端末2では、デバイスドライバが、当該要求により指定された一時プログラムを要求元の画像形成装置1へ送信する。このようにしてユーザ端末2から送信された一時プログラムは、プログラム取得部33により、一時プログラムRAM26に書き込まれる。
【0051】
ただし、ユーザ端末2から一時プログラムを取得できない場合、プログラム取得部33は、一時プログラムロード部25に対し、一時プログラムROM24からの一時プログラムのロード命令を出力する。このロード命令は、ロードすべき一時プログラムとして、解析結果に応じた一時プログラムが指定されている。例えば、通信ネットワーク3b上に通信可能なユーザ端末2が存在していない場合や、存在しているユーザ端末2へ一時プログラムがまだ配信されていない場合、一時プログラムロード部25へのロード命令が出力される。
【0052】
プログラム配信部34は、動作モードが通常電力モードから省電力モードへ切り替わる際、一時プログラムROM24内の全ての一時プログラムをユーザ端末2へ配信する。省電力モードへの移行前に、全ての一時プログラムをユーザ端末2へ配信しておくことにより、その後に省電力モードから復帰した場合に、プログラム取得部33が、任意の一時プログラムをユーザ端末2から取得することができる。
【0053】
一時プログラムの配信は、通信ネットワーク3bを介して、画像形成装置1と通信可能な1又は2以上のユーザ端末2を検出し、これらのユーザ端末2へ一時プログラムを転送することによって行われる。ユーザ端末2では、デバイスドライバが、画像形成装置1から配信された一時プログラムを受信し、管理する。また、プログラム配信部34は、PCアライブリストの生成及び更新を行っている。
【0054】
PCアライブリスト記憶部35は、PCアライブリストを記憶する記憶手段である。PCアライブリストは、画像形成装置1と通信可能な1又は2以上のユーザ端末2を示すデータリストである。ここでは、通信可能なユーザ端末2の識別情報が、当該ユーザ端末2に対する一時プログラムの配信状況とともにPCアライブリストとして保持されている。
【0055】
図3は、
図2のPCアライブリスト記憶部35内に保持されているPCアライブリストの一例を示した図である。図中の各行は、画像形成装置1と通信可能なユーザ端末2に対応づけられており、IPアドレスと、ホスト名と、プログラム配信状態とからなる。IPアドレス及びホスト名は、ユーザ端末2を識別するための識別情報である。プログラム配信状態は、画像形成装置1から一時プログラムが配信されているか否かを示すデータである。つまり、PCアライブリストに基づいて、一時プログラムを取得することができるユーザ端末2と、一時プログラムを配信する必要があるユーザ端末とを知ることができる。
【0056】
図4のステップS101〜S104は、主電源の投入時における通信バックエンド部16Bの動作の一例を示したフローチャートである。画像形成装置1の主電源を投入した場合、まず、通信バックエンド部16B内のプロセッサ、不揮発性メモリ及び揮発性メモリの初期化処理が行われる(ステップS101)。この初期化処理が終了すれば、通常プログラムロード部22が、通常プログラムROM21から通常プログラムRAM23へ通常プログラムをロードし、通信制御部20が当該プログラムの実行を開始する(ステップS102)。
【0057】
次に、通信フロントエンド部16F用のプログラムを転送する(ステップS103)。通信フロントエンド部16F用のプログラムは、通信バックエンド部16B内の不揮発性メモリ(不図示)に保持されており、当該不揮発性メモリから読み出されたプログラムが、通信フロントエンド部16Fへ転送される。
【0058】
通信フロントエンド部16Fへのプログラム転送の終了後に、通信フロントエンド部16Fへデバイス情報を転送する(ステップS104)。例えば、MACアドレス及びIPアドレスがデバイス情報として送信される。
【0059】
図5のステップS201〜S204は、主電源の投入時における通信フロントエンド部16Fの動作の一例を示したフローチャートである。画像形成装置1の主電源を投入した場合、まず、通信フロントエンド部16F内のプロセッサ、不揮発性メモリ及び揮発性メモリの初期化処理が行われる(ステップS201)。この初期化処理の終了後に、プログラムをロードし、当該プログラムの実行を開始する(ステップS202)。つまり、
図4のステップS103において通信バックエンド部16Bから転送されたプログラムが、通信フロントエンド部16F内の揮発性メモリ(不図示)に書き込まれ、この書き込み終了後に、プロセッサ30が当該プログラムの実行を開始する。
【0060】
次に、信号送受信部36に対しデバイス情報が設定される(ステップS203)。このデバイス情報は、
図4のステップS104において通信バックエンド部16Bから転送されたMACアドレス及びIPアドレスであり、信号送受信部36内のMAC回路及びPHY回路にそれぞれ書き込まれる。デバイス情報の設定が終了すれば、PCアライブリストが作成され、PCアライブリスト記憶部35に格納される(ステップS204)。
【0061】
図6のステップS301〜S304は、PCアライブリストの作成処理の一例を示したフローチャートであり、画像形成装置1の主電源投入時に実行される。まず、PCアライブリスト記憶部35内のPCアライブリストが初期化され、全ての登録情報がクリアされる(ステップS301)。次に、プログラム配信部34が、通信ネットワーク3b上の任意のユーザ端末2に対し、確認パケットを送信する(ステップS302)。例えば、UDP/IPパケットを送信することによって、全てのユーザ端末2に対し、確認パケットをブロードキャストすることができる。
【0062】
その後、ユーザ端末2からアライブ通知が送信される(ステップS303)。アライブ通知は、確認パケットを受信したユーザ端末2からの応答パケットであり、当該ユーザ端末2の識別情報としてIPアドレス及びホスト名が含まれている。これらの識別情報は、プログラム配信部34によって、PCアライブリストに追加される(ステップS304)。ステップS303,S304の処理は、確認パケットの送信から一定時間T1が経過するまで繰り返され、一定時間T1の経過後に、PCアライブリストの作成処理を終了する(ステップS305)。
【0063】
図7のステップS401〜S405は、
図2のプログラム配信部34による一時プログラムの配信処理の一例を示したフローチャートである。このプログラム配信処理は、通常電力モードから省電力モードへの移行直前に実行される。また、通常電力モードのままであっても一定時間T2ごとに定期的に実行される。
【0064】
まず、PCアライブリスト記憶部35内のPCアライブリストが更新される(ステップS401)。更新されたPCアライブリスト内に、一時プログラムが未配信のユーザ端末2がなければ、プログラム配信処理を終了する(ステップS402)。一方、未配信のユーザ端末2があれば、当該ユーザ端末2に対し、一時プログラムを配信する(ステップS403)。一時プログラムの配信は、一時プログラムROM24から一時プログラムを読み出し、通信ネットワーク3bを介して、ユーザ端末2へ送信することにより行われる。
【0065】
ステップS403の一時プログラムの送信は、未配信のユーザ端末2の全てに対する送信が完了するまで繰り返される(ステップS404)。このようにして、未配信の全てのユーザ端末2に対し、1つの一時プログラムが配信される。一時プログラムROM24内に2以上の一時プログラムが格納されている場合には、他の一時プログラムについても、ステップS403,S404の処理が繰り返される(ステップS405)。つまり、未配信のユーザ端末2の全てに対し、一時プログラムROM24内の一時プログラムの全てが配信される。
【0066】
このプログラム配信処理では、PCアライブリストを更新し、PCアライブリストに登録されている未配信のユーザ端末2のみに対し、一時プログラムを送信する。このため、プログラム配信先として活用できるユーザ端末2に対し、漏れなくプログラムを配信することができる。また、未配信のユーザ端末2のみに対し、プログラムを送信することにより、効率的にプログラムを配信することができる。さらに、通常電力モード時に一定時間T2ごとにプログラム配信処理を実行することにより、省電力モードへの移行時における処理負荷を軽減することができる。
【0067】
図8のステップS501〜S507は、
図2のプログラム配信部34によるPCアライブリストの更新処理の一例を示したフローチャートである。このプログラム更新処理は、
図7のプログラム配信処理のステップS401として実行される。また、省電力モード時に一定時間T2ごとに定期的に実行される。
【0068】
まず、プログラム配信部34が、通信ネットワーク3b上の任意のユーザ端末2に対し、確認パケットを送信する(ステップS501)。その後、PCアライブリストに含まれていないユーザ端末2からのアライブ通知を受信した場合、当該ユーザ端末2をPCアライブリストに追加する(ステップS502,S503)。ステップS502及びS503の処理は、確認パケットの送信から一定時間T1が経過するまで繰り返される(ステップS504)。
【0069】
次に、上記一定時間T1の期間中に、PCアライブリストに含まれているユーザ端末2からアライブ通知を受信したか否かが判別される(ステップS505)。その結果、PCアライブリスト内のユーザ端末2からアライブ通知を受け取っていなかった場合、当該ユーザ端末2をPCアライブリストから削除する(ステップS506)。ステップS505及びS506の処理が、PCアライブリスト内の全てのユーザ端末2について行われれば、PCアライブリストの更新処理を終了する(ステップS507)。
【0070】
このPCアライブリストの更新処理は、プログラム配信を行うことができない省電力モード時であっても一定時間T2ごとに実行される。このため、ユーザ端末2の状態について最新の情報を保持しておくことができ、省電力モードから通常電力モードへの切り替え時に、ユーザ端末2からのプログラム取得を迅速に行うことができる。
【0071】
図9及び
図10のステップS601〜S611は、通信フロントエンド部16Fによるパケット受信処理の一例を示したフローチャートであり、省電力モード時に、通信ネットワーク3bを介して、パケットを受信した場合に実行される。
【0072】
受信パケットは、パケット解析部31によって解析され、パケット種別が判別される(ステップS601)。受信パケットが、ARP、ICMP及びSNMPのパケットであれば、パケット解析部31によって応答パケットが生成され、信号送受信部36を介して通信ネットワーク3bへ送信される(ステップS602)。つまり、受信パケットが処理負荷の軽いパケット種別であった場合、通信フロントエンド部16Fのみで通信制御が行われる。このため、当該パケットの受信処理を行うために、動作モードを切り替えて、通信バックエンド部16Bへの電源供給を再開する必要はない。
【0073】
一方、受信パケットが、ARP、ICMP及びSNMPのパケットのいずれでもない場合、通信バックエンド部16Bに対する電源供給が再開され、当該パケットの受信処理が、通信バックエンド部16Bによって行われる。
【0074】
まず、ステップS601の解析結果に基づいて、モード切替制御部32が、動作モードを通常電力モードへ切り替えるためのモード切替信号を生成する(ステップS603)。このモード切替信号に基づいて、プログラム取得部33が、PCアライブリストを読み出し、一時プログラムを配信済みのユーザ端末2を判別する(ステップS604)。
【0075】
PCアライブリスト内にプログラム配信済みのユーザ端末2がある場合、プログラム取得部33が、当該ユーザ端末2から一時プログラムを取得し、通信バックエンド部16Bへ転送する(ステップS605,S606)。一時プログラムの取得は、ユーザ端末2へ一時プログラムの要求パケットを送信し、当該要求パケットへの応答として、一時プログラムを受信することによって行われる。また、ユーザ端末2から受信した一時プログラムは、通信バックエンド部16Bへ転送され、一時プログラムRAM26に書き込まれる。つまり、一時プログラムが、通信ネットワーク3bを介して、ユーザ端末2から一時プログラムRAM26へロードされる。
【0076】
一方、ステップS604において、PCアライブリスト内にプログラム配信済みのユーザ端末2がなかった場合、プログラム取得部33は、ロード命令を出力する(ステップS607)。通信バックエンド部16B内では、このロード命令に基づいて、一時プログラムが、一時プログラムROM24から一時プログラムRAM26へロードされる。
【0077】
ステップS605〜607において、一時プログラムRAM26へ一時プログラムがロードされることにより、通信バックエンド部16Bにおいて、受信パケットの処理を行うことができるようになる。このため、信号送受信部36から通信バックエンド部16Bへ受信パケットが送信される(ステップS608)。通信制御部20は、この受信パケットに基づいて応答パケットを生成し、当該応答パケットが、信号送受信部36により通信ネットワーク3bへ送出される(ステップS609)。ステップS608及びS609の処理は、一連のパケット送受信からなるセッションが終了するまで繰り返される(ステップS610)。
【0078】
上記セッション終了後に、通常プログラムRAM23に対する通常プログラムのロードが完了しているか否かが判別される(ステップS611)。通常プログラムのロードが完了していれば、当該パケット受信処理を終了し、通常プログラムに基づく通信処理が開始される。通常プログラムに基づく通信処理では、信号送受信部36を介して、通信制御部20及び通信ネットワーク3b間でパケットのやりとりが行われる。一方、通常プログラムのロードが完了していなければ、ステップS601に戻り、同様の処理が繰り返される。
【0079】
図11のステップS701〜S707は、通信バックエンド部16Bによるパケット受信処理の一例を示したフローチャートであり、
図9のステップS603において、モード切替信号が出力された場合に実行される。つまり、省電力モード時において、通信ネットワーク3bを介して、通信フロントエンド部16F内では処理できないパケットを受信した場合に実行される。
【0080】
プログラム取得部33からロード命令が出力された場合、当該ロード命令に基づいて、一時プログラムロード部25による一時プログラムのロードが開始される(ステップS701,S702)。つまり、一時プログラムROM24から一時プログラムRAM26への一時プログラムの書き込みが開始される。このとき、書き込まれる一時プログラムは、ロード命令によって指定されている。
【0081】
次に、通常プログラムロード部22が、通常プログラムROM21から通常プログラムRAM23への通常プログラムのロードを開始する(ステップS703)。つまり、一時プログラム及び通常プログラムのロードが並行して行われる。一般に、パケット種別に応じた一時プログラムは、任意のパケット種別に対応している通常プログラムに比べて、データサイズが小さく、一時プログラムのロードの方が、通常プログラムのロードよりも先に完了する。
【0082】
通信制御部20は、一時プログラムのロードが完了すれば、当該一時プログラムに基づくパケット受信処理を開始する(ステップS704〜S707)。つまり、通常プログラムのロード完了を判別し(ステップS704)、通常プログラムのロードが完了していなければ、更に一時プログラムのロード完了を判別する(ステップS705)。その結果、一時プログラムのロード完了後であって、通常プログラムのロード完了前であれば、一時プログラムに基づいて、受信パケットを解析し、応答パケットを生成する(ステップS706,S707)。このため、パケット受信を契機として省電力モードから復帰する場合に、通常プログラムのロード完了を待つことなく、当該パケットの受信処理を開始することができる。その後、通常プログラムのロードが完了すれば、当該パケット受信処理を終了し、通常プログラムに基づくパケット受信処理を開始する。
【0083】
なお、上記実施の形態では、パケット受信を契機として省電力モードを解除し、一時プログラムRAM26へ一時プログラムをロードする場合に、ユーザ端末2から一時プログラムを取得できれば、当該一時プログラムをロードする一方、ユーザ端末2から取得できなければ、一時プログラムROM24からロードする例について説明したが、本発明は、この様な場合のみには限定されない。
【0084】
例えば、通信フロントエンド部16Fが、プログラム取得部33、プログラム配信部34及びPCアライブリスト記憶部35を備えることなく構成され、パケット受信を契機として省電力モードを解除する場合に、常に、一時プログラムROM24から一時プログラムRAM26へ一時プログラムをロードするように構成することができる。つまり、一時プログラムロード部25が、モード切替信号に基づいて、一時プログラムのロードを開始する。この場合、一時プログラムを提供できるユーザ端末2が通常ネットワーク3b上に存在していなくても、一時プログラムをロードすることができる。
【0085】
また、一時プログラムROM24、一時プログラムロード部25、プログラム配信部34及びPCアライブリスト記憶部35を備えることなく構成され、通信フロントエンド部が、パケット受信を契機として省電力モードを解除する場合に、ユーザ端末2から一時プログラムRAM26を取得できなければ、一時プログラムを実行することなく、通常プログラムの実行を開始するように構成することができる。この場合、ユーザ端末2に対し一時プログラムを予め格納しておけば、通信バックエンド部16B内の不揮発性メモリの容量を削減し、コストを低減することができる。