(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱シリンダの先端には、その内周面が第2供給通路の外周面となる貫通孔を有し、かつ成形時においては前記金型のうちの前記射出機構側の上型と位置決めされた状態で接触するダイが取り付けられると共に、
該ダイにおける貫通孔内に、前記スクリュの先端とは離れた状態で配置される前記コアが配置されており、
前記金型が閉じた状態においては、前記コアは自重により前記金型のうちの下型に接し、かつ前記ダイにおける貫通孔の内周面とは離れることで第2供給通路を形成し、
前記金型が開いた状態では、前記コアは前記ダイにおける貫通孔の内周面の一部に係合された状態となり、前記下型から離れるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
【背景技術】
【0002】
環状の成形品を成形する射出成形装置としては、様々なタイプのものが知られている。
図5〜
図7を参照して、代表的な3タイプの射出成形装置について簡単に説明する。なお、いずれも成形品が円環形状(断面形状は矩形)である場合を例にして説明する。
【0003】
(従来例1)
図5は従来例1に係る射出成形装置300における成形材料の通路構成について上側から見た場合を示したものである。この従来例1はサイドゲートタイプの装置の場合であり、円環形状のキャビティ301の側面にゲート302が設けられ、かつゲート302とは反対側の側面にエアーベント303が設けられている。このように構成された射出成形装置300においては、ゲート302から送られた成形材料はキャビティ301において2方向に分かれるように供給される(図中矢印参照)。そして、キャビティ301におけるゲート302の反対側で成形材料が合流し、エアーベント303に送り出される。これにより、キャビティ301内に空気が溜まってしまうことなく成形品が成形される。この射出成形装置300の場合、見かけ上のウェルドラインはないものの、実際にはヒケ状の凹みが発生してしまうため、高機能が要求される製品には適用できない。
【0004】
(従来例2)
図6は従来例2に係る射出成形装置400における成形材料の通路構成について、上側から見た場合(同図(a))と、側面側から断面的に見た場合(同図(b))とを示したものである。この従来例2の場合、第1通路402から分岐する複数の第2通路403が設けられており、射出ノズルから第1通路402を通って送られてきた成形材料は、複数の第2通路403によって分岐されて、それぞれキャビティ401に送られる。この従来例2の場合、ヒケの発生を抑制し、材料の歩留まりが有利で、バリの処理が不要となる利点がある。しかしながら、キャビティ401内において、複数の箇所で成形材料が合流する部位ができ、複数のウェルドラインが形成されてしまう。このタイプの従来例としては、特許文献1に開示されたものがある。
【0005】
(従来例3)
図7は従来例3に係る射出成形装置500における成形材料の通路構成について、上側から見た場合(同図(a))と、側面側から断面的に見た場合(同図(b))とを示したものである。この従来例3の場合、円環形状のキャビティ501の中心にスプル502を設け、スプル502から薄肉円板形状のランナー503によってキャビティ501に成形材料を送り込むようにしている。この従来例3の場合、成形材料が合流する部位がなく、ウェルドの発生を防止できる。しかしながら、ランナー503の部分に溜まる材料がバリとなるため、成形品の径が大きくなるほど、材料の歩留まりが悪くなってしまう。このタイプの従来例としては、特許文献2,3に開示されたものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ウェルドラインの発生を防止しつつ、バリの発生量を抑制可能とする射出成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明の射出成形装置は、
環状のキャビティを有する金型と、
前記キャビティに成形材料を射出する射出機構と、
を備える環状の成形品を成形する射出成形装置において、
前記金型には、前記射出機構から前記キャビティに成形材料を導く環状の第1供給通路が設けられており、
前記射出機構には、成形材料を第1供給通路の入り口まで導く環状の第2供給通路が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、成形材料は、環状の第1供給通路を通って、環状のキャビティに送られるので、キャビティ内において成形材料の合流点がなく、ウェルドラインの発生を防止することができる。また、環状の第2供給通路から(金型に設けられた)環状の第1供給通路を介してキャビティに成形材料を供給するため、(金型に設けられた)薄肉円板形状のランナーを介してキャビティに成形材料を供給する場合に比して、バリの発生量を抑制することができる。
【0011】
前記射出機構は、
加熱シリンダと、
該加熱シリンダ内で往復移動かつ回転可能に設けられるスクリュと、
該スクリュの先端側に設けられ、その外周面が、少なくとも第2供給通路の内周面の一部となり、かつ温調可能に構成されたコアと、
を備えるとよい。
【0012】
これにより、環状の第2供給通路における内周面側も、コアによって温調されるので、第2供給通路内の成形材料を十分に温度制御することができる。
【0013】
前記金型には前記コアの先端側に貫通孔が設けられており、
該貫通孔内に温調可能な温調部材が配置されており、
該温調部材が前記コアと接触することによって、前記コアが温調されるとよい。
【0014】
これにより、コアは、金型側に設けられている加熱部材によって温調される。
【0015】
前記スクリュは筒状部材によって構成されると共に、
該スクリュの筒内部には、温調可能に構成された温調軸が、前記加熱シリンダに対して、相対的な位置が静止状態または一定距離だけ軸方向への移動が許容された状態となるように設けられており、
該温調軸の先端に前記コアが固定されているとよい。
【0016】
これにより、コアは温調軸によっても温度制御される。
【0017】
また、前記スクリュの先端には、前記金型側に開口する中空部が設けられており、
前記コアにおける前記射出機構側の端部が、一定距離だけ軸方向への移動が許容された
状態で該中空部内に挿入されていることも好適である。
【0018】
前記加熱シリンダの先端には、その内周面が第2供給通路の外周面となる貫通孔を有し、かつ成形時においては前記金型のうちの前記射出機構側の上型と位置決めされた状態で接触するダイが取り付けられると共に、
該ダイにおける貫通孔内に、前記スクリュの先端とは離れた状態で配置される前記コアが配置されており、
前記金型が閉じた状態においては、前記コアは自重により前記金型のうちの下型に接し、かつ前記ダイにおける貫通孔の内周面とは離れることで第2供給通路を形成し、
前記金型が開いた状態では、前記コアは前記ダイにおける貫通孔の内周面の一部に係合された状態となり、前記下型から離れるように構成されることも好適である。
【0019】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、ウェルドラインの発生を防止しつつ、バリの発生量を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下に説明する実施形態及び実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
(実施形態)
図1を参照して、本発明の実施形態に係る射出成形装置Sについて説明する。
図1(a)は本発明の実施形態に係る射出成形装置Sの概略構成を断面的に示したものであり、同図(b)は本発明の実施形態に係る射出成形装置Sにおける成形材料の通路構成について、上側から見た場合を示している。本実施形態に係る射出成形装置Sによって成形される成形品は環状の製品(中間製品を含む)である。以下の説明においては、その一例として、円環形状であって、その断面形状が矩形の成形品を成形する場合を例にして説明する。また、以下の例においては、成形品の材料がゴムの場合を例にして説明する。
【0024】
<射出成形装置の構成>
本実施形態に係る射出成形装置Sは、いわゆるインラインスクリュ式の射出成形装置であり、金型機構100と射出機構200とを備えている。
【0025】
金型機構100は、上型110と下型120とからなる金型を備えている。これら上型110と下型120とによって、成形品を成形するためのキャビティCが形成される。また、この金型には、射出機構200からキャビティCに成形材料を導く環状の第1供給通路(スプル)T1が設けられている。また、上型110と下型120はいずれも環状の部
材で構成され、金型には貫通孔が設けられる構成となっており、この貫通孔内に温調部材を有する温調装置190が設けられている。
【0026】
射出機構200は、略円筒形状の加熱シリンダ220と、加熱シリンダ220内で往復移動かつ回転可能に設けられ、成形材料を送り出すためのスクリュ210と、スクリュ210の先端側に設けられるコア240と、加熱シリンダ220の先端に固定される環状のダイ250とを備えている。また、この射出機構200には、成形材料を第1供給通路T1の入り口まで導く環状の第2供給通路T2が設けられている。この第2供給通路T2は、加熱シリンダ220及びダイ250の内周面と、コア240の外周面との間の空間によって構成される。また、コア240は温調装置190によって温度制御され、ダイ250は加熱シリンダ220によって温度制御される。これにより、第2供給通路T2を流れる成形材料は高精度に温度制御されるように構成されている。
【0027】
<射出成型工程>
特に、
図1(a)を参照して、射出成形工程について説明する。
図1(a)は、成形材料をキャビティCに射出した後に、金型によってキャビティC内の成形材料への圧力を保持している状態を示している。圧力が保持されている間に、キャビティC内の成形材料が加硫成形される。そして、この保圧を開始した後に、スクリュ210を回転させて、一定量の成形材料(溶融した状態であって、未加硫状態の材料)を第2供給通路T2に供給する。第2供給通路T2に一定量の成形材料が溜まることによって、その材料の圧力により、スクリュ210は後退する。その後、成形材料漏れを防止するために、スクリュ210をサックバックさせる。
【0028】
次に、下型120を下方に移動して上型110から離間させる。これにより、成形材料は第1供給通路T1と第2供給通路T2との境界部(第1供給通路T1の入り口)にて分離される。このとき、第2供給通路2内の成形材料は適正な温度に制御されているのでスコーチしてしまうことはなく、一方、キャビティC内の成形材料は加硫された状態となっている。なお、第1供給通路T1内の成形材料も加硫された状態となっているため、下型120を上型110から離間させることにより、上記の通り、上記境界部において成形材料が分離される。
【0029】
その後、下型120から成形品を取り出した後に型締めを行う。そして、射出機構200を金型機構100に圧接し、スクリュ210を前進させて、第2供給通路T2に溜められていた成形材料を、第1供給通路T1を介してキャビティCに供給させる。その後、キャビティC内の成形材料への圧力を保持する。これにより、上述した
図1(a)に示す状態となる。以上の工程を繰り返すことで多数の成形品を成形することができる。
【0030】
<本実施形態に係る射出成形装置の優れた点>
以上のように、本実施形態に係る射出成形装置Sによれば、成形材料は、環状の第1供給通路T1を通って、環状のキャビティCに送られるので、キャビティC内において成形材料の合流点がなく、ウェルドラインやヒケの発生を防止することができる。従って、高機能が要求される製品にも適用できる。
【0031】
また、本実施形態に係る射出成形装置Sによれば、環状の第2供給通路T2から、金型に設けられた環状の第1供給通路T1を介してキャビティCに成形材料を供給する構成を採用している。そのため、金型に設けられた薄肉円板形状のランナーを介してキャビティに成形材料を供給する場合に比して、バリの発生量を抑制することができる。特に、成形品の寸法に合わせたコア240及びダイ250を用いることによって、ランナーの容積を最小限に抑えることができる。このように、本実施形態に係る射出成形装置Sは成形材料の歩留まりに優れている。また、射出機構200からキャビティCに至る成形材料の流路
長を短くすることができるので、射出時間を短くし、成形サイクルタイムを短縮することができる。これらに伴って、コストダウンを図ることもできる。
【0032】
また、本実施形態においては、第2供給通路T2に対して、外周面側と内周面側の双方から温調することによって、第2供給通路T2を流れる成形材料は高精度に温度制御されるように構成されている。従って、射出機構200内に備えられた第2供給通路T2内の成形材料がスコーチしてしまうことを抑制できる。
【0033】
以下、より具体的な例をいくつか説明する。
【0034】
(実施例1)
図2を参照して、本発明の実施例1に係る射出成形装置S1について説明する。なお、上述した実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0035】
本実施例に係る射出成形装置S1は、金型機構100と射出機構200aとを備えている。金型機構100は、上記実施形態でも説明したように、上型110と下型120とからなる金型を備えている。そして、上型110には、内部にカートリッジヒータなどの熱源を具備する熱盤130が固定されている。また、熱盤130は、固定盤150に対して、間に断熱板170を挟んだ状態で固定されている。下型120にも、内部にカートリッジヒータなどの熱源を具備する熱盤140が固定されている。また、熱盤140は、可動盤160に対して、間に断熱板180を挟んだ状態で固定されている。型を開く場合や、型締めを行う場合には、可動盤160に固定されている下型120や温調装置190が一体となって移動する。
【0036】
温調装置190は、可動盤160に固定される円柱状の軸191と、軸191が挿入される挿入穴と外周面に設けられた複数の溝とを有する温調部材192と、軸191に対して温調部材192を射出機構200a側に付勢するスプリング193とを備えている。また、温調部材192の外周側には円筒状のケース194が嵌め込まれている。下型120における内周面側には抜け止め用のリング195が固定されており、温調部材192の射出機構200a側への移動量が規制されるように構成されている。以上のように構成される温調装置190においては、温調部材192の外周面に設けられた溝とケース194との間で形成される流路に熱媒体が循環することにより、温調部材192の温度が制御される。
【0037】
射出機構200aは、加熱シリンダ221と、加熱シリンダ221内で往復移動かつ回転可能に設けられ、成形材料を送り出すためのスクリュ211と、スクリュ211の先端側に設けられるコア241と、加熱シリンダ221の先端に固定される環状のダイ251とを備えている。
【0038】
本実施例においては、加熱シリンダ221は、外周面に複数の溝が設けられた略円筒状のシリンダ本体222と、シリンダ本体222の外周側に嵌め込まれる円筒状のケース223とから構成される。このシリンダ本体222の外周面に設けられた溝とケース223との間で形成される流路に熱媒体が循環することによって、加熱シリンダ221は温調される。
【0039】
そして、本実施例に係るスクリュ211は内部が中空の略円筒状の部材によって構成されている。このスクリュ211の筒内部には温調可能に構成された温調軸231が設けられている。そして、この温調軸231の先端にコア241が固定されている。このコア241の先端側には、その外周面が先端に向かうにつれて縮径するテーパ面で構成された突
出部241aが設けられている。下型120には、その内周面が射出機構200a側に向かうにつれて拡径するテーパ面121が備えられており、突出部241aをガイドすることによって、コア241と下型120との位置決めを可能としている。
【0040】
また、加熱シリンダ221の先端には、環状のダイ251が固定されている。本実施例においては、シリンダ本体222の先端付近の内周面にめねじ222aを形成し、ダイ251の一部を小径として、小径部分の外周面におねじ251aを形成することで、ダイ251を直接シリンダ本体222にねじ込む構成を採用している。ただし、加熱シリンダとダイとの固定方法はこのような構成に限定されるものではない。また、ダイ251の先端側には、その外周面が先端に向かうにつれて縮径するテーパ面で構成された突出部251bが設けられている。上型110には、その内周面が射出機構200a側に向かうにつれて拡径するテーパ面110aが備えられており、突出部251bをガイドすることによって、ダイ251と上型110との位置決めを可能としている。
【0041】
上記の温調軸231は、加熱シリンダ221に対する相対的な位置について、一定距離だけ軸方向への移動が許容された状態となるように設けられている。この温調軸231の固定方法は特に限定されるものではない。例えば、
図2中上方に設けられる支持体(不図示)に対して、加熱シリンダ221については直接固定し、温調軸231についてはスクリュ211の筒内部においてスプリング等を介して間接的に固定する構成を採用できる。このように、温調軸231が、加熱シリンダ221に対する相対的な位置について、一定距離だけ軸方向への移動が許容されることによって、成形時において、温調軸231の先端に固定されたコア241を、より確実に金型(下型120)に対して圧接させることができる。ただし、各部材の位置決め精度を十分に高くすることができるのであれば、温調軸231を加熱シリンダ221に対して、相対的な位置が静止状態となるように設けてもよい。また、上記の通り、温調部材192は射出機構200a側に付勢されているので、成形時においては、コア241に対して温調部材192を圧接させることができる。これにより、コア241の温調精度を高めることができる。
【0042】
以上のような構成により、本実施例に係る射出成形装置S1においては、上記実施形態に係る射出成形装置Sの場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例に係る射出成形装置S1においては、スクリュ211を内部中空として、その内部に温調軸231を設ける構成を採用している。これにより、コア241は、温調装置190だけでなく、温調軸231によっても温調され、また、温調軸231の外周面の部位は直接温調されるので、第2供給通路T2の内周面側が全体に亘って温調される。従って、第2供給通路T2を流れる成形材料は、第2供給通路T2の末端(第1供給通路T1の入り口)に至るまで(矢印R参照)、精度よく温度が制御される。これにより、第2供給通路T2内において成形材料がスコーチしてしまうことをより確実に抑制することができる。
【0043】
更に、従来例3のように、金型に設けられた薄肉円板形状のランナーを介してキャビティに成形材料を供給する構成を採用した場合の型締め力に比較して、本実施例に係る射出成形装置S1による型締め力を小さくできるので、型締めのための機構及び構造を簡素化でき、装置全体を小型化することができる。なお、従来例3の場合、環状の成形品を上部から見た場合の外径部分の円の面積に射出圧を乗じた力が、型締めに必要な力となる。これに対して、本実施例の場合には、環状の成形品を上部から見た場合の外径部分の円の面積から第2供給通路T2の外径側の円の面積を引いたものに対して射出圧を乗じた力が、型締めに必要な力となる。
【0044】
(実施例2)
図3を参照して、本発明の実施例2に係る射出成形装置S2について説明する。なお、上述した実施形態や実施例1と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明
は適宜省略する。
【0045】
本実施例に係る射出成形装置S2も、上記実施形態や実施例1と同様に、金型機構100と射出機構200bとを備えている。金型機構100の構成については、上記実施例1の場合と同一であるので、その説明は省略する。
【0046】
射出機構200bは、加熱シリンダ221と、加熱シリンダ221内で往復移動かつ回転可能に設けられ、成形材料を送り出すためのスクリュ212と、スクリュ212の先端側に設けられるコア242と、加熱シリンダ221の先端に固定される環状のダイ252とを備えている。加熱シリンダ221は、上記実施例1の場合と同様に、シリンダ本体222とケース223とから構成される。
【0047】
そして、本実施例に係るスクリュ212は、中実のスクリュ本体212aと、スクリュ本体212aの先端に放電プラズマ焼結工法等によって固定される内部中空の中空部材212bとを備えている。これにより、スクリュ212の先端に、金型側に開口する中空部が設けられている。そして、本実施例に係るコア242は、コア本体部242aと、コア本体部242aにおける金型とは反対側に設けられた軸部242bと、この軸部242bの端部に設けられた係合突起部242cとを備えている。この係合突起部242cが、スクリュ212における中空部材212b内に設けられたスプリング212cの一端部に係合することによって、コア242は、スクリュ212に対して吊り下げられた状態となっている。これにより、コア242は、スクリュ212に対して、一定距離だけ軸方向への移動が許与されている。このように、本実施例においては、コア242がスクリュ212に対して、一定距離だけ軸方向への移動が許容されているので、成形時において、コア242を、より確実に金型(下型120)に対して圧接させることができる。また、上記の通り、温調部材192は射出機構200b側に付勢されているので、成形時においては、コア242に対して温調部材192を圧接させることができる。これにより、コア242の温調精度を高めることができる。
【0048】
また、コア242の先端側には、その外周面が先端に向かうにつれて縮径するテーパ面で構成された突出部242dが設けられている。下型120には、その内周面が射出機構200a側に向かうにつれて拡径するテーパ面121が備えられており、突出部242dをガイドすることによって、コア242と下型120との位置決めを可能としている。
【0049】
また、加熱シリンダ221の先端には、環状のダイ252が固定されている。本実施例におけるダイ252は、外周面に複数の溝が設けられた略円筒状のダイ本体252aと、ダイ本体252aの外周側に嵌め込まれる円筒状のケース252bとから構成される。このダイ本体252aの外周面に設けられた溝とケース252bとの間で形成される流路に熱媒体が循環することによって、ダイ252は温調される。
【0050】
そして、シリンダ本体222の先端付近の内周面にめねじ222aを形成し、ダイ本体252aの一部を小径として、小径部分の外周面におねじ252a1を形成することで、ダイ252を直接シリンダ本体222にねじ込む構成を採用している。ただし、加熱シリンダとダイとの固定方法はこのような構成に限定されるものではない。また、ダイ本体252aの先端側には、その外周面が先端に向かうにつれて縮径するテーパ面で構成された突出部252a2が設けられている。上型110には、その内周面が射出機構200b側に向かうにつれて拡径するテーパ面110aが備えられており、突出部252a2をガイドすることによって、ダイ252と上型110との位置決めを可能としている。
【0051】
以上のような構成により、本実施例に係る射出成形装置S2においても、上記実施形態に係る射出成形装置Sの場合と同様の効果を得ることができる。本実施例においては、コ
ア242は温調装置190からのみ温調される構成であるものの、ダイ252自体が温調されるので、第2供給通路T2を流れる成形材料は、第2供給通路T2の末端に至るまで(矢印R参照)、精度よく温度が制御される。また、本実施例においては、スクリュ212の構成が、その先端付近については特殊な構成を採用しているものの、その他の部位は一般的なインラインスクリュ式の射出成形装置におけるスクリュと同様の構成である。従って、一般的に汎用されているインラインスクリュ式の射出成形装置における射出機構の一部を改良するだけで、本実施例に係る射出機構200bを実現できる。
【0052】
(実施例3)
図4を参照して、本発明の実施例3に係る射出成形装置S3について説明する。なお、上述した実施形態や実施例1,2と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0053】
本実施例に係る射出成形装置S3も、上記実施形態や実施例1,2と同様に、金型機構100と射出機構200cとを備えている。金型機構100の構成については、上記実施例1の場合と同一であるので、その説明は省略する。
【0054】
射出機構200cは、加熱シリンダ221と、加熱シリンダ221内で往復移動かつ回転可能に設けられ、成形材料を送り出すためのスクリュ213と、スクリュ213の先端側に設けられるコア243と、加熱シリンダ221の先端に固定される環状のダイ253とを備えている。加熱シリンダ221は、上記実施例1の場合と同様に、シリンダ本体222とケース223とから構成される。また、本実施例に係るスクリュ213は、一般的なインラインスクリュ式の射出成形装置におけるスクリュと同様に中実の部材によって構成されている。
【0055】
そして、本実施例におけるダイ253は、外周面に複数の溝が設けられた略円筒状の第1ダイ本体253aと、この第1ダイ本体253aに固定される第2ダイ本体253bと、これら2つの部材からなるダイ本体の外周側に嵌め込まれる円筒状のケース253cとから構成される。このダイ本体の外周面に設けられた溝とケース253cとの間で形成される流路に熱媒体が循環することによって、ダイ253は温調される。
【0056】
そして、シリンダ本体222の先端付近の内周面にめねじ222aを形成し、シリンダ本体のうちの第1ダイ本体253aの一部を小径として、小径部分の外周面におねじ253a1を形成することで、ダイ253を直接シリンダ本体222にねじ込む構成を採用している。ただし、加熱シリンダとダイとの固定方法はこのような構成に限定されるものではない。また、ダイ本体のうち第2ダイ本体253bの先端側には、その外周面が先端に向かうにつれて縮径するテーパ面で構成された突出部253b2が設けられている。上型110には、その内周面が射出機構200c側に向かうにつれて拡径するテーパ面110aが備えられており、突出部253b2をガイドすることによって、ダイ253と上型110との位置決めを可能としている。
【0057】
そして、ダイ253における貫通孔の内周面は第2供給通路T2の外周面となる。このダイ253における貫通孔内に、スクリュ213の先端とは離れた状態でコア243が配置されている。このコア243は中央付近が外側に膨らんだ形状(図中、膨らみ部243a1)となっており、ダイ253の貫通孔の内周面形状も、このコア243の形状と相似する形状となっている。なお、上記の通り、ダイ本体は2部材によって構成されているので、例えば、第1ダイ本体253aを裏返しにした状態で、コア243を載置し、第1ダイ本体253aに第2ダイ本体253bを溶接等によって固定することで、ダイ本体の内部にコア243を配置する構成を実現できる。
【0058】
また、コア243の先端側には、その外周面が先端に向かうにつれて縮径するテーパ面で構成された突出部243bが設けられている。下型120には、その内周面が射出機構200c側に向かうにつれて拡径するテーパ面121が備えられており、突出部243bをガイドすることによって、コア243と下型120との位置決めを可能としている。
【0059】
以上の構成により、金型(上型110及び下型120)が閉じて、ダイ253が上型110に接触した状態においては、コア243は自重により下型120に接し、かつダイ253における貫通孔の内周面とは離れることで第2供給通路T2を形成する(
図4に示す状態)。そして、金型が開くと(つまり、下型120が可動盤160と共に下方に移動すると)、コア243は、その膨らみ部243a1がダイ253における貫通孔の内周面の一部に係合された状態となり、下型120から離れる。すなわち、型が開かれる場合には、可動盤160と共に下型120が図中下方に移動するため、コア243が自重によって下方に移動し、その膨らみ部243a1が第2ダイ本体253bに引っ掛かった状態となる。これにより、コア243は下型120金型から離れた状態となる。
【0060】
以上のような構成により、本実施例に係る射出成形装置S3においても、上記実施形態に係る射出成形装置Sの場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例においても、上記実施例2の場合と同様に、ダイ253自体が温調される。また、本実施例においては、スクリュ213の構成が、一般的なインラインスクリュ式の射出成形装置におけるスクリュと同様の構成である。従って、一般的に汎用されているインラインスクリュ式の射出成形装置におけるダイやコアを改良するだけで、本実施例に係る射出成形装置S3を実現できる。
【0061】
上記実施形態及び実施例においては、成形品の材料がゴムの場合について説明したが、本発明に係る射出成形装置は、成形品の材料がゴム以外の材料の場合にも適用できる。