特許第5742437号(P5742437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5742437-空気入りタイヤ 図000004
  • 特許5742437-空気入りタイヤ 図000005
  • 特許5742437-空気入りタイヤ 図000006
  • 特許5742437-空気入りタイヤ 図000007
  • 特許5742437-空気入りタイヤ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5742437
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/14 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   B60C5/14 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-102064(P2011-102064)
(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公開番号】特開2012-144236(P2012-144236A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2014年4月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-287352(P2010-287352)
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 豊明
(72)【発明者】
【氏名】橋村 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 淳
(72)【発明者】
【氏名】原 祐一
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−168033(JP,A)
【文献】 特開2009−241855(JP,A)
【文献】 特開2003−200448(JP,A)
【文献】 特開平09−254273(JP,A)
【文献】 特開2007−261137(JP,A)
【文献】 特開2010−269735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層に使用した空気入りタイヤにおいて、該空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部Aから非内腔側の空気透過防止層に引いた垂線と非内腔側の空気透過防止層との交点をP、該空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部Aから非内腔側の空気透過防止層が露出する位置に向かうタイヤ周方向に25mm離れた該空気透過防止層の位置点をQとしたとき、該P点と該Q点を結ぶ直線の長さLaに対して、実際にP点とQ点を通る前記空気透過防止層の長さLbが、(1.03×La)≦Lb≦(1.5×La)の関係を満たすように、少なくとも該P点とQ点の間の空気透過防止層に凹凸構造を形成させてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層に使用した空気入りタイヤにおいて、該空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部Aから該端部A側の該空気透過防止層が露出する方向に向かうタイヤ周方向に25mm離れた該空気透過防止層の位置点をRとしたとき、該A点と該R点を結ぶ直線の長さXaに対して、実際に該A点と該R点を通る前記空気透過防止層の長さXbが、(1.02×Xa)≦Xb≦(1.5×Xa)の関係を満たすように、該A点とR点の間の空気透過防止層に凹凸構造を形成させてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層に使用した空気入りタイヤにおいて、該空気透過防止層が、請求項1記載の前記P点とQ点の間に形成された凹凸構造と、請求項2記載の前記A点とR点の間に形成された凹凸構造を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記空気透過防止層に形成された凹凸構造が、該空気入りタイヤをブラダーを用いて加硫成形により製造した際に、該ブラダーと該空気透過防止層との間で、少なくともゴム、樹脂、金属から選ばれた材料で形成された凹凸型付け部材を使用して形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
最大ベルト幅を呈するベルト層のタイヤ幅方向の両端部からビード部方向に少なくとも60mm幅の領域内の空気透過防止層に、前記凹凸構造を形成させてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記空気透過防止層の長さLbが、前記P点と該Q点を結ぶ直線の長さLaに対し、(1.04×La)≦Lb≦(1.3×La)の関係を満たすものであることを特徴とする請求項1または3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記空気透過防止層の長さXbが、前記A点と該R点を結ぶ直線の長さXaに対し、(1.03×Xa)≦Xb≦(1.3×Xa)の関係を満たすものであることを特徴とする請求項2または3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【0002】
更に詳しくは、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物からなる空気透過防止層とタイゴム層とを積層した積層体シートをインナーライナー層として使用した空気入りタイヤにおいて、タイヤの使用開始後、該積層シートのスプライス部の近傍で発生するタイゴム層のクラック発生を防止できる耐久性に優れた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、インナーライナー層として、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物からなる空気透過防止層と、タイゴム層の積層体シートを使用した空気入りタイヤに関する提案がされ、検討されている(特許文献1)。
【0004】
通常、このような空気入りタイヤを製造するには、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなる空気透過防止層用のシート状物と、該熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物と加硫接着されるゴム(タイゴム)シートの積層体シートを、タイヤ成形ドラムに巻き付けてラップスプライスして、タイヤの加硫成形工程に供するという製造手法がとられる。
【0005】
しかし、ロール状の巻き体をなして巻かれた、該積層体シートを、該ロール状巻き体から所要の長さ分を引き出して切断し、タイヤ成形ドラムに巻き付けて該ドラム上においてラップスプライスし、更に加硫成形をしてインナーライナー層を形成させて空気入りタイヤを製造した場合、タイヤ走行開始後に、インナーライナー層を構成している熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のシートと、該熱可塑性樹脂または該熱可塑性エラストマー組成物のシートと加硫接着されたタイゴムとが、スプライス部の近傍でクラックを発生し剥離してしまう場合がある。
【0006】
これを図で説明すると、図4(a)に示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなるシート2とタイゴム層3とからなる積層体シート1は、刃物等で所要サイズ(長さ)に切断されて、タイヤ成形ドラム(図示せず)上にて、その両端部にラップスプライス部Sを設けて環状を成すようにしてラップスプライスされる。そして、更にタイヤの製造に必要なパーツ材(図示せず)が巻かれ、ブラダーで加硫成形される。
【0007】
加硫成形後においては、図4(b)にモデル図で示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物のシート2とタイゴム層3からなるインナーライナー層10が形成され、ラップスプライス部S付近では、熱可塑性樹脂または上述の熱可塑性エラストマー組成物からなるシート2は、露出している部分とタイゴム層の中に埋設している部分を形成している。この熱可塑性樹脂または上述の熱可塑性エラストマー組成物からなるシート2が空気透過防止層2aを構成する。同図で、矢印Dで示した方向はタイヤ周方向である。
【0008】
そして、タイヤの使用開始後、上述した熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のシート2(空気透過防止層2a)と加硫接着されたタイゴム層3とが剥離してしまう現象は、特に、図4(b)で示した熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のシート2(空気透過防止層2a)が露出していてかつその先端部付近4などにおいて発生し、まず、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のシート2(空気透過防止層2a)とタイゴム層3の間でクラックが発生し、それがさらに進んでそれらの剥離現象へと進行していく。
【0009】
この原因、特に、空気透過防止層2aとタイゴム層3の間(界面)でクラックが発生する原因は、通常、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のシートからなる空気透過防止層2aは剛性が高いので、上下を空気透過防止層2aに挟まれたタイゴム層は固定され、歪みが抑えられるが、上下を空気透過防止層2aに挟まれていない空気透過防止層2aの先端部付近4のタイゴム層3では歪みが抑えられずに大きな応力が発生するためであると考えられる。また、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のシート2とタイゴム層3の加硫接着力が十分に高くない場合があるなども考えられる。
【0010】
一方で、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のシート2とタイゴム層の加硫接着力が十分に高い場合、タイゴム層3内の図4(b)にCで示した箇所付近で応力歪みが集中してクラックが頻発する。該応力歪みは、タイゴム層3が表面まで露出している図4(b)で前述Cで示した箇所付近に集中し、その部分でタイゴム層3にはタイヤ周方向の歪み方向を持つ応力歪みが生じていて、これがタイゴム層の該C付近でクラックを生じる原因と考えられるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−241855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物からなる空気透過防止層とタイゴム層とを積層した積層体シートをインナーライナー層として使用した空気入りタイヤにおいて、タイヤの使用開始後、該積層シートのスプライス部の近傍で発生するタイゴム層のクラック発生を防止できる耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、以下の(1)の第一態様、(2)の第二態様、あるいは(3)の第三態様の構成を有する。
(1)熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層に使用した空気入りタイヤにおいて、該空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部Aから非内腔側の空気透過防止層に引いた垂線と非内腔側の空気透過防止層との交点をP、該空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部Aから非内腔側の空気透過防止層が露出する位置に向かうタイヤ周方向に25mm離れた該空気透過防止層の位置点をQとしたとき、該P点と該Q点を結ぶ直線の長さLaに対して、実際にP点とQ点を通る前記空気透過防止層の長さLbが、(1.03×La)≦Lb≦(1.5×La)の関係を満たすように、少なくとも該P点とQ点の間の空気透過防止層に凹凸構造を形成させてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
(2)熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層に使用した空気入りタイヤにおいて、該空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部Aから該端部A側の該空気透過防止層が露出する方向に向かうタイヤ周方向に25mm離れた該空気透過防止層の位置点をRとしたとき、該A点と該R点を結ぶ直線の長さXaに対して、実際に該A点と該R点を通る前記空気透過防止層の長さXbが、(1.02×Xa)≦Xb≦(1.5×Xa)の関係を満たすように、該A点とR点の間の空気透過防止層に凹凸構造を形成させてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
(3)熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層に使用した空気入りタイヤにおいて、該空気透過防止層が、上記(1)記載の前記P点とQ点の間に形成された凹凸構造と、上記(2)記載の前記A点とR点の間に形成された凹凸構造を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【0014】
上述した(1)〜(3)のうちのいずれかの本発明の空気入りタイヤにおいて、以下の(4)〜(7)のいずれかの構成からなることが好ましい。
(4)前記空気透過防止層に形成された凹凸構造が、該空気入りタイヤをブラダーを用いて加硫成形により製造した際に、該ブラダーと該空気透過防止層との間で、少なくともゴム、樹脂、金属から選ばれた材料で形成された凹凸型付け部材を使用して形成されたものであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
(5)最大ベルト幅を呈するベルト層のタイヤ幅方向の両端部からビード部方向に少なくとも60mm幅の領域内の空気透過防止層に、前記凹凸構造を形成させてなることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
(6)前記空気透過防止層の長さLbが、前記P点と該Q点を結ぶ直線の長さLaに対し、(1.04×La)≦Lb≦(1.3×La)の関係を満たすものであることを特徴とする上記(1)または(3)に記載の空気入りタイヤ。
(7)前記空気透過防止層の長さXbが、前記A点と該R点を結ぶ直線の長さXaに対し、(1.03×Xa)≦Xb≦(1.3×Xa)の関係を満たすものであることを特徴とする上記(2)または(3)に記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、同2または同3にかかる本発明の空気入りタイヤによれば、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物からなる空気透過防止層とタイゴム層とを積層した積層体シートをインナーライナー層として使用した空気入りタイヤにおいて、タイヤの使用開始後、該積層シートのスプライス部の近傍で発生するタイゴム層でのクラック発生が良好に防止できる耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【0016】
請求項4〜7のいずれかにかかる本発明の空気入りタイヤによれば、上記請求項1、同2または同3にかかる本発明の空気入りタイヤの効果を有するとともに、その効果をより確実にかつより高く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は、本発明の第一態様にかかる空気入りタイヤにおけるインナーライナーのスプライス部付近における空気透過層とタイゴム層の状態を示した側面モデル図であり、(b)はその要部拡大図である。
図2】(a)は、本発明の第二態様にかかる空気入りタイヤにおけるインナーライナーのスプライス部付近における空気透過層とタイゴム層の状態を示した側面モデル図であり、(b)はその要部拡大図である。
図3】本発明の第三態様にかかる空気入りタイヤにおけるインナーライナーのスプライス部付近における空気透過層とタイゴム層の状態を示した側面モデル図である。
図4】(a)は、本発明にかかる熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるシート2と、該熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物と加硫接着するゴム3を積層した積層体シート1を所定長さで切断し、タイヤ成形ドラムに巻き付けて、該積層体シート1の両端部をラップスプライスした状態を示すモデル図であり、(b)は、(a)に示した状態で加硫成形した後の状態を示したモデル図である。
図5】本発明にかかる空気入りタイヤの形態の1例を示した一部破砕斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面などを用いて、更に詳しく本発明の第一、第二、第三の各態様の各空気入りタイヤについて、説明する。
【0019】
〔第一態様〕
本発明の第一態様の空気入りタイヤは、図1(a)、(b)にモデル的に示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層2aに使用した空気入りタイヤにおいて、該空気透過防止層2aのスプライス部の内腔側端部Aから非内腔側の空気透過防止層2aに引いた垂線と非内腔側の空気透過防止層との交点をP、該空気透過防止層2aのスプライス部の内腔側端部Aから非内腔側の空気透過防止層2aが露出する位置(図1上で左側に向かう方向)に向かうタイヤ周方向で25mm離れた該空気透過防止層2a上の位置点をQとしたとき、該P点と該Q点を結ぶ直線の長さLaに対して、実際にP点とQ点を通る前記空気透過防止層2aの長さLbが、(1.03×La)≦Lb≦(1.5×La)の関係を満たすように、少なくとも該P点とQ点の間の空気透過防止層2aに凹凸構造Eを形成させてなることを特徴とする。図1(a)、(b)では、凸部と凹部とが一つずつ形成されている。なお、本発明でいう凹凸構造とは、図1や後述する図2に示しているように、タイヤ周方向Dに、凹部または凸部、あるいはそれら凹部と凸部の双方が形成されていることを総称するものである。
【0020】
このように空気透過防止層2aに凹凸構造を形成させて空気入りタイヤを構成すれば、空気透過防止層2aをたるませてその端部に集中して発生した応力歪みを分散させて該歪みを緩和させることができ、タイゴム層内にクラックが発生するのを極力防止することができるようになる。該Lbが前記した範囲よりも小さな場合は、歪みの分散・緩和効果が小さく好ましくない。また、上記した範囲よりも大きな場合は、それに見合った効果が得られるわけではなく、加工が困難になるため好ましくない。特に、より効果を高く発揮するために、実際にP点とQ点を通る空気透過防止層の長さLbは、前記P点とQ点を結ぶ直線の長さLaに対し、(1.04×La)≦Lb≦(1.3×La)の関係を満たすように構成することが好ましい。さらに好ましくは(1.05×La)≦Lb≦(1.2×La)の関係を満たすことが好ましい。
【0021】
本発明において、空気透過防止層2aに形成された凹凸構造は、該空気入りタイヤをブラダーを用いて加硫成形を行って製造する際に、該ブラダーと該空気透過防止層との間で、少なくともゴム、樹脂、金属から選ばれた材料で形成された凹凸型付け部材を使用して、加硫成形と同時に該凹凸構造が形成されたものであることが、凹凸構造の形成の工程上の容易さと確実性、凹凸構造の自由な形態の選択性などの点で好ましい。
該凹凸型付け部材は、樹脂製あるいは金属製のものの場合にはゴムと組合せたものとして構成するのがよく、例えば、樹脂とゴムとの積層体、あるいはゴムでコーティングしたワイヤ(金属線)などとして構成するのがよい。
【0022】
図1(a)、(b)にモデル的に示した凹凸構造はタイヤ周方向の断面形状で台形状のものであるが、その形状は特に限定されず、図示以外のものでは、例えば、半楕円状、半円状、波形を呈したそれら半楕円状、半円状、あるいは、角が大きな丸みを帯びた長方形状のものなどでもよく、凹凸型付け部材の形状により所望の形状の凹凸構造を得ることができる。凹凸構造の凹凸の高さは、図1(b)で示したHで0.1〜2.0mmの範囲とするのが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0mmである。
【0023】
凹凸型付け部材の全体の形態は、シート状、テープ状、紐状、すだれ状、あるいはネット状のものなどで、タイヤ幅方向に所要のある程度の長さを有するものであることが好ましく、適度の可撓性を有するものが好ましい。該凹凸型付け部材は、加硫成形前にタイヤの空気透過防止層に取り付けられて使用されるものが好ましく、加硫成形が終わった後はタイヤから取り外すとよい。取り外さない場合には、該凹凸型付け部材はゴムであることが好ましい。
【0024】
図5は本発明にかかる空気入りタイヤの形態の1例を示した一部破砕斜視図である。
空気入りタイヤTは、トレッド部11の左右にサイドウォール部12とビード部13を連接するように設けている。そのタイヤ内側には、タイヤの骨格たるカーカス層14が、タイヤ幅方向には左右のビード部13、13間に跨るように設けられている。トレッド部11に対応するカーカス層4の外周側にはスチールコードからなる2層のベルト層15a、15bが設けられている。矢印Dは図1図4と同じくタイヤ周方向を示している。カーカス層14の内側には、インナーライナー層10が配され、そのラップスプライス部Sがタイヤ幅方向に延びて存在している。
【0025】
本発明にかかる前記空気透過防止層の凹凸構造は、最大ベルト幅を呈するベルト層(図5では15b)のタイヤ幅方向の両端部からビード部13方向に少なくとも60mm幅の領域Za内にある空気透過防止層10に形成されているのが好ましい。ベルト層がとぎれたその両端部付近からビード部に向けた領域で応力歪みが多く発生するからである。したがって、その60mm幅の領域Zaの少なくとも全域で該凹凸構造が形成されているのが好ましい。
【0026】
本発明にかかる空気入りタイヤでは、タイヤ内周面上でこのラップスプライス部S付近で従来は生じやすかったタイゴム層3でのクラックの発生を抑制するものである、また、ラップスプライス部S付近での応力歪みが緩和されるので、インナーライナー層10を形成している熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるシート2とタイゴム層3の間のクラックの発生も抑制されて、全体として耐久性が著しく向上するものである。
【0027】
〔第二態様〕
本発明の第二態様の空気入りタイヤは、図2(a)、(b)にモデル的に示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層に使用した空気入りタイヤにおいて、該空気透過防止層2aのスプライス部の内腔側端部Aから該端部A側の該空気透過防止層2aが露出する方向(図面上、右側)に向かうタイヤ周方向に25mm離れた該空気透過防止層2aの位置点をRとしたとき、該A点と該R点を結ぶ直線の長さXaに対して、実際に該A点と該R点を通る空気透過防止層2aの長さXbが、(1.02×Xa)≦Xb≦(1.5×Xa)の関係を満たすように、該A点とR点の間の空気透過防止層2aに凹凸構造を形成させてなることを特徴とするものであり、この第二態様でのA点は、第一態様でのA点と同一のものである。図2(a)、(b)のモデルでは、凹部が一つ形成されている状態を示している。
【0028】
この第二態様の場合も、第一態様と同様に、空気透過防止層2aの凹凸構造により、空気透過防止層2aをたるませてその端部に集中して発生した応力歪みを分散させて該歪みを緩和させることができ、タイゴム層内にクラックが発生するのを極力防止することができるようになる。該Xbが前記した範囲よりも小さな場合は、歪みの分散・緩和効果が小さく好ましくない。また、上記した範囲よりも大きな場合は、それに見合った効果が得られるわけではなく、加工が困難になるため好ましくない。特に、より効果を高く発揮するために、(1.03×Xa)≦Xb≦(1.3×Xa)の関係を満たすように構成することが好ましい。この第二態様で、数値範囲の下限の絶対数が第一態様のそれよりも小さいものにしているのは、第二態様ではXbが図1(b)のP点から非内腔側の空気透過防止層が露出するまでの経路の分だけ、Lbよりも小さいものであることによる。さらに好ましくは(1.04×Xa)≦Xb≦(1.2×Xa)の関係を満たすことが好ましい。
【0029】
この第二態様の場合も、凹凸構造の高さやその形成手法、凹凸型付け部材の形態や材質のこと、さらに、図5で示した領域Za内に少なくとも形成することが好ましいことなどは第一態様のものと同様である。
【0030】
〔第三態様〕
本発明の第三態様の空気入りタイヤは、図3にモデル的に示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層に使用した空気入りタイヤにおいて、該空気透過防止層2aが、上記の第一態様の前記P点とQ点の間に形成された凹凸構造と、上記の第二態様の前記A点とR点の間に形成された凹凸構造の双方を有することを特徴とする。
【0031】
この第三態様の場合、第一態様、第二態様と同様、空気透過防止層2aの点Aを挟んでタイヤ周方向に存在する2つの凹凸構造により、第一態様、第二態様と同様、空気透過防止層2aをたるませてその端部に集中して発生した応力歪みを分散させて該歪みを緩和させることができ、タイゴム層内にクラックが発生するのを良好に防止することができる。特に、この第三態様の場合、応力歪みを分散させて該歪みを緩和させることが、空気透過防止層2aの両端でできることから該歪みの緩和効果をより高く発揮することができる。この第三態様でも、凹凸構造の高さやその形成手法、凹凸型付け部材の形態や材質のこと、さらに、図5で示した領域Za内に少なくとも形成することが好ましいことなどは第一態様、第二態様のものと同様である。
【0032】
以下、各態様に共通的なことについて説明する。
【0033】
本発明で用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
【0034】
また、本発明で使用できる熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂とエラストマーは、熱可塑性樹脂については上述のものを使用できる。エラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
【0035】
また、前記した特定の熱可塑性樹脂と前記した特定のエラストマーとの組合せでブレンドをするに際して、相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。ブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散層を形成しているエラストマーの粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、或いは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらはブレンドされる熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量は、特に限定されないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部がよい。
【0036】
熱可塑性樹脂とエラストマーがブレンドされた熱可塑性エラストマー組成物において、特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように適宜決めればよく、好ましい範囲は重量比90/10〜30/70である。
【0037】
本発明において、熱可塑性樹脂、または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物には、空気透過防止層としての必要特性が損なわれない範囲で相溶化剤などの他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性を改良するため、材料の成型加工性をよくするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をインナーライナーとしての必要特性を損なわない限り任意に配合することもできる。熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、インナーライナーに十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により十分な剛性を併せ付与することができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができるものである。
【0038】
本発明で使用できる熱可塑性樹脂、エラストマーのヤング率は、特に限定されるものではないが、いずれも、好ましくは1〜500MPa、より好ましくは50〜500MPaにするとよい。
【0039】
なお、本発明において、実際にP点とQ点を通る空気透過防止層の長さLbは、P点とQ点は空気透過防止層の内腔側面上にあるものなので、内腔側面上での長さとして求めたものである(図1(b)の太線)。同様に、実際に該A点と該R点を通る前記空気透過防止層の長さXbも、A点とR点は空気透過防止層の内腔側面上にあるものなので、内腔側面上での長さとして求めたものである(図2(b)の太線)。
【0040】
本発明は、上述した説明のとおり、以下のような態様の空気入りタイヤを提供するものである。
【0041】
すなわち、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層に使用した空気入りタイヤにおいて、該空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部Aから、タイヤ周方向にそって、前後の両方向にまたは前後のいずれかの方向下に、少なくとも25mm以内の該空気透過防止層2a上の部分に、タイヤ幅方向に延在するように形成した凹凸構造によって該空気透過防止層2aの上記部分にたるみ構造を構成させ、そのたるみ構造によって、その端部に集中して発生する応力歪みを分散させて緩和させ、スプライス部付近のタイゴム層内にクラックが発生するのを良好に防止した空気入りタイヤである。
【実施例】
【0042】
以下、実施例などにより、本発明の空気入りタイヤについて具体的に説明する。
【0043】
なお、空気入りタイヤの耐久性の評価は、各試験タイヤの内腔のインナーライナー層のスプライス部付近でのタイゴムのクラックの発生状況を観察して行った。
【0044】
耐久性の効果の判定基準は、外観目視でクラックが1個でも発生したものは「×:不可」、クラックが発生しなかったものは「○:合格」と分類して行った
タイヤの加工性は凹部の数で評価した。実施例ではタイヤ成形加硫前に空気透過防止層にゴムシートを貼り付けて凹凸を形成したため、凹部の数が増えるほどゴムシートを貼り付ける枚数が多くなり、加工性は困難になる。
【0045】
〔第一態様の実施例〕実施例1〜6、比較例1
試験タイヤとして、ベルト2層、カーカス2層のタイヤ構造を有する215/70R15を作製し、各実施例、比較例ごとに各2本を作製した。これをJATMA標準リムに取り付けて、タイヤ内圧を240kPaとして、荷重7.35kNと非常に大きな荷重を加えての金属製ドラム上での強制条件下での走行テストを行った。走行速度は80km/h、走行距離は50,000kmとした。
【0046】
各試験タイヤにおいて、空気透過防止層に形成した凹凸構造は、実施例1〜6のいずれも半楕円状の凹凸構造(凹部がタイヤ幅方向に延在している)とした。その際、加硫成形前のタイヤに取り付けたゴムシートの厚み、枚数を変えることにより、凹凸の高さH、凹凸の数を変えて長さLbを各種設定した。凹凸構造を設けた領域は、最大ベルト幅を有するベルト層のタイヤ幅方向の両端部からビード部方向に60mm幅の領域内に設けた。
【0047】
各試験タイヤの詳細と、耐久性の評価結果を表1に示した。
【0048】
この表1からわかるように本発明第一態様によるものは、クラックの発生がなく耐久性に非常に優れている。
【0049】
【表1】
【0050】
〔第二態様の実施例〕実施例7〜12、比較例2
各試験タイヤを、空気透過防止層に形成した凹凸構造を、実施例7〜12のいずれも半楕円状の凹構造(凹部がタイヤ幅方向に延在している)とした。その他の点については、第一態様の実施例と同様とした。
【0051】
各試験タイヤの詳細と、耐久性の評価結果を表2に示した。
【0052】
この表2からわかるように本発明第二態様によるものは、クラックの発生がなく耐久性に非常に優れている。
【0053】
【表2】
【0054】
〔第三態様の実施例〕実施例13
本発明の第一態様と第二態様の双方を、単一の試験タイヤにおいて実現した。その際、空気透過防止層に形成した凹凸構造は、本発明の第一態様は実施例3と、第二態様は実施例9と同様のものとした。耐久性試験の結果は「○」であるが、実施例3と同9のもの(いずれも「○」評価)と比較すると、それらよりも更に優れていると判断できるものであった。
【符号の説明】
【0055】
1:積層体シート
2:熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物のシート
2a:空気透過防止層
3:タイゴム層
4:熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のシート2の先端部付近
10:インナーライナー層
11:トレッド部
12:サイドウォール部
13:ビード部
14:カーカス層
15:ベルト層
A:空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部
C:タイゴム層内で発生するクラックの頻発箇所
D:タイヤ周方向
E:空気透過防止層2aに形成された凹凸構造
H:凹凸構造の凹凸高さ
R:空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部Aから該端部A側の該空気透過防止層が露出する方向(図面上、右側)に向かうタイヤ周方向に25mm離れた該空気透過防止層の位置点
La:P点とQ点を結ぶ直線の長さ
Lb:実際にP点とQ点を通る空気透過防止層の長さ
P:空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部Aから非内腔側の空気透過防止層に引いた垂線と非内腔側の空気透過防止層との交点
Q:空気透過防止層のスプライス部の内腔側端部Aから、端部Aとは他端側の空気透過防止層が露出する方向(図面上、左側)に向かうタイヤ周方向に25mm離れた該空気透過防止層の位置点
S:ラップスプライス部
Xa:A点とR点を結ぶ直線の長さ
Xb:実際にA点とR点を通る空気透過防止層の長さ
Za:最大ベルト幅を呈するベルト層のタイヤ幅方向の両端部からビード部方向に少なくとも60mm幅の領域
図1
図2
図3
図4
図5