(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
日周運動によって、撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、前記撮影装置の撮影光学系によって撮像面に形成された天体像が、撮影中、撮像素子の所定の撮像領域に対して固定されるように、天体自動追尾撮影する天体自動追尾撮影方法であって、
所定の天体に向けた撮影装置で予備撮影して予備撮影画像を取得する段階と、
前記取得した予備撮影画像中の天体の位置を算出する段階と、
前記予備撮影時の、撮影日時情報、緯度情報、撮影方位角情報及び撮影仰角情報を入力する段階と、
前記入力した前記撮影日時情報、緯度情報、撮影方位角情報及び撮影仰角情報に対応する範囲の星図データを入力する段階と、
前記算出した予備撮影画像中の天体の位置に対する、前記入力した星図データによる天体の位置のずれ量を、所定の座標系において算出する段階と、
算出した前記ずれ量から、入力される撮影方位角情報及び撮影仰角情報の少なくとも一方を補正する段階と、
補正した前記撮影方位角情報及び撮影仰角情報の少なくとも一方に基づき、前記天体自動追尾撮影を実行する段階と、
を有することを特徴とする天体自動追尾撮影方法。
日周運動によって、撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、前記撮影装置の撮影光学系によって撮像面に形成された天体像が、撮影中、撮像素子の所定の撮像領域に対して固定されるように、天体自動追尾撮影する天体自動追尾撮影装置において、
前記撮影装置を所定の天体に向けて予備撮影して予備撮影画像を取得し、前記予備撮影時の、撮影日時情報、緯度情報、撮影方位角情報及び撮影仰角情報を入力する入力手段と、
前記撮像素子を撮影光学系の光軸に対して直交する方向に平行移動及び該光軸と平行な軸回りに回転移動する移動手段と、
前記撮影装置により天体を自動追尾撮影して画像を取得する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記入力手段により入力した前記撮影日時情報、緯度情報、撮影方位角情報及び撮影仰角情報に対応する星図データを入力し、
前記取得した予備撮影画像の天体の位置に対する、入力した星図データによる天体の位置のずれ量を所定の座標系において算出し、
算出した前記ずれ量から、前記入力手段により入力される撮影方位角情報及び撮影仰角情報の少なくとも一方を補正し、
補正した前記撮影方位角情報及び撮影仰角情報に基づき、前記天体自動追尾撮影を実行する、
ことを特徴とする天体自動追尾撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の天体自動追尾撮影方法を適用したデジタルカメラの実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態のデジタルカメラ10は、カメラボディ11と撮影レンズ101(撮影光学系L)を備えている。カメラボディ11内には、撮影光学系Lの後方に撮像手段として撮像センサ13が配設されている。撮影光学系Lの光軸LOと撮像センサ13の撮像面14とは直交している。この撮像センサ13は、撮像センサ駆動ユニット(移動手段)15に搭載されている。撮像センサ駆動ユニット15は、固定ステージと、この固定ステージに対して可動な可動ステージと、該固定ステージに対して可動ステージを移動させる電磁回路とを有しており、可動ステージに撮像センサ13が保持されている。撮像センサ13(可動ステージ)は、光軸LOと直交する所望の方向に所望の移動速度で平行移動制御され、さらに光軸LOと平行な軸(光軸と直交する面内の何処かに位置する瞬間中心)を中心として所望の回転速度で回転制御される。このような撮像センサ駆動ユニット15は、例えば特許文献3に記載されているカメラの像ブレ補正装置の撮像センサ駆動ユニットとして公知である。
【0023】
撮影レンズ101は、撮影光学系L内に、絞り103を備えている。この絞り103の絞り値(開閉度合い)は、カメラボディ11内に備えられた絞り駆動制御機構17によって制御される。
【0024】
カメラボディ11には、カメラ全体の機能を制御するCPU(制御手段、演算手段)21が搭載されている。CPU21は、撮像センサ13を駆動制御し、撮像センサ13が撮影した画像信号を処理してLCDモニタ23に表示するとともに、メモリーカード25に書き込む。CPU21には、撮像センサ駆動ユニット15を防振ユニットとして用いる際にカメラに加わる振れを検出するために、撮影レンズ101の焦点距離検出装置105からの焦点距離情報fと、X方向ジャイロセンサGSX、Y方向ジャイロセンサGSY、及び回転検出ジャイロセンサGSRが検出した信号が入力される。
【0025】
また、カメラボディ11には、星図データの入力手段として、星図データが保存されたメモリーカード37が装着されている。星図データは、星図データカード(メモリー)を使用する他、通信端子39を介してパーソナルコンピュータに接続し、パーソナルコンピュータから通信でダウンロードすることも可能である。星図データは、種々提供されているが、本実施形態では、天体(恒星)の所定の準ユリウス日における赤経と赤緯のデータとして提供されているものとする。なお、実際の天体は明るい天体から暗い天体まで無数にあり、星図データが膨大な量になるので、一定等級以上の天体に限定して星図データを持つのが実際的である。実際の星(天体)の数は、3等星以上で300個足らず、4等星以上で1000個足らずであるから、4等星以上に限定するだけでもデータ量は極めて少なくなる。
【0026】
カメラボディ11は、スイッチ類として、電源スイッチ27、レリーズスイッチ28、設定スイッチ30を備えている。CPU21は、これらのスイッチ27、28、30のオン/オフ状態に応じた制御を実行する。例えば、CPU21は、電源スイッチ27の操作を受けて、図示しないバッテリからの電力供給をオン/オフし、レリーズスイッチ28の操作を受けて焦点調節処理、測光処理及び撮影処理(天体撮影処理)を実行する。設定スイッチ30は、天体自動追尾撮影モードや通常撮影モードなどの撮影モードを選択し、設定するスイッチである。
【0027】
カメラボディ11内には、緯度情報入力手段としてのGPSユニット31、方位角情報入力手段としての方位角センサ33、及び撮影仰角情報入力手段としての重力センサ35が内蔵されている。CPU21には、GPSユニット31から緯度情報ε、経度情報及び日時情報(グリニッジ標準時情報)、方位角センサ33から撮影方位角情報As、重力センサ35から撮影仰角情報hsが入力される。CPU21は、GPSユニット31から入力した緯度情報εと日時情報(グリニッジ標準時情報)、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報As、重力センサ35から入力した撮影仰角情報hs、及び焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fに基づいて、撮像センサ駆動ユニット15を駆動制御する。カメラボディ11(撮像センサ13)の基準位置は、例えば、矩形の撮像センサの長辺方向を水平方向(X方向)とした位置であり、矩形の撮像センサの長辺方向と短辺方向をX方向とY方向としたX−Y座標系により定まる。
【0028】
以上のGPSユニット31、方位角センサ33、重力センサ35は、カメラボディ11に内蔵する他、いずれか又は全てをカメラボディに対する外付けタイプとしてもよい。具体的には、アクセサリーシュー、又は底板に装着されるブラケットにこれらセンサを装備し、アクセサリーシューの接点を介して、又はUSB等のコネクタを介してCPU21に入力する構成とすることができる。日時はデジタルカメラ10の内蔵時計を利用することができ、緯度情報εは、設定スイッチ30を利用してCPU21に使用者が手入力してもよい。GPSユニット31から入力される日時は、グリニッジ標準時であるから、撮影位置の地方時間にコンバートして、星図データから所定の天体のデータを入力する際及び撮影時刻における入力した天体の撮影方位角As及び撮影仰角hsを算出する際に使用する。
【0029】
このデジタルカメラ10は、その天体自動追尾撮影モードにおいて、次のように動作する。
GPSユニット31から入力した緯度情報εと日時情報(グリニッジ標準時情報)、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報As、重力センサ35から入力した撮影仰角情報hs、及び焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fから、撮像面14中の所定の座標系において、撮影対象である天体の位置を算出する。次に算出した撮像面14中の所定の座標系における天体の位置を含む所定範囲の星図データを入力する。
図2は入力した星図データの例である。
一方、撮像センサ13をカメラボディ11に対して固定した状態で、比較的明るい天体が点とみなせる程度に撮影できる短時間の露光で予備撮影を行って予備撮影画像を取得する。
図3は予備撮影画像の例である。
そして、撮像面14中の所定の座標系において、入力した星図データによる天体の位置と、取得した予備撮影画像の天体の位置とのずれ量を算出し、算出したずれ量から、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報Asと重力センサ35から入力した撮影仰角情報hsを補正して、より正確な撮影方位角情報Aと撮影仰角情報hを得る。
図4は補正の方法の具体例を示している。
図4のように各天体を一致させた状態で予備撮影による撮像面14と星図データによる仮想撮像面14’とが成す傾き角ξは、予備撮影の際、カメラボディ11が撮影仰角hにおいて撮影光学系Lの光軸LO回りにξだけ回転していたことを示すものであり、本願では「カメラ姿勢」と呼ぶ。
最後に、補正した撮影方位角情報Aと撮影仰角情報hに基づいて、撮像センサ13を撮像センサ駆動ユニット15により、光軸LOと直交する平面内で平行移動制御しながら本撮影(天体自動追尾撮影)を行う。
これにより、撮影目標天体の像を静止状態で得ることができる。本撮影(天体自動追尾撮影)は設定された露出時間Tで実行し、この露出時間Tが経過したら撮像センサ13から画像信号を取り込み、所定フォーマットの画像データに変換してLCDモニタ23に表示するとともにメモリーカード25へ書き込む。
星図データの入力と予備撮影画像の取得とはその順番を問わない。つまり、星図データを入力した後に予備撮影画像を取得して両者の天体のずれ量を算出しても良いし、その逆であっても良い。
【0030】
なお、露出の開始、露出の終了は、機械シャッターを有するデジタルカメラの場合は機械シャッターを開放し、閉じる処理を含み、電子シャッターの場合は撮像センサ13が蓄積した電荷を掃き出して露出を開始し、同電荷を転送又は読み出して露出を終了する処理などを含む。
【0031】
本実施形態の天体自動追尾撮影は、デジタルカメラ10を固定し、撮像センサ13を、撮影光軸LOに直交する平面内でX軸方向とY軸方向に移動し、撮影光軸LOと平行な軸回りに回転させることで実現する。まず、その一般的な原理について説明する。ここで、デジタルカメラ10の撮影方位角をA、撮影仰角をh、撮影光軸LOを軸とする回転量をθとおき、撮像センサ13をX軸方向、Y軸方向に平行移動及び回転移動させるデータを、方位角方向駆動速度dA/dt、仰角方向駆動速度dh/dt、回転駆動速度dθ/dtとおく。方位角方向駆動速度dA/dtは、撮像センサ13をX軸方向に移動させるデータであり、仰角方向駆動速度dh/dtは、撮像センサ13をY軸方向に移動させるデータであり、回転駆動速度dθ/dtは、撮像センサ13をその中心を回転中心として回転させるデータである。ここでは、撮像センサ13の初期状態において撮像面14の長辺(X軸)が水平に設置されているものとする。
【0032】
図7の天球図において、
P : 天の北極、
Z : 天頂、
N : 真北、
S : 対象天体、
ε : 撮影地点の緯度、
A : 撮影方位角
h : 撮影仰角
H : 天体の時角
δ: 天体の赤緯
とすると、方位角方向駆動速度dA/dt、仰角方向駆動速度dh/dt、回転駆動速度dθ/dtは次のように求めることができる。
【0033】
この天球図において、以下の式(a)乃至(f)が成立する。
(a) sinh = sinε × sinδ + cosε × cosδ × cosH
(b) tanA = sinH/(cosε × tanδ - sinε × cosH)
(c) tanθ = sinH/(tanε × cosδ - sinδ × cosH)
(d) dz/dt = cosδ × sinθ
(ただし、z = 90 - h)
(e) dA/dt = cosδ × cosθ/cosh
(f) dθ/dt = -cosε × cosA/cosh
【0034】
求める値は、緯度ε、撮影方位角A、及び撮影仰角hが与えられたときの、天体の赤緯δ、天体の時角H、方位角方向変位速度dA/dt、仰角方向変位速度dh/dt、回転変位速度dθ/dtである。これらの値は、下記式(g)乃至(k)に、緯度ε、撮影方位角A、撮影仰角hを代入することにより求まる。
(g) sinδ = sinh × sinε + cosh × cosε × cosA
(h) tanH = sinA/(cosε × tanh - sinε × cosA)
(i) dA/dt = sinε - cosε × tanh × cosA
(j) dh/dt = -sinA × cosε
(k) dθ/dt = -cosA × cosε/cosh
【0035】
天体撮影において、方位角方向駆動速度dA/dt、仰角方向駆動速度dh/dt、及び回転駆動速度dθ/dtを演算し、演算した駆動速度dA/dt、dh/dt、dθ/dtにより撮像センサをX軸方向移動、Y軸方向移動及び算出画像中心Oを中心とした回転駆動制御すれば、天体を静止した状態で撮影できる。
【0036】
前述の式(g)、(h)、(i)、(j)、(k)が成立することを、以下説明(証明)する。
図7の天球表面における球面三角△ZPSにおいて、球面三角の公式より、下記の式が成立する。
sin(90 - h) × sinθ = sin(90 - ε) × sinH
sin(90 - h) × cosθ = sin(90 - δ) × cos(90 - ε) - cos(90 - δ) × sin(90 - ε) × cosH
cos(90 - h) = cos(90 - ε) × cos(90 - δ) + sin(90 - ε) × sin(90 - δ) × cosH
【0037】
以上の各式を変形すると、
(1) cosh × sinθ = cosε × sinH
(2) cosh × cosθ = cosδ × sinε - sinδ × cosε × cosH
(3) sinh = sinε × sinδ + cosε × cosδ × cosH
となる。
【0038】
前記式(1)/(2)より、
(4) tanθ = cosε × sinH/(cosδ × sinε - sinδ × cosε × cosH)
= sinH/(tanε × cosδ - sinδ × cosH)
が得られる。この式(4)は、式(c)と一致する。
【0039】
式(1)、(2)の両辺をtで微分すると、
(5) -sinh × sinθ × dh/dt + cosh × cosθ × dθ/dt = cosε × cosH
(6) -sinh × cosθ × dh/dt - cosh × sinθ × dθ/dt = cosε × sinδ × sinH
となる。
【0040】
式(5)、(6)から、dh/dtとdθ/dtについて解く。
-sinh × sinθ × cosθ × dh/dt + cosh × cosθ × cosθ × dθ/dt
= cosθ × cosε × cosH
上式は、式(5)の右辺にcosθを乗算した式になる。
-sinh × sinθ × cosθ × dh/dt - cosh × sinθ × sinθ × dθ/dt
= sinθ × cosε × sinδ × sinH
上式は、式(6)の右辺にsinθを乗算した式と一致する。前記2式の両辺をそれぞれ引くと、
cosh × dθ/dt × (cos
2θ + sin
2θ) = cosθ × cosε × cosH - cosθ × cosε × sinδ × sinH
cosh × dθ/dt = (cosθ × cosH - sinθ × sinδ × sinH) × cosε
となる。
従ってdθ/dtは、
(7) dθ/dt = (cosθ × cosH - sinθ × sinδ × sinH) × cosε / coshとなる。
【0041】
また、
-sinh × sinθ × sinθ × dh/dt + cosh × sinθ × cosθ × dθ/dt
= sinθ × cosε × cosH
-sinh × cosθ × cosθ × dh/dt - cosh × sinθ × cosθ × dθ/dt
= cosθ × cosε × sinδ × sinH
である。前記一番目の式は、式(5)の右辺にsinθを乗算した式と一致し、二番目の式は、式(6)の右辺にcosθを乗算した式と一致する。したがって、前記2式の両辺を加えると、
-sinh × dh/dt × (sin
2θ + cos
2θ) = sinθ × cosε × cosH + cosθ × cosε × sinδ × sinH
-sinh × dh/dt = (sinθ × cosH + cosθ × sinδ × sinH) × cosε
となる。
従ってdh/dtは、
(8) dh/dt = -(sinθ × cosH + cosθ × sinδ × sinH) × cosε/sinh
となる。
【0042】
球面三角△ZPSにおいて、球面三角の公式より、
sinA × cos(90 - h) = sinθ × cosH + cosθ × cos(90 - δ) × sinH
cosA = cosθ × cosH - sinθ × cos(90 - δ) × sinH
が成立する。上式を変形すると、
(9) sinA × sinh = sinθ × cosH + cosθ × sinδ × sinH
(10) cosA = -cosθ × cosH + sinθ × sinδ × sinH
となる。
【0043】
式(7)に式(10)を、式(8)に式(9)を代入すると、
(11) dθ/dt = -cosA × cosε/cosh
(12) dh/dt = -sinA × cosε
となり、前述の式(k)、式(j)が得られる。
【0044】
球面三角△ZPSにおいて、
sin(90 - h) × (-cosA) = sin(90 - ε) × cos(90 - δ) - cos(90 - ε) × sin(90 - δ) × cosH
式が成立する。上式を変形すると、
-cosA = (sinε × cosδ × cosH - cosε × sinδ)/cosh
となる。これを式(11)に代入すると、
(13) dθ/dt = (sinε × cosδ × cosH - cosε × sinδ) × cosε/cos
2h
となる。
【0045】
球面三角△ZPSにおいて、
cos(90 - δ) = cos(90 - ε) × cos(90 - h) + sin(90 - ε) × sin(90 - h) × (-cosA)
式が成立する。上式を変形すると、
(14) sinδ = sinε × sinh + cosε × cosh × cosA
となり、前述の式(g)が得られる。
【0046】
さらに球面三角△ZPSにおいて、
cos(90 - h) = cos(90 - δ) × cos(90 - ε) + sin(90 - δ) × sin(90- ε) × cosH
が成立する。上式に、
sin(90 - δ) = sin(90 - h) × sinA/sinH
を代入する。
cos(90 - h) = cos(90 - δ) × cos(90 - ε) + sin(90 - h) × sinA × sin(90 - ε) × cosH/sinH
上式を変形する。
sinh = sinδ × sinε + cosh × sinA × cosε / tanH
上式に、式(14)を代入すると、
sinh = sinh × sin
2ε + cosε × sinε × cosh × cosA + cosh × sinA × cosε/tanH
cosh × sinA × cosε/tanH = sinh × (1 - sin
2ε) - cosε × sinε × cosh × cosA
tanH = cosh × sinA × cosε/(sinh × cos
2ε - cosε × sinε × cosh × cosA)
tanH = sinA/(cosε × tanh - sinε × cosA)
となり、前記式(h)が得られる。
【0047】
式(a)を変形すると、
(15) sinδ = (sinh - cosε × cosδ × cosH)/sinε
となる。
球面三角△ZPSにおいて、
sin(90 - δ) × cosH = cos(90 - h) × sin(90 - ε) + sin(90 - h) × cos(90 - ε) × cosA
であるから、
(16) cosδ × cosH = sinh × cosε - cosh × sinε × cosA
となる。式(15)に式(16)を代入すると、
sinδ = (sinh - sinh × cos
2ε + cosh × sinε × cosε × cosA)/sinε
sinδ = (sinh × sin
2ε + cosh × sinε × cosε × cosA)/sinε
sinδ = sinh × sinε + cosh × cosε × cosA
となり、前述の式(14)、式(g)と一致する。
【0048】
(b)式を変形する。
-cosA/sinA = sinε/tanH - cosε × tanδ/sinH
tanH = sinε/(-cosA/sinA + cosε × tanδ/sinH)
上式に、
sinH = sinA × sin(90 - h)/sin(90 - δ) = sinA × cosh/cosδ
を代入して変形する。
tanH = sinε/(-cosA/sinA + cosε × tanδ × cosδ/sinA × cosh)
tanH = sinε/(-cosA/sinA + cosε × sinδ/(sinA × cosh))
tanH = sinε × sinA/(-cosA + cosε × sinδ/cosh)
上式に式(14)を代入して変形すると、
tanH = sinε × sinA/(-cosA + (cosε × sin h × sinε + cos
2ε × cosh × cosA)/cosh)
tanH = sinε × sinA/(-cosA + cosε × sinε × tanh + cos
2ε × cosA)
tanH = sinε × sinA/(-cosA × sin
2ε +cosε × sinε × tanh)
tanH = sinA/(-cosA × sinε + cosε × tanh)
となり、前述の式(h)と一致する。
【0049】
球面三角△ZPSにおいて、
sin(90 - δ) × cosθ = cos(90 - ε) × sin(90 - h) + sin(90 - ε) × cos(90 - h) × cosA
cosδ × cosθ = sinε × cosh - cosε × sinh × cosA
が成立する。上式を式(e)に代入すると、
dA/dt = (sinε × cosh - cosε × sinh × cosA)/cosh
dA/dt = sinε - cosε × tanh × cosA
となり、前記式(i)が得られる。
【0050】
式(g)を変形する。
sinh × sinε = -cosh × cosε × cosA + sinδ
上式をtについて微分する。但し、撮影地点の緯度εと天体の赤緯δは一定とする。
cosh × sin ε × dh/dt = cosε × sinh × cosA × dh/dt - cosε × cosh × sinA × dA/dt
dA/dt = -(cosh × sinε - cosε × sinh × cosA) × dh/dt/(cosε × cosh × sinA)
上式に式(j)を代入すると、
dA/dt = (cosh × sinε - cosε × sinh × cosA) × sinA × cosε/(cosε × cosh × sinA)
dA/dt = sinε - cosε × tanh × cosA
となり、前記式(i)と一致する。
【0051】
以上の通り、天体の赤緯δ、天体の時角H、撮影方位角情報A、及び撮影仰角情報hから、天体自動追尾撮影に必要な方位角方向駆動速度dA/dt、仰角方向駆動速度dh/dt、及び回転駆動速度dθ/dtを、式(i)、(j)、(k)によって算出することができる。
【0052】
方位角センサ33から入力した撮影方位角As及び重力センサ35から入力した撮影仰角hsが正確(高精度)であれば、精度の高い天体自動追尾撮影が可能である。しかし、これらの撮影方位角As及び撮影仰角hsの精度が低く誤差を有すると、正確な天体自動追尾撮影ができない。そこで本実施形態では、星図データから求めた天体の撮影方位角Aと撮影仰角hが正確な値であることを前提として、この撮影方位角A及び撮影仰角hと、方位角センサ33から入力した撮影方位角As及び重力センサ35から入力した撮影仰角hsの誤差をΔA及びΔhとして算出し、誤差を補正した正確な撮影方位角A(つまりAs+ΔA)及び撮影仰角h(つまりhs+Δh)を求めることにより、正確な天体自動追尾撮影を可能にする。なお、方位角センサ33と重力センサ35のうち、一方のセンサが高精度である場合には、他方のセンサの誤差のみ補正すれば良い。またカメラ姿勢ξを検出すれば、より正確な天体自動追尾撮影が可能になる。
【0053】
次に、星図データから得られる天体の撮影方位角A及び撮影仰角hにより、方位角センサ33から入力した撮影方位角As及び重力センサ35から入力した撮影仰角hsを補正する方法(つまりΔA、Δhを求める方法)を
図2ないし
図4により具体的に説明する。
【0054】
天体の星図データを持っていれば、
図2に示すように天体の位置を仮想撮像面14′上の位置に変換することで、撮像面14の中心(画像中心)に撮影される星図上の天体がどこになるか算出できる。この画像中心を算出画像中心点Oとする。この算出画像中心点Oと星図データから求められる複数の天体の位置と、実際の予備撮影から得られた画像上の複数の天体の位置とを比較して、そのずれ量から先に入力したカメラの撮影方位角データAs、撮影仰角データhsを補正する。また、そのずれ量からカメラ姿勢ξを検出し、それに基づいてデジタルカメラ10の姿勢を補正する。
【0055】
この予備撮影では長時間(長秒時)露出はせずに、比較的明るい天体が点状に写るように短時間露出を行う。そのために、この予備撮影では絞り103を開放し、撮影感度を、例えば最高値まで上げることが好ましい。
【0056】
予備撮影画像の複数の天体と、星図データの対応する各天体のずれ量の算出には、既知のパターンマッチング法やテンプレートマッチング法を用いる。ずれ量の算出では、まず、予備撮影画像上の複数の天体の位置と星図データの複数の天体の位置を同じ共通座標系で比較するため、座標変換処理を行う。ここで共通座標系は、撮像面14の中心である画像中心を算出画像中心Oとし、算出画像中心Oの座標(0,0)を原点とする前述のX−Y座標系とする。
【0057】
(1−1)予備撮影画像上の複数の天体の座標データ変換
予備撮影した画像の中心を原点とする画像上でのX−Y座標を各天体について算出する。
精度の高いマッチングを行うにはある一定数の天体が必要となるが、数が多すぎると処理が複雑になり、演算に長時間要するなどの弊害もあるため、適切な数の天体を選ぶものとする。天体の選択方法としては、画像に写った天体の中から輝度の高い順に選ぶなどの方法が考えられる。適切な数は、2個以上あれば補正は可能だが、補正演算精度と処理速度のバランスを取ると3乃至6個程度が好ましい。
【0058】
(1−2)星図データの複数の天体の座標データ変換
星図データは、それぞれの天体の赤経と赤緯のデータである。星図データの天体の座標を、算出画像中心Oを座標(0,0)の原点とした画像上での座標に変換する。
GPSユニット31から得られる撮影日時と撮影地点の緯度ε、星図データから得た天体の赤経を変換して得た天体の時角H、星図データから得た天体の赤緯δから、その撮影日時と撮影地点における各天体(恒星)の撮影方位角A及び撮影仰角hを下記式によって算出する。
A = arctan(sinH/(cosε × tanδ - sinε × cosH))
h = arcsin(sinε × sinδ + cosε × cosδ × cosH)
【0059】
ここで、天体の時角Hは、
H = θG - λ - A
θG:グリニッジ恒星時(経度0°で南中している天体の赤経に等しい。)、
λ:撮影地点の経度(東経を - 、西経を + とする。)、
A:天体の撮影方位角、
である。
なお、GPSユニット31から出力される日時データはグリニッジ標準時であるから、そのままグリニッジ恒星時θGとして用いればよい。
【0060】
次に、方位角センサ33から入力した撮影方位角As及び重力センサ35から入力した撮影仰角hs(つまり算出画像中心点Oの撮影方位角As及び撮影仰角hs)と、星図データから求めた天体の撮影方位角A及び撮影仰角hとの差であるΔA及びΔhを求める。
ΔA = A − As
Δh = h − hs
これらの式により天体の位置を画像上の座標(X,Y)に変換するために、撮影レンズ101の焦点距離fを加味して、下記式(I)、(II)を用いる。
X = f × tan(arccos(sin
2(hs + Δh/2) + cos
2(hs + Δh/2) × cos(ΔA)))・・・(I)
Y = f × tanΔh ・・・(II)
【0061】
前記式(I)と式(II)は、次のように計算を行う。先ず、天体を、
図5に示した天球(半球)に見立てる。同図において、Zは天頂、Qは天球の中心(撮影地点)である。天球表面上において、同一仰角ηで方位角がΔαだけ異なる点Sと点S'をとると、天球の中心Qから見た点Sと点S′の成す角度はΔα′となる。天体を撮影した場合、画像上におけるX方向の移動量は、このΔα′に比例する。なお、同図中符号RA、RA′は、点S、S′の赤径である。
【0062】
点Sおよび点S′の仰角をηとすると、球面三角ZSS′において、球面三角の公式より、
cosΔα' = cos
2(90 - η) + sin
2(90 - η) × cosΔα
= sin
2(η) + cos
2(η) × cosΔα
Δα' = arccos(sin
2(η) + cos
2(η) × cos(Δα)) ・・・(III)
となる。
【0063】
次に、
図6に示した天球(半球)において仰角の異なる点SS(仰角 η - Δh/2)と点SS′(仰角 η + Δh/2)をとると、画像上のX方向移動量(=水平方向移動量)は、点SS、点SS′の仰角の中点である仰角ηでのS-S′のX方向移動量と等しい。よって、SS-SS′のX方向移動量は式(III)のΔα′に比例する。
【0064】
いま
図6の点SSの仰角が重力センサ35により撮影仰角hsと求められたとすると、
hs = η - Δh/2
であるから、同式を変形した
η=hs + Δh/2
を式(III)に代入して、
Δα' = arccos(sin
2(hs + Δh/2) + cos
2(hs + Δh/2) × cos(Δα)) ・・・(IV)
式が得られる。
【0065】
以上の天体の位置を画像(撮影画面14)上での座標移動量(ΔX,ΔY)に変換するために、撮影レンズ101の焦点距離 f を加味した下記式を使用する。
ΔX = f × tanΔα'
= f × tan(arccos(sin
2(hs + Δh/2) + cos
2(hs + Δh/2) × cos(Δα)))
ΔY = f × tanΔh
ここで、
図5、
図6で用いた方位角の差Δαと式(i)の方位角の差ΔAは同じものなので、Δα = ΔAにより式(I)と式(II)が求められる。
【0066】
無数にある天体すべてを座標変換するのは、処理の負担も大きく時間もかかる。そこで、撮影レンズ101の焦点距離情報fと方位角センサ33及び重力センサ35の最大誤差から、対象とする天体の範囲を決定する。例えば、星図上の天体をある範囲の赤径、赤緯毎にいくつかのブロックに分け、算出画像中心点Oの撮影方位角Asと撮影仰角hsから逆算して得られた赤径、赤緯の含まれるブロックと、その周囲のブロック内の天体についてのみ、前記の座標変換を行う等の方法が考えられる。
【0067】
前記(1−1)の予備撮影画像から算出した各天体の座標(X10, Y10)、(X11, Y11)、・・・と、前記(1−2)の星図データから算出した対応する各天体の座標(X20, Y20)、(X21, Y21)、・・・を比較、マッチング処理して、星図データの各天体の座標からの水平方向(X方向)及び垂直方向(Y方向)のずれ量を、それぞれΔX、ΔYとして算出する。これらのずれ量ΔXとΔYは、
図4に示したように画像全体のずれ量のことであり、マッチングに用いる複数の天体の各々のずれ量から総合的に算出する。
【0068】
これらのずれ量ΔX、ΔYから、算出画像中心点Oと実際に予備撮影されたときの撮影仰角hsのずれ量Δh、撮影方位角Asのずれ量ΔAは、下記式により求めることができる。
Δh = arctan(ΔY/f)
ΔA = arccos((cos(arctan(ΔX/f )) - cos
2(hs + Δh/2) )/cos
2 (hs + Δh/2))
= arccos((cos(arctan(ΔX/f)) - cos
2(hs + arctan(ΔY/f)/2))/cos
2(hs + arctan(ΔY/f )/2))
これらの撮影方位角のずれ量ΔA、撮影仰角ずれ量Δhが、方位角センサ33、重力センサ35から得られた撮影方位角As、撮影仰角hsを補正する補正量である。
【0069】
前記のように、予備撮影結果から補正量ΔA、Δhを求め、撮影方位角As、撮影仰角hsを補正して正確な撮影方位角A(つまりAs+ΔA)、撮影仰角h(つまりhs+Δh)を算出して、正確な撮影方位角A、撮影仰角hに基づいて天体自動追尾撮影を実施することにより、天体を点状に撮影することが可能となる。
【0070】
予備撮影画像上の天体と星図データ上の天体とをマッチング処理する際には回転成分のずれ量(カメラ姿勢ξ)も求められるので、重力センサ35から算出された、カメラボディ11(撮像センサ13)の基準位置からの撮影光軸LOを中心とする回転角、例えば矩形の撮像センサの長辺方向が水平方向Xと一致したときを基準位置とした長辺方向の水平方向Xからの傾きを求めることができる。この水平方向の傾き(カメラ姿勢ξ)を補正すれば、撮像センサ駆動ユニット15をより正しく制御することができる。
【0071】
回転制御については、撮影方位角As及び撮影仰角hsを補正し、補正後の撮影方位角A及び撮影仰角hに基づいて再演算することで、回転成分のずれ量(カメラ姿勢ξ)も補正できるので、撮像センサ駆動ユニット15の回転駆動も適切な制御ができる。
【0072】
『各天体(恒星)の撮影方位角A、撮影仰角hの算出方法』
前記(1-2)における各天体(恒星)の撮影方位角A、撮影仰角hの算出方法について、さらに詳細に説明する。
天体観測では準ユリウス日、グリニッジ恒星時が基準となるので、これらの日時を撮影地点の地方恒星時に変換する。
【0073】
「準ユリウス日(修正ユリウス日)」
準ユリウス日をMJDとおき、
MJD = int(365.25Y) + int(Y/400) - int(Y/100) + int(30.59(M - 2)) + D − 678912
グレゴリオ暦(1582年10月15日以降)の西暦年をY、月をM、日をDとする。
ただし1月はM = 13、2月はM = 14、YはY = Y - 1とする。
また、時刻はグリニッジ標準時MJDを基準とする。つまり日本時間 − 9とする必要がある。例えば、日本時間 2009年2月2日午前0時(2009/2/2 0時)ならば、
MJD = int(365.25 × 2008) + int(2008/400) - int(2008/100) + int(30.59 × 12) + 2 - 678912より、
MJD = 55047.47 h
となる。但し、この式は入力時刻を日本時間として算出している。日 = 4、時 = 20、分 = 20 である。
【0074】
「グリニッジ恒星時」
グリニッジ恒星時をθGとおく。
θG = 24h × (0.67239 + 1.00273781 × (MJD - 40000.0)) 2000.0分点に準拠
グリニッジ恒星時とは、経度0°において、南中している天体の赤経である。
グリニッジ恒星時θG:(0.67239 + 1.00273781 × (MJD - 40000.0)) の値から小数点以下のみを使用する。
前記の入力時刻のグリニッジ恒星時θGは、
θG = 8.202 hとなる。
【0075】
「地方恒星時」
地方恒星時をθとおくと、
θ=θG - λ
である。これは、経度λ(東経を - 、西経を + とする。)において南中している天体の赤経である。
但し、
東経:139.6915、
θ:17.514 h、
である。
【0076】
「時角」
時角Hは、
H = θ-α
となる。
但し、
θ:地方恒星時、
α:天体の赤経、
である。
【0077】
天体の赤径は、時角Hによって次のように表示される。
21.843 H = -4.329 h -28.329 h
-64.931 deg -424.931 deg
【0078】
『撮影方位角、撮影仰角』
天体Sを撮像画面14の中心に位置させて撮影する場合の、計算上の撮影方位角A、撮影仰角hは、GPSユニット31から得られる撮影地点の緯度ε、星図データから得た天体の赤経を変換して得た天体の時角H、星図データから得た天体の赤緯δから、以下の式によって求められる。
A = arctan(sinH/(cosε × tanδ - sinε × cosH))
h = arcsin(sinε × sinδ + cosε × cosδ × cosH)
【0079】
星図データの中から、代表的な天体のデータの一例を示す。グリニッジ恒星時2009年7月21日21時丁度の星図データから、ベガ、シリウス、カペラ、アークトゥルス、ミザール及び木星の赤径、赤緯データを抽出して表1に示した。
[表1]
赤経 赤緯 赤経 赤緯
ベガ 18h 36m 56.3s +38°47' 01" 18.616 h 38.784 °
シリウス 06h 45m 08.9s -16°42′58" 6.752 h -15.284 °
カペラ 05h 16m 41.4s +45°59' 53" 5.278 h 45.998 °
アークトゥルス 14h 15m 39.7s +19°10' 56" 14.261 h 19.182 °
デネブ 20h 41m 25.9s +45°16' 49" 20.691 h 45.280 °
ミザール 13h 23m 55.5s +54°55' 31" 13.399 h 54.925 °
木星 21h 50m 35.0s -14° 8' 1" 21.843 h -14.134 °
【0080】
『計算結果』
表1のデータに基づいて、ベガ、シリウス、カペラ、アークトゥルスが東経(139.6915°)に位置する日時、時角h及び赤緯の計算結果を表2に示した。
[表2]
年月日 日本時間 東経[°] 時角[h] 赤緯[°]
ベガ 08/09/30 20:00 139.6915 2.327 38.784
ベガ 08/10/02 20:00 139.6915 2.458 38.784
シリウス 09/02/02 22:26 139.6915 0.843 -15.284
シリウス 09/03/17 20:25 139.6915 1.646 -15.284
カペラ 09/03/17 20:33 139.6915 3.254 45.998
アークトゥルス 09/03/17 20:40 139.6915 -5.611 19.182
【0081】
ミザール、ベガ、デネブ、木星が、日本時間2009年7月21日に、東経(139.6915°)に位置する時間、時角h及び赤緯の計算結果を表3に示した。
[表3]
年月日 日本時間 東経[°] 時角[h] 赤緯[°]
ミザール 2009.7.21 20:30 139.6915 3.363 54.925
ベガ 2009.7.21 20:45 139.6915 -1.604 38.784
デネブ 2009.7.21 21:00 139.6915 -3.428 45.280
木星 2009.7.21 21:15 139.6915 -4.329 -14.134
【0082】
ミザール、ベガ、デネブ、木星が、日本時間2009年8月4日に、東経(139.6915°)に位置する時間、時角h及び赤緯の計算結果を表4に示した。
[表4]
年月日 日本時間 東経[°] 時角[h] 赤緯[°]
ミザール 2009.8.4 19:35 139.6915 3.364 54.925
ベガ 2009.8.4 19:50 139.6915 -1.603 38.784
デネブ 2009.8.4 20:05 139.6915 -3.427 45.280
木星 2009.8.4 20:20 139.6915 -4.329 -14.134
【0083】
以上のようにして、天体撮影する際に一画面内に撮影されるであろう代表的な天体のデータを撮影地点の撮影時における東経、時角、赤緯に変換することができる。逆に、撮影画面14の中心に位置する天体のデータから、撮影方位角A及び撮影仰角hを求めることができる。
【0084】
以上のデジタルカメラ10による天体撮影(天体自動追尾撮影)について、
図8ないし
図10に示したフローチャートを参照して説明する。
図8に示すように、設定スイッチ30により天体自動追尾撮影モードではなく通常撮影モードが設定されて電源スイッチ27がオンされた状態では、レリーズスイッチ28をオンすることにより通常の撮影が行われる(S101、S103:NO、S105:YES、S107:NO、S109)。電源スイッチ27がオフされたときは撮影動作が終了する(S103:YES)。レリーズスイッチ28がオンされないときは撮影が行われない(S105:NO)。この撮影動作は一般的なデジタルカメラ10によるそれと同じである。
【0085】
設定スイッチ30により天体撮影モードが設定されて電源スイッチ27がオンされた状態では(S101、S103:NO)、対象天体(恒星)を撮像センサ13の撮像面14にとらえてレリーズスイッチ28をオンすることにより、本実施形態の天体撮影が行われる(S105:YES、107:YES)。
【0086】
ここで、本実施形態の天体撮影補正モード(星図データを用いた天体自動追尾撮影モード)が設定されていない場合に撮影を行うと(S111:NO、S115)、
図11に示すように、撮像センサ13(撮像面14)が日周運動する天体の動きに上手く追従できず、天体の移動軌跡が直線あるいは曲線状に写ってしまうことがある。
【0087】
一方、本実施形態の天体撮影補正モード(星図データを用いた天体自動追尾撮影モード)が設定されている場合に撮影を行うと(S111:YES)、まず天体撮影補正処理を行い(S113)、次いで天体自動追尾撮影を行う(S115)。天体撮影補正処理(S113)では、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報Asと重力センサ35から入力した撮影仰角情報hsを補正して、より正確な撮影方位角情報Aと撮影仰角情報hを得る。天体自動追尾撮影(S115)では、天体撮影補正処理(S113)で得た正確な撮影方位角情報Aと撮影仰角情報hに基づいて、撮像センサ13を平行移動制御及び回転移動制御しながら露出(撮影)を行う。
【0088】
「天体撮影補正処理」
本実施形態の天体撮影補正処理(S113)について、
図9に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。
【0089】
天体撮影補正処理に入ると、まずCPU21に、GPSユニット31から緯度情報εと日時情報(グリニッジ標準時情報)を入力し、方位角センサ33から撮影方位角情報Asを入力し、重力センサ35から撮影仰角情報hsを入力し、焦点距離検出装置105から焦点距離情報fを入力する(S201)。CPU21は、入力した緯度情報ε、日時情報(グリニッジ標準時情報)、撮影方位角情報As、及び撮影仰角情報hsに基づいて、算出画像中心点Oの赤緯及び赤径を算出する(S203)。
【0090】
CPU21は星図データメモリーカード37から星図データを入力する(S205)。CPU21は、星図データメモリーカード37から入力した星図データを、入力した緯度情報εと日時情報(グリニッジ標準時情報)、撮影方位角情報As、撮影仰角情報hs、焦点距離情報fに基づいて分割し、分割領域の星図データを選択する(S207)。ここではCPU21に星図データを入力してから分割しているが、CPU21に星図データを入力する前に入力した緯度情報εと日時情報(グリニッジ標準時情報)、撮影方位角情報As、撮影仰角情報hsに基づいて分割領域を設定し、設定した分割領域の星図データだけを入力してもよい。この場合は入力する星図データが少なくて済む。
【0091】
次いでCPU21は、算出画像中心点Oより、星図データの座標変換範囲を算出し(S209)、この座標変換範囲における星図データを座標変換する(S211)。
図2は座標変換した星図データにおける天体の例を示している。
【0092】
次いでCPU21は、予備撮影を行って予備撮影画像を取得する(S213)。予備撮影は、天体が点として写るように短時間露出で行う。例えば、絞り103を開放にし、感度を最高感度まで上げることにより露出時間を短くできる。CPU21は、取得した予備撮影画像上の天体の中から複数個を選択し、選択した複数の天体の座標を座標データ変換する(S215)。
図3は座標変換した予備撮影画像における複数の天体の例を示している。
【0093】
次いでCPU21は、座標変換した星図データにおける天体の座標位置と、座標変換した予備撮影画像における天体の座標位置とを比較、マッチング処理して、星図データの各天体の座標からの水平方向(X方向)及び垂直方向(Y方向)のずれ量を、それぞれΔX、ΔYとして算出する(S217)。またCPU21は、カメラ姿勢ξを検出する。
図4はこれらのずれ量ΔX、ΔY、ξを示している。
【0094】
次いでCPU21は、ずれ量ΔX、ΔYから、星図データから求めた撮影方位角A及び撮影仰角hと、方位角センサ33から入力した撮影方位角As及び重力センサ35から入力した撮影仰角hsとのずれ量(誤差)をΔA及びΔhとして算出する(S219)。そしてCPU21は、方位角センサ33から入力した撮影方位角As及び重力センサ35から入力した撮影仰角hsをこのずれ量ΔA及びΔhで補正する(S221)。つまりCPU21は、方位角センサ33と重力センサ35の検出誤差を補正した正確な撮影方位角A(つまりAs+ΔA)及び撮影仰角h(つまりhs+Δh)を算出する。
【0095】
「天体自動追尾撮影」
本実施形態の天体自動追尾撮影(S115)について、
図10に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。
【0096】
天体自動追尾撮影に入ると、まずCPU21に、GPSユニット31から緯度情報εを入力し、方位角センサ33から撮影方位角情報Asを入力し、重力センサ35から撮影仰角情報hsを入力し、焦点距離検出装置105から焦点距離情報fを入力する(S301)。
【0097】
次いでCPU21は、入力した撮影方位角情報As及び撮影仰角情報hsをずれ量ΔA及びΔhで補正した正確な撮影方位角A(つまりAs+ΔA)及び撮影仰角h(つまりhs+Δh)を算出する。そしてCPU21は、補正したこの撮影方位角情報A及び撮影仰角情報hと、GPSユニット31から入力した緯度情報εに基づいて、方位角方向駆動速度dA/dt、仰角方向駆動速度dh/dt、回転駆動速度dθ/dtを算出する(S303)。上述したように、方位角方向駆動速度dA/dtは、撮像センサ13をX軸方向に移動させるデータであり、仰角方向駆動速度dh/dtは、撮像センサ13をY軸方向に移動させるデータであり、回転駆動速度dθ/dtは、撮像センサ13をその中心を回転中心として回転させるデータである。
【0098】
次いでCPU21は、算出した方位角方向駆動速度dA/dt、仰角方向駆動速度dh/dt、回転駆動速度dθ/dtと、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、撮像センサ駆動ユニット15による撮像センサ13の可動範囲の機械的リミットLx、Ly、Lθとに基づいて、最長露出時間(露出限界時間)Tlimitを算出する(S305)。
【0099】
次いでCPU21は、撮影者が設定した任意の露出時間Tが最長露出時間Tlimit以内か否かを判定する(S307)。CPU21は、露出時間Tが最長露出時間Tlimit以内である場合には、その露出時間Tを天体自動追尾撮影中の露出時間として設定する(S307:YES)。一方、CPU21は、露出時間Tが最長露出時間Tlimitを超えている場合には(S307:NO)、最長露出時間Tlimitを天体自動追尾撮影中の露出時間Tとして設定する(S309)。そしてCPU21は、設定した露出時間Tだけ、図示しないシャッターを開放して、撮像センサ13による撮像を開始する(S311)。なお、絞りは、通常、開放状態で撮影されるが、撮影者により任意に設定可能である。
【0100】
そしてCPU21は、設定した露出時間Tが経過するまで、算出した方位角方向駆動速度dA/dt、仰角方向駆動速度dh/dt、回転駆動速度dθ/dtに合わせて撮像センサ13を平行移動制御及び回転移動制御しながら露出を行う(S317、S319:NO)。これにより、デジタルカメラ10を固定した状態で撮影するだけで各天体を見かけ上静止した状態で撮影することができる。この露出時間中に、CPU21は、GPSユニット31から入力した緯度情報ε、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報As、重力センサ35から入力した撮影仰角情報hsに基づいて、方位角方向駆動速度dA/dt、仰角方向駆動速度dh/dt、回転駆動速度dθ/dtを算出及び更新する(S313、S315)。
【0101】
CPU21は、設定した露出時間が経過したら(S319:YES)、図示しないシャッターを閉じて露出を終了する(S321)。CPU21は、撮像センサ13から撮影画像データを読み出して(S323)、ホワイトバランス調整や所定フォーマットへの変更等の画像処理を施す(S325)。最後にCPU21は、画像処理後の撮影画像データをLCDモニタ23に表示するとともに、所定フォーマットの画像ファイルとしてメモリーカード25に保存する(S327)。
【0102】
以上の通り本実施形態の天体自動追尾撮影方法は、撮影装置を所定の天体に向けて予備撮影する段階と、前記予備撮影時の撮影装置の緯度情報、撮影方位角情報及び撮影仰角情報を入力する段階と、入力した緯度情報、撮影方位角情報及び撮影仰角情報にから、撮影される天体を含む対応する範囲の星図データを入力する段階と、前記予備撮影によって得られた画像中の天体の位置に対する、前記入力した星図データによる天体の位置と、前記撮影装置によって予備撮影を行って得られた画像中の天体の位置とのずれ量を算出する段階と、算出したずれ量によって、入力される撮影方位角情報及び撮影仰角情報の少なくとも一方を補正する段階と、補正した前記撮影方位角情報及び撮影仰角情報の少なくとも一方に基づいて、天体自動追尾撮影を実行する段階と、を有している。これにより、方位角センサ、重力センサの検出精度が低くても、補正した正確な撮影方位角情報及び撮影仰角情報を得ることができる。従ってデジタルカメラ(撮影装置)は、補正後の正確な撮影方位角情報及び撮影仰角情報により、正確な天体自動追尾撮影ができる。なお、ここまで矩形の撮像センサの長辺方向を水平方向(X方向)とし、矩形の撮像センサの長辺方向と短辺方向をX方向とY方向としたX−Y座標系をもとに説明したが、もしカメラ姿勢ξがゼロでない値が検出されている場合には、X−Y座標系がξだけ傾いているものと補正して同様の処理をすれば、より正確な天体自動追尾撮影ができる。
【0103】
以上のデジタルカメラ10は、撮像センサ13を光軸と直交する方向及び光軸と平行な軸回りに回転させる撮像センサ駆動ユニット15を備えたが、撮影レンズ101内に撮像センサ上の被写体位置を移動させる像ブレ補正レンズを搭載した像ブレ補正装置と、撮像センサを回転させる撮像センサ回転機構とを組み合わせても本発明のデジタルカメラは構成することができる。
また、本実施形態の説明ではカメラとしてデジタルカメラを示したが、レンズ交換式の一眼レフデジタルカメラ、レンズシャッタ式コンパクトデジタルカメラに限らず、撮像手段を光軸と直交する面内において光軸と直交する任意の方向に移動、回転が駆動可能な撮影装置一般に適用できる。