(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1集電体が形成されたベース部材、及び該ベース部材に対して固定されると共に第2集電体が形成されたリッド部材を有し、両部材の間に収納空間が画成された密封容器と、
前記収納空間内に収納され、充放電可能な電気化学素子と、を備え、
前記電気化学素子は、
前記第1集電体に固定された第1電極と、
該第1電極上に隔離部材を挟んで重ねられると共に、電解質を通じて金属イオンを第1電極との間で移動させる第2電極と、を有し、
前記収納空間内における前記リッド部材と前記第2電極との間には、該第2電極を前記第1電極側に押圧すると共に、第2電極と前記第2集電体とを導通させる弾性部材が配設され、
前記弾性部材は、一部が前記リッド部材に対して一体的に接続されて固定されていることを特徴とする電気化学セル。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電気化学セルの第1実施形態を、
図1から
図4を参照して説明する。なお、本実施形態では、電気化学セルの一例として、外観が略直方体のチップ形状とされた表面実施型のリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。
【0029】
図1に示すように、このリチウムイオン二次電池1は、非水電解質二次電池の1つであって、内部に収納空間Sを有する密封容器2と、収納空間S内に収納され、蓄充電可能な電気化学素子3と、を備えており、図示しない基板に例えばリフローによって表面実装可能とされた二次電池である。
【0030】
密封容器2は、セラミックス、ガラスや樹脂等の材料で形成されたものであり、容器本体(ベース部材)10と、該容器本体10に対して固定された封口板(リッド部材)11と、を備えている。
容器本体10は、平板状の底壁部10a及び枠状の周壁部10bを有する有底筒状の凹状容器とされており、底壁部10aと周壁部10bとで凹部を画成している。そして、この凹部を塞ぐように上記封口板11が固定されている。
この点詳細に説明すると、容器本体10の周壁部10bの上面には凹部を径方向外側から囲繞するように金属層12が形成されており、さらに該金属層12上には導電性の接合材13が形成されている。そして、封口板11は、この接合材13を介して容器本体10に重ねられており、該接合材13の溶解によって容器本体10に対して気密に固定されている。そして、容器本体10の凹部と封口板11とで画成された空間が、気密に封止された上記収納空間Sとされている。
【0031】
なお、接合材13は、例えば金ろう、銀ろう等のろう材や半田材等である。この際、封口板11に対するなじみやリフロー温度等を考慮して、接合材13の材質を決定すれば良い。例えば、260℃前後の温度で基板にリフローを行う場合には、260℃よりも高い温度で融解する接合材13を用いれば良く、300℃前後の接合材13を用いることができる。
更には、接合材13として、ニッケル、金メッキを施したコバール等の金属からなるシールリングを採用しても構わない。
なお、上記金属層12及び接合材13の表面をニッケルや金等でメッキすることが、防錆特性を高めることから好ましい。
【0032】
上記金属層12は、例えば接合材13とのなじみの良いニッケルや金等から形成することが好ましい。金属層12の形成方法としては、電解メッキや無電解メッキの他、真空蒸着等の気相法等を採用しても良い。
【0033】
収納空間Sに面した容器本体10の底壁部10aの上面には、第1集電体15が略全面に亘って形成されている。また、容器本体10の底壁部10aの下面には、一対の外部接続端子16、17が電気的に切り離された状態で形成されている。
両外部接続端子16、17のうち一方の外部接続端子16は、容器本体10の底壁部10aを上下に貫通する第1貫通電極18を介して第1集電体15に導通している。一方、他方の外部接続端子17は、容器本体10の底壁部10a及び周壁部10bを共に上下に貫通する第2貫通電極19を介して上記金属層12に導通している。
【0034】
なお、これら一対の外部接続端子16、17は、例えばメッキ法やスパッタ法等により形成された単一金属による単層膜、或いは、異なる金属が積層された積層膜である。積層膜としては、2層、3層でも構わないが、例えば基板との良好なリフローを行うために、下地層がニッケル、中間層が金、表面層が半田の3層が好ましい。
【0035】
封口板11は、導電性の基板(例えば、コバール、42アロイ、又はニッケルを5%程度含むニッケル鉄合金で形成された基板)であり、上述したように接合材13を利用した溶接によって固定されている。なお、このときの溶接としては、ローラ電極を接触させることによるシーム溶接、レーザ溶接や超音波溶接等が挙げられる。
【0036】
なお、封口板11の材質としては、容器本体10と熱膨張係数が等しいものが望ましい。熱膨張係数を揃えることで、封口板11の封止のために加熱する際や、リチウムイオン二次電池1をリフロー等で加熱した際に、熱膨張率の違いに起因する割れや歪等が容器本体10と封口板11との間に発生してしまうことを抑制することができるので、収納空間Sの密閉性を高めることができる。
更に、容器本体10と封口板11とをパラレルシーム溶接で固定する場合、封口板11の材質を接合材13と相性の良い材料とすることが望ましい。具体的には、接合材13として電解ニッケル又は無電解ニッケルを施したコバール等の金属からなるシールリングを採用した場合、封口板11の材質もコバール等の材質に電解ニッケル又は無電解ニッケルを施すことが好ましい。これによって、パラレルシーム溶接時に、必要以上に溶接パワーを上げる必要がなくなる。
【0037】
また、封口板11の下面には、全面に亘って第2集電体20が形成されている。但し、本実施形態の封口板11は、導電性の基板であるので該封口板11自体が第2集電体としての役割も兼用している。
【0038】
なお、第1集電体15及び第2集電体20は、耐食性に優れ且つ膜厚法での形成が可能なタングステン、銀や金が好ましい。
また、貴な電位を印加した際において後述する液体電解質Wに溶解するのを防止するため、バルブメタル(弁作用金属:表面に耐腐食性の不働態被膜を生成する金属)又は炭素で構成しても良い。バルブメタルとしては、アルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム等が挙げられるが、特にアルミニウム又はチタンを採用することが望ましい。
【0039】
更に、第1集電体15及び第2集電体20は、クロム層を下地層として、該下地層上に形成することが好ましい。下地層を形成することで、容器本体10に対する両集電体15、20の密着性を向上させることが可能である。なお、下地層としては、クロム層以外に、チタン層も好適である。このチタン層は、下地層としてではなく、集電体自体として利用することも可能である。
【0040】
電気化学素子3は、第1集電体15に固定された正極(第1電極)25と、該正極25上にセパレータ(隔離部材)26を挟んで重ねられ、収納空間S内に充填された液体電解質(電解質)Wを通じてリチウムイオン(金属イオン)を正極25との間で移動させる負極(第2電極)27と、を備えている。
【0041】
正極25及び負極27は、それぞれ電気化学反応に関与する図示しない電極活物質(正極活物質、負極活物質)を有している。なお、これら正極25及び負極27は、液体電解質Wを介して両者の間でリチウムイオンが移動し、該リチウムイオンを吸蔵放出可能な金属酸化物等であれば構わない。また、電極活物質同士の電子伝導性を高めるための目的で導電助剤を添加し、さらに電極の形状を保つために結着剤を添加して、正極25及び負極27を構成しても構わない。
【0042】
両電極25、27のうち正極25は、図示しない導電性接着剤等を利用して第1集電体15上に固定されており、第1集電体15に導通している。これにより、正極25は、第1集電体15及び第1貫通電極18を介して一方の外部接続端子16に導通している。そして、この正極25上にセパレータ26及び負極27が、この順序で重ねられている。
【0043】
セパレータ26は、正極25と負極27とを隔離して両電極25、27の直接的な接触を規制する部材であり、仮に衝撃等を受けたとしても、両電極25、27が接触して電気的にショートしないように設計されている。
なお、セパレータ26としては、大きなイオン透過度を有し、且つ所定の機械的強度を有する絶縁性のものが好ましい。特に、リフローを考慮すると、ガラス繊維からなる多孔質体を用いることが好ましいが、熱変形温度が230℃以上の樹脂(例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド−イミド等)も用いることも可能である。また、キャパシタとして用いる場合は、ポリテトラフルオロエチレンを用いることができる。
【0044】
液体電解質Wは、例えば予め水分を100ppm以下まで除去した有機溶媒に、同様に水分を除去したリチウム塩を溶解させた非水電解質(液)であり、収納空間S内に充填され、正極25、負極27、セパレータ26及び後述する板ばね30を浸漬させている。
【0045】
ところで、収納空間S内における封口板11と負極27との間には、負極27を正極25側に押圧する板ばね(弾性部材)30が配設されている。
この板ばね30は、金属製のばねであり、一端部30aが封口板11に接し、且つ他端部30bが負極27に接していることで、負極27を常時封口板11から離反する方向に押圧してセパレータ26に押し付けている。この板ばね30による押圧力によって、重ね合わされた負極27、セパレータ26及び正極25は、互いに密着した状態で組み合わされている。
なお、正極25と負極27との電極間距離Hは、セパレータ26の厚みとされている。
【0046】
また、この板ばね30は金属製であるので、負極27と封口板11に形成された第2集電体20とを導通させている。これにより、負極27は、板ばね30、第2集電体20及び第2貫通電極19を介して他方の外部接続端子17に導通している。
なお、本実施形態の板ばね30は、コバルトを25%〜45%有し、ニッケルを45%〜75%有するニッケル基超合金とされており、液体電解質Wに対する耐食性に優れているうえ、高弾性で機械的強度が高く、且つ非磁性で耐久性、耐熱性に優れたばね部材とされている。
【0047】
このように構成されたリチウムイオン二次電池1によれば、一対の外部接続端子16、17を介して正極25と負極27との間に電圧が印加されると、リチウムイオンが液体電解質Wを通じて正極25と負極27との間を移動すると共に、正極活物質及び負極活物質に吸蔵放出される。これにより、電気化学反応により電荷の授受が行われ、充放電が行われる。
なお、リチウムイオンは、充電時に正極25から放出されて負極27に吸蔵され、放電時に負極27から放出されて正極25に吸蔵される。
【0048】
ところで、本実施形態のリチウムイオン二次電池1によれば、封口板11と負極27との間に配設されている板ばね30が、セパレータ26を介して負極27を正極25に対して常に押し付けている。従って、充放電時、両電極25、27が上記リチウムイオンの吸蔵放出に伴う電気化学反応によって膨張、収縮し、それにより体積変化してしまったとしても、電極間距離Hを一定に維持することができる。そのため、電気化学特性を安定化させることができ、放電時の容量を安定にしたり、充電異常等の発生を抑制したりできるので、高品質で信頼性の高い二次電池とすることができる。
【0049】
また、電気化学反応によって正極25又は負極27が過度に体積膨張してしまったとしても、封口板11と負極27との間で板ばね30が押圧力に抗して圧縮するように弾性変形するので、体積膨張に起因して容器本体10と封口板11とを互いに離反させるように作用する応力を板ばね30で吸収でき、密封容器2が変形或いは損壊してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の板ばね30は、ニッケル基超合金で形成されているので、液体電解質Wに対する耐食性に優れており、該液体電解質Wに浸漬されていても腐食し難い。従って、長期的な信頼性を高めることができる。加えて、高弾性で機械的強度が高いので、長期的に亘って負極27を正極25側に安定的に押圧することができ、この点においても信頼性の向上化を図ることができる。また、非磁性であるので電気化学反応に悪影響を与え難いうえ、耐熱性にも優れているので、リフロー時にも弾性特性が変化し難い。
【0051】
そして、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、例えば、ノート型パソコン、携帯電話、コードレス電話、ヘッドフォンステレオ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電子辞書、電卓、メモリーカード、PDA、携帯用ゲーム機器等のメモリや時計機能の電源バックアップとして好適に用いることが可能である。
【0052】
なお、上記第1実施形態では、封口板11自体が導電性基板とされているので、容器本体10に対して容易且つ確実に固定し易いうえ、封口板11を外部接続端子として利用することも可能である。つまり、一方外部接続端子16及び封口板11を介して、正極25と負極27との間に電圧を印加することも可能である。
なお、封口板11は、導電性基板に限られるものではなく、セラミックス、ガラスや樹脂等の材料で形成されていても構わない。この場合であっても、第2集電体20を利用して負極27と他方の外部接続端子17とを確実に導通させることが可能である。また、この場合、容器本体10と同じ材料で封口板11を形成することが好ましい。こうすることで、容器本体10と封口板11との熱膨張係数を同一にすることができる。
【0053】
また、上記第1実施形態では、板ばね30をニッケル基超合金で形成したが、この場合に限定されず、他の金属材料で形成しても構わない。例えば、コバルトを30%〜50%有し、ニッケルを10%〜20%有するコバルト基超合金で形成しても構わないし、ステンレス(SUS316LやSUS304等)で形成しても構わない。
いずれにしても、弾性部材として好適な金属材料で形成して構わない。なお、上記金属材料で板ばね30を形成した場合には、メッキ処理等を施して、表面に防塵用被膜(ニッケルメッキ)等を形成することが好ましい。こうすることで、液体電解質Wに対する耐食性が向上するので、長期的な信頼性を向上することができる。
【0054】
また、上記第1実施形態では弾性部材の一例として板ばね30を例に挙げたが、負極27を正極25側に押圧できれば、コイルばねや螺旋状のばね部を有するものでも弾性部材として利用することが可能である。
また、板ばね30を、金属材料ではなく例えば樹脂材料で形成しても構わない。この場合には、メッキ処理等を施して表面に導電膜を形成し、該導電膜を介して負極27と封口板11とを導通させれば良い。
【0055】
また
、板ばね30の一端部30aを封口板11に対して一体的に接続し、他端部30bを負極27に対して摺接するように構成
している。この場合の封口板11と板ばね30との接続方法としては、例えば、加締め、抵抗溶接、超音波溶接やレーザ溶接等が挙げられるが、その他の方法であっても構わない。
【0056】
このように構成することで、板ばね30が封口板11に対して一体的に接続されているので、収納空間S内において板ばね30が位置ずれし難く、より安定して負極27を正極25側に押圧させた状態にしておくことができる。一方、板ばね30の他端部30bは自由端とされ、負極27に対して摺接しているので、両端部が固定されている場合とは異なり板ばね30に捩れ等が生じ難く、負極27を適正な押圧力で押圧することができる。
更に、組み立て作業時において、容器本体10に対して封口板11を被せるだけで、板ばね30を容易にセットできるので、組立作業性に優れており、効率の良い組み立てを行って低コスト化に繋げることができる。
【0057】
また、
図2に示すように、負極27上に金属製の保護板(保護体)35を例えば図示しない導電性接着剤で固定し、この保護板35を介して板ばね30が負極27を押圧するように構成しても構わない。
この場合には、板ばね30が保護板35を介して負極27を押圧するので、板ばね30からの押圧力を局所的ではなく分散させた状態で負極27に伝えることができる。そのため、負極27を全面に亘って均等な力で押圧することができ、正極25と負極27との電極間距離Hをより一定に維持し易い。また、板ばね30の他端部30bが直接負極27に接しないので、負極27に傷等が付いてしまい難く、安定した電気化学特性を発揮させることができる。
なお、保護板35としては、例えばニッケル合金や銅等の板材が挙げられる。更には、板材ではなく、負極27上に形成した金属膜を保護体としても構わない。
【0058】
また、上記第1実施形態において、容器本体10の材料の一例としてセラミックス、ガラスや樹脂等を挙げたが、より具体的には例えばセラミックス材料としては、アルミナ製のHTCC(High Temperature Co-fired Ceramic)や、ガラスセラミックス製のLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramic)等を用いることができる。
また、ガラス材料としては、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラスや硼珪酸ガラス等を用いることができるが、加工性を考慮すると硼珪酸ガラスが望ましい。
また、樹脂材料としては、熱可塑性樹脂が望ましく、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、LCP(液晶ポリマー)等を用いることができる。
【0059】
なお、上記PPSを利用して容器本体10を形成する場合、例えば複数のPPS製フィルムを積層して形成することも可能である。このPPS製フィルムには、予めキャビティとなる凹部を設けるために、プレス等で開口部(穴)を開けておくことが可能である。また、その位置決めのために、マーキングとして開口部や印字を施すことも可能である。マーキングとして印字を行う場合には、レーザ(例えば炭酸ガスレーザやYAGレーザ等)を用いた加熱によるマーキング法や、インクジェットプリンティングを施すことができる。また、フィルム間の中間部に配線を施す場合には、リードフレーム等の金属を用いることができる。このリードフレームに用いる金属は、銅系の合金以外に、例えばステンレススチールやアルミニウム等を用いることができる。
【0060】
また、上記アルミナを利用して容器本体10を形成する場合、例えばグリーンシートに貫通電極部分を打ち抜き、タングステン等の高融点の金属材料を含むインキでスクリーン印刷して焼成することで、両貫通電極18、19を有する容器本体10を得ることが可能である。その後、容器本体10の周壁部10bの上面に、ニッケルや金等をメッキすることで金属層12を形成すれば良い。
【0061】
更に、低融点のガラスセラミックスを利用して容器本体10を形成する場合、例えば周壁部10b及び底壁部10aにそれぞれ導体印刷を施して配線となる部分を形成し、その後、周壁部10bと底壁部10aとを積層させて、これらを低温で焼成することで容器本体10を形成することも可能である。
詳細には、底壁部10aの上面に第1集電体15、下面に一対の外部接続端子16、17を形成すると共に、第1貫通電極18と、第2貫通電極19の一部とを予め形成しておく。そして、周壁部10bに第2貫通電極19の残りの一部を予め形成しておく。その後、これら底壁部10aと周壁部10bとを積層して焼成することで両者を一体化させることができると共に、底壁部10a側の第2貫通電極19と、周壁部10b側の第2貫通電極19とを一体化させることができる。これにより、容器本体10を得ることができる。
【0062】
また、上記第1実施形態では、第1貫通電極18及び第2貫通電極19を共にストレート状に形成したが、断面テーパ状となるように形成しても構わない。
例えば、第1貫通電極18を、第1集電体15から外部接続端子16に向かうにしたがって漸次直径が縮径するように形成し、第2貫通電極19も同様に、金属層12から外部接続端子17に向かうにしたがって漸次直径が縮径するように形成しても構わない。
こうすることで、接合材13を溶解させて封口板11を固定する際に、液体電解質Wの蒸気圧の上昇に起因して密封容器2内の内圧が上昇し、第1貫通電極18及び第2貫通電極19に外力が作用したとしても、この外力を受けて両貫通電極18、19が抜け落ちてしまうことを抑制することができる。
【0063】
また、上記第1実施形態において、正極活物質の平均粒子サイズとしては、500μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下、特に50〜0.1μmが良い。活物質の形態としては、平均粒径0.1μm以上2.5μm以下の一次粒子が集合してなる平均粒径1μm以上20μm以下の一次粒子集合体からなることが好ましく、特に好ましくは、平均粒径0.1μm以上2.5μm以下の一次粒子が集合してなる平均粒径3.5μm以上9.5μm以下の一次粒子集合体からなることが好ましい。
更に、上記一次粒子集合体において全体積の80%以上が粒径1μm以上15μm以下であることが好ましく、更に好ましくは全体積の85%以上であり、更に好ましく全体積の90%以上である。
比表面積は、0.05〜100m
2/gが好ましく、より好ましくは0.1〜50m
2/g、特に0.1〜30m
2/gが良い。
【0064】
また、正極活物質は、2種類以上を混合して用いることもできる。使用する電圧範囲を変えたり、容量の残量を電圧により検出したり場合に応用できる。
【0065】
また、負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な周期律表のB、或いは、B及び遷移金属から選ばれる一種以上の元素の合金又は酸化物が好ましく、特にケイ素の酸化物が好ましい。
ケイ素の酸化物は、組成式LixSiOyで表され、リチウム含有量xと酸素量yがそれぞれ1.5≦x≦4、0<y<2であるリチウム含有ケイ素酸化物からなるリチウムイオン吸蔵放出可能物質を用いることができる。即ち、その結晶構造中または非晶質構造内にリチウムを含有し、非水電解質中で電気化学反応によりリチウムイオンを吸蔵及び放出可能なケイ素の酸化物であって、ケイ素原子数に対するリチウム原子数の比であるxが1.5以上且つ4.0以下であり、且つケイ素原子数に対する酸素原子数の比であるyが0より大きく且つ2より小さい組成を有する複合酸化物を用いる。
この複合酸化物中でのリチウムの状態は主としてイオンであることが好ましいが、必ずしも限定はされない。
【0066】
また、負極活物質として用いられる上記リチウム含有ケイ素酸化物LixSiOy(但し、1.5≦x≦4、0<y<2)の好ましい製造方法としては、下記の2種類の方法が上げられるが、これらに限定はされない。
【0067】
第1の方法は、ケイ素とリチウムとの各々の単体又はそれらの化合物を所定のモル比で混合し又は混合しながら、不活性雰囲気中や真空中等の非酸化性雰囲気中又はケイ素とリチウムとが所定の酸化数となるように酸素量を制御した雰囲気中で熱処理して、ケイ素とリチウムとの複合酸化物とする方法である。
【0068】
出発原料となるケイ素及びリチウムのそれぞれの化合物としては、各々の酸化物、水酸化物、或いは炭酸塩、硝酸塩等の塩或いは有機化合物等々の様な、各々を非酸化性雰囲気中で熱処理することにより各々の酸化物を生成する化合物が好ましい。これらの出発原料の混合方法としては、各原料の粉末を直接乾式混合する方法の他、これらの原料を水、アルコールやその他の溶媒に溶解もしくは分散し、溶液中で均一に混合又は反応させた後、乾燥する方法や、これらの原料を加熱や電磁波、光等によりアトマイズ又はイオン化し、同時にもしくは交互に蒸着又は析出させる方法、等々の種々の方法が可能である。
【0069】
この様にして原料を混合した後、又は混合しながら行う熱処理の温度は、出発原料や熱処理雰囲気によっても異なるが、400℃以上で合成が可能であり、好ましくは600℃以上の温度がよい。一方、不活性雰囲気中や真空中等では800℃以上の温度でケイ素と4価のケイ素酸化物に不均化反応する場合があるため、そのような場合には600〜800℃の温度が好ましい。
【0070】
これらの出発原料の組合せの中で、リチウムの供給原料として酸化リチウムLi
2O、水酸化リチウムLiOH、Li
2CO
3又はLiNO
3等の塩やそれらの水和物等々の様な熱処理により酸化リチウムを生成するリチウム化合物を用い、ケイ素の供給源としてケイ素単体もしくはケイ素の低級酸化物SiOy’(但し、0<y’<2)を用いる場合には、それらの混合物を不活性雰囲気中または真空中等の様な酸素を断った雰囲気中で熱処理することによって合成することが出来、熱処理雰囲気中の酸素量もしくは酸素分圧等の制御がし易く製造が容易であり特に好ましい。
【0071】
また、出発原料にケイ素の化合物として水素を有する各種のケイ酸を用いた場合やリチウム化合物として水酸化リチウム等を用いた場合には、加熱処理により水素が完全には脱離せず、熱処理後の生成物中に一部残り、リチウムと水素が共存することも可能であり、本発明に含まれる。
【0072】
更に、リチウムもしくはその化合物及びケイ素もしくはその化合物と共に、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等の他のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属及び/又は鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、チタン、ニオブ、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、スズ、鉛、アルミニウム、インジウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、炭素、ホウ素、窒素、リン等々のその他の金属または非金属元素の単体もしくはそれらの化合物等をも加えて混合し加熱処理することにより、これらのリチウム以外の金属もしくは非金属をリチウム及びケイ素と共存させることもでき、これらの場合も本発明に含まれる。
【0073】
この様にして得られたリチウム含有ケイ素酸化物は、これをそのままもしくは必要により粉砕整粒や造粒等の加工を施した後に負極活物質として用いることが出来る。また、下記の第2の方法と同様に、このリチウム含有ケイ素酸化物とリチウムもしくはリチウムを含有する物質との電気化学的反応により、このリチウム含有ケイ素酸化物に更にリチウムイオンを吸蔵させるか、又は逆にこの複合酸化物からリチウムイオンを放出させることにより、リチウム含有量を増加又は減少させたものを負極活物質として用いても良い。
【0074】
第2の方法は、予め、リチウムを含有しないケイ素の低級酸化物SiOy(但し、2>y>0)を合成し、得られたケイ素の低級酸化物SiOyとリチウムもしくはリチウムを含有する物質との電気化学的反応により、該ケイ素の低級酸化物SiOyにリチウムイオンを吸蔵させて、リチウムを含有するケイ素の低級酸化物LixSiOyを得る方法である。
【0075】
このようなケイ素の低級酸化物SiOyとしては、SiO
1.5(Si
2O
3)、SiO
1.33(Si
3O
4)、SiO及びSiO
0.5(Si
2O)等々の化学量論組成のものの他、yが0より大きく2未満の任意の組成のものでよい。
また、これらのケイ素の低級酸化物SiOyは、下記のような種々の公知の方法により製造することが出来る。即ち、
(1)二酸化ケイ素SiO
2とケイ素Siとを所定のモル比で混合し非酸化性雰囲気中又は真空中で加熱する方法。
(2)二酸化ケイ素SiO
2を水素H
2等の還元性ガス中で加熱して所定量還元する方法。(3)二酸化ケイ素SiO
2 を所定量の炭素Cや金属等と混合し、加熱して所定量還元する方法。
(4)ケイ素Siを酸素ガス又は酸化物と加熱して所定量酸化する方法。
(5)シランSiH
4等のケイ素化合物ガスと酸素O
2の混合ガスを加熱反応又はプラズマ分解反応させるCVD法又はプラズマCVD法。
等々である。
【0076】
また、ケイ素の低級酸化物SiOyには、ケイ素と共に水素やナトリウム、カリウム、ルビジウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属及び/又は鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、チタン、ニオブ、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、スズ、鉛、アルミニウム、インジウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、炭素、ホウ素、窒素、リン等々のその他の金属または非金属元素を含有させることもでき、これらの場合も本発明に含まれる。
【0077】
このケイ素の低級酸化物SiOyへの電気化学的反応によるリチウムイオンの吸蔵は、電池組立後電池内で、又は電池製造工程の途上において電池内もしくは電池外で行うことが出来、具体的には次の様にして行うことが出来る。即ち、
(1)ケイ素の低級酸化物又はそれらと導電剤及び結着剤等との混合合剤を所定形状に成形したものを一方の電極(作用極、正極25)とし、金属リチウム又はリチウムを含有する物質をもう一方の電極(対極、負極27)としてリチウムイオン導電性の非水電解質に接して両電極25、27を対向させて電気化学セルを構成し、作用極がカソード反応をする方向に適当な電流で通電し電気化学的にリチウムイオンを該ケイ素の低級酸化物に吸蔵させる。得られた該作用極をそのまま負極27として又は負極27を構成する負極活物質として用いて非水電解質二次電池を構成する。
【0078】
(2)ケイ素の低級酸化物又はそれらと導電剤及び結着剤等との混合合剤を所定形状に成形し、これにリチウムもしくはリチウムの合金等を圧着してもしくは接触させて積層電極としたものを負極27として非水電解質二次電池に組み込む。電池内でこの積層電極が電解質に触れることにより一種の局部電池を形成し、自己放電し電気化学的にリチウムが該ケイ素の低級酸化物に吸蔵される方法。
(3)ケイ素の低級酸化物を負極活物質とし、リチウムを含有しリチウムイオンを吸蔵放出可能な物質を正極活物質として用いた非水電解質二次電池を構成する。電池として使用時に充電を行うことにより正極25から放出されたリチウムイオンが該ケイ素の低級酸化物に吸蔵される方法。
【0079】
本発明における電極構成要素の配合比は各電極の総重量にたいして電極活物質として30〜95重量%、導電助剤として用いる炭素質材料はとして1〜70重量%とする。混合比は活物質のリチウムイオンの吸蔵放出の体積変化、電気伝導度、電極形状等により異なる。電極活物質の組成がLi
aT
bL
cO
dで示される複合酸化物や二酸化マンガン等の遷移金属酸化物とした場合は、電極活物質として75〜95重量%、炭素質材料として2〜15重量%の範囲で用いることがより好ましい。
また、ケイ素、スズや遷移金属等の各種酸化物等を電極活物質とした場合、電極活物質は30〜70重量%、炭素質材料は70〜30重量%がより好ましい。結着剤は、電解液に不溶のものが好ましいが特に限定されるもではなく、多糖類、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー等を1種またはこれらの混合物や共重合体として用いることができる。
【0080】
また、上記第1実施形態では、第1貫通電極18を介して第1集電体15と一方の外部接続端子16とを導通させると共に、第2貫通電極19を介して第2集電体20と他方の外部接続端子17とを導通させたが、この場合に限定されるものではない。
例えば、
図3に示すように、容器本体10の側面に形成した側面電極41、42を介して、第1集電体15と一方の外部接続端子16とを導通させると共に、第2集電体20と他方の外部接続端子17とを導通させても構わない。この点詳細に説明する。
【0081】
第1集電体15は、一方の外部接続端子16が形成されている側の容器本体10の側面まで延設している。そして、側面まで延設された第1集電体15と外部接続端子16とを接続するように、容器本体10の側面に一方の側面電極41が形成されている。
一方、他方の側面電極42は、容器本体10の周壁部10bの上面に形成された金属層12と他方の外部接続端子17とを接続するように、容器本体10の側面に形成されている。
このように構成したリチウムイオン二次電池40であっても、外部接続端子16、17と第1集電体15及び第2集電体20との接続ルートが異なるだけで、同様の作用効果を奏効することができ、表面実装型の二次電池として利用できる。
【0082】
また、上記第1実施形態では、ベース部材を有底筒状の容器本体10とし、リッド部材を平板状の封口板11としたが、この場合に限定されるものではなく、ベース部材とリッド部材との間に収納空間Sを画成できれば、ベース部材及びリッド部材をどのような形状に形成しても構わない。
【0083】
例えば、
図4に示すように、ベース部材を平板状のベース基板52とし、リッド部材を有頂筒状の蓋体53とした密封容器51としても構わない。
ベース基板52には、第1貫通電極18および第2貫通電極19がそれぞれ形成されている。
【0084】
蓋体53は、筒状の周壁部53aと、該周壁部53aの上端部に連設され、且つ周壁部53aを塞ぐ頂壁部53bと、周壁部53aの下端部に連設され、且つ周壁部53aの径方向外方に延びるフランジ部53cと、を備えており、フランジ部53cが金属層12及び接合材13を介してベース基板52上に重ねられている。
そして、蓋体53は、接合材13を利用した溶接によってベース基板52上に固定されている。この際、蓋体53の周壁部53a及び頂壁部53bと、ベース基板52とで画成された空間が、収納空間Sとされている。また、蓋体53の内面には、第2集電体20が形成されている。
【0085】
このように構成されたリチウムイオン二次電池50であっても、密封容器51の形状が異なるだけで同様の作用効果を奏効することができ、表面実装型の二次電池として利用することが可能である。
【0086】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を、
図5を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態ではチップ型の二次電池であったのに対して、第2実施形態ではボタン型の二次電池とされている点である。
【0087】
即ち、本実施形態のリチウムイオン二次電池(電気化学セル)60は、
図5に示すように、有底筒状の正極缶(ベース部材)62、及びこの正極缶62に対してガスケット63を介して固定され、正極缶62との間に密閉された収納空間Sを画成する負極缶(リッド部材)64を有する密封容器61と、収納空間S内に収納された電気化学素子3と、を備えている。
【0088】
正極缶62は、例えばステンレスの板材を絞り加工して有底筒状に形成されたものであり、その開口端縁は平面視円形状とされている。負極缶64は、有頂筒状に形成されており、その開口端縁は正極缶62の内部に入り込んでガスケット63を正極缶62との間で挟み込んでいる。また、正極缶62の開口端縁は、径方向内側に向かって加締められており、ガスケット63を負極缶64に押し付けて封口している。
このようにして、正極缶62と負極缶64とはガスケット63を介して互いに連結固定されている。
【0089】
なお、負極缶64を、ステンレスと硬質アルミニウムとを圧延加工にて貼り合わせた2層構造としても構わない。この場合、ステンレス層が外側、硬質アルミニウム層が内側になるように成形すれば良い。
【0090】
正極缶62の底面には、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤からなる第1集電体15が形成され、該第1集電体15を介して正極ペレット(第1電極)65が固定されている。なお、第1集電体15を介して正極ペレット65を正極缶62に接着させた後、減圧加熱乾燥を行って正極缶62と正極ペレット65とを一体化(ユニット化)させても構わない。この場合、減圧加熱乾燥は、例えば280℃で8時間程度行えば良い。
【0091】
なお、正極ペレット65は、例えばLiMn含有酸化物に、導電剤としてのグラファイト、結着剤としてのポリアクリル酸樹脂を、90:7:3の割合で混合して正極合剤とし、該正極合剤を加圧成形してペレット状にしたものである。具体的には、7.5mgの正極合剤を2ton/2cm
2の力で加圧成形してペレット状にしたものである。
【0092】
正極ペレット65上には、セパレータ26を介して負極となるリチウムフォイル(第2電極)66が配設されている。なお、本実施形態のセパレータ26は、厚さ200μmのガラス繊維を原料とする不織布を乾燥後、直径3mmの円盤状に打ち抜かれたものである。リチウムフォイル66は、直径2mm、厚さ0.22mmに打ち抜かれたものである。
【0093】
なお、本実施形態の液体電解質Wにおいて用いられる溶媒としては、好ましくはジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテルから選択される1種以上のポリエチレングリコールジアルキルエーテルと、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジアチルエーテルとから選択される混合溶媒である。
そして、本実施形態では、上記混合溶媒にリチウムパーフルオロメチルスルホニルイミドを1mol/lの濃度に溶解したものが5μl、収納空間Sに充填されている。
【0094】
このように構成されたボタン型のリチウムイオン二次電池60であっても、板ばね30がリチウムフォイル66を正極ペレット65側に押圧しているので、リチウムイオンの吸蔵放出に伴って正極ペレット65及びリチウムフォイル66が膨張、収縮し、体積変化してしまったとしても、両者の電極間距離Hを一定に維持することができ、電気化学特性が安定した高品質な二次電池とすることができる。
【0095】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態を
図6及び
図7を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態と第3実施形態との異なる点は、第1実施形態では弾性部材として板ばね30を用いたのに対して、第3実施形態ではダイヤフラム状ばねを用いている点である。
【0096】
図6及び
図7に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池(電気化学セル)70は、収納空間S内における封口板11と負極27との間に、負極27を正極25側に押圧する金属製のダイヤフラム状ばね(弾性部材)71が配設されている。
【0097】
このダイヤフラム状ばね71は、円盤状に形成されていると共に、中央部から外周縁部に向かうにしたがって漸次封口板11側に向けて反った凹曲面状に形成されている。そして、このダイヤフラム状ばね71は、平面視で収納空間Sの中心に配設され、中央部が負極27に接し、且つ外周縁部が封口板11に接していることで、負極27を常時封口板11から離反する方向に押圧してセパレータ26に押し付けている。このダイヤフラム状ばね71の押圧力によって、負極27、セパレータ26及び正極25は互いに密着した状態で組み合わされている。また、負極27と封口板11に形成された第2集電体20とは、ダイヤフラム状ばね71を介して導通している。
【0098】
このように構成されたリチウムイオン二次電池70であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏効することができる。特に、ダイヤフラム状ばね71を利用した場合には、負極27に対して中央部が面接触していると共に、外周縁部が全周に亘って封口板11の第2集電体20に接する。従って、板ばね30を用いた場合に比べて、負極27及び第2集電体20に対する接触面積を増大でき、導通性をより向上することができる。
【0099】
なお、ダイヤフラム状ばね71を利用する場合において、図示の例では中央部を負極27に接触させ、外周縁部を封口板11の第2集電体20に接触させるようにダイヤフラム状ばね71を配置したが、上下逆向きに配置しても構わない。即ち、中央部を封口板11の第2集電体20に接触させ、外周縁部を負極27に接触させるようにダイヤフラム状ばね71を配置しても構わない。
また、図示の例では、ダイヤフラム状ばね71を1枚としたが、2枚以上のダイヤフラム状ばね71を並べて配置しても構わない。この場合、特に密封容器2が縦長の場合に有効である。
【0100】
また
、参考形態として、図8及び
図9に示すように、接合材13としてシールリング(以下、本
参考形態においてシールリング13と称する)を採用し、このシールリング13にダイヤフラム状ばね71を係止させても構わない。
シールリング13は、内周縁側が収容空間内に突出した係止部81とされており、この係止部81にダイヤフラム状ばね71の外周縁部の一部が係止されている。これによりダイヤフラム状ばね71は、セパレータ26を介して負極27を正極25側に押圧した状態で位置決めされている。また、負極27は、ダイヤフラム状ばね71及びシールリング13を介して第2集電体20に対して導通している。
【0101】
このように構成されたリチウムイオン二次電池(電気化学セル)80の場合には、組み立て時、封口板11を容器本体10に組み合わせる前にダイヤフラム状ばね71を位置決めすることができる。そのため、封口板11にダイヤフラム状ばね71の弾性復元力が伝わることを防止でき、封口板11の溶接時に該封口板11が剥がれ難く、安定し易い。従って、高い組み立て精度で効率の良い組み立て作業を行える。
また、この場合であっても、ダイヤフラム状ばね71がシールリング13を介して第2集電体20に導通しているので、第1集電体15と第2集電体20とを介して正極25と負極27との間に電圧を印加でき、充放電を確実に行える。
【0102】
また、
図8及び
図9ではシールリング13にダイヤフラム状ばね71を係止させたが、容器本体10にダイヤフラム状ばね71を係止させても構わない。
例えば、
図10及び
図11に示すように、容器本体10の周壁部10bの上端部を、全周に亘って収納空間S内に突出させた係止部91とし、この係止部91にダイヤフラム状ばね71の外周縁部の一部を係止させる。これによりダイヤフラム状ばね71は、セパレータ26を介して負極27を正極25側に押圧した状態で位置決めされている。また、係止部91を含む周壁部10bの内面には、上記金属層12が延長して形成されている。この金属層12は、係止されたダイヤフラム状ばね71を、接合材13を介して第2集電体20に対して導通させる導電膜として機能する。
【0103】
このように構成されたリチウムイオン二次電池(電気化学セル)90の場合であっても、上記リチウムイオン二次電池80の場合と同様の作用効果を奏効することができる。即ち、封口板11の溶接時に該封口板11が剥がれ難く、安定し易いので、高い組み立て精度で効率の良い組み立て作業を行える。特に、容器本体10に対してダイヤフラム状ばね71を係止できるので、シールリング13の溶接時に該シールリング13を安定させることもでき、より組み立て作業を行い易い。
【0104】
なお、この場合の係止部91としては、
図12に示すように、三角状の突起部92が高さ方向に多段(3段)に形成されたものであっても構わないし、
図13に示すように、断面逆テーパ状に突起したものであっても構わない。
特に、
図12に示す場合には、下段の突起部92にダイヤフラム状ばね71を係止させたが、中段又は上段の突起部92にダイヤフラム状ばね71を係止させても構わない。係止する突起部92の位置を変更することで、容易にダイヤフラム状ばね71の弾性復元力を調整できるので、使い易い。
【0105】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態を
図14から
図16を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態と第4実施形態との異なる点は、第1実施形態では弾性部材として板ばね30を用いたのに対して、第4実施形態では捩じれに起因する弾性復元力を利用するトーションバーユニットを用いている点である。
【0106】
図14から
図16に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池(電気化学セル)100は、収納空間S内における封口板11と負極27との間に、負極27を正極25側に押圧するトーションバーユニット(弾性部材)110が配設されている。
【0107】
このトーションバーユニット110は、密封容器2の短手方向に沿って配設された金属製のトーションバー111と、該トーションバー111の一端部に連結され、密封容器2の長手方向に延在した金属製の第1連結バー112と、トーションバー111の他端部に連結され、密封容器2の長手方向に延在した金属製の第2連結バー113と、で構成されている。
トーションバー111は、例えば中実の円柱体であり、その両端部は半球状に丸みを帯びて形成されている。なお、このトーションバー111としては角柱体であっても構わないし、中空の筒体であっても構わない。なお、トーションバー111は負極27及び封口板11のいずれに対しても非接触な状態で、第1連結バー112及び第2連結バー113によって支持されている。
【0108】
第1連結バー112は、例えば中実の四角柱体であり、一端部がトーションバー111の一端部に連結されている。この際の連結方法としては、例えば溶接や接着による固定や、ピン固定、ねじ等の締結手段による固定等、公知の方法を採用すれば良い。第1連結バー112の他端部は、封口板11の下面に対して接着や溶接や嵌合等によって固定されている。
第2連結バー113は、第1連結バー112と同様に例えば中実の四角柱体であり、一端部がトーションバー111の他端部に連結され、他端部が負極27に対して接着や嵌合等によって固定されている。
【0109】
このように構成されたリチウムイオン二次電池100であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏効することができる。
即ち、リチウムイオン二次電池100の組み立て時、
図16に示すようにトーションバーユニット110の第1連結バー112の他端部には封口板11側からの押圧力F1が作用し、第2連結バー113の他端部には負極27側からの押圧力F2が作用する。するとトーションバー111は、これらの押圧力F1、F2の伝達によって、矢印Mに示す方向に捩られるように変形しようとする。ところがトーションバー111は、元の状態に戻ろうとするので、上記捩れに抗する弾性復元力が内部に発生し、該弾性復元力が第1連結バー112及び第2連結バー113に伝わる。そのため、第1連結バー112及び第2連結バー113の他端部には、それぞれ封口板11側及び負極27側からの押圧力F1、F2に抗する反発力F3、F4が作用する。
【0110】
これにより、トーションバーユニット110は、負極27を常時封口板11から離反する方向に押圧してセパレータ26に押し付けることができ、重ね合わせた負極27、セパレータ26及び正極25を互いに密着した状態で組み合わせることができる。また、トーションバーユニット110を介して、負極27と封口板11に形成された第2集電体20とを導通させることができる。
従って、本実施形態の場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏効することができる。
【0111】
なお、上記実施形態では、第1連結バー112及び第2連結バー113の2本の連結バーを用いたが、必ずしも2本必要なわけではなく、1本でも構わない。
例えば、
図17から
図19に示すように、トーションバー111と第2連結バー113とで構成されたトーションバーユニット130を具備するリチウムイオン二次電池(電気化学セル)120としても構わない。この場合におけるトーションバー111は、上端部分が封口板11の下面に対して辺接触した状態で固定されている。
【0112】
この場合、リチウムイオン二次電池120の組み立て時、
図19に示すようにトーションバーユニット130の第2連結バー113の他端部には負極27側からの押圧力F5が作用する。するとトーションバー111は、この押圧力F5の伝達によって矢印Mに示す方向に捩られるように変形しようとする。ところがトーションバー111は、元の状態に戻ろうとするので、上記捩れに抗する弾性復元力が内部に発生し、該弾性復元力が第2連結バー113に伝わる。そのため、第2連結バー113の他端部には負極27側からの押圧力F5に抗する反発力F6が作用する。
【0113】
これにより、トーションバーユニット130は、負極27を常時封口板11から離反する方向に押圧してセパレータ26に押し付けることができ、重ね合わせた負極27、セパレータ26及び正極25を互いに密着した状態で組み合わせることができる。また、トーションバーユニット130を介して、負極27と封口板11に形成された第2集電体20とを導通させることができる。従って、やはり同様の作用効果を奏効することができる。
【0114】
なお、上記実施形態では、トーションバー111と第2連結バー113とでトーションバーユニット130を構成したが、トーションバー111と第1連結バー112とでトーションバーユニットを構成し、トーションバー111の下端部分を負極27に固定し、第1連結バー112の他端部を負極27の下面に固定しても構わない。
【0115】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0116】
例えば、上記各実施形態において、正極、負極及び液体電解質のそれぞれの材料については、正極と負極との間でリチウムイオンが移動可能とされ、該リチウムイオンの吸蔵放出による電荷の授受により充放電可能とされれば適宜自由に選択して構わない。
例えば、正極活物質としてFeS、負極活物質としてSiOを用いても構わない。また、正極活物質としてリチウム含有マンガン酸化物、負極活物質としてLi−Al合金等の金属リチウムと合金をなす金属間化合物を用いても構わない。
なお、リチウムの金属間化合物としては、Li−Al以外にも、Li−In合金、Li−Sn合金、Li−Si合金等を例示できる。これらの金属間化合物は、材料の強度等を向上させる目的で、上述の元素以外に第三の添加物を加えても良く、例えば、Ca、Mg、Si、Mn、V等の元素が例示できる。
【0117】
また、上記各実施形態では、電気化学セルの一例として、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、負極活物質として金属リチウムや、金属リチウムとアルミニウムや錫等の他の金属との合金を用いたリチウム二次電池でも構わないし、負極活物質にリチウムイオン吸蔵可能な炭素系材料を用い、そこにリチウムイオンを予めドープさせたリチウムイオンキャパシタ等の電気二重層キャパシタでも適用可能である。
【0118】
また、上記各実施形態では、収納空間内に液体電解質を充填し、負極、正極、セパレータ及び板ばねを浸漬させた構成にしたが、必ずしも浸漬させる必要はなく、少なくともセパレータに含浸されていれば良い。この場合であっても、セパレータと正極との界面、及びセパレータと負極との界面に確実に液体電解質を存在させて電気化学反応を行わせることができる。
【0119】
また、電解質としては、液体電解質に限定されるものではなく、固体電解質を利用しても構わない。
例えば、セラミックペーパーに、無機の固体電解質(Li
4SiO
4)を練りこみ、又は、ホットプレスにより、電極を一体化した固体電解質をセパレータの代わりに隔離部材として利用したり、該固体電解質を正極と負極との間に挟み重ね合わせ、SPS法(通電焼結=プラズマ焼結)等の物理手法を用いて、一体化したりしても構わない。また、上記固体電解質を、正極又は負極の表面にレーザアブレーション堆積法やRFスパッタ法、真空蒸着等の物理手法を用いて析出させた後、正極と負極との間に挟み重ね合わせた後、利用しても良い。
この場合であっても、固体電解質を通じて例えばリチウムイオンを正極と負極との間で移動させることができるので、確実な電気化学反応を行わせることができ、電気化学セルとして用いることが可能である。
【0120】
また、上記各実施形態における、板ばね30、ダイヤフラム状ばね71、トーションバーユニット110、130の金属材料としては、例えばステンレス鋼、耐食合金やFe−Ni系合金等が挙げられる。
【0121】
このうちステンレス鋼としては、次のいずれかのものを用いることができる。
(a)オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼。
(b)オーステナイト系ステンレス鋼。
(c)析出硬化ステンレス鋼。
(d)フェライト系ステンレス鋼。
(e)マルテンサイト系ステンレス鋼。
特に、上記(e)から(a)に向かうにしたがって耐食性が高まるのでより望ましい。
【0122】
なお、上記(a)に示したオーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼としては、SUS329J4L〔Ni(5.5〜7.5%)、Cr(24〜26%)、Mo(2.5〜3.5%)〕が挙げられる。
上記(b)に示したオーステナイト系ステンレス鋼としては、SUS316〔Ni(10〜14%)、Cr(16〜18%)、Mo(2〜3%)〕や、SUS304〔Ni(8〜10.5%)、Cr(18〜20%)〕が挙げられる。
上記(c)に示した析出硬化ステンレス鋼としては、SUS630〔Ni(3〜5%)、Cr(15〜17.5%)、Cu(3〜5%)、Nb(0.15〜0.45%)〕が挙げられる。
上記(d)に示したフェライト系ステンレス鋼としては、SUS430等が挙げられる。
【0123】
上記耐食合金としては、スプロン(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、エルジロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)等が挙げられる。なお、インコネル(登録商標)を採用する場合には、特に900番が優れている。
上記Fe−Ni系合金としては、42−アロイ(Fe−42Ni)、コバール(Fe−29Ni−17Co)、インバー(Fe−36Ni)、エリンバー(Ni36%、鉄52%、コバルト12%の合金)等が挙げられる。
【0124】
上記したように、板ばね30、ダイヤフラム状ばね71、トーションバーユニット110、130の金属材料としては各種のものが採用することが可能であるが、さらにメッキを施して被膜させることが好ましい。メッキを施すことで、耐食性をより向上することができ、長期的な信頼性を向上できる。特に、電解質として固体電解質を用いた場合、組み立て作業時又はリフロー時に加熱によって固体電解質が気化し、板ばね30、トーションバーユニット110、130が腐食する可能性が高くなり易い。そのため、この点においてもメッキを施すことが好ましい。
【0125】
メッキ材料としては、例えば、Au、Au−Co、Pt、Ir、Pd、Pd−Co、Hg、Rh、Ag、Tc、Po、Cu、Bi、Ge等が挙げられる。