(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱エッチングを行う工程は、前記素子領域において前記炭化珪素基板に、面方位{0−33−8}および{0−11−4}のいずれかを有するチャネル面を形成する工程を含む、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
前記チャネル面を形成する工程は、前記チャネル面を含む内壁が設けられたトレンチを形成することによって行われる、請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
前記素子領域において前記炭化珪素基板の前記第1の側には、面方位{0−33−8}および{0−11−4}のいずれかを有するチャネル面が設けられている、請求項8に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記外周領域(終端領域)においては基板(炭化珪素基板)上に、通常、パッシベーションのための絶縁膜が形成されている。したがって、外周領域において、基板(炭化珪素基板)と絶縁膜との界面が形成されている。この界面に沿った電流が流れやすいほどソース電極およびドレイン電極(第1および第2の電極)の間にリーク電流が流れやすくなる。本発明者らの検討によれば、終端領域における炭化珪素基板の結晶学的な面方位が不適切であると、炭化珪素基板と絶縁膜との界面における界面準位密度が高くなり、この結果、第1および第2の電極の間にリーク電流が流れやすくなることがわかった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、電極間におけるリーク電流を抑制することができる炭化珪素半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の炭化珪素半導体装置の製造方法は、平面視において、半導体素子が設けられている素子領域と、素子領域を取り囲んでいる終端領域とを有する炭化珪素半導体装置の製造方法であって、次の工程を有する。六方晶系の単結晶構造を有する炭化珪素から作られ、厚さ方向において互いに反対の側である第1の側および第2の側を有する炭化珪素基板が準備される。終端領域において炭化珪素基板に、素子領域を取り囲みかつ面方位{0−33−8}または{0−11−4}を有する側壁と、素子領域および側壁を含む領域を取り囲みかつ面方位{000−1}を有する底面とが形成されるように、炭化珪素基板の第1の側において熱エッチングが行われる。側壁および底面の上に絶縁膜が形成される。素子領域において炭化珪素基板の第1の側の上に第1の電極が形成される。炭化珪素基板の第2の側の上に第2の電極が形成される。
【0007】
この製造方法によれば、炭化珪素基板の表面のうち第1および第2の電極の間の部分に側壁および底面が熱エッチングにより設けられる。熱エッチングを用いることで、側壁の面方位を{0−33−8}または{0−11−4}とし、また底面の面方位を{000−1}とすることができる。これにより炭化珪素基板の側壁および底面の各々と絶縁膜との界面における界面準位密度が低くなる。よって界面準位の存在に起因した電流の生成が抑制されるので、第1および第2の電極の間におけるリーク電流を抑制することができる。
【0008】
好ましくは熱エッチングを行う工程は、素子領域において炭化珪素基板に、面方位{0−33−8}または{0−11−4}を有するチャネル面を形成する工程を含む。これにより、チャネル面に沿ったキャリアの移動度を高めることができるので、チャネル抵抗を抑制することができる。よって炭化珪素半導体装置のオン抵抗を小さくすることができる。さらに好ましくはチャネル面を形成する工程は、チャネル面を含む内壁が設けられたトレンチを形成することによって行われる。トレンチ構造を採用することにより、同一面積内に高密度にチャネルを配置することができる。これにより、より大きな電流を得ることが可能となる。
【0009】
好ましくは熱エッチングを行う工程は、ハロゲン元素を含有するプロセスガスを用いて行われる。これによりトレンチの側壁が所望の面に自己形成される。また、SiO
2をマスクに用いることでSiCに対して高い選択比が得られるので、トレンチを確実に形成することが可能になる。より好ましくは、ハロゲン元素は塩素である。塩素ガスを用いることで、上記と同様の理由で、所望の面をより確実に形成することが可能となる。プロセスガスは、四フッ化炭素および六フッ化硫黄の少なくともいずれかを含有してもよい。これによってもトレンチの側壁が所望の面に自己形成される。好ましくはプロセスガスは酸素ガスを含有する。これにより熱エッチング中に酸素が導入されるので、SiC表面に形成される炭素の薄膜層(SiC中のC原子が残留したもの)をSiCと同時に除去することが可能である。
【0010】
本発明の炭化珪素半導体装置は、平面視において、半導体素子が設けられている素子領域と、素子領域を取り囲んでいる終端領域とを有するものである。この炭化珪素半導体装置は、炭化珪素基板と、第1および第2の電極と、絶縁膜とを有する。炭化珪素基板は、六方晶系の単結晶構造を有する炭化珪素から作られ、厚さ方向において互いに反対の側である第1の側および第2の側を有する。炭化珪素基板の第1の側には、終端領域において素子領域を取り囲みかつ面方位{0−33−8}または{0−11−4}を有する側壁と、側壁を取り囲みかつ面方位{000−1}を有する底面とが設けられている。絶縁膜は側壁および底面の上に設けられている。第1の電極は素子領域において炭化珪素基板の第1の側の上に設けられている。第2の電極は炭化珪素基板の第2の側の上に設けられている。
【0011】
この装置によれば、炭化珪素基板の表面のうち第1および第2の電極の間の部分に側壁と底面とが設けられる。側壁の面方位が{0−33−8}または{0−11−4}とされまた底面の面方位が{000−1}とされることで、側壁および底面の各々と絶縁膜との界面における界面準位密度が低くなる。よって界面準位の存在に起因した電流の生成が抑制されるので、第1および第2の電極の間におけるリーク電流を抑制することができる。
【0012】
好ましくは、素子領域において炭化珪素基板の第1の側には、面方位{0−33−8}または{0−11−4}を有するチャネル面が設けられている。これにより、チャネル面に沿ったキャリアの移動度を高めることができるので、チャネル抵抗を抑制することができる。よって炭化珪素半導体装置のオン抵抗を小さくすることができる。さらに好ましくは、チャネル面は、素子領域において炭化珪素基板の第1の側に設けられたトレンチの内壁の一部である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上述したように、電極間におけるリーク電流を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、面の指数が負であることを示す際に、数字の上に”−”(バー)を付す代わりに、数字の前に負の符号を付けている。また角度の記載には、全方位角を360度とする系を用いている。
【0016】
はじめに本実施の形態の炭化珪素半導体装置としてのMOSFETの構成の概要について、以下に説明する。
【0017】
図1(A)に示すように、平面視においてMOSFET100は、トランジスタ素子(半導体素子)が設けられている素子領域CLと、素子領域CLを取り囲んでいる終端領域TMとを有する。
図1(B)に示すように、素子領域CLと終端領域TMとの境界は、ジグザグ形状を含んでもよい。このジグザグ形状において、素子領域CLから終端領域TMへ突き出た部分の角度DCは好ましくは60°である。またこのジグザグ形状において、終端領域TMから素子領域CLへ突き出た部分の角度DTは好ましくは60°である。なお60°が好ましいのは、MOSFET100において、後述するように六方晶系の結晶構造が用いられており、この結晶構造が6回対称性を有することに起因している。好ましくは
図1(C)に示すように、上記のジグザグ形状に沿って側壁STが配置され、このジグザグ形状に側壁STを介して隣り合うように底面BTが設けられている。なお側壁STおよび底面BTの詳細は後述する。
【0018】
図2に示すように、MOSFET100はゲートトレンチ型である。MOSFET100は、炭化珪素基板SBと、絶縁膜8Tと、ゲート絶縁膜8Cと、ゲート電極9と、層間絶縁膜10と、ソース電極12と、ソース配線電極13と、ドレイン電極14と、裏面保護電極15とを有する。
【0019】
炭化珪素基板SBは、六方晶系の単結晶構造を有する炭化珪素から作られ、厚さ方向において互いに反対の側である表側(第1の側)および裏側(第2の側)を有する。炭化珪素基板SBの表側には素子領域CLにおいて、表側に向かってテーパ状に拡がるトレンチ6Cが設けられている。また炭化珪素基板SBの表側には終端領域TMにおいてテラス6Tが設けられている。テラス6Tは、炭化珪素基板SBの裏側の部分が炭化珪素基板SBの外周方向に張り出すことによって構成されている。
【0020】
トレンチ6Cの内壁の一部により、素子領域CLにおいて炭化珪素基板SBの表側に、面方位{0−33−8}または{0−11−4}を有するチャネル面SCが設けられている。チャネル面SCは、MOSFET100のチャネル電流がそれに沿って流れる面であり、後述するp型ボディ層3の表面によって構成されている。チャネル面SCは、面方位{0−33−8}または{0−11−4}を有しており、好ましくは、面方位(0−33−8)、(30−3−8)、(−330−8)、(03−3−8)、(−303−8)および(3−30−8)の少なくともいずれかを有する。
【0021】
テラス6Tにより、終端領域TMにおいて炭化珪素基板SBの表側に、側壁STと、側壁STを取り囲む底面BTとが設けられている。逆に言えば、側壁STおよび底面BTによってテラス6Tが構成されている。側壁STは、面方位{0−33−8}または{0−11−4}を有しており、好ましくは、面方位(0−33−8)、(30−3−8)、(−330−8)、(03−3−8)、(−303−8)および(3−30−8)の少なくともいずれかを有する。好ましくは、炭化珪素基板SBに側壁STとして上記6つの面方位のすべてが設けられる。この場合、六角形が有する6つの辺のそれぞれに接するように、(0−33−8)面、(30−3−8)面、(−330−8)面、(03−3−8)面、(−303−8)面および(3−30−8)面を、側壁STとして配置し得る。底面BTは、面方位{000−1}を有し、好ましくは面方位(000−1)を有する。
【0022】
ソース電極12は素子領域CLにおいて炭化珪素基板SBの表側の上に設けられている。ドレイン電極14は炭化珪素基板SBの裏側の上に設けられている。絶縁膜8Tは側壁STおよび底面BTの上に設けられている。
【0023】
次にMOSFET100の詳細な構成について、以下に説明する。
図2に示すように、炭化珪素基板SBは、炭化珪素からなる単結晶基板1と、単結晶基板1の主表面MS上にエピタキシャルに形成された炭化珪素層とを有する。
【0024】
単結晶基板1は、n型の導電型を有し、六方晶系の単結晶構造を有する炭化珪素から作られている。単結晶基板1の主表面MSの面方位は、{000−1}から5度以内のオフ角を有し、より好ましくは(000−1)から5度以内のオフ角を有する。
【0025】
上記炭化珪素層は、単結晶基板1の主表面MSとほぼ平行な主表面TSを有する。この炭化珪素層は、導電型がn型であるエピタキシャル層である耐圧保持層2と、導電型がp型であるp型ボディ層3と、導電型がn型であるn型ソースコンタクト層4と、導電型がp型であるコンタクト領域5と、導電型がp型である電界緩和領域7と、JTE(Junction Termination Extension)領域21と、ガードリング領域22と、フィールドストップ領域23とを有する。p型ボディ層3と、n型ソースコンタクト層4と、コンタクト領域5とは、素子領域CLに設けられている。
【0026】
JTE領域21と、ガードリング領域22と、フィールドストップ領域23とは、終端領域TMにおいて炭化珪素基板SBの表側に設けられている。JTE領域21と、ガードリング領域22と、フィールドストップ領域23との各々は、平面視において素子領域CLを取り囲むように設けられている。
図1(B)のジグザグ形状が設けられる場合、JTE領域21と、ガードリング領域22と、フィールドストップ領域23との各々は、このジグザグ形状に対応したジグザグ形状を有してもよく、あるいはこのジグザグ形状に厳密には沿わずに直線状に延びてもよい。JTE領域21は、p型ボディ層3と同一の導電型を有し、かつp型ボディ層3とつながっている。ガードリング領域22は、平面視においてJTE領域21を取り囲んでおり、耐圧保持層2の導電型と異なる導電型を有する。フィールドストップ領域23は、平面視においてガードリング領域22を取り囲んでおり、耐圧保持層2の導電型と同じ導電型を有し、かつ耐圧保持層2の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有する。
【0027】
耐圧保持層2は、単結晶基板1の主表面MS上に形成されている。耐圧保持層2上にはp型ボディ層3が形成されている。p型ボディ層3上には、n型ソースコンタクト層4が形成されている。このn型ソースコンタクト層4に取囲まれるように、p型のコンタクト領域5が形成されている。
【0028】
トレンチ6Cの内壁上にはゲート絶縁膜8Cが形成されている。このゲート絶縁膜8Cはn型ソースコンタクト層4の上部表面上にまで延在している。このゲート絶縁膜8C上に、トレンチ6Cの内部を充填するようにゲート電極9が形成されている。ゲート電極9の上部表面は、ゲート絶縁膜8Cにおいてn型ソースコンタクト層4の上部表面上に位置する部分の上面とほぼ同じ高さになっている。
【0029】
ゲート絶縁膜8Cのうちn型ソースコンタクト層4の上部表面上にまで延在する部分とゲート電極9とを覆うように層間絶縁膜10が形成されている。層間絶縁膜10とゲート絶縁膜8Cの一部とを除去することにより、n型ソースコンタクト層4の一部とp型のコンタクト領域5とを露出するように開口部が形成されている。この開口部の内部を充填するとともに、p型のコンタクト領域5およびn型ソースコンタクト層4の一部と接触するようにソース電極12が形成されている。ソース電極12の上部表面と接触するとともに、層間絶縁膜10の上部表面上に延在するようにソース配線電極13が形成されている。また、単結晶基板1において耐圧保持層2が形成された主表面とは反対側の裏面上には、ドレイン電極14が形成されている。このドレイン電極14はオーミック電極である。このドレイン電極14において、単結晶基板1と対向する面とは反対側の面上に裏面保護電極15が形成されている。
【0030】
次にMOSFET100の動作について簡単に説明する。
図2を参照して、ゲート電極9にしきい値以下の電圧を与えた状態、すなわちオフ状態では、p型ボディ層3と導電型がn型である耐圧保持層2との間が逆バイアスとなり、非導通状態となる。一方、ゲート電極9に正の電圧を印加すると、p型ボディ層3においてゲート絶縁膜8Cと接触する領域の近傍であるチャネル領域において、反転層が形成される。その結果、n型ソースコンタクト層4と耐圧保持層2とが電気的に接続された状態となる。この結果、ソース電極12とドレイン電極14との間に電流が流れる。
【0031】
次にMOSFET100の製造方法について、以下に説明する。
図3に示すように、六方晶系の単結晶構造を有する炭化珪素から作られ、厚さ方向において互いに反対の側である表側および裏側を有する炭化珪素基板SBが準備される。具体的には、以下のとおりである。
【0032】
まず、炭化珪素から作られた単結晶基板1が準備される。単結晶基板1は六方晶系の単結晶構造を有する。また単結晶基板1には、上述した主表面MSが設けられている。
【0033】
次に主表面MS上に、n型の導電型を有する炭化珪素のエピタキシャル層が形成する。当該エピタキシャル層は耐圧保持層2となる。耐圧保持層2を形成するためのエピタキシャル成長は、たとえば原料ガスとしてシラン(SiH
4)とプロパン(C
3H
8)との混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素ガス(H
2)を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法により実施することができる。また、このときドナー不純物としてたとえば窒素(N)やリン(P)を導入することが好ましい。この耐圧保持層2のn型不純物の濃度は、たとえば5×10
15cm
-3以上5×10
16cm
-3以下とすることができる。
【0034】
次に耐圧保持層2の上部表面層にイオン注入を行うことにより、p型ボディ層3およびn型ソースコンタクト層4が形成される。p型ボディ層3を形成するためのイオン注入においてはアクセプタ不純物が用いられ、たとえばアルミニウム(Al)などが用いられる。またドナー不純物を、p型ボディ層3が形成された耐圧保持層2へイオン注入することにより、n型ソースコンタクト層4が形成される。ドナー不純物としてはたとえばリンなどを用いることができる。以上により炭化珪素基板SBが形成される。
【0035】
次に
図4に示すように、素子領域CLにおいて炭化珪素基板SBの表側からn型ソースコンタクト層4およびp型ボディ層3を順に貫通するトレンチ16Cが設けられる。トレンチ16Cが設けられる位置は、トレンチ6C(
図2)が設けられることになる位置に対応している。また終端領域TMにおいて炭化珪素基板SBの表側からn型ソースコンタクト層4およびp型ボディ層3を除去することで形成されたテラス16Tが設けられる。テラス16Tが設けられる位置は、テラス6T(
図2)が設けられることになる位置に対応している。トレンチ16Cおよびテラス16Tの側壁は、
図4に示すように、おおよそ厚さ方向に沿っている。以下に、トレンチ16Cおよびテラス16Tの形成方法について説明する。
【0036】
まずn型ソースコンタクト層4の上部表面(
図3における主表面TS)上にマスク層17が形成される。マスク層17として、たとえばシリコン酸化膜などの絶縁膜を用いることができる。マスク層17の形成方法としては、たとえば次のような工程を用いることができる。まずn型ソースコンタクト層4の上部表面上に、CVD法などを用いてシリコン酸化膜を形成する。そして、このシリコン酸化膜上にフォトリソグラフィ法を用いて所定の開口パターンを有するレジスト膜(図示せず)を形成する。このレジスト膜をマスクとして用いて、シリコン酸化膜をエッチングにより除去する。その後レジスト膜を除去する。この結果、
図4に示すように、トレンチ16Cおよびテラス16Tが形成されるべき領域に開口パターンを有するマスク層17が形成される。
【0037】
そして、このマスク層17をマスクとして用いて、n型ソースコンタクト層4、p型ボディ層3および耐圧保持層2の一部をエッチングにより除去する。エッチングの方法としてはたとえば反応性イオンエッチング(RIE)またはイオンミリングを用いることができる。RIEとしては特に誘導結合プラズマ(ICP)RIEを用いることができる。具体的には、たとえば反応ガスとしてSF
6またはSF
6とO
2との混合ガスを用いたICP−RIEを用いることができる。このようなエッチングにより、トレンチ16Cおよびテラス16Tが形成される。
【0038】
次に
図5に示すように、素子領域CLにおいてトレンチ6Cが形成され、終端領域においてテラス6Tが形成される。これらは、炭化珪素基板SBの表側における熱エッチングにより行われる。ここで熱エッチングとは、エッチングされる対象を高温下でエッチングガスにさらすことによって行われるものであり、物理的エッチング作用を実質的に有しないものである。トレンチ6Cの形成によって、素子領域CLにおいて炭化珪素基板SBに、トレンチ6Cの内壁の一部として、面方位{0−33−8}または{0−11−4}を有するチャネル面SCが自己形成される。またテラス6Tの形成によって、終端領域TMにおいて炭化珪素基板SBに、素子領域CLを取り囲みかつ面方位{0−33−8}または{0−11−4}を有する側壁STと、素子領域CLおよび側壁STを含む領域を取り囲みかつ面方位{000−1}を有する底面BTとが自己形成される。
【0039】
熱エッチングのプロセスガスはハロゲン元素を含有する。より好ましくはハロゲン元素は塩素である。塩素に代わって、または塩素とともに、プロセスガスは四フッ化炭素および六フッ化硫黄の少なくともいずれかを含有してもよい。プロセスガスは、ハロゲン元素を含有するガスに加えてさらに酸素ガスを含有することが好ましい。
【0040】
プロセスガスが塩素ガスおよび酸素ガスの混合ガスの場合を例に、エッチングの進行過程について説明する。SiC+mO
2+nCl
2→SiCl
x+CO
y(ただし、m、n、x、yは正の数)と表される反応式において、0.5≦x≦2.0、1.0≦y≦2.0というxおよびyの条件が満たされる場合に反応が進みやすく、x=4、y=2という条件の場合が最も反応が進む。ただし上記mおよびnは、実際に反応している酸素ガスおよび塩素ガスの量を表しており、プロセスガスとして供給される量とは異なる。本発明者らは、この熱エッチングにおいて供給される塩素の流量に対する酸素の流量の比率が0.1以上2.0以下となることが好ましく、より好ましくはこの比率の下限は0.25である。この場合、炭化珪素基板SBに{0−33−8}または{0−11−4}面、および{000−1}面をより確実に自己形成することができる。
【0041】
なお、プロセスガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスなどの反応ガスに加えてキャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素(N
2)ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。
【0042】
熱エッチングの熱処理温度は、好ましくは700℃以上1200℃以下である。この温度の下限は、より好ましくは800℃、さらに好ましくは900℃である。またこの温度の上限は、より好ましくは1100℃、さらに好ましくは1000℃である。この場合、エッチング速度を十分実用的な値とすることができる。熱処理温度を700℃以上1000℃以下とした場合、SiCのエッチング速度はたとえば70μm/hr程度になる。マスク層17の材料として酸化珪素(SiO
2)を用いると、SiO
2に対するSiCの選択比を極めて大きくすることができるので、SiCのエッチング中にSiO
2からなるマスク層17は実質的にエッチングされない。
【0043】
熱エッチング後、マスク層17がエッチングなどにより除去される。
次に
図6に示すように、コンタクト領域5と、電界緩和領域7と、JTE領域21と、ガードリング領域22と、フィールドストップ領域23とが形成される。これらの形成は、マスクを用いることによる選択的なイオン注入によって行うことができる。
【0044】
そして、上述したイオン注入により注入された不純物を活性化するための活性化アニールが行われる。活性化アニールは、炭化珪素からなるエピタキシャル層の表面上キャップ層を特に形成することなく行われてもよい。特に{0−33−8}または{0−11−4}面については、キャップ層などの保護膜を表面に形成することなく活性化アニール処理を行なっても表面性状が劣化することがなく、十分な表面平滑性を維持できる。
【0045】
再び
図2を参照して、終端領域TMにおいて炭化珪素基板SB上に絶縁膜8Tが形成される。これにともなって側壁STおよび底面BTの上に絶縁膜8Tが形成される。また素子領域CLにおいて炭化珪素基板SB上にゲート絶縁膜8Cが形成される。絶縁膜8Tおよびゲート絶縁膜8Cは一括して形成されてもよい。絶縁膜8Tおよびゲート絶縁膜8Cは、たとえば、炭化珪素基板SBの表側を熱酸化することによって形成され得る。
【0046】
次に、トレンチ6Cの内部を充填するように、ゲート絶縁膜8C上にゲート電極9が形成される。ゲート電極9の形成方法としては、たとえば以下のような方法を用いることができる。まず、ゲート絶縁膜8C上において、トレンチ6Cの内部およびp型のコンタクト領域5上の領域にまで延在するゲート電極となるべき導電体膜を、スパッタリング法などを用いて形成する。導電体膜の材料としては導電性を有する材料であれば金属など任意の材料を用いることができる。その後、エッチバックあるいはCMP(Chemical Mechanical Polishing)法など任意の方法を用いて、トレンチ6Cの内部以外の領域に形成された導電体膜の部分を除去する。この結果、トレンチ6Cの内部を充填するような導電体膜が残存し、当該導電体膜によりゲート電極9が構成される。
【0047】
次に、ゲート電極9の上部表面、およびp型のコンタクト領域5上において露出しているゲート絶縁膜8Cの上部表面上を覆うように層間絶縁膜10が形成される。層間絶縁膜10としては、絶縁性を有する材料であれば任意の材料を用いることができる。そして、層間絶縁膜10上に、パターンを有するレジスト膜(図示せず)を、フォトリソグラフィ法を用いて形成する。当該レジスト膜にはp型のコンタクト領域5上に位置する領域に開口パターンが形成されている。
【0048】
そして、このレジスト膜をマスクとして用いて、エッチングにより層間絶縁膜10およびゲート絶縁膜8Cを部分的にエッチングにより除去する。この結果、層間絶縁膜10およびゲート絶縁膜8Cには開口部が形成される。この開口部の底部においては、コンタクト領域5およびn型ソースコンタクト層4の一部が露出した状態となる。その後、当該開口部の内部を充填するとともに、上述したレジスト膜の上部表面上を覆うようにソース電極12となるべき導電体膜を形成する。その後、薬液などを用いてレジスト膜を除去することにより、レジスト膜上に形成されていた導電体膜の部分を同時に除去する(リストオフ)。この結果、開口部の内部に充填された導電体膜によりソース電極12を形成できる。このソース電極12はコンタクト領域5およびn型ソースコンタクト層4とオーミック接触したオーミック電極である。
【0049】
また、単結晶基板1の裏面側(耐圧保持層2が形成された主表面MSと反対側の表面側)に、ドレイン電極14が形成される。ドレイン電極14としては、単結晶基板1とオーミック接触が可能な材料であれば任意の材料を用いることができる。
【0050】
その後、ソース電極12の上部表面に接触するとともに、層間絶縁膜10の上部表面上に延在するソース配線電極13、およびドレイン電極14の表面に形成された裏面保護電極15がそれぞれスパッタリング法などによって形成される。
【0051】
以上により、MOSFET100(
図2)が製造される。
本実施の形態によれば、炭化珪素基板SBの表面のうちソース電極12およびドレイン電極14の間の部分に側壁STと底面BTとが、熱エッチングにより設けられる。よって炭化珪素基板SBの表面を経路とする、ソース電極12とドレイン電極14との間のリーク電流は、側面STおよび底面BTを通る。熱エッチングを用いることで、側壁STの面方位を{0−33−8}または{0−11−4}とし、また底面BTの面方位を{000−1}とすることができる。これにより側壁STおよび底面BTの各々と絶縁膜8Tとの界面における界面準位密度が低くなる。よって界面準位の存在に起因した電流の生成が抑制されるので、ソース電極12およびドレイン電極14の電極の間におけるリーク電流を抑制することができる。
【0052】
また熱エッチングを行う工程は、素子領域CLにおいて炭化珪素基板SBに、面方位{0−33−8}または{0−11−4}を有するチャネル面SCを形成する工程を含む。これにより、チャネル面SCに沿ったキャリアの移動度を高めることができるので、チャネル抵抗を抑制することができる。よってMOSFET100のオン抵抗を小さくすることができる。
【0053】
またチャネル面を形成する工程は、チャネル面を含む内壁が設けられたトレンチ6Cを形成することによって行われる。トレンチ構造を採用することにより、同一面積内に高密度にチャネルを配置することができる。これにより、より大きな電流を得ることが可能となる。またトレンチ6Cの最終形状が熱エッチングによって形成されるので、トレンチ6Cの角部NR(
図5)に、局所的に掘り込まれた領域であるサブトレンチが形成されることを避けることができる。なおこのようなサブトレンチは、トレンチの最終形状が物理的エッチング作用を有するエッチング法によって形成された場合に生じやすく、たとえばRIEによって形成された場合に観察され得る。
【0054】
また熱エッチングを行う工程は、ハロゲン元素を含有するプロセスガスを用いて行われる。これによりトレンチ6Cの側壁が、所望の面である、{0−33−8}面または{01−1−4}面に自己形成される。
【0055】
また、マスク層17の材料にSiO
2をに用いることでSiCに対して高い選択比が得られるので、トレンチ6Cを確実に形成することが可能になる。
【0056】
より好ましくは、上記ハロゲン元素は塩素である。塩素ガスを用いることで、上記と同様の理由で、所望の面をより確実に形成することが可能となる。プロセスガスは、四フッ化炭素および六フッ化硫黄の少なくともいずれかを含有してもよい。これによってもトレンチ6Cの側壁が所望の面に自己形成される。
【0057】
好ましくはプロセスガスは酸素ガスを含有する。これにより熱エッチング中に酸素が導入されるので、SiC表面に形成される炭素の薄膜層(SiC中のC原子が残留したもの)をSiCと同時に除去することが可能である。
【0058】
なお本実施の形態においては終端領域TMにおける絶縁膜8Tと素子領域CLにおけるゲート絶縁膜8Cとが同時に形成されるが、終端領域における絶縁膜と素子領域におけるゲート絶縁膜とは別個に形成されてもよい。
【0059】
また終端領域TMにおいて、JTE領域21と、ガードリング領域22と、フィールドストップ領域23とが設けられているが、これらの少なくともいずれかが省略されてもよい。
【0060】
またMOSFET100はnチャネル型であるが、nチャネル型ほどのキャリア移動度を必要としない場合は、炭化珪素半導体装置はpチャネル型であってもよい。この場合、上述した実施の形態においてp型とn型とが入れ替えられた構成を用いることができる。
【0061】
また炭化珪素半導体装置は、MOSFET以外のMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよく、またMISFET以外のものであってもよい。MISFET以外の炭化珪素半導体装置としては、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)がある。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の特許請求の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。