特許第5742712号(P5742712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5742712
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/12 20060101AFI20150611BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20150611BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20150611BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 655Z
   H01L29/78 658A
   H01L29/78 658E
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-290203(P2011-290203)
(22)【出願日】2011年12月29日
(65)【公開番号】特開2013-140857(P2013-140857A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 圭司
(72)【発明者】
【氏名】増田 健良
【審査官】 須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−66390(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/007483(WO,A1)
【文献】 特開2007−242797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶基板上に、前記単結晶基板上に面する第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有し、炭化珪素から作られ第1導電型を有するドリフト層を形成する工程と、
前記ドリフト層の前記第2の面上に、炭化珪素から作られ第2導電型を有するコレクタ層を形成する工程と、
前記単結晶基板を除去することによって前記ドリフト層の前記第1の面を露出する工程と、
前記ドリフト層の前記第1の面に位置し前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、前記ボディ領域によって前記ドリフト層から隔てられるように前記ボディ領域の上に位置し前記第1導電型を有するエミッタ領域とを形成する工程と、
前記ドリフト層と前記エミッタ領域とをつなぐように前記ボディ領域上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
前記エミッタ領域および前記ボディ領域の各々に接するエミッタ電極を形成する工程とを備える、炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記単結晶基板は炭化珪素から作られている、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記単結晶基板は第1導電型を有する、請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1導電型はn型である、請求項2または3に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記コレクタ層を形成する工程は、不純物イオンを注入する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記コレクタ層を形成する工程は、導電型不純物を添加しながら炭化珪素を成長させる工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ドリフト層の前記第2の面上に、第1導電型を有し、前記ドリフト層の不純物濃度に比して高い不純物濃度を有するフィールドストップ層を形成する工程をさらに備え、
前記フィールドストップ層および前記コレクタ層を形成する工程によって、前記ドリフト層上に位置する前記フィールドストップ層と、前記フィールドストップ層上に位置するコレクタ層とが形成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ドリフト層の結晶性は前記コレクタ層の結晶性に比して高い、請求項1〜7のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記コレクタ層は1×1018/cm3以上の不純物濃度を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2008−288349号公報(特許文献1)によれば、シリコン基板を用いたn型IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が開示されている。このIGBTのp型コレクタ層は、シリコン基板のエミッタ側の構造が形成された後に、イオン注入および熱処理によって形成される。
【0003】
近年、電力用半導体装置用の基板として、シリコン基板に代わって炭化珪素基板を用いることが検討されている。炭化珪素(SiC)中にイオン注入された不純物を活性化するための熱処理温度は通常1500℃程度以上であり、シリコン中にイオン注入された不純物を活性化するための熱処理温度に比してはるかに高い。よって炭化珪素基板を用いたIGBTの製造方法において上記特開2008−288349号公報の技術が適用されると、エミッタ側の構造に対して、高温加熱に起因したダメージを与えてしまう。よってこの技術の適用は困難である。
【0004】
特表2010−529646号公報(特許文献2)によれば、n型炭化珪素基板上にp型炭化珪素エピタキシャル層が形成され、次に半導体装置の構造が形成され、次にn型炭化珪素基板の少なくとも一部が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−288349号公報
【特許文献2】特表2010−529646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特表2010−529646号公報に記載の技術によりIGBTが製造される場合、炭化珪素基板の除去によってp型炭化珪素エピタキシャル層(コレクタ層)を確実に露出させようとすると、工程ばらつきを考慮すれば、不可避的にコレクタ層の一部も除去せざるを得ない。この結果、コレクタ層の厚さがばらついてしまい、これにより半導体装置の装置間での特性ばらつきが生じる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、その目的は、特性ばらつきの小さい炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の炭化珪素半導体装置の製造方法は次の工程を有する。単結晶基板上に、単結晶基板上に面する第1の面と、第1の面と反対の第2の面とを有し、炭化珪素から作られ第1導電型を有するドリフト層が形成される。ドリフト層の第2の面上に、炭化珪素から作られ第2導電型を有するコレクタ層が形成される。単結晶基板を除去することによってドリフト層の第1の面が露出させられる。ドリフト層の第1の面に位置し第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、ボディ領域によってドリフト層から隔てられるようにボディ領域の上に位置し第1導電型を有するエミッタ領域とが形成される。ドリフト層とエミッタ領域とをつなぐようにボディ領域上にゲート絶縁膜が形成される。ゲート絶縁膜上にゲート電極が形成される。エミッタ領域およびボディ領域の各々に接するエミッタ電極が形成される。
【0009】
この製造方法によれば、コレクタ層は単結晶基板上にドリフト層を介して形成される。よって単結晶基板が除去される際にコレクタ層の一部まで除去されることを避けることができる。よって単結晶基板の除去工程のばらつきに起因したコレクタ層の厚さばらつきの発生を避けることができる。よって炭化珪素半導体装置におけるコレクタ層の厚さばらつきを抑制することができる。よって炭化珪素半導体装置の特性ばらつきを抑制することができる。
【0010】
上記製造方法において単結晶基板は炭化珪素から作られていてもよい。これにより単結晶基板の材料と、その上に形成されるドリフト層の材料とが共に炭化珪素となる。よってより品質の高いドリフト層を形成しやすくなる。
【0011】
上記製造方法において単結晶基板は第1導電型を有していてもよい。これにより、単結晶基板の導電型と、その上に形成されるドリフト層の導電型とが共に第1導電型となる。言い換えれば、単結晶基板の導電型と、その上に形成されるドリフト層の導電型とが同じとなる。よってより品質の高いドリフト層を形成しやすくなる。
【0012】
上記製造方法において第1導電型はn型であってもよい。これによりゲート電極によって制御されるチャネルをn型とすることができる。よってこのチャネルのキャリアとして、正孔に比して移動度の高い電子を用いることができる。
【0013】
上記製造方法においてコレクタ層が形成される際に、不純物イオンが注入されてもよい。これにより、イオン注入法を用いてコレクタ層を形成することができる。
【0014】
上記製造方法においてコレクタ層が形成される際に、導電型不純物を添加しながら炭化珪素が成長させられてもよい。これによりコレクタ層中の導電型不純物の少なくとも一部を、イオン注入法を用いずに添加することができる。
【0015】
上記製造方法において、ドリフト層の第2の面上に、第1導電型を有し、ドリフト層の不純物濃度に比して高い不純物濃度を有するフィールドストップ層が形成されてもよい。フィールドストップ層およびコレクタ層を形成する工程によって、ドリフト層上に位置するフィールドストップ層と、フィールドストップ層上に位置するコレクタ層とが形成される。このフィールドストップ層により、ボディ領域からドリフト層へ伸長する空乏層がコレクタ層に到達することを抑制することができる。
【0016】
上記製造方法において、ドリフト層の結晶性はコレクタ層の結晶性に比して高くてもよい。これにより炭化珪素半導体装置中を流れる電流のドリフト層における損失を抑えることができ、十分なキャリア寿命により効果的な伝導度変調を得ることができる。
【0017】
上記製造方法においてコレクタ層は1×1018/cm3以上の不純物濃度を有してもよい。これによりコレクタ層からドリフト層中へより十分なキャリアを供給することができる。
【発明の効果】
【0018】
上述したように本発明によれば、特性ばらつきの小さい炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
図2図1の炭化珪素半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す断面図である。
図3図1の炭化珪素半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す断面図である。
図4図1の炭化珪素半導体装置の製造方法の第3工程を概略的に示す断面図である。
図5図1の炭化珪素半導体装置の製造方法の第4工程を概略的に示す断面図である。
図6図1の炭化珪素半導体装置の製造方法の第5工程を概略的に示す断面図である。
図7図1の炭化珪素半導体装置の製造方法の第6工程を概略的に示す断面図である。
図8図1の炭化珪素半導体装置の製造方法の第7工程を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書中の結晶学的記載においては、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。また本明細書中において、第1の構造が第2の構造の上にある旨の記載は、特に限定されていない限り、第1の構造が第2の構造に直接接触するように配置されていることと、第1の構造が第2の構造にさらに第3の構造を介して間接的に接触するように配置されていることとのいずれをも意味し得る。以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態のIGBT90(炭化珪素半導体装置)は、炭化珪素層SCと、ゲート絶縁膜11と、ゲート電極9と、エミッタ電極42と、エミッタ配線43と、コレクタ電極44と、層間絶縁膜10と、保護電極15とを有する。
【0022】
炭化珪素層SCは結晶構造が六方晶の炭化珪素または結晶型が立方晶の炭化珪素からなる。炭化珪素層SCは、n型(第1導電型)の領域と、p型(第2導電型)の領域とを有する。具体的には炭化珪素層SCは、p型コレクタ層30と、n型フィールドストップ層31と、n型ドリフト層32と、p型ボディ領域33と、n型エミッタ領域34とを有する。好ましくは炭化珪素層SCの厚さは30μm以上である。
【0023】
n型ドリフト層32の厚さは、好ましくは50μm以上200μm以下である。n型ドリフト層32は、面S1(第1の面)と面S2(第2の面)とを有する。n型フィールドストップ層31はn型ドリフト層32の面S2上に設けられている。なおn型フィールドストップ層31は省略されてもよい。
【0024】
p型コレクタ層30はn型フィールドストップ層31上に設けられている。言い換えれば、p型コレクタ層30はn型フィールドストップ層31を介してn型ドリフト層32の面S2上に設けられている。p型コレクタ層30の厚さは、たとえば1μmである。なおn型フィールドストップ層31が省略される場合は、p型コレクタ層30はn型ドリフト層32の面S2上に直接設けられ得る。
【0025】
p型ボディ領域33は、n型ドリフト層の面S1上に設けられている。またp型ボディ領域33は、p領域33aと、p+領域33bとを有する。p領域33aに比してp+領域33bは高い不純物濃度を有する。p領域33aはゲート絶縁膜11に接している。p+領域33bはエミッタ電極42に接している。
【0026】
n型エミッタ領域34はp型ボディ領域33の上に設けられている。またn型エミッタ領域34はp型ボディ領域33によってn型ドリフト層32から隔てられている。
【0027】
ゲート絶縁膜11は、n型ドリフト層32とn型エミッタ領域34とをつなぐようにp型ボディ領域33上に設けられている。ゲート絶縁膜11は、たとえば、熱酸化法によって形成された酸化珪素(SiO2)からなる。ゲート電極9はゲート絶縁膜11上に設けられている。
【0028】
エミッタ電極42は、n型エミッタ領域34と、p型ボディ領域33のp+領域33bとの各々に接している。エミッタ配線43は、エミッタ電極42上に設けられており、エミッタ電極42と電気的に接続されている。エミッタ配線43は、たとえばアルミニウムからなる。
【0029】
コレクタ電極44はp型コレクタ層30に接するように炭化珪素層SCの面S2上に設けられているオーミック電極である。コレクタ電極44は、たとえば、面S2に面するNi層と、Ni層上に設けられたAu層とを有する。Ni層およびAu層のそれぞれの代わりにTi層およびAl層が用いられてもよい。保護電極15はコレクタ電極44を覆っている。
【0030】
次にIGBT90の使用方法の概要を説明する。エミッタ配線43に対して保護電極15の電位が正となるように、エミッタ配線43および保護電極15の間に電圧が印加される。エミッタ配線43および保護電極15の間の電気的導通がゲート電極9に印加される電位によってスイッチングされる。
【0031】
具体的には、ゲート電極9にしきい値を超える正の電位が印加されると、p型ボディ領域33のうち、ゲート絶縁膜11を介してゲート電極9に対向する領域(チャネル領域)に反転層が形成される。これによりn型エミッタ領域34とn型ドリフト層32とが電気的に接続される。よってn型エミッタ領域34からn型ドリフト層32中に電子が注入され、これに対応してp型コレクタ層30から正孔がn型ドリフト層32中へ供給される。この結果、n型ドリフト層32に伝導度変調が生じることで、エミッタ電極42とコレクタ電極44との間の抵抗が顕著に低下する。すなわちIGBT90がオン状態となる。
【0032】
一方、ゲート電極9に上記のような電位が印加されていないと、チャネル領域には反転層が形成されず、n型ドリフト層32とp型ボディ領域33との間が逆バイアスの状態に維持される。よってIGBT90はオフ状態となる。
【0033】
次にIGBT90の製造方法について、以下に説明する。
図2を参照して、炭化珪素から作られたn型単結晶基板20が準備される。好ましくはn型単結晶基板20は、炭化珪素層SC(図1)と同様の結晶構造を有する。また好ましくはn型単結晶基板20の主面(図中、上面)は、炭化珪素層SCの面S1の面方位と反対の面方位を有する。
【0034】
次にn型単結晶基板20上に、n型単結晶基板20上に面する面S1と、面S1と反対の面S2とを有し、炭化珪素から作られたn型ドリフト層32が形成される。n型ドリフト層32の形成は、n型単結晶基板20上においてドナー型不純物を添加しながら炭化珪素がエピタキシャルに成長させられることにより行われる。エピタキシャル成長は、たとえば、化学気相成長法(CVD法)により行われる。CVD法における成膜温度は、たとえば1400℃程度である。CVD法における原料ガスとしてはシラン(SiH4)およびプロパン(C38)の混合ガスを用いることができる。ドナー型不純物としては、たとえば窒素(N)またはリン(P)を用いることができる。原料ガスのキャリアガスとして、たとえば水素ガス(H2)を用いることができる。
【0035】
次にドリフト層の面S2上に、n型フィールドストップ層31が形成される。n型フィールドストップ層31は、n型ドリフト層32の形成方法とほぼ同様の方法によって形成され得る。
【0036】
次に、n型フィールドストップ層31を介してn型ドリフト層32の面S2上に、炭化珪素から作られたp型コレクタ層30が形成される。n型フィールドストップ層31およびp型コレクタ層30は、イオン注入法またはエピタキシャル成長法によって形成され得る。
【0037】
イオン注入法が用いられる場合、p型コレクタ層30の形成は、n型フィールドストップ層31上へ、アクセプタ型不純物をイオン注入することにより行われる。n型フィールドストップ層31が設けられない場合は、n型ドリフト層32上またはp型コレクタ層30上にイオン注入が行われる。
【0038】
エピタキシャル成長法が用いられる場合、たとえばCVD法によるp型コレクタ層30の成膜が行われる。CVD法における成膜温度は、たとえば1400℃程度である。CVD法における原料ガスとしてはシラン(SiH4)およびプロパン(C38)の混合ガスを用いることができる。アクセプタ型不純物としては、たとえばアルミニウム(Al)またはボロン(B)を用いることができる。原料ガスのキャリアガスとして、たとえば水素ガス(H2)を用いることができる。
【0039】
p型コレクタ層30の形成は、n型フィールドストップ層31を介してn型ドリフト層32の面S2上において、アクセプタ型不純物を添加しながら炭化珪素がエピタキシャルに成長させられることにより行われる。エピタキシャル成長は、たとえば、CVD法により行われる。CVD法における成膜温度は、たとえば1400℃程度である。CVD法における原料ガスとしてはシラン(SiH4)およびプロパン(C38)の混合ガスを用いることができる。アクセプタ型不純物としては、たとえばアルミニウム(Al)またはボロン(B)を用いることができる。原料ガスのキャリアガスとして、たとえば水素ガス(H2)を用いることができる。
【0040】
さらに図3を参照して、n型単結晶基板20の少なくとも一部が除去される。除去方法としては、たとえばバックグラインド法が用いられ得る。すなわちn型単結晶基板20が研削され得る。あるいはエッチング法が用いられ得る。エッチング法として、反応性イオンエッチングが用いられてもよい。
【0041】
n型単結晶基板20が除去されることにより、n型ドリフト層32の面S1の少なくとも一部が露出される。好ましくは、面S1の少なくとも一部が確実に露出されるよう、面S1の少なくとも一部の上においてn型ドリフト層32が、ある程度除去される。
【0042】
図4を参照して、n型ドリフト層32の面S1に位置するp型ボディ領域33と、p型ボディ領域33によってn型ドリフト層32から隔てられるようにp型ボディ領域33の上に位置するn型エミッタ領域34とが形成される。p型ボディ領域33は、たとえばアルミニウム(Al)などのイオン注入により形成され得る。n型エミッタ領域34は、たとえばリン(P)などのイオン注入により形成され得る。
【0043】
次に炭化珪素層SC中の導電型不純物を活性化するための熱処理が行われる。この熱処理の温度は、好ましくは1500℃以上である。またこの熱処理の温度は、好ましくは1900℃以下である。たとえば、熱処理の温度は1700℃程度である。熱処理の時間は、たとえば30分程度である。熱処理の雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばAr雰囲気である。
【0044】
図5を参照して、炭化珪素層SCの、面S1を含む表面上に、ゲート絶縁膜11が形成される。ゲート絶縁膜11の形成は、たとえば熱酸化によって行い得る。
【0045】
図6を参照して、ゲート絶縁膜11上にゲート電極9が形成される。たとえば、まず、CVD法による不純物が添加された導電性ポリSiの堆積、またはポリSiの堆積とそれに続く不純物添加とが行われる。次に不純物の活性化とパターニングとが行われる。
【0046】
図7を参照して、層間絶縁膜10が形成される。またp型ボディ領域33上においてn型ドリフト層32とn型エミッタ領域34とをつなぐ部分が残存するように、ゲート絶縁膜11がパターニングされる。
【0047】
図8を参照して、n型エミッタ領域34およびp型ボディ領域33の各々に接するオーミック電極であるエミッタ電極42が形成される。またエミッタ電極42上にエミッタ配線43が形成される。エミッタ配線43は、たとえばアルミニウムからなる。
【0048】
再び図1を参照して、p型コレクタ層30上に、オーミック電極であるコレクタ電極44が形成される。またコレクタ電極44を覆う保護電極15が形成される。以上によりIGBT90が得られる。
【0049】
本実施の形態によれば、p型コレクタ層30はn型単結晶基板20上にn型ドリフト層32を介して形成される(図2)。よってn型単結晶基板20が除去される際にp型コレクタ層30の一部まで除去されてしまうことを避けることができる。よってn型単結晶基板20の除去工程のばらつきに起因したp型コレクタ層30の厚さばらつきの発生を避けることができる。よってIGBTにおけるp型コレクタ層30の厚さばらつきを抑制することができる。よってIGBTの特性ばらつきを抑制することができる。
【0050】
またn型単結晶基板20は炭化珪素から作られている。これによりn型単結晶基板20の材料と、その上に形成されるn型ドリフト層32の材料とが共に炭化珪素となる。よってより品質の高いn型ドリフト層32を形成しやすくなる。
【0051】
またn型単結晶基板20はn型を有する。よって単結晶基板がp型の場合に比して、高品質の基板をより容易に準備することができる。またn型ドリフト層32はn型を有する。よってドリフト層がp型の場合に比して、高品質のドリフト層をより容易に準備することができる。またn型単結晶基板20およびn型ドリフト層32の各々は、n型、すなわち共通の導電型を有する。よってn型単結晶基板20上に、より品質の高いn型ドリフト層32を形成しやすくなる。
【0052】
またn型ドリフト層32の導電型(第1導電型)がn型であることにより、ゲート電極109によって制御されるチャネルをn型とすることができる。よってこのチャネルのキャリアとして、正孔に比して移動度の高い電子を用いることができる。
【0053】
p型コレクタ層30の形成が不純物イオンを注入することによる場合は、イオン注入法を用いてp型コレクタ層30を形成することができる。注入された不純物は、p型ボディ領域33およびn型エミッタ領域34の少なくともいずれかの不純物と共に一括して活性化され得る。
【0054】
p型コレクタ層30の形成が、導電型不純物を添加しながら炭化珪素を成長させることによる場合は、p型コレクタ層30中の導電型不純物の少なくとも一部を、イオン注入法を用いずに添加することができる。
【0055】
またn型フィールドストップ層31が設けられる場合、p型ボディ領域33からn型ドリフト層32へ伸長する空乏層がp型コレクタ層30に到達することをn型フィールドストップ層31により抑制することができる。
【0056】
n型ドリフト層32の結晶性はp型コレクタ層30の結晶性に比して高くてもよい。n型ドリフト層32の結晶性が高いことで、炭化珪素半導体装置中を流れる電流のn型ドリフト層32における損失を抑えることができる。結晶性は、たとえばX線回折における回折ピークの半値幅またはロッキングカーブの半値幅によって評価し得る。
【0057】
p型コレクタ層30は1×1018/cm3以上の不純物濃度を有してもよい。これによりp型コレクタ層30からn型ドリフト層32中へより十分なキャリアを供給することができる。
【0058】
本実施の形態においてはn型単結晶基板20は炭化珪素から作られているが、他の材料の基板が用いられてもよい。またn型単結晶基板20の代わりにp型単結晶基板が用いられてもよい。また本実施の形態またはその変形例の構成におけるn型とp型とが入れ替えられた構成が用いられてもよい。
【0059】
炭化珪素層SCの表面を特定の結晶面とするためには、たとえば、ゲート絶縁膜11(図5)が形成される前に、特定の面とする部分以外をSiO2のマスクで覆い、炭化珪素層SCの表面が熱エッチングされればよい。これにより、この表面が特定の結晶面に自己形成される。
【0060】
熱エッチングは、炭化珪素層SCを加熱しつつ、炭化珪素と化学反応し得るプロセスガスを炭化珪素層SCへ供給することによって行われる。
【0061】
好ましくはプロセスガスは、塩素原子を含むエッチングガスを含む。このようなエッチングガスとしては、たとえば塩素ガスを用いることができる。好ましくはプロセスガスは、酸素原子を含む酸化ガスを含む。酸化ガスとしては、たとえば酸素ガスを用いることができる。プロセスガスとして酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスが用いられる場合、混合ガスの供給において、塩素の流量に対する酸素の流量の比率は、好ましくは0.1以上以上2.0以下とされ、より好ましくは0.25以上とされる。
【0062】
なおプロセスガスはキャリアガスを含んでもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素(N2)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガスなどを用いることができる。
【0063】
また熱エッチングにおける熱処理の温度は、好ましくは700℃以上1200℃以下とされる。熱処理温度を700℃以上とすることで、SiCのエッチング速度70μm/hr程度を確保し得る。下限温度は、より好ましくは800℃以上とされ、さらに好ましくは900℃以上とされる。上限温度は、より好ましくは1100℃以下とされ、さらに好ましくは1000℃以下とされる。
【0064】
なお、熱エッチングにより、上述した特定の面を斜面として有するトレンチが形成されてもよい。この斜面に、たとえば、n+領域、p型ボディ領域、およびn型ドリフト層が設けられることで、この斜面上にチャネルを有するトレンチ型IGBTを作製することができる。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の特許請求の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
9 ゲート電極、10 層間絶縁膜、11 ゲート絶縁膜、15 保護電極、20 n型単結晶基板、31 n型フィールドストップ層、32 n型ドリフト層、33 p型ボディ領域、33a p領域、33b p+領域、34 n型エミッタ領域、42 エミッタ電極、43 エミッタ配線、44 コレクタ電極、90 IGBT(炭化珪素半導体装置)、S1 面(第1の面)、S2 面(第2の面)、SC 炭化珪素層。
図1
図2
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図5
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図8