(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃エンジンと車輪との間の伝達経路上に配置されると共に、前記内燃エンジンを停止して回転電機により車両を走行させる場合に空転可能状態に制御されるハイブリッド車両用自動変速機において、
前記内燃エンジンに連動して駆動されることで油圧を発生する第1油圧供給源と、
前記第1油圧供給源とは独立して電力で駆動されることで油圧を発生する第2油圧供給源と、
前記第1油圧供給源及び前記第2油圧供給源で発生された油圧をライン圧に調圧するレギュレータバルブと、
前記レギュレータバルブで調圧されたライン圧を、前記摩擦係合要素を係脱する油圧サーボに供給し得る第1油路と、
前記レギュレータバルブから排出された油圧を、オイルクーラを介して潤滑部位に供給する第2油路と、
前記第2油路と前記オイルクーラの下流側で合流し、前記第2油圧供給源で発生された油圧を、前記潤滑部位に供給する第3油路と、
前記オイルクーラと前記第2油路及び前記第3油路の合流点との間に配置され、前記合流点から前記オイルクーラへの油圧の逆流を防止する第1逆流防止機構と、を備えた、
ことを特徴とするハイブリッド車両用自動変速機。
前記レギュレータバルブは、スプールと、前記スプールを一方側に付勢する付勢部材と、前記第1油圧供給源及び前記第2油圧供給源の吐出口に接続されると共に前記第1油路に接続された調圧ポートと、前記調圧ポートに接続されると共に入力された油圧により前記スプールを他方側に押圧するフィードバック油室と、前記スプールが他方側に移動した際に前記調圧ポートと前記第2油路とを連通する排出ポートと、を有し、低油温時にあっては、前記第2油圧供給源が最大の油圧を発生した場合であっても、前記付勢部材による付勢力が前記フィードバック油室に発生するフィードバック力に打勝つように構成された、
ことを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド車両用自動変速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に自動変速機の油圧回路には、オイルを冷却するオイルクーラを設ける必要がある。オイルクーラは、例えば多数の細管を設け、そこにオイルを通すものが主流であるが、オイルクーラに入る油量も多く、かつ長い経路における管路抵抗等で油圧が大きく変動してしまうため、摩擦係合要素(クラッチやブレーキなど)の油圧サーボに油圧を供給するような部位にオイルクーラを介在させると、油圧サーボの制御性が良好でなくなるので、そのような部位には介在させることができない。そこで、オイルクーラは、必然的にレギュレータバルブと潤滑回路との間に設けることになる。
【0006】
上記特許文献1のものは、オイルクーラの配置位置について何ら記載されていないが、実際にオイルクーラを配置する設計を行うと、上述のようにレギュレータバルブ(22)と潤滑油路(LUB)との間の油路(潤滑用配管22C)に配置する必要がある。
【0007】
しかしながら、レギュレータバルブと潤滑油路との間の油路にオイルクーラを配置し、電動オイルポンプから直接的に潤滑圧を潤滑油路に供給しようとしても、オイルクーラに多量のオイルが流入してしまうことになるので、EV走行中に摩擦係合要素の油圧サーボに供給する油圧(レギュレータバルブに供給する油圧)を安定的(所定値まで)に確保することが困難であるという問題がある。そして、油圧サーボに供給する油圧を安定的に確保するためには、電動オイルポンプを大型化して充分な油圧を発生させる必要が生じ、ハイブリッド車両用自動変速機のコストダウンの妨げとなるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、EV走行中における電動オイルポンプによる油圧供給を安定的に確保するものでありながら、電動オイルポンプの小型化を可能とし、もってコストダウンを図ることが可能なハイブリッド車両用自動変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は(例えば
図1乃至
図4参照)、内燃エンジン(2)と車輪(80fl,80fr)との間の伝達経路(L)上に配置されると共に、前記内燃エンジン(2)を停止して回転電機(20)により車両(100)を走行させる場合に空転可能状態に制御されるハイブリッド車両用自動変速機(1)において、
前記内燃エンジン(2)に連動して駆動されることで油圧を発生する第1油圧供給源(31)と、
前記第1油圧供給源(31)とは独立して電力で駆動されることで油圧を発生する第2油圧供給源(32)と、
前記第1油圧供給源(31)及び前記第2油圧供給源(32)で発生された油圧をライン圧(P
L)に調圧するレギュレータバルブ(51)と、
前記レギュレータバルブ(51)で調圧されたライン圧(P
L)を、前記摩擦係合要素(例えばC−1)を係脱する油圧サーボ(例えば61)に供給し得る第1油路(a3〜a5,d1〜d2,f1)と、
前記レギュレータバルブ(51)から排出された油圧を、オイルクーラ(45)を介して潤滑部位(46)に供給する第2油路(c1〜c5)と、
前記第2油路(c1〜c5)と前記オイルクーラ(45)の下流側で合流し、前記第2油圧供給源(32)で発生された油圧を、前記潤滑部位(46)に供給する第3油路(b2〜b3,c4〜c5)と、
前記オイルクーラ(45)と前記第2油路及び前記第3油路の合流点(X)との間に配置され、前記合流点(X)から前記オイルクーラ(45)への油圧の逆流を防止する第1逆流防止機構(43)と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は(例えば
図4参照)、前記第1逆流防止機構(43)は、一方向弁からなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は(例えば
図4参照)、前記レギュレータバルブ(51)は、スプール(51p)と、前記スプール(51p)を一方側に付勢する付勢部材(51s)と、前記第1油圧供給源(31)及び前記第2油圧供給源(32)の吐出口(31a,32a)に接続されると共に前記第1油路(例えばa3)に接続された調圧ポート(51a)と、前記調圧ポート(51a)に接続されると共に入力された油圧により前記スプール(51p)を他方側に押圧するフィードバック油室(51c)と、前記スプール(51p)が他方側に移動した際に前記調圧ポート(51a)と前記第2油路(例えばc1)とを連通する排出ポート(51b)と、を有し、低油温時にあっては、前記第2油圧供給源(32)が最大の油圧を発生した場合であっても、前記付勢部材(51s)による付勢力が前記フィードバック油室(51c)に発生するフィードバック力に打勝つように構成されたことを特徴とする。
【0012】
更に、本発明は(例えば
図4参照)、前記第3油路(b2〜b3,c4〜c5)上の前記合流点(X)より上流側に、前記第2油圧供給源(32)から前記油圧サーボ(例えば61)に供給する油量と前記潤滑部位(46)に供給する油量とを設定するオリフィス機構(42b)を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は(例えば
図4参照)、前記第1油圧供給源(31)と前記第2油圧供給源(32)との間に介在され、前記第1油圧供給源(31)から前記第2油圧供給源(32)への油圧の逆流を防止する第2逆流防止機構(41)と、
前記合流点(X)よりも前記第2油圧供給源(32)側の第3油路(b2,b3)上に介在され、前記第1油圧供給源(31)から前記第2油圧供給源(32)への油圧の逆流を防止する第3逆流防止機構(42)と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明によると、オイルクーラと第2油路及び第3油路の合流点との間に配置され、合流点からオイルクーラへの油圧の逆流を防止する第1逆流防止機構を備えているので、内燃エンジンを停止して回転電機により車両を走行させる場合にあって、第3油路を介して第2油圧供給源で発生された油圧を潤滑部位に供給する際に、オイルクーラに多量のオイルが流入することを防止することができ、油圧サーボに供給する油圧を安定的に確保することができる。また、これにより電動オイルポンプの大型化を不要とすることができ、ハイブリッド車両用自動変速機のコストダウンを図ることができる。
【0016】
請求項2に係る本発明によると、第1逆流防止機構は、一方向弁からなるので、オイルクーラと第2油路及び第3油路の合流点との間に、例えば自動変速機を大幅に設計変更することなく、後付けで簡単に取り付けることができる。
【0017】
請求項3に係る本発明によると、低油温時にあっては、第2油圧供給源が最大の油圧を発生した場合であっても、レギュレータバルブにおいて、付勢部材による付勢力がフィードバック油室に発生するフィードバック力に打勝つように構成されているので、例えば低油温時にあって第2油圧供給源が発生する油圧が下がった場合に、オイルがレギュレータバルブの排出ポートからオイルクーラに流れることを防止して、第3油路に流れる油量を確保することができ、つまり低油温時にあっても潤滑不足が生じることを防止することができる。
【0018】
請求項4に係る本発明によると、前記第3油路上の前記合流点より上流側に、前記第2油圧供給源から前記油圧サーボに供給する油量と前記潤滑部位に供給する油量とを設定するオリフィス機構を備えているので、例えば潤滑部位に対する油量が増え過ぎて、摩擦係合要素の油圧サーボに供給する油量が不足するような現象を防止することができる。これにより、EV走行中にあっても、精度良く摩擦係合要素の係合準備を行うことができ、EV走行から内燃エンジンによる走行或いはハイブリッド走行にレスポンス良く移行させることが可能となる。
【0019】
請求項5に係る本発明によると、第1油圧供給源と第2油圧供給源との間に介在され、第1油圧供給源から第2油圧供給源への油圧の逆流を防止する第2逆流防止弁と、合流点よりも第2油圧供給源側の第3油路上に介在され、前記第1油圧供給源から前記第2油圧供給源への油圧の逆流を防止する第3逆流防止弁と、を備えているので、第1油圧供給源により油圧を発生して走行している際に、第2油圧供給源に油圧が逆流することを防止することができ、特にオイルクーラから第3油路を介して第2油圧供給源に油圧が逆流することがないので、潤滑部位に対する油量不足を生じることを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態を
図1乃至
図4に沿って説明する。まず、
図1に沿って、本発明を提供し得るハイブリッド車両の一例を説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態に係るハイブリッド車両100は、リヤモータ式ハイブリッド車両であり、前方側に内燃エンジン(E/G)2を搭載し、該内燃エンジン2と前側の左右の車輪80fl,80frとの間の伝達経路L(
図2参照)上にハイブリッド車両用自動変速機(以下、単に「自動変速機」という)1が搭載された、いわゆるFF(フロントエンジン、フロントドライブ)タイプの車両のように構成されていると共に、後側の左右の車輪80rl,80rrに駆動連結されるリヤモータ(Rear Motor)(回転電機)20を備えており、つまりエンジン走行時には前輪駆動、EV走行時には後輪駆動、ハイブリッド走行時には四輪駆動が可能となるように構成されている。
【0023】
詳細には、内燃エンジン2には、ベルト式統合型スタータ・ジェネレータ(Belt Integrated Starter Generator)3Aが接続されており、該内燃エンジン2が始動自在に構成されている。ベルト式統合型スタータ・ジェネレータ(BISG)3Aは、インバータ(Inverter)23を介して高電圧バッテリ(Hi−V Battery)24から電力が供給されることで、内燃エンジン2を高出力で始動し得ると共に、内燃エンジン2の始動中(駆動中)は、高電圧バッテリ24に対する充電も可能に構成されている。
【0024】
一方のスタータ(Starter)3Bは、一般的な低電圧バッテリ(Lo−V Battery)26(いわゆる12V型電源)で駆動するようなスタータである。本ハイブリッド車両100では、常温(例えば0度以上)ではベルト式統合型スタータ・ジェネレータ(BISG)3Aを用いてアイドル回転数よりも高い回転数まで内燃エンジン2の回転数を上昇した後に該内燃エンジン2の点火を行い、低温時(例えば0度未満)ではスタータ3Bを用いて内燃エンジン2の通常始動を行う。
【0025】
上記内燃エンジン2には、詳しくは後述する自動変速機1が接続されている。自動変速機1は、大まかに、トルクコンバータ(T/C)4、自動変速機構(T/M)5、油圧制御装置(V/B)6などを有して構成されており、内燃エンジン2にはトルクコンバータ4が駆動連結されている。該トルクコンバータ4には自動変速機構(T/M)5が駆動連結されており、該自動変速機構5は、詳しくは後述するようにディファレンシャル装置D(
図2参照)を介して左右車軸81l,81rに接続され、前側の左右の車輪80fl,80frに駆動連結されている。なお、トルクコンバータ4の後述するポンプインペラ4a(
図2参照)には、後述の機械式オイルポンプ(第1油圧供給源)31が駆動連結されている。
【0026】
また、該自動変速機構5には、後述の摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)を油圧制御するための油圧制御装置(V/B)6が付設されており、該油圧制御装置6は、制御部(TCU:Transmission Control Unit)19からの電子指令に基づき、内蔵されたソレノイドバルブ等が電子制御される。また、油圧制御装置6には、詳しくは後述するように、内燃エンジン2とは独立して駆動される電動オイルポンプ(第2油圧供給源)32が付設されており、該電動オイルポンプ32から油圧制御装置6に対して油圧供給し得るように構成されている。
【0027】
なお、電動オイルポンプ32や制御部19は、低電圧バッテリ26の電力を用いて駆動される。該低電圧バッテリ26は、DC/DCコンバータ(降圧回路)25を介して高電圧バッテリ24に接続されており、該高電圧バッテリ24から電力が供給されるように構成されている。
【0028】
一方、上記リヤモータ20は、インバータ23を介して高電圧バッテリ24に接続されており、力行・回生自在に構成されている。該リヤモータ20は、モータ切離しクラッチC−Mを介してギヤボックス(Gear Box)21に駆動連結されている。ギヤボックス21には、図示を省略した所定減速比の減速ギヤ機構及びディファレンシャル装置が内蔵されており、モータ切離しクラッチC−Mの係合時には、該リヤモータ20の回転を、ギヤボックス21の減速ギヤ機構で減速しつつ、かつディファレンシャル装置で左右車軸82l,82rの差回転を吸収しつつ、後側の左右の車輪80rl,80rrに伝達する。
【0029】
続いて、自動変速機1の構成について
図2に沿って説明する。本自動変速機1は、内燃エンジン2(
図1参照)と前側の左右の車輪80fl,80frとの間の伝達経路Lを構成するように配置されており、内燃エンジン2(
図1参照)のクランク軸に接続し得る自動変速機の入力軸8を有していると共に、該入力軸8の軸方向を中心として上述のトルクコンバータ4と自動変速機構5とを備えている。
【0030】
トルクコンバータ4は、自動変速機1の入力軸8に接続されたポンプインペラ4aと、作動流体を介して該ポンプインペラ4aの回転が伝達されるタービンランナ4bと、タービンランナ4bからポンプインペラ4aに戻るオイルを整流しつつトルク増大作用を生じさせるステータ4cとを有していると共に、該タービンランナ4bは、上記入力軸8と同軸上に配設された上記自動変速機構5の入力軸10に接続されている。また、該トルクコンバータ4には、ロックアップクラッチ7が備えられており、該ロックアップクラッチ7が係合されると、上記自動変速機1の入力軸8の回転が自動変速機構5の入力軸10に直接伝達される。
【0031】
なお、ステータ4cは、ワンウェイクラッチFによって、ポンプインペラ4aの回転よりタービンランナ4bの回転が下回る状態で回転が固定されて、オイルの流れの反力を受圧してトルク増大作用を生じさせ、タービンランナ4bの回転が上回る状態になると空転して、オイルの流れが負方向に作用しないように構成されている。
【0032】
また、ポンプインペラ4aは、その自動変速機構5側の端部が、
図2では図示を省略した機械式オイルポンプ31に駆動連結されており、つまり機械式オイルポンプ31は、入力軸8を介して内燃エンジン2に連動されるように駆動連結されている。
【0033】
上記自動変速機構5には、入力軸10上において、プラネタリギヤSPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤSPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP1を有している、いわゆるシングルピニオンプラネタリギヤである。
【0034】
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンPSとを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
【0035】
上記プラネタリギヤSPのサンギヤS1は、ミッションケース9に一体的に固定されているボス部に接続されて回転が固定されている。また、上記リングギヤR1は、上記入力軸10の回転と同回転(以下「入力回転」という。)になっている。更に上記キャリヤCR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するリングギヤR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、クラッチ(摩擦係合要素)C−1及びクラッチ(摩擦係合要素)C−3に接続されている。
【0036】
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、バンドブレーキからなるブレーキ(摩擦係合要素)B−1に接続されてミッションケースに対して固定自在となっていると共に、上記クラッチC−3に接続され、該クラッチC−3を介して上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、クラッチC−1に接続されており、上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。
【0037】
更に、上記キャリヤCR2は、入力軸10の回転が入力されるクラッチ(摩擦係合要素)C−2に接続され、該クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、ワンウェイクラッチF−1及びブレーキ(摩擦係合要素)B−2に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケースに対して一方向の回転が規制されると共に、該ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2は、カウンタギヤ11に接続されており、該カウンタギヤ11は、カウンタシャフト15、ディファレンシャル装置Dを介して車輪80fl,80frに接続されている。
【0038】
以上のように構成されたハイブリッド車両100は、内燃エンジン2の駆動力を用いたエンジン走行にあっては、
図1に示すモータ切離しクラッチC−Mが解放されて、リヤモータ20が車輪80rl,80rrから切離された状態にされる。そして、自動変速機1において、車速やアクセル開度に応じて制御部19により最適な変速段が判断されることで油圧制御装置6が電子制御され、その変速判断に基づき形成される前進1速段〜前進6速段及び後進段で内燃エンジン2の駆動力を変速して、車輪80fl,80frに該内燃エンジン2の駆動力を伝達する。なお、自動変速機1の前進1速段〜前進6速段及び後進段は、
図3に示す作動表のように、各クラッチC−1〜C−3、ブレーキB−1〜B−2、ワンウェイクラッチF−1が作動することにより達成される。
【0039】
上記エンジン走行からハイブリッド走行に移行する際は、
図1に示すモータ切離しクラッチC−Mが係合されて、リヤモータ20が車輪80rl,80rrに駆動連結される。これにより、上記エンジン走行に加え、アクセル開度(運転者の駆動力要求)に基づき、リヤモータ20の駆動力が適宜にアシスト或いは回生され、つまり内燃エンジン2の駆動力とリヤモータ20の駆動力とを用いてハイブリッド車両100が走行される。
【0040】
なお、上記内燃エンジン2の駆動力によるエンジン走行時の加速時などにあっては、モータ切離しクラッチC−Mを解放し、リヤモータ20を車輪80rl,80rrから切離して走行抵抗にならないようにしてもよい。また、エンジン走行時であっても、減速時にはモータ切離しクラッチC−Mを係合し、リヤモータ20で回生ブレーキを実行する方が燃費向上に対して好ましい。
【0041】
そして、EV走行にあっては、
図1に示すモータ切離しクラッチC−Mが係合されて、リヤモータ20が車輪80rl,80rrに駆動連結され、かつ内燃エンジン2が停止されると共に自動変速機1における各クラッチC−2〜C−3、ブレーキB−1〜B−2が解放されて、該自動変速機1が空転可能状態にされる。これにより、アクセル開度(運転者の駆動力要求)に基づき、リヤモータ20の駆動力が適宜に力行或いは回生され、つまりリヤモータ20の駆動力だけを用いてハイブリッド車両100が走行される。
【0042】
なお、このEV走行中にあっては、自動変速機構5の車輪80fl,80frに駆動連結された部材(例えばディファレンシャル装置D,カウンタシャフト15、カウンタギヤ11、プラネタリギヤユニットPUの各ギヤなど)が連れ回されると共に、内燃エンジン2の停止によって機械式オイルポンプ31が停止される。従って、電動オイルポンプ32によって、自動変速機構5の潤滑部位への潤滑油の供給を行う必要がある。
【0043】
また、EV走行中にあっては、EV走行からハイブリッド走行への移行準備としてのクラッチC−1の係合準備ないし係合完了しておくことが好ましい。EV走行中にクラッチC−1を係合したとしても、自動変速機構5は、牽引状態であってエンジンブレーキ時と同様な状態であり、上記ワンウェイクラッチF−1が空転するため、空転可能状態に制御されていることになる。このようにクラッチC−1を係合準備ないし係合完了しておくための油圧も、電動オイルポンプ32によって発生しておく必要がある。なお、勿論であるが、クラッチC−1も解放して自動変速機構5を完全にニュートラル状態にしておいてもよい。
【0044】
ついで、本発明の要部となる自動変速機1の油圧回路について
図4に沿って説明する。
図4に示すように、本自動変速機1は、内燃エンジン2の回転に連動して駆動される機械式オイルポンプ(MOP)31と、不図示の電動モータにより主に内燃エンジン2の停止時の駆動される電動オイルポンプ(EOP)32とを備えており、それら機械式オイルポンプ31と電動オイルポンプ32とは、不図示のオイルパンからストレーナ(STRAINER)30を介してそれぞれの吸入口31b、32bからオイルを吸上げる形で油圧を発生し得る。
【0045】
上記電動オイルポンプ32の吐出口32aは、分岐部Yを介して油路b1に接続されており、油路b1は、第2チェックボール弁(第2逆流防止機構)41の開口部41aに接続されている。第2チェックボール弁41は、ボール41Bと、該ボール41Bをシール面41cに当接させる方向へ付勢するスプリング41sとを有しており、開口部41aに供給される油圧よりも開口部41bの油圧及びスプリング41sの付勢力が大きい際は、ボール41Bがシール面41cに密着して該開口部41aと開口部41bとを遮断し、開口部41aに供給される油圧が開口部41bの油圧及びスプリング41sの付勢力よりも大きくなった際に、ボール41Bがシール面41cから離間して該開口部41aと開口部41bとを連通する。
【0046】
該第2チェックボール弁41の開口部41bは、油路a2を介して上記機械式オイルポンプ31の吐出口31aに接続されており、つまり該第2チェックボール弁41は、機械式オイルポンプ31と電動オイルポンプ32との間に介在し、該機械式オイルポンプ31から電動オイルポンプ32への油圧の逆流を防止する。
【0047】
上記機械式オイルポンプ31又は電動オイルポンプ32により発生された油圧は、油路a1を介して油路a3,a4,a5に供給される。油路a3,a4に供給された油圧は、レギュレータバルブ51の調圧ポート51aとフィードバック油室51cに供給されている。
【0048】
該レギュレータバルブ51は、スプール51pと、該スプール51pを上方(一方側)に付勢するスプリング(付勢部材)51sとを有していると共に、該スプール51pの上方にフィードバック油室51cと、該スプール51pの下方に作動油室51dと、調圧ポート51aと、排出ポート51bとを有している。作動油室51dには、例えば不図示のリニアソレノイドバルブSLTからスロットル開度に応じた制御圧P
SLTが入力される。
【0049】
該レギュレータバルブ51は、作動油室51dの制御圧P
SLTに基づき、スプール51pが左半分で示す状態となると、調圧ポート51aと排出ポート51bとを遮断し、つまりレギュレータバルブ51で調圧動作を行わないので、油路a1〜a5の油圧を、機械式オイルポンプ31又は電動オイルポンプ32が出力する油圧のまま、それをライン圧P
Lとする。
【0050】
一方、フィードバック油室51cに供給されるライン圧P
L(つまり他方側に押圧する押圧力)がスプリング51sの付勢力及び作動油室51dの制御圧P
SLTよりも大きくなるにつれて、スプール51pが右半分で示す状態となり、調圧ポート51aと排出ポート51bとを連通して油路c1に排出圧として油圧を発生させると共に、油路a1〜a5の油圧を、機械式オイルポンプ31又は電動オイルポンプ32が出力する油圧よりも減圧したライン圧P
Lに調圧する。このように調圧されたライン圧PLは、マニュアルシフトバルブ52のライン圧入力ポート52aに供給される。
【0051】
なお、本実施の形態におけるレギュレータバルブ51は、EV走行中(機械式オイルポンプ31が停止した状態)の低油温時にあって、電動オイルポンプ32が最大の油圧を発生した場合であっても、スプリング51sによる付勢力がフィードバック油室51cに発生するフィードバック力に打勝つように構成されており、つまり低油温時にあって電動オイルポンプ32が発生する油圧が下がった場合に、オイルがレギュレータバルブ51の排出ポート51bから後述のオイルクーラ45に流れることが防止される。このレギュレータバルブ51の状態は、電動オイルポンプ32の最大油圧をそのままライン圧P
Lに調圧している状態と言うことができ、この状態もライン圧調圧状態に含まるものである。
【0052】
上記マニュアルシフトバルブ52は、運転席に設けられた不図示のシフトレバーの操作により機械的(或いは電気的)に駆動されるスプール52pを有しており、該スプール52pの位置がシフトレバーにより選択されたシフトレンジ(例えばP,R,N,D,S)に応じて切換えられることにより、上記入力されたライン圧P
Lの出力状態や非出力状態(ドレーン)を設定する。
【0053】
詳細には、シフトレバーの操作に基づき前進レンジ(Dレンジ、Sレンジ)にされると、該スプール52pの位置に基づき上記ライン圧P
Lが入力されるライン圧入力ポート52aと前進レンジ圧出力ポート52bとが連通し、該前進レンジ圧出力ポート52bよりライン圧P
Lが前進レンジ圧(Dレンジ圧)P
Dとして出力される。
【0054】
また、シフトレバーの操作に基づき後進レンジ(Rレンジ)にされると、該スプール52pの位置に基づき上記ライン圧入力ポート52aと後進レンジ圧出力ポート52dとが連通し、該後進レンジ圧出力ポート52dよりライン圧P
Lが後進レンジ圧(Rレンジ圧)P
REVとして出力される。
【0055】
なお、シフトレバーの操作に基づきPレンジ及びNレンジにされた際は、上記ライン圧入力ポート52aと前進レンジ圧出力ポート52b及び後進レンジ圧出力ポート52dとの間がスプール52pによって遮断されると共に、前進レンジ圧排出ポート52c及び該後進レンジ圧出力ポート52dがドレーンポートに連通され、Dレンジ圧P
D及びRレンジ圧P
REVがドレーン(排出)された非出力状態となる。
【0056】
上記マニュアルシフトバルブ52の前進レンジ圧出力ポート52bは、油路d1を介して、クラッチC−1の係合圧を調圧するリニアソレノイドバルブSLC1の入力ポートSLC1aに接続されている。なお、この前進レンジ圧出力ポート52bは、図示を省略したが、同様にクラッチC−2、ブレーキB−1、ブレーキB−2などの係合圧をそれぞれ調圧するリニアソレノイドバルブに接続されている。また、後進レンジ圧出力ポート52dは、図示を省略したが、後進段を形成するブレーキB−2の油圧サーボに油圧を出力し得る油路に接続されている。また、クラッチC−3の油圧を調圧するリニアソレノイドバルブは、図示を省略したが、例えばライン圧P
Lをマニュアルシフトバルブ52を介さずに直接入力し、前進時や後進時に、クラッチC−3を自在に係合し得るように構成されている。
【0057】
上記リニアソレノイドバルブSLC1は、上記制御部19からの電子指令に基づき電子制御されるソレノイド部SLC1Aと、該ソレノイド部SLC1Aの駆動によりスプールSLC1pが移動駆動されるバルブ部SLC1Bとを有して構成されており、バルブ部SLC1Bは、該スプールSLC1pと、該スプールSLC1pを図中上方に付勢するスプリングSLC1sと、入力ポートSLC1aと、出力ポートSLC1bと、排出ポートSLC1cとを有して構成されている。該バルブ部SLC1Bは、スプリングSLC1sの付勢力により入力ポートSLC1aがスプールSLC1pで遮断されるように構成された、いわゆるノーマルクローズタイプである。
【0058】
上記リニアソレノイドバルブSLC1は、制御部19によりクラッチC−1の係合が指令されると、ソレノイド部SLC1AによりスプールSLC1pを図中下方側に移動駆動し、入力ポートSLC1aと出力ポートSLC1bとを徐々に連通し、入力ポートSLC1aのライン圧P
Lを調圧しつつ油路f1を介してクラッチC−1の油圧サーボ61に係合圧として供給し、該クラッチC−1を係合させる。
【0059】
また反対に、制御部19によりクラッチC−1の解放が指令されると、ソレノイド部SLC1AによりスプールSLC1pを図中上方側に移動駆動し、入力ポートSLC1aと出力ポートSLC1bとを徐々に遮断していくと共に出力ポートSLC1bと排出ポートSLC1cとを連通していき、油路f1を介してクラッチC−1の油圧サーボ61から係合圧を排出し、該クラッチC−1を解放させる。
【0060】
なお、上述したように、EV走行中にあっては、クラッチC−1の係合準備ないし係合完了されるため、制御部19によりリニアソレノイドバルブSLC1が制御され、油圧サーボ61にライン圧P
Lを調圧(減圧)した係合圧、或いはライン圧P
Lがそのまま係合圧として供給される。
【0061】
一方、上記電動オイルポンプ32の吐出口32aに分岐部Yを介して接続された油路b2は、第3チェックボール弁(第3逆流防止機構)42の開口部42aに接続されている。第3チェックボール弁42は、ボール42Bと、該ボール42Bをシール面42cに当接させる方向へ付勢するスプリング42sとを有しており、開口部42aに供給される油圧よりも開口部42bの油圧及びスプリング42sの付勢力が大きい際は、ボール42Bがシール面42cに密着して該開口部42aと開口部42bとを遮断し、開口部42aに供給される油圧が開口部42bの油圧及びスプリング42sの付勢力よりも大きくなった際に、ボール42Bがシール面42cから離間して該開口部42aと開口部42bとを連通する。
【0062】
該第3チェックボール弁42の開口部42bは、油路b3を介して、該油路b3と後述する油路c3との合流点Xに接続され、さらに、油路c4,c5を介して自動変速機構5の潤滑部位に開口する潤滑回路(LUBE)46に接続されている。つまり、該第3チェックボール弁42は、合流点Xよりも電動オイルポンプ32側の油路b2、b3(第3油路上)に介在し、上記レギュレータバルブ51の排出ポート51b(つまり機械式オイルポンプ31)から電動オイルポンプ32への油圧の逆流を防止する。合流点Xは、油路c1〜c5(第2油路)におけるオイルクーラ45の下流側(油路c3と油路c4との間)にあり、つまり油路c3はオイルクーラ45の下流側で油路b3(第3油路)と合流する。
【0063】
また、油路b3上にあって合流点Xよりも上流側に配置されることになる上記開口部42bは、開口面積が最適化されてオリフィス機構として構成されている。該開口部(オリフィス機構)42bは、電動オイルポンプ32から吐出され、分岐部Yを介して油路b1と油路b2とに分かれるオイルの油量を適宜に分配する役目を有しており、つまり電動オイルポンプ32からレギュレータバルブ51に供給する油量と油路b2〜b3,c4〜c5を介して潤滑回路46に供給する油量とを適宜に設定する。つまり、クラッチC−1を係合するために必要な油圧サーボ61の油量を確保しながら潤滑回路46に必要な油量を設定する。これにより、EV走行中にあって、例えば潤滑回路46に対する油量が増え過ぎて、クラッチC−1の油圧サーボ61に供給する油量が不足するような現象が防止できるので、クラッチC−1の係合状態を精度良く制御することが可能となる。従って、EV走行中にあっても、精度良くクラッチC−1の係合準備を行うことができ、EV走行から内燃エンジン2による走行或いはハイブリッド走行にレスポンス良く移行させることが可能となる。言い換えると、開口部42bは、例えば潤滑回路46に対する油量が増え過ぎないように抑制するので、電動オイルポンプ32の大型化を招くことを防ぐこともできる。なお、チェックボール弁42の開口部42bをオリフィス機構として構成することによって、チェックボール弁42とは別にオリフィス設ける場合に比して、部品点数の削減や油路構造の簡易化を図ることができ、製造効率が向上することができる。
【0064】
一方、上記レギュレータバルブ51の排出ポート51bから排出された油圧は、油路c1を介してオイルクーラ45に供給される。オイルクーラ45は、例えば多数の細管の中をオイルが通るように構成されており、該オイルクーラ45を通って冷却されたオイルは、油路c2に導かれる。
【0065】
そして、油路c1は、第1チェックボール弁(第1逆流防止機構)43の開口部43aに接続されている。第1チェックボール弁43は、ボール43Bと、該ボール43Bをシール面43cに当接させる方向へ付勢するスプリング43sとを有しており、開口部43aに供給される油圧よりも開口部43bの油圧及びスプリング43sの付勢力が大きい際は、ボール43Bがシール面43cに密着して該開口部43aと開口部43bとを遮断し、開口部43aに供給される油圧が開口部43bの油圧及びスプリング43sの付勢力よりも大きくなった際に、ボール43Bがシール面43cから離間して該開口部43aと開口部43bとを連通する。
【0066】
該第1チェックボール弁43の開口部43bは、油路c3を介して、油路c3と上記油路b3との合流点Xに接続され、さらに、同様に油路c4,c5を介して自動変速機構5の潤滑部位に開口する潤滑回路46に接続されている。つまり該チェックボール弁43は、オイルクーラ45と油路c3(第2油路)及び油路b3(第3油路)の合流点Xとの間に配置され、合流点Xからオイルクーラ45への油圧の逆流を防止する。
【0067】
なお、以上のように構成された自動変速機1の油圧回路において、レギュレータバルブ51で調圧されたライン圧P
Lを例えばクラッチC−1のような摩擦係合要素を係脱する油圧サーボ(例えば61)に供給する油路a3〜a5,d1〜d2,f1を「第1油路」、レギュレータバルブ51から排出された油圧をオイルクーラ45を介して潤滑回路46に供給する油路c1〜c5を「第2油路」、該第2油路c1〜c5と合流し、電動オイルポンプ32で発生された油圧を潤滑回路46に供給する油路b2〜b3,c4〜c5を「第3油路」、というように定義できる。
【0068】
以上のように構成された本自動変速機1によると、オイルクーラ45と油路c1〜c5及び油路b2〜b3,c4〜c5の合流点Xとの間に配置され、合流点Xからオイルクーラ45への油圧の逆流を防止する第1チェックボール弁43を備えているので、内燃エンジン2を停止してリヤモータ20により車両を走行させる場合にあって、油路b2〜b3,c4〜c5を介して電動オイルポンプ32で発生された油圧を潤滑回路46に供給する際に、オイルクーラ45に流れるオイルは、ライン圧P
Lを調圧した際に不要となった分である、レギュレータバルブ51の排出ポート51bから僅かに流れるオイルだけとなり、つまりオイルクーラ45に多量のオイルが流入することを防止することができる。これにより、クラッチC−1の油圧サーボ61に供給する油圧を安定的に確保することができるようになる。また、これにより電動オイルポンプ32の大型化を不要とすることができ、自動変速機1のコストダウンを図ることができる。
【0069】
また、第1チェックボール弁43は、いわゆる一方向弁からなるので、例えば油圧制御装置6を改造してチェックボール機構などを設ける場合などに比して、オイルクーラ65と合流点Xとの間に後付けで簡単に取り付けることができ、つまり自動変速機を大幅に設計変更することを不要とすることができる。
【0070】
更に、低油温時にあっては、電動オイルポンプ32が最大の油圧を発生した場合であっても、レギュレータバルブ51において、スプリング51sによる付勢力がフィードバック油室51cに発生するフィードバック力に打勝つように構成されているので、例えば低油温時にあって電動オイルポンプ32が発生する油圧が下がった場合に、オイルがレギュレータバルブ51の排出ポート51bからオイルクーラ45に流れることを防止して、油路b2〜b3,c4〜c5を介して潤滑回路46に流れる油量を確保することができ、つまり低油温時にあっても潤滑不足が生じることを防止することができる。
【0071】
また、油路b3上の合流点Xより上流側に、電動オイルポンプ32から油圧サーボ61に供給する油量と潤滑回路46に供給する油量とを設定する開口部(オリフィス機構)42bを備えているので、例えば油路b2〜b3,c4〜c5を介して潤滑回路46に流れる油量が増え過ぎて、クラッチC−1の油圧サーボ61に供給する油量が不足するような現象を防止することができる。これにより、EV走行中にあっても、精度良くクラッチC−1の係合準備を行うことができ、EV走行から内燃エンジン2による走行或いはハイブリッド走行にレスポンス良く移行させることが可能となる。
【0072】
そして、機械式オイルポンプ31と電動オイルポンプ32との間に介在され、機械式オイルポンプ31から電動オイルポンプ32への油圧の逆流を防止する第2チェックボール弁41と、合流点Xよりも電動オイルポンプ32側の油路b2〜b3上に介在され、機械式オイルポンプ31から電動オイルポンプ32への油圧の逆流を防止する第3チェックボール弁42と、を備えているので、機械式オイルポンプ31により油圧を発生して走行している際に、電動オイルポンプ32に油圧が逆流することを防止することができ、特にオイルクーラ45から油路b3〜b2を介して電動オイルポンプ32に油圧が逆流することがないので、潤滑回路46に対する油量不足を生じることを防止することができる。
【0073】
なお、以上説明した本実施の形態においては、本自動変速機1をリヤモータ式のハイブリッド車両100に適用した場合を一例として説明したが、これに限らず、自動変速機を搭載し、EV走行中に潤滑が必要となり、かつ摩擦係合要素を係合準備ないし係合完了させるハイブリッド車両であれば、どのような車両であっても、本発明を適用し得る。また勿論であるが、ハイブリッド車両とは、充電によりEV走行し得るプラグイン・ハイブリッド車両を含む概念である。
【0074】
また、本実施の形態では、自動変速機1が前進6速段及び後進段を達成する多段式自動変速機であるものを説明したが、これに限らず、例えば前進7速段以上や前進5速段以下の多段変速機、或いはベルト式、トロイダル式、リングコーン式の無段変速する無段変速機であっても、本発明を適用し得る。
【0075】
また、本実施の形態では、電動オイルポンプ32が吐出するオイルの油量を油路b1,b2に分配するものとして、オリフィス機構としての開口部42bを説明したが、例えば油路b2を油路b1よりも細くするなどの構造も考えられ、つまり分配する油量を設定できる手段であれば、どのような手段であってもよい。
【0076】
更に、本実施の形態では、電動オイルポンプ32が吐出するオイルの油量を分岐部Yで油路b1,b2に分配するものを説明したが、例えば電動オイルポンプとして2ポート式(吐出口が2カ所ある)のオイルポンプを用いてもよい。
【0077】
また、本実施の形態では、EV走行中にクラッチC−1を係合準備ないし係合完了しておくものを説明したが、車速に応じて例えば前進5速段や前進6速段を選択し得る走行状態であれば、クラッチC−1の係合を中止し、全てのクラッチやブレーキを完全に解放状態にしてもよいし、或いはクラッチC−2を係合準備ないし係合完了しておいてもよい。
【0078】
また、本実施の形態においては、逆流防止機構の一例として、第1〜第3チェックボール弁41,42,43を説明したが、逆流を防止できる構成であればよく、例えばシャトル弁、チェック弁、ボール機構、開閉弁などが考えられる。なお、第1乃至第3逆流防止機構は、独立して配設できる弁体構造(一方向弁)のものであれば、後付けで配設できるので、より好ましい。