(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている自動倉庫は、予め制震構造が設定された架構により構成される自動倉庫である。
このため、例えば、制震機能を持たない既設の物品収容棚に対してこの種の制震構造を適用しようとすると、架構の交換等、物品収容棚の大規模な改造が必要となる。
つまり、既設の物品収容棚に対して制震能力を付加させようとする場合、物品収容棚の大規模な改造が必要となり、改造に要する改造コストからみて、既設の物品収容棚に制震機能を付加させることは実質的に困難である。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、既設の物品収容棚であっても、大規模な改造を施すことなく、制震機能を付加させることができる物品収容棚の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、柱部材と梁部材により囲まれた構面を有する複数の架構が備えられ、前記構面を互いに平行にして前記複数の架構が配設され、前記架構の間に形成される架構空間が前記架構の配設方向に複数配列され、前記架構空間に物品を収容する物品収容部が多段状に複数配設され、前記架構の間を連結する連結部材が設けられた物品収容棚において、物品を多く
の前記物品収容部に収容した前記架構空間により形成される大荷重ゾーンと、前記大荷重ゾーンより物品を少な
い前記物品収容部に収容した前記架構空間により形成される小荷重ゾーンを形成し、前記大荷重ゾーンと前記小荷重ゾーンは互いに隣り合って形成され、前記大荷重ゾーンと前記小荷重ゾーンとの間に位置する前記架構に連結される前記連結部材に制震部材を設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明では係る構成により、地震が発生して物品の出し入れ方向へ揺れが生じても、大荷重ゾーンの揺れは大きくなるが、小荷重ゾーンの揺れは大荷重ゾーンの揺れよりも小さく、大荷重ゾーンおよび小荷重ゾーンは互いに異なる位相の揺れとなる。
このとき、大荷重ゾーンと小荷重ゾーンとの間に位置する架構に連結されている連結部材に設けた制震部材が地震エネルギーを吸収し、物品収容棚の揺れを減衰する。
本発明によれば、既設の物品収容棚であっても、物品の配置により大荷重ゾーンと小荷重ゾーンを形成するから、制震部材を大荷重ゾーンと小荷重ゾーンとの間に位置する架構に連結されている連結部材に設ける改造だけで、制震機能を付加させることができる。
なお、ここでいう制震機能は構造物の揺れを積極的に抑制する機能を意味し、揺れに対抗する耐震機能とは区別される機能である。
【0009】
また、上記の物品収容棚において、前記小荷重ゾーンにおける前記架構空間の上方に空きの物品収容部が形成されている構成としてもよい。
この場合、架構空間の上方に空きの物品収容部が形成されることにより、物品収容棚の重心は、架構空間の下方に空きの物品収容部を形成する場合と比較して低くなり、揺れに対する安定性が向上する。
【0010】
また、上記の物品収容棚において、前記大荷重ゾーンにおける前記架構空間における物品収容部に全て物品が収容されている構成としてもよい。
この場合、大荷重ゾーンにおける架構空間における物品収容部に全て物品が収容されているから、地震の際に大荷重ゾーンの揺れを小荷重ゾーンの揺れよりもより大きくすることができる。
【0011】
また、上記の物品収容棚において、前記架構の配設方向において両端部となる前記架構空間を形成する前記架構と連結される前記連結部材が設けられ、前記連結部材に制震部材を設けた構成としてもよい。
この場合、架構の配設方向において両端部となる架構空間を形成する一対の架構では、互いに受け持つ荷重が異なるめに両架構に位相の異なる揺れが生じるが、制震部材は両架構の揺れを減衰し地震エネルギーを吸収することができる。
【0012】
また、上記の物品収容棚において、前記架構の配設方向において両端部となる前記架構空間は、前記小荷重ゾーンを形成する構成としてもよい。
この場合、収容棚の両端における揺れを小さくすることができる。
【0013】
また、上記の物品収容棚において、前記制震部材をダンパーとする構成としてもよい。
この場合、制震部材がダンパーであるから圧縮力および引っ張り力に対して復元可能であり、収容棚における地震エネルギーを効率的に吸収して減衰することができるほか、制震部材を繰り返して用いることができる。
【0014】
また、上記の実施形態において、前記物品収容部に対して物品を出し入れし、物品を移送する物品移送装置と、前記大荷重ゾーンおよび前記小荷重ゾーンを形成するように物品の移送を制御する制御装置と、を備えた構成としてもよい。
この場合、物品収容棚の物品の入出庫が行われても、物品移送装置および制御装置により、大荷重ゾーンおよび小荷重ゾーンを形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既設の物品収容棚であっても、大規模な改造を施すことなく、制震機能を付加させることができる物品収容棚を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る物品収容棚について図面を参照して説明する。
本実施形態は、自動倉庫の物品収容棚に適用した例である。
図1に示すように、自動倉庫10は、複数の物品収容棚11と、物品収容棚11の間に設けたレール12上を往復走行するスタッカクレーン13と、制御装置としての地上制御盤15とを備えている。
物品移送装置としてのスタッカクレーン13は、物品収容棚11と物品収容棚11の端部に設けた入出庫台14との間にて物品Wを搬送するほか、物品収容棚11における物品Wの再配置のために物品Wを搬送する。
地上制御盤15は、物品Wの入出庫管理や在庫管理を行うほか、物品収容棚11に収容されている物品Wの再配置計画を行い、入出庫管理や在庫管理、物品Wの再配置計画のための指令をスタッカクレーン13へ伝達する。
本実施形態では、スタッカクレーン13の走行方向を物品収容棚11の長手方向とし、スタッカクレーン13と物品収容棚11との間での物品Wの出入方向を、物品収容棚11の前後方向とする。
なお、本実施形態では、物品収容棚11に収容される複数の物品Wの重量は互いに同じである。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の自動倉庫10は、物品収容棚11、スタッカクレーン13、物品収容棚11、物品収容棚11、スタッカクレーン13、物品収容棚11、物品収容棚11、スタッカクレーン13、物品収容棚11の順にて配列されている。
各物品収容棚11は、互いに同一構成である。
図3に示すように、物品収容棚11の上下方向および長手方向には、物品Wを収容する多数の物品収容部Eが形成されている。
【0019】
図2および
図4に示すように、物品収容棚11は、物品収容棚11の骨格となる架構20を備えている。
図4に示すように、架構20は、前後に配置された一対の柱部材21と、柱部材21の頂部、下部および中間部を接続する梁部材22を備えている。
各柱部材21の下端は床面Fに固定されている。
図2に示すように、本実施形態の架構20には、柱部材21と梁部材22より囲まれた2つの構面23が形成されており、各構面23には複数のラチス24が上下方向にわたって配設されている。
ラチス24は構面23の変形を防止するための垂直斜材であり、柱部材21に対して傾斜して前後の柱部材21を接続する。
架構20は、物品収容棚11に必要な強度を主に受け持つ要素である。
柱部材21、梁部材22およびラチス24は鋼材により形成されており、柱部材21は鋼管である。
【0020】
図3に示すように、本実施形態の物品収容棚11では、複数の架構20が物品収容棚11の長手方向において配設されている。
このため、各構面23は互いに平行な関係にあり、互いに隣り合う架構20の間には架構空間Sが形成されている。
従って、架構空間Sは、架構20の配設方向に複数配列されている。
本実施形態では、物品収容棚11に20の架構空間S1〜S20が形成されるように、21台の架構20が物品収容棚11に備えられている。
なお、本実施形態では、物品収容棚11に20の架構空間S1〜S20が形成されるとしたが、物品収容棚11において特定の架構空間S1〜S20を示さない場合には架構空間Sを用いる。
【0021】
図4に示すように、各架構20には、一対の柱部材21に固定された略コ字状の支持部材25を備えている。
架構20に固定された支持部材25は、互いに隣り合う架構20の架構空間Sへ突出して対向する。
互いに対向する一対の支持部材25は物品Wを支持する部材である。
従って、本実施形態では、物品収容部Eは、互いに隣り合う架構20の間において支持部材25により区画される空間である。
架構空間Sにおいて物品収容部Eが多段状に複数配設されるように、支持部材25が配設さており、本実施形態では、支持部材25により架構空間Sにおいて5段の物品収容部Eに区画されている。
【0022】
物品収容棚11は、架構20の後部側の柱部材21を連結する水平架材26と架構20の前部側の柱部材21を連結する水平架材26を備えている。
水平架材26は鋼材により形成され、柱部材21の上部、下部および中間部においてそれぞれ水平に架設されている。
物品収容棚11の前部および後部において、2つの架構空間Sの間に位置する柱部材21を挟む両側の2本の柱部材21と、上下の水平架材26とは、物品収容棚11の前部および後部に垂直構面を形成する。
【0023】
図3、
図4に示すように、後部の垂直構面には対角線状にブレース27が配置されている。
ブレース27の両端部は、柱部材21と上部の水平架材26と交差する箇所および下部の水平架材26が交差する箇所にそれぞれ連結されている。
水平架材26およびブレース27は物品収容棚11の強度を向上させる要素である。
なお、スタッカクレーン13により物品収容部Eに対する物品Wの出し入れを行うことから、前部の垂直構面にはブレース27は設けられない。
【0024】
本実施形態の物品収容棚11では、架構空間S1〜S20が形成され、架構空間S1〜S20のそれぞれに5段の物品収容部Eが区画されている。
このため、物品収容棚11には100の物品収容部Eが備えられている。
そして、本実施形態では、物品収容棚11において物品Wを多く
の物品収容部Eに収容した複数の架構空間Sにより大荷重ゾーンHZを形成し、大荷重ゾーンHZよりも物品Wを少な
い物品収容部Eに収容した複数の架構空間Sにより小荷重ゾーンLZを形成している。
大荷重ゾーンHZにおける各架構空間Sを構成する架構20は、多くの物品Wを収容した架構空間Sであることから大きな荷重を受ける。
一方、小荷重ゾーンLZにおける各架構空間Sを構成する架構20は、少ない物品Wを収容した架構空間Sであることから、大荷重ゾーンHZの架構20が受ける荷重よりも小さな荷重を受ける。
【0025】
具体的には、
図5に示すように、本実施形態の物品収容棚11では、物品収容棚11の架構空間S3〜S8と、架構空間S13〜S18とが大荷重ゾーンHZを形成する。
また、物品収容棚11の架構空間S1、S2と、架構空間S9〜S12と、架構空間S19、
S2
0が、小荷重ゾーンLZを形成する。
なお、本実施形態の物品収容棚11では、平均80パーセントの棚使用率を想定したとき、大荷重ゾーンHZを形成する架構空間Sでは、常態において全ての物品収容部Eに物品Wが収容されることが予定されている。
一方、小荷重ゾーンLZを形成する架構空間S9〜S12では、常態において下から2段までの物品収容部Eに物品が収容され、上3段の物品収容部Eは空の状態が予定される。
他方、小荷重ゾーンLZを形成する架構空間S1、S2と架構空間S19、S20では、常態において下から3段までの物品収容部Eに物品が収容され、上2段の物品収容部Eは空の状態が予定される。
【0026】
大荷重ゾーンHZと小荷重ゾーンLZとの境界は特定の架構20となる。
本実施形態では、架構空間S2、S3の間となる架構20と、架構空間S8、S9の間となる架構20と、架構空間S12、S13の間となる架構20と、架構空間S18、S19の間となる架構20は、大荷重ゾーンHZと小荷重ゾーンLZとの境界となる。
これらの架構20を説明の便宜上、境界架構20Aとする。
物品収容棚11において大荷重ゾーンHZと小荷重ゾーンLZがそれぞれ形成されるように物品Wが収容されている状態では、境界架構20Aにおける柱部材21は、大荷重ゾーンHZ側の物品Wからの大荷重と小荷重ゾーンLZ側の物品Wからの小荷重を受ける。
つまり、境界架構20Aにおける柱部材21には、大荷重ゾーンHZ側から大きな荷重を受けるとともに、大荷重ゾーンHZ側の荷重と比べて小さな荷重を小荷重ゾーンLZ側から受ける。
【0027】
図4に示すように、物品収容棚11における架構20の最上部(柱部材21の頂部)と、上から3段目の支持部材25の下部(柱部材21の中間)において、架構20間を連結する連結部材がそれぞれ備えられている。
本実施形態では、架構空間S1〜S3、S8、S9、S12、S13、S18〜S20を除く架構空間Sでは、連結部材は鋼材からなる水平斜材28が連結部材として用いられている。
そして、物品収容棚11における架構空間S1〜S3、S8、S9、S12、S13、S18〜S20では、制震部材としてのオイルダンパー29が連結部材として用いられている。
因みに、
図5では、オイルダンパー29が存在する架構空間Sにおいて、説明の便宜上、オイルダンパー29の位置を点線により示す。
架構空間S2、S3、S8、S9、S12、S13、S18、S19におけるオイルダンパー29は、大荷重ゾーンHZと小荷重ゾーンLZとの間となる境界架構20Aと、境界架構20Aの両側にて隣となる架構20との間にて水平に架設されている。
そして、オイルダンパー29は、境界架構20Aの前部における柱部材21と境界架構20Aの隣となる架構20における後部の柱部材21との間を連結する。
なお、オイルダンパー29は、境界架構20Aの後部における柱部材21と境界架構20Aの隣となる架構20における前部の柱部材21との間を連結するようにしてもよい。
このように、オイルダンパー29は架構20間を連結する連結部材に相当し、オイルダンパー29の長手方向は、梁部材22の長手方向に対して傾斜しており、つまり、構面23に対して傾斜する。
【0028】
ところで、本実施形態では、オイルダンパー29が架構空間S1、S20において設けられている。
架構空間S1、S20は、架構20の配設方向において両端部となる架構空間Sである。
架構空間S1を形成する2つの架構20は、最も外側の架構20と最も外側の架構20の隣となる架構20であるが、これらの架構20は、大荷重ゾーンHZ又は小荷重ゾーンLZの形成に関係なく、受け持つ荷重が互いに異なる。
例えば、架構空間S1、S2に全く物品Wが収容されていない場合、最も外側の架構20は、架構20自体の重量と架構空間S1に張り出した支持部材25の重量を加えた重量に基づく荷重を受け持つ。
一方、最も外側の架構20の隣となる架構20は、架構20自体の重量と架構空間S1に張り出した支持部材25の重量のほか、架構空間S2に張り出した支持部材25の重量をさらに加えた重量に基づく荷重を受け持つ。
従って、最も外側の架構20は最も外側の架構20の隣となる架構20よりも振幅が小さい揺れとなる。
つまり、最も外側の架構20と最も外側の架構20の隣となる架構20は、物品Wの有無に関係なく互いに位相の異なる揺れを生じる関係にある。
架構空間S1を形成する架構20にオイルダンパー29を設けることにより両架構20、20の揺れを減衰するようにしている。
そして、架構空間S20に設けたオイルダンパー29についても架構空間S1に設けたオイルダンパー29と同様の機能を果たす。
【0029】
オイルダンパー29は、振動を減衰する制震部材であり、オイルダンパー29に内蔵されたオイルを利用して長手方向に伸縮可能な構造となっている。
振動時の圧縮力および引っ張り力がオイルダンパー29に作用してオイルダンパー29が伸縮する時、オイルダンパー29に内蔵されたオイルが振動エネルギーを吸収する。
このように、本実施形態の物品収容棚11は、境界架構20Aと境界架構20Aの隣の架構20を連結する連結部材に制震部材としてのオイルダンパー29を用い、大荷重ゾーンHZと小荷重ゾーンLZとの組み合わせによる制震機能を有している。
また、本実施形態の物品収容棚11は、架構20の配設方向において両端部となる架構空間S1、S20においてオイルダンパー29を設けることにより、物品収容棚11の端部における揺れの減衰を効果的に図る機能を有している。
【0030】
次に、本実施形態に係る物品収容棚11の制震作用について説明する。
物品収容棚11は、
図5に示すように、物品Wの配置によって予め大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZが形成されているものとする。
大地震が発生すると、物品収容棚11には揺れが発生するが、物品Wの出入りする前後方向への揺れが生じる場合について説明する。
大地震により前後方向の揺れが発生するとき、空きの物品収容部Eが存在する小荷重ゾーンLZと、全ての物品収容部Eに物品Wが収容されている大荷重ゾーンHZには、互いに位相の異なる揺れが発生する。
大荷重ゾーンHZと比較して架構20が受ける荷重の小さい小荷重ゾーンLZでは変形の小さい揺れであり、大荷重ゾーンHZは小荷重ゾーンLZと比較して架構20が受ける荷重が大きいため変形の大きい揺れとなる。
つまり、小荷重ゾーンLZの揺れは周期の小さい揺れであり、大荷重ゾーンHZの揺れは周期の大きい揺れである。
特に、物品収容棚11の上部は下部と比べて揺れが大きくなる傾向がある。
【0031】
物品収容棚11の揺れに伴い境界架構20Aに連結されたオイルダンパー29には、圧縮力や引っ張り力が作用するが、大荷重ゾーンHZと小荷重ゾーンLZが互いに位相の異なる揺れであることから、オイルダンパー29が大きく伸縮する。
オイルダンパー29が大きく伸縮することにより、オイルダンパー29に内蔵されたオイルは地震エネルギーを効率的に吸収する。
オイルダンパー29が地震エネルギーを効率的に吸収することにより、物品収容棚11における揺れが抑制される。
また、架構20の配設方向において両端部となる架構空間S1、S20に設けたオイルダンパー29は、物品収容棚11の端部における揺れを効果的に減衰する。
本実施形態の物品収容棚11では、大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZが形成されない状態の従来の物品収容棚と比較すると、大地震発生の際に物品収容棚11の最上部における揺れによる応答加速度が3割〜4割程度まで低減される。
【0032】
なお、物品収容棚11に大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZが形成されている状態から物品Wの入出庫が行われる場合がある。
このとき、物品Wの入出庫により大荷重ゾーンHZに空きの物品収容部Eが生じたり、小荷重ゾーンLZの空の物品収容部Eに物品Wが収容されたりして、大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZが解消されることがある。
本実施形態では、大荷重ゾーンHZや小荷重ゾーンLZが解消されても、地上制御盤15が、物品Wの入出庫管理や在庫管理を行うとともに、物品収容棚11に収容されている物品Wの再配置計画を行う。
そして、この再配置計画は、適切な大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZを形成するための物品Wの配置に関する計画である。
地上制御盤15は物品Wの再配置計画の実行するための指令をスタッカクレーン13へ伝達し、スタッカクレーン13は指令を受けて物品Wを移動する。
スタッカクレーン13の物品Wの移動により、再び物品収容棚11に大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZが形成される。
【0033】
本実施形態に係る物品収容棚11は以下の作用効果を奏する。
(1)地震が発生して物品Wの出し入れ方向へ揺れが生じても、大荷重ゾーンHZの揺れは大きくなるが、小荷重ゾーンLZの揺れは大荷重ゾーンHZの揺れよりも小さく、大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZは互いに異なる位相の揺れとなる。このとき、大荷重ゾーンHZと小荷重ゾーンLZとの間に位置する境界架構20Aに連結されているオイルダンパー29が地震エネルギーを吸収し、物品収容棚11の揺れを減衰する。制震機能のない既設の物品収容棚であっても、大荷重ゾーンHZと小荷重ゾーンLZとの間に位置する境界架構20Aに連結されている連結部材にオイルダンパー29を設ける改造だけで、物品収容棚11に制震能力を付加させることができる
(2)架構空間Sの上方に空きの物品収容部Eが形成されることにより、物品収容棚11の重心は、架構空間Sの下方に空きの物品収容部Eを形成する場合と比較して低くなり、揺れに対する安定性が向上する。
(3)大荷重ゾーンHZにおける架構空間Sにおける物品収容部Eに全て物品が収容されているから、地震の際に大荷重ゾーンHZの揺れを小荷重ゾーンLZの揺れよりもより大きくすることができる。大荷重ゾーンHZとの小荷重ゾーンLZの揺れの差を大きくすることでオイルダンパー29により効率的に地震エネルギーを吸収させることができる。
【0034】
(4)物品収容棚11の架構20の配列方向における両端部を小荷重ゾーンLZとすることにより、物品収容棚11の両端における揺れを小さくすることができる。また、物品収容棚11の両端部を小荷重ゾーンLZとすることは、物品収容棚11の両端部に大荷重ゾーンHZを形成するよりも容易である。
(5)制震部材がオイルダンパー29であるから圧縮力および引っ張り力に対して復元可能であり、物品収容棚11における地震エネルギーを効率的に吸収して減衰することができるほか、オイルダンパー29を繰り返して用いることができる。
(6)物品収容部Eに対して物品Wを出し入れし、物品Wを移送するスタッカクレーン13と、大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZを形成するように物品Wの移送を制御する地上制御盤15と、を備えている。このため、物品収容棚11の物品Wの入出庫が行われて、大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZが解消されても、スタッカクレーン13および地上制御盤15により、大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZを再び形成することができる。
【0035】
(7)大荷重ゾーンHZと小荷重ゾーンLZとの境界となる境界架構20Aと、境界架構20Aの隣となる架構20とを連結する連結部材にオイルダンパー29を設けるようにした。このため、大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZが変更されることなく設定されている場合には、使用するオイルダンパー29の数を少なくすることができる。オイルダンパー29の数を少なくすることにより、既設の物品収容棚の改造規模を小さくすることができ、改造コストを抑制することができる。
(8)架構20の配設方向において両端部となる架構空間S1、S20においてオイルダンパー29を設けることにより、物品収容棚11の端部における揺れの減衰を効果的に図ることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る物品収容棚31ついて説明する。
第2の実施形態は、架構間を連結する全ての連結部材をオイルダンパーとする点で第1の実施形態と異なる。
その他の構成については第1の実施形態と同じ構成であり、同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、符号を共通して用いる。
【0037】
図6に示す物品収容棚31では、架構20間を連結する連結部材が全てオイルダンパー29を備えている。
全ての架構20にオイルダンパー29が連結されているため、架構20の配設方向において両端となる架構20以外の全ての架構20は境界架構20Aとなる。
従って、例えば、
図7(a)〜
図7(c)に示すように、棚利用率の変動に応じて大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZを形成する架構空間Sを変更することが可能となる。
なお、
図7(a)〜
図7(c)では、オイルダンパー29が存在する架構空間Sにおいて、説明の便宜上、オイルダンパー29の位置を点線により示す。
また、地上制御盤15において、大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZの複数の形成パターンを予め設定しておく。
地上制御盤15は、棚利用率に応じた大荷重ゾーンHZと小荷重ゾーンLZの形成パターンの切り換えや、大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZの形成パターン毎における物品Wの再配置計画を行う。
【0038】
図7(a)は、物品収容棚31における物品Wの棚利用率が82パーセントの場合の物品Wの配置例を示す。
この場合、2つの大荷重ゾーンHZが形成されており、大荷重ゾーンHZは7列の架構空間Sによるものであって、大荷重ゾーンHZにおける全ての物品収容部Eに物品Wが収容されている。
また、3つの小荷重ゾーンLZが形成されており、小荷重ゾーンLZは2列の架構空間Sによるものであって、小荷重ゾーンLZにおける架構空間Sには3つの空きの物品収容部Eが存在する。
【0039】
図7(b)は、物品収容棚31における物品Wの棚利用率が76パーセントの場合の物品の配置例を示す。
この場合、3つの大荷重ゾーンHZが形成されており、大荷重ゾーンHZは4列の架構空間Sによるものであって、大荷重ゾーンHZにおける全ての物品収容部Eに物品Wが収容されている。
また、4つの小荷重ゾーンLZが形成されており、小荷重ゾーンLZは2列の架構空間Sによるものであって、小荷重ゾーンLZにおける架構空間Sには3つの空きの物品収容部Eが存在する。
【0040】
図7(c)は、物品収容棚31における物品Wの棚利用率が70パーセントの場合の物品の配置例を示す。
この場合、4つの大荷重ゾーンHZが形成されている。
大荷重ゾーンHZは2列の架構空間Sと3列の架構空間Sによるものであって、大荷重ゾーンHZにおける全ての物品収容部Eに物品Wが収容されている。
また、5つの小荷重ゾーンLZが形成されており、小荷重ゾーンLZは2列の架構空間Sによるものであって架構空間Sには3つの空きの物品収容部Eが存在する。
【0041】
本実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果(1)〜(6)、(8)と同等の作用効果を奏する。
さらに言うと、本実施形態では、架構20間を連結する全ての連結部材にオイルダンパー29を設けたため、物品収容棚31における物品Wの棚使用率の変動に適した大荷重ゾーンHZおよび小荷重ゾーンLZを形成することができる。
【0042】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0043】
○ 上記の実施形態では、自動倉庫における物品収容棚に本発明を適用した例であったが、自動倉庫以外の物品収容棚であってもよい。
○ 上記の第1、第2の実施形態では、ダンパーとしてオイルダンパーを用いたが、ダンパーはオイルダンパーに代えて、例えば、粘弾性ダンパーを用いてもよい。ダンパーが粘弾性ダンパーの場合、ゴム系材料をせん断変形させて振動を減衰することができる。この場合もオイルダンパーと同等の作用効果を奏する。
○ 上記の第1の実施形態では、制震部材であるオイルダンパーを、収容棚の大荷重ゾーンと小荷重ゾーンとの境界となる境界架構における最上部および上から3段目の支持部材の下部(柱部材の中間)に設ける構成としたが、制震部材の設置位置はこれに限らない。制震部材の境界架構における設置箇所は自由である。地震では収容棚の上部になるほど揺れが大きくなる傾向があるため、収容棚の上部に制震部材を設けることが好ましい。
○ 上記の実施形態では、物品収容棚の架構空間の数を20とし、架構空間における物品収容部の段数を5としたが、架構空間の数や物品収容部の段数は特に限定されない。また、棚利用率を80パーセントとしたが、棚利用率は特に限定されない、例えば、70〜90パーセントの棚利用率であってもよい。
○ 上記の実施形態では、大荷重ゾーンおよび小荷重ゾーンがそれぞれ複数形成されるとしたが、大荷重ゾーンおよび小荷重ゾーンの数は、特に限定されない。例えば、上記の実施形態において入出庫台側の10列分の架構空間を大荷重ゾーンとし、残りの10列の架構空間を小荷重ゾーンとしてもよい。これらの場合も境界架構に連結される連結部材に制震部材を設けるようにすればよい。
○ 上記の実施形態では、架構空間において全て物品が収容された大荷重ゾーンとし、架構空間において空の物品収容部を2つ又は3つとするように物品が収容された小荷重ゾーンとしたが、大荷重ゾーンおよび小荷重ゾーンのパターンはこれに限らない。例えば、物品収容部を全て空とした架構空間を小荷重ゾーンとしてもよいし、物品が一つのみ収容された架構空間により小荷重ゾーンを形成してもよい。また、全て物品が収容されず、空きの物品収容部を一つ設けた架構空間を大荷重ゾーンとしてもよい。
○ 上記の実施形態では、小荷重ゾーンにおける空きの物品収容部を上段の物品収容部から設定したが、小荷重ゾーンを形成する架構空間における空きの物品収容部の位置は特に限定されない。例えば、下段の物品収容部や中段の物品収容部に空きの物品収容部を設定してもよい。
○ 上記の実施形態では、物品収容棚に収容される物品の重量が同じ重量としたが、異なる重量の物品であってもよい。この場合、制御装置は在庫管理と併せて重量面からみて適切な大荷重ゾーンおよび小荷重ゾーンが形成される物品の配置を決定する。そして、スタッカクレーンによる物品の配置により重量面からみて適切な大荷重ゾーンおよび小荷重ゾーンが形成される。