(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃焼エネルギで回転軸を回転させる内燃機関と、電気エネルギで回転軸を回転させるモータジェネレータと、を搭載して走行するハイブリッド車両の前記内燃機関および前記モータジェネレータの稼働を制御する駆動源制御装置であって、
前記車両を走行させる駆動力の目標値を設定する目標駆動力設定部と、
前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値に基づいて前記モータジェネレータの前記回転軸の目標回転速度を取得するモータジェネレータ目標稼働速度取得部と、
前記モータジェネレータを稼働させる蓄電池の充電残量を検出する蓄電量検出部と、
前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部の取得する前記モータジェネレータの前記目標回転速度、および、前記蓄電量検出部の検出する前記蓄電池の前記充電残量に基づいて前記内燃機関および前記モータジェネレータの稼働を制御する駆動制御部と、
前記車両の操作指示を取得する指示取得部と、
を備えており、
前記駆動制御部は、
前記内燃機関の稼働停止状態の際に、
前記指示取得部が後進指示を取得しているとともに、
前記蓄電量検出部が前記内燃機関による充電を必要とする予め設定されている内燃機関充電要設定値よりも高く予め設定されているモータジェネレータ稼働制限設定値以下の前記蓄電池の前記充電残量を検出したときに、
前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部による前記回転軸の前記目標回転速度を低減することを特徴とするハイブリッド車両用駆動源制御装置。
前記条件(1)、(2)に加えて、(3)前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値が予め設定されている前記内燃機関の稼働を必要とする内燃機関駆動力要設定値以上である場合という当該内燃機関の起動条件が設定されており、
前記駆動制御部は、
前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値に基づく前記内燃機関目標稼働速度取得部および前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部の取得するそれぞれの前記回転軸の前記目標回転速度から前記内燃機関および前記モータジェネレータの稼働を制御するとともに、
前記内燃機関の稼働停止状態で前記指示取得部が前進指示を取得したときには、
前記条件(1)を満たすことを前提にして、前記条件(2)または前記条件(3)の一方を満たすときに当該内燃機関を起動することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両用駆動源制御装置。
前記モータジェネレータとして、2組の第1、第2モータジェネレータを備えて、該第1、第2モータジェネレータのそれぞれの前記回転軸、前記内燃機関の前記回転軸および前記駆動軸が遊星歯車機構により連結されていることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両。
前記ハイブリッド車両が、前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値に基づいて前記内燃機関の前記回転軸の目標回転速度を取得する内燃機関目標稼働速度取得部を備えており、
前記内燃機関の稼働停止状態で前記指示取得部が前記後進指示を取得したときの前記内燃機関の起動条件として設定されている、
(1)前記内燃機関目標稼働速度取得部による前記内燃機関の前記回転軸の前記目標回転速度で当該内燃機関のアイドリング維持可能である場合、
(2)前記蓄電量検出部による前記蓄電池の前記充電残量が前記内燃機関充電要設定値以下である場合、
の双方を満たすときに前記内燃機関を起動することを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド車両用駆動源の制御方法。
前記ハイブリッド車両が、前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値に基づく前記内燃機関目標稼働速度取得部および前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部の取得するそれぞれの前記回転軸の前記目標回転速度から前記内燃機関および前記モータジェネレータの稼働を制御しており、
(3)前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値が予め設定されている前記内燃機関の稼働を必要とする内燃機関駆動力要設定値以上である場合、という前記内燃機関の起動条件を前記条件(1)、(2)に加えて、
前記内燃機関の稼働停止状態で前記指示取得部が前進指示を取得したときには、
前記条件(1)を満たすことを前提にして、前記条件(2)または前記条件(3)の一方を満たすときに当該内燃機関を起動することを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド車両用駆動源の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなハイブリッド車両では、特許文献1に記載されているように、適正なトルクを得るためには、モータジェネレータが許容回転速度を超えることを防止する必要がある。また、後進時には、モータジェネレータのみの駆動力で走行することから、運転者の要求する走行速度が上昇する場合でも、設定する後進目標駆動力(後進車両速度)を制限することにより、モータジェネレータの最高回転速度が許容回転速度を超えることを防止する駆動制御が行なわれる。
【0006】
ところで、ハイブリッド車両のエンジンは、車両が前進する方向のみに駆動軸を回転駆動させるようになっており、後進時にバッテリを充電するためにエンジンを稼働すると、前進方向の駆動力が出てしまい、後進方向の駆動力が低下する。また、ハイブリッド車両でもエンジンを稼働させる際には、アイドリング駆動(最低エンジン回転数)を維持する必要があることから、車両の走行速度に応じてその起動を禁止するようになっている。
【0007】
その一方で、ハイブリッド車両では、バッテリ残量が減少してエンジンを稼働させる必要が生じて起動させたときには、後進時にモータジェネレータの駆動軸に伝達する駆動力は発電に掛かる駆動力を発生させるためのエンジンの稼働により減少する。このことから、ハイブリッド車両では、後進時にエンジンが稼働すると、モータジェネレータのみの稼働時よりも駆動力が減少するために運転者の希望する後進速度で走行させることができない。
【0008】
そこで、本発明は、後進時には必要最低限のタイミングにのみ内燃機関を起動してモータジェネレータを快適に駆動させることのできるハイブリッド車両用駆動源制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するハイブリッド車両用駆動源制御装置の発明の一態様は、燃焼エネルギで回転軸を回転させる内燃機関と、電気エネルギで回転軸を回転させるモータジェネレータと、を搭載して走行するハイブリッド車両の前記内燃機関および前記モータジェネレータの稼働を制御する駆動源制御装置であって、前記車両を走行させる駆動力の目標値を設定する目標駆動力設定部と、前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値に基づいて前記モータジェネレータの前記回転軸の目標回転速度を取得するモータジェネレータ目標稼働速度取得部と、前記モータジェネレータを稼働させる蓄電池の充電残量を検出する蓄電量検出部と、前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部の取得する前記モータジェネレータの前記目標回転速度、および、前記蓄電量検出部の検出する前記蓄電池の前記充電残量に基づいて前記内燃機関および前記モータジェネレータの稼働を制御する駆動制御部と、前記車両の操作指示を取得する指示取得部と、を備えており、前記駆動制御部は、前記内燃機関の稼働停止状態の際に、前記指示取得部が後進指示を取得しているとともに、前記蓄電量検出部が前記内燃機関による充電を必要とする予め設定されている内燃機関充電要設定値以下の前記蓄電池の前記充電残量を検出したときに、前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部による前記回転軸の前記目標回転速度を低減することを特徴とするものである。
【0010】
上記課題を解決するハイブリッド車両用駆動源の制御方法の発明の一態様は、燃焼エネルギで回転軸を回転させる内燃機関と、電気エネルギで回転軸を回転させるモータジェネレータと、前記内燃機関および前記モータジェネレータの回転軸に連結されて車両の駆動輪を回転駆動させ走行させる駆動軸と、前記車両を走行させる駆動力の目標値を設定する目標駆動力設定部と、前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値に基づいて前記モータジェネレータの前記回転軸の目標回転速度を取得するモータジェネレータ目標稼働速度取得部と、前記モータジェネレータを稼働させる蓄電池の充電残量を検出する蓄電量検出部と、前記車両の操作指示を取得する指示取得部と、を搭載して走行するハイブリッド車両の前記内燃機関および前記モータジェネレータの稼働を制御する制御方法であって、前記内燃機関の稼働停止状態の際に、前記指示取得部が後進指示を取得しているとともに、前記蓄電量検出部が前記内燃機関による充電を必要とする予め設定されている内燃機関充電要設定値以下の前記蓄電池の前記充電残量を検出したときに、前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部による前記回転軸の前記目標回転速度を低減することを特徴としている。
【0011】
本発明の態様としては、上記の課題解決手段を基本構成とするのに加えて、次の構成を備えてもよい。
【0012】
上記ハイブリッド車両用駆動源制御装置の第1の他の態様としては、前記駆動制御部は、前記内燃機関の稼働停止状態の際に、前記指示取得部が前記後進指示を取得しているとともに、前記蓄電量検出部が前記内燃機関充電要設定値よりも高く予め設定されているモータジェネレータ稼働制限設定値以下の前記蓄電池の前記充電残量を検出したときに、前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部による前記回転軸の前記目標回転速度を低減するようにしてもよい。
【0013】
上記ハイブリッド車両用駆動源の制御方法の第1の他の態様としては、前記内燃機関の稼働停止状態の際に、前記指示取得部が前記後進指示を取得しているとともに、前記蓄電量検出部が前記内燃機関充電要設定値よりも高く予め設定されているモータジェネレータ稼働制限設定値以下の前記蓄電池の前記充電残量を検出したときに、前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部による前記回転軸の前記目標回転速度を低減するようにしてもよい。
【0014】
上記ハイブリッド車両用駆動源制御装置の第2の他の態様としては、前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値に基づいて前記内燃機関の前記回転軸の目標回転速度を取得する内燃機関目標稼働速度取得部を備えるとともに、前記内燃機関の稼働停止状態で前記指示取得部が前記後進指示を取得したときの当該内燃機関の起動条件として、(1)前記内燃機関目標稼働速度取得部による前記内燃機関の前記回転軸の前記目標回転速度で当該内燃機関のアイドリング維持可能である場合、(2)前記蓄電量検出部による前記蓄電池の前記充電残量が前記内燃機関充電要設定値以下である場合、が設定されており、前記駆動制御部は、前記条件(1)、(2)の双方を満たすときに前記内燃機関を起動するようにしてもよい。
【0015】
上記ハイブリッド車両用駆動源の制御方法の第2の他の態様としては、前記ハイブリッド車両が、前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値に基づいて前記内燃機関の前記回転軸の目標回転速度を取得する内燃機関目標稼働速度取得部を備えており、前記内燃機関の稼働停止状態で前記指示取得部が前記後進指示を取得したときの前記内燃機関の起動条件として設定されている、(1)前記内燃機関目標稼働速度取得部による前記内燃機関の前記回転軸の前記目標回転速度で当該内燃機関のアイドリング維持可能である場合、
(2)前記蓄電量検出部による前記蓄電池の前記充電残量が前記内燃機関充電要設定値以下である場合、の双方を満たすときに前記内燃機関を起動するようにしてもよい。
【0016】
上記ハイブリッド車両用駆動源制御装置の第3の他の態様としては、前記条件(1)、(2)に加えて、(3)前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値が予め設定されている前記内燃機関の稼働を必要とする内燃機関駆動力要設定値以上である場合という当該内燃機関の起動条件が設定されており、前記駆動制御部は、前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値に基づく前記内燃機関目標稼働速度取得部および前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部の取得するそれぞれの前記回転軸の前記目標回転速度から前記内燃機関および前記モータジェネレータの稼働を制御するとともに、前記内燃機関の稼働停止状態で前記指示取得部が前進指示を取得したときには、前記条件(1)を満たすことを前提にして、前記条件(2)または前記条件(3)の一方を満たすときに当該内燃機関を起動するようにしてもよい。
【0017】
上記ハイブリッド車両用駆動源の制御方法の第3の他の態様としては、前記ハイブリッド車両が、前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値に基づく前記内燃機関目標稼働速度取得部および前記モータジェネレータ目標稼働速度取得部の取得するそれぞれの前記回転軸の前記目標回転速度から前記内燃機関および前記モータジェネレータの稼働を制御しており、(3)前記目標駆動力設定部による前記駆動力の前記目標値が予め設定されている前記内燃機関の稼働を必要とする内燃機関駆動力要設定値以上である場合、という前記内燃機関の起動条件を前記条件(1)、(2)に加えて、前記内燃機関の稼働停止状態で前記指示取得部が前進指示を取得したときには、前記条件(1)を満たすことを前提にして、前記条件(2)または前記条件(3)の一方を満たすときに当該内燃機関を起動するようにしてもよい。
【0018】
上記ハイブリッド車両用駆動源制御装置の第4の他の態様としては、上記の駆動源制御装置をハイブリッド車に搭載してもよい。例えば、前記モータジェネレータとして、2組の第1、第2モータジェネレータを備えて、該第1、第2モータジェネレータのそれぞれの前記回転軸、前記内燃機関の前記回転軸、および、前記回転軸の双方からの駆動力を受け取って伝達する駆動軸が遊星歯車機構により連結されているハイブリッド車に上記の駆動源制御装置を搭載してもよい。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明の一態様によれば、内燃機関が稼働を停止してモータジェネレータで後進走行している際に、蓄電池を充電するために内燃機関を起動する必要がある場合には、モータジェネレータの回転軸の目標回転速度を低減するので、内燃機関を起動させてもモータジェネレータのトルクを得られる回転速度での稼働を確保することができ、運転者の意思に反する駆動力低下を防止することができる。したがって、内燃機関により蓄電池を充電する際にも十分なトルクで走行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1〜
図10は本発明に係る駆動源制御装置を搭載するハイブリッド車両の一実施形態を示す図である。
【0022】
図1において、ハイブリッド車両は、駆動制御装置1を搭載して後進時における内燃機関(エンジン)2の起動を含む各種駆動制御を実行して、駆動輪6等を転動させて走行する。まず、ハイブリッド車両は、駆動系として、燃料の燃焼により出力軸3を回転駆動させる駆動力を発生するエンジン2と、電動機として電気エネルギにより回転軸13、16を回転駆動させる駆動力を発生するとともに発電機として稼働してそのロータ14、17の回転により電気エネルギを発生する第1、第2モータジェネレータ4、5と、エンジン2の出力軸3、第1、第2モータジェネレータ4、5のロータ14、17と一体回転する回転軸(不図示)、および、ハイブリッド車の駆動輪6に接続される駆動軸7のそれぞれに連結される第1、第2遊星歯車機構8、9と、を備えており、駆動制御装置1は、これらの各種駆動系の駆動を制御する。
【0023】
エンジン2は、後述するように、アクセル開度(不図示のアクセルペダルの踏み込み量)に対応して吸入する空気量を調整するスロットルバルブ等の空気量調整部10と、吸入する空気量に対応する燃料を供給する燃料噴射弁等の燃料供給部11と、燃料に着火する点火装置等の着火部12とを備えている。駆動制御装置1は、このエンジン2の空気量調整部10、燃料供給部11および着火部12を制御して、燃料の燃焼状態を調整してその燃料の燃焼により駆動力を発生する。
【0024】
第1、第2モータジェネレータ4、5は、それぞれハウジング側に固定されているステータ15、18を外装されている回転軸13、16とロータ14、17がその内部で一体回転するようになっており、それぞれ第1、第2インバータ19、20を介してステータ15、18がバッテリ(蓄電装置)21に接続されている。駆動制御装置1は、第1、第2インバータ19、20を介してステータ15、18にバッテリ21から供給する電気量を制御して、第1、第2モータジェネレータ4、5が電動機として稼働する際に発生する駆動力を調整する。また、この駆動制御装置1は、その第1、第2モータジェネレータ4、5の回転軸13、16が連れ回り回転して発電機として稼働する際に発生する制動力を制御してバッテリ21に充電する電気量を調整する。
【0025】
第1、第2遊星歯車機構8、9は、それぞれサンギヤ22、26、プラネタリギヤ23、27およびリングギヤ25、29を備えており、サンギヤ22、26にはプラネタリキャリア24、28により支持されているプラネタリギヤ23、27が噛み合って、このプラネタリギヤ23、27にはリングギヤ25、29が噛み合って互いに駆動力を伝達可能に連結されている。
【0026】
この第1遊星歯車機構8のサンギヤ22には、第1モータジェネレータ4の回転軸13が連結されており、第2遊星歯車機構9のリングギヤ29には、第2モータジェネレータ5の回転軸16が連結されている。また、第1遊星歯車機構8のプラネタリキャリア24および第2遊星歯車機構9のサンギヤ26とは、結合されてエンジン2の出力軸3に共通に連結されている。第1遊星歯車機構8のリングギヤ25および第2遊星歯車機構9のプラネタリキャリア28とは、結合されて歯車やチェーン等の出力伝達機構31を介して駆動軸7に駆動力を出力する出力ギヤ30に連結されている。これにより、ハイブリッド車両の駆動系においては、エンジン2、第1、第2モータジェネレータ4、5および駆動軸7の間で駆動力の授受を行うことができるようになっている。
【0027】
また、この第1、第2遊星歯車機構8、9は、各回転要素の回転中心線が同一軸上に配置されており、第1遊星歯車機構8とエンジン2との間に第1モータジェネレータ4を配置するとともに、第2遊星歯車機構9のエンジン2から離れる側に第2モータジェネレータ5を配置されている。
【0028】
そして、駆動制御装置1は、エンジン2の駆動を制御する空気量調整部10、燃料供給部11および着火部12と、第1、第2モータジェネレータ4、5の駆動を制御するようにステータ15、18に接続されているインバータ19、20とを駆動制御部32に接続して、各種情報を検出収集しつつ車両の走行状態などを制御するようになっている。ここで、駆動制御部32は、詳細な説明は割愛するが、中央演算処理装置やメモリ等により構成されており、予め格納されているプログラムや設定値に従って検出取得情報などを一時記憶しつつ演算処理等を行って後述する各種処理を実行する。
【0029】
駆動制御部32は、アクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度tvoを検出するアクセル開度検出部33と、ハイブリッド車両の車両速度(車速)Vsを検出する車両速度検出部34と、エンジン2のエンジン回転数Neを検出するエンジン回転数検出部35と、バッテリ21の充電残量SOC(充電状態)を検出するバッテリ充電状態検出部(蓄電量検出部)36と、を備えている。この駆動制御部32は、これらの各種検出取得情報に基づいて目標駆動力設定部37、目標駆動パワー設定部38、目標充放電パワー設定部39、目標エンジンパワー算出部40、エンジン制御部41およびモータジェネレータ制御部42として機能するようになっている。
【0030】
目標駆動力設定部37としては、アクセル開度検出部33により検出されたアクセル開度tvoと、車両速度検出部34により検出された車両速度Vsと、に応じてハイブリッド車両を駆動するための目標駆動力Fdrvを、アクセル開度tvoを基準に車両速度Vsをパラメータとする不図示の検索マップにより検索して決定する。
【0031】
目標駆動パワー設定部38としては、アクセル開度検出部33により検出されたアクセル開度tvoと、車両速度検出部34により検出された車両速度Vsと、に基づいて目標駆動パワーPdrvを設定する。ここでは、目標駆動力Fdrvと車両速度Vsとを乗算して、目標駆動パワーPdrvを設定する。
【0032】
目標充放電パワー設定部39としては、少なくともバッテリ充電状態検出部36により検出されたバッテリ21の充電状態SOCに基づいて目標充放電パワーPbatを設定する。ここで、バッテリ充電状態SOCと車両速度Vsに応じて目標充放電パワーPbatを、バッテリ充電残量SOCを基準に車両速度Vsをパラメータとする不図示の検索マップにより検索して設定する。
【0033】
目標エンジンパワー算出部40としては、目標駆動パワー設定部38により設定された目標駆動パワーPdrvと、目標充放電パワー設定部39により設定された目標充放電パワーPbatと、から目標エンジンパワーPegを算出する。ここでは、目標駆動パワーPdrvから目標充放電パワーPbatを減算することにより、目標エンジンパワーPegを得る。
【0034】
エンジン制御部41としては、目標エンジンパワーPegに基づいて決定されるエンジン2の運転効率が良い動作点(エンジン回転数とエンジントルクとをパラメータとする不図示のエンジン動作点検索マップで検索して決定する)で、エンジン2が動作するように、空気量調整部10と燃料供給部11と着火部12との駆動状態を制御する。
【0035】
モータジェネレータ制御部42としては、第1、第2モータジェネレータ4、5の合計電力が目標充放電パワーPbatとなるように、第1、第2インバータ19、20の駆動状態を制御する。
【0036】
この構成により、駆動制御部32は、内燃機関目標稼働速度取得部やモータジェネレータ目標稼働速度取得部を構成して、目標エンジンパワーPegに基づいてエンジン2の運転効率が良い動作点(エンジン回転数とエンジントルク)を決定し、エンジン2がこの動作点で動作するように、エンジン制御部41により空気量調整部10、燃料供給部11および着火部12を駆動制御する。また、駆動制御部32は、第1、第2モータジェネレータ4、5の合計電力が目標充放電パワーPbatとなるようにモータジェネレータ制御部42によりインバータ19、20を駆動制御することにより、エンジン2、第1、第2モータジェネレータ4、5の各トルクを制御する。このとき、エンジン2、第1、第2モータジェネレータ4、5の発生する駆動力は、第1、第2遊星歯車機構8、9を介して駆動軸7から駆動輪6に伝達されてハイブリッド車両が走行する。
【0037】
ところで、本実施形態のハイブリッド車両は、第1、第2モータジェネレータ4、5が発電機として機能して回生制動力を発生する場合にバッテリ21に充電しているが、その第1、第2モータジェネレータ4、5が電動機として機能して車両を走行させる駆動力を発生する場合にはバッテリ21内の電気量を消費する。このことから、そのバッテリ21内の充電残量を検出するバッテリ充電状態検出部36による充電残量SOCが予め設定されている設定値を下回ったときには、エンジン2を起動してバッテリ21を充電する必要がある。このエンジン2は、車両を前進させる方向に駆動軸7を駆動させる方向にのみ出力軸3を回転させることから、特に後進時には後述するように、主に第2モータジェネレータ5の駆動力により車両を走行させることになりバッテリ21内の電気量が消費される。このため、このバッテリ21の充電制御は、車両が後ろ方向に進む後進時にも実行する必要があり、エンジン2が出力する前進方向への駆動力を抑えるように第1モータジェネレータ4が駆動力を発生するとともに発電機となる充電制御を行う。
【0038】
この後進時のエンジン2と第1、第2モータジェネレータ4、5のトルクの関係を図示すると、
図2の共線図のように、図示することができる。この共線図では、駆動軸7のトルクToutが正の場合にはエンジン2のトルクTe、第1、第2モータジェネレータ4、5のトルクTmg1、Tmg2により走行する車両に後進方向への駆動力が加わる一方、負の場合には前進方向の駆動力が加わることを示している。そのエンジン2のトルクTe、第1、第2モータジェネレータ4、5のトルクTmg1,Tmg2、駆動軸7のトルクToutの間隔は、第1、第2遊星歯車機構8、9(PG1、2)におけるギヤ比を現わしており、図中のk1、k2は次式(1)、(2)で現わされる。
k1=PG1リングギヤ25の歯数/PG1サンギヤ22の歯数 ……(1)
k2=PG2サンギヤ26の歯数/PG2リングギヤ29の歯数 ……(2)
【0039】
そして、後進時には、次式(3)の関係になり、
(k1+1)×Tmg1=k2×Tmg2 ……(3)
駆動軸7のトルクToutは第1、第2モータジェネレータ4、5のトルクTmg1、Tmg2の合計になるので、次式(4)のようになる。なお、Tmg1、Tmg2は、後進方向のトルクなので、負である。
−Tout=Tmg1+Tmg2
Tout=−(k1+k2+1/k1+1)×Tmg2 ……(4)
【0040】
一方、エンジン2の動作中には、次式(5)の関係になり、
(k1+1)×Tmg1+Te=k2×Tmg2 ……(5)
駆動軸7のトルクToutは第1、第2モータジェネレータ4、5のトルクTmg1、Tmg2の合計になるので、次式(6)のようになる。なお、Teは、前進方向のトルクなので、正である。
−Tout=Tmg1+Te+Tmg2
Tout=−(k1+k2+1/k1+1)×Tmg2+(k1/k1+1)×Te ……(6)
【0041】
よって、エンジン2の稼働中には、駆動軸7のトルクTeが正のトルクであることから、上記(6)式における(k1/k1+1)×Teの分だけ、そのエンジン2の停止中よりも後進トルクが小さくなり、車両を後進させる駆動力が減少する。
【0042】
また、
図2の共線図に示すように、エンジン2が起動すると、駆動軸7のトルクToutが一定のまま、停止時の直線Aから直線Bに変移することから、後進時の駆動力として寄与するトルクTmg2を発生する第2モータジェネレータ5の回転速度は増加する。この第2モータジェネレータ5が後進方向に回転する際の出力可能な出力トルクは、
図3に示すように、その回転速度に応じて車両の後進方向の駆動力として(マイナス方向のトルクとして)、エンジン2の停止時の低速回転速度Nmg2sでは後進トルクTmg2sであるのに対して、エンジン2の稼働時の高速回転速度Nmg2mでは後進トルクTmg2mに減少する。このため、車両の後進時にエンジン2を起動すると、第1、第2モータジェネレータ4、5の回転速度が上昇するとともに、第2モータジェネレータ5による後進方向の駆動力は減少する。
【0043】
なお、この後進時でも、前進時と同様に、走行する車両速度Vsやアクセル開度検出部33によるアクセル開度tvo(運転者の走行要求)に応じた目標駆動力Fdrvや、バッテリ充電状態SOCから設定する目標充放電パワーPbatに基づいて第2インバータ20の駆動を制御することにより第2モータジェネレータ5が所望の駆動力(トルク)を発生する回転速度で駆動させるようになっている。
【0044】
また、この第1、第2モータジェネレータ4、5は、
図3に回転速度とトルクの特性を図示するように、有効にトルクを取り出すことのできる低速回転時よりもその回転速度が高くなるほど所望のトルクを得ることができなくなる。このことから、上記の特許文献1に記載のように、主に第2モータジェネレータ5のみが走行時の駆動力を発生する後進時には、運転者が要求する走行速度にするために駆動力が増加傾向にある場合でも、モータジェネレータ制御部42がその後進時の目標駆動力Fdrvの増加を制限することにより、後進時の車両の走行速度Vsの上昇を抑制してエンジン2が起動してもその第2モータジェネレータ5の回転速度が許容回転速度を超えないようにするのが好ましい。その一方で、エンジン2は、稼働する場合には、前進・後進を問わずに、少なくともアイドリング状態を維持可能な回転数で駆動する必要があることから、上記の特許文献1と同様に、エンジン制御部41がアイドリング維持判定部41aを備えて、第1、第2モータジェネレータ4、5の回転速度や車両の走行速度Vsに基づいて駆動させた場合のエンジン2の回転速度を算出して、そのアイドリング駆動も維持不能な場合には、起動を禁止するようにしている。
【0045】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の制御においても、車両の前進時と同様に、後進時にも、エンジン回転数がアイドリング駆動可能な許容最少回転数よりも高くエンジン2を起動可能なことを前提にして、下記の条件A〜Cのいずれかが揃った場合には、そのままエンジン2を起動させている。そうすると、例えば、運転者が要求する走行速度にするために必要な駆動力を得るためには、エンジン2の稼働が必要と判断して、エンジン2の起動はアイドリング状態を維持不能な場合のみに禁止されているだけなので、そのエンジン2が起動されて、上述したように、後進トルクTmg2が減少して運転者の意図する後進操作が妨げられてしまうことになる。
条件A:車両の走行速度Vsがエンジン2の駆動力が必要な所定速度を上回る。
条件B:目標駆動パワーPdrvがエンジン2の駆動力が必要な所定値を上回る。
条件C:バッテリ21の充電残量SOCが充電の必要な残量を下回る。
【0046】
そこで、本実施形態の駆動制御部32は、アクセル開度検出部33、車両速度検出部34、エンジン回転数検出部35およびバッテリ充電状態検出部36に加えて、運転者がレバー操作するシフトポジションの位置を検出して前進走行や後進走行の指示を検出するシフトポジション検出部(指示取得部)47を備えている。この駆動制御部32は、これらの各種検出取得情報に基づいてエンジン2や第1、第2モータジェネレータ4、5の駆動を制御するようになっている。なお、指示取得部は、シフトポジション検出部47に限るものではなく、他のボタン操作など各種指示入力操作から前進走行や後進走行を検出するものであればよいことは言うまでもない。
【0047】
この駆動制御部32は、エンジン2の停止状態でシフトポジション検出部47が運転者の後進指示を検出したときには、前進時とは異なる条件(厳しい最低限の最適条件)を満たしたときにエンジン2を起動してバッテリ21の充電制御を開始するようになっており、次の条件を1つでも満たさないときにはエンジン2の起動を禁止(停止状態を維持)するようになっている。
【0048】
具体的には、駆動制御部32は、運転者の後進指示があっても、下記の条件(1)と条件(2)の双方を満たす場合にのみ、エンジン2の稼働を許可する(どちらかでも満たさない場合には起動禁止する)ようになっており、上記の条件Aや条件Bを満たしてもエンジン2の稼働を許可せずに、後進時には限界ぎりぎりまでエンジン2の起動を制限するようになっている。なお、前進時には同様の条件を利用して、下記条件(1)を前提にして、下記条件(2)または下記条件(3)のいずれかでも満たす場合には、エンジン2を起動して駆動力を補充したり、バッテリ21の充電を開始する必要がある。ここで、前進時にエンジン2の稼働の可否を判断する上記条件Bは、目標駆動力設定部37の目標駆動力Fdrvに、上記条件Aの車両の走行速度Vsを乗算することにより算出する値であり、その目標駆動力Fdrvもアクセル開度tvoと車両速度Vsとに応じて検索決定するものであることから、その上記条件Aの見極めをある程度は上記条件Bの確認で十分に補完することができ、また、上記条件Aをそのまま採用すると、車両速度Vsが設定値を超えない限り、エンジン2を起動させることができなくなってしまう。
条件(1):エンジン2の起動条件がアイドリング回転を維持可能な回転速度以上である場合
条件(2):バッテリ充電状態検出部36の充電残量SOCが充電の必要な残量の第1充電残量閾値(IntCl)以下である場合
条件(3):目標駆動パワー設定部38の目標駆動パワーPdrvが第2モータジェネレータ5のみによる前進走行の限界値の駆動力閾値IntPdrvを超える場合
【0049】
詳細には、駆動制御部32は、
図4のフローチャートに示す処理手順(制御方法)に従ってエンジン2の駆動を制御するようになっており、まずは、ステップS101において、エンジン2の停止状態でシフトポジション検出部47が運転者の後進指示を検出しているか否かを確認して、後進指示を確認した場合にステップS102に進む。
【0050】
このステップS102では、バッテリ充電状態検出部36の充電残量SOCが予め設定されている第1充電残量閾値(IntCl)以下であるか否かを確認して、その第1充電残量閾値(IntCl)以下である場合にステップS103に進む。このステップS103では、エンジン2を起動した後にも少なくともアイドリング回転を維持可能な回転速度以上であるか否かを確認して、アイドリング維持可能な場合にステップS104に進みエンジン2を起動する。
【0051】
この処理手順において、ステップS101で後進走行を指示する後進レンジであることが確認されなかった場合には、前進時のエンジン2の起動停止判定を含む通常の制御処理(ステップS106)に戻る。一方、ステップS102で充電残量SOCが第1充電残量閾値(IntCl)以下でなく第2モータジェネレータ5に十分に電力供給可能なことを確認した場合や、ステップS103でエンジン2のアイドリング維持可能でないことを確認した場合にはステップS105に進んでエンジン2の停止状態を継続する。すなわち、駆動制御部32は、充電残量SOCが第2モータジェネレータ5に十分に電力供給可能な場合(ステップS102)、エンジン2のアイドリング維持可能でない場合(ステップS103)のいずれの場合もエンジン2の停止状態を継続する(ステップS105)ようになっている。
【0052】
これにより、駆動制御部32は、
図5に示すように、例えば、前進時には上記条件(1)および上記条件(3)を満たすためにエンジン2の起動が掛けられるタイミングTsでも、後進時には、バッテリ21の残量SOCが第1充電残量閾値(IntCl)よりも少なくなるという上記条件(2)を満たさない限り、エンジン2の起動を禁止したまま停止状態を継続させることができ、バッテリ21により駆動する第2モータジェネレータ5のみである程度の駆動力(IntPdrv以上)を維持したまま十分に後進走行を継続することができる。言い換えると、駆動制御部32は、これにも拘わらずに、上述するように、エンジン2を起動させてしまって、却って第2モータジェネレータ5の後進トルクTmg2を下げてしまうことを回避することができる。この後に、駆動制御部32は、その上記条件(2)をも満たしてバッテリ21の充電残量SOCが第1充電残量閾値(IntCl)よりも少なくなった必要最低限のタイミングに起動させてそのバッテリ21の充電を開始することができる。なお、条件を満たさなくても、バッテリ21の限界時にはエンジン2を起動して充電を開始することは言うまでもない。
【0053】
ここまで、本実施形態においては、前進時と異なって、後進の駆動力に寄与しないエンジン2の起動はできるだけ遅らせることができ、バッテリ21の充電残量が充電の必要なほど消費されたときに初めてエンジン2を起動させて充電を開始することができる。したがって、後進時に必要最低限のタイミングにエンジン2を起動させてバッテリ21を充電することができ、第1、第2モータジェネレータ4、5を快適に駆動させて車両を後進走行させることができる。
【0054】
ここで、ハイブリッド車両は、稼働または停止するエンジン2と共に第1、第2モータジェネレータ4、5が搭載されて協働することにより、駆動トルク(駆動力)を発生する電動機または回生エネルギ(電気エネルギ)を発生する発電機として機能する。例えば、後進時の回転速度とトルクとの関係は、
図6の共線図に示すような関係にある。第1モータジェネレータ4の正方向回転速度制限値(N1max1)を限界として、アイドリング状態を維持可能な回転数でエンジン2を駆動させつつ第2モータジェネレータ5が後進最大速度(Nomax1)で駆動して後進する場合は、直線Cで表示するような関係にある。一方、そのエンジン2が停止時にその第2モータジェネレータ5により同様の後進最大速度(Nomax1)で後進する場合には、直線Dで表示するように第1モータジェネレータ4は正方向回転速度制限値(N1max1)よりも低い正方向回転速度限界値(N1max2)で駆動することになる。
【0055】
要するに、このハイブリッド車両は、エンジン2の停止時に第1モータジェネレータ4が正方向回転速度制限値(N1max1)で回転駆動しつつ第2モータジェネレータ5により高速後進走行している状態からエンジン2が起動してアイドリング状態を維持する回転数で駆動すると、第1モータジェネレータ4は正方向回転速度制限値(N1max1)を超える回転数となって十分に発電機として機能することができない。言い換えると、ハイブリッド車両は、エンジン2を起動したときにも第1モータジェネレータ4を正方向回転速度制限値(N1max1)で回転駆動するのを限界とするために、エンジン2の起動前の停止状態時にはその正方向回転速度制限値(N1max1)よりも低い正方向回転速度限界値(N1max2)の回転速度に制限して駆動させておく必要がある。
【0056】
そこで、駆動制御装置1の駆動制御部32は、運転者による後進指示時に上記条件(1)と条件(2)の双方を満たすときにエンジン2を起動させる制御に加えて、下記条件(4)を満たした場合には、上記条件(1)と条件(2)の双方を満たしてエンジン2を起動させる前に、第1モータジェネレータ4の目標駆動速度を制限してその回転速度を低減するようになっている。
条件(4):バッテリ充電状態検出部36の充電残量SOCが第1充電残量閾値(IntCl)までには至らないが近々に充電が必要となることが予想される残量の第2充電残量閾値(IntC2)以下である場合
【0057】
具体的には、駆動制御部32は、
図7に示すように、第1充電残量閾値(IntCl)と第2充電残量閾値(IntC2)の間の充電残量SOCに対応する第1モータジェネレータ4の第1正方向回転制限値(N1max1)から第2正方向回転制限値(N1max2)までの相対関係を規定する検索マップが設定されている。また、この駆動制御部32は、
図8に示すように、その第1モータジェネレータ4を第1正方向回転制限値(N1max1)から第2正方向回転制限値(N1max2)の範囲で駆動させる際の第1目標駆動力FRdrv1から第2目標駆動力FRdrv2を規定する検索マップが設定されている。
【0058】
そして、駆動制御部32は、まずは、バッテリ充電状態検出部36が近々にエンジン2の起動が必要となる予告タイミングTbとなる第2充電残量閾値(IntC2)以下になっていることを検出した後には、その充電残量SOCに対応する正方向回転制限値(N1max)を検索決定して目標駆動力設定部37によりその回転数で後進走行させる目標駆動力をFRdrv1からFRdrv2の間から検索決定して第1モータジェネレータ4の回転速度を第2正方向回転制限値(N1max2)まで低減しておく。この後に、駆動制御部32は、その充電残量SOCがエンジン2を起動する限界タイミングTsとなる第1充電残量閾値(IntCl)以下になったことを検出したときには、エンジン2を起動すると共に、目標駆動力設定部37により第1正方向回転制限値(N1max1)の回転数で後進走行させる目標駆動力FRdrv1を検索決定して第1モータジェネレータ4を回転駆動してバッテリ21に効率よく充電可能な駆動条件でエンジン2と共に稼動させるようになっている。ここで、本実施形態では、
図7や
図8に示す検索マップを設定して各種設定値を検索決定する場合を一例に説明するが、これに限るものではなく、例えば、検出情報に設定値を対応付けする検索テーブルを設定して各種設定値を検索設定するようにしてもよい。
【0059】
詳細には、駆動制御部32は、
図9のフローチャートに示す処理手順(制御方法)に従ってエンジン2と共に第1モータジェネレータ4の駆動を制御するようになっている。まずは、ステップS201において、エンジン2の停止状態でシフトポジション検出部47が運転者の後進指示を検出しているか否かを確認して、後進指示を確認した場合にステップS202に進む。このステップS202では、バッテリ充電状態検出部36の充電残量SOCが予め設定されている第2充電残量閾値(IntC2)以下であるか否かを確認して、その充電残量SOCが第2充電残量閾値(IntC2)以下でない場合にはこの処理を終了してステップS201に戻る一方、第2充電残量閾値(IntC2)以下である場合にステップS203に進む。
【0060】
このステップS203では、その第2充電残量閾値(IntC2)以下の充電残量SOCに対応する正方向回転速度制限値(N1max)を
図7に示す正方向許容最大回転速度検索マップから検索決定してステップS204に進む。このステップS204では、その検索決定した正方向回転速度制限値に対応する目標駆動力FRdrvを目標駆動力設定部37が
図8に示す後進目標駆動力制限値検索マップから検索決定してステップS205に進む。このステップS205では、この検索決定した目標駆動力FRdrvに基づいて駆動制御が実効されて、ステップS201に戻って一連の制御が繰り返されることにより、第1モータジェネレータ4の回転速度が徐々に第2正方向回転制限値(N1max2)になるようにその駆動が制限される。このとき、ハイブリッド車両の後進速度も目標駆動力がFRdrv2に低減されることにより減速されることになる。
【0061】
この後に、バッテリ充電状態検出部36の充電残量SOCが予め設定されている第1充電残量閾値(IntC1)以下に達したことが確認されると、上述第1実施形態の制御処理によりエンジン2が起動されるとともに、第1モータジェネレータ4の駆動速度もバッテリ21の充電に適した第1正方向回転制限値(N1max1)になるように第1目標駆動力FRdrv1に検索決定されて駆動制御される。このとき、ハイブリッド車両の目標駆動力はFRdrv1に上昇され、後進速度は維持されることになる。
【0062】
これにより、駆動制御部32は、例えば、
図10に示すように、後進走行開始後にはエンジン2を起動させることなく後進走行することから、図中に一転鎖線で示すように、バッテリ21の充電残量SOCは減少するとともに、後進方向の走行速度Vsは上昇する(後進方向であることから図中にはマイナス表示している)。このとき、第1モータジェネレータ4の回転速度は第1正方向回転制限値(N1max1)に制限されていることから、その駆動速度に達したタイミングTuに達した後には一定速度に維持される。この後に、駆動制御部32は、充電残量SOCが第2充電残量閾値(IntC2)以下に達したタイミングTbの後には、充電残量SOCが第1充電残量閾値(IntC1)に達するまで、正方向回転制限値(N1max)が第1正方向回転制限値(N1max1)から第2正方向回転制限値(N1max2)になるように目標駆動力がFRdrv1からFRdrv2に徐々に低減される。そして、駆動制御部32は、充電残量SOCが第1充電残量閾値(IntC1)に達するタイミングTsには、エンジン2が起動されるとともに、正方向回転制限値(N1max)が第1正方向回転制限値(N1max1)に戻されて目標駆動力FRdrv1での駆動が再開される。
【0063】
したがって、駆動制御部32は、バッテリ21に効率よく充電することができるとともに、運転者の操作に反して駆動力が低下したままとなってしまうことをなくすことができる。これは、正方向回転制限値(N1max)を第1正方向回転制限値(N1max1)から低減することなく目標駆動力FRdrv1のままでの駆動を継続することがないため、充電残量SOCが第1充電残量閾値(IntC1)に達したタイミングTsにエンジン2が起動されたきには、その第1モータジェネレータの回転速度が第1正方向回転制限値(N1max1)を超えてバッテリ21への効率のよい充電を開始することができなくなってしまうことを未然に回避することができるためである。
【0064】
なお、第1モータジェネレータ4の回転速度が第1正方向回転制限値(N1max1)付近であるために目標駆動力を低減させることも考えられる。しかしながら、これだけでは、回転速度が制限値付近を維持し続ける場合には、充電残量SOCが第1充電残量閾値(IntC1)に達した後にエンジン2を起動すると、後進時には、その制限値を超えることが予想されるためにエンジン2を起動することができない、という事態に陥ってしまう可能性があるが、本実施形態ではこれを回避することができる。
【0065】
このように本実施形態においては、後進時には、バッテリ21の充電残量が少なくなってエンジン2による充電を開始するまで、第1、第2モータジェネレータ4、5の十分なトルクにより車両を後進走行させることができるのに加えて、エンジン2の起動の前に第1モータジェネレータ4の回転速度を低減することにより、その第1モータジェネレータ4の回転速度が制限値を越えて効率よく充電できなくなったり、十分な駆動力で後進走行できなくなってしまうことを回避することができる。したがって、後進時に適したタイミングで第1モータジェネレータ4の回転駆動を制御しつつバッテリ21を効率よく充電することができ、ハイブリッド車両を快適に後進走行させることができる。
【0066】
本実施形態の他の態様としては、図示することは省略するが、エンジン2を起動する前に(同時も含む)、第1モータジェネレータ4の回転速度を低減するのは、単独で実行してもよく、例えば、後進時に前進時と同様の条件でエンジン2を起動させる場合でも、本実施形態を実行するようにしてもよい。
【0067】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。