(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明のハイブリッド車両の駆動制御装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のハイブリッド車両の駆動制御装置のシステム構成図である。本実施形態のハイブリッド車両は、駆動系に、燃料の燃焼によって駆動力を発生するエンジン(内燃機関)2と、電気エネルギによって駆動力を発生(力行)したり、回生によって電気エネルギを発生したりすることができる第1モータジェネレータ(発電動機)4及び第2モータジェネレータ(発電動機)5と、車両の駆動輪6に接続された駆動軸7と、前記エンジン2、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の駆動力や駆動輪6から入力される路面反力を合成したり分割したりする動力分割合成機構としての第1遊星歯車機構8及び第2遊星歯車機構9と、動力分割合成機構と駆動軸7と連結する出力伝達機構31とを備えている。
【0017】
エンジン2は、図示しないアクセルペダルの踏込み量に対応して空気吸入状態を調整するスロットルバルブなどの空気量調整部10と、空気吸入状態に対応して燃料供給状態を調整する燃焼噴射弁などの燃料供給部11と、燃料への着火状態を調整する点火装置などの着火部12とを備えている。従って、空気量調整部10による空気吸入状態、燃料供給部11による燃料供給状態、着火部12による着火状態を制御することによってエンジン2内の燃料の燃焼状態が制御され、その結果、エンジン2の駆動力、具体的には回転速度と駆動トルク(以下、夫々、エンジン回転速度、エンジントルクとも記す)を制御することができる。なお、エンジン2のエンジン出力軸3には、一方向への回転のみを許容し、逆方向への回転を規制するエンジン回転規制機構としてのワンウエイクラッチ1が設けられている。
【0018】
第1モータジェネレータ4は、第1ロータ軸13、第1ロータ14、第1ステータ15を備えている。また、第2モータジェネレータ5は、第2ロータ軸16、第2ロータ17、第2ステータ18を備えている。第1モータジェネレータ4の第1ステータ15は第1インバータ19に接続され、第2モータジェネレータ5の第2ステータ18は第2インバータ20に接続されている。そして、第1インバータ19、第2インバータ20はバッテリ21に接続されている。従って、第1、第2インバータ19、20によって第1、第2ステータ15、18へのバッテリ21からの電気エネルギを制御する、具体的には例えば界磁電流を制御することによって第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の駆動力、具体的には回転速度と駆動トルク(以下、夫々、モータジェネレータ回転速度、モータジェネレータトルクとも記す)を制御することができる。また、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の夫々では、回転方向とトルクの方向が逆向きであるとき、回生によって発電することができ、その発電エネルギでバッテリ21を充電することもできる。
【0019】
第1遊星歯車機構8は、周知のように、第1サンギヤ22と、第1プラネタリギヤ23を支持する第1キャリヤ24と、第1リングギヤ25とを備えている。また、第2遊星歯車機構9は、第2サンギヤ26と、第2プラネタリギヤ27を支持する第2キャリヤ28と、第2リングギヤ29とを備えている。本実施形態では、前記エンジン2、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5、第1遊星歯車機構8、第2遊星歯車機構9を全て同一軸線上に配置している。また、第1遊星歯車機構8の第1キャリヤ24と第2遊星歯車機構9の第2サンギヤ26を連結してエンジン2のエンジン出力軸3に接続している。また、第1遊星歯車機構8の第1サンギヤ22を第1モータジェネレータ4の第1ロータ軸13に接続している。また、第2遊星歯車機構9の第2リングギヤ29を第2モータジェネレータ5の第2ロータ軸16に接続している。また、第1遊星歯車機構8の第1リングギヤ25と第2遊星歯車機構9の第2キャリヤ28を連結して駆動輪6の駆動軸7に接続している。駆動軸7への接続は、例えば第1遊星歯車機構8の第1リングギヤ25の外周に設けられた歯車などの出力部30と駆動軸7を出力伝達機構31で接続することで行われている。なお、第1遊星歯車機構8と第2遊星歯車機構9の各回転要素の連結は、変速歯車や伝達歯車を介装することなく直接的に行われており、各回転要素と第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5、エンジン2との接続も同様である。
【0020】
前記エンジン2への空気吸入状態を調整する空気量調整部10、燃料供給状態を調整する燃料供給部11、燃料への着火状態を調整する着火部12、第1モータジェネレータ4の第1ステータ15への電気エネルギを制御する第1インバータ19、第2モータジェネレータ5の第2ステータ18への電気エネルギを制御する第2インバータ20は駆動制御コントローラ32に接続されている。駆動制御コントローラ32は、車両として必要な駆動トルクを設定する目標駆動トルク設定部37、走行速度を維持して駆動トルクを得るために必要な目標駆動パワーを設定する目標駆動パワー設定部38、バッテリ21の充電状態から当該バッテリ21への充放電パワーを設定する目標充放電パワー設定部39、目標充放電パワーを達成しながら目標駆動パワーを得るために必要な目標エンジンパワーを設定する目標エンジンパワー設定部40、目標エンジンパワーに応じて効率のよいエンジン回転速度及びエンジントルクを設定し制御するエンジン制御部41、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の合計電力が目標充放電パワーになるように第1インバータ19及び第2インバータ20を制御するモータジェネレータ制御部42を備えている。なお、駆動制御コントローラ32は例えばマイクロコンピュータなどの演算処理装置で構成され、前記の設定部や制御部は、当該駆動制御コントローラ32で行われる演算処理によって構築されている。
【0021】
車両には、アクセルペダルの操作量をアクセル開度Accとして検出するアクセル開度センサ33、車両の走行速度Vcを検出する走行速度センサ34、エンジン2の回転速度をエンジン回転速度Nengとして検出するエンジン回転速度センサ35、バッテリ21の充電状態量SOCを検出するバッテリ充電状態センサ36が備えられている。駆動制御コントローラ32では、これらのセンサからの検出信号を読込み、後述する演算処理に従って、空気量調整部10、燃料供給部11、着火部12、第1インバータ19、第2インバータ20を制御することにより、エンジン2、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の運転状態を制御する。
【0022】
本実施形態では、前述のように、第1遊星歯車機構8の第1キャリヤ24と第2遊星歯車機構9の第2サンギヤ26とが直接的に連結されており、第1遊星歯車機構8の第1リングギヤ25と第2遊星歯車機構9の第2キャリヤ28とが直接的に連結されている。このため、2つの遊星歯車機構8、9の共線図上の第1キャリヤ24と第2サンギヤ26は同じ速度で回転し、第1リングギヤ25と第2キャリヤ28も同じ速度で回転する。そこで、2つの遊星歯車機構8、9の共線図を重ね合わせると、
図2のように、例えば左から第1遊星歯車機構8の第1サンギヤ22の軸(図のMG1軸:第1モータジェネレータ4の第1ロータ軸13に相当)、第1遊星歯車機構8の第1キャリヤ24及び第2遊星歯車機構9の第2サンギヤ26の軸(図のENG軸:エンジン2のエンジン出力軸3に相当)、第1遊星歯車機構8の第1リングギヤ25及び第2遊星歯車機構9の第2キャリヤ28の軸(図のOUT軸:第1リングギヤ25の出力部30、即ち駆動輪6の駆動軸7に相当)、第2遊星歯車機構9の第2リングギヤ29の軸(図のMG2軸:第2モータジェネレータ5の第2ロータ軸16に相当)の計4つの軸、つまり4つの回転要素が設定される。そして、これらの軸間距離のレバー比を求めると、例えば図のENG軸−OUT軸間を1としたとき、ENG軸−MG1軸間は、第1遊星歯車機構8の第1リングギヤ25の歯数を第1サンギヤ22の歯数で除した値k1となり、OUT軸−MG2軸間は、第2遊星歯車機構9の第2サンギヤ26の歯数を第2リングギヤ29の歯数で除した値k2となる。
【0023】
この動力分割合成機構による共線図は、本出願人が先に提案した特許第3852562号公報に記載されるものと同等である。この動力分割合成機構の特徴は、4つの軸の左右両端の軸に第1モータジェネレータ4と第2モータジェネレータ5が位置している点にある。そして、このように4つの軸の両端にモータジェネレータ4、5を位置させることにより、上記特許公報に記載されるように、部品点数の増加、装置の大型化、機械損失の増加、などの不利益を被ることなく、後述するように、ギヤ比の高い通常使用域での電力授受量を低減することができ、もって燃費向上を図ることが可能となる。
【0024】
以下、幾つかの共線図を用いて、エンジン2の回転速度やトルク、車両の走行速度、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の回転速度やトルクについて説明する。共線図では、第1モータジェネレータ4の第1ロータ軸13における第1モータジェネレータトルクをTmg1、第2モータジェネレータ5の第2ロータ軸16における第2モータジェネレータトルクをTmg2、エンジン2のエンジン出力軸3におけるエンジントルクをTeng、出力部30における駆動トルク、即ち駆動軸7への駆動トルクをToutとする。そして、各共線図において、回転速度はエンジン2の回転方向を正方向とし、4つの軸に入力されるトルクはエンジントルクTengと同じ向きのトルクが入力される方向を正と定義する。従って、出力部30における駆動トルクToutが正の場合は車両を後方へ駆動しようとするトルクが出力されている状態であり、駆動トルクToutが負の場合は車両を前方へ駆動しようとするトルクが出力されている状態である。なお、以下の説明では、機械的、電気的、物理的な損失がないものとする。
【0025】
図2は、車両の走行速度Vcが比較的小さい低速走行状態であって、エンジン2が正回転し、正のエンジントルクTengを出力している。第1モータジェネレータ4は高速で正回転しているが、第1モータジェネレータトルクTmg1は0である。また、第2モータジェネレータ5は正の第1モータジェネレータトルクTmg2を発生するが、第2モータジェネレータ回転速度Nmg2は0であるから電力を消費しない(力行しない)。この場合のエンジン2のエンジン回転速度Nengと出力部30の回転速度、即ち走行速度Vcとの比、所謂変速比は(1+k2)/k2であり、変速比が1より大きいことからローギヤ比状態であるといえる。
【0026】
図3は、車両の走行速度Vcが比較的大きい高速走行状態であって、エンジン2は正回転し、正のエンジントルクTengを出力している。第1モータジェネレータ4は負の第1モータジェネレータトルクTmg1を発生するが、第1モータジェネレータ回転速度Nmg1は0であるから電力を発生しない(回生しない)。また、第2モータジェネレータ5は高速で正回転しているが、第2モータジェネレータトルクTmg2は0である。この場合のエンジン2のエンジン回転速度Nengと出力部30の回転速度、即ち走行速度Vcとの比、所謂変速比はk1/(1+k1)であり、変速比が1より小さいことからハイギヤ比状態であるといえる。
【0027】
図4は、前記
図2のローギヤ比状態と
図3のハイギヤ比状態の中間のギヤ比状態に相当し、例えば図の状態では、車両の走行速度Vcは中速走行状態であって、エンジン2は正回転し、正のエンジントルクTengを出力している。そして、第1モータジェネレータ4は正回転しているが、負の第1モータジェネレータトルクTmg1を発生している。つまり、第1モータジェネレータ4は電力を発生(回生)している。一方、第2モータジェネレータ5は正回転し、正の第2モータジェネレータトルクTmg2を発生している。つまり、第2モータジェネレータ5は電力を消費(力行)している。バッテリ21への充放電がない場合、第1モータジェネレータ4で発生した電力で第2モータジェネレータ5を駆動すれば、電力授受バランスに優れる。
【0028】
このように本実施形態の動力分割合成機構では、低速から高速までの幅広い走行速度レンジにおいて、種々のエンジン運転状態に対し、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の駆動状態を制御することで、適切な駆動トルクToutを得ることができる。即ち、本実施形態のハイブリッド車両では、原則的に変速装置を必要としない。なお、これら以外にも、エンジン2を運転した状態での車両の後進も可能である。また、エンジン2を停止した状態、即ち第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか一方のみ又は双方のみによる車両の前進及び後進も可能である。この場合、前記特許第3852562号公報に記載されるように、エンジン2の回転速度は0とすべきであり、エンジン出力軸3に負方向へのトルクが作用する場合、そのトルクはワンウエイクラッチ1が受けることになる。
【0029】
なお、共線図からも明らかなように、例えば第1モータジェネレータ回転速度Nmg1は下記1式から、第2モータジェネレータ回転速度Nmg2は下記2式から得られる。なお、式中のNengはエンジン回転速度、Noutは出力部30の出力部回転速度であり、出力部回転速度Noutは、車両の走行速度Vc、最終減速比、出力伝達機構31の減速比から得られる。
Nmg1=(Neng−Nout)×k1+Neng ……… (1)
Nmg2=(Nout−Neng)×k2+Nout ……… (2)
【0030】
また、遊星歯車機構に入力されるトルクバランスから下記3式が成立する。また、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5で発電又は消費される電力とバッテリ21への入出力電力(充放電パワー)Pbatとが等しいことから下記4式が成立する。なお、各回転数Nmg1、Nmg2はrpm(revolution per minute又はrotation per minute)で表される。
Teng+(1+k1)×Tmg1=k2×Tmg2 ……… (3)
Nmg1×Tmg1×2π/60+Nmg2×Tmg2×2π/60=Pbat ……… (4)
【0031】
次に、後述する演算処理で、効率のよい目標エンジン回転速度Nengt、目標エンジントルクTengtを設定する手法について説明する。本実施形態では、本出願人が先に提案した特開2008−12992号公報に記載されるように、要求されるエンジンパワーに対し、車両の走行速度が大きいほど、目標エンジン回転速度Nengtを大きめに、目標エンジントルクTengtを小さめに設定する。
【0032】
例えば、
図5のように横軸にエンジン回転速度、縦軸にエンジントルクをとると、エンジンパワーはエンジン回転速度とエンジントルクの積値であるから、エンジンパワーの等パワーラインは図に反比例曲線で表れる。また、このエンジン特性図には、エンジン単体での等しい効率を結んだ等効率ラインが存在する。例えば、目標とする目標エンジンパワーが設定されると、その目標エンジンパワーラインのうち、最も効率のよいエンジン回転速度とエンジントルクを目標エンジン回転速度Nengt、目標エンジントルクTengtとすれば、少なくともエンジン単体では効率のよい、つまり低燃費な運転が可能となる。これらの点を連結したのが
図5に示すエンジン効率の最良動作ラインとなる。なお、このようにして設定された目標エンジン回転速度Nengt、目標エンジントルクTengtを動作点Cとする。
【0033】
仮に、このようにして目標エンジン回転速度Nengt、目標エンジントルクTengtを設定し、それらを固定して車両の走行速度Vc、即ち出力部回転速度Noutを
図6のように変化させてみる。その場合、走行速度Vcが小さく、出力部回転速度Noutが小さい場合には、
図6の共線
図Aに示すように、第1モータジェネレータ回転速度Nmg1も第2モータジェネレータ回転速度Nmg2も正となり、第1モータジェネレータトルクTmg1は負値、第2モータジェネレータトルクTmg2は正値となる。この場合、第1モータジェネレータ4は回生し、第2モータジェネレータ5は力行するが、共に回転方向が正方向であるからパワー(動力)の循環はない。
【0034】
同様に、走行速度Vcが少し大きく(例えば時速40km/h)なり、出力回転速度Noutも少し大きくなった場合には、
図6の共線
図Bに示すように、例えば第1モータジェネレータ回転速度Nmg1が0、第1モータジェネレータトルクTmg1は負値、第2モータジェネレータ回転速度Nmg2は正、第2モータジェネレータトルクTmg2は0となる(前記
図3のハイギヤ比状態と同じ)。この場合もパワー(動力)の循環はない。
【0035】
しかしながら、これよりも走行速度Vcが更に大きく(例えば時速80km/h)なり、出力回転速度Noutも大きくなると、
図6の共線
図Cに示すように、第1モータジェネレータ回転速度Nmg1が負、第1モータジェネレータトルクTmg1は負値、第2モータジェネレータ回転速度Nmg2は正、第2モータジェネレータトルクTmg2は負値となる。この状態は、第1モータジェネレータ4が負の方向に力行し、第2モータジェネレータ5は回生しているので、パワー(動力)の循環が生じ、動力伝達系の効率が低下する。このように動力伝達系の効率が低いと、
図7に示すように、エンジンの効率は高くても、全体の効率としては低下し、動作点Cは点Dよりも効率が低い。
【0036】
この高速(例えば時速80km/h)走行時のパワー(動力)の循環をなくすためには、例えば
図8の共線
図Eに示すように、第1モータジェネレータ回転速度Nmg1を0以上にすればよいが、そのようにしたのでは、エンジン回転速度が高くなる。エンジン回転速度が高くなると、
図7に点Eで示すように、動力伝達系の効率は高くても、やはり全体の効率としては低くなってしまう。
【0037】
そこで、この高速(例えば80km/h)走行時のエンジンの回転速度は、
図7の点Cと点Eの間の点Dとなるように設定し(
図8の共線
図D参照)、
図5に示すように、この動作点Dのエンジン回転速度を目標エンジン回転速度Nengtとし、当該目標エンジン回転速度Nengtにおける目標エンジンパワーの等パワーライン上のエンジントルクを目標エンジントルクNengtに設定する。このような理由から、例えば目標エンジンパワーが設定されたときの目標動作ラインは、
図9に示すように、走行速度に応じて変化し、全体的に、走行速度Vcが大きいほど、目標エンジン回転速度Nengtを大きく、目標エンジントルクTengtを小さく設定する。
【0038】
次に、前記駆動制御コントローラ32内で行われ、前記目標駆動トルク設定部37、目標駆動パワー設定部38、目標充放電パワー設定部39、目標エンジンパワー設定部40、エンジン制御部41を構築する演算処理を
図10のフローチャートに従って説明する。
この演算処理は、例えば所定サンプリング時間(例えば10msec.)毎に行われるタイマ割込処理で実行され、まずステップS1で前記アクセル開度センサ33、走行速度センサ34、エンジン回転速度センサ35、バッテリ充電状態センサ36からの各検出信号を読込む。
【0039】
次にステップS2に移行して、走行速度Vc、アクセル開度Accに応じた目標駆動トルクTdvtを、例えば
図11に示すマップ検索などによって算出する(目標駆動トルク設定部37を構成)。
次にステップS3に移行して、前記ステップS2で算出された目標駆動トルクTdvtに走行速度Vcを乗じて目標駆動パワーPdvtを算出する(目標駆動パワー設定部38を構成)。
【0040】
次にステップS4に移行して、バッテリ充電状態量SOCから、例えば
図12のマップ検索などによって暫定充放電パワーPcdbtを算出する。
次にステップS5に移行して、前記ステップS3で算出した目標駆動パワーPdvtから前記ステップS4で算出した暫定充放電パワーPcdbtを減じて目標エンジンパワーPengtを算出する(目標エンジンパワー設定部40を構成)。
【0041】
次にステップS6に移行して、目標エンジンパワーPengtの上限値カット処理を行う(目標エンジンパワー設定部40を構成)。この上限値は、エンジン2が出力可能なエンジンパワーの最大値である。
次にステップS7に移行して、前記ステップS6で上限カット処理が行われた目標エンジンパワーPengtから、前記
図9のマップ検索などにより、目標エンジン動作点、即ち目標エンジン回転速度Nengt、目標エンジントルクTengtを算出する(エンジン制御部41を構成)。
【0042】
次にステップS8に移行して、前記ステップS3で算出された目標駆動パワーPdvtから前記ステップS6で上限値カット処理された目標エンジンパワーPengtを減じて目標充放電パワーPbattを算出し(目標充放電パワー設定部39を構成)、メインプログラムに復帰する。
なお、エンジン制御部41は、前記ステップS7で算出された目標エンジン回転速度Nengt、目標エンジントルクTengtが達成されるように空気量調整部10による空気吸入状態、燃料供給部11による燃料供給状態、着火部12による着火状態を制御する。
【0043】
次に、前記駆動制御コントローラ32内で行われ、前記モータジェネレータ制御部42を構築する演算処理を
図13のフローチャートに従って説明する。この演算処理は、前記
図10の演算処理の直後に、例えば所定サンプリング時間(例えば10msec.)毎に行われるタイマ割込処理で実行され、まずステップS11で、走行速度Vc、目標エンジン回転速度Nengtから目標第1モータジェネレータ回転速度Nmg1t、目標第2モータジェネレータ回転速度Nmg2tを算出する。算出には、前記1式及び2式から導出した下記1’式及び2’式を用いる。また、前述したように、式中の出力部回転速度Noutは走行速度Vc、最終減速比、出力伝達機構31の減速比から得られる。
Nmg1t=(Nengt−Nout)×k1+Nengt ……… (1')
Nmg2t=(Nout−Nengt)×k2+Nout ……… (2')
【0044】
次にステップS12に移行して、車両の走行状態が第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか一方のみ又は双方のみによる走行状態(図ではEV状態、以下、モータジェネレータ走行モードと定義する)であるか否かを判定し、モータジェネレータ走行モードである場合にはステップS13に移行し、そうでない場合にはステップS17に移行する。なお、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか一方のみ又は双方のみによる走行状態、即ちモータジェネレータ走行モードは、目標エンジンパワーPengtが0の状態であり、例えばバッテリ21が満充電状態に近く、バッテリ充電状態量SOCから求めた暫定充放電パワーPcdbtが目標駆動パワーPdvt以上である場合の他に、アクセルペダルの踏込みがないクリープ走行状態や、アクセルペダルの踏込みのないコースト走行状態や減速走行状態などがある。
【0045】
ステップS13では、例えば
図14の制御マップに従って、目標駆動トルクTdvtに応じた第1モータジェネレータ第1分担率cf1を算出し、次いでステップS14に移行する。この
図14の制御マップでは、目標駆動トルクTdvtが目標駆動トルク第1所定値Tdvt1以下の領域では第1モータジェネレータ第1分担率cf1が1であり、目標駆動トルクTdvtが目標駆動トルク第2所定値Tdvt2以上の領域では第1モータジェネレータ第1分担率cf1が0であり、目標駆動トルクTdvtが目標駆動トルク第1所定値Tdvt1と目標駆動トルク第2所定値Tdvt2の間の領域では第1モータジェネレータ第1分担率cf1は目標駆動トルクTdvtの増加に伴ってリニアに減少する。従って、このステップS13がモータジェネレータ第1分担率設定部を構成する。なお、目標駆動トルク第1所定値Tdvt1以下の領域は、所謂モータジェネレータによるコギングトルクで車両共振が発生しやすい領域である。
【0046】
ステップS14では、例えば
図15の制御マップに従って、エンジン停止経過時間testpに応じた第1モータジェネレータ第2分担率cf2を算出し、次いでステップS15に移行する。エンジン停止経過時間testpは、エンジン2を停止して第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか一方のみ又は双方のみによる走行状態に移行した経過時間を示す。この
図15の制御マップでは、エンジン停止経過時間testpがエンジン停止経過時間第1所定値tesp1以下の領域では第1モータジェネレータ第2分担率cf2が0であり、エンジン停止経過時間testpがエンジン停止経過時間第2所定値testp2以上の領域では第1モータジェネレータ第2分担率cf2が1であり、エンジン停止経過時間testpがエンジン停止経過時間第1所定値testp1とエンジン停止経過時間第2所定値testp2の間の領域では第1モータジェネレータ第2分担率cf2はエンジン停止経過時間testpの増加に伴ってリニアに増加する。従って、このステップS14がモータジェネレータ第2分
担率設定部を構成する。
【0047】
ステップS15では、下記5式に従って、目標駆動パワーPdvt、第1モータジェネレータ第1分担率cf1、第1モータジェネレータ第2分担率cf2、目標第1モータジェネレータ回転速度Nmg1tから目標第1モータジェネレータトルクTmg1tを算出し、ステップS16に移行する。
Tmg1t=(Pdvt×cf1×cf2×60)/(2π×Nmg1t) ……… (5)
【0048】
ステップS16では、下記6式に従って、目標駆動パワーPdvt、第1モータジェネレータ第1分担率cf1、第1モータジェネレータ第2分担率cf2、目標第2モータジェネレータ回転速度Nmg2tから目標第2モータジェネレータトルクTmg2tを算出し、メインプログラムに復帰する。
Tmg2t=(Pdvt×(1−cf1×cf2)×60)/(2π×Nmg2t) ……… (6)
【0049】
一方、前記ステップS17では、目標第1モータジェネレータ回転速度Nmg1t、目標第2モータジェネレータ回転速度Nmg2t、目標充放電パワーPbatt、目標エンジントルクTengtから、下記7式に従って、目標第1モータジェネレータトルクTmg1tを算出してからステップS18に移行する。なお、下記7式は、前記3式及び4式の連立方程式を変形したものである。
Tmg1t=(Pbatt×60/2π−Nmg2t×Tengt/k2)/(Nmg1t+Nmg2t×(1+k1)/k2) ……… (7)
【0050】
ステップS18では、目標第1モータジェネレータトルクTmg1t、目標エンジントルクTengtから、下記8式に従って、目標第2モータジェネレータトルクTmg2tを算出してからメインプログラムに復帰する。なお、下記8式は、前記3式から導出したものである。
Tmg2t=(Tengt+(1+k1)×Tmg1t)/k2 ……… (8)
【0051】
前記
図10の演算処理によれば、走行速度Vcとアクセル開度Accから運転者の要求に応じ且つ車両の走行状態を反映した目標駆動トルクTdvtを設定し、この目標駆動トルクTdvtに走行速度Vcを乗じて目標駆動パワーPdvtを算出する。一方、バッテリ21の充電状態量SOCに応じて暫定充放電パワーPcdbtを設定し、目標駆動パワーPdvtから暫定充放電パワーPcdbtを減じて目標エンジンパワーPengtを算出し、上限カット処理した目標エンジンパワーPengtから前記
図9のマップ検索などにより目標エンジン回転速度Nengt、目標エンジントルクTengtを算出。そして、目標駆動パワーPdvtから上限カット処理された目標エンジンパワーPengtを減じて目標充放電パワーPbattを算出する。エンジン制御部41が、空気量調整部10による空気吸入状態、燃料供給部11による燃料供給状態、着火部12による着火状態を制御することにより、目標エンジン回転速度Nengt、目標エンジントルクTengtが達成されれば車両全体効率のよいエンジン運転状態を達成することができる。
【0052】
この状態はエンジン2が運転している状態なので、
図13の演算処理ではステップS11からステップS17に移行し、走行速度Vc及び目標エンジン回転速度Nengtに応じた目標第1モータジェネレータ回転速度Nmg1及び目標第2モータジェネレータ回転速度Nmg2tが設定される。また、ステップS18では、前記3式で表れるトルクバランス式及び前記4式で表れる電力バランス式を満たす目標第1モータジェネレータトルクTmg1t及び目標第2モータジェネレータトルクTmg2tが設定される。従って、モータジェネレータ制御部42は、第1インバータ19及び第2インバータ20を制御して、第1モータジェネレータ4を目標第1モータジェネレータ回転速度Nmg1で回転させて目標第1モータジェネレータトルクTmg1tを発生させ、第2モータジェネレータ5を目標第2モータジェネレータ回転速度Nmg2で回転させて目標第2モータジェネレータトルクTmg2tを発生させれば、車両全体効率がよく、トルクバランス並びに電力バランスのよいモータジェネレータ運転状態を達成することができる。
【0053】
一方、エンジン2が停止している車両の走行状態では、モータジェネレータ走行モードであり、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか一方のみ又は双方のみによって車両を駆動する必要がある。このときの目標エンジンパワーPengtは0であるから、目標駆動パワーPdvtは第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか一方又は双方で補わなければならない。この場合、
図13の演算処理のステップS13で目標駆動トルクTdvtに応じた第1モータジェネレータ第1分担率cf1を設定し、ステップS14でエンジン停止経過時間testpに応じた第1モータジェネレータ第2分担率cf2を設定する。そして、それらを用いてステップS15、ステップS16で目標第1モータジェネレータトルクTmg1t、目標第2モータジェネレータトルクTmg2tが算出設定される。
【0054】
例えば、エンジン2が停止している状態での低速走行状態では、
図16に破線で示すように、第2モータジェネレータ4のみに第2モータジェネレータトルクTmg2を発生させれば足りる。しかしながら、特に車両の停止直前のような低速走行時には、モータのコギングトルクで車両が共振することがある。このような共振は、例えば単一のモータのコギングトルクによる振動が車両の共振周波数に一致するためであるから、2つのモータを搭載している場合には、モータトルクを分担して2つのモータを同時に回転させればよい。
図17には、モータジェネレータのコギングトルクを駆動軸換算した振動成分を示す。
図17aは、第2モータジェネレータ5のみによる駆動時の振動振幅を、
図17bは、第1モータジェネレータ4のみによる駆動時の振動振幅を、
図17cは、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5によって駆動を分担したときの合成された振動振幅を示す。
【0055】
同図より明らかなように、エンジン停止時の駆動トルクを第2モータジェネレータ5のみで出力した場合と、第1モータジェネレータ4のみで出力した場合では振動周期が異なり、駆動トルクを第1モータジェネレータ4と第2モータジェネレータ5とで分担して出力した場合には、第2モータジェネレータ5のみで出力した場合と、第1モータジェネレータ4のみで出力した場合の夫々の振動周期を合成した振動波形となる。このように駆動トルクを第1モータジェネレータ4と第2モータジェネレータ5とで分担すれば振動周期が単一とならず、車両の共振を抑制防止することが可能となる。
【0056】
しかしながら、その一方で、前記
図16に実線で示すように、本来、第2モータジェネレータ5のみで出力する駆動トルクの一部を第1モータジェネレータ4にも分担して出力するようにすると、エンジン2のエンジン出力軸3にかかるトルク、即ちワンウエイクラッチ1で受けるトルクが増大し、場合によっては過大となる恐れがある。そこで、本実施形態では、前述のように目標駆動トルクTdvtに応じた第1モータジェネレータ第1分担率cf1及びエンジン停止経過時間testpに応じた第1モータジェネレータ第2分担率cf2を設定する。そして、それらを目標駆動パワーPdvtに乗じ、それを目標第1モータジェネレータ回転速度Nmg1tで除して目標第1モータジェネレータトルクTmg1tを算出設定する。また、1から第1モータジェネレータ第1分担率cf1と第1モータジェネレータ第2分担率cf2との積値を減じた値を目標駆動パワーPdvtに乗じ、それを目標第2モータジェネレータ回転速度Nmg2tで除して目標第2モータジェネレータトルクTmg2tを算出設定する。第1モータジェネレータ4への分担率が大きい場合には、
図18に破線で示すようにエンジン2のエンジン出力軸3、即ちワンウエイクラッチ1に係るトルクが大きくなるが、第1モータジェネレータ4の分担率が小さい場合には、
図18に実線で示すようにエンジン2のエンジン出力軸3、即ちワンウエイクラッチ1に係るトルクを小さくすることができる。
【0057】
前述したように、コギングトルクによる車両共振が発生しやすいトルク領域の上限に設定された目標駆動トルク第2所定値Tdvt2以上の領域では第1モータジェネレータ第1分担率cf1は0であるから、目標駆動トルクTdvtが目標駆動トルク第2所定値Tdvt2以上である場合には、主として第2モータジェネレータ5のみが目標駆動トルクTdvtを発生し、ワンウエイクラッチ1にかかるトルクの増大を抑制防止することができる。一方、目標駆動トルクTdvtが目標駆動トルク第1所定値Tdvt1と目標駆動トルク第2所定値Tdvt2の間である場合には、目標駆動トルクTdvtを第1モータジェネレータ4と第2モータジェネレータ5で分担し、つまり2つのモータジェネレータを同時に駆動することでコギングトルクによる車両共振を抑制防止すると共に、目標駆動トルクTdvtが小さいほど目標第1モータジェネレータトルクTmg1tが大きくなるようにすることでワンウエイクラッチ1にかかるトルクが過大となるのを防止することができる。また、目標駆動トルクTdvtが目標駆動トルク第1所定値Tdvt1以下の領域では第1モータジェネレータ第1分担率cf1は1であるから、目標駆動トルクTdvtが目標駆動トルク第1所定値Tdvt1以下である場合には、主として第1モータジェネレータ4のみが目標駆動トルクTdvtを発生することになるが、コギングトルクによる車両共振が発生し易い領域ではなく、また目標駆動トルクTdvt自体が十分に小さいことからエンジン2のエンジン出力軸3、即ちワンウエイクラッチ1にかかるトルクも十分に小さい。
【0058】
また、エンジン停止経過時間testpに応じて設定される第1モータジェネレータ第2分担率cf2は、エンジン停止経過時間testpがエンジン停止経過時間第1所定値testp1以下の領域では0である。即ち、例えば減速走行中にエンジンが停止すると、本来は
図16に破線で示すようなトルク配分となるが、例えば前記
図14の制御マップで目標駆動トルクTdvtが目標駆動トルク第2所定値Tdvt2より小さいと、すぐに第1モータジェネレータ第1分担率cf1に応じた第1モータジェネレータトルクTmg1が発生し、その結果、
図16に実線で示すトルクがワンウエイクラッチ1にステップ的に増大してかかる。このような急激なワンウエイクラッチ1へのトルクの増大を抑制防止するため、エンジン停止経過時間tstpがエンジン停止経過時間第1所定値testp1以下の領域では第1モータジェネレータ第2分担率cf2を0とし、その後、エンジン停止経過時間tstpがエンジン停止経過時間第1所定値testp1を超えてから徐々に第1モータジェネレータトルクTmg1が増大するようにした。
【0059】
このように本実施形態のハイブリッド車両の駆動制御装置では、動力源としてエンジン2と第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5を備え、エンジン2のエンジン出力軸3の少なくとも何れか一方への回転をワンウエイクラッチ(エンジン回転規制機構)1で規制する。また、駆動輪6に接続された駆動軸7、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5及びエンジン2の夫々に第1遊星歯車機構8及び第2遊星歯車機構9からなる動力分割合成機構の4つの回転要素の夫々を連結する。そして、車両の目標駆動トルクTdvtを設定し、当該目標駆動トルクTdvtに応じて第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5を駆動する。その場合、エンジン2を停止して第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか一方を主として駆動するモータジェネレータ走行モードで目標駆動トルクTdvtに応じた第1モータジェネレータ第1分
担率cf1を設定する。そして、モータジェネレータ走行モードによる走行中に車両振動が発生する所定の走行状態では、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータの何れか他方、この場合は第1モータジェネレータ4を第1モータジェネレータ第1分
担率cf1に応じて駆動することにより第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の双方を駆動する。従って、目標駆動トルクTdvtの大きさに応じて第1モータジェネレータ第1分
担率cf1を設定することにより第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか他方、即ち第1モータジェネレータ4のトルクを小さくすることが可能となる。そして、それによりモータジェネレータ走行モードで第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5を駆動したときのワンウエイクラッチ1にかかるトルクが過大となるのを抑制防止することができる。
【0060】
また、目標駆動トルクTdvtが予め設定された目標駆動トルク第2所定値Tdvt2以上の領域では第1モータジェネレータ第1分
担率cf1を0とし、当該目標駆動トルク第2所定値Tdvt2より目標駆動トルクTdvtが小さい領域では目標駆動トルクTdvtが小さいほど第1モータジェネレータ第1分
担率cf1を1に近づくように設定する。そして、目標駆動トルクTdvtから算出した目標駆動パワーPdvtに第1モータジェネレータ第1分
担率cf1を乗じて第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか他方のモータジェネレータ、即ち第1モータジェネレータ4の目標第1モータジェネレータトルクTmg1tを設定する。また、当該目標第1モータジェネレータトルクTmg1tによる駆動パワー分を目標駆動パワーPdvtから減じた駆動パワーに基づいて第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか一方のモータジェネレータ、即ち第2モータジェネレータ5の目標第2モータジェネレータトルクTmg2tを設定する。これにより、目標駆動パワーTdvtが大きいときの第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか他方、即ち第1モータジェネレータ4の目標第1モータジェネレータトルクTmg1tを小さくすることができる。従って、モータジェネレータ走行モードで第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5を駆動したときのワンウエイクラッチ1にかかるトルクが過大となるのを確実に抑制防止することができる。
【0061】
また、モータジェネレータ走行モードでエンジン2の運転後のエンジン停止経過時間testpに応じた第1モータジェネレータ第2分
担率cf2を設定する。そして、目標駆動パワーPdvtに第1モータジェネレータ第2分
担率cf2を乗じて第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか他方のモータジェネレータ、即ち第1モータジェネレータ4の目標第1モータジェネレータトルクTmg1tを設定する。また、当該目標第1モータジェネレータトルクTmg1tによる駆動パワーを目標駆動パワーPdvtから減じた駆動パワーに基づいて第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか一方のモータジェネレータ、即ち第2モータジェネレータ5の目標第2モータジェネレータトルクTmg2tを設定する。従って、エンジン停止経過時間testpの大きさに応じて第1モータジェネレータ第2分
担率cf2を設定することにより第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか他方、即ち第1モータジェネレータ4の目標第1モータジェネレータトルクTmg1tを小さくすることが可能となる。そして、それによりモータジェネレータ走行モードで第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5を駆動したときのワンウエイクラッチ1にかかるトルクが過大となるのを抑制防止することができる。
【0062】
また、エンジン停止経過時間testpが予め設定されたエンジン停止経過時間第1所定値testp1以下の領域では第1モータジェネレータ第2分
担率cf2を0とし、当該エンジン停止経過時間第1所定値testp1よりエンジン停止経過時間testpが大きい領域ではエンジン停止経過時間testpが大きいほど第1モータジェネレータ第2分
担率cf2を1に近づくように設定する。これにより、エンジン停止経過時間testpが小さいときの第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の何れか他方、即ち第1モータジェネレータ4の目標第1モータジェネレータトルクTmg1tを小さくすることができる。従って、モータジェネレータ走行モードで第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5を駆動したときのワンウエイクラッチ1にかかるトルクが過大となるのを確実に抑制防止することができる。
【0063】
なお、動力分割合成機構の4つの回転要素(軸)の連結形態は前記に限定されるものではなく、例えば本出願人が先に提案した前記特許第3852562号公報に記載されるように種々の連結形態が挙げられる。本発明のハイブリッド車両の駆動制御装置では、それらの連結形態のハイブリッド車両でも同等の作用・効果が得られる。
また、モータジェネレータ走行モード以外でのエンジンや第1及び第2モータジェネレータの駆動制御形態は前記に限定されるものではなく、種々のハイブリッド制御形態を採用することも可能である。それらのハイブリッド車両であっても、本発明の駆動制御装置では、モータジェネレータ走行モードで同等の作用・効果が得られる。