(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記充電所要時間算出手段は、前記定電流充電時間の基本推定値および前記定電圧充電時間の基本推定値に対して、前記充電器から前記二次電池に供給される充電電流の基準値を前記二次電池に実際に供給される充電電流の実電流値で除した係数と、前記二次電池の最大電池容量の現在値を前記二次電池の最大電池容量の初期値で除した係数と、をかけ合わせることにより、前記補正をおこなうことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の充電時間推定装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる充電時間推定装置および充電時間推定方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる充電時間推定装置10の機能的構成を示すブロック図、
図2は、充電時間推定装置10の配置例を示す説明図である。本実施の形態では、充電時間推定装置10によって、電動車に搭載された二次電池(バッテリ)の充電をおこなう際の所要時間を推定する場合について説明する。
【0012】
図2に示すように、本実施の形態では、充電時間推定装置10は、電動車20の車内に搭載されている。
図2Aは家庭用電源を用いた普通充電をおこなう場合の配置例、
図2Bは急速充電器を用いた急速充電をおこなう場合の配置例をそれぞれ示している。
普通充電をおこなう場合は(
図2A)、家庭用コンセントEから外部電力の供給を受けた充電ガンGを充電口202に挿入して充電をおこなう。充電ガンGから供給された電力は、車載充電器204を介してバッテリ206に蓄電される。充電時間推定装置10は、車載充電器204およびバッテリ206から情報に基づいて充電所要時間の推定をおこない、推定結果をメータ208に表示させる。
【0013】
急速充電をおこなう場合は(
図2B)、高電圧電流を供給する急速充電器Qから電力の供給を受けた充電ガンGを充電口202に挿入して充電をおこなう。充電ガンGから供給された電力は、そのままバッテリ206に蓄電される。充電時間推定装置10は、急速充電器Qおよびバッテリ206から情報に基づいて充電所要時間の推定をおこない、推定結果をメータ208に表示させる。なお、急速充電器Qと充電時間推定装置10との通信は、たとえば充電ガンGに接続されたケーブルを介しておこなえばよい。
【0014】
なお、充電時間推定装置10は、たとえばCPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるEV−ECUにおいて、上記CPUが上記制御プログラムを実行することによって実現することができる。
【0015】
また、本実施の形態では、普通充電および急速充電ともに、バッテリ電圧が低い間は電流値を一定にした定電流充電(CC充電)をおこない、バッテリ電圧が所定値まで上昇すると電圧値を一定にした定電圧充電(CV充電)に切り替える定電流−定電圧充電(CCCV充電)をおこなうものとする。ただし、充電器からの出力が足りず、定電流充電をおこなうことができない場合は、定電流充電に代えて、各時刻における電流値(I)と電圧値(V)の積を一定にした定電力充電(CP充電)をおこなうものとする。
【0016】
図3は、バッテリ206の充電方法について説明するためのグラフである。
図3のグラフにおいて、左縦軸はバッテリ206に供給される電流値I、右縦軸はバッテリ206の電圧値およびSOC(State Of Charge)、横軸は時刻Tを示す。また、
図3には定電流−定電圧充電時における供給電流値CCCV、定電力−定電圧充電時における供給電流値CPCV、バッテリ電圧V、バッテリ206のSOC情報SOCを示している。なお、図示の便宜上、定電流−定電圧充電時における定電流充電時間T
CCと定電力−定電圧充電時における定電力充電時間T
CP、定電流−定電圧充電時における定電圧充電時間T
CVと定電力−定電圧充電時における定電圧充電時間T
CVを、それぞれ同一であるものとして図示している。
【0017】
定電流−定電圧充電CCCVの場合、充電開始後、バッテリ電圧が上限電圧V
maxに達するまでは定電流充電をおこなう。
図3に示すように、定電流充電時はバッテリ206に供給される電流値は一定である。バッテリ電圧が上限電圧V
maxに達すると、定電圧充電に切り替える。定電圧充電時は、バッテリ206に供給される電流値はSOCの上昇に反比例して減少する。そして、バッテリ206に供給される電流値がほぼ0(たとえば、あらかじめ定められた充電終了電流値)になると充電を終了する。すなわち、充電開始後、バッテリ電圧が上限電圧V
maxに達するまでの時間が定電流充電時間T
CC、バッテリ電圧が上限電圧V
maxに達してからバッテリ206に供給される電流値が充電終了電流値になるまでの時間が定電流充電時間T
CVとなる。
【0018】
定電力−定電圧充電CPCVの場合も、充電開始後、バッテリ電圧が上限電圧V
maxに達するまでは定電力充電をおこなう。ただし、
図3に示すように、定電力充電時にはバッテリ206に供給される電流値は一定ではない。バッテリ電圧が上限電圧V
maxに達すると、定電圧充電に切り替えて、バッテリ206に供給される電流値がほぼ0になると充電を終了する。すなわち、充電開始後、バッテリ電圧が上限電圧V
maxに達するまでの時間が定電流充電時間T
CP、バッテリ電圧が上限電圧V
maxに達してからバッテリ206に入る電流値が充電終了電流値になるまでの時間が定電圧充電時間T
CVとなる。
【0019】
図1に示すように、充電時間推定装置10は、電池温度情報取得手段102、電池容量情報取得手段104、電流値情報取得手段106、劣化状態情報取得手段108、電流基準値記憶手段109、判定手段110、基本推定値算出手段112、充電所要時間算出手段114によって構成される。
【0020】
電池温度情報取得手段102は、二次電池(バッテリ206)の電池温度情報t
cellを取得する。電池温度情報取得手段102は、たとえばバッテリ206の状態を制御するBMU(Battery Management Unit:図示なし)から電池温度情報t
cellを取得する。電池温度情報t
cellは、たとえば組電池であるバッテリ206を構成する個々のセルのセル温度の平均値などである。
【0021】
電池容量情報取得手段104は、二次電池(バッテリ206)の残存電池容量情報SOCを取得する。残存電池容量情報とは、たとえばSOC(State Of Charge)情報であり、バッテリ206の全電池容量に対する現在使用できる電池容量の割合を示す。残存電池容量情報SOCは、たとえばバッテリ206の電圧と残存電池容量との関係を示すマップから推定することができる。電池容量情報取得手段104は、たとえば上記BUMから残存電池容量情報SOCを取得する。
【0022】
電流値情報取得手段106は、二次電池(バッテリ206)に供給される充電電流の電流値情報Iを取得する。電流値情報取得手段106は、たとえば車載充電器204または急速充電器Qから電流値情報Iを取得する。車載充電器204または急速充電器Qから供給される電流量はあらかじめ理想値(後述する基本電流値I
int)(充電電流の基準値)として電流基準値記憶手段109にて記憶されているが、電源の状態によって電流量が変動する場合がある。電流値情報取得手段106は、車載充電器204または急速充電器Qから実際に供給される電流量の情報を電流値情報Iとして取得する。
【0023】
劣化状態情報取得手段108は、二次電池(バッテリ206)の最大電池容量の劣化状態情報を取得する。一般的にバッテリ206は、充放電を繰り返すことによって最大電池容量が減少する。劣化状態情報取得手段108は、たとえば現在のバッテリ206の最大電池容量PをBMUから取得して、使用開始直後のバッテリ206の最大電池容量を初期値(後述する初期最大電池容量P
int)と比較することによって、劣化状態情報を取得する。
【0024】
判定手段110は、二次電池(バッテリ206)への定電流充電が可能か否かを判断する。判定手段110は、たとえば電流値情報取得手段106が取得した電流値情報Iを参照して、定電流充電が可能な程度の電流量が継続して得られるか否かを判断することによって、定電流充電が可能か否かを判断する。また、判定手段110は、車載充電器204または急速充電器Qから直接電流値情報を取得して上記判断をおこなってもよい。
【0025】
基本推定値算出手段112は、電池温度情報t
cellおよび残存電池容量情報SOCを用いて、二次電池(バッテリ206)への定電流充電時間T
CCおよび定電圧充電時間T
CVの基本推定値T
int(T
int_cc,T
int_cv)を算出する。基本推定値T
int_cc,T
int_cvに対して後述する充電所要時間算出手段114による補正をおこなった値が定電流充電時間T
CCおよび定電圧充電時間T
CVとなる。
【0026】
ここで、バッテリ206の充電所要時間T
CHGは、定電流‐定電圧充電をおこなう場合、
図4の式(1)で示すことができる。また、定電力‐定電圧充電をおこなう場合、充電所要時間T
CHGは、
図4の式(2)で示すことができる。
【0027】
基本推定値算出手段112は、定電流充電時間T
CCの基本推定値T
int_ccおよび定電圧充電時間T
CVの基本推定値T
int_cvを、それぞれ電池温度情報t
cellおよび残存電池容量情報SOCを用いて算出する。電池温度情報t
cellおよび残存電池容量情報SOCを用いた基本推定値T
int_cc,T
int_cvの算出方法(T
int_cc(t
cell,SOC),T
int_cv(t
cell,SOC))は、従来公知の様々な方法を適用可能である。
【0028】
充電所要時間算出手段114は、電流値情報Iおよび劣化状態情報を用いて、定電流充電時間T
CCの基本推定値T
int_ccおよび定電圧充電時間T
CVの基本推定値T
int_cvに対して補正をおこない、定電流充電時間T
CCおよび定電圧充電時間T
CVの和を充電所要時間T
CHGとして算出する。
【0029】
充電所要時間算出手段114は、定電流充電時間T
CCの基本推定値T
int_ccおよび定電圧充電時間T
CVの基本推定値T
int_cvに対して、二次電池(バッテリ206)に供給される充電電流の理想値(基本電流値I
int)を二次電池に実際に供給される充電電流の電流値で除した係数と、二次電池(バッテリ)の最大電池容量の現在値(現在の最大電池容量P)を二次電池の最大電池容量の初期値(初期最大電池容量P
int)で除した係数と、をかけ合わせることにより、補正をおこなう。すなわち、充電所要時間算出手段114は、
図4の式(3)および式(4)に示す式によって、定電流充電時間T
CCの基本推定値T
int_ccおよび定電圧充電時間T
CVの基本推定値T
int_cvに対して補正をおこない、定電流充電時間T
CCおよび定電圧充電時間T
CVを算出する。そして、
図4の式(1)によって充電所要時間T
CHGを算出する。
【0030】
また、充電所要時間算出手段114は、判定手段110によって二次電池(バッテリ206)への定電流充電が不可能と判断された場合には、定電流充電時間T
CCを用いて定電力充電時間T
CPを算出する。具体的には、充電開始時(充電所要時間の推定時)におけるバッテリ電圧をV
1(開始電圧値)、定電力充電から定電圧充電への移行電圧(
図3における上限電圧V
max)をV
2(移行電圧値)とする。なお、開始電圧値V
1および移行電圧値V
2は、二次電池の電圧値情報を取得する電圧値情報取得手段(図示なし)によって取得する。定電力充電では電流と電圧の積が一定であるため、充電開始時における供給電流をI
1、定電力充電から定電圧充電への移行時における供給電流をI
2とすると、
図4の式(5)が成立する。
【0031】
また、同一条件下で充電をおこなう場合、定電力充電または定電流充電のいずれをおこなっても、定電圧充電に移行するまでに充電される電力量はほぼ等しくなる。
図4の式(6)の左式は、定電圧充電に移行するまでに充電される電力量は、各時刻における電流値を時間積分することで算出できることを示す。上述のように、定電力充電または定電流充電のいずれをおこなっても、定電圧充電CVに移行するまでに充電される電力量はほぼ等しくなることから、
図4の式(6)の左式の関係が成立する。
【0032】
図5は、
図4の式(6)の右式を模式的に示す説明図である。
図5に示すグラフは、縦軸が電流、横軸が時刻を示す。時刻T
CCは定電流充電CCをおこなった場合の定電圧充電CVへの移行時刻、すなわち定電流充電時間である。また、時刻T
CPは定電力充電CPをおこなった場合の定電圧充電CVへの移行時刻、すなわち定電力充電時間である。定電流充電CCではいずれの時刻においても電流値が一定であり、充電開始から時刻T
CCまでに充電される電力量はT
CC×I
1(長方形の面積)として算出できる。一方、定電力充電CPでは電流値は時刻によって変動する。電流値の変動を直線で近似すると、充電開始から時刻T
CPまでに充電される電力量は、充電開始時における供給電流I
1および定電力充電CPから定電圧充電CVへの移行時における供給電流I
2を上底および下底、時刻T
CPを高さとする台形の面積として算出できる。上述のように、同一条件下で充電をおこなう場合、定電力充電CPまたは定電流充電CCのいずれをおこなっても、定電圧充電CVに移行するまでに充電される電力量はほぼ等しくなることから、定電流充電CCの長方形の面積と定電力充電CPの台形の面積は等しくなる。
図4の式(6)の右式は以上のような関係を示している。
【0033】
図4の式(5)および式(6)から、定電力充電時間T
CPは定電流充電時間T
CCを用いて、
図4の式(7)のように算出することができる。
【0034】
図6は、充電時間推定装置10による充電時間推定処理の手順を示すフローチャートである。
図6に示す処理は、たとえば電動車20(
図2参照)に充電ガンGが挿入され、バッテリ206の充電が開始された直後におこなわれる。また、充電中も随時
図6に示す処理をおこなって推定精度を向上させるようにしてもよい。
【0035】
図6のフローチャートにおいて、充電時間推定装置10は、まず、電池温度情報取得手段102、電池容量情報取得手段104、電流値情報取得手段106および劣化状態情報取得手段108によって、バッテリ206の電池温度情報t
cell、残存電池容量情報SOC、充電電流の電流値情報Iおよび劣化状態情報を取得する(ステップS601)。つぎに、充電時間推定装置10は、基本推定値算出手段112によって、電池温度情報t
cellおよび残存電池容量情報SOCを用いて、定電流充電時間T
CCの基本推定値T
int_ccおよび定電圧充電時間T
CVの基本推定値T
int_cvを算出する(ステップS602)。
【0036】
つづいて、充電時間推定装置10は、充電所要時間算出手段114によって、電流値情報Iおよび劣化状態情報を用いて、定電流充電時間T
CCの基本推定値T
int_ccおよび定電圧充電時間T
CVの基本推定値T
int_cvに対して補正をおこなって定電流充電時間T
CCおよび定電圧充電時間T
CVを算出する(ステップS603)。具体的には、
図4の式(3)および式(4)に示すように基本推定値に係数をかけ合わせることによって補正をおこなう。
【0037】
つぎに、充電時間推定装置10は、判定手段110によってバッテリ206への定電流充電が可能か否かを判断する(ステップS604)。定電流充電CCが可能な場合は(ステップS604:Yes)、充電所要時間算出手段114によって定電流充電時間T
CCと定電圧充電時間T
CVとの和を充電所要時間T
CHGとして算出して(ステップS605)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0038】
一方、定電流充電CCが不可能な場合(ステップS604:No)、すなわち定電力充電CPをおこなう場合は、充電所要時間算出手段114によって定電力充電時間T
CPを算出する(ステップS606)。具体的には、
図4の式(5)〜式(7)の演算をおこなうことにより、ステップS603で算出した定電流充電時間T
CCを用いて定電力充電時間T
CPを算出する。そして、定電力充電時間T
CPと定電圧充電時間T
CVとの和を充電所要時間T
CHGとして算出して(ステップS607)、本フローチャートによる処理を終了する。ステップS605またはS507で算出された充電所要時間T
CHGは、メータ208(
図2参照)などに表示される。
【0039】
以上説明したように、実施の形態にかかる充電時間推定装置10は、電池温度情報t
cellおよび残存電池容量情報SOCを用いて算出した定電流充電時間T
CCの基本推定値T
int_ccおよび定電圧充電時間T
CVの基本推定値T
int_cvに対して、電流値情報Iおよび劣化状態情報を用いて補正をおこなうので、バッテリ206に実際に供給される電流量およびバッテリ206の劣化度合いを考慮して精度よく充電所要時間を推定することができる。
【0040】
また、充電時間推定装置10は、バッテリ206への定電流充電が不可能と判断された場合には、補正後の定電流充電時間T
CCを用いて定電力充電時間T
CPを算出し、定電力充電時間T
CPおよび定電圧充電時間T
CVの和を充電所要時間T
CHGとして算出するので、充電器側の状態(電源からの電力供給状況など)を考慮して、より精度よく充電所要時間を推定することができる。
【0041】
また、充電時間推定装置10は、定電流充電時間T
CCを元にして定電力充電時間T
CPを推定することができ、電流および電圧が刻々と変化する定電力充電の所要時間を簡便に推定することができる。また、充電時間推定装置10は、定電流充電時間T
CCおよび定電圧充電時間T
CVの基本推定値に対して、バッテリ206への充電電流の理想値(基本電流値I
int)をバッテリ206に実際に供給される充電電流の電流値で除した係数と、バッテリ206の現在の最大電池容量を最大電池容量の初期値で除した係数と、をかけ合わせることにより補正をおこなうので、バッテリ206の状態を反映して充電所要時間の算出をおこなうことができる。