特許第5743044号(P5743044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5743044応力発光材料、応力発光材料の製造方法、応力発光性塗料組成物、樹脂組成物及び応力発光体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5743044
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】応力発光材料、応力発光材料の製造方法、応力発光性塗料組成物、樹脂組成物及び応力発光体
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20150611BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20150611BHJP
   C09D 5/22 20060101ALI20150611BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   C09K11/64
   C09K11/08 A
   C09D5/22
   C09D7/12
【請求項の数】12
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-510535(P2015-510535)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2014082206
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-253387(P2013-253387)
(32)【優先日】2013年12月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀧 貴大
(72)【発明者】
【氏名】森 健治
(72)【発明者】
【氏名】小林 恵太
(72)【発明者】
【氏名】中尾 日六士
(72)【発明者】
【氏名】東條 知則
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−320425(JP,A)
【文献】 特開平11−140438(JP,A)
【文献】 特開2011−094041(JP,A)
【文献】 特開2009−142771(JP,A)
【文献】 特開2006−269938(JP,A)
【文献】 特開平10−273654(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/097946(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00− 11/89
C09D 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸化合物とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子を混合してスラリーを調製する工程と、前記スラリーを粉砕して粉砕スラリーとする粉砕工程と、前記粉砕スラリーを乾燥する乾燥工程とにより得られる応力発光材料であって、
得られた前記応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aと、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で前記応力発光材料を168時間保持した後のストロンチウム元素の含有率Bを用い、(A−B)/A×100で算出した変化率が10%以下であることを特徴とする応力発光材料。
【請求項2】
前記粉砕工程を、粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応器中で、粉砕媒体に与える相対遠心加速度をG(m/sec)として、0.1≦G≦20の条件で行うことにより得られる請求項1記載の応力発光材料。
【請求項3】
前記粉砕媒体に与える相対遠心加速度G(m/sec)を、0.1≦G≦10の条件で行うことにより得られる請求項2に記載の応力発光材料。
【請求項4】
前記粉砕工程を5分以上180分未満の間行うことにより得られる請求項1〜3のいずれかに記載の応力発光材料。
【請求項5】
前記粉砕工程を、粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応器中で、前記粉砕媒体に与える相対遠心加速度G(m/sec)と粉砕工程の時間(hr)を乗じた値が、0.01以上10未満である条件で行うことにより得られる請求項1〜4のいずれかに記載の応力発光材料。
【請求項6】
前記乾燥工程の後に、120〜300℃の雰囲気下で熱処理される熱処理工程を経て得られる請求項1〜5のいずれかに記載の応力発光材料。
【請求項7】
前記リン酸化合物由来のリンが前記ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子100重量部に対しリン元素として0.2〜5.0重量部含まれる請求項1〜6のいずれかに記載の応力発光材料。
【請求項8】
前記リン酸化合物はリン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びリン酸からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の応力発光材料。
【請求項9】
リン酸化合物とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子を混合してスラリーを調製する工程と、前記スラリーを粉砕して粉砕スラリーとする粉砕工程と、前記粉砕スラリーを乾燥する乾燥工程とを含むことを特徴とする応力発光材料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の応力発光材料を含有することを特徴とする応力発光性塗料組成物。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の応力発光材料を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂組成物から形成されたことを特徴とする応力発光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力発光材料、応力発光材料の製造方法、応力発光性塗料組成物、樹脂組成物及び応力発光体に関する。
【背景技術】
【0002】
物質が外部からの刺激を与えられることによって、室温付近で可視光を発する発光材料が知られている。なかでも外部から印加された力(圧縮、変位、摩擦、衝撃など)の力学的刺激を受けて発光する材料を応力発光材料という。
【0003】
応力発光材料としてはアルミン酸塩を母体とする応力発光材料が報告されている(例えば特許文献1、2)。
このような応力発光材料は、耐水性に乏しいため水に触れると発光強度が低下するという問題が指摘されている。そのため、一般的には脂肪酸で被覆するなどの撥水化処理が用いられるが、発光強度の低下を抑えるには不充分である。
また、特許文献3には、応力発光材料に類似した組成を有する蓄光性蛍光体について、蓄光性蛍光体をリン酸塩と乾式混合後、加熱処理する工程を行うことで耐水性を向上させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3511083号明細書
【特許文献2】特許第5007971号明細書
【特許文献3】特許第3789193号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3には、蓄光性蛍光体の表面をリン酸塩と反応させてその表面を不溶性あるいは難溶性にすることが開示されている。しかしながら、本発明者らがこの方法に基づいてアルミン酸塩の表面をリン酸塩と反応させて耐水性を評価したところ、不溶性あるいは難溶性ではない結果が得られた。また、リン酸塩が反応されて得られた表面層の分布が不均一であった。
上記課題を踏まえ、本発明は、充分な耐水性を有する応力発光材料を提供することを目的とする。また、充分な耐水性を有する応力発光材料の製造方法並びに充分な耐水性を有する応力発光材料を用いた応力発光性塗料組成物、樹脂組成物及び応力発光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アルミン酸塩の表面をリン酸化合物と反応させて得られる表面処理層をより均一で緻密に形成することによって充分な耐水性を有する応力発光材料とすることができることを見出し、本発明に想到した。
【0007】
すなわち、本発明の応力発光材料は、リン酸化合物とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子を混合してスラリーを調製する工程と、上記スラリーを粉砕して粉砕スラリーとする粉砕工程と、上記粉砕スラリーを乾燥する乾燥工程とにより得られる応力発光材料であって、得られた上記応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aと、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で上記応力発光材料を168時間保持した後のストロンチウム元素の含有率Bを用い、(A−B)/A×100で算出した変化率が10%以下であることを特徴とする。
ここでいう粉砕とは一次粒子を砕いて更に小さい粒子にする行為と、二次、三次あるいはそれ以上の凝集粒子を解きほぐす行為のいずれもを含む。
【0008】
本発明の応力発光材料は、リン酸化合物とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム(以下、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウムをSAOとも呼ぶ)粒子を含むスラリーを粉砕する工程を経て得られる。上記スラリーの粉砕を行うことにより、SAO粒子の粉砕とリン酸化合物による表面の改質が同時に行われて、粉砕されたSAO粒子の表面をリン酸化合物と反応させることにより得られた表面処理層が均一かつ緻密に存在してなる応力発光材料が得られる。粉砕されたSAO粒子はその粒子径が充分に小さくなっており、その後の工程で砕ける確率が低いと考えられる。
スラリーを粉砕せずにSAO粒子の表面をリン酸化合物と反応させることで表面処理層を形成した場合はその後の工程でSAO粒子が砕ける、もしくは、凝集粒子が解きほぐれることで耐水性の低いSAO粒子の被覆されていない面が露出することになってしまい発光強度の低下は抑えられない。
一方、本願発明の応力発光材料は、上記スラリーを粉砕することにより粒子径が充分に小さくなり、同時にSAO粒子の表面をリン酸化合物と反応させることで表面処理層が形成されたものであるので、充分な耐水性を有する応力発光材料となる。
【0009】
上記粉砕の後の乾燥工程では、上記粉砕スラリーを、ろ過工程を経て乾燥しても良いし、そのまま乾燥させても良い。特に規定はしないが、乾燥工程で使用される装置として、直接過熱方式箱型乾燥装置(並行、通気、流動層)、直接加熱方式トンネル型乾燥装置、直接加熱方式バンド型乾燥装置(並行、通気)、直接加熱方式噴霧乾燥装置、直接加熱方式シート乾燥装置、直接過熱方式多段円板乾燥装置、直接過熱方式縦型ターボ乾燥装置、直接過熱方式縦型通気乾燥装置、直接過熱方式回転乾燥装置(直接、通気)、直接加熱方式振動乾燥装置、直接加熱方式流動乾燥装置、直接加熱方式気流乾燥装置、直接加熱方式泡沫層乾燥装置、間接加熱方式箱型乾燥装置(真空)、間接加熱方式箱型乾燥装置(凍結真空)、間接加熱方式撹拌乾燥装置(皿形、丸形、みぞ形)、間接加熱方式回転乾燥装置、間接過熱方式ドラム型乾燥装置、赤外線乾燥装置、高周波乾燥装置又は超音波乾燥装置などが挙げられる。
【0010】
本発明の応力発光材料は、上記粉砕工程を、粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応器中で、粉砕媒体に与える相対遠心加速度をG(m/sec)として、0.1≦G≦20の条件で行うことにより得られることが望ましく、
0.1≦G≦10の条件で行うことにより得られることがより、望ましい。
また、上記粉砕工程を5分以上180分未満の間行うことにより得られることが望ましい。
【0011】
本発明の応力発光材料は、上記乾燥工程の後に、120〜300℃の雰囲気下で熱処理される熱処理工程を経て得られることが望ましい。
乾燥工程の後に熱処理を行うことによって、表面処理層がより緻密化され、さらに長期間にわたり充分な耐水性を有する応力発光材料となる。
【0012】
本発明の応力発光材料においては、上記リン酸化合物由来のリンが上記ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子100重量部に対しリン元素として0.2〜5.0重量部含まれることが望ましい。0.2重量部未満であると耐水性が充分に付与されないことがあり、5.0重量部を超えると応力発光強度が低下してしまうことがある。
【0013】
本発明の応力発光材料において、上記リン酸化合物は特に規定されず、無機リン酸塩、有機リン酸塩、リン酸が使用可能である。ここでリン酸塩とは正塩、水素塩のいずれも示す。その中では水溶性塩、リン酸が望ましく、具体的には、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びリン酸からなる群から選択された少なくとも1種であることが望ましい。
【0014】
本発明の応力発光材料の製造方法は、リン酸化合物とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子を混合してスラリーを調製する工程と、上記スラリーを粉砕して粉砕スラリーとする粉砕工程と、上記粉砕スラリーを乾燥する乾燥工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の応力発光性塗料組成物は本発明の応力発光材料を含有することを特徴とし、本発明の樹脂組成物は本発明の応力発光材料を含有することを特徴とする。
また、本発明の応力発光体は、本発明の樹脂組成物から形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の応力発光材料は、スラリーを粉砕することにより粒子径が充分に小さくなり、その後の工程で砕けにくくなったSAO粒子の表面をリン酸化合物と反応させることにより表面処理層が形成されたものであるので、充分な耐水性を有する応力発光材料となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例1〜3及び比較例1の応力発光材料の40℃耐水試験の結果を示すグラフである。
図2図2(a)〜(d)は、実施例1〜3及び比較例1の応力発光材料の電子顕微鏡写真である。
図3図3は、耐水試験後の応力発光能の評価結果を示したグラフである。
図4図4は、耐湿試験後の応力発光能の評価結果を示したグラフである。
図5図5(a)は、実施例3の応力発光材料の電子顕微鏡写真であり、図5(b)は図5(a)のEDXによるマッピング画像である。図5(c)は比較例1の応力発光材料の電子顕微鏡写真であり、図5(d)は図5(c)のEDXによるマッピング画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の応力発光材料について説明する。
本発明の応力発光材料は、リン酸化合物とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子を混合してスラリーを調製する工程と、上記スラリーを粉砕して粉砕スラリーとする粉砕工程と、上記粉砕スラリーを乾燥する乾燥工程とにより得られる応力発光材料であって、得られた上記応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aと、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で上記応力発光材料を168時間保持した後のストロンチウム元素の含有率Bを用い、(A−B)/A×100で算出した変化率が10%以下であることを特徴とする。
【0019】
まず、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子につき、説明する。
アルミン酸ストロンチウムは、一般的にSrAl(0<x、0<y、0<z)で表される化合物である。特に限定されないが、アルミン酸ストロンチウムの具体例としては、SrAl、SrAl、SrAl1425、SrAl1219、SrAl等の種々の化合物が知られている。
【0020】
上記アルミン酸ストロンチウムは、θアルミナ、κアルミナ、δアルミナ、ηアルミナ、χアルミナ、γアルミナ、及びρアルミナから選択される少なくとも1種のアルミナを含有するアルミナ原料又は水酸化アルミニウムと、ストロンチウム源とから合成されたものであるのが好ましい。通常「アルミナ」といえば安価で汎用のαアルミナを指す場合が多いが、θアルミナなどのいわゆる活性アルミナ、又は水酸化アルミニウムを原料として用いれば、αアルミナを用いた場合よりも高い発光強度を達成できるためである。
【0021】
賦活剤としては、ユーロピウム(Eu)イオンを含有する。上記応力発光材料中に含まれるEuイオンの量は特に限定されないが、アルミン酸ストロンチウム1モル当たり、0.0001〜0.01モル、好ましくは0.0005〜0.01モル、より好ましくは0.0005〜0.005モルである。Euイオンの量が少なすぎると十分な発光強度を達成することができず、また多すぎても発光強度は飽和する一方で、別の物性にも影響をおよぼすことがある。
【0022】
ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子は、さらに共賦活剤を含んでもよい。共賦活剤としては、特に限定されないが、Eu以外の希土類元素の化合物又はイオンが挙げられる。上記Eu以外の希土類元素の例としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等から選択される1種以上の元素が挙げられる。これらはイオン半径や価数の異なる元素で置換することにより格子欠陥が形成され、結晶構造がより歪みやすくなる結果、応力発光能が向上するため好ましい。中でも特にNd、Dy、Hoを共賦活剤とした場合には高い発光輝度が得られる点で好ましい。
また、上記希土類元素の化合物としては、上記元素の炭酸塩、酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
【0023】
続いて、リン酸化合物について説明する。
リン酸化合物としては、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びリン酸からなる群から選択された少なくとも1種であることが望ましい。
これらのリン酸化合物は、水と混合して撹拌することにより水溶液又は懸濁液としてから使用されることが望ましい。またメタノール、エタノール、プロパノール、アセトンなどの水に溶解するあるいは混和する有機溶媒を含んでいても良い。
上記水溶液又は懸濁液中のリン酸化合物の濃度は、リン酸化合物が0.01〜20g/水100g、望ましくは、0.5〜5.0g/水100gとなるように調整して使用することが望ましい。リン酸化合物の濃度が0.01g/水100g未満であるとリン酸化合物による被覆が不十分となり発光強度が低下する可能性があり、リン酸化合物の濃度が20g/水100gを超えると、応力発光強度が低下してしまうことがある為、望ましくない。
【0024】
上記リン酸化合物とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子を混合してスラリーを調製する方法は特に限定されるものではなく、リン酸化合物を含む水溶液又は懸濁液中にユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子を混合してもよく、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子中にリン酸化合物を含む水溶液又は懸濁液を滴下等により混合してもよい。
また、リン酸化合物を含む水溶液又は懸濁液とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子の混合比率は、リン酸化合物を含む水溶液又は懸濁液100gに対しユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子が5〜200g、望ましくは20〜100gになるようにすることが望ましい。ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウムの濃度が水溶液又は懸濁液100gに対し5g未満であると、濃度が薄いことで乾燥に時間がかかり、生産効率が低下するため望ましくない。また、水溶液又は懸濁液100gに対し200gを超えると、粘度が高くなり、次工程での攪拌、粉砕が難しくなる為、望ましくない。
【0025】
スラリーには、その後の粉砕に用いるアルミナボール等の粉砕媒体を混合する。
粉砕媒体の種類は、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子の粉砕に適したものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミナボール、ジルコニアボール、窒化珪素ボール、窒化炭素ボール、ガラスビーズ、ナイロン被覆鉄芯ボール等が挙げられ、直径10mm以下のものが主に使用される。なかでもアルミナボールが好ましい。これは、粉砕媒体中の成分が応力発光材料に混入したとしても不純物として作用する影響が小さいためである。
【0026】
スラリーの粉砕は、公知の粉砕装置により行うことができ、その種類は特に限定されるものではないが、粉砕を効率良く行なうためには粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応容器を用いるのが好ましい。ここで、粉砕媒体撹拌型粉砕機とは、粉砕容器内に粉砕媒体を投入し、被粉砕物とともに、粉砕容器を揺動、回転(自転又は公転)させて撹拌するか、粉砕媒体を撹拌部で直接撹拌して、粉砕を行う粉砕機をいう。粉砕媒体撹拌型粉砕機としては、特に限定されないが、遊星ミル、ビーズミル、及び振動ミルからなる群から選択されるいずれか1種であるのが好ましい。なかでも、自転、公転を伴う遊星ミルが特に好ましい。
【0027】
粉砕の条件は特に限定されるものではないが、上記粉砕媒体撹拌型粉砕機の粉砕媒体に与える相対遠心加速度をG(m/sec)として、通常G≦100の条件で行うが、0.1≦G≦20の条件で行うのが好ましく、0.1≦G≦10の条件で行うのが特に好ましい。G<0.1のような条件では、粉砕に時間が掛かり、表面の改質が不十分となり生産効率が低下する、あるいは、耐水性が不十分となることがあるため望ましくない。G>20のような条件では、応力発光強度が低下してしまうことがあるため、望ましくない。
【0028】
上記粉砕は、上記相対遠心加速度Gが0.1≦G≦20の条件であれば粉砕時間に関しても特に制限は無く、粉砕前の応力発光材料の粒子径、粒度分布などを考慮して設定すれば良いが、5分以上180分未満で行うことが望ましい。粉砕時間が5分未満であるとリン酸化合物による被覆が不十分となる可能性があり、粉砕時間が180分以上では生産効率が低下することになるため望ましくない。
【0029】
上記粉砕は上記相対遠心加速度G(m/sec)と粉砕工程の時間(hr)を乗じた値が、0.01以上10未満となる条件で行うことが望ましく、0.1以上5未満となる条件で行うことがより望ましい。
上記相対遠心加速度Gに粉砕工程の時間を乗じた値が、0.01未満であるとリン酸化合物による被覆が不十分となる可能性があり、10以上では生産効率が低下することになるため望ましくない。
粉砕機としてスラリー通過式もしくは循環式の粉砕媒体撹拌型粉砕機を使用する場合は、まず粉砕容器の容積とスラリーの単位時間あたりの流量から滞留時間を算出する。通過式において通過回数が複数回であった場合は滞留時間に通過回数を乗じた値を粉砕時間とする。循環式の場合、スラリー容量を単位時間あたりの流量で除した値を算出し、循環時間をこの値で除した値をスラリーの通過回数とする。その後、通過式と同様にして滞留時間に通過回数を乗じた値を粉砕工程の時間とする。
【0030】
ここで「遠心加速度」とは、ある物体を回転半径r、回転角速度ωで回転した場合に発生するrωで表される物理量を意味する。一般的に、遠心加速度の単位としては地球の重力加速度との比で表した「相対遠心加速度」を用いる。例として、ある物体が回転軸を中心にN回転しているとすると、ω=2πN/60(rad/s)、地球の重力加速度=9.81(m/s)相対遠心加速度Gは以下の数式(1)で表すことができる。
【数1】
さらに自転・公転を伴う遊星ミルの場合には、相対遠心加速度Gは以下の数式(2)によって求めることができる。
【数2】
式中、rsは公転半径(m)を、rpは容器半径(m)を、iwは自転・公転比を、rpmは公転回転数をそれぞれ意味する。
【0031】
リン酸化合物とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子を混合したスラリーを粉砕することにより、SAO粒子が粉砕されると同時に、粉砕されたSAO粒子の表面をリン酸化合物と反応させることにより得られた表面処理層が均一かつ緻密に存在してなる応力発光材料が得られる。
得られた応力発光材料とリン酸化合物を混合してスラリーを調製し、更に粉砕を行うことを複数回繰り返しても良い。
【0032】
上記粉砕工程の後に乾燥工程を行う。ここでいう乾燥とは、スラリーに含まれる水分量が5重量%以下になるまで水分を除くことである。したがって、例えば、スラリー中に含まれる水分を有機溶媒で置換して、水分量を5重量%以下にしてもよい。また、加熱乾燥する場合は、5時間以内、望ましくは1時間以内で乾燥工程を終了することが望ましい。
乾燥後の応力発光材料とリン酸化合物を混合してスラリーを調製し、更に粉砕と乾燥を行うことを複数回繰り返しても良い。
【0033】
上記乾燥工程の前、上記乾燥工程と熱処理工程の間、又は、熱処理工程の後において、スラリー又は粉体に有機物を添加しても良い。有機物としては、ポリアクリル酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、ポリリン酸系分散剤、アミノメチルプロパノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、シランカップリング剤、及び、シリコーンオイル等がある。
これらは単独で使用しても良く、また2種以上を組み合わせてもよい。
これにより、粉砕後の分散性、粉体の流動性、耐水性などが向上することが期待できる。
【0034】
熱処理工程は、乾燥工程の後に、120〜300℃の雰囲気下で熱処理を行う工程であり、乾燥工程の後に熱処理を行うことによって、表面処理層がより緻密化され、さらに長期間にわたり充分な耐水性を有する応力発光材料となる。
熱処理時間は1〜6時間とすることが望ましい。
熱処理雰囲気は特に限定されるものではないが、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気等の雰囲気下で熱処理すればよい。
熱処理後の応力発光材料とリン酸化合物を混合してスラリーを調製し、更に粉砕と乾燥と熱処理を行うことを複数回繰り返しても良い。
【0035】
応力発光材料を構成するストロンチウム元素、アルミニウム元素は両元素ともに水と反応して水和物となりうるが、特にストロンチウム元素が水和物になりやすく、水和物の量が増えるに従い応力発光能が低下する。このとき応力発光材料は反応した水の分、重量が増加するとともに、劣化が進行していると考えられる。従って、上記応力発光材料は水と接触してもストロンチウム元素の含有率が変化しないことが望ましい。
具体的には、本発明の応力発光材料は、応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aと、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で応力発光材料を168時間保持した後のストロンチウム元素の含有率Bを用い、(A−B)/A×100で算出した変化率が、10%以下である。変化率が10%を超えると応力発光能が大きく低下する。
上記変化率は5%以下であることが望ましい。
【0036】
応力発光材料には、さらに、粒子の分散性を高めるための分散剤が添加されていてもよい。分散剤の例としては、特に限定されないが、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤が用いられる。アニオン系界面活性剤としては、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が挙げられ、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
応力発光材料には、さらに、粒子の結晶性を高めるためにフラックス成分が添加されていても良い。上記フラックス成分としては、特に限定されないが、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等の化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
なお、本発明の応力発光材料の原料となるユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子の製造方法は特に限定されるものではない。母体となるアルミン酸ストロンチウムはアルミナとストロンチウム化合物を反応させることにより得ることができる。
ストロンチウム化合物の例としては、特に限定されないが、炭酸ストロンチウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ハロゲン化ストロンチウム(塩化ストロンチウム等)、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、リン酸水素ストロンチウム等が挙げられる。
ユーロピウム化合物としては特に限定されず、例えば炭酸ユーロピウム、酸化ユーロピウム、塩化ユーロピウム、硫酸ユーロピウム、硝酸ユーロピウム、酢酸ユーロピウムなどが挙げられる。
リン酸化合物と混合する前のユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子に、さらに上述した共賦活剤、分散剤、フラックス成分が添加されていてもよい。
【0039】
本発明の応力発光材料の製造方法は、リン酸化合物とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子を混合してスラリーを調製する工程と、上記スラリーを粉砕して粉砕スラリーとする粉砕工程と、上記粉砕スラリーを乾燥する乾燥工程とを含むことを特徴とする。
本発明の応力発光材料の製造方法は、本発明の応力発光材料の説明において説明した各工程を行うことを特徴とする応力発光材料の製造方法であるため、その詳細な説明は省略する。
【0040】
本発明の応力発光材料は、様々な環境下において、物理的かつ化学的に安定であり、そして、機械的な外力を加えて変形させることによって、格子欠陥又は格子欠陥と発光中心のキャリアが励起されて、基底に戻る場合に発光する。このような本発明の応力発光材料を成形して得られる応力発光体は、様々な環境下においても適用することができ、例えば空気中をはじめ、真空中、還元又は酸化雰囲気中においてはもちろん、水、無機溶液、有機溶液などの各種溶液環境下においても、機械的な外力によって発光する。したがって、様々な環境下での応力検知に有効である。
【0041】
このような応力発光材料の活用方法としては、特に限定されないが、以下のようなものが考えられる。
【0042】
応力発光材料を含む発光層を、通常の紙、合成紙、あるいはエポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の高分子素材、天然ゴムあるいは合成ゴム、ガラス、セラミックス、金属、木、人工繊維または天然繊維、コンクリート、あるいはこれらの組み合わせ、およびこれらの加工製品等の外装表面に形成することにより、あるいは応力発光材料を内部に含有することにより、異常を検知したり、衝撃波を当てることで様々な構造物や部材の劣化を診断したりすることができる(応力−ひずみ検出、応力分布測定)。例えばビル建物、高架橋、橋梁、道路、鉄道レール、支柱、塔、パイプライン及びトンネル等の大型構造物、床材、タイル、壁材、ブロック材、舗装材、木材、鉄鋼、コンクリート等の建材、歯車、カム等の動力伝達部材、自転車、自動車、電車、船、飛行機等に使用される外装用部品又は内蔵部品(エンジン部品、タイヤ、ベルト等)、軸受部品、軸受用保持器、および、光センサ付軸受、ネジ、ボルト、ナット、ワッシャ等の締結用部品等である。またその応用として、蓄電池、バルブシート、配水管、スプリンクラーヘッド、電解液またはポリマー電解質を注入した非水電解液二次電池の漏液を検知すること等が期待される。また応力発光材料を含有する接着剤の接着剤層内応力分布の可視化をすることができ、接着剤の亀裂を把握することもできる。
【0043】
応力発光材料を発光素子としたものは、感圧デバイス、タッチパッド、タッチセンサー、フォトダイオードあるいはフォトトランジスタ、圧電アクチュエータあるいは静電アクチュエータ、発光性高分子アクチュエータ、液量検出デバイス、衝撃力検知デバイス、光導波路、光導波路装置、機械光学装置、検出装置、情報処理装置、スイッチ、操作ボタン、入力装置、キー入力装置等の電子機器および機器に利用することができ、装置およびシステムの非接触制御、自動化プロセス、遠隔操作を可能にする。例えば、半導体部品の接続端子の高さ測定装置、キャビテーション発生量の測定装置、音圧強度分布の測定装置、医療検査用の超音波による音圧強度分布およびエネルギー密度分布測定装置、生体骨または模擬骨に装着するインプラント等の部材に作用する応力・歪みの分布の測定装置、伝送ケーブル、伝送装置及びレーザ加工装置、ステアリングシャフトの捩じれ量を検出する装置、撮影部位の位置を特定する放射線撮影装置、流速検知器金型プレス機の平行度チェック装置、赤外光の熱エネルギーに対応する応力を発生させ、撮像することが可能な固体撮像装置、摩擦力、せん断力、衝撃力、圧力等の機械的な外力を光信号に変換して伝達する発光ヘッド、その発光ヘッドを利用して機械装置を遠隔から操作する遠隔スイッチシステム、及び、その発光ヘッドを利用して偶力を検出する検出システム、電気、電子、機械の各種機器の本体部に着脱自在に装着される着脱体、例えばインクジェットプリンタのインクカートリッジや用紙トレイの装着状態及び未装着状態を検出することができる着脱体の検出装置、及び着脱体;凹凸部に残留した紫外線硬化樹脂を短時間で検査可能なインプリント装置、配線が不要な操作装置、生体内や暗所に導入することができる小型で無線型の光源(応力発光粒子)と、それを備えた検査装置、並びに検査方法や応力履歴記録システム等が挙げられる。また、ガスケット、パッキングのシール性の測定、タイヤの接地面形状や接地圧分布の測定、歯科咬合力の測定、タイヤの接地部測定具、キャビテーション発生量の測定方法等にも利用できる。
【0044】
触覚センサ素子としての応用も可能である。例えば、人間協調型ロボットや義手・義指・義肢、診察用の触診器、各種工業の硬さ柔らかさ検査器等が挙げられる。その他にも、放射線との作用により生じた発光エネルギーを測定することで、放射線の被曝量の計測及び被曝強度分布の計測をすることも期待できる。
【0045】
上記測定用装置以外にも、照明や安全のための表示としての利用が考えられる。例えば、デバイス振動ランプや風力ランプ等の照明器具;緊急、異常報知、非常用具、危険表示、非常灯、非常用標識、救命具用の標識、看板、表示装置;安全柵、工場建築物廻りに張るテンションロープ、動物忌避柵;階段のステップ、手すり、及び通路等に半埋め込み状態で設置した目地用線条体;健康器具、歩行補助器具(歩行補助用ステッキ、発光報知アンテナ等);イヤリング、ネックレス等の装身具;旗を支持する支柱、鉄道等の遮断機の遮断棒、自転車、自動車、電車、船、飛行機等の外装用部品又は内蔵部品、釣具(擬似餌、釣竿、集魚用網等;発光性繊維構造体や発光性漁具、釣糸や漁網等)、浮標(浮き、ブイ);人間、犬、猫等のペット、牛、豚、羊、鶏等の家畜等の位置表示;ファン(風力発電、扇風機等の羽等)、衣料品(靴、スポーツウエア、人工発光布地、人工発光糸、人工発光繊維等);包装(箱、ホルダー、器、封筒、カートン、上包み包装、外部被膜)、医療品(呼吸援助器具、試験研究用器材)ロボット(人工発光毛髪構造体、人工発光皮膚、人工発光ボディー)等である。
【0046】
塗料組成物、インク組成物、接合剤、表面被覆剤に応力発光材料を含有させたものの活用例としては、金融機関、公共機関、クレジットカード会社、流通業界等で使用される、貼り合わせ用の接着剤に応力発光材料を含有させた圧着はがきシート等の郵送物;椅子、ベッド等の家具;床材、タイル、壁材、ブロック材、舗装材、木材・鉄鋼・コンクリート等の建材;車両に搭載されたカーナビゲーション装置;オーディオ装置及びエアコンディショナー等を操作するための操作装置;家電製品や携帯機器、電子計算機等の入力装置;デジタルカメラ、CCDカメラ、フィルム、写真、ビデオ等の画像記憶手段等が挙げられる。
【0047】
発光させることで新たな意匠を発生させることができるので、玩具やイベントグッズ等のアミューズメント商品や生活用品への展開も考えられる。例えば、動的玩具、凧、鯉のぼり等の吹流し、ブランコ、ジェットコースター、回転木馬、弓矢等;風力によって音と光を同時に発生する無電源型発光装置(風鈴等);発光ボール(ゴルフボール、野球のボール、卓球用ボール、ビリヤードのボール等)、発光機構の風車;風船;シート状構造物が紙である、巻き取り笛、折り紙、紙風船、ハリセン、グリーティングカード、絵本;スポーツ用品(棒高飛び用ロッド、フェンシング、弓矢等の長尺体等);ゴルフクラブの打点確認用感圧シール、テニスコート用ラインテープ、動的装飾体、動的彫刻、動的モニュメント;動的展示装置;衝撃発光装飾装置;スピーカー等音響装置、楽器(バイオリンやギター等の弦楽器、木琴やドラム等の打楽器、トランペットやフルート等の管楽器、ビードロ等のダイアフラム)、音叉等;イベントグッズ等のアミューズメント商品;水族館の観賞用水槽等の水草、容器;発光腕時計、発光砂時計又は砂時計型発光装置;発光型擬似ローソク装置;発光可能な人工植物;人工眼;付着性ポリマーを含有する化粧品組成物、目視状態で偽造判別することが可能な印刷物および有価証券、応力発光粒子を含有する印刷インキ、手形、小切手、株券、社債券、各種証券、商品券、図書券、交通機関の乗車券、有料施設やイベントの入場券、宝くじ、公営競技の投票券の当たり券等、紙幣、身分証明書、チケット、通行券等、パスポート、機密文書が書かれた印刷物、または封緘シール等が挙げられる。
【0048】
応力に伴う発光を利用して、その表面に付着した光触媒を活性化した、応力発光体−光触媒複合体は、抗菌、殺菌、非ヒト動物への治療、車両の吊り手、取手等の抗菌性物品の汚れ浄化、暗所にある配管等内部壁面の流動物の流れエネルギーによる浄化に利用することが可能である。応力発光物質が発光することによって高分子樹脂中の光架橋剤が活性化し、架橋を促進させることも可能である。
【0049】
本発明の応力発光材料を樹脂に配合することで、本発明の樹脂組成物とすることができる。
また、本発明の樹脂組成物に更に他の無機材料又は有機材料を加えて複合材料を形成することによって、本発明の応力発光体とすることもできる。
例えば、樹脂がエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの場合、樹脂100質量部に対して上記応力発光材料を1〜200部、ポリエチレン樹脂や軟質塩化ビニル樹脂などの場合、樹脂100質量部に対して上記応力発光材料を30〜300質量部を配合する。配合したものをコニカルブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリミキサー、三本ロールなどの混合機を用いることで樹脂組成物を作成することができる。
またその樹脂組成物から応力発光体を形成する場合は、例えば、シート状の応力発光体を得る場合、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して上記応力発光材料を50〜200質量部、カルシウム−亜鉛系安定剤3〜5質量部、可塑剤であるジオクチルフタレートを30〜100質量部配合し、二本ロールにて150〜200℃で混練することで、可撓性のあるシート状の応力発光体を得ることができる。
フィルム状の応力発光体を得る場合、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して上記応力発光材料を20〜50質量部配合し、二軸押し出し機やインフレーション加工機にて250〜300℃で混練・成型することで、フィルム状の応力発光体を得ることができる。
その他の形状の応力発光体を得る場合、例えば、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して応力発光材料を5〜100質量部配合し、二軸押し出し機にて170〜200℃で混練・成型することでひも状、板状、棒状、ペレット状の応力発光体を得ることができる。また、ペレット状の応力発光体を射出成形機を用い170〜200℃で加工成型することで、立体的な形状の応力発光体を得ることができる。
この応力発光体に機械的な外力を加えると、機械的な変形によって発光する。
【0050】
上記樹脂又は他の有機材料としては熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のような樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等のスチレン重合体または共重合体、6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、アルケニル芳香族樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ビスフェノールA系ポリカーボネート等のポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアクリロニトリル等のポリアクリル酸、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマーエチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィン(ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等)との共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体(酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール等)との共重合体等が挙げられる。
【0051】
熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なお、熱可塑性樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体等のいずれの形態の共重合体であってもよい。
【0052】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド、ポリアミノビスマレイミド、カゼイン樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。この他紫外線や放射線で硬化する樹脂も挙げられる。
【0053】
さらに、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム等のゴム系材料が挙げられる。
【0054】
これ以外にも顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、殺菌剤、抗菌剤、硬化用触媒、光重合開始剤等を本発明の応力発光材料とともに混合し、棒状、板状、フィルム状、繊維状、膜状、針状、球状、箔状、粒子状、砂状、鱗片状、シート状、液状、ゲル状、ゾル状、懸濁液、集合体、カプセル型、等の任意の形状に成形することができる。
【0055】
顔料としては、無機顔料や有機顔料が挙げられる。
無機顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等が挙げられる。その他にも金属粉末顔料として、アルミニウム粉末、銅粉末、ステンレス粉末、金属コロイド、干渉作用があるものとして透明パールマイカ、着色マイカ、干渉マイカ、干渉アルミナ、干渉シリカ(干渉ガラス)等が挙げられる。
【0056】
有機顔料としては、アゾ系顔料(モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー等)、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンレッド、ジケトピロロピロールレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルトバイオレット、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニン系顔料(フタロシアニンブルー等)、スレンブルー等の青色顔料;フタロシアニングリーン等の緑色顔料、アゾ系分散染料、アントラキノン系分散染料等の有機染料等を挙げることができる。
【0057】
染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、硫化染料、トリフェニルメタン染料、ピラゾロン染料、スチルベン染料、ジフェニルメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料、キノンイミン染料(アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料)、チアゾール染料、メチン染料、ニトロ染料、及びニトロソ染料等が挙げられる。
【0058】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、及びチオエーテル系化合物等が挙げられる。
【0059】
ヒンダードフェノール系化合物としては、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0060】
ホスファイト系化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。他のホスファイト系化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものが挙げられる。
【0061】
ホスホナイト系化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、及びビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。
【0062】
チオエーテル系化合物として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、及びペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
【0063】
紫外線吸収剤を含む光安定剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物およびヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0064】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチル−アクリロキシイソプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0065】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、及び2−(4’−オクトキシ−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0066】
芳香族ベンゾエート系化合物としては、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のアルキルフェニルサリシレート類等が挙げられる。
【0067】
蓚酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、及び2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。
【0068】
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0069】
ヒンダードアミン系化合物としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギザレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジル)テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジメタノールとの縮合物等が挙げられる。
【0070】
帯電防止剤としては、カーボンブラック、グラファイト等炭素粉体、スズ・アンチモン複合酸化物、アンチモン・インジウム・スズ複合酸化物、インジウム・スズ複合酸化物、Sn、F、Cl等をドープした導電性酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等金属酸化物、銅、ニッケル、銀、金、アルミニウム等の各種金属粒子(粉体)または金属繊維等の無機系耐電防止剤、並びに、(β−ラウラミドプロピオニル)トリメチルアンモニウムスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の第4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系化合物、アルキルホスフェート系化合物等有機系の帯電防止剤等が挙げられる。
【0071】
難燃剤としては臭素系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤、トリアジン系難燃剤、及びリン酸とピペラジンとの塩の他無機系難燃剤等が挙げられる。
【0072】
臭素系難燃剤としては、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリアクリレート、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂の分子鎖末端のグリシジル基の一部又は全部を封止した変性物、臭素化ビスフェノールAを原料として合成したポリカーボネートオリゴマー、臭素化ジフタルイミド化合物、臭素化ビフェニルエーテル、及び1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタン等の臭素化ジフェニルアルカン等の化合物が挙げられる。これらの中でもポリトリブロモスチレン等の臭素化ポリスチレン、ポリ(ジブロモフェニレンオキシド)、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタン、エチレン−ビス−(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA、臭素化ポリカーボネートオリゴマー、ポリトリブロモスチレン等の臭素化ポリスチレンや1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタン等が挙げられる。
【0073】
リン系難燃剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル等リン酸エステル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(2,6−ジメチルフェニルホスフェート)、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート並びにこれらの縮合物等の芳香族縮合リン酸エステル等縮合リン酸エステル等が挙げられる。
【0074】
塩素系難燃剤としては、ペンタクロロペンタシクロデカン、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロトルエン、テトラクロロビスフェノールA、及びポリクロロスチレン等が挙げられる。
【0075】
トリアジン系難燃剤としては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ノニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−エトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−プロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−1,3,5−トリアジン、及び2−アミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0076】
リン酸とピペラジンとの塩としては、オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、及びポリリン酸ピペラジン等が挙げられる。
【0077】
無機系難燃剤としては三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物、ホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び赤リン等が挙げられる。
【0078】
殺菌剤としては、オキシン銅等の銅殺菌剤、ジネブ、マンネブ等の有機硫黄殺菌剤、キャプタン、クロロタロニル等の有機塩素系殺菌剤、チオファネートメチル、ベノミル、カルベンダゾール、チアベンダゾール等のベンゾイミダゾール系殺菌剤、イプロジオン、ビンクロゾリン、プロシミドン等のジカルボキシイミド系殺菌剤、フラメトピル等の酸アミド系殺菌剤、フルジオキソニル等のフェニルピロール系殺菌剤、ジメトモルフ等のモルフォリン系殺菌剤、アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、オリブライト等のメトキシアクリレート系殺菌剤、メパニピリム、シプロジニル、ピリメタニル等のアニリノピリミジン系殺菌剤、トリアジメホン、トリフルミゾール等のエルゴステロール生合成阻害剤、クロルピクリン、PCNB等の土壌殺菌剤、その他フルアジナム、o−フェニルフェノール(OPP)、ジフェニル、クロロジフェニル、クレゾール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、けい皮アルデヒド、酢酸フェニル、イソチアン酸アリル、α−メチルアセトフェノン、チモール、パークロロシクロペンタジエン、ブロム酢酸、2,2−ジブロモ−3−ニトリルプロピオンアミド、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸メチル、5−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オン、グルタルアルデヒド、及びヒノキチオール等が挙げられる。
【0079】
抗菌剤としては、銀、亜鉛、銅の一種若しくは2種以上の抗菌性金属を無機化合物に担持させた無機系粉体が挙げられる。担持体としてはゼオライト、アパタイト、リン酸ジルコニウム、酸化チタン、シリカゲル、アルミニウム硫酸塩水酸化物、燐酸カルシウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。またリン酸系、硼酸系、珪酸系の各系ガラスの一種若しくは2種以上をガラス形成成分としたガラスに、銀、亜鉛、銅の一種若しくは2種以上の抗菌性金属を含有せしめた抗菌性ガラス粉体も挙げられる。
【0080】
滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、パラフィン、低分子量のポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸部分鹸化エステル、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、及び変性シリコーン等を挙げることができる。
【0081】
脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、モンタン酸およびこれらの混合物等炭素数6〜40の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸金属塩としてはラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ベヘニン酸ナトリウム、ベヘニン酸カリウム、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸亜鉛、ベヘニン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、及びモンタン酸カルシウム等の炭素数6〜40の脂肪酸のアルカリ(土類)金属塩が挙げられる。
【0082】
オキシ脂肪酸としては1,2−オキシステリン酸等が挙げられる。
【0083】
パラフィンとしては、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、及びペトロラクタム等の炭素数18以上のものが挙げられる。
【0084】
低分子量のポリオレフィンとしてはポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化タイプポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、及びポリプロピレンワックス等の分子量5000以下のものが挙げられる。脂肪酸アミドとしては具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド等炭素数6以上のものが挙げられる。
【0085】
アルキレンビス脂肪酸アミドとしてはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミド等の炭素数6以上のものが挙げられる。
【0086】
脂肪族ケトンとしては高級脂肪族ケトン等の炭素数6以上のものが挙げられる。
【0087】
脂肪酸部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステル等が挙げられる。
【0088】
脂肪酸低級アルコールエステルとしてはステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキドン酸エステル、モンタン酸エステル、及びイソステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0089】
脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセロールトリステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールモノステアレート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスルトールトリステアレート、ペンタエリスルトールジミリステート、ペンタエリスルトールモノステアレート、ペンタエリスルトールアジペートステアレート、及びソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。
【0090】
脂肪酸ポリグリコールエステルとしてはポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリトリメチレングリコール脂肪酸エステル、及びポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0091】
変性シリコーンとしてはポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、及びフッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0092】
硬化用触媒としては、(t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等)およびアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソバレロニトリル等)等の有機過酸化物、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、2−エチルヘキサン酸鉛オクチル酸鉛およびテトラn−ブチルチタネート等の金属と有機および無機酸との塩等有機金属誘導体、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等スルホン酸化合物、スルホン酸化合物のアミン中和物、トリエチルアミン等の有機アミン、リン酸、ピロリン酸等や、リン酸モノ又はジエステル等が挙げられる。リン酸モノエステルとしては、例えば、リン酸モノオクチル、リン酸モノプロピル、及びリン酸モノラウリル等が挙げられる。リン酸ジエステルとしては、例えば、リン酸ジオクチル、リン酸ジプロピル、及びリン酸ジラウリル等が挙げられる。更には、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等のリン酸化合物、ジアザビシクロウンデセン系触媒、ルイス酸、及び酸無水物等が挙げられる。
【0093】
光重合開始剤としては、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン化合物(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、及びベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0094】
さらに、本発明の応力発光材料を塗料に配合することで本発明の応力発光性塗料組成物とすることもできる。
本発明の応力発光性塗料組成物は、他の材料の表面を塗布することができ、該発光材料が塗布された材料に機械的な外力を加えると、材料表面の発光材料層が変形によって発光する。また本発明の応力発光材料を含有する本発明の応力発光性塗料組成物は発光輝度が高いため、視認性の高い塗装を行うことができる。
【0095】
塗料組成物として、被膜形成性樹脂を含有する塗料組成物が使用される。塗料組成物には、必要に応じて、溶剤、分散剤、充填剤、増粘剤、レベリング剤、硬化剤、架橋剤、顔料、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤を含む光安定剤、難燃剤、硬化用触媒、殺菌剤、及び抗菌剤等の塗料用添加剤を含有することができる。
【0096】
塗料組成物に用いる材料としては熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等各種のものを用いることができ、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂等や、オルガノシリケート、オルガノチタネート等が挙げられる。インキ膜形成材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、及び塩素化プロピレン樹脂等が挙げられる。
【0097】
溶剤としては、脂肪族炭化水素類や、芳香族炭化水素(C7〜10、例えばトルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステルまたはエーテルエステル(C4〜10、例えばメトキシブチルアセテート)、エーテル(C4〜10、例えば、テトラヒドロフラン、EGのモノエチルエーテル、EGのモノブチルエーテル、PGのモノメチルエーテルおよびDEGのモノエチルエーテル)、ケトン(C3〜10、例えば、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン)、アルコール(C1〜10、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール)、アミド(C3〜6、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(C2〜4、例えばジメチルスルホキシド)、およびこれらの2種以上の混合溶剤や、水又は前述の混合溶媒等が挙げられる。
【0098】
分散剤としては、高分子分散剤であれば、ナフタレンスルホン酸塩[アルカリ金属(NaおよびK等)塩、アンモニウム塩等]のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩(上記に同じ)、ポリアクリル酸塩(上記に同じ)、ポリ(2〜4)カルボン酸(マレイン酸/グリセリン/モノアリルエーテル共重合体等)塩(上記に同じ)、カルボキシメチルセルロース(Mn2,000〜10,000)およびポリビニルアルコール(Mn2,000〜100,000)等が挙げられる。
低分子分散剤としては、下記のものが挙げられる。
(1)ポリオキシアルキレン型
脂肪族アルコール(C4〜30)、[アルキル(C1〜30)]フェノール、脂肪族(C4〜30)アミンおよび脂肪族(C4〜30)アミドのAO(C2〜4)1〜30モル付加物。
脂肪族アルコールとしては、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、オクタノール、ドデカノール等;(アルキル)フェノールとしては、フェノール、メチルフェノールおよびノニルフェノール等;脂肪族アミンとしては、ラウリルアミンおよびメチルステアリルアミン等;および脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド等。
(2)多価アルコール型
C4〜30の脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸等)と多価(2〜6またはそれ以上)アルコール(例えばGR、PE、ソルビトールおよびソルビタン)のモノエステル化合物。
(3)カルボン酸塩型
C4〜30の脂肪酸(上記に同じ)のアルカリ金属(上記に同じ)塩。
(4)硫酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(上記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属(上記に同じ)塩等。
(5)スルホン酸塩型
[アルキル(C1〜30)]フェノール(上記に同じ)のスルホン酸アルカリ金属(上記に同じ)塩。
(6)リン酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(上記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩[アルカリ金属(上記に同じ)塩、4級アンモニウム塩等]。
(7)1〜3級アミン塩型
C4〜30の脂肪族アミン[1級(ラウリルアミン等)、2級(ジブチルアミン等)および3級アミン(ジメチルステアリルアミン等)]塩酸塩、トリエタノールアミンとC4〜30の脂肪酸(上記に同じ)のモノエステルの無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩。
(8)4級アンモニウム塩型
C4〜30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸(上記に同じ)塩等。
【0099】
無機分散剤としては、ポリリン酸のアルカリ金属(上記に同じ)塩およびリン酸系分散剤(リン酸、モノアルキルリン酸エステル、及びジアルキルリン酸エステル等)等が挙げられる。
【0100】
充填剤としてはシリカ、アルミナ、ジルコニア、マイカを始めとする酸化物系無機物、炭化珪素、窒化珪素等の非酸化物系無機物の微粉、あるいはアクリル樹脂、フッ素樹脂、等の有機化合物、が挙げられる。また用途によってはアルミニウム、亜鉛、銅等の金属粉末の添加も可能である。さらに充填剤の具体例としては、シリカゾル、ジルコニアゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等のゾル;ケイ砂、石英、ノバキュライト、ケイ藻土等のシリカ系物質;合成無定形シリカ;カオリナイト、雲母、滑石、ウオラストナイト、アスベスト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩;ガラス粉末、ガラス球、中空ガラス球、ガラスフレーク、泡ガラス球等のガラス体;窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化チタン、窒化チタン、炭化チタン等の非酸化物系無機物;炭酸カルシウム;酸化亜鉛、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、酸化ベリリウム等の金属酸化物:硫酸バリウム、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、弗化炭素その他無機物;アルミニウム、ブロンズ、鉛、ステンレススチール、亜鉛等の金属粉末;及びカーボンブラック、コークス、黒鉛、熱分解炭素、中空カーボン球等のカーボン体等が挙げられる。
【0101】
増粘剤としてはモンモリロナイト系粘土鉱物、これらの鉱物を含むベントナイト、コロイド状アルミナ等の無機充填剤系増粘剤、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヘキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系増粘剤、ウレタン樹脂系増粘剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等ポリエーテル樹脂系増粘剤、ウレタン変性ポリエーテル系等の会合型増粘剤増粘剤、ポリエーテルポリオール系ウレタン樹脂系等の特殊高分子非イオン型増粘剤、ノニオン系等の界面活性剤系増粘剤、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤、及びアルギン酸ソーダ等アクリル酸系増粘剤等が挙げられる。
【0102】
レベリング剤としてはPEG型非イオン界面活性剤(ノニルフェノールEO1〜40モル付加物、ステアリン酸EO1〜40モル付加物等)、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、及び変性シリコーンオイル[ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]等が挙げられる。
【0103】
硬化剤としては、ポリオール類の硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ポリイソシアネート化合物のヌレート体、ビュレット体、ポリイソシアネート化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパンのようなポリオールとの付加体、ブロック化したポリイソシアネート硬化剤等の単体または二種以上の混合物や、これらのポリオール付加物や、これらの共重合体やブロック重合体等のような常温での硬化が可能なイソシアネート類が挙げられる。エポキシ樹脂類の硬化剤としては、酸無水物、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、アミン付加物、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びイソシアネート類等が挙げられる。
【0104】
架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂の他、ヘキサメトキシメチル化メラミン、N,N,N’,N’−テトラヒドロキシメチルサクシナミド、テトラメトキシメチル化尿素、2,4,6−テトラヒドロキシメチル化フェノール等のヒドロキシメチル基、及びメトキシメチル基、又はエトキシメチル基等を有する化合物が挙げられる。
【0105】
顔料としては前述したもの以外に、五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム、バナジン酸マグネシウム及びメタバナジン酸アンモニウム等のバナジウム化合物;リン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム・アンモニウム共析物、リン酸一水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、リン酸マグネシウム・コバルト共析物、リン酸マグネシウム・ニッケル共析物、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、トリポリリン酸二水素アルミニウム、トリポリリン酸マグネシウム、トリポリリン酸二水素アルミニウムの酸化マグネシウム処理物、トリポリリン酸二水素亜鉛の酸化マグネシウム処理物等のリン酸金属塩のマグネシウム含有化合物による処理物、さらに、シリカ変性リン酸マグネシウム等のようなリン酸マグネシウムのシリカ変性化合物等のリン酸塩系防錆顔料;リン酸亜鉛等の亜鉛成分を含有した防錆顔料、マグネシウム処理トリポリリン酸二水素アルミニウム、カルシウム処理リン酸カルシウム等の亜鉛フリー防錆顔料;オルト珪酸カルシウム成分又はメタ珪酸カルシウム成分を含む複合珪酸カルシウム等のケイ酸カルシウム;カルシウムイオン交換シリカ、マグネシウムイオン交換シリカ等の金属イオン交換シリカ;及び六価クロムや鉛等を含む防錆顔料等が挙げられる。
【0106】
消泡剤としては、例えばシリコーン油、ジメチルポリシロキサン、有機変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン系消泡剤、ミネラルオイル系消泡剤、非シリコーン・ポリマー系消泡剤、有機変性フッ素化合物、及びポリオキシアルキレン化合物から選択される少なくとも1種を含む消泡剤、並びに炭素数18以上の脂肪族アルコールよりなる消泡剤等が挙げられる。
【0107】
酸化防止剤、紫外線吸収剤を含む光安定剤、難燃剤、硬化用触媒、殺菌剤、及び抗菌剤等については前述のものが挙げられる。
【実施例】
【0108】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げる。ただし本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム(1)の製造)
炭酸ストロンチウム(堺化学工業社製SW−K、23.466g)、酸化ユーロピウム(信越化学社製、0.311g)、酸化アルミニウム(岩谷化学製、RA−40、17.933g)、を秤量し、水(200mL)中に入れてスラリー化後、3mm径アルミナボール(ニッカトー製、SSA−999W、190g)を粉砕メディアとして使用し、遊星ボールミルを用いて分散・粉砕・混合することによりスラリー状の応力発光材料用組成物を得た。得られた混合スラリーは130℃にて蒸発乾燥し、得られた固形物を乳鉢で解砕して粉末状の応力発光材料組成物を得た。次いで、その応力発光材料組成物をアルミナ製坩堝に20g充填して、還元雰囲気(2%水素含有窒素)中で200℃/時で1200℃まで昇温し、そのまま4時間保持後、200℃/時で室温まで降温した。
こうして得られた焼成物を、遊星ボールミルを用いてアルコール溶媒中で粉砕して整粒し、濾過・乾燥して目的のユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム(1)を粉末として得た。
【0109】
実施例1
リン酸水素二アンモニウム(和光純薬工業社製)0.45gを容器に秤量し、更に純水30mLを加えて、攪拌することによりリン酸化合物を含むスラリーを得た。
上記ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム(1)粒子[SAO粒子(1)]15gを、100mLのポリ容器に投入し、上記スラリーを加えて混合液を調製した後、1.5mm径アルミナボールを80gを加え、スラリーを得た。
遊星ボールミル(フリッチュジャパン社製)にて、回転数150rpm条件のもと、上記スラリーを25分間かけて粉砕し、スラリーをステンレス製ザルに通して、アルミナボールを除去し、粉砕スラリーを得た。この時の相対遠心加速度G(m/sec)は、3.08であった。
相対遠心加速度Gと粉砕工程の時間(hr)を乗じた値は1.28であった。
上記の粉砕スラリーを磁性皿に移し、110℃の電気乾燥機にて4時間乾燥させ、乾燥粉を乳鉢にて解砕することにより、SAO粒子(1)の表面をリン酸化合物と反応させることで表面処理層が形成された応力発光材料を得た。
得られた応力発光材料をビードサンプラー(製品名:Bead&Fuse Sampler、東京科学製)を用いてビード試料を作成し、試料をICP発光分光分析装置(製品名:SPS3100、セイコーインスツル株式会社製)を用いて、応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aを測定したところ32.6重量%であった。
【0110】
実施例2
実施例1において、アルミナボールを除去した後の粉砕スラリーを4時間攪拌させた後、アトマイザー式スプレードライヤー(直接加熱方式噴霧乾燥装置)にて乾燥させる乾燥工程を行い、SAO粒子(1)の表面をリン酸化合物と反応させることで表面処理層が形成された応力発光材料を得た。
実施例1と同様の方法で応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aを測定したところ32.1重量%であった。
【0111】
実施例3
実施例2において、乾燥工程の後に、200℃の電気乾燥機にて2時間加熱させる熱処理工程を行って、SAO粒子(1)の表面をリン酸化合物と反応させることで表面処理層が形成された応力発光材料を得た。
実施例1と同様の方法で応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aを測定したところ31.8重量%であった。
また、ストロンチウム元素の含有率測定と同様の方法で応力発光材料中のリン元素の含有率を測定したところ0.72重量%であった。
この応力発光材料において、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子100重量部に対するリン元素の含有量は0.70重量部である。
【0112】
実施例4
実施例1において、リン酸水素二アンモニウム(和光純薬工業社製)0.75gを容器に秤量し、更に純水30mLを加えて、攪拌することによりリン酸化合物を含むスラリーを得た。
上記スラリーを用い、実施例3と同様に、粉砕工程、乾燥工程、熱処理工程を行い、SAO粒子(1)の表面をリン酸化合物と反応させることで表面処理層が形成された応力発光材料を得た。実施例1と同様の方法でリン元素、ストロンチウム元素の含有率を測定したところ応力発光材料中のリン元素の含有率は1.31重量%、ストロンチウム元素の含有率Aは32.6重量%であった。
この応力発光材料において、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子100重量部に対するリン元素の含有量は1.17重量部である。
【0113】
(ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム(2)の製造)
炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、162.71kg)、酸化ユーロピウム(信越化学製、0.496kg)、酸化アルミニウム(岩谷化学製、RA−40、114.96kg)、を秤量し、純水中へ投入後に撹拌機を使用してスラリー化した。その後、3mm径アルミナボール(ニッカトー製、SSA−999W、200kg)を粉砕メディアとして使用し、横型サンドミルを用いて分散・粉砕・混合することによりスラリー状の応力発光材料用組成物を得た。得られた混合スラリーはアトマイザー式スプレードライヤー(直接加熱方式噴霧乾燥装置)を使用して乾燥し、粉末状の応力発光材料組成物を得た。次いで、その応力発光材料組成物をアルミナ製焼成容器に充填して、還元雰囲気(2%水素含有窒素)中で100℃/時で1200℃まで昇温し、そのまま4時間保持後、100℃/時で室温まで降温した。
こうして得られた焼成物を、乾式粗砕機を使用して解砕し、目的のユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム(2)を粉末として得た。
【0114】
実施例5
リン酸水素二アンモニウム(和光純薬工業社製)16.6kgを秤量し、純水に投入後、攪拌することによりリン酸アンモニウム水溶液を作成した。
上記ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム(2)粒子[SAO粒子(2)]276.8kgを、上記水溶液に加えてスラリー化した。
ディスク径350mmの横型サンドミルにて、3mm径アルミナボール(ニッカトー製、SSA−999W、200kg)を粉砕メディアとして使用し、回転数181rpm条件のもと、上記スラリーを粉砕時間14分間の条件で粉砕し、スラリーを得た。この時の相対遠心加速度G(m/sec)は、6.40であった。相対遠心加速度Gに粉砕工程の時間(hr)を乗じた値は1.49であった。
上記の粉砕スラリーをアトマイザー式スプレードライヤー(直接加熱方式噴霧乾燥装置)を使用して乾燥し、その後アルミナ製焼成容器に充填した。その後、大気焼成炉にて200℃で20時間加熱させる熱処理工程を行って、SAO粒子(2)の表面をリン酸化合物と反応させることで表面処理層が形成された応力発光材料を得た。
実施例1と同様の方法で応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aを測定したところ32.0重量%であった。また、ストロンチウム元素の含有率測定と同様の方法で応力発光材料中のリン元素の含有率を測定したところリン元素の含有率は1.46重量%であった。
【0115】
実施例6
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製KBM503)150gを純水中で均一に分散するまで撹拌することにより3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが一部加水分解した液を調製した。
純水に、前記液及び実施例5で得られた表面処理層が形成された応力発光材料3.0kgを加えてスラリー化し、室温条件下で1時間撹拌した。
その後、スラリーをアトマイザー式スプレードライヤー(直接加熱方式噴霧乾燥装置)を使用して乾燥することで、リン酸化合物の表面処理層の上に更にシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで被覆された粉末状の応力発光材料を得た。
実施例1と同様の方法で応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aを測定したところ30.4重量%であった。また、ストロンチウム元素の含有率測定と同様の方法で応力発光材料中のリン元素の含有率を測定したところリン元素の含有率は1.34重量%であった。
【0116】
比較例1
リン酸水素二アンモニウム(和光純薬工業社製)0.45gを容器に秤量し、更に純水30mLを加えて、攪拌することによりリン酸化合物を含むスラリーを得た。
上記ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子(1)[SAO粒子(1)]15gを、100mLのポリ容器に投入し、上記スラリーを加えて混合液を調製した。
上記混合液を撹拌混合後、200℃の電気乾燥機で1.5時間乾燥して応力発光材料を得た。また、この時の攪拌機の相対遠心加速度Gは、0.01未満であった。
実施例1と同様の方法で応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aを測定したところ32.4重量%であった。
【0117】
比較例2
上記ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子(1)[SAO粒子(1)]をそのまま以後の評価に使用した。実施例1と同様の方法で応力発光材料[SAO粒子(1)]中のストロンチウム元素の含有率Aを測定したところ32.7重量%であった。
【0118】
比較例3
リン酸水素二アンモニウム(和光純薬工業社製)0.75g、上記ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子(1)[SAO粒子(1)]15gを、ボールミル(製品名:卓上型ポットミル、日陶科学社製)に投入し、15mm径ナイロン被覆鉄球400gを加え、回転数25rpm条件のもと180分間混合した。この時の相対遠心加速度Gは、0.06であった。上記混合粉を200℃の電気乾燥機で1.5時間加熱して応力発光材料を得た。実施例1と同様の方法で応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aを測定したところ、32.5重量%であった。
【0119】
(40℃耐水試験)
実施例1〜3及び比較例1で得られた応力発光材料5gを40℃の純水(50mL)中に浸漬し、応力発光材料を浸漬させた水のpHを継続的に測定した。
図1は、実施例1〜3及び比較例1の応力発光材料の40℃耐水試験の結果を示すグラフである。
応力発光材料を構成するストロンチウムが水と反応して水和物となり、同時にアルカリ性を示すSrイオンが放出されるとpHが高くなる。そのため、pHが高くなることは応力発光材料が水との反応により劣化していることを示している。
この結果から、比較例1の応力発光材料は試験開始直後から劣化が始まるが、実施例1〜3の応力発光材料では耐水性が改善されていることが分かる。
【0120】
(電子顕微鏡写真)
図2(a)〜(d)は、実施例1〜3及び比較例1の応力発光材料の電子顕微鏡写真であり、図2(a)は実施例1、図2(b)は実施例2、図2(c)は実施例3、図2(d)は比較例1の応力発光材料をそれぞれ示している。
この写真からは実施例2の応力発光材料では表面処理層の厚みが均一化されており、実施例3の応力発光材料では表面処理層が緻密化されていることが分かる。一方比較例1の応力発光材料では表面処理層の厚みが一定でなくまだらである。
【0121】
(耐水試験後の応力発光能の評価)
実施例3、4及び比較例2の応力発光材料それぞれ5gを80℃の純水(50mL)中に0.5時間浸漬して耐水試験を行い、耐水試験後の応力発光能を評価した。
図3は、耐水試験後の応力発光能の評価結果を示したグラフである。
応力発光能の評価は、次のような方法で行った。
円形状ペレットを作成するために透明プラスチックセルに、応力発光材料粉末とエポキシ系樹脂を重量比で1:1となるように加えて手で混ぜ合わせ、40℃にて硬化させた。硬化させてできた円形ペレットを卓上形精密万能試験機(島津製作所製、AGS−X)によって1000Nの荷重をかけ、その際の発光を光電子増倍管モジュール(浜松ホトニクス製、H7827−011)により検出した。
応力発光能の評価を、耐水試験前の試料及び耐水試験後の試料についてそれぞれ行った。耐水試験後の応力発光能は、耐水試験前の試料の応力発光能を100%とした場合の相対値(ML維持率(%))で評価した。
比較例2の試料では、耐水試験後の試料の応力発光能が0.1%となっており、0.5時間の耐水試験で応力発光能が失われていた。
これに対し、実施例3及び4の試料では、耐水試験後の試料の応力発光能は、実施例3において85.2%、実施例4において102.6%であった。
実施例3及び4の試料では、いずれも耐水性が向上しており、SAO粒子に対するリン元素の割合が高い実施例4の応力発光材料はより耐水性に優れたものであった。
【0122】
(耐湿試験後のストロンチウム元素の含有率及び応力発光能の評価)
実施例1〜6、比較例1〜3で得られた応力発光材料をペトリシャーレに入れて85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に168時間保管して耐湿試験を行い、耐湿試験後の応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Bを、実施例1における耐湿試験前のストロンチウム元素の含有率Aの測定方法と同様の方法で測定した。耐湿試験前の応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aと、耐湿試験後の応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Bから、(A−B)/A×100で変化率を算出した。
含有率B及び変化率は以下の通りであった。
実施例1:耐湿試験後の含有率B32.1重量%、変化率1.5%
実施例2:耐湿試験後の含有率B32.0重量%、変化率0.3%
実施例3:耐湿試験後の含有率B31.8重量%、変化率0.0%
実施例4:耐湿試験後の含有率B32.2重量%、変化率1.2%
実施例5:耐湿試験後の含有率B31.7重量%、変化率0.9%
実施例6:耐湿試験後の含有率B30.4重量%、変化率0.0%
比較例1:耐湿試験後の含有率B28.0重量%、変化率13.6%
比較例2:耐湿試験後の含有率B25.8重量%、変化率21.1%
比較例3:耐湿試験後の含有率B25.8重量%、変化率20.6%
【0123】
図4は、耐湿試験後の応力発光能の評価結果を示したグラフである。
応力発光能の評価を、実施例4、5、6及び比較例3で得られた応力発光材料に対し、耐湿試験前の試料及び耐湿試験後の試料についてそれぞれ行った。耐湿試験後の応力発光能は、耐湿試験前の試料の応力発光能を100%とした場合の相対値(ML維持率(%))で評価した。
比較例3の試料では、耐湿試験後の試料の応力発光能が4.9%となっており、応力発光能が失われていた。
これに対し、実施例4、5、6の試料では、耐湿試験後の試料の応力発光能は、それぞれ91.9%、94.3%、90.1%であった。
【0124】
(表面処理層の観察)
図5(a)は、実施例3の応力発光材料の電子顕微鏡写真であり、図5(b)は図5(a)のEDXによるマッピング画像である。図5(c)は比較例1の応力発光材料の電子顕微鏡写真であり、図5(d)は図5(c)のEDXによるマッピング画像である。
図5(b)のマッピング画像と図5(d)のマッピング画像には、P(リン元素)とAl(アルミニウム元素)の分布を示しており、Pの分布がリン酸化合物との反応による表面処理層が形成された部位の分布を示している。
図5(b)のマッピング画像と図5(d)のマッピング画像を比較すると、実施例3の応力発光材料ではPの分布が応力発光材料の表面に集中しており、リン元素が応力発光材料の表面に一定の厚さで濃く分布していることが分かる一方、比較例1の応力発光材料では倍率の関係もあり一見Pが分厚く被覆しているように見えるものの、Pの含有量は実施例3の応力発光材料と同じなので、被覆層中のPは疎に分散していることがわかる。
このことから、実施例3の応力発光材料は比較例1の応力発光材料に比べて均一で緻密な表面処理層を有していることが分かる。
【要約】
リン酸化合物とユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム粒子を混合してスラリーを調製する工程と、上記スラリーを粉砕して粉砕スラリーとする粉砕工程と、上記粉砕スラリーを乾燥する乾燥工程とにより得られる応力発光材料であって、
得られた上記応力発光材料中のストロンチウム元素の含有率Aと、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で上記応力発光材料を168時間保持した後のストロンチウム元素の含有率Bを用い、(A−B)/A×100で算出した変化率が10%以下であることを特徴とする応力発光材料。
図1
図3
図4
図2
図5