特許第5743116号(P5743116)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743116
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】防振部材及び切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20150611BHJP
   B23C 9/00 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   B23Q11/00 A
   B23C9/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-524705(P2013-524705)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(86)【国際出願番号】JP2012067934
(87)【国際公開番号】WO2013011944
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2013年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-156602(P2011-156602)
(32)【優先日】2011年7月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】俣野 和弥
(72)【発明者】
【氏名】川下 倫平
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−277106(JP,A)
【文献】 特開平09−085562(JP,A)
【文献】 特表2003−535705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23C 9/00
B23B 27/00
B23B 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムまたは合成ゴムからなる部材本体を備え、工具本体の外面にその外面との摩擦力によって取り付け可能である防振部材。
【請求項2】
前記部材本体が中心軸孔を有する筒形状であり、前記中心軸孔に前記工具本体が挿入される請求項1に記載の防振部材。
【請求項3】
前記中心軸孔の内径は、前記工具本体の外径よりも小さくされている請求項2に記載の防振部材。
【請求項4】
前記部材本体の内周側及び外周側の少なくとも一方に、少なくとも1本のスリットが形成されている請求項3に記載の防振部材。
【請求項5】
前記部材本体に、繊維が添加されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防振部材。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防振部材と、工具本体とを備える切削工具。
【請求項7】
請求項5に記載の防振部材と、工具本体とを備える切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具に取り付けることによって振動を減衰させる防振部材、及びこの防振部材を備えた切削工具に関する。
本願は、2011年7月15日に日本に出願された特願2011−156602号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
切削加工の際に加工対象の加工精度を悪化させる原因として、加工に伴う切削工具の振動がある。例えば、フライス加工の際、加工対象と切削工具との干渉を避けるために工具長を長く設定する場合では、工具突き出し量が増加により切削工具の強度が低下し、振動の発生が大きくなることが知られている。このような事情により、切削工具の振動を抑制するために様々な試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、工具内部の中空部分に粘弾性体によって支持された錘を設けることによって、加工時の振動を抑制する防振工具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−307642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の防振工具は、工具本体に中空部を形成した上でその内部に粘弾性体を介して錘を固定する必要があるなど構造が複雑であり、工具の製造コストの高騰を招くという問題がある。また、工具本体の内部に錘などの動吸振器を配置するため、切削加工の際の冷却に有効とされている内部給油による冷却に対応できないという問題がある。
さらに、上述したような構造であるが故に、工具そのものの強度が低下し、工具の寿命に悪しき影響を及ぼすという問題がある。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、単純な構造で、工具の強度を犠牲にすることなく、切削工具に減衰機能を付加することができる防振部材、及びこの防振部材を備えた切削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る防振部材は、天然ゴムまたは合成ゴムからなる部材本体を備え、工具本体の外面にその外面との摩擦力によって取り付け可能である。
【0008】
本発明に係る防振部材によれば、切削時において、工具に発生する工具のたわみ及び捩れにより、ゴム弾性または粘弾性を有する部材本体が変形し、部材本体自体の減衰効果により、工具本体の振動を減衰させることができる。また、工具本体と部材本体との接触面に摩擦が生じ、工具本体と部材本体との境界面で摩擦抵抗が生じることによって振動を減衰させることができる。
【0009】
前記防振部材は、中心軸孔を有する筒形状であり、前記中心軸孔に前記工具本体が挿入されるように構成されていてもよい。すなわち、前記部材本体が中心軸孔を有する筒形状であり、前記中心軸孔に前記工具本体が挿入されてもよい。
本発明に係る防振部材によれば、より単純な構造で、防振部材を作製することができる。また、工具本体により簡単に取り付けられる防振部材を提供することができる。さらに、既存の工具にも簡単に防振部材を取り付けることができるから、既存の工具を廃却することなく低振動化して使用することができる。
【0010】
また、前記中心軸孔の内径は、前記工具本体の外形よりも小さくてもよい。
本発明に係る防振部材によれば、防振部材の中心軸孔と工具本体との間に締め代(しめしろ)が生じ、締まり嵌め(しまりばめ)により、所定の締結力で防振部材と工具本体とを嵌め合わせることができる。
【0011】
また、前記防振部材には、前記部材本体の内周側及び外周側の少なくとも一方に、少なくとも1本のスリットが形成されていてもよい。
本発明に係る防振部材によれば、スリットにより防振部材の内部において摩擦する面積が増加し、より高い摩擦減衰効果を得ることができる。
【0012】
また、ゴム弾性または粘弾性を有する前記部材本体に、繊維が添加されていてもよい。
本発明に係る防振部材によれば、切削工具が高速回転した場合に防振部材が遠心力によって変形するのを抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明は、前記防振部材と、工具本体とを備える切削工具を提供する。
本発明に係る防振部材によれば、切削工具の強度を犠牲にすることなく、工具に減衰機能を付加することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、切削時において、工具に発生する工具のたわみ及び捩れにより、ゴム弾性または粘弾性を有する部材本体が変形し、部材本体自体の減衰効果により、工具本体の振動を減衰させることができる。また、工具本体と部材本体との接触面に摩擦が生じ、工具本体と部材本体との境界面で摩擦抵抗が生じることによって振動を減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る工作機械の工具取付部の概観図である。
図2】第一の実施形態に係る防振部材の斜視図である。
図3】工作機械のチャック部の拡大側面図である。
図4】第二の実施形態に係る防振部材の斜視図である。
図5A】第二の実施形態の別形態に係る防振部材の斜視図である。
図5B】第二の実施形態の別形態に係る防振部材の斜視図である。
図5C】第二の実施形態の別形態に係る防振部材の斜視図である。
図6】比較例1(防振部材なし)のタッピング試験結果である。
図7】実施例2−1(全長に亘る防振部材)のタッピング試験結果である。
図8】実施例2−2(全長の半分に亘る防振部材)のタッピング試験結果である。
図9】タッピング試験における周波数応答のグラフである。
図10】比較例3の表面粗度測定結果である。
図11】実施例3の表面粗度測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第一の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に、本実施形態の防振部材が適用された切削工具を具備する横型マシニングセンタ100(以下、工作機械と称する)の工具取付部の概観図である。
本実施形態の防振部材1は、工作機械100のフライス(刃物)に適用されている。本実施形態では、フライスとしてエンドミル2を使用している。図1に示すように、本実施形態で使用される工作機械100の主軸は水平方向に向いており、エンドミル2は、チャック部51によって保持されている。
【0017】
図2に示すように、防振部材1の部材本体1Aは円筒形状をなし、軸方向に沿って中心軸孔3が形成されている。部材本体1Aは粘弾性体からなり、より詳しくは、天然ゴム配合硬さ65のゴムによって形成されている。なお、防振部材1の材質としては、ゴムに限らず、ゴム弾性または粘弾性を有する部材であればよい。これらの材料を用いることで、高い振動減衰効果が得られる。例えば、ゴム弾性を有する材料としては、天然ゴムや合成ゴムなどの網目状高分子、プラスチックなどの鎖状の合成高分子を採用することが出来る。また、例えば、粘弾性を有する材料としては、衝撃吸収力や圧力分散性能を備えたシリコーンを主原料とするゲル状素材(例えば、タイカ社のαゲル(登録商標)等)を採用することができる。
【0018】
防振部材1の軸方向の長さは、エンドミル2の胴部を略覆う長さである。即ち、防振部材1は、エンドミル2の刃部及び保持部を除く、略全長に亘ってエンドミル2を覆う形状である。本実施形態の防振部材1は、長さが50mm、外径が40mm中心軸孔の直径は13mmとされている。
【0019】
図3は、チャック部51の拡大側面図である。
図3に示すように、防振部材1は、チャック部51に保持されたエンドミル2に取り付けられている。エンドミル2は、チャック部51に保持される保持部4と、刃部5と、保持部と刃部との間の胴部6とからなる。エンドミル2は、略円柱形状であり、胴部6も一定の直径を有する円柱形状である。防振部材1は、エンドミル2の胴部6に取り付けられている。
【0020】
本実施形態においては、エンドミル2のチャック部51からの突き出し量は、79mmであり、防振部材1は、エンドミル2の先端から14.5mmの位置に取り付けられている。また、エンドミルの胴部の直径は、14mmであり、防振部材1の中心軸孔の内径は、エンドミルの胴部の外径よりも1mm小さくされている。即ち、防振部材1とエンドミル2とは、締まり嵌めの関係により嵌め合わされている。
【0021】
上記実施形態によれば、切削時において、エンドミル2に発生するエンドミル2のたわみ及び捩れにより防振部材1が変形し、防振部材1自体の減衰効果により、エンドミル2本体の振動を減衰させることができる。
また、エンドミル2と防振部材1との接触面に摩擦が生じ、エンドミル2と防振部材1との境界面で摩擦抵抗が生じることによって振動を減衰させることができる。
【0022】
また、防振部材1は、単純な形状であるため、より低コストで、防振部材1を作製することができる。また、エンドミル2により簡単に取り付けられる防振部材1を提供することができる。さらに、既存の工具にも簡単に防振部材を取り付けることができるから、既存の工具を廃却することなく低振動化して使用することができる。
さらに、防振部材1の中心軸孔3とエンドミル2との間に締め代が生じるため、締まり嵌めにより所定の締結力で防振部材1とエンドミル2とを嵌め合わせることができる。
【0023】
次に、第二の実施形態に係る防振部材について説明する。
図4は、第二の実施形態に係る防振部材1Bの斜視図である。図4に示すように、第二の実施形態に係る防振部材1Bの部材本体1Aには、第一の実施形態の防振部材1の内周側に軸方向から見て、中心軸孔3から放射状(ラジアル方向)に形成された複数のスリット7が形成されている。複数のスリット7は、軸方向(アキシャル方向)に防振部材1Bの全長に亘って延在している。
【0024】
上記実施形態によれば、スリット7により防振部材1Bの内部において摩擦する面積が増加し、より高い摩擦減衰効果を得ることができる。また、中心軸孔3が広げ易くなるため、防振部材1Bをエンドミル2に取り付け易くなる。
【0025】
なお、スリット7はアキシャル方向に連続して形成されていなくてもよい。例えば、図5Aに示すように、スリット7Cが部材本体1Aの一部に断続的に形成されていてもよい。また、スリット7はアキシャル方向に直線的に設けられている必要はなく、図5Bに示すように、スリット7Dがスクリュー状に捩じれて形成されていてもよい。
また、図5Cに示すように、スリット7Eが部材本体1Aの外周側に形成されていてもよい。スリットを内周側だけでなく外周側にも形成することによって、防振部材の剛性が下がり、構造減衰による減衰効果を期待することができる。
【実施例】
【0026】
次に、防振部材が取り付けられたエンドミルの実施例と、防振部材のないエンドミルの比較例について、防振効果等を確認するための各種測定を行った。
検証は、チッピング量による比較、タッピング試験による比較、表面粗度による比較、工具損傷の検査による比較、の4つの観点から行った。
【0027】
工作機械は、横マシニングセンタを用いた。エンドミルは、φ14の6刃エンドミルを使用した。テストピースは、時効処理済みの角材(幅×高さ×奥行き=122×109×76(mm))とした。径方向と軸方向の切り込み、及び回転数は、実施例及び比較例で一定とした。
【0028】
<チッピング量による比較>
実施例のエンドミルと、比較例のエンドミルとで、テストピースを加工し、加工後のチッピング量(摩耗量)を計測し、比較した。テストピースの加工は、2面加工を行った。
【0029】
<実施例1>
実施例1は、防振部材を取り付けたエンドミルを用いて、表1に示す条件でテストピースを加工した。防振部材は、外径=40mm、内径=13mm、長さ=50mm、のものを用い、外径14mmのエンドミルに締まり嵌めにより嵌め合わせて固定した。
【0030】
<比較例1>
比較例1は、防振部材を取り付けないエンドミルを用いて、表1に示す条件でテストピースを加工した。
【0031】
表1にテストピースの端面を2面加工した後の、エンドミルのチッピング量を示す。チッピング量は、エンドミルの逃げ面、及び掬い面についてそれぞれ計測した。また、1面の切削距離は約2.68mとした。
表1より、各切れ刃にチッピング量のバラつきはあるものの、2面加工の時点では、逃げ面の評価で平均49%のチッピング量の低減が確認できた。掬い面の評価では、平均31%のチッピング量の低減が確認できた。
【0032】
【表1】
【0033】
<タッピング試験による比較>
防振部材の効果要因を確認するために、工具回転を停止した状態でタッピング試験を実施した。タッピング試験は、工具先端位置を加振入力位置とし、当該位置をインパクトハンマーで打点することにより実施した。振動の計測位置は、工具先端位置とした。
【0034】
<実施例2−1,2−2>
実施例2−1として、エンドミルの胴部を全長に亘って覆う防振部材を用意した。実施例2−2として、エンドミルの胴部の約半分を覆う防振部材、即ち、実施例2−1と比較して約半分の全長を有する防振部材を用意した。
【0035】
<比較例2>
比較例2は、防振部材を取り付けないエンドミルとした。
【0036】
図6は、比較例1(防振部材なし)のタッピング試験結果である。図7は、実施例2−1(全長に亘る防振部材)のタッピング試験結果である。図8は、実施例2−2(全長の半分に亘る防振部材)のタッピング試験結果である。何れのグラフも水平方向の振動加速度を示すものである。
図6〜8に示すように、比較例1と比較して、実施例2−1及び実施例2−2の減衰効果が高いことがわかる。
【0037】
図9は、周波数応答のグラフである。ハーフパワー法により算出した減衰比は、比較例2では約1.5%、実施例2−1では5.0%、実施例2−2では3.0%であり、防振部材の取り付けによる減衰効果があることを確認することができた。図9に示すように、比較例2、実施例2−1、2−2における工具の振動のピークは900Hz付近と1,200Hz付近であり、工具の回転数と刃数より算出される加振振動数は上述したピークから十分離れている。そのため、防振部材を取り付けたことによる効果は共振回避ではなく減衰によるものであると考えられる。また、実施例2−2は、エンドミルの胴部の約半分しか覆っていないため、防振効果がやや少ないものの、やはり防振効果を有することが示された。
【0038】
<表面粗度による比較>
実施例のエンドミルと、比較例のエンドミルとで、テストピースを加工し、加工後の表面粗度を計測し、比較した。テストピースの加工は、5面加工を行った。
【0039】
<実施例3>
実施例1と同様の条件とした。即ち、防振部材を取り付けたエンドミルを用いて、テストピースを加工した。
【0040】
<比較例3>
比較例1と同様の条件とした。即ち、防振部材を取り付けないエンドミルを用いて、テストピースを加工した。
【0041】
表2にツールパス(工具経路)方向の表面粗度の値を示す。また、図10に比較例3の表面粗度測定結果を、図11に実施例3の表面粗度測定結果を示す。図10、及び図11共、ツールパスの方向の表面粗度を示している。また、高さ方向の尺度は同一としている。
【0042】
【表2】
【0043】
表2に示すように、ツールパス方向の表面粗度はRa:算術平均粗さ、Rz:最大高さ粗さ、Rt:最大断面高さの何れの数値も、実施例3が低い数値となった。特に、実施例3において防振部材を取り付けたことによって、最大高さ粗さRzが4.3μmから3.7μmに減少している。この要因として、工具振動の振幅の減少が考えられる。
また、図10及び図11に示すように、加工面を測定した形状を見ると、実施例3では、加工面が、周期の短い波形が連続した形状をなし、さらにその波形の高さが、個々の波形よりも長い周期で見た場合に規則的に増減する。即ち、振動が抑制されていることによって、波形がやや滑らかになっていることがわかる。これに対し、比較例3では、加工面の波形は不規則で、実施例3のような傾向を見ることができず、波形の外形が長い周期で増減する規則性を見取るのが難しい。即ち、振動の抑制が実施例3と比較して少ないことによって、細かい波形が不規則に並んでいることがわかる。
【0044】
<工具損傷の検査による比較>
実施例1の防振部材を取り付けた切削工具について、蛍光浸透深傷試験と放射線試験を実施し、工具自体の損傷状態について確認した。
その結果、切削加工前、切削加工後(切削距離13.4m)ともに異常はなく、切削初期の段階でも工具シャンク部分に工具の損傷は確認されなかった。
【0045】
以上の比較により、以下の結果を得た。
(1)エンドミルに防振部材を取り付けることにより、工具の減衰効果が高くなり、切れ刃のチッピングを低減する効果があることを確認できた。
(2)切れ刃のチッピング低減効果は、切削初期に有効であり、工具のプリセット時の振れよりも防振部材の取り付けによるチッピング低減効果の方が大きいことがわかった。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。例えば、以上で説明した各実施形態では、工作機械として横型マシニングセンタを用いているが、長尺形状の刃物を使用する工作機械であれば、これに限ることはない。例えば、防振部材をボール盤のドリルや旋盤のバイトに使用する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…防振部材、
1A…部材本体
2…エンドミル(工具本体)、
3…中心軸孔、
4…保持部、
5…刃部、
6…胴部、
7、7C、7D、7E…スリット
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11