(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷却流路は、入口側が前記高圧部の前記フィレット部より径方向の内側に配設され、出口側が前記低圧部の前記フィレット部より径方向の外側に配設されたバイパス流路を備える請求項1に記載のガスタービン動翼。
前記冷却流路は、入口側が前記高圧部の前記フィレット部より径方向の外側に配設され、出口側が前記低圧部の前記フィレット部より径方向の内側に配設されたバイパス流路を備える請求項1に記載のガスタービン動翼。
前記冷却流路は複数系統の冷却流路からなり、前記高圧部が配設された冷却流路と、前記低圧部が配設された冷却流路とは、互いに異なる系統の冷却流路である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガスタービン動翼。
前記冷却流路は複数系統の冷却流路からなり、前記高圧部が配設された冷却流路と、前記低圧部が配設された冷却流路とは、同一の系統の冷却流路である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガスタービン動翼。
前記冷却流路は、少なくとも前記翼体の加圧面または負圧面のいずれか一方の面に設けられたバイパス流路を備えている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のガスタービン動翼。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一般に、熱負荷が大きいフィレット部近傍やプラットフォームの外表面は熱応力が大きいため、孔廻りの応力集中により疲労破壊が生じやすく、孔加工が困難という問題点がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、熱応力が大きい翼面やプラットフォームの外表面に孔加工を行わず、フィレット部を対流冷却した後の冷却空気をフィレット部近傍の冷却孔から燃焼ガス中に排出せずに、翼体内の冷却空気として有効利用できるガスタービン動翼の冷却構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の第1の態様に係るガスタービン動翼は、プラットフォームと、蛇行するサーペンタイン冷却流路を含む冷却流路を備えた翼体と、前記翼体と前記プラットフォームの繋ぎ面に
形成された曲面と前記翼体と前記プラットフォームとで囲まれた範囲内に形成されたフィレット部と、前記サーペンタイン冷却流路に連通する冷却流路を備えた基部と、から形成されるガスタービン動翼であって、前記冷却流路は、前記冷却流路の高圧部から分岐して、前記フィレット部に沿って前記フィレット部の内側に配置され、前記高圧部が配置された前記冷却流路に隣接する下流側冷却流路に配置された低圧部に接続するバイパス流路を備え
、前記バイパス流路は、前記フィレット部が形成された範囲内に形成されることを特徴とする。
【0009】
前記第1の態様によれば、冷却空気の圧力が高い冷却流路の高圧部からバイパス流路を取り出して、フィレット部に沿ってフィレット部の内側に配置され、圧力の低い冷却流路の低圧部に接続するので、高圧部と低圧部の冷却空気の差圧を利用して、バイパス流路内を冷却空気の一部を流すことができる。これにより、バイパス流路内の冷却空気によりフィレット部を内側から対流冷却する一方、フィレット部近傍またはプラットフォーム面に冷却孔を設ける必要がない。したがって、冷却孔周辺の応力集中に伴う翼の疲労破壊等の問題を回避でき、翼の信頼性が向上する。また、バイパス流路を流れる冷却空気は、冷却流路の低圧部に戻され、冷却流路内を流れて燃焼ガス中に排出する過程で、翼体を内部から対流冷却するので、冷却空気の使い廻しがされ、冷却空気量が低減できる。
【0010】
前記第1の態様に係る冷却流路は、入口側が前記高圧部の
前記フィレット部に配設され、出口側が前記低圧部の
前記フィレット部に配設されたバイパス流路を備えることが望ましい。
【0011】
前記第1の態様に係る前記冷却流路は、入口側が前記高圧部の前記フィレット部より径方向の内側に配設され、出口側が前記低圧部の前記フィレット部より径方向の外側に配設されたバイパス流路を備えることが望ましい。
【0012】
前記第1の態様に係る前記冷却流路は、入口側が前記高圧部の前記フィレット部より径方向の外側に配設され、出口側が前記低圧部の前記フィレット部より径方向の内側に配設されたバイパス流路を備えることが望ましい。
【0013】
前記第1の態様に係る冷却流路は、複数系統の冷却流路からなり、前記高圧部が配設された冷却流路と、前記低圧部が配設された冷却流路とは、互いに異なる系統の冷却流路であることが望ましい。
【0014】
前記第1の態様に係る冷却流路は、複数系統の冷却流路からなり、前記高圧部が配設された冷却流路と、前記低圧部が配設された冷却流路とは、同一の系統の冷却流路であることが望ましい。
【0015】
前記第1の態様に係る冷却流路は、少なくとも前記翼体の加圧面または負圧面のいずれか一方の面に設けられたバイパス流路を備えていることが望ましい。
【0016】
前記第1の態様に係る冷却流路は、前記翼体の冷却流路が、3系統の冷却流路からなり、第1系統の冷却流路は、最も前縁に近接する第1冷却流路から形成され、第2系統の冷却流路は、サーペンタイン冷却流路からなり、前記第1冷却流路に近接する第2冷却流路、第3冷却流路、第4冷却流路の順に、前縁から後縁に向けて配置される冷却流路であり、第3系統の冷却流路は、サーペンタイン冷却流路からなり、前記第4冷却流路に近接する第5冷却流路、第6冷却流路、第7冷却流路の順に、前縁から後縁に向けて配置される冷却流路であって、前記高圧部は前記第1冷却流路にあり、前記低圧部は前記第2冷却流路にあることが望ましい。
【0017】
本発明の第2の態様は、前述のガスタービン動翼を備えたガスタービンであることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガスタービン動翼が、冷却流路の高圧部から分岐して、フィレット部に沿ってフィレット部の内側に配設され、冷却流路の低圧部に戻すバイパス流路を備えるので、フィレット部を内側から対流冷却できる。そのため、熱応力が大きいフィレット部近傍の外表面またはプラットフォームの外表面に、冷却孔等の孔加工を施すことなくフィレット部を冷却できるので、翼の疲労破壊等の問題が回避され、翼の信頼性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るガスタービン動翼およびガスタービンについて、その実施形態を
図1〜
図6に基づいて以下に説明する。
【0021】
(第1実施例)
図1から
図3に基づき、第1実施例について、以下に説明する。
図1は、ガスタービンの全体構成図を示す。ガスタービン1は、燃焼用空気を圧縮する圧縮機2と、圧縮機2から送られてきた圧縮空気に燃料を噴射させて燃焼させ、燃焼ガスを発生させる燃焼器3と、燃焼器3の燃焼ガスの流れ方向の下流側に設けられ、燃焼器3を出た燃焼ガスにより駆動されるタービン部4と、圧縮機2とタービン部4と発電機(図示せず)を一体に締結するロータ5で構成されている。
【0022】
タービン部4は、燃焼器3で発生させた燃焼ガスをタービン静翼6およびタービン動翼7に供給し、タービン動翼7をロータ5の廻りに回転させて、回転エネルギーを電力に変換している。タービン静翼6およびタービン動翼7は、燃焼ガスの流れ方向の上流側から下流側に向かって交互に配置されている。また、タービン動翼7は、ロータ5の周方向に複数配置され、ロータ5と一体となって回転している。
【0023】
図2は、ガスタービン動翼の外観を示している。ガスタービン動翼7は、径方向に延在して内部に蛇行する冷却流路を備えた翼体11と、翼体11に直交するように設けられたプラットフォーム12と、前記翼体11とプラットフォーム12をロータ5に固定する基部13とから構成される。前記翼体11と、前記プラットフォーム12と、前記基部13とは、鋳造で一体に製作されている。プラットフォーム12と翼体11との繋ぎ面のフィレット部14は、翼体の全周に形成され、応力集中を避けるため、一定のR(曲率半径)をもった滑らかな曲面で形成されている。
【0024】
ガスタービン動翼の断面構造の一例を、
図3A、
図3Bおよび
図3Cに基づき説明する。
図3Aは、ガスタービン動翼の縦断面図を示し、
図3Bは翼体11を前縁17から後縁18の方向に見た縦方向の部分断面図で、
図3Aの断面A−Aを示している。また、
図3Cは翼体11の横断面図で、
図3Aの断面B−Bを示している。
図3Aに示すように、翼体11内には翼体11を冷却空気CAで冷却するため、複数系統の冷却流路22、23、24が配置されている。また、翼体11の冷却流路は、基部13に配置された冷却流路に連通し、それぞれの冷却流路に流す冷却空気CAは、基部13に接続するロータ5側の冷却流路(図示せず)から供給されている。
【0025】
本実施例に示す翼体11の冷却流路22、23、24は、3つの系統の流路で構成され、プラットフォーム12に接続する基部13内に配置された互いに独立した3つの供給流路33、34、35にそれぞれ連通している。
【0026】
前記翼体11に配置された3系統の冷却流路は、前縁17から後縁18に向かって、最も前縁17に近接する第1系統流路22および第2系統流路23、第3系統流路24の順番に配置される。それぞれの系統の冷却流路は、基部13に設けられた互いに独立した冷却流路である第1供給流路33、第2供給流路34、第3供給流路35のそれぞれに連通している。
【0027】
第1系統流路22は、最も前縁17に近接し、径方向に基部13側から翼頂部16に向かう単一の第1冷却流路25のみで形成され、基部13から翼頂部16まで延在している。また、第1冷却流路25に接する翼体11の壁面の負圧面21(背側)および加圧面20(腹側)には、燃焼ガス側と翼体11内部の冷却流路側を連通させる多数のフィルム孔(図示せず)が設けられている。
【0028】
第2系統流路23は、前縁17と後縁18の中間部の翼体11内に設けられ、第2冷却流路26、第3冷却流路27、第4冷却流路28の各流路が折返し構造(リターン部)で接続されて、一本の蛇行したサーペンタイン冷却流路に形成されている。第2系統流路23は、前縁17から後縁18に向かって、最も第1冷却流路25に近接して設けられた第2冷却流路26および第3冷却流路27、第4冷却流路28の順番で配置されている。ロータ5側から供給された冷却空気CAは、第2供給流路34を経て第4冷却流路28に流入し、リターン部32で折返しながら第3冷却流路27、第2冷却流路26の順に流路内を流れる。
【0029】
すなわち、第4冷却流路28は、基部13側から翼頂部16に向かって径方向に延在し、翼頂部16近傍に設けられたリターン部32で180°転回して、第3冷却流路27に連通する。第3冷却流路27も翼頂部16から基部13側に向かって半径方向に延在し、リターン部32で180°転回して、第2冷却流路26に連通する。さらに、第2冷却流路26も、基部13側から翼頂部16に向かって径方向に延在し、第2冷却流路26の翼頂部16に設けられた冷却孔(図示せず)に連通する。また、第2冷却流路26、第3冷却流路27および第4冷却流路28に接する翼体11の壁面の負圧面21(背側)および加圧面20(腹側)には、第1冷却流路と同様に、燃焼ガス側と各冷却流路側とを連通させる多数のフィルム孔(図示せず)が設けられている。
【0030】
第3系統流路24は、前縁17と後縁18の中間部から後縁18側に設けられ、第5冷却流路29、第6冷却流路30、第7冷却流路31が折返し構造(リターン部)で接続されて、一本の蛇行したサーペンタイン冷却流路に形成されている。第3系統流路24は、前縁17から後縁18に向かって、第4冷却流路28に近接して設けられた第5冷却流路29および第6冷却流路30、第7冷却流路31の順に配置され、第7冷却流路31を出た冷却空気CAは、翼頂部16に設けられた冷却孔(図示せず)から燃焼ガス中に排出されるとともに、冷却空気の一部は後縁端部19より燃焼ガス中へ排出される。ロータ5側から供給された冷却空気CAは、第2系統流路と同様に、第3供給流路35を経て第5冷却流路29に流入し、リターン部32で折返しながら第6冷却流路30、第7冷却流路31の順に通路内を流れる。
【0031】
すなわち、第5冷却流路29は、基部13から翼頂部16に向かって径方向に延在し、翼頂部16近傍に設けられたリターン部32で180°転回して、第6冷却流路30に連通する。第6冷却流路30は、同様に翼頂部16から基部13側に向かって半径方向に延在し、リターン部32で180°転回して、第7冷却流路31に連通する。さらに、第7冷却流路31は、基部13側から翼頂部16に向かって径方向に延在する流路であり、翼頂部16に設けた冷却孔(図示せず)および後縁端部19に連通している。また、第5冷却流路29、第6冷却流路30、第7冷却流路31に接する翼体11の壁面の負圧面21(背側)および加圧面20(腹側)には、他の系統の冷却流路と同様に、燃焼ガス側と各冷却流路側とを連通させる多数のフィルム孔(図示せず)が設けられている。
【0032】
また、各冷却流路の内壁には、翼体の対流冷却を促進するため、タービュレータ(図示せず)を設けてもよい。
【0033】
前述の冷却流路の構成により、基部13に設けられた各系統に連通する冷却流路(第1供給流路33、第2供給流路34、第3供給流路35)にロータ5側から供給された冷却空気CAは、第1系統流路22(第1冷却流路25)、第2系統流路23(第4冷却流路28、第3冷却流路27、第2冷却流路26)および第3系統流路24(第5冷却流路29、第6冷却流路30、第7冷却流路31)に供給される。第1系統流路22に供給された冷却空気CAは、前縁17側の翼体11の負圧面21側および加圧面20側の内壁面を対流冷却しながら、前縁17側の翼面に設けられたフィルム冷却孔から燃焼ガス中に吹出す際、翼面をフィルム冷却している。第2系統流路23は、翼体11の中間部の負圧面21および加圧面20の内壁面を対流冷却すると共に、翼体11の翼面に設けられた冷却孔から燃焼ガス中に排出する際、翼面をフィルム冷却する。また、第3系統流路24も同様に、翼体11の中間部から後縁18側にかけ、翼体11の負圧面21(背側)および加圧面20(腹側)の内壁面を対流冷却して、翼面に設けられた冷却孔から燃焼ガス中に排出する際、翼面をフィルム冷却する。また、第7冷却流路31を流れる冷却空気CAの一部は、後縁端部19から燃焼ガス中に排出する過程で、後縁端部19を対流冷却している。
【0034】
次に、フィレット部の冷却構造について説明する。
図3A、
図3B、
図3Cには、第1冷却流路25と第2冷却流路26を接続するバイパス流路41が示されている。バイパス流路41は、翼体11の壁体内に形成され、バイパス流路41の入口41a側が第1冷却流路25に連通し、出口41b側は第2冷却流路26に連通している。すなわち、バイパス流路41は、
図3Aに示す翼体11の縦断面図で、バイパス流路41の入口41aおよび出口41bともに、フィレット部14が形成された範囲に配置されている。
【0035】
ここで、フィレット部の範囲について説明する。
図3Bの部分断面図に示すように、フィレット部14は、翼体11とプラットフォーム12の繋ぎ部の熱応力を低減するため一定の曲率半径を備えた曲面Rと翼体11およびプラットフォーム12で囲まれた領域として形成され、翼体の全周に配置されている。すなわち、
図3Bの部分断面図で、翼体11の径方向に伸びる直線状の外壁面11aとフィレット部14の外表面を形成する曲面Rとが滑らかに交わる点をXとし、プラットフォーム12の直線状に広がるプラットフォーム外表面12aと曲面Rとが滑らかに交わる点をY点とすれば、点Xおよび点Yを翼体11の廻りに描くことにより、フィレット部14と翼体の外壁面11aおよびフィレット部14とプラットフォーム外表面12aの境界に、フィレット上端ライン14a、フィレット下端ライン14bが形成される。
このフィレット上端ライン14a、フィレット下端ライン14bで囲まれた領域(
図3Bのハッチングで示す部分)がフィレット部14の範囲を形成する。
【0036】
バイパス流路41は、
図3Bの部分断面図に示すように、翼の前縁から後縁を見た断面視で、フィレット上端ライン14a、フィレット下端ライン14bで囲まれたフィレット部14に配置される。すなわち、バイパス流路41の入口41aは、翼の前縁から後縁を見た断面視で、フィレット部14内に配置され、第1冷却流路25の内壁面に形成される。バイパス流路41は、入口41aから略水平方向(ロータ軸方向)に曲面Rに向かって延び、
図3Aおよび
図3Cに示すように、フィレット部14の曲面Rの内側(サーペンタイン流路側)をフィレット部14に沿って配置され、さらに第2冷却流路出口41bに接続している。なお、本実施例では、バイパス流路41の全てが、フィレット上端ライン14a、フィレット下端ライン14bで囲まれたフィレット部14内に配置される。なお、バイパス流路41は、タービン動翼を一体鋳造する過程で、同時に製作が可能である。
【0037】
次に、バイパス流路の技術的な意義を説明する。
一般に、サーペンタイン流路は、細長い蛇行した距離の長い流路を備え、流路の途中に折返し構造(リターン部)やタービュレータ等の内部構造を備えるため、冷却空気が流路内を流れる過程で、圧力損失により圧力が低下する。なお、ロータ5側から冷却空気CAを受入れる基部13内に設けられた第1供給流路33、第2供給流路34、第3供給流路35内の冷却空気CAの圧力は、ほぼ同じ圧力である。
【0038】
図3A、
図3Cに示すように、第1系統流路22の冷却流路(第1冷却流路25)は、最も前縁17に近接し、基部13側から翼頂部16まで延在する単一の流路である。第1冷却流路25は、ロータ5側から冷却空気CAを受入れる基部13側の流路内の圧力が最も高く、フィレット部14を挟んだ径方向の内側及び外側の流路を含めたフィレット部14近傍の流路内が、高圧部36を形成する。
【0039】
一方、第2系統流路23は、第2冷却流路26、第3冷却流路27、第4冷却流路28が折返し構造(リターン部)を介して接続されて、蛇行した長いサーペンタイン冷却流路が形成されている。冷却空気CAは、ロータ5側から冷却空気CAを受入れる第4冷却流路28の上流側で圧力が最も高い。冷却流路およびリターン部を流れる間に圧力損失により冷却空気圧は徐々に低下して、第2冷却流路26の翼体の冷却孔(図示せず)から排出された直後は、燃焼ガス圧とほぼ同じ圧力となる。すなわち、冷却空気CAは、第4冷却流路28、第3冷却流路27、第2冷却流路26の順に流路内部を流れて冷却空気圧が低下するため、第2冷却流路26の下流端(翼頂部16)が最も圧力が低くなる。第4冷却流路28の基部13側から翼体11に入る冷却流路のうち、フィレット部14を挟んだ径方向の内側及び外側の流路を含めたフィレット部14近傍が高圧部36を形成し、第2冷却流路26のフィレット部14近傍が低圧部37を形成する。
【0040】
これにより、バイパス流路の入口41a側の高圧部36と出口41b側の低圧部37との冷却空気の差圧を利用して、冷却空気の一部を分岐してバイパス流路41に流すことができ、バイパス流路内の冷却空気CAにより、フィレット部14を翼体11の内側から対流冷却できる。
【0041】
また、バイパス流路は、翼体11の負圧面21(背側)または加圧面20(腹側)の一方の面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。翼構造や翼面の熱負荷のかかり方により、いずれかを選択するのが望ましい。
図3Cに示す第1実施例は、翼体11の前縁17側の加圧面20にのみバイパス流路41を設けた例であるが、熱応力の状態によっては負圧面21のみに設けてもよい。また、
図3Dに示す第1変形例は、加圧面20と負圧面21の両面にバイパス流路41を設けた例を示している。
【0042】
第1実施例に示す構成によれば、フィレット部に近接させてバイパス流路を設けるので、フィレット部の内側から対流冷却できる。そのため、熱応力が大きいフィレット部近傍の翼面またはプラットフォーム面に冷却孔を設ける等の孔加工をする必要がなく、翼の疲労破壊等を回避して、翼の信頼性が向上する。
【0043】
また、冷却空気をフィレット近傍で冷却孔から燃焼ガス中に排出することなくサーペンタイン流路に戻すので、第2冷却流路26内に戻った冷却空気は、更に第2冷却流路26を流れる間に翼体11を対流冷却する。更に、冷却空気は、フィルム孔から吹出して翼面をフィルム冷却するので、冷却空気の使い廻しが行われ、冷却空気量が低減される。そのため、ガスタービン全体の熱効率とガスタービンの信頼性が向上する。
【0044】
図4A、
図4B、
図4Cには、バイパス流路に係わる第1実施例の変形例を示している。
図4Aに示す第2変形例では、高圧部36を第1冷却流路25内のフィレット部14より径方向の内側に設け、低圧部37を第2冷却流路26のフィレット部14より径方向の外側に配置して、バイパス流路42の入口42aを高圧部36に、出口42bを低圧部37に配置した例である。バイパス流路42は、縦断面視でバイパス流路41の入口42a、出口42bを略直線状に接続して、中間部はフィレット部14の内側(サーペンタイン流路側)に沿わせて配置している。
【0045】
図4Bに示す第3変形例は、高圧部36を第1冷却流路25内のフィレット部14より径方向の外側に設け、低圧部37を第2冷却流路26のフィレット部14より径方向の内側に配置して、バイパス流路43の入口43aを高圧部36に、出口43bを低圧部37に配置した例である。また、第2変形例と同様に、バイパス流路43は、縦断面視でバイパス流路43の入口43a、出口43bを略直線状に接続して、中間部はフィレット部14の内側に沿わせて配置している。
【0046】
図4Cに示す第4変形例は、高圧部36の選定は第1実施例と同じであるが、低圧部37を第3冷却流路27のフィレット部14近傍に設けた点が異なる。第3冷却流路27のフィレット部14近傍であれば、第4冷却流路28のフィレット部14近傍と第3冷却流路27のフィレット部14近傍の間の差圧が利用できるので、バイパス流路44内に冷却空気を流すことができる。また、第3冷却流路27の下流側のフィレット部14にバイパス流路44の出口44bを設け、中間のバイパス流路44をフィレット部14の内側に沿わせて配置すれば、前述の第1変形例よりバイパス流路長を延ばせるので、フィレット部14の冷却長さを更に広げることが出来る。
【0047】
(第2実施例)
次に、第2実施例について、
図5A、
図5B、
図5Cに基づき、以下に説明する。第1実施例は第1系統流路22と第2系統流路23の間の異なる系統間のバイパス流路に関する例であるが、本実施例は第2系統流路23内のバイパス流路45である点が異なる。すなわち、本実施例では、高圧部36を第4冷却流路28の上流側のフィレット部14に設け、低圧部37を第2冷却流路26の上流側のフィレット部14に設けている。本実施例の構成によれば、前述の第1実施例と同様の効果が得られる。
【0048】
なお、本実施例のバイパス流路45は、第1実施例と同様に、翼体11の負圧面21(背側)または加圧面20(腹側)の一方の面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。翼構造や翼面の熱負荷のかかり方により、いずれかを選択するのが望ましい。
図5Bに示す例は、翼体11の加圧面20にのみバイパス流路45を設けた例であるが、熱応力の状態によっては負圧面21にのみ設けてもよい。
図5Cに示す例は、加圧面20と負圧面21の両面にバイパス流路45を設けた例である。また、フィレット部14の考え方およびフィレット部とバイパス流路の関係は、第1実施例と同じ考え方を適用できる。さらに、
図4A、
図4Bに示すバイパス流路の変形例の考え方は、本実施例にも適用できる。
【0049】
(第3実施例)
次に、第3実施例について、
図6A、
図6B、
図6Cに基づき、以下に説明する。本実施例は、第3系統流路24内のバイパス流路46である点が、第1実施例および第2実施例と異なる。すなわち、第3系統流路24は、前縁17から後縁18にかけ、第4冷却流路28に近接する第5冷却流路29、第6冷却流路30、第7冷却流路31の順に折返し構造(リターン部)を介して接続されて、蛇行した長いサーペンタイン冷却流路が形成されている。冷却空気CAは、ロータ5側から冷却空気を受入れる第5冷却流路29の入口では圧力が最も高い。しかし、第2系統流路と同様に、冷却空気CAが冷却流路内を流れる間に圧力損失により冷却空気の圧力は徐々に低下して、第7冷却流路31から後縁18側に流れて後縁端部19から燃焼ガス中に排出された直後の冷却空気は、燃焼ガス圧とほぼ同じ圧力となる。すなわち、冷却空気CAが、第5冷却流路29、第6冷却流路30、第7冷却流路31の順に流路内を流れる過程で、冷却空気圧が徐々に低下する。第5冷却流路29の基部13側から翼体11に入る冷却空気CAのフィレット部14近傍の流路内が圧力の高い高圧部36を形成し、第7冷却流路31の上流側内のフィレット部14近傍が圧力の低い低圧部37を形成する。従って、第5冷却流路29と第7冷却流路31の間の差圧を利用して、この間にバイパス流路46を配置し、バイパス流路46はフィレット部14に沿わせて配置する構成としてもよい。本実施例の構成によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。
【0050】
なお、本実施例においても、バイパス流路46を翼体11の負圧面21または加圧面20のいずれに設けるか、あるいは両面に設けるかは、第1実施例と同様に、翼構造や翼面の熱負荷のかかり方等により選択される。
図6Bに示す例は、翼体11の負圧面21にのみバイパス流路46を設けた例であるが、熱応力の状態によっては加圧面20にのみ設けてもよい。
図6Cに示す例は、加圧面と負圧面の両面にバイパス流路46を設けた例である。また、フィレット部14の考え方およびフィレット部とバイパス流路の関係は、第1実施例と同じ考え方を適用できる。さらに、第2実施例と同様に、
図4A、
図4Bに示すバイパス流路の変形例の考え方は、本実施例にも適用できる。
【0051】
なお、前述の第1実施例から第3実施例に示す構成は、翼構造と翼面への熱負荷のかかり方により、各実施例ごとに単独に適用できるし、複数の実施例を組み合わせた構成が適用できる場合もある。また、複数の実施例の組合せた構成による効果は、第1実施例と同じである。
【0052】
また、第1実施例は、3系統のサーペンタイン流路を備え、前縁17に最も近接する第1系統流路22は、単一の冷却流路で構成し、第2系統流路23および第3系統流路24は、各々3本の冷却流路を前縁17から後縁18にかけて直列に結合したサーペンタイン冷却流路で構成されるが、他の冷却流路の構成にも同様の考え方が適用できる。
【0053】
第1実施例の冷却流路が、第1系統流路が単一流路、第2系統流路と第3系統流路が各々3本のサーペンタイン冷却流路で構成され、全体で7本の冷却流路で構成されたもの(この構成を、1−3U−3D系と呼ぶ)としている。ここで、「1−3U−3D系」とは、3系統の流路で構成され、第2系統流路および第3系統は各3本の流路で構成されていることを意味する。また、冷却空気CAの流れが、前縁17から後縁18に向かう流路では「D」を付し、逆向きの流れでは「U」を付して区別している。
【0054】
他の流路構成を例にあげれば、第1実施例と同様に、全体で7本の流路で構成する点は同じであるが、第1系統流路が単一流路、第2系統流路が5本のサーペンタイン流路、第3系統流路が単一流路の冷却流路で構成し、第2系統流路は前縁17から後縁18に向かう冷却空気の流れとなる構成(1−5D−1系)がある。このような場合、第1実施例と同様に、前縁17から後縁18へかけ順番に流路番号を付して考えれば、第1冷却流路と第3冷却流路、第1冷却流路と第4冷却流路または第1冷却流路と第5冷却流路の間にバイパス流路を設け、バイパス流路は、フィレット部14の内側に沿わせた配置とする構成が成立する。
【0055】
翼の冷却設計の考え方で、ガスタービン動翼の冷却流路の構成は多岐に渡るが、1つの系統の冷却流路の中で、最も圧力の高い流路を高圧部と考え、同一の系統または異なる系統の流路の中で圧力の最も低い流路を低圧部として、フィレット部に近い高圧部と低圧部の間にバイパス流路を設けることにより、本発明の技術思想を満足する構成が実現できる。高圧部と低圧部をフィッレト部から離れた位置に選定すると、バイパス流路を設けることが製作上困難となり、適当とは言えない。なお、前述の説明は、最も圧力の高い高圧部、最も圧力の低い低圧部を例に説明したが、中間の圧力であっても、高圧部と低圧部の間に冷却空気を流せる差圧が確保できれば、バイパス流路を設けることが出来る。
【0056】
前述の各実施例は、本発明の技術思想を反映した代表例であるが、本発明の技術思想を満足する限り、他の実施例および変形例も本発明の技術思想に範囲内に含まれる。