【実施例1】
【0025】
図1、
図2において、例えば金属ストリップ洗浄装置(以下「洗浄装置」という。)1のロール2の引き出し側に、洗浄装置1に沿って移動可能なロール交換装置3が隣接配置されている。
図1では、ロールとしてストリップを挟んで液切りするリンガーロールの例を示しているが、洗浄装置1にはリンガーロールの他に、図示していないがストリップ表面をブラシでブラッシングするブラシロールも配置されており、本発明においては、ロールはリンガーロール及びブラシロールをいう。
【0026】
洗浄装置1の洗浄容器1a内に配置されているロール2は、下ロール4と上ロール5で構成される。下ロール4及び上ロール5のそれぞれの両端の軸は、洗浄容器1aの両壁面に設けられた開閉可能な開閉扉1bから洗浄容器1aの外へ貫通し、貫通した両端の軸がそれぞれチョック6及びチョック7に回転自在に軸支される。
【0027】
両側のチョック6,7のうち、ロール引き出し側のチョックには、ロール交換装置3のロール移動用台車22に連結するための連結部材8が設けられている。
【0028】
下ロール4の両側のチョック6は、下ロール4及びチョック6を一体的に昇降させる昇降手段である昇降用フレーム9に懸垂・支持される。昇降用フレーム9は、リンガーロール2の上部を取り囲む門型フレームの上フレーム10に垂直に支持されている。
【0029】
上ロール5の両側のチョック7は、下ロール4のチョック6と同様に、上ロール5及びチョック7を一体的に昇降させる昇降手段である昇降用フレーム12に懸垂・支持される。昇降用フレーム12は、リンガーロール2の上部を取り囲む門型フレームの上フレーム13に垂直に支持されている。
【0030】
下ロール4のチョック6の下部には、移動用車輪11が取り付けられるとともに、チョックの6上部に後述する傾斜レール16の上に載置される懸垂・移動用車輪15が設けられている。下ロール4の交換時の出し入れの際に、移動用車輪11はロール交換装置3の固定ロール20及び可動レール21の上を移動し、懸垂・移動用車輪15は傾斜レール16を移動する。
【0031】
上ロール5のチョック7も下ロール4のチョック6と同様に、チョック7の下部には、移動用車輪11が取り付けられるとともに、チョック7の上部に後述する傾斜レール16の上に載置される懸垂・移動用車輪15が設けられている。上ロール5の交換時の出し入れの際に、移動用車輪11はロール交換装置3の固定ロール20及び可動レール21の上を移動し、懸垂・移動用車輪15は傾斜レール16を移動する。
【0032】
図2、
図3において、チョック6,7のそれぞれの懸垂・移動用車輪15は、昇降用フレーム9,12のそれぞれの下端の両側にロール引き出し方向に平行に設けられた小型の傾斜レール16に載置されており、これによりそれぞれのロールチョック6,7が懸垂支持される。
【0033】
傾斜レール16の上面は、水平面16aに次いで上ロール5の引き出し側に下向きに傾斜した傾斜面16bで形成されている。水平面16aの高さは、例えば3mmである。水平面16aにより懸垂・移動用車輪15が転がらずに安定して保持され、傾斜面16bによりロール交換装置3のレール20,21との間の段差が解消し、懸垂・移動用車輪15が傾斜面16bからロール交換装置3のレール20,21への円滑な乗り移りが可能となる。このロール交換装置3のレール20,21への円滑な乗り移りについて、
図7(a)〜(b)の概略図により説明する。
図7(a)〜(b)においては、上ロール5の引き出しの説明に必要な部分を示し、下ロール4や洗浄容器1aは図をシンプルにするために図示していない。
【0034】
図7(a)において、上ロール5の交換の場合に、洗浄容器内に可動レール21を渡設した後、ロール移動用台車22と上ロール5とを連結部材8で結合する。結合後、ロール移動用台車22で上ロール5を引き出し方向(図中左方向)へ移動させると、
図7(b)に示すとおり、上ロール5のチョック上部に設けられている懸垂・移動用車輪15が昇降用フレーム12の下部に設けられている傾斜レール16の傾斜面を下方向へ転動する。上ロール5の引き出し方向への移動が進むと、チョックの下の移動用車輪11とレール20,21との隙間が徐々に小さくなり、レール20,21への上ロール5の円滑な乗り移りが可能となる。
【0035】
図1、
図4、
図7において、洗浄装置1に隣接配置されているロール交換装置3は、ロール交換台車17により、洗浄装置1に沿ってレール上を移動可能となっている。ロール交換台車17には、昇降可能なテレスコ式のレール20,21が上下のロール4,5の交換レベルに合わせて高さが調節できるように昇降可能に設けられている。本実施例では、ロール交換装置3を載せたフレーム18がねじ棒19の回転により昇降可能となっている。
【0036】
テレスコ式のレールは、固定レール20と可動レール21を備え、可動レール21は固定レール20内に沿って摺動して伸縮する。固定レール20の上にはロール移動用台車22が移動可能に配置されている。フレーム18の伸縮は、手動ハンドルで行い、可動レール21はロール移動用台車22にピン等で固定し、ロール移動用台車22を前後進させることにより行うことができる。
【0037】
テレスコ式のレールのため、ロール交換時には外側の固定レール20と内側の可動レール21は、固定レール20にロール引き出し側にある操作側のチョックが載り、可動レール21に奥の駆動側のチョックが載るようにすることにより、洗浄装置1とロール交換装置3との間でレール間の乗り移りをなくしてロール移動を円滑に行うことができるから、ロール交換装置をシンプルな構造にできる。
【0038】
可動レール21の先端の裏面には、先細りの傾斜案内面20a(
図1)を設けると共に、ロールの奥の駆動側の固定台27にも引き出し側に下向きの傾斜を付け、レール20,21が洗浄装置1の両壁面の外側に設けられた固定台27に傾斜によりスムーズに載るようにしてもよい。なお、固定台7には可動レール21が摺動するライナー28を設けことができる。
【0039】
次に、上記構成を備えたロール交換装置のロール交換の工程について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
【0040】
A:下ロールの撤去
(1)工程1
図5(a)において、下ロール4を交換するために、ロール交換装置3のロール交換台車17を洗浄装置1に沿って移動させ、交換する下ロール4の位置に停止させた後、ねじ棒19の回転によりテレスコ式のレール20,21を上下動させて高さを調整して、レール20,21のレベルを下ロール4の交換レベルにセットする。洗浄容器1aの開閉扉1bを開く。
【0041】
昇降手段である昇降用フレーム12により、交換する下ロール4及び両側のチョック6を一体的に昇降させ、チョック6の移動用車輪11の下側に洗浄容器1aの外からテレスコ式の可動レール21が挿入可能な空間部を形成する。
【0042】
(2)工程2
図5(b)において、ロール交換装置3のテレスコ式の固定ロール20及び可動レール21を、図示しない手動ハンドルを回転させて伸ばし、移動用車輪11の下側に形成された空間部に挿入し、さらに可動レール21をロール移動用台車22にピンで固定した後、ロール移動用台車22を固定レール20上で移動させて可動レール21を伸ばして、下ロール4の奥の駆動側の固定台27に載せて渡設する。
【0043】
(3)工程3
図5(c)において、昇降用フレーム9を下げて固定レール20、渡設した可動レール21上に移動用車輪11を降ろす。移動用車輪11を降ろす手順は、上記で
図7(a)〜(c)により説明したとおり、洗浄容器内に可動レール21を渡設した後、ロール移動用台車22と上ロール5とを連結部材8で結合した後、ロール移動用台車22で上ロール5を引き出し方向へ移動させ、チョック上部に設けられている懸垂・移動用車輪15が傾斜レール16の傾斜面を下方向へ転動し、移動用車輪11がレール20,21へ乗り移る。
このとき、操作側のチョック6の車輪11は固定レール20に乗り、駆動側のチョック6の車輪11は可動レール21に載る。
【0044】
(4)工程4
次いで、
図5(d)に示すように、ロール移動用台車22を固定ロール20上で後退させることにより、下ロール4とチョック6を一体的に移動用車輪11により固定ロール20と可動レール21上を移動させることにより洗浄容器1aの外へ引き出し、ロール交換台車17へ移し替える。
【0045】
B:新下ロールの据え付け
(1)工程5
前記交換台車で引き出した旧ロールと新ロールとの積載を交換する。
図6(e)において、引き出された下ロール4をロール交換装置3からクレーン26で搬出後、新品の下ロールをクレーン26で搬入する。
図6(f)において、チョック6の操作側の移動車輪11は固定レール20に載せ、駆動側の移動車輪11は可動レール21に載せられる。なお、可動レール21は洗浄容器1a内に残っている。
ロール移動用台車22を新品の下ロール4の連結部材8に連結する。
【0046】
(2)工程6
図6(g)に示すように、新下ロール4とチョック6を一体的に移動用車輪11によりレール20,21上を洗浄容器1aへ向かって移動させ、洗浄容器1a内へ挿入する。
【0047】
(3)工程7
洗浄容器1a内への新下ロール4の挿入の際に、新下ロール4のチョック6の上部に設けている懸垂・移動用車輪15を傾斜レール16へ懸垂させ(
図2参照)、チョック6の下部に設けている移動用車輪11を昇降用フレーム9で上げることにより、レール20,21上から離す。
【0048】
(4)工程8
図6(h)に示すように、可動レール21をロール移動用台車22にピンで固定し、動用台車22を後退させて可動レール21を縮めて洗浄容器1a外へ出し、固定ロール20内に戻す。その後、洗浄容器1aの開閉扉1bを閉める。
【0049】
C:上ロールの交換
上ロールの撤去及び新上ロールの据え付けについても、下ロールの前記工程1〜工程8と同じ手順により行うので、その説明は省略する。