特許第5743145号(P5743145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5743145金属ストリップの処理装置のロール交換装置及びロール交換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743145
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】金属ストリップの処理装置のロール交換装置及びロール交換方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 31/10 20060101AFI20150611BHJP
   B21B 31/08 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   B21B31/10 B
   B21B31/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-103016(P2011-103016)
(22)【出願日】2011年5月2日
(65)【公開番号】特開2012-232332(P2012-232332A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2013年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390022873
【氏名又は名称】NSプラント設計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082164
【弁理士】
【氏名又は名称】小堀 益
(74)【代理人】
【識別番号】100105577
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 隆人
(72)【発明者】
【氏名】郡 真吾
(72)【発明者】
【氏名】實松 史朗
(72)【発明者】
【氏名】宮本 哲郎
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−028395(JP,A)
【文献】 特開平10−128414(JP,A)
【文献】 特開2004−298904(JP,A)
【文献】 実開昭61−190303(JP,U)
【文献】 実開昭63−104365(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 31/08,45/02
C23G 1/00− 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器の両壁を貫通して上下にロールを前記処理容器の内部に設け、前記ロールの両側をそれぞれ軸支するチョックを前記処理容器の両壁の外部に設け、前記ロール及び前記チョックを一体的に昇降させる昇降手段により昇降自在に前記チョックを支持する金属ストリップの処理装置のロール交換装置において、
一方の側の前記昇降手段の下部に上面が前記処理容器の外側に下向きの傾斜面を有する傾斜レールを設けると共に、他方の側の昇降手段の下部に上面が前記処理容器の中央側に下向きの傾斜面を有する傾斜レールを設け、前記チョックの上部に前記傾斜レール上に載置する懸垂・移動用車輪を設けると共に、前記チョックの下部に移動用車輪を設け、前記ロールの交換時に前記昇降手段により前記ロールと一体的に昇降させた前記チョックの前記移動用車輪の下側に前記処理容器の外から挿入可能なテレスコ式のレールを昇降可能に搭載したロール交換台車を前記金属ストリップの処理装置に隣接配置したことを特徴とする金属ストリップの処理装置のロール交換装置。
【請求項2】
前記処理容器の両壁面に前記テレスコ式のレールの先端部が貫通可能な開閉扉を設けると共に、前記処理容器の前記両壁面の外側には前記テレスコ式のレールが固定される固定台を各々設けたことを特徴とする請求項1記載の金属ストリップの処理装置のロール交換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属ストリップの処理装置のロール交換装置による下記工程1〜工程8からなることを特徴とする金属ストリップの処理装置のロール交換方法。
工程1:
前記昇降手段にて交換する前記ロール及び前記チョックを一体的に昇降させ、前記チョックの前記移動用車輪の下側に前記処理容器の外から前記テレスコ式のレールが挿入可能な空間部を形成する。
工程2:
前記処理容器の外から前記移動用車輪の下側に形成された前記空間部にテレスコ式のレールを伸ばして挿入し、渡設する。
工程3:
渡設した前記テレスコ式のレール上に前記移動用車輪を載置する。
工程4:
前記ロールと前記チョックを一体的に前記移動用車輪にて前記テレスコ式のレール上を移動させて前記処理容器から外へ引き出し、前記交換台車へ移す。
工程5:
前記交換台車に引き出した旧ロールを新ロールと交換する。
工程6:
前記新ロールと前記チョックを一体的に前記移動用車輪により前記テレスコ式のレール上を移動させて処理容器内へ挿入する。
工程7:
前記新ロールの前記チョックの上部に設けている前記懸垂・移動用車輪を前記傾斜レールへ懸垂させ、前記チョックの下部に設けている前記移動用車輪を前記テレスコ式のレール上から離す。
工程8:
前記テレスコ式のレールを縮めて前記処理容器外へ出す。
【請求項4】
前記工程3が、前記ロールを前記処理容器の外側に引き出すにつれ前記傾斜レールに沿って前記懸垂・移動用車輪が下り、徐々に前記ロールの下に挿入された前記テレスコ式のレールに前記チョック下部に設けた前記移動用車輪が接触し、更に前記ロールを引き出すことにより前記移動用車輪が前記テレスコ式のレール上に載置されることを特徴とする請求項3記載の金属ストリップの処理装置のロール交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属ストリップ表面を洗浄するストリップ洗浄装置の洗浄容器内に配置されているブラシロール及びリンガーロールなどのロール交換装置及びロール交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷間圧延処理した鋼のストリップの表面には、圧延油等の油脂分、金属粉末あるいはごみ等の異物が付着しているので、連続焼鈍処理や亜鉛めっき処理等をする前に、これらの異物を除去するためにストリップの表面がストリップ洗浄装置に通されて洗浄される(引用文献1)。
【0003】
前記引用文献1においては、ストリップは、アルカリ洗浄槽内でスプレーヘッダーから噴射されたアルカリ溶液によって表面の油分、鉄粉等の付着物が濡らされ、ストリップと付着物の界面にアルカリ溶液が浸透して付着力を緩める。さらに、ストリップ表面の油分等とアルカリ溶液は、ブラシロールによる撹拌をうけて十分に鹸化反応させられる。アルカリ洗浄されたストリップは、リンガーロールで表面上のアルカリ溶液が絞り取られた後、温水粗洗浄槽内においてスプレーヘッダーから噴霧される温水とブラシロールによるリンス粗洗浄を受けたのち、高圧温水洗浄槽内でスプレーノズルから噴射される昇圧された高圧温水の水圧によって汚れの残留物が除去されるものである。
【0004】
従来のストリップ洗浄装置は、洗浄容器内のブラシロールあるいはリンガーロールの下ロールと上ロールを交換するために洗浄容器内に下ロール交換用レール及び上ロール交換用レールが設けられている(引用文献2参照)。
【0005】
図8に示す従来の金属ストリップ洗浄装置の一例において、洗浄容器1a内に配置されている水平のリンガーロールあるいはブラシロールは、下ロール4と上ロール5から構成されている。洗浄容器1aの開閉扉1bから外側に出ている下ロール4の両端の軸は、チョック6に回転自在に軸支され、上ロール5の両端の軸はチョック7に回転自在に軸支される。
【0006】
上下のロール4,5の上部を跨ぐ門型フレームに上フレーム10,13に、洗浄容器1aの内部にロール軸方向に横切って下ロール交換用レール23及び上ロール交換用レール24が固定されている。
【0007】
下ロール4の両端を軸支するそれぞれのチョック6の下面には車輪11が取り付けられ、この車輪11は、ロール交換時に洗浄タンク内部を横切って配置されている下ロール交換用レール23上に載って移動可能となっており、チョック6付き下ロール4が下ロール交換用レール23に支持されることになる。
【0008】
上ロール5の両端を軸支するそれぞれのチョック7の上部には、図示していない車輪が取り付けられ、この車輪が、洗浄タンク内部を横切って配置されている上ロール交換用レール24の上面に載ってロール交換時にロール引き出し方向に移動可能となっており、チョック7付き上ロール5が上ロール交換用レール24上に移動可能に懸垂支持されることになる。また、チョック7の下面にも車輪13が取り付けられ、この車輪13は、ロール交換時に、ロール交換台車のレール25に載り移る。
【0009】
以上の構成において、ロールを長期間使用していると摩耗するため、定期的に新品と交換する必要がある。その交換手順について説明する。
【0010】
下ロール4の交換は、下ロール4をチョック6付きのままで、それぞれ洗浄容器1aの内部に配置されている下ロール交換用レール23の上をチョック6に取り付けられている車輪11により移動させる。下ロール交換用レール23はストリップ洗浄装置の横に待機しているロール交換台車上のレール25に繋がれているので、下ロール4は下ロール交換用レール23からロール交換台車上のレール25に乗り移ることにより取り出される。
【0011】
取り出した下ロール4をロール交換台車上からクレーンで搬出した後、ロールチョック付きの新品の下ロールを搬入し、ロール交換台車上のレール25上に載せて洗浄容器1aに向けて移動させ、下ロール交換用レール23の上に乗り移すことにより洗浄容器1a内に押し込んで交換される。
【0012】
上ロール5についても、前述の下ロール4の交換と同じ手順により、上ロール5を上ロール交換用レール24からロール交換台車上のレール25に移動させて搬出し、ロール交換台車に搬入された新品の上ロールをロール交換台車から上ロール交換用レール24へ移し替えて交換する。上ロールの交換時には、ロール交換台車上のレールは上ロール交換用レールレベルまで上昇させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開平8−296073号公報
【特許文献2】特開2004−298904号公報号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の金属ストリップの処理装置においては、下ロール交換用レール及び上ロール交換用レールが洗浄容器の内部に配置されているため、腐食によりロール交換用レール表面が粗くなってロール交換がスムーズにできなくなるという問題があった。
【0015】
また、ロール交換台車のレールと洗浄容器の内部のロール交換用レールとの間に繋ぎ部があるため、繋ぎ部の隙間や段差などによりロール交換がスムーズにできない問題もあった。
【0016】
そこで、本発明は、金属ストリップの処理装置において、処理容器の内部にロール交換用レールを設けることなく、ロールの交換が可能な金属ストリップの処理装置のロール交換装置及びロール交換方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願の請求項1の発明は、処理容器の両壁を貫通して上下にロールを前記処理容器の内部に設け、前記ロールの両側をそれぞれ軸支するチョックを前記処理容器の両壁の外部に設け、前記ロール及び前記チョックを一体的に昇降させる昇降手段により昇降自在に前記チョックを支持する金属ストリップの処理装置のロール交換装置において、一方の側の前記昇降手段の下部に上面が前記処理容器の外側に下向きの傾斜面を有する傾斜レールを設けると共に、他方の側の昇降手段の下部に上面が前記処理容器の中央側に下向きの傾斜面を有する傾斜レールを設け、前記チョックの上部に前記傾斜レール上に載置する懸垂・移動用車輪を設けると共に、前記チョックの下部に移動用車輪を設け、前記ロールの交換時に前記昇降手段により前記ロールと一体的に昇降させた前記チョックの前記移動用車輪の下側に前記処理容器の外から挿入可能なテレスコ式のレールを昇降可能に搭載したロール交換台車を前記金属ストリップの処理装置に隣接配置したことを特徴とする金属ストリップの処理装置のロール交換装置である。
【0018】
本願の請求項2の発明は、前記処理容器の両壁面に前記テレスコ式のレールの先端部が貫通可能な開閉扉を設けると共に、前記処理容器の前記両壁面の外側には前記テレスコ式のレールが固定される固定台を各々設けたことを特徴とする請求項1記載の金属ストリップ処理装置のロール交換装置である。
【0019】
本願の請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の金属ストリップの処理装置のロール交換装置による下記工程1〜工程8からなることを特徴とする金属ストリップの処理装置のロール交換方法である。工程1:前記昇降手段にて交換する前記ロール及び前記チョックを一体的に昇降させ、前記チョックの前記移動用車輪の下側に前記処理容器の外から前記テレスコ式のレールが挿入可能な空間部を形成する。工程2:
前記処理容器の外から前記移動用車輪の下側に形成された前記空間部にテレスコ式のレールを伸ばして挿入し、渡設する。工程3: 渡設した前記テレスコ式のレール上に前記移動用車輪を載置する。工程4:前記ロールと前記チョックを一体的に前記移動用車輪にて前記テレスコ式のレール上を移動させて前記処理容器から外へ引き出し、前記交換台車へ移す。工程5:前記交換台車に引き出した旧ロールを新ロールと交換する。工程6:前記新ロールと前記チョックを一体的に前記移動用車輪により前記テレスコ式のレール上を移動させて処理容器内へ挿入する。工程7:前記新ロールの前記チョックの上部に設けている前記懸垂・移動用車輪を前記傾斜レールへ懸垂させ、前記チョックの下部に設けている前記移動用車輪を前記テレスコ式のレール上から離す。工程8:前記テレスコ式のレールを縮めて前記処理容器外へ出す。
【0020】
本願の請求項4の発明は、前記工程3が、前記ロールを前記処理容器の外側に引き出すにつれ前記傾斜レールに沿って前記懸垂・移動用車輪が下り、徐々に前記ロールの下に挿入された前記テレスコ式のレールに前記チョック下部に設けた前記移動用車輪が接触し、更に前記ロールを引き出すことにより前記移動用車輪が前記テレスコ式のレール上に載置されることを特徴とする請求項3記載の金属ストリップの処理装置のロール交換方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、処理容器内にレールがロール交換時のみ出入りするだけで常時設置されていないために操業時でのレールの腐食がなくなるので、ロール交換がスムーズにできる。また、処理容器内にレールがないため、スレッディングが容易となる。
【0022】
また、処理容器の両壁面の外側にレールが固定される固定台を各々設けることによりレールの撓みを抑制することが可能となる。また、開閉扉を設けることにより、洗浄液の容器外への飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の金属ストリップの処理装置のロール交換装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図2】(a)は本発明の水平ロールの交換装置の上ロールの支持構造を示す概略図、(b)は傾斜レールを示す図である。
図3】(a)は本発明におけるチョックの懸垂支持構造の側面概略図、(b)は傾斜レール部分の拡大図である。
図4】本発明のロール交換装置を示し、(a)は固定レールと可動レールの配置を示す図、(b)は可動レールが伸びた状態での概略図である。
図5】本発明による下ロールの引き出し工程を示す説明図である。
図6】本発明による新下ロールの据え付け工程を示す説明図である。
図7】本発明によるロール引き出しの際にロールが傾斜レールからロール交換装置のレールへの乗り移りの状態を示し、(a)は引き出し前、(b)は懸垂・移動用車輪の傾斜レールでの移動状態、(c)は乗り移り後の状態を示す図である。
図8】従来の金属ストリップ洗浄装置のロール交換装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0025】
図1図2において、例えば金属ストリップ洗浄装置(以下「洗浄装置」という。)1のロール2の引き出し側に、洗浄装置1に沿って移動可能なロール交換装置3が隣接配置されている。図1では、ロールとしてストリップを挟んで液切りするリンガーロールの例を示しているが、洗浄装置1にはリンガーロールの他に、図示していないがストリップ表面をブラシでブラッシングするブラシロールも配置されており、本発明においては、ロールはリンガーロール及びブラシロールをいう。
【0026】
洗浄装置1の洗浄容器1a内に配置されているロール2は、下ロール4と上ロール5で構成される。下ロール4及び上ロール5のそれぞれの両端の軸は、洗浄容器1aの両壁面に設けられた開閉可能な開閉扉1bから洗浄容器1aの外へ貫通し、貫通した両端の軸がそれぞれチョック6及びチョック7に回転自在に軸支される。
【0027】
両側のチョック6,7のうち、ロール引き出し側のチョックには、ロール交換装置3のロール移動用台車22に連結するための連結部材8が設けられている。
【0028】
下ロール4の両側のチョック6は、下ロール4及びチョック6を一体的に昇降させる昇降手段である昇降用フレーム9に懸垂・支持される。昇降用フレーム9は、リンガーロール2の上部を取り囲む門型フレームの上フレーム10に垂直に支持されている。
【0029】
上ロール5の両側のチョック7は、下ロール4のチョック6と同様に、上ロール5及びチョック7を一体的に昇降させる昇降手段である昇降用フレーム12に懸垂・支持される。昇降用フレーム12は、リンガーロール2の上部を取り囲む門型フレームの上フレーム13に垂直に支持されている。
【0030】
下ロール4のチョック6の下部には、移動用車輪11が取り付けられるとともに、チョックの6上部に後述する傾斜レール16の上に載置される懸垂・移動用車輪15が設けられている。下ロール4の交換時の出し入れの際に、移動用車輪11はロール交換装置3の固定ロール20及び可動レール21の上を移動し、懸垂・移動用車輪15は傾斜レール16を移動する。
【0031】
上ロール5のチョック7も下ロール4のチョック6と同様に、チョック7の下部には、移動用車輪11が取り付けられるとともに、チョック7の上部に後述する傾斜レール16の上に載置される懸垂・移動用車輪15が設けられている。上ロール5の交換時の出し入れの際に、移動用車輪11はロール交換装置3の固定ロール20及び可動レール21の上を移動し、懸垂・移動用車輪15は傾斜レール16を移動する。
【0032】
図2図3において、チョック6,7のそれぞれの懸垂・移動用車輪15は、昇降用フレーム9,12のそれぞれの下端の両側にロール引き出し方向に平行に設けられた小型の傾斜レール16に載置されており、これによりそれぞれのロールチョック6,7が懸垂支持される。
【0033】
傾斜レール16の上面は、水平面16aに次いで上ロール5の引き出し側に下向きに傾斜した傾斜面16bで形成されている。水平面16aの高さは、例えば3mmである。水平面16aにより懸垂・移動用車輪15が転がらずに安定して保持され、傾斜面16bによりロール交換装置3のレール20,21との間の段差が解消し、懸垂・移動用車輪15が傾斜面16bからロール交換装置3のレール20,21への円滑な乗り移りが可能となる。このロール交換装置3のレール20,21への円滑な乗り移りについて、図7(a)〜(b)の概略図により説明する。図7(a)〜(b)においては、上ロール5の引き出しの説明に必要な部分を示し、下ロール4や洗浄容器1aは図をシンプルにするために図示していない。
【0034】
図7(a)において、上ロール5の交換の場合に、洗浄容器内に可動レール21を渡設した後、ロール移動用台車22と上ロール5とを連結部材8で結合する。結合後、ロール移動用台車22で上ロール5を引き出し方向(図中左方向)へ移動させると、図7(b)に示すとおり、上ロール5のチョック上部に設けられている懸垂・移動用車輪15が昇降用フレーム12の下部に設けられている傾斜レール16の傾斜面を下方向へ転動する。上ロール5の引き出し方向への移動が進むと、チョックの下の移動用車輪11とレール20,21との隙間が徐々に小さくなり、レール20,21への上ロール5の円滑な乗り移りが可能となる。
【0035】
図1図4図7において、洗浄装置1に隣接配置されているロール交換装置3は、ロール交換台車17により、洗浄装置1に沿ってレール上を移動可能となっている。ロール交換台車17には、昇降可能なテレスコ式のレール20,21が上下のロール4,5の交換レベルに合わせて高さが調節できるように昇降可能に設けられている。本実施例では、ロール交換装置3を載せたフレーム18がねじ棒19の回転により昇降可能となっている。
【0036】
テレスコ式のレールは、固定レール20と可動レール21を備え、可動レール21は固定レール20内に沿って摺動して伸縮する。固定レール20の上にはロール移動用台車22が移動可能に配置されている。フレーム18の伸縮は、手動ハンドルで行い、可動レール21はロール移動用台車22にピン等で固定し、ロール移動用台車22を前後進させることにより行うことができる。
【0037】
テレスコ式のレールのため、ロール交換時には外側の固定レール20と内側の可動レール21は、固定レール20にロール引き出し側にある操作側のチョックが載り、可動レール21に奥の駆動側のチョックが載るようにすることにより、洗浄装置1とロール交換装置3との間でレール間の乗り移りをなくしてロール移動を円滑に行うことができるから、ロール交換装置をシンプルな構造にできる。
【0038】
可動レール21の先端の裏面には、先細りの傾斜案内面20a(図1)を設けると共に、ロールの奥の駆動側の固定台27にも引き出し側に下向きの傾斜を付け、レール20,21が洗浄装置1の両壁面の外側に設けられた固定台27に傾斜によりスムーズに載るようにしてもよい。なお、固定台7には可動レール21が摺動するライナー28を設けことができる。
【0039】
次に、上記構成を備えたロール交換装置のロール交換の工程について、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0040】
A:下ロールの撤去
(1)工程1
図5(a)において、下ロール4を交換するために、ロール交換装置3のロール交換台車17を洗浄装置1に沿って移動させ、交換する下ロール4の位置に停止させた後、ねじ棒19の回転によりテレスコ式のレール20,21を上下動させて高さを調整して、レール20,21のレベルを下ロール4の交換レベルにセットする。洗浄容器1aの開閉扉1bを開く。
【0041】
昇降手段である昇降用フレーム12により、交換する下ロール4及び両側のチョック6を一体的に昇降させ、チョック6の移動用車輪11の下側に洗浄容器1aの外からテレスコ式の可動レール21が挿入可能な空間部を形成する。
【0042】
(2)工程2
図5(b)において、ロール交換装置3のテレスコ式の固定ロール20及び可動レール21を、図示しない手動ハンドルを回転させて伸ばし、移動用車輪11の下側に形成された空間部に挿入し、さらに可動レール21をロール移動用台車22にピンで固定した後、ロール移動用台車22を固定レール20上で移動させて可動レール21を伸ばして、下ロール4の奥の駆動側の固定台27に載せて渡設する。
【0043】
(3)工程3
図5(c)において、昇降用フレーム9を下げて固定レール20、渡設した可動レール21上に移動用車輪11を降ろす。移動用車輪11を降ろす手順は、上記で図7(a)〜(c)により説明したとおり、洗浄容器内に可動レール21を渡設した後、ロール移動用台車22と上ロール5とを連結部材8で結合した後、ロール移動用台車22で上ロール5を引き出し方向へ移動させ、チョック上部に設けられている懸垂・移動用車輪15が傾斜レール16の傾斜面を下方向へ転動し、移動用車輪11がレール20,21へ乗り移る。
このとき、操作側のチョック6の車輪11は固定レール20に乗り、駆動側のチョック6の車輪11は可動レール21に載る。
【0044】
(4)工程4
次いで、図5(d)に示すように、ロール移動用台車22を固定ロール20上で後退させることにより、下ロール4とチョック6を一体的に移動用車輪11により固定ロール20と可動レール21上を移動させることにより洗浄容器1aの外へ引き出し、ロール交換台車17へ移し替える。
【0045】
B:新下ロールの据え付け
(1)工程5
前記交換台車で引き出した旧ロールと新ロールとの積載を交換する。
図6(e)において、引き出された下ロール4をロール交換装置3からクレーン26で搬出後、新品の下ロールをクレーン26で搬入する。
図6(f)において、チョック6の操作側の移動車輪11は固定レール20に載せ、駆動側の移動車輪11は可動レール21に載せられる。なお、可動レール21は洗浄容器1a内に残っている。
ロール移動用台車22を新品の下ロール4の連結部材8に連結する。
【0046】
(2)工程6
図6(g)に示すように、新下ロール4とチョック6を一体的に移動用車輪11によりレール20,21上を洗浄容器1aへ向かって移動させ、洗浄容器1a内へ挿入する。
【0047】
(3)工程7
洗浄容器1a内への新下ロール4の挿入の際に、新下ロール4のチョック6の上部に設けている懸垂・移動用車輪15を傾斜レール16へ懸垂させ(図2参照)、チョック6の下部に設けている移動用車輪11を昇降用フレーム9で上げることにより、レール20,21上から離す。
【0048】
(4)工程8
図6(h)に示すように、可動レール21をロール移動用台車22にピンで固定し、動用台車22を後退させて可動レール21を縮めて洗浄容器1a外へ出し、固定ロール20内に戻す。その後、洗浄容器1aの開閉扉1bを閉める。
【0049】
C:上ロールの交換
上ロールの撤去及び新上ロールの据え付けについても、下ロールの前記工程1〜工程8と同じ手順により行うので、その説明は省略する。
【符号の説明】
【0050】
1:洗浄装置
1a:洗浄容器
1b:開閉扉
2:水平ロール
3:ロール交換装置
4:下ロール
5:上ロール
6:チョック
7:チョック
8:連結部材
9:昇降用フレーム
10:上フレーム
11:移動用車輪
12:昇降用フレーム
13:上フレーム
15:懸垂・移動用車輪
16:傾斜レール
17:ロール交換台車
18:フレーム
19:ねじ棒
20:固定レール
20a:傾斜案内面
21:可動レール
22:ロール移動用台車
23:下ロール交換用レール
24:上ロール交換用レール
25:ロール交換台車のレール
26:クレーン
27:固定台
28:ライナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8