(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各一端が共通の送り出し母線に接続された2つの配電線の各他端を連系開閉器により連系してなるループ状配電系統のノード電圧分布及び線路潮流分布を、コンピュータシステムにより計算する潮流計算方法において、
前記コンピュータシステムの演算処理手段が、
記憶装置から前記ループ状配電系統、前記連系開閉器及び仮想電源モデルの情報を読み出し、開状態とした前記連系開閉器の両端に前記仮想電源モデルをそれぞれ接続することにより、各配電線の前記送り出し母線側のノードを先頭ノードとし、かつ、前記仮想電源モデル側のノードを末端ノードとして前記ループ状配電系統を放射状配電系統に置換すると共に、置換後の前記放射状配電系統を前記記憶装置に記憶させ、
前記記憶装置から読み出した前記放射状配電系統を対象として、前記連系開閉器の両端電圧及び位相角がそれぞれ等しくなるように前記仮想電源モデルの有効電力、無効電力を計算し、少なくとも前記先頭ノードの電圧及びその位相角、前記末端ノードの電圧及びその位相角、前記仮想電源モデルの有効電力、無効電力を用いて、前記ループ状配電系統におけるノード電圧分布及び線路潮流分布を放射状配電系統用潮流計算方法により計算することを特徴とするループ状配電系統用潮流計算方法。
各一端が共通の送り出し母線に接続された2つの配電線の各他端を連系開閉器により連系してなるループ状配電系統のノード電圧分布及び線路潮流分布を、コンピュータシステムにより計算する潮流計算装置において、
前記コンピュータシステムは、
演算処理装置と、この演算処理装置との間でデータを入出力するための入力装置及び出力装置と、記憶装置とを備え、
前記記憶装置には、少なくとも前記ループ状配電系統、前記連系開閉器及び仮想電源モデルの情報が記憶され、
前記演算処理装置は、
前記記憶装置から前記ループ状配電系統、前記連系開閉器及び仮想電源モデルの情報を読み出し、開状態とした前記連系開閉器の両端に前記仮想電源モデルをそれぞれ接続することにより、各配電線の前記送り出し母線側のノードを先頭ノード、前記仮想電源モデル側のノードを末端ノードとして前記ループ状配電系統を放射状配電系統に置換する系統置換手段と、
置換された前記放射状配電系統を対象として、前記連系開閉器の両端電圧及び位相角がそれぞれ等しくなるように前記仮想電源モデルの有効電力、無効電力を最適化演算により算出する最適化手段と、
前記記憶装置に記憶された前記先頭ノードの電圧及びその位相角、前記末端ノードの電圧及びその位相角、前記最適化手段により算出された前記仮想電源モデルの有効電力、無効電力を少なくとも用いて、前記ループ状配電系統におけるノード電圧分布及び線路潮流分布を放射状配電系統用潮流計算方法により計算する潮流計算手段と、
を有することを特徴とするループ状配電系統用潮流計算装置。
【背景技術】
【0002】
現在、国内配電系統は基本的に放射状系統により運用されているが、今後、太陽光発電装置等の分散型電源が大量に導入されることが予想される。その場合、多数の分散型電源が連系された配電線の電圧上昇問題を解決する対策の一つとして、ループ状系統による運用が考えられている。
電力系統の電圧分布状態及び線路潮流状態を計算する代表的な潮流計算方法としては、NR法(Newton Raphson Method)潮流計算方法があり、ループ状系統により運用する送電系統の潮流計算に広く用いられている。しかし、送電系統に比べてインピーダンスのR/X(抵抗/リアクタンス)比が大きい配電系統にNR法潮流計算方法を適用すると、解が収束しない場合があることが知られている。
【0003】
そこで、特許文献1には、放射状配電系統の計算に特化した高速な配電系統用潮流計算方法が提案されている。この潮流計算方法を放射状配電系統に適用した場合、NR法潮流計算方法と比較して、計算速度を約8倍、高速化できる利点がある。
しかしながら、この放射状系統用潮流計算方法は、その計算アルゴリズム上、ループ状配電系統には適用できないという問題がある。
【0004】
一方、非特許文献1には、特許文献1に記載されているものと同等なアルゴリズムによる放射状配電系統用潮流計算方法を用いて、ループ状配電系統を対象とした潮流計算を可能とする方法が記載されている。
図6は、非特許文献1の潮流計算方法による系統モデルの置換前後の説明図であり、100は配電用変圧器に相当する電源(電圧をV
0、位相角をθ
0とする)、200は送り出し母線、300は電源100に接続されたループ状の配電線、310はループ点、0〜9は負荷が接続される配電線300上のノードを示している。
【0005】
非特許文献1では、
図6上段に示すループ状配電系統において、送り出し母線200のノード0を二分割して
図6下段に示す2個のノード0,9を形成することにより、ループ状配電系統を放射状配電系統に置換する。そして、電源100側のノードを送り出しノード0、末端のノードを末端ノード9とし、末端ノード9に仮想電流源モデル101を接続する。
その際、分割した送り出しノード0と末端ノード9とは本来、同一ノードであり、両ノードの電圧V
0及び位相角θ
0がそれぞれ等しいことを利用して、末端ノード9に接続した仮想電流源モデル101の出力電流を調整することにより、特許文献1に係る放射状配電系統用潮流計算方法と同等のアルゴリズムを用いてループ状配電系統の潮流計算を可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1に記載された潮流計算方法は、前述したように送り出しノードを二分割してノード0,9の電圧及び位相角がそれぞれ等しいことを利用しているため、計算対象となるループ状配電系統は、電源(配電用変圧器)に接続される同一バンク内の配電線ループに限定される。
また、非特許文献1では、
図7に示すように、ループ対象となる2本の配電線301,302を1本の配電線モデル303に置換して潮流計算を行っている。このため、配電線301,302内に直列形電圧制御装置としての自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)SVR1,SVR2が存在する場合、本来であれば配電線末端方向(末端ノード9方向)に向かうはずのSVR2の電圧検出点(電圧補償範囲)が、放射状配電系統への置換によりノード0側(SVR2の二次側)になってしまう。
このため、ループ状配電系統を置換した放射状配電系統により潮流計算を実施する場合、SVR2の電圧検出点をループ点ノード9側(SVR2の一次側)に変更したモデルとする必要がある。
【0009】
一方、
図8に示すようにループ点310がSVR1,SVR2の一次側にある場合には、非特許文献1の潮流計算方法によりループ状配電系統を放射状配電系統に置換すると、SVRの電圧検出点は置換前と同様にSVRの二次側にある。
このように、非特許文献1による潮流計算方法では、計算対象のループ状配電系統にSVR等の直列形電圧制御機器が存在する場合、放射状配電系統へ置換するに当たり、ループ点の位置によってSVRモデルを変更しなければならないという煩雑さがあった。
【0010】
そこで、本発明の解決課題は、非特許文献1のように送り出しノードを二分割する方法によらず、ループ点の連系開閉器を開状態としてその両端に仮想電源モデルを接続することにより、放射状配電系統用の潮流計算方法を用いてループ状配電系統のノード電圧分布及び線路潮流分布を計算可能としたループ状配電系統用潮流計算方法及び潮流計算装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係るループ状配電系統用潮流計算方法は、一端が電源に接続された2つの配電線の各他端を連系する連系開閉器を閉じて構成されたループ状配電系統の各ノードの電圧分布及び線路潮流分布を、コンピュータシステムにより計算する潮流計算方法において、
前記コンピュータシステムの演算処理手段が、
記憶装置から前記ループ状配電系統、前記連系開閉器及び仮想電源モデルの情報を読み出し、開状態とした前記連系開閉器の両端に前記仮想電源モデルをそれぞれ接続することにより、各配電線の前記電源側のノードを先頭ノードとし、かつ、前記仮想電源モデル側のノードを末端ノードとして前記ループ状配電系統を放射状配電系統に置換すると共に、置換後の前記放射状配電系統を前記記憶装置に記憶させ、
前記記憶装置から読み出した前記放射状配電系統を対象として、前記連系開閉器の両端電圧及び位相角がそれぞれ等しくなるように前記仮想電源モデルの有効電力、無効電力を計算し、少なくとも前記先頭ノードの電圧及びその位相角、前記末端ノードの電圧及びその位相角、前記仮想電源モデルの有効電力、無効電力を用いて、前記ループ状配電系統における各ノードの電圧分布及び線路潮流分布を放射状配電系統用潮流計算方法により計算するものである。
なお、請求項2に記載するように、前記演算処理手段は、仮想電源モデルの有効電力、無効電力を非線形計画法により計算することが望ましい。
【0012】
また、請求項3に係るループ状配電系統用潮流計算装置は、各一端が共通の送り出し母線に接続された2つの配電線の各他端を連系開閉器により連系してなるループ状配電系統のノード電圧分布及び線路潮流分布を、コンピュータシステムにより計算する潮流計算装置において、
前記コンピュータシステムは、
演算処理装置と、この演算処理装置との間でデータを入出力するための入力装置及び出力装置と、記憶装置とを備え、
前記記憶装置には、少なくとも前記ループ状配電系統、前記連系開閉器及び仮想電源モデルの情報が記憶され、
前記演算処理装置は、
前記記憶装置から前記ループ状配電系統、前記連系開閉器及び仮想電源モデルの情報を読み出し、開状態とした前記連系開閉器の両端に前記仮想電源モデルをそれぞれ接続することにより、各配電線の前記送り出し母線側のノードを先頭ノード、前記仮想電源モデル側のノードを末端ノードとして前記ループ状配電系統を放射状配電系統に置換する系統置換手段と、
置換された前記放射状配電系統を対象として、前記連系開閉器の両端電圧及び位相角がそれぞれ等しくなるように前記仮想電源モデルの有効電力、無効電力を最適化演算により算出する最適化手段と、
前記記憶装置に記憶された前記先頭ノードの電圧及びその位相角、前記末端ノードの電圧及びその位相角、前記最適
化手段により算出された前記仮想電源モデルの有効電力、無効電力を少なくとも用いて、前記ループ状配電系統におけるノード電圧分布及び線路潮流分布を放射状配電系統用潮流計算方法により計算する潮流計算手段と、
を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ループ状配電系統のループ点の連系開閉器を開状態として仮想電源モデルを接続することによりループ状配電系統を放射状配電系統に置換し、この放射状配電系統に従来の放射状配電系統用潮流計算方法を適用することによってループ状配電系統のノード電圧分布及び線路潮流分布を計算することができる。
また、本発明によれば、配電線上にSVR等の直列形電圧制御機器が存在する場合でも、放射状配電系統への置換に伴って電圧検出点が変わってしまう不都合がなく、ループ状配電系統のループ点の位置に左右されずに潮流計算を行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、
図1は、この実施形態による配電系統モデルの置換前後の説明図である。
図1において、前記同様に100は配電用変圧器に相当する電源(電圧をV
0、位相角をθ
0とする)、200は送り出し母線、300
1,300
2は各一端が送り出し母線200に接続された配電線、310はループ点、0〜8は配電線300
1,300
2上のノードである。
配電線300
1,300
2は、常時開の連系開閉器(図示せず)を閉じることによりループ点310にて連系され、配電系統全体がループ状配電系統として運用されている。
【0016】
この実施形態では、
図1上段におけるループ点310の連系開閉器の両端電圧及び位相角が等しく、ループ点310の一端に流入する有効電力、無効電力とループ点310の他端から流出する有効電力、無効電力とがそれぞれ等しいことを利用する。そして、ループ点310の連系開閉器を開状態としたままで、
図1下段に示す如く、連系開閉器の両端に仮想電源モデルK
G1,K
G2をそれぞれ接続し、連系開閉器の両端電圧及び位相角が等しくなるように、仮想電源モデルK
G1,K
G2の有効電力出力、無効電力出力を調整する。
これにより、
図1上段のループ状配電系統をループ点310にて切り離し、
図1下段の放射状配電系統に置換することにより、ループ状配電系統におけるノード電圧分布及び有効電力、無効電力等の線路潮流分布を計算可能とする。
【0017】
以下、本実施形態による具体的な潮流計算方法について説明する。
図1下段において、P
KGloop11,Q
KGloop11は、ループ点310に流入する有効電力、無効電力であって、仮想電源モデルK
G1の有効電力、無効電力に等しく、P
KGloop12,Q
KGloop12は、ループ点310から流出する有効電力、無効電力であって、仮想電源モデルK
G2の有効電力、無効電力に等しい。
また、V
KGloop11,θ
KGloop11は仮想電源モデルK
G1の接続ノードの電圧及び位相角(送り出し電源100を基準)であり、V
KGloop12,θ
KGloop12は仮想電源モデルK
G2の接続ノードの電圧及び位相角(同上)である。
なお、上述したループ状配電系統、連系開閉器及び仮想電源モデルの情報は、本実施形態の潮流計算装置が有する記憶装置に記憶されている。また、置換後の放射状配電系統の情報も記憶装置に記憶される。
【0018】
ここで、ループ状配電系統の場合、前述したように、ループ点310における連系開閉器の両端電圧及び位相角に関して、それぞれ数式1,数式2の関係が成立する。
[数1]
V
KGloop11=V
KGloop12
[数2]
θ
KGloop11=θ
KGloop12
【0019】
また、連系開閉器の抵抗値を無視した場合、連系開閉器の一端に流入する有効電力及び無効電力と、連系開閉器の他端から流出する有効電力及び無効電力とはそれぞれ等しいことから、ループ点310に接続された各仮想電源モデルK
G1,K
G2の有効電力及び無効電力の間には、それぞれ数式3,数式4の関係が成立する。
[数3]
P
KGloop11=−P
KGloop12
[数4]
Q
KGloop11=−Q
KGloop12
【0020】
この実施形態では、上記問題を、ループ点310における連系開閉器の両端電圧の偏差及び位相角の偏差が最小となるような仮想電源モデルの有効電力及び無効電力の組合せを探索する組合せ最適化問題として定式化する。
ここで、数式1、数式2の関係から、組合せ最適化問題の目的関数f
minを数式5により定義する。
[数5]
f
min=(V
KGloop11−V
KGloop12)
2+(θ
KGloop11−θ
KGloop12)
2
【0021】
また、数式3,数式4の関係から、等式制約条件として数式6,数式7を定義する。
[数6]
P
KGloop11+P
KGloop12=0
[数7]
Q
KGloop11+Q
KGloop12=0
【0022】
これにより、本実施形態の潮流計算装置が有する演算処理手段が、
図1上段に示したループ状配電系統モデルに関し、数式6,数式7の等式制約条件のもとで、数式5の目的関数を最小化するような
図1下段の仮想電源モデルK
G1,K
G2の有効電力及び無効電力の組合せを非線形計画法、例えば逐次二次計画法を用いて算出することで、放射状系統用潮流計算方法を用いてループ状配電系統のノード電圧分布及び線路潮流分布を計算することができる。
【0023】
上記数式5〜数式7は、
図1上段に示したように2本の配電線300
1,300
2間に設置された1台の連系開閉器の閉操作による1点ループのループ状配電系統モデルに関する計算式である。これらの計算式を、
図2に示すように複数台の連系開閉器の閉操作により構成される多点ループ310
1〜310
i(ループ点の数をiとする)のループ状配電系統モデルに適用した場合の目的関数及び等式制約条件の一般式は、数式8〜数式10となる。なお、数式8において、nはループ点の数である。
【0025】
[等式制約条件]
【数9】
【数10】
【0026】
数式8〜数式10における各変数の添え字loop
i1は、i番目のループ点の連系開閉器の一方のノードに接続された仮想電源モデルの諸量、loop
i2はi番目のループ点の連系開閉器の他方のノードに接続された仮想電源モデルの諸量を表す。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、同一バンク内の複数の配電線、あるいは、異バンク間の複数の配電線からなる配電系統であって、任意の地点の連系開閉器の閉動作により複数地点をループ点としたループ状配電系統において、前記連系開閉器を開動作させて各配電線の末端ノードに仮想電源モデルをそれぞれ接続することにより、ループ状配電系統を放射状配電系統に置換して潮流計算を行うことができる。
特に、本実施形態では、特許文献1のように送り出しノードを二分割するのではなく、ループ点の連系開閉器を開状態としたままその両端(各配電線の末端ノード)に仮想電源モデルを接続して放射状配電系統に置換するため、配電線上にSVRが存在するループ状配電系統を放射状配電系統へ置換する場合でも、ループ点の位置に関わらずSVRの電圧検出点は常にSVRの二次側になり、SVRモデルを変更する必要も生じない。
【0028】
ここで、放射状配電系統用潮流計算方法としては、例えば前述の特許文献1に記載された方法を用いることができる。
この潮流計算方法は、放射状配電系統の電源(配電用変電所)の電圧及び位相角、各ノードの負荷量、収束判定基準値等の各種データをコンピュータに入力するステップと、負荷量の初期推定値を用いて、各配電線の末端ノードから加算して先頭ノードにおける流出有効電力、流出無効電力及び電圧からなる状態変数の初期値を求める初期値計算ステップと、各配電線の先頭ノードから末端ノードに向かって、上流側ノードの損失有効電力及び損失無効電力、前記状態変数の初期値、下流側ノードの有効電力負荷及び無効電力負荷、線路インピーダンスを用いて、下流側ノードの流出有効電力、流出無効電力及び電圧を逐次計算するステップ(前進計算ステップ)と、末端ノードの流出有効電力及び流出無効電力をいずれもゼロと仮定したときの末端ノードにおけるエラー分だけ、先頭ノードの流出有効電力及び流出無効電力を修正するステップ(後進計算ステップ)と、末端ノードの流出有効電力及び流出無効電力を所定の判定基準値と比較して収束の有無を判定する収束判定ステップと、から構成されている。
上記の潮流計算方法を
図2上段のループ状配電系統に適用するには、
図2下段のように置換した放射状配電系統の各配電線300
1〜300
1−1において、送り出し母線200側のノードを先頭ノード、仮想電源モデルK
G1〜K
Gnが接続されている各ノードを末端ノードとし、前述した数式9,数式10の制約条件のもとで数式8の目的関数を最小にするような各仮想電源モデルK
G1〜K
Gnの有効電力値、無効電力値を求め、その後に上記の初期値計算ステップ以降の手順を実行することでノード電圧分布、線路潮流分布を求めればよい。
【0029】
図3は、本実施形態に係る潮流計算の一連の処理を示すフローチャートである。
同図に示すように、まず、ループ状配電系統の構成、電源(配電用変電所)の電圧及び位相角、ループ点の位置等の各種情報を記憶装置から読み出し、適宜な入力装置を用いてコンピュータ本体(潮流計算装置を構成する演算処理装置)に入力する(ステップS1)。次に、演算処理装置は、
図2を用いて説明したように、ループ点の連系開閉器を開状態としたままで、連系開閉器の両端に仮想電源モデルをそれぞれ接続することにより、ループ状配電系統を放射状配電系統に置換する(ステップS2)。
【0030】
次いで、置換後の放射状配電系統を対象として、潮流計算用の各種データを用いて入力ファイルを作成する(ステップS3)。この場合の各種データは、電源(配電用変電所)の電圧及び位相角、仮想電源モデルの接続ノードの定義付けデータ等であり、これらは記憶装置に記憶されている。
次に、演算処理装置は、仮想電源モデルの有効電力、無効電力をゼロとおき(ステップS4)、下記の放射状配電系統用の潮流計算に移行する。
【0031】
すなわち、例えば特許文献1に記載された放射状配電系統用潮流計算方法により潮流計算を実施して、各ノードの有効電力、無効電力、電圧及び位相角を求める(ステップS5)。そして、数式8の目的関数を計算し(ステップS6)、その値が収束判定基準値εを下回ったら(ステップS7 Yes)、潮流計算により得た各ノードの電圧及び位相角、有効電力、無効電力等の計算値を適宜な出力装置に出力して終了する(ステップS9)。また、演算処理装置は、目的関数値が収束判定基準値ε以上である場合には(ステップS7 No)、逐次二次計画法により仮想電源モデルの有効電力、無効電力を修正して(ステップS8)、ステップS5以降の処理を繰り返し実行する。
【0032】
なお、
図4は、本実施形態に係る潮流計算装置の構成を示すブロック図である。この潮流計算装置は、周知のパソコン等からなるコンピュータシステムによって構成されている。
図4において、410は、操作員がループ状配電系統の構成、電源の電圧及び位相角、ループ点の位置等の各種データを記憶装置440から読み出す操作を実行する(または、これらのデータを直接入力する)と共に、入出力指令、計算指令等を入力するためのキーボード、マウス、タッチパネル等からなる入力装置、420は後述する各手段を所定のプログラムにより機能させるためのCPU等の演算処理装置、430はディスプレイ、プリンタ、外部へのデータ伝送装置等からなる出力装置、440は、ループ状配電系統の構成や潮流計算用の各種初期値、仮想電源モデル情報、潮流計算結果等が記憶されるハードディスク等の記憶装置である。
【0033】
上記演算処理装置420は、システム全体を統括して制御する制御手段421と、入力装置410により入力されたデータを認識し、各処理に適する形式のデータに変換するデータ入力手段422と、潮流計算の対象となるループ状配電系統を前述した手順により放射状配電系統に置換する系統置換手段423と、目的関数値を最小化する仮想電源モデルの有効電力、無効電力を最適化演算により求め、ループ状配電系統のノード電圧分布(電圧及びその位相角)及び線路潮流分布(有効電力、無効電力)を放射状配電系統用潮流計算方法により計算する最適化・潮流計算手段424と、これらの計算結果を所定の出力形式に応じて変換するデータ出力手段425と、から構成されている。なお、演算処理装置420に内蔵されてプログラム及びデータが格納されるメモリは図示を省略してある。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の実施例について説明する。
この実施例では、
図5に示すように同一バンク内の3本の配電線300
1,300
2,300
3の末端をループ点(連系開閉器の設置位置)310
1,310
2により接続したループ状配電系統モデルを対象として、ループ状配電系統の潮流計算が実行可能なNR法潮流計算法による計算値と、本発明に特許文献1の放射状配電系統用潮流計算方法を適用した際の計算値とを比較している。なお、
図5において、1〜17はノードである。
【0035】
以下の表1は各ノード間の配電線定数を示し、表2は各ノードの負荷設定値(すなわち、負荷量の初期推定値としての有効電力、無効電力)を示している。また、表3は、各ノードの電圧及び位相角に関する本発明及びNR法潮流計算方法の計算結果、並びに各計算結果の誤差、表4は、各ノードの有効電力、無効電力に関する本発明及びNR法潮流計算方法の計算結果、並びに各計算結果の誤差を示している。
【0036】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0037】
表3、表4から、本発明によれば、ループ状配電系統におけるノード電圧分布及び線路潮流分布を、NR法潮流計算方法とほぼ同程度に計算可能であることがわかる。