(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743275
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】電力ケーブル接続用ゴムユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 15/08 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
H02G15/08 L
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-205490(P2011-205490)
(22)【出願日】2011年9月21日
(65)【公開番号】特開2013-70459(P2013-70459A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2013年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】502308387
【氏名又は名称】株式会社ビスキャス
(74)【代理人】
【識別番号】100096035
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 正三
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−156530(JP,U)
【文献】
特開2010−259134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/00−15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部半導電層、半導電性ストレスコーン部、補強絶縁層及び外部半導電層を一体に成形してなる電力ケーブル接続用ゴムユニットにおいて、前記内部半導電層を軸線方向に二分割された二つの半導電性筒状部材で構成し、前記二つの半導電性筒状部材は、内端側が外端側より肉薄になるように外周面がテーパー状に形成され、かつ金型分割面により外周面に発生したバリの除去部が最大外径部に周方向に位置していることを特徴とする電力ケーブル接続用ゴムユニット。
【請求項2】
二つの半導電性筒状部材が同じ形、同じサイズであることを特徴とする請求項1記載の電力ケーブル接続用ゴムユニット。
【請求項3】
二つの半導電性筒状部材が、内端面同士を接触させて又は半導電性ゴム系接着剤で接着させて配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電力ケーブル接続用ゴムユニット。
【請求項4】
二つの半導電性筒状部材が、端面間に隙間をあけ、その隙間に補強絶縁層の一部を入り込ませて又は端面同士を絶縁性ゴム系接着剤で接着させて配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電力ケーブル接続用ゴムユニット。
【請求項5】
内部半導電層、半導電性ストレスコーン部、補強絶縁層及び外部半導電層を一体にした電力ケーブル接続用ゴムユニットの製造方法において、前記内部半導電層を、軸線方向に二分割され、内端側が外端側より肉薄になるように外周面がテーパー状に形成された、二つの半導電性筒状部材として成形するものとし、かつ、それぞれの半導電性筒状部材を、型開き方向が軸線方向で、金型分割面が半導電性筒状部材外周面の最大外径部に位置する金型を用いて成形することを特徴とする電力ケーブル接続用ゴムユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVケーブル等のプラスチック絶縁電力ケーブルの直線接続に用いる円筒状ゴムユニットと、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力ケーブル接続用ゴムユニットを
図8に示す。このゴムユニットは、シリコーンゴムやエチレンプロピレンゴム等からなる内部半導電層1、半導電性ストレスコーン部2A、2B、補強絶縁層3及び外部半導電層4を一体に成形したものである。ゴムユニットの内径は接続される電力ケーブルの絶縁層の外径よりも小さく設定されており、その径差による面圧で補強絶縁層3をケーブル絶縁層に密着させ、接続部の絶縁性能を確保するものである。内部半導電層1は、その中間部がケーブル導体接続部上に位置し、両端部がケーブル絶縁層上に位置して、高電圧側の電界の集中を緩和する部分である。半導電性ストレスコーン部2A、2Bはケーブル外部半導電層からケーブル絶縁層にかけての外周に位置し、低電圧側の電界の集中を緩和する部分である。
【0003】
このゴムユニットは次のようにして製造される(特許文献1〜3参照)。
1)半導電性ゴム材料を金型に注入して加熱加圧することにより、内部半導電層1及び半導電性ストレスコーン部2A、2Bをそれぞれ成形する。
2)内部半導電層1及び半導電性ストレスコーン部2A、2Bの成形時にできたゴム注入部やバリの部分を研磨して除去する。
3)研磨処理した内部半導電層1及び半導電性ストレスコーン部2A、2Bを補強絶縁層成形用金型にセットし、絶縁性のゴム材料を金型に注入して加熱加圧することにより、補強絶縁層3を成形する。
4)補強絶縁層3の成形時にできたゴム注入部やバリの部分を研磨して除去する。
5)補強絶縁層3の外側に外部半導電層成形用金型をセットし、半導電性ゴム材料を金型に注入して加熱加圧することにより(又は半導電性塗料を塗布することにより)、外部半導電層4を成形する。
なお、外部半導電層4は、内部半導電層1や半導電性ストレスコーン部2A、2Bと同様に、補強絶縁層3を成形する前に成形しておき、補強絶縁層成形用金型内にセットすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−332081号公報
【特許文献2】特開2001−268769号公報
【特許文献3】特開2004−274913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力ケーブル接続用ゴムユニットは、高電圧で使用するため、異物が混入すると、異物を起点として絶縁破壊が生じる危険性があり、製造時には異物が混入しないように十分な対策をとる必要がある。特に内部半導電層の表面は電界が高いため、異物の付着に対しては細心の注意を払う必要がある。
【0006】
内部半導電層は成形後に、ゴム注入部やバリを除去するために研磨を行わなければならないが、内部半導電層が大きいものになると、金型内でのゴムの膨張により金型合わせ目に生じるバリが厚くなり、研磨除去がしづらくなるだけでなく、金型の隅々にまでゴムを充填させるために、ゴム注入部を太くしたり、ゴム注入部を複数設けたりしなければならなくなり、結果として研磨除去がしづらくなり、研磨に時間がかかるという問題がある。
【0007】
また、研磨した表面は微小な凹凸が残り、そこに研磨カス等が付着しやすくなることから、電気的な弱点になりやすい。また電気的な弱点となるのを防止するために、研磨仕上げを念入りに行い、その上、念入りに内部半導電層の清掃を行わなければならないため、成形作業時間が長くなるという問題も生じている。
【0008】
本発明の目的は、以上のような問題点に鑑み、内部半導電層成形後のゴム注入部やバリの除去を容易に行えるようにし、しかも研磨により内部半導電層の表面が荒れる領域を小さく抑えられるようにして、製造コストの削減と電気性能の安定化を図った電力ケーブル接続用ゴムユニットと、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、内部半導電層、半導電性ストレスコーン部、補強絶縁層及び外部半導電層を一体に成形してなる電力ケーブル接続用ゴムユニットにおいて、前記内部半導電層を軸線方向に
二分割された二つの半導電性筒状部材で構成し
、前記二つの半導電性筒状部材は、内端側が外端側より肉薄になるように外周面がテーパー状に形成され、かつ金型分割面により外周面に発生したバリの除去部が最大外径部に周方向に位置していることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、内端側とは電力ケーブル接続用ゴムユニットの軸線方向の中央側という意味であり、外端側とは前記軸線方向の端部側という意味である。
なお本発明において、二つの半導電性筒状部材は同じ形、同じサイズであることが好ましい。
【0011】
本発明において、
二つの半導電性筒状部材は、
内端面同士を接触させて又は半導電性ゴム系接着剤で接着させて配置することができる。
【0012】
本発明において、
二つの半導電性筒状部材は、端面間に隙間をあけ、その隙間に補強絶縁層の一部を入り込ませて又は端面同士を絶縁性ゴム系接着剤で接着させて配置することもできる。
【0013】
また本発明に係る電力ケーブル接続用ゴムユニットの製造方法は、内部半導電層、半導電性ストレスコーン部、補強絶縁層及び外部半導電層を一体にした電力ケーブル接続用ゴムユニットを製造する方法であって、前記内部半導電層を
、軸線方向に二分割され、内端側が外端側より肉薄になるように外周面がテーパー状に形成された、二つの半導電性筒状部材として成形するものとし、かつ、それぞれの半導電性筒状部材を、型開き方向が軸線方向で
、金型分割面が半導電性筒状部材外周面の最大外径部に位置する金型を用いて成形することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内部半導電層を軸線方向に
二つに分割して
二つの半導電性筒状部材で構成したことにより、金型で成形する半導電性筒状部材の大きさ(軸線方向の長さ)は従来の内部半導電層に比較し格段に小さくなるので、ゴム注入部を小型化でき、バリを薄肉化することができる。このため、ゴム注入部やバリを除去するための研磨時間を短縮でき、補強絶縁層成形時の清掃時間を短縮できる。また、研磨により内部半導電層表面が荒れる領域を小さくできるため、電気的弱点が発生し難くなる。したがってゴムユニットの製造コストを削減できるとともに、電気性能を安定化させることができる。
【0015】
また、型開き方向が軸線方向である金型を用いて内部半導電層を構成する半導電性筒状部材を成形すれば、金型の分割面にできるバリは周方向になるため、半導電性筒状部材のバリを除去するための研磨を回転研磨機により行うことが可能となり、複雑な手作業による研磨が必要なくなり、研磨作業のさらなる省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る電力ケーブル接続用ゴムユニットの一実施例を示す断面図。
【
図2】
図1のゴムユニットの内部半導電層用の半導電性筒状部材を成形する金型を示す断面図。
【
図3】本発明に係る電力ケーブル接続用ゴムユニットの他の実施例を示す断面図。
【
図4】本発明に係るゴムユニットの
関連技術を示す断面図。
【
図5】本発明に係るゴムユニットの
他の関連技術を示す断面図。
【
図6】本発明に係るゴムユニットのさらに他の
関連技術を示す断面図。
【
図7】本発明に係るゴムユニットのさらに他の
関連技術を示す断面図。
【
図8】従来の電力ケーブル接続用ゴムユニットを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
<実施例1>
図1は本発明の一実施例を示す。この電力ケーブル接続用ゴムユニットは、内部半導電層1、半導電性ストレスコーン部2A、2B、補強絶縁層3及び外部半導電層4を一体に成形したものであるが、内部半導電層1が軸線方向に二分割され、二つの半導電性筒状部材1A、1Bで構成されている点に特徴がある。二つの半導電性筒状部材1A、1Bは同じ形、同じサイズであり、内端側が外端側より肉薄になるように外周面がテーパー状に形成されている。より詳細には、半導電性筒状部材1A、1Bの外端は凸曲面に形成されており、この外端から若干内端側の位置が最も外径の大きい最大外径部Dとなっている。そして、この最大外径部Dから内端側に向かって徐々に外径が小さくなるテーパー面となっている。このような形状にすると、D部周辺の電界及び内部半導電層1の中央部の電界の両方を低くできる。
【0018】
二つの半導電性筒状部材1A、1Bは内端面を相互に接触させて配置されている。また二つの半導電性筒状部材1A、1Bは内端面同士を半導電性ゴム系接着剤で接着してあってもよい。二つの半導電性筒状部材1A、1Bを接着するには、補強絶縁層3の成形に用いる心金に二つの半導電性筒状部材1A、1Bをセットするときに、半導電性筒状部材1A、1Bの内端面同士を接着剤で接着すればよい。半導電性ゴム系接着剤としては、半導電層を形成する半導電性ゴムを使用してもよい。
【0019】
半導電性筒状部材1A、1Bは
図2に示すような金型で成形することができる。この金型5は、半導電性筒状部材1A、1Bの内周面を成形する金型部材5Aと、外周面を成形する金型部材5Bとで構成され、中心軸線に垂直な平面が分割面Pとなっていて、軸線方向には分割されていないものである。この金型5の型開き方向、すなわち成形品(半導電性筒状部材)を取り出すために金型部材5A、5Bを離す方向は、軸線方向である。
【0020】
このような金型5で半導電性筒状部材1A、1Bを成形すると、金型分割面によるバリは半導電性筒状部材1A、1Bの外周面に周方向に発生するため、バリをとるための研磨作業は回転研磨機により簡単にかつ高精度で行うことができる。また、半導電性筒状部材1A、1Bは従来の約半分の長さであるため、金型5は従来の一体型内部半導電層1を成形するものより格段に小型なものでよく、発生するバリも薄く抑制することができる。
【0021】
従来、内部半導電層を製造する場合には、中心軸線を含む平面が分割面となっている金型、すなわち中心軸線と直交する方向に型開きする金型を用いていたため、内部半導電層の表面に軸線方向にバリが発生し、このバリを除去するために熟練作業者による丁寧な研磨作業が必要となり、製造コストが高くなる問題があったが、本発明はこの問題を解消できる。
【0022】
前記金型5の分割面Pは、半導電性筒状部材1A(1B)の最大外径部Dの箇所に設けられる。したがって、この実施例では、半導電性筒状部材1A(1B)の外端より若干内端側へ寄った所に分割面Pが位置している。電力ケーブル接続用ゴムユニット1において、この実施例の半導電性筒状部材1A(1B)の最大外径部Dが位置する箇所は、電界密度が低くなるように設計することが可能なので、金型5の分割面Pに生じるバリを除去する作業に要求される精度を緩和できる利点がある。
【0023】
<実施例2>
図3は本発明の他の実施例を示す。この電力ケーブル接続用ゴムユニットは、内部半導電層1が軸線方向に二分割され、二つの半導電性筒状部材1A、1Bで構成されているものであるが、実施例1と異なる点は、二つの半導電性筒状部材1A、1Bが内端面間に隙間をあけて配置され、補強絶縁層3が半導電性筒状部材1A、1B間の隙間に入り込むように形成されていることである。このような構成でも、半導電性筒状部材1A、1Bは導体接続部を介して導通するので、隙間が電気的弱点となることはない。
【0024】
なお、二つの半導電性筒状部材1A、1Bは、補強絶縁層3の成形に用いる心金に二つの半導電性筒状部材1A、1Bをセットするときに、内端面同士を絶縁性ゴム系接着剤で接着しておいてもよい。
【0025】
上記以外の構成は実施例1と同じであるので、
図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
<
関連技術1>
図4は本発明の
関連技術を示す。この電力ケーブル接続用ゴムユニットは、二つの半導電性筒状部材1A、1Bが直管状(内外径一定)に成形されているものである。それ以外の構成は実施例1と同じであるので、
図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
<
関連技術2>
図5は本発明の
他の関連技術を示す。この電力ケーブル接続用ゴムユニットも、二つの半導電性筒状部材1A、1Bが直管状(内外径一定)に成形されているものである。それ以外の構成は実施例2と同じであるので、
図3と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
<
関連技術3>
図6は本発明のさらに他の
関連技術を示す。この電力ケーブル接続用ゴムユニットは、二つの半導電性筒状部材1A、1Bの外周面が、外端側が内端側より肉薄になるようにテーパー状に形成されているものである。それ以外の構成は実施例2と同じであるので、
図3と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。この場合も、二つの半導電性筒状部材1A、1Bは内端面同士を接触させて、あるいは半導電性ゴム系接着剤で接着させて配置されていてもよい。
【0029】
<
関連技術4> 上述の実施例では内部半導電層1を2分割した例を示した
が、内部半導電層1は3以上に分割されたもの
とすることもできる。
図7に示す電力ケーブル接続用ゴムユニットは、内部半導電層1を5つに分割したものである。すなわち、5つの半導電性筒状部材1C、1D、1E、1F、1Gで内部半導電層1を構成している。これらのうち、半導電性筒状部材1C、1Gは内部半導電層1の端部を形成しており、半導電性筒状部材1Eは内部半導電層1の中央部を形成しており、残る半導電性筒状部材1D、1Fは内部半導電層1の端部と中央部との間を形成している。
【0030】
内部半導電層1の端部を形成する二つの半導電性筒状部材1C、1Gは、同じ形状であり、内端側が外端側より肉薄になるように外周面がテーパー状に形成されている。より詳細には、半導電性筒状部材1C、1Gの外端は曲面に形成されており、この外端から若干内端側の位置が最も径の大きい最大外径部Dとなっている。そして、この最大外径部Dから内端側に向って徐々に外径が小さくなるテーパー面となっている。
内部半導電層1の中央部を形成する半導電性筒状部材1Eは、外径がほぼ均一で肉厚が薄い円筒状である。
残る半導電性筒状部材1D、1Fは、内端側が外端側より肉厚が薄くなるように外周面がテーパー状に形成されている。具体的には、半導電性筒状部材1D、1Fの外端の外径は、半導電性筒状部材1C、1Gの内端の外径と同じ寸法になっている。また、半導電性筒状部材1D、1Fの内端の外径は、中央にある半導電性筒状部材1Eの端部の外径と同じ寸法になっている。
【0031】
この場合も、それぞれの半導電性筒状部材同士は端面同士を接触させて、あるいは半導電性ゴム系接着剤で接着させて配置されていてもよい。それ以外の構成は実施例1と同じなので、
図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0032】
1:内部半導電層
1A、1B:半導電性筒状部材
2A、2B:半導電性ストレスコーン部
3:補強絶縁層
4:外部半導電層
5:金型
5A、5B:金型部材