(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、像保持体に対する記録媒体の剥離不良を抑制しつつ、記録媒体の裏面汚れを抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は、現像剤像を保持する像保持体と、転写電圧が印加されることにより前記像保持体に保持された現像剤像を記録媒体に転写する転写部と、前記転写部に記録媒体を搬送する搬送部と、前記転写部により第一の面に現像剤像が転写された後、第一の面とは反対の第二の面に現像剤像が転写されるように前記搬送部に向けて記録媒体を反転させる反転路と、前記転写部に印加する電圧を制御する電圧制御部と、を有し、前記電圧制御部は、記録媒体の第二の面に対する転写電圧の印加を開始する時機が、第一の面に対する転写電圧の印加を開始する時機よりも遅くなるように制御する画像形成装置である。
【0008】
請求項2に係る本発明は、前記電圧制御部は、記録媒体の第二の面に転写する場合に、記録媒体の搬送方向先端部分が前記転写部に搬送されたとき前記転写部に記録媒体を静電吸着する電圧よりも小さい電圧を印加し、記録媒体の搬送方向先端部分よりも後端側が前記転写部に搬送されたとき前記転写部に対する転写電圧の印加を開始するように制御する請求項1記載の画像形成装置である。
【0009】
請求項3に係る本発明は、前記電圧制御部は、記録媒体の第二の面の余白部分の範囲において、記録媒体の搬送方向先端部分が前記転写部に搬送されたときに印加する電圧と転写電圧とを切り換えるように制御する請求項2記載の画像形成装置である。
【0010】
請求項4に係る本発明は、記録媒体の第二の面に対する転写電圧に関する情報を受け付ける操作部、をさらに有し、前記電圧制御部は、前記操作部の受け付けた情報に基づいて、記録媒体の第二の面に印加する転写電圧を制御する請求項1乃至3いずれか記載の画像形成装置である。
【0011】
請求項5に係る本発明は、前記電圧制御部は、記録媒体の特性に基づいて記録媒体の第二の面に印加する転写電圧を制御する請求項1乃至4いずれか記載の画像形成装置である。
【0012】
請求項6に係る本発明は、前記電圧制御部は、記録媒体の特性が転写電圧を印加した場合に前記像保持体から剥離し難いものであるとき、記録媒体の第二の面に対する転写電圧の印加を開始する時機が、第一の面に対する転写電圧の印加を開始する時機よりも遅くなるように制御する請求項5記載の画像形成装置である。
【0013】
請求項7に係る本発明は、記録媒体の抵抗を検出する抵抗検出部、をさらに有し、前記電圧制御部は、前記抵抗検出部の検出結果に基づいて記録媒体の第二の面に印加する転写電圧を制御する請求項5記載の画像形成装置である。
【0014】
請求項8に係る本発明は、前記電圧制御部は、前記抵抗検出部の検出結果、記録媒体の抵抗が予め定められた値よりも大きい場合に、記録媒体の第二の面に対する転写電圧の印加を開始する時機が、第一の面に対する転写電圧の印加を開始する時機よりも遅くなるように制御する請求項5記載の画像形成装置である。
【0015】
請求項9に係る本発明は、環境状態を検出する環境検出部、をさらに有し、前記電圧制御部は、前記環境検出部の検出結果に基づいて記録媒体の第二の面に印加する転写電圧を制御する請求項1乃至4いずれか記載の画像形成装置である。
【0016】
請求項10に係る本発明は、前記電圧制御部は、前記環境検出部の検出結果、転写電圧を印加した場合に記録媒体が前記像保持体から剥離し難い環境状態であるとき、記録媒体の第二の面に対する転写電圧の印加を開始する時機が、第一の面に対する転写電圧の印加を開始する時機よりも遅くなるように制御する請求項9記載の画像形成装置である。
【0017】
請求項11に係る本発明は、前記転写部を通過した後の記録媒体の状態を検出する状態検出部、をさらに有し、前記電圧制御部は、前記状態検出部の検出結果に基づいて記録媒体の第二の面に印加する転写電圧を制御する請求項1乃至4いずれか記載の画像形成装置である。
【0018】
請求項12に係る本発明は、前記電圧制御部は、前記状態検出部の検出結果、前記転写部を通過した後の前記像保持体からの記録媒体の剥離度合が小さい状態である場合、記録媒体の第二の面に対する転写電圧の印加を開始する時機が、第一の面に対する転写電圧の印加を開始する時機よりも遅くなるように制御する請求項11記載の画像形成装置である。
【0019】
請求項13に係る本発明は、記録媒体に印刷される画像の画素数を検出する画素数検出部、をさらに有し、前記電圧制御部は、前記画素数検出部の検出結果に基づいて記録媒体の第二の面に印加する転写電圧を制御する請求項1乃至4いずれか記載の画像形成装置である。
【0020】
請求項14に係る本発明は、前記電圧制御部は、前記画素数検出部の検出結果、記録媒体の第二の面に印刷される画素数が転写不良を生じ難いものである場合に、記録媒体の第二の面に対する転写電圧の印加を開始する時機が、第一の面に対する転写電圧の印加を開始する時機よりも遅くなるように制御する請求項13記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る本発明によれば、像保持体に対する記録媒体の剥離不良を抑制しつつ、記録媒体の裏面汚れを抑制することができる。
【0022】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る発明の効果に加えて、記録媒体の像保持体とは反対側の面に現像剤が飛散することを防止することができる。
【0023】
請求項3に係る本発明によれば、請求項2に係る発明の効果に加えて、本構成を有していない場合と比較して、より画像転写不良を抑制することができる。
【0024】
請求項4に係る本発明によれば、請求項1乃至3いずれかに係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、操作者の判断に応じて記録媒体の第二の面に印加する転写電圧について微調整することができる。
【0025】
請求項5に係る本発明によれば、請求項1乃至4いずれかに係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、より細かく、記録媒体の第二の面に印加する転写電圧について調整することができる。
【0026】
請求項6に係る本発明によれば、請求項5に係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、より効果的に、像保持体に対する記録媒体の剥離不良を抑制しつつ、画像転写不良を抑制することができる。
【0027】
請求項7に係る本発明によれば、請求項5に係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、より効果的に、像保持体に対する記録媒体の剥離不良を抑制しつつ、画像転写不良を抑制することができる。
【0028】
請求項8に係る本発明によれば、請求項7に係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、より効果的に、像保持体に対する記録媒体の剥離不良を抑制しつつ、画像転写不良を抑制することができる。
【0029】
請求項9に係る本発明によれば、請求項1乃至4いずれかに係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、より細かく、記録媒体の第二の面に印加する転写電圧について調整することができる。
【0030】
請求項10に係る本発明によれば、請求項9に係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、より効果的に、像保持体に対する記録媒体の剥離不良を抑制しつつ、画像転写不良を抑制することができる。
【0031】
請求項11に係る本発明によれば、請求項1乃至4いずれかに係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、より細かく、記録媒体の第二の面に印加する転写電圧について調整することができる。
【0032】
請求項12に係る本発明によれば、請求項11に係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、より効果的に、像保持体に対する記録媒体の剥離不良を抑制しつつ、画像転写不良を抑制することができる。
【0033】
請求項13に係る本発明によれば、請求項1乃至4いずれかに係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、より細かく、記録媒体の第二の面に印加する転写電圧について調整することができる。
【0034】
請求項14に係る本発明によれば、請求項13に係る発明の効果に加えて、本構成を有さない場合と比較して、より効果的に、像保持体に対する記録媒体の剥離不良を抑制しつつ、画像転写不良を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[第一実施形態]
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態としての画像形成装置10の概略図を示す。
【0037】
画像形成装置10は、制御部2と、画像処理部4と、画素数検出部6とを有する。
制御部2は、画像形成装置10全体の動作を制御する。
画像処理部4は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)や画像読取装置等(非図示)から入力される画像情報に対して、必要に応じて、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消し、色/移動編集等の予め定められた画像処理を施す。
画素数検出部6は、入力される画像情報に基づいて、記録媒体に形成される画像の画素数を検出する(ピクセルカウンタ)。
【0038】
画像形成装置10は、画像形成装置本体12を有する。
画像形成装置本体12の前側(
図1において右側)には、操作者の操作を受け付ける操作部8が設けられている。操作部8は、例えば、画像形成する記録媒体の枚数を入力するテンキーや、転写電圧に関する情報を入力する押圧部、画像形成を開始する際に操作される開始ボタン等を有する。
【0039】
画像形成装置本体12の上側の面は、画像の形成された記録媒体が排出される排出部14として用いられる。
画像形成装置本体12内には、記録媒体に転写する画像を形成する画像形成部20と、この画像形成部20に記録媒体を供給する記録媒体供給装置22と、この記録媒体供給装置22から供給された記録媒体を排出部14まで搬送する搬送路24が設けられている。
【0040】
画像形成部20は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色に対応する画像形成装置30Y、30M、30C、30Kと、潜像形成装置として用いられる光書き込み装置32と、転写装置34とにより構成される。
画像形成装置30Y、30M、30C、30K及びこれらの構成要素は、形成する画像の色以外は同様に構成されている。以下、各色に対応する構成については、Y、M、C、Kを省略して「画像形成装置30」等のように総称して記載する場合がある。
【0041】
画像形成装置30は、画像形成装置本体12の後側(
図1における左側)から順に、画像形成装置30Y、30M、30C、30Kの順に並べられている。
【0042】
画像形成装置30は、例えばカラー画像を形成する電子写真方式のものである。
画像形成装置30はそれぞれ、現像剤像を担持する像担持体として用いられるドラム形状の感光体42と、この感光体42を一様に帯電する帯電ロールを備えた帯電手段として用いられる帯電装置44と、感光体42に書き込まれた潜像を現像剤(トナー)で現像する現像器46と、感光体42に残留する廃現像剤を、例えば掻き取って清掃(クリーニング)する清掃装置48とを有する。
【0043】
現像器46は、それぞれが収納するY、M、C、Kの現像剤を用いて、対応する感光体42Y、42M、42C、42Kに形成された潜像を現像する。
【0044】
光書き込み装置32は、感光体42それぞれに対して光を照射して、これら感光体42それぞれの表面に潜像を形成する。
【0045】
転写装置34は、転写体として用いられる中間転写体52と、一次転写装置として用いられる一次転写ロール54Y、54M、54C、54Kと、二次転写装置として用いられる二次転写ロール56と、中間転写体清掃装置58と、を有する。
【0046】
中間転写体52は、例えば無端状のベルト形状であり、二次転写ロール56に対向する転写部材60と、4つの支持ロール62a、62b、62c、62dとによって、
図1に矢印で示す方向に回転自在に支持されている。
転写部材60、支持ロール62a、62b、62c、62dのうち少なくとも一つはモータ(不図示)に連結されており、このモータからの駆動伝達を受けて回転することで、中間転写体52を回転駆動させるようになっている。
【0047】
転写部材60は、二次転写ロール56による二次転写のバックアップロールとして機能する。二次転写ロール56と転写部材60とによって転写部64が構成され、これら二次転写ロール56と転写部材60とで挟まれる部分(ニップ部分)が二次転写位置となる。
【0048】
転写部64の搬送方向下流側には、転写によって帯電された記録媒体を除電する除電装置66が設けられている。
除電装置66の搬送方向下流側には、転写部64により転写された記録媒体を後述する定着装置88へ案内する案内部材68が設けられている。
【0049】
一次転写ロール54は、それぞれに対応する現像器46により感光体42の表面に形成された現像剤像を、中間転写体52に転写する。
【0050】
中間転写体清掃装置58は、転写部64で記録媒体に対して各色の現像剤像が転写された後に、中間転写体52の表面に残留する各色の現像剤を掻き落とす掻き落とし部材58aを有する。掻き落とし部材58aによって掻き落とされた現像剤は、中間転写体清掃装置58の本体内に回収される。
【0051】
記録媒体供給装置22は、記録媒体を積層した状態で収納する記録媒体収納容器72と、記録媒体収納容器72に収納された最上位の記録媒体を抽出し、抽出した記録媒体を画像形成部20に向けて搬送する搬送ロール74と、記録媒体を捌き、画像形成部20に複数枚の記録媒体が重なった状態で搬送されることを防止するリタードロール76と、記録媒体の種類を検出する種別検出部78と、を有する。
種別検出部78が検出する記録媒体の種類としては、例えば、普通紙やOHPシート、厚紙、上質紙、再生紙、光沢紙等が挙げられる。
【0052】
搬送路24は、主搬送路82と、反転搬送路84とから構成される。
【0053】
主搬送路82は、記録媒体供給装置22から供給された記録媒体を画像形成部20に搬送し、画像が形成された記録媒体を排出部14に排出する。主搬送路82に沿って、記録媒体搬送方向上流側から順に、搬送ロール74、リタードロール76と、レジストロール86と、転写部64と、定着装置88と、排出ロール90とが配置されている。
【0054】
レジストロール86は、転写部64に記録媒体を搬送する時機(タイミング)を調整する搬送時機調整部として用いられる。レジストロール86は、記録媒体供給装置22側から搬送されてきた記録媒体の先端部を一時的に停止させ、画像形成されるタイミングと合致するように記録媒体を転写部64に向けて送り出す。
【0055】
定着装置88は、加熱ロール88a及び加圧ロール88bを有し、これら加熱ロール88aと加圧ロール88bとの間を通過する記録媒体を加熱し加圧することで、記録媒体に現像剤像を定着する。
排出ロール90は、定着装置88により現像剤が定着された記録媒体を、排出部14に排出する。
【0056】
反転搬送路84は、転写部64により記録媒体の片面に現像剤像が転写された後、この面とは反対側の面に現像剤像が転写されるように反転させつつ、再度レジストロール86へ向けてこの記録媒体を搬送する搬送路として用いられる。
反転搬送路84に沿って、例えば二つの反転搬送ロール98a、98bが配置されている。
【0057】
両面印刷する場合、主搬送路82から排出ロール90に搬送された記録媒体は、その後端部が排出ロール90に挟みこまれた状態でこの排出ロール90が逆回転することで、記録媒体が反転搬送路84に供給される。反転搬送路84に供給された記録媒体は、反転搬送ロール98a、98bによって、レジストロール86の上流の位置へと搬送される。
【0058】
次に、転写部64の周辺構造の詳細及びその機能について説明する。
図2は、転写部64周辺の概略図を示す。
図3は、転写部64の機能構成のブロック図を示す。
【0059】
二次転写ロール56は接地され、基準電位点(0 V)とされている。
転写部材60は、中間転写体52を挟んで二次転写ロール56と対向するように配置されている。転写部材60には、負電圧を印加する電源100が可変抵抗部102を介して接続されている。可変抵抗部102は、電圧制御部104によって抵抗を制御されるようになっている。
【0060】
電圧制御部104が所定の時機に所定の抵抗となるように可変抵抗部102を制御することで、転写部材60に所定の時機に所定の電圧が印加される。
また、電圧制御部104には、操作部8が受付けた操作が通知されるようになっている。
電圧制御部104には、レジストロール86が駆動すると駆動信号が通知されるようになっている。
【0061】
転写部材60には、転写部64を流れる電流を検出する電流検出部106が設けられている。電流検出部106は抵抗検出部として用いられ、この電流検出部106が検出する電流により、転写部64を通過する記録媒体の抵抗が算出される。
【0062】
転写部64近傍には、画像形成装置本体12内の環境状態(温度や湿度等)を検出する環境検出部110が設けられている。環境検出部110は、特に転写部64周辺の環境を検出するように構成されている。
【0063】
転写部64の搬送方向下流側には、この転写部64を通過した後の記録媒体の状態を検出する状態検出部112が設けられている。本実施形態において、状態検出部112は、転写部から搬送される記録媒体の角度(方向)を検出するようになっている。
状態検出部112は、転写された記録媒体に対して案内部材68の反対側(
図2において右側)に設けられている。
なお、状態検出部112は、転写部64から搬送される記録媒体の先端の位置や、予め定められた長さが搬送された後の記録媒体の形状等を検出するようにしてもよい。
【0064】
これら電流検出部106、環境検出部110、状態検出部112はそれぞれ、検出結果を電圧制御部104に通知するようになっている。同様に、電圧制御部104には、画素数検出部6及び種別検出部78の検出結果が通知されるようになっている。
【0065】
次に、電圧制御部104による電圧制御の詳細について説明する。
図4は、転写部材60に印加される電圧及びその時機を説明する説明図である。なお、転写部材60に印加する電圧は負電圧であるが、その絶対値により大小を表現する。
【0066】
まず、記録媒体の剥離不良の特性について、画像形成装置10を用いて説明する。
転写部材60(中間転写体52)に転写に要する程度の負電圧(転写電圧)が印加されると、記録媒体自体は正電荷を有するため、記録媒体が中間転写体52側に引き寄せられるようになる。これにより、転写部64で転写された記録媒体が案内部材68側へ搬送されず、中間転写体52に接したままこの中間転写体52側に移動する剥離不良が生じる場合がある。
一方、転写部材60への印加時機を遅らせると、記録媒体を中間転写体52側に引き寄せにくくなるものの、記録媒体の搬送方向先端側において転写不良が生じる場合がある。
【0067】
剥離不良は、両面印刷する場合において、定着装置88を一度通過した後の第二の面(裏面)への転写の際に生じやすい。これは、定着装置88を通過した記録媒体は含水率が下がり抵抗が大きくなるため静電吸着し易くなり、中間転写体52から剥離しにくくなることに起因する。
また、第二の面への転写の際に剥離不良が生じると、第一の面に対してなされた画像形成作業や現像剤等が無駄となり、第一の面への転写の際に剥離不良が生じる場合と比較して損失が大きくなる。
【0068】
本実施形態においては、
図4に示すように転写部材60に印加される電圧が制御されるようになっている。
転写部材60には初期電圧(V
0)が印加されている。初期電圧(V
0)は負電圧であり、転写に要する電圧(以下、「転写電圧」と称する)よりも小さい値である。
【0069】
両面印刷する際、記録媒体の第一の面(表面)が転写部64に搬送される前に、転写部材60に転写電圧(V
1)の印加を開始する(転写電圧(V
1)が立ち上がる)。
第一の面の後端が転写部64を通過した後、転写電圧(V
1)の印加を終了する(転写電圧(V
1)が立ち下がる)。そして、転写部材60には初期電圧(V
0)が印加される。
このようにして、第一の面に現像剤像が転写される。
【0070】
続いて、第二の面(裏面)が転写部64に搬送される前に、転写部材60に記録媒体の搬送方向先端部分に対する電圧(V
21)(以下、「先端電圧」と称する)の印加を開始する(転写電圧(V
21)が立ち上がる)。
第二の面の先端部分が転写部64を通過すると、転写部材60に転写電圧(V
22)の印加を開始する(転写電圧(V
22)が立ち上がる)。本実施形態においては、第二の面に転写する場合の転写電圧(V
22)は、第一の面に転写する場合の転写電圧(V
1)よりも大きい電圧に設定されている。
【0071】
このように、電圧制御部104は、第一の面と比較して剥離不良の生じ易い第二の面への転写に際して、記録媒体の搬送に対して転写電圧が遅延して印加するように制御(以下、「遅延制御」と称する)する。
【0072】
先端電圧(V
21)は、転写される記録媒体を像保持体52に静電吸着させる電圧よりも小さく、転写電圧(V
21)、(V
22)と同極性(負)の電圧に設定される。先端電圧(V
21)は、例えば、剥離不良を生じさせない程度の電圧であり、転写電圧V
21、V
22より小さい電圧に設定される。
また、電圧(V
21)は、0 Vに設定するようにしてもよい。
先端電圧(V
21)をこのように設定する場合、記録媒体の二次転写ロール56側の面(転写する面とは反対の面)に対して、この二次転写ロール56に付着した現像剤像が二次転写ロール56に付着(再転写)し裏面汚れとなることが抑制される。
【0073】
先端電圧(V
21)が印加される記録媒体の先端部分の搬送方向に対する長さは、画像が形成されない余白部分よりも短くなるようになっている(例えば5 - 10 mm程度)。すなわち、電圧制御部104は、記録媒体の第二の面の余白部分において、先端電圧(V
21)と転写電圧(V
22)とを切り換えるように制御する。
【0074】
次いで、第二の面の後端が転写部64を通過した後、転写電圧(V
21)の印加を終了する(転写電圧(V
21)が立ち下がる)。
そして、転写部材60には初期電圧(V
0)が印加される。
【0075】
電圧制御部104は、種別検出部78、電流検出部106、環境検出部110、状態検出部112、これらが第二の面への転写の前に検出した検出結果に基づいて、剥離不良が比較的生じ易い条件においては遅延制御を実行し、剥離不良が比較的生じ難い条件においては遅延制御を停止するように制御する。
遅延制御を停止した場合、第二の面には、第一の面と略同一の時機で転写電圧が印加されることとなる。
電圧制御部104は、検出結果として、例えば、第二の面に転写するためにレジストロール86から搬送されるまでに検出された結果を用いる。
【0076】
電圧制御部104は、種別検出部78の検出結果、記録媒体の特性が転写電圧を印加した場合に前記像保持体から剥離し難いものであるとき、遅延制御を実行し、剥離し易いものであるとき、遅延制御を停止するように制御する。
例えば、電圧制御部104は、転写される記録媒体が比較的軟らかい(コシの弱い)普通紙や再生紙等の場合、遅延制御を実行し、転写される記録媒体が比較的硬い(コシの強い)OHPシートや厚紙等の場合、遅延制御を停止するように制御する。
【0077】
電圧制御部104は、電流検出部106の検出結果、例えば、記録媒体の抵抗が予め定められた値(閾値)よりも大きい(静電吸着し易い)場合、遅延制御を実行し、抵抗が閾値以下の(静電吸着し難い)場合、遅延制御を停止するように制御する。
【0078】
電圧制御部104は、環境検出部110の検出結果、転写電圧を印加した場合に記録媒体が中間転写体52から剥離し難い環境状態であるとき、遅延制御を実行し、剥離し易い環境状態であるとき、遅延制御を停止するように制御する。
例えば、電圧制御部104は、記録媒体が中間転写体52に比較的静電吸着し易い低温低湿の場合、遅延制御を実行し、記録媒体が中間転写体52に比較的静電吸着し難い高温高湿の場合、遅延制御を停止するように制御する。
【0079】
電圧制御部104は、状態検出部112の検出結果、転写部64を通過した後の中間転写体52からの記録媒体の剥離度合が小さい状態である場合、遅延制御を実行し、剥離度合が大きい状態である場合、遅延制御を停止するように制御する。
「剥離度合」とは、記録媒体が中間転写体52から剥離している度合を示し、記録媒体の先端部分(あるいは搬送方向に対して所定の長さの範囲)と中間転写体52との間隔が大きい(大きく剥離している)ほど、剥離度合は大きくなる。すなわち、剥離度合は、記録媒体が中間転写体52から剥離せず接触している状況で最も小さくなる。
【0080】
例えば、電圧制御部104は、転写部64から搬送される記録媒体の水平方向に対する角度が、転写部材60及び支持ロール62aで支持される中間転写体52の面と水平方向とのなす角α(
図2参照)の角度よりも大きい場合(記録媒体が中間転写体52側に搬送される場合)、遅延制御を実行し、角αの角度よりも小さい場合(記録媒体が案内部材68側に搬送される場合)、遅延制御を停止するように制御する。
【0081】
また、電圧制御部104は、画素数検出部6の検出結果に基づいて、搬送方向先端に転写不良が比較的生じ難い条件においては遅延制御を実行し、転写不良が生じ易い条件においては遅延制御を停止するように制御する。
例えば、電圧制御部104は、画素数検出部6の第二の面に対する検出結果、記録媒体の先端部分に形成される画像の画素数(画像密度)が小さい場合、遅延制御を実行し、画素数(画像密度)が大きい場合、遅延制御を停止するように制御する。
【0082】
電圧制御部104は、画素数検出部6、種別検出部78、電流検出部106、環境検出部110、状態検出部112、これらの検出結果いずれかを用いて制御するようにしてもよいし、これらを組み合わせて制御するようにしてもよい。
遅延制御の実行又は停止は、操作部8を介して操作者によって操作されるようにしてもよい。
【0083】
第二の面に対する先端電圧(V
21)の値や、転写電圧(V
22)を印加する時機(遅延させる時間)、余白部分の長さ等は、操作部8を介して操作者によって入力される記録媒体の第二の面に対する転写電圧に関する情報に基づいて調整されるようにしてもよい。
【0084】
上記実施形態においては、電圧制御部104は、検出結果に基づいて遅延制御の実行又は停止を制御する構成について説明したが、これに限らず、先端電圧(V
21)の値や転写電圧(V
22)の値、転写電圧(V
22)を印加する時機(遅延させる時間)等のいずれか、あるいは、これらを組み合わせて変化させるように制御するようにしてもよい。
【0085】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
図5は、第二実施形態に係る転写部64周辺の側面からの概略図を示す。
図6は、第二実施形態に係る転写部64周辺の案内部材86側からの概略図を示す
第一実施形態においては、状態検出部112が転写された記録媒体に対して案内部材68の反対側に設けられていたのに対し、第二実施形態においては、状態検出部120は、転写部材60の軸方向両端側に設けられている。
【0086】
図6に示すように、状態検出部120は、発光部120aと受光部120bとにより構成される。発光部120aから発せられた光は、転写部材60及び支持ロール62aで支持される中間転写体52の延長線L上を通過して、受光部120bに受光されるようになっている。
【0087】
本実施形態において電圧制御部104は、状態検出部120の検出結果、例えば、記録媒体が延長線Lよりも転写体52側(
図5において左側)に転写部64から搬送される場合、遅延制御を実行し、記録媒体が延長線Lよりも案内部材68側(
図5において右側)に転写部64から搬送される場合、遅延制御を停止するように制御する。