【課題を解決するための手段】
【0007】
それ故、本発明の目的は、船舶の自動操舵システム及び/又は動的位置決めシステムを、切換え履歴現象が減らされるように改良することにある。この目的は、演算処理装置と、舵の物理量の値を決定するための少なくとも一つの測定装置と、決定された物理量の値を演算処理装置へ送るための装置とを含む、船舶特に船の舵特にスペード舵に作用する力特に持上げ力及び/又は抵抗力を測定するための装置によって解決される。この場合、その演算処理装置は、決定された舵の物理量の値に基づいて舵に作用する力を決定するように構成されている。
【0008】
舵に作用する力に関係した物理量の値を測定することによって、舵に作用する力は何時でも決定することが出来る。舵における物理量の値の測定は、何時でも、或いは予め決められた多分繰り返しの時間間隔で、適宜実行される。特に、その測定は、船舶の航行中連続的に或いは予め決められた位置に船舶を止めて実行するのが適当である。本発明装置により、舵の特定量即ち舵に作用する力が決定されて、この舵の量を所定のアルゴリズムに基づいて他のパラメーターと共に評価する動的位置決めシステム又は自動操舵システムへリレーされ、その結果、切換え履歴現象が回避されるか或いは少なくとも減らされるように、舵角の変化の最適量又は出力の増減の最適レベルをより良く決定することが出来る。
【0009】
用語「物理量」は、原理的には、舵又は舵システムの量的に決定可能な特性であり得る。それは、少なくとも一つの測定装置によって直接測定され得る(測定された量)か、或いは測定装置によって測定された測定量から演繹又は算出され得るかの何れかである。その計算は、又、便宜的には演算処理装置によってもなされる。しかしながら、測定装置自身は、又、測定された量に基づいて物理量を求めるか或いは計算するように構成されてもよい。演算処理装置は、例えば、適当なコンピューター等で、選択によっては動的位置決めシステムの一部であってもよい。場合によっては、その量は「物理技術量」或いは「技術量」とも呼ばれる。その用語は、又、本発明によってもカバーされる。
【0010】
決定され又は測定された量を測定装置から演算処理装置へリレーする手段は、適当などのような装置であってもよい。特に、この手段はケーブル線または無線のデータ伝送であり得る。測定装置は、舵に適当に直接装備されることが多く、通常、演算処理装置は舵システムの外側の船舶の船内に置かれる。この点で、例えば、舵から演算処理装置へケーブルが延ばされて、測定装置には対応した受信機が設けられ、そして、演算処理装置には対応した受信機が設けられ得る。同様に、無線伝送の場合は、適当な送信機と受信機が都合よく装備される。
【0011】
また、演算処理装置は、決定された一つ以上の物理量の値に基づいて舵に作用する力が決定され或いは計算され得る適当なアルゴリズムを含んでいる。原理的には、この力は、舵に作用している幾らかの適当な力である。好ましくは、舵の持ち上げ力及び/又は舵の抵抗力は、本発明により決定される。本文において、持ち上げ力は特に舵の動的な浮揚力を含む。一般に、係る力は、特別な形又は位置を有する本体(舵)が流体(水)に対して動く時発生する。流体または液体により本体に作用する力は、普通、二つの成分即ち流れの方向又は船舶の縦軸に対して横向きに作用する動的浮揚力と、流れの方向又は船舶の縦軸に沿って作用する摩擦力(抵抗力)とに分解される。海洋工学の分野では、舵の「持ち上げ力」と「抵抗力」なる用語は、英語では「リフト」及び「ドラグ」なる用語で呼ばれることも多い。特に、持ち上げ力の大きさは、舵作用に対しては極めて重要なものである。その持ち上げ力は、時には、舵の「側面力」と呼ばれることもある。
【0012】
何れにしても、若し舵の浮力又は抵抗の実際の大きさが分かっていれば、船舶の舵システム又は駆動システムは、所望のコース又は所望の位置を得るために、自動操舵システム又は動的位置決めシステムにより、その大きさに基づいてより正確に制御され得る。浮力と抵抗の関係は、
図5に図式的に示されている。ここで、Uoは(ここでは示されていない)船舶の推進プロペラのプロペラ流を示しており、10はこの流れ内に在る舵を示している。舵は、船舶の長手方向18即ち流れUoの方向に対して角度α捩じられている。通常、船舶の長手方向18と流れの方向は同じである。流れの方向即ち船舶の長手方向18に対して直角方向の合成持ち上げ力は矢印20によって示され、抵抗力は矢印21により表されていて、船舶の長手方向18へ延びている。矢印20,21はベクトルとして表されていて、各力の大きさと方向を示している。前記二つの力から合成される力は、矢印22により表されている。
図5に示された関係は、これらが実質上舵を調節するのみで、通常は推進ユニットには作用せず、その結果舵の持ち上げ力の度合いが舵角と対応する抑制力とを計算するのに基本的に重要であるので、特に、船舶用自動操舵システムにとって極めて重要である。従って、本発明によれば、自動操舵システムは実質上より僅かで小さい舵の偏向も管理することができ、その結果、船舶の必要な推進エネルギーを可なり節約することが出来る。
【0013】
本発明による装置の好適実施例は、従属請求項に明示されている。
【0014】
本発明の好適実施例において、物理量は、曲げ応力及び/又はトルクである。曲げ応力に替えて、舵に作用して舵に曲げ応力を生じさせる曲げモーメントも決定することが出来る。持ち上げ力と抵抗力の両者は、曲げ応力に基づく計算により容易に決定することが出来る。これは、又、舵に作用する捩じれ力即ちトルクに基づいても可能である。舵に作用する力の計算において可能な最高の正確度を得るために、曲げ応力とトルクを求めることは特に望ましい。曲げ応力は、スキ形舵の場合にはクランプタイプであるため、特に有利に求めることが出来る。
【0015】
特に、少なくとも一つの測定装置は、舵のラダートランク及び/又はラダーストックに作用する曲げ応力及び/又は舵のラダーストックに作用するトルクを決定できるように構成されている。ラダートランクは、特にスキ形舵に使用され、船舶本体から舵内へ案内されて内側にラダーストックが配置装着される中空支持体からなっている。この目的のために、少なくとも一つの測定装置は、ラダートランクの上、特にラダートランクの内ケースの上及び/又は特にラダーストックの外ケースの上に、配置されるのが更に好ましい。スキ形舵のラダートランクは、舵に作用する曲げ応力を吸収して船舶本体内へ移すように設計されている。この点で、曲げ応力の測定はここでは特に適当である。ラダーストックのトルクの測定も、これが舵の回動軸を形成するので、適当である。
【0016】
特に、少なくとも一つの測定装置は、ラダートランク及び/又は船体に面しているラダーストックの上部に配置されるのが好ましい。その測定装置は、ラダーストック又はラダートランクの上半分内、特に好ましくは上3分の1内に配置されるのが好ましい。これは、この領域で曲げはしばしば最大であり且つ更に該領域が測定装置の取付けが最も容易に達成できるため、特に有利である。特に、これらの領域は、しばしば船体の内側に位置するため、比較的簡単にケーブル等を自由に敷設することができる。
【0017】
測定の特に高い冗長度を得るために、又は、特に二つの物理量、特に曲げ応力とトルクの両方を決定するために、好ましくはラダートランク及び/又はラダーストックの上に設けられる二つの測定装置を準備するのが適当である。更に、この実施例においては、円筒状のラダートランク又はラダーストックの周囲に、互いに80°乃至100°、特に実質上90°だけ離して配置するのが好ましい。この二つの測定装置を互いに離した配置は、特に横断面図において見ることが出来る。この場合、舵の持ち上げ力と抵抗力は相互に実質上直角にも作用するので、何れの場合も一つの測定装置は、前記力の一方を夫々求めるための基礎を形成する物理量を決定するために設けることが出来る。しかしながら、原理的には、測定は、ラダーストックに関してのみ又はラダートランクに関してのみなされ得る。
【0018】
原理的には、その測定装置は、従来技術から公知の何れか適当な測定手段からなり得る。特に好ましくは、少なくとも一つの測定装置は、引張りゲージ片、光学測定装置及び/又は振動数を測定するための装置を含む。この装置により、簡単且つ費用効果的に、信頼し得る測定結果を得ることができ、それに基づいて物理量の値が決定され得る。
【0019】
本発明の基礎をなす目的は、更に、舵の物理量の値特にトルク及び/又は曲げ応力が少なくとも一つの測定装置によって決定され、その決定された少なくとも一つの値が演算処理装置へ送られて、舵に作用する力特に持ち上げ力及び/又は抵抗力が、決定された少なくとも一つの上記値に基づいて前記演算処理装置により求められる、船舶特に船用の舵特にスキ形舵に作用する力を求める方法によって解決される。トルクの測定は、好ましくは、舵のラダートランク上で実行され、曲げ応力の測定は、舵のラダーストック及び/又はラダートランク上で実行される。特に、その方法は、本発明による先に説明した装置を使用して遂行され得る。
【0020】
更に、二つの測定装置は、夫々、ラダートランク及び/又はラダーストック上に設けられ、舵の持ち上げ力は一方の測定装置の測定値に基づいて決定され、そして、舵の抵抗力は他方の測定装置の測定値に基づいて決定されるのが、好都合である。
【0021】
本発明の基礎をなす目的は、更に、舵特にスキ形舵を含む船舶特に船の自動位置決めのための動的位置決めシステム、舵を調節するための調節装置特に操舵エンジン、及び上記調節装置及び/又は推進プロペラを制御するための制御装置を含む推進ユニット特に推進プロペラ、船舶の位置データを決定するための装置、及び船舶に作用する物理量又は船舶の物理量の測定データを決定するための少なくとも一つの測定装置により解決される。上記制御装置は、船舶の位置データ及び測定データに基づいて上記調節装置及び/又は推進プロペラを制御するように構成されている。更に、本発明によれば、上記少なくとも一つの測定装置は、舵の物理量の測定データを決定するように構成され、そして、その一部の制御装置は、上記調節装置及び/又は推進プロペラの制御に関して舵の測定データを考慮できるように構成されている。
【0022】
本発明の基礎をなす目的は、更に、舵特にスキ形舵と、舵を調節するための調節装置特に操舵エンジンと、上記調節装置を制御するための制御装置と、船舶位置データを上記制御装置へ送るように構成された船舶位置データを求めるための装置と、船舶に作用する物理量の測定データを決定するための少なくとも一つの測定装置とを含み、該少なくとも一つの測定装置は求められた測定データを上記制御装置へ伝送するように構成され、上記制御装置は船舶の位置データと上記測定データに基づいて上記調節装置を制御するように構成された、船舶特に船の自動コース制御のための自動操舵システムによって解決される。更に、本発明によれば、上記少なくとも一つの測定装置は、舵の物理量の舵測定データを決定するように構成されており、且つ上記制御装置は上記調節装置の制御に関して舵の測定データを考慮するように構成されている。
【0023】
両システムにおいて、船舶の位置データを決定するための装置は位置データを制御装置へ送る。同様に、上記少なくとも一つの測定装置の測定データは上記制御装置へ送られる。その測定データは、舵の物理量の測定値又は上記測定装置の実際の測定値に基づいて決定され又は計算された値であり得る。本発明によれば、従来技術から公知の普通の測定デタの代わりに、舵に作用する物理量の舵測定データが最初に使用される。これらの舵測定デタは又上記制御装置へも送られて、船舶の自動位置決め又は自動コース制御を決定するのに使用される。即ち、特に舵の測定データに基づいて、調節装置及び/又は推進プロペラが調節装置によって制御される。その結果、船舶の機動システムの実質上より正確な制御が、本発明によるシステムによって達成され、そして、かくして切換えの履歴現象が可なり減らされ得る。それ故、本発明によるシステムにおいては、舵に対してもっぱら関係している測定データは、最初、船舶の位置決めと制御のために使用される。
【0024】
舵の物理量は、好ましくは、曲げ応力及び/又はトルクである。
【0025】
更に、制御装置又は任意に別の演算処理装置も又舵に作用する力、特に持ち上げ力及び/又は抵抗力を、舵の物理量の求められた値に基づいて決定することが出来るように構成される。そして、舵に作用する力は、位置決め又はコース制御、特に船舶の機動システムを制御するために使用される。
【0026】
本発明による装置の先に記述した実施例によれば、二つのシステムの少なくとも一つの測定装置は、舵に作用する力を決定するように構成されている。特に、本発明による前記装置全体は、本発明による装置から演算処理装置の機能が各システムの制御装置により引き継がれ得る、動的位置決め又は自動操舵システムの部分である。又、演算処理装置は、二つのシステムの一方の内部に分離して設けることも出来る。
【0027】
そのシステムの一好適実施例においては、船舶の推進力特に推力に関する船舶の推進力測定データを決定するように構成された別の測定装置が設けられている。これは、好適には、船舶の推進プロペラの駆動軸上に設けられる。更に、制御装置は、調節装置及び/又は推進プロペラの制御に関して、船舶の推進力測定データを考慮するように構成されている。従って、この実施例においては、舵の測定データに加えて、船舶の推進力測定データが、機動システムを制御するのに使用されるか、又は制御の基礎を形成するアルゴリズムに組み込まれる。これは、船舶の推力が舵の抵抗力に対して正確に作用するか、又は、舵の抵抗力によって減らされるため、特に好都合である。この点において、船舶の推進力測定データの追加的提供により、船舶の機動システムについての広範囲の情報を得ることが可能である。特に、制御装置は、これらのデータに基づいて、正味の機動力を求め又は計算することが出来て、これを機動システムを制御する過程に使用することが出来る。これらの個々の力間の関係は、
図6に線図によって示されている。この線図は、抵抗21に対して作用する推力23がベクトル矢として付加的に示されている
図5の線図に基づいている。正味の機動力24は、正味の推力23b(=推力−抵抗)と浮力20から決定することが出来る。
図5に示された関係は、これらが、しばしば、共に舵と推進装置をも制御するように構成されるため、動的位置決めシステムに特に関連している。
【0028】
本発明の基礎を成す目的は、更に、船舶特に船の機動的位置決め及び/又は自動コース制御のための、次のステップを含む方法によって解決される。
a.)船舶の舵特にスキ形舵の少なくとも一つの物理量特にトルク又は曲げ応力の値を決 定すること、
b.)決定された舵の物理量の値に基づいて、舵に作用する力特に持上げ力及び/又は抵抗
力を決定すること、
c.) ステップb.)において決定された力に基づいて、船舶の舵を調節するための調節装置 特に操舵エンジン及び/又は推進装置、及び更に船舶の位置データ及び/又は船舶の測 定データを任意に制御すること、及び任意に
d.) ステップa.)乃至c.)を繰返すこと。
【0029】
この場合の船舶の測定データは、船舶に作用する他の物理量、例えば、風の強さ、波のうねりその他に関するデータである。好都合なことに、個々の処理ステップは、船舶の航行中連続的に繰返される。従って、舵に作用する力は連続的に決定され、そしてそれを繰返すことにより、船舶の最適の位置決め又はコースの整合に関して高品質の結果へ導かれる。特に、上記方法は、本発明により先に説明された機動的位置決め又は自動操舵システムにより実行され得る。
【0030】
本発明による方法の好適実施例においては、船舶の推進力特に推力が更に決定され得る。この関連において、船舶の機動力に基づいてステップc.)における制御が実行される前記三つの力に基づいて、持上げ力と抵抗力の両方を決定すること、及び船舶の機動力又は船舶の正味の機動力を決定することが適当である。この装置により、切換え履歴現象は更に減らされ得る。
【0031】
本発明の基礎を成す目的は、更に、ラダートランク及び/又はラダーストックに少なくとも一つの測定装置が設けられ、舵の物理量特にラダートランク及び/又はラダーストックにおける曲げ応力及び/又はラダーストックにおけるトルクを決定するように構成された、ラダートランク及びラダーストックを含む、船舶特に船用の舵特にスキ形舵により解決される。更に、その舵は、少なくとも一つの測定装置の決定された値をデータ演算処理装置へ送るための装置を含んでいる。そのデータ演算処理装置は特にコンピューターであってもよく、そして、それは、舵の測定装置が係るシステムに結合され得るように動的位置決め又は自動操舵システムに付属できる。物理量の値は、直接測定されるか、或いは測定装置又は任意に別の演算処理装置又はデータ処理装置により、測定データに基づいて決定さるかの何れかであり得る。このような舵により、舵力又は舵作用についての追加的情報が前述のシステムに送られ得るため、船舶の機動システムの制御がより正確に行われて、切換え履歴現象が減らされ得る。
【0032】
最後に、本発明の基礎をなす目的は、コンピューターのメモリ内に記憶された後、先に記述した本発明による方法の一つを、或いは、多分、本発明による装置、本発明による動的位置決めシステム又は本発明による自動操舵システムと協働して、コンピューターにより実行することを可能にする、コンピューター読み出し可能な記憶媒体又は係るコンピューター読み出し可能な記憶媒体それ自体を含むコンピュータープログラムプロダクトによって解決され得る。