(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5743314
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】超音波プローブ及び超音波画像表示装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20150611BHJP
G01N 29/24 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
A61B8/00
G01N29/24
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-289540(P2010-289540)
(22)【出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-135427(P2012-135427A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(72)【発明者】
【氏名】大塚 昌昭
【審査官】
安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−005227(JP,A)
【文献】
特表平10−502008(JP,A)
【文献】
特開2010−252839(JP,A)
【文献】
特開平08−010255(JP,A)
【文献】
特開2008−270268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00− 8/15
G01N 29/00−29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ筐体と、
該プローブ筐体の先端部に設けられた音響レンズと、を備え、
前記プローブ筐体は、複数の筐体構成部材からなり、該複数の筐体構成部材の間が、前記音響レンズと一体に設けられたガスケットによりシールされており、
互いに係合する前記筐体構成部材の対向する係合面のうち、少なくとも一方の前記係合面に溝部が形成され、該溝部に前記ガスケットが設けられている
ことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記ガスケットは、前記音響レンズと一体成型されることを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
互いに係合する前記筐体構成部材は、対向する係合面が圧迫された状態でネジによって結合されており、該ネジによって前記筐体構成部材が結合されることにより、前記ガスケットが弾性変形して前記筐体構成部材の間がシールされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記音響レンズは、弾性を有していて、前記プローブ筐体の先端部に設けられた開口部に設けられており、
該開口部において、前記音響レンズが前記筐体構成部材の間で該筐体構成部材に対して押圧状態で設けられて該音響レンズと前記プローブ筐体との間がシールされている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記音響レンズは、複数の前記筐体構成部材がネジによって結合されることにより、前記筐体構成部材の間において押圧状態で挟持されることを特徴とする請求項4に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記音響レンズは、前記開口部に設けられた嵌合溝に圧入状態で嵌合することを特徴とする請求項4又は5に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記ガスケットは弾性を有するとともに電磁シールド性を有する材質で形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波プローブを有することを特徴とする超音波画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筐体構成部材からなるプローブ筐体を備える超音波プローブ及び超音波画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波画像を表示する超音波画像表示装置には、超音波の送信を行ないそのエコー信号を受信する超音波プローブが接続されている。この超音波プローブは、プローブ筐体内に超音波振動子が設けられており、この超音波振動子により超音波の送受信が行なわれる。前記超音波プローブは、超音波画像表示装置の装置本体とプローブケーブルによって接続されており、このプローブケーブルを介してエコー信号が前記装置本体に入力されるようになっている。
【0003】
前記プローブ筐体は一対の筐体構成部材により構成されている。この一対の筐体構成部材は、例えば特許文献1に記載されているように、接着剤により互いに接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−303874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ちなみに、超音波のビーム(beam)をエレベーション(elevation)方向に絞る音響レンズと前記プローブ筐体との間なども接着剤により接着されている。
【0006】
ここで、接着剤を用いることにより、前記一対の筐体構成部材の間が液密にシール(seal)されることにもなる。従って、接着剤により、前記超音波プローブを使用後に洗浄する時などに、プローブ筐体内への液体の浸入が防止されている。
【0007】
しかし、前記超音波プローブの製造時において、接着剤が硬化するまでに多くの時間が費やされている。また、前記超音波振動子の交換等の修理を行なう時に、前記筐体構成部材等の前記超音波プローブを構成する部品の解体が困難である。さらに、これら部品を破壊しながら解体しなければならないこともあるため、例えば前記超音波振動子のみを交換すれば足りるのに、他の部品の再利用ができない場合も多い。
【0008】
このため、本願発明者は、接着剤を用いずに前記筐体構成部材の接合などを行なうことについて鋭意検討した。しかし、接着剤を用いない場合、前記プローブ筐体内部への液体の浸入を防止することが課題になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するためになされた一の観点の発明は、プローブ筐体と、該プローブ筐体の先端部に設けられた音響レンズと、を備え、前記プローブ筐体は、複数の筐体構成部材からなり、該複数の筐体構成部材の間が、前記音響レンズと一体に設けられたガスケットによりシールされていることを特徴とする超音波プローブである。
【0010】
他の観点の発明は、前記一の観点の発明において、互いに係合する前記筐体構成部材は、対向する係合面が圧迫された状態でネジによって結合されており、該ネジによって前記筐体構成部材が結合されることにより、前記ガスケットが弾性変形して前記筐体構成部材の間がシールされていることを特徴とする超音波プローブである。
【0011】
他の観点の発明は、前記一の観点の発明において、前記音響レンズは、弾性を有していて、前記プローブ筐体の先端部に設けられた開口部に設けられており、 該開口部において、前記音響レンズが前記筐体構成部材の間で該筐体構成部材に対して押圧状態で設けられて該音響レンズと前記プローブ筐体との間がシールされていることを特徴とする超音波プローブである。
【発明の効果】
【0012】
上記観点の発明によれば、前記複数の筐体構成部材の間が前記ガスケットによりシールされているので、接着剤を用いずに前記プローブ筐体内への液体の浸入を防止することができる。また、前記ガスケットは前記音響レンズと一体になっているので、前記ガスケットと音響レンズとの間をシールするための構造が別途必要になることがなく、製造も容易である。
【0013】
また、上記他の観点の発明によれば、前記ネジによって前記筐体構成部材が結合されることにより前記ガスケットが弾性変形してシールされるので、接着剤が不要になる。また、前記筐体構成部材が、前記ネジによって結合されているので簡単に分解することができる。
【0014】
さらに、上記他の観点の発明によれば、前記開口部において、前記音響レンズが前記プローブ筐体に対して押圧状態で設けられて前記音響レンズと前記プローブ筐体との間がシールされているので、前記音響レンズと前記プローブ筐体との間を接着剤で接着せずともシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る超音波画像表示装置の実施形態の外観の一例を示す図である。
【
図2】本発明に係る超音波プローブの全体斜視図である。
【
図4】
図2に示す超音波プローブの分解斜視図である。
【
図5】
図2に示す超音波プローブの
図4とは異なる方向からの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図12に基づいて説明する。
図1に示すように、超音波画像表示装置100は、装置本体101と接続された超音波プローブ1を有している。この超音波プローブ1は、プローブケーブル2(
図1,2にのみ図示。他の図においては図示省略)を介して前記装置本体101と接続されている。
【0017】
前記超音波プローブ1は、
図2〜5に示すようにプローブ筐体3と音響レンズ4とガスケット(gasket)5(
図2では不図示)とを備えている。前記プローブ筐体3内には、特に図示しないが超音波振動子や音響整合層などが収容される。
【0018】
前記音響レンズ4は、前記プローブ筐体3の先端部3aに設けられている。前記音響レンズ4は、弾性を有する材質で長方形状に形成されており、例えばシリコンゴム(silicone rubber)で形成されている。そして、前記音響レンズ4は、
図6〜
図8に示すように、凸面6aを有する凸面部6と、この凸面部6の周囲に設けられた鍔部7とを有している。
【0019】
前記音響レンズ4は、前記鍔部7の長辺部7aが、後述するように筐体構成部材8,9がネジ12a〜12dによって結合されることにより、前記筐体構成部材8,9の間で押圧状態で挟持される。また、前記鍔部の短辺部7bは、前記筐体構成部材8,9の前記ネジ12a〜12dによる結合によって押圧されないものの、後述するように嵌合溝19,20に圧入状態で嵌合するようになっている。
【0020】
前記ガスケット5は、本例ではOリングである。ただし、Oリングに限定されるものではない。前記ガスケット5は、前記音響レンズ4と一体に設けられている。より詳細には、前記ガスケット5は、前記音響レンズ4の前記鍔部7に一体成型により設けられている。これにより、前記音響レンズ4と一体のガスケットを容易に製造することができる。
【0021】
前記ガスケット5は、前記音響レンズ4と同一の材質、例えばシリコンゴムで形成されていてもよい。また、前記ガスケット5は前記音響レンズ4とは異なる材質で形成されていてもよく、例えばニトリルゴム(nitrile rubber)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム(Ethylene Propylene Methylene Linkage)などで形成されていてもよい。さらに、前記ガスケット5は、例えばシリコンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴムなどに銀粉末や銅粉末等の導電性フィラー(filler)が添加された導電性を有する材質で形成されて、電磁シールド性を有していてもよい。
【0022】
前記ガスケット5は、前記音響レンズ4を含めて平面視略矩形状に形成されており、この音響レンズ4とは反対側の部分に円弧状のアーチ部5aを有している。
【0023】
前記プローブ筐体3は、一対の筐体構成部材8,9からなる。この一対の筐体構成部材8,9は硬質の合成樹脂で形成されている。
【0024】
前記一対の筐体構成部材8,9は、それぞれの周壁10,11の対向面10a,11a同士が当接して係合し前記プローブ筐体3を構成している。前記周壁10,11の対向面10a,11aは、本発明における係合面の実施の形態の一例である。
【0025】
前記筐体構成部材8,9は、ネジ12a,12b,12c,12dによって結合され、前記プローブ筐体3が構成される。前記筐体構成部材8には、前記ネジ12a〜12dが貫通する孔13a,13b,13c,13dが形成されている。また、前記筐体構成部材9の前記対向面11aには、前記ネジ12a〜12dが螺合するネジ穴14a,14b,14c,14dが形成されている。前記筐体構成部材8,9は、前記ネジ穴14a〜14dに前記ネジ12a〜12dが螺合することにより、前記対向面10a,11aが圧迫された状態で結合されるようになっている。
【0026】
前記対向面10aには、溝部15が形成されており、この溝部15に前記ガスケット5が設けられるようになっている。そして、
図9に示すように、前記筐体構成部材8,9がネジによって結合されることによって、前記ガスケット5は、前記溝部15内において前記対向面10aによって押圧されて弾性変形し、前記筐体構成部材8,9の間が液密にシールされるようになっている。
【0027】
なお、
図9の断面図では端面のみが図示され、奥行は省略されている。
【0028】
前記プローブ筐体3の先端部3aには先端側開口部16(
図2参照)が形成され、この先端側開口部16に前記音響レンズ4が設けられている。前記先端側開口部16は、本発明における開口部の実施の形態の一例である。前記先端側開口部16は、前記筐体構成部材8,9の前記周壁10,11に設けられた長方形状の先端側切欠部17,18によって構成される。この先端側切欠部17,18には、前記溝部15から連続するようにして嵌合溝19,20が設けられ、
図10に示すように、この嵌合溝19,20に、前記音響レンズ4の鍔部7が嵌合している。
【0029】
より詳細には、
図11に示すように、一方の前記筐体構成部材9の前記嵌合溝20は、前記鍔部7の短辺部7bが当接する側の長さlが、前記鍔部7が圧入状態で嵌合される長さに設定されている。また、特に図示しないが、同様に他方の前記筐体構成部材8の前記嵌合溝19も、前記鍔部7の短辺部7bが当接する側の長さが、前記鍔部7が圧入状態で嵌合される長さに設定されている。そして、弾性を有する前記鍔部7が前記嵌合溝19に圧入状態で嵌合されると、前記短辺部7bと前記筐体構成部材8,9の間が液密にシールされている。
【0030】
前記鍔部7の長辺部7aは、前記筐体構成部材8,9が前記ネジ12a〜12dによって結合されることにより、筐体構成部材8,9によって押圧される状態で前記嵌合溝19,20に嵌合し、前記筐体構成部材8,9の間で挟持されている。これにより、前記長辺部7aと前記筐体構成部材8,9の間も液密にシールされている。
【0031】
ちなみに、従来は前記筐体構成部材8,9は接着剤により結合されていたので、前記筐体構成部材8,9によって前記音響レンズ4が押圧された状態とすることはできなかった。しかし、本例では前記ネジ12a〜12dによって前記筐体構成部材8,9が結合されるので、前記筐体構成部材8,9によって前記音響レンズ4を押圧することができ、これにより前記音響レンズと前記筐体構成部材8,9の間の接着剤は不要となる。
【0032】
前記プローブ筐体3の後端部3bには、前記プローブケーブル2がブッシング21を介して接続されている。前記後端部3bについて詳しく説明すると、前記筐体構成部材9の前記後端部3b側には、前記ブッシング21が挿入される挿入孔22が前記周壁11に形成されている。より詳細には、前記筐体構成部材9の前記後端部3b側においては、前記周壁11の一部がアーチ部23になっており、このアーチ部23の下方に前記挿入孔22が形成されている。
【0033】
ちなみに、前記アーチ部23における前記筐体構成部材9との対向面には、前記溝部15が設けられている。
【0034】
前記筐体構成部材8の前記後端部3b側の周壁10には、前記アーチ部23が係合する切欠部24が設けられている。ちなみに、前記切欠部24と前記アーチ部23の間は、
図12に示すように前記ガスケット5により液密にシールされる。
【0035】
前記ブッシング21は、弾性を有する合成樹脂で形成されている。このブッシング21の先端側外周面には、周方向に位置決め溝25が設けられている。そして、前記ブッシング21は、前記挿入孔22に挿入されて、前記筐体構成部材8,9に設けられた位置決めリブ26,27に前記位置決め溝25が係合することにより、前記挿入孔22において位置決めがされるようになっている。
【0036】
また、前記ブッシング21の前記位置決め溝25よりも後端側には、周方向に凸部28が設けられている。そして、前記ブッシング21が前記挿入孔22に挿入された状態で、前記凸部28が前記挿入孔22の内周面22aによって押圧されて弾性変形することにより、前記ブッシング21と前記筐体3との間がシールされる。
【0037】
前記ブッシング21の前記凸部28よりも後端側には、複数の外周切欠部29が設けられている。この外周切欠部29により、前記ブッシング21に挿入されたプローブケーブル2が屈曲した時に前記ブッシング21も容易に屈曲することができる。
【0038】
以上説明した本例によれば、前記対向面10a,11aが圧迫された状態で前記ネジ12a〜12dによって前記筐体構成部材8,9を結合することによって、前記ガスケット5が弾性変形して前記筐体構成部材8,9の間がシールされる。従って、筐体構成部材8,9を結合するために接着剤が用いられていないものの、筐体構成部材8,9の間から前記プローブ筐体3の内部への液体の浸入を防止することができる。
【0039】
また、前記音響レンズ4と前記筐体構成部材8,9との間も、接着剤を用いずにシールすることができ、前記プローブ筐体3の内部への液体の浸入を防止することができる。
【0040】
そして、前記筐体構成部材8,9の間及び前記音響レンズ4と前記筐体構成部材8,9の間に、接着剤が用いられておらず、前記ネジ12a〜12dによって前記筐体構成部材8,9が結合されているので、前記プローブ筐体3を簡単に分解することができる。従って、例えば超音波振動子のみを交換すればよい場合、前記筐体構成部材8,9や前記音響レンズ4などを再利用することができる。
【0041】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。
【符号の説明】
【0042】
1 超音波プローブ
3 プローブ筐体
3a 先端部
4 音響レンズ
5 ガスケット
8,9 筐体構成部材
12a,12b,12c,12d ネジ
15 溝部
16 先端側開口部
19,20 嵌合溝